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2024/11/23(土) 17:45

「スラップ訴訟」「ひこばえあるうちはあきらめない」街路樹守る会・愛氏ら会見

投稿者:  牧田司

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西川氏(左)愛氏(都庁会見室で)

 ChatGPTに聞いた。「重さ10キログラムのA4のコピー紙は枚数にするとおおよそ何枚でしょうか。また、この紙を製造するのにどれくらいの樹木が必要で、水、その他CO2排出量はどれくらいでしょうか」

 瞬時に次のような答えがはじき出された。「A4コピー用紙の重さは通常、1枚あたり約4.5グラム(80g/m²の紙の場合)です。計算式は以下の通りです(略)10kgのA4コピー紙=約2,222枚。製造に必要な資源:樹木(1本高さ約12m):0.03本、水:22,220リットル、CO2排出量:9.3kg」

 重さ10キログラムのA4のコピー紙とは、11月21日行われた「神田警察通りの街路樹を守る会」の記者会見で、千代田区がイチョウ並木の街路樹伐採工事区域内への立ち入り禁止を求めた「立入行為禁止仮処分命令申立」を受けた愛みち子氏(一般社団法人「街路樹を守る会」代表)と西川直子氏(「建築ジャーナル」編集長)にそれぞれ送られた段ボール箱に詰められた訴訟資料の量だ。コピー用紙約2,222枚といえば、400字原稿用紙にして約6,666枚。「源氏物語」の約3倍だし、消費する水の量は浴槽の100日分もあり、CO2排出量はイチョウが半年間かけて吸収する量になるのではないか。(間違っていても記者は責任を取らない。ChatGPTの答えをそのまま紹介したにすぎない)

 何の前触れもなく書類が届けられたときのショックを愛氏も西川氏も隠せなかったようだ。言葉は悪いが、臨家に糞尿をぶちまける行為に近い。

 両氏はまた、昨年11月の8名と今回10月の2人の訴訟を合わせ弁護士費用は626万円(区民1人当たり約1万円)に上ることを明らかにした。上記の訴訟資料作成にはいくらの費用が掛かっているのか。

 記者は、区の代理人弁護士の名前など明かしたくないのだが、愛氏も西川氏も名前を明らかにし、写真撮影も許可した。公平性を勘案して、担当している南木みお氏と外ノ池佳子氏の両弁護士の名前を出すことにした。

 弁護士も因果な仕事だ。どのような経緯があったかは知らないが、このような仕事を受けることに何の痛痒も感じないのだろうか。自らの弁護士としての経歴に汚点を残さないのか。

 「立入行為禁止仮処分命令申立」とは、「神田警察通りの道路整備工事において、午後8時から翌日午前8時までの間、赤色カラーコーンとコーンバーで区切った作業帯の設置を開始した時点から撤収するまでの間、同作業帯に立ち入り禁止の決定を裁判所に求めるもので、区はイチョウの下に座っている2人を取り囲み、写真を撮影し、インターネットで執拗に調査し、特定するという作業を千代田区環境まちづくり部道路公園課の職員が行った」(会見での配布資料)というものだ。

 職員もまたかわいそうだ。仕事だから断れないのだろうが、〝お父さん、イチョウの木に抱きついているあの人たちってそんなに悪人なの? 〟と子どもに尋ねられてきちんと答えられる人はいるのだろうか。

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送られてきた段ボール箱を紹介する愛氏

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隠し撮りの写真

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書類の一部(タバコは記者のもの)

◇        ◆     ◇

 記者会見場で資料として配布された「第17回神田警察通り沿道整備推進協議会議事要旨」(令和2年12月2日)を読んで、「街路樹の味方」の記者は怒りがこみあげてきた。〝伐採ありき〟の論議しか紹介されていないからだ。各委員の声を紹介する。

●学識経験者の保存案に対する意見の中に「倒木の可能性がある」とある。台風で倒れて、人や物に何らかの被害を与えた場合、どこが責任を取るのか(担当者貴「区の責任になる」と答弁)

●何より怖いのは倒木によって避難路が維持できなくなること。倒木の恐れがあるならは、この際切った方がいいのではないか

●倒木の恐れがある樹木は街路樹に適さない。街路樹は緑陰を兼ねているというが、今は高いビルが多いため、陰を保っている

 これら委員の方は街路樹や樹木に関して素人だろうし、何を発言しようが自由だろうが、町内会を代表しているのだろうから(選出方法に問題があり、異論もあるが)、少しは勉強して臨むべきだ。以前記事にも書いたが「戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり」(ジョージ・オーウェル「一九八四年」)-為政者がもっとも好むのはこのような方々だ。

 実際はどうか。国土交通省の調査によると、国・都道府県・自治体が管理する道路における街路樹(高木)約720万本のうち、年平均の倒木本数は約5,200本で、倒木による被害は、直轄国道で人身1件、物損34件が確認されたとある。

 比較するのが適当かどうかはわからないが、近年の年間離婚件数は約18万件、孤独死は約3万人、特殊詐欺は2万件弱、家庭内事故死は約16,000人、交通事故死は年間約3,500人、強盗は約1,500件、殺人は1,000件弱…。

 車道を逆走する車が日常茶飯で、空から人が降ってくる時代だから、確率として0.0007%の倒木を恐れるのは理解できないわけではないが、〝天が落ちてきたらどうしょう〟〝空からミサイルが飛んでくる危険性があるから防衛力を高めよう〟という考えと同じといったら失礼か。緑陰の代わりにビルの陰を期待する意見にはもうなにもいうことはない(そもそも神田警察通りは日影は全く考慮されない商業地域だ。沿道居住者には住環境を叫ぶ権利はない。税務署、神田警察署、正則学園、錦城学園も敷地いっぱいに建物を建てていように、都市計画に問題がある。だからこそ街路樹は貴重なのだが…)-2時間もかけてこんな論議に終始していたのか。学識経験者とは誰だ。

◇        ◆     ◇

 神田警察通りの街路樹問題について、記者会見で愛氏、西川氏らは概略について次のように示した。

 千代田区の神田警察通りは、一ツ橋から神田駅までの1300m余りの区道で、200本近い街路樹が植わっています…2016年に地元などから反対がでて、32本のイチョウは残りました。しかし2020年、残りすべてを伐採する方針をたてました。

 住民たちは「神田警察通りの街路樹を守る会」をつくって、区長などに再三話し合いを求め、解決策としての代替案も提示してきました。

 しかし千代田区は話合いや調整をしようとしません。仕方なく、住民たちはイチョウの街路樹を守るため、夜を徹した見守りを始めました。これまで720日以上続いています。

 すると千代田区は、大量の警備員を雇い深夜に大音量で脅すなど強引な伐採工事を10回近く行い、計18本のイチョウを伐採しました。まるで戦争のような有様は区の行政からかけ離れ、常軌を逸しています。

 また、異常な工事に対して、①地域住民への周知・協力の欠落②工事車両の危険な使用③現場の市民への非人道的な対処④異常な工事動員数(令和5年4月11日は合計50名で、総額500万円を超える金額が関係者に支払われた)-などの問題点を指摘した。

 愛氏らは、今回の訴訟は樋口高顕区長からの「スラップ訴訟」だとして、「私たちはひこばえがあるうちはあきらめない」と締めくくった。

◇        ◆     ◇

 第20回神田警察通り沿道整備推進協議会 議事録」(令和4年3月10日)から、「神田警察通りの街路樹を守る会」の推薦として、母が錦華小学校出身で、自らは一橋中学校に通ったという明治大学教授が述べた意見の一部を以下に紹介する。

 「明治大学の●●●●と申します…明大通りの歩道の拡張に伴う、街路樹問題についての2年を超える沿道協議会の議論を経て、プラタナス並木の処遇をめぐる議論が輝かしい成果を獲得することができました…ほぼ2年、全部で9回の協議会を重ねたわけです。話がまとまった根本的な理由は、まさにまちづくりの学問的な専門家、そしてまた、民間企業におられて現実もよくご存知の法政大学の●●先生を座長に据えて、そして街路樹の、まさに専門家の千葉大の名誉教授の●●●●●先生をアドバイザーとして、つまり、専門家たちによって、このワークショップというものが、牽引されて、そして合意形成を促進していったということが、非常に重要なモーメントだったと思うわけです…会場には、全長5メーターに及ぶ、明大通りの模型を作りました。そして、この模型をめぐって、いわゆる反対派と、いわゆる賛成派が、このミニチュアの明大通りの街路樹や信号機などを自由に動かしながら、お互いが身を寄せ合って議論する。そうしたことやミニチュアの明大通りを御茶ノ水の駅から、或いは駿河台の下からを眺めてみる。そういったことを経験していきますと、お互いがあらかじめいだいていた不信感や疑心暗鬼は次第に解けていくものです…また年齢は違えども、出身の中学や高校や大学が同じだったり、共通の知人や友人がいたりすれば、お互いに氷は溶けていくというわけです…地域社会に根づいている、或いは生きている緑と、それを慈しむ人々の心を軽んじる傾向に加担することは、二酸化炭素の削減において、技術的な解決を模索しつつも、地域開発と称して、地域社会にビル風の公害やヒートアイランド現象を引き起こす企業の活動が、実は環境配慮の偽装であるといったことと変わらないと思います…最後に本日は、私の祖父と祖母が焼け出された3月10日でございます。民主主義があからさまに踏みにじられているこの世界において、まさに民主主義とは何かという根源的な問いがここ神田警察通りの問題にはあります」

 議事録は、行政担当者を除きすべて伏字。個人情報保護がその主な理由だ。しかし、この種の会合での発言は区民に責任を持つはずで、名前を公開するのが基本だと思う。いやなら辞退すればいい。伏字ばかりの文章は暗黒時代の小説や昔の「チャタレイ夫人の恋人」を読むようで、気分がよくない。堂々と名乗った明大教授にも失礼だ。

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