官民学の連携が成果あげる未来都市モデルプロジェクト
経団連「日本再興への道」未来都市モデルプロジェクト・シンポジウム
経団連が「日本再興への道」と題する未来都市モデルプロジェクト・シンポジウムを行ったと先に紹介したが、「都市と成長戦略」について基調講演を行った東大大学院教授・伊藤元重氏の講演内容と、未来都市モデルプロジェクトに選定されている「北九州アジア戦略・環境拠点都市」(北九州市長・北橋健治氏)、「西条農業革新都市」(住友化学代表取締役常務執行役員・西本麗氏)、「福島医療ケアサービス都市」(NTT常務取締役・篠原弘道氏)、「沖縄物流拠点都市」(全日空常務取締役執行役員・岡田晃氏)、「柏の葉キャンパスシティ」(三井不動産常務執行役員・小野澤康夫氏)のシンポジウムの内容を以下に紹介する。
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伊藤教授は、アベノミクスの3本の矢のうち第1と第2の矢は想像以上に働いているものの、肝心の第3の矢の成長戦略はいまひとつ迫力に欠けるとし、民間投資を促進するシナリオが必要と強調した。その際の政策ポイントは「変化のスピードアップ」と指摘。TPP参加の決断、東南アジア向けビザの緩和などスピードアップ化に対して安倍政権のかじ取りを評価した。
今後は電力需給、高齢化対応、環境問題などで一層の規制緩和と改革スピードアップが必要とした。都市問題については成功事例、失敗事例をどうやって全国に広げるかが課題と話した。農業政策では減反政策の見直しが必要と述べた。
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未来都市モデルプロジェクトについては、経団連や経済広報センターのホームページにも公開されているので参照していただきたい。
「柏の葉」の取り組みについては記者もその都度記事にしている。「柏の葉三井不動産 RBA」の3文字で検索していただけば10本ぐらいの記事が出てくるはずだ。
北九州の取り組みは「すごい」の一言だ。よくぞ「死の海」から「緑のまちへ」再生を遂げたものだ。三井不動産の小野澤氏も見学して刺激を受けたそうだ。水や環境ビジネスの「北九州モデル」を東南アジアなどへ輸出するという。官と民が連携して初めてできる事業だ。
「西条農業革新都市」は、これからの農業のあり方を問う事業で興味深い。農地法の規制や農協、物流などの難問をどうクリアしていくのか。儲かる農業は可能なのか、食糧自給率は高めることができるのか。森林・林業、漁業との連携を密にして6次産業化を早く確立することが求められている。
「福島医療ケアサービス都市」は、ICTなどを駆使して深刻な過疎村の遠隔医療相談やデマンド交通、緊急避難に生かそうというもので、さらに観光にも結び付けようというものだ。高齢化は過疎村だけの問題ではない。首都圏近郊の大規模団地でも高齢化は加速度的に進み、空き家の大量発生、コミュニティ崩壊、限界集落化、廃村が大きな社会問題となるのは必至だ。
「沖縄物流拠点都市」は、全日空が沖縄観光に力を入れているのはOSI(沖縄観光産業研究会)を通じてよく知っていたが、まさか人口20億人が住む東アジアの中心地という利便性を生かして「国際物流ハブ拠点」として地歩を固めつつあることは知らなかった。沖縄は気候の問題もあるだろうが、東アジアの観光拠点にはならないのだろうか。
シンポジウム全体を通じて官民学の連携こそがあらゆる分野の問題を解決する道筋だと強く感じた。
9月の住宅着工 前年同月比大幅増の約89,000戸 国交省
国土交通省は10月31日、平成25年9月の住宅着工戸数をまめ発表。総戸数は88,539戸(前年同月比19.4%増、13か月連続の増加)となった。内訳は持家が32,128戸(同14.2%増、13か月連続の増加)、貸家が31,892戸(同21.5%増、7か月連続の増加)、分譲住宅が23,968戸(同23.5%増、5か月連続の増加)。分譲住宅の内訳はマンションが12,497戸(同35.6%増、5か月連続の増加)、一戸建住宅が11,396戸(同12.4%増、13か月連続の増加)。
首都圏マンションは6,295戸(同21.4%増)で、都県別の内訳は東京都が4,109戸(同19.1%増)、神奈川県が1,484戸(同191.6%)、埼玉県が321戸(同40.6%減)、千葉県が381戸(同14.4%減)。
「未来都市モデルは成長戦略の重要な柱」 経団連シンポ
岩沙氏
岩沙弘道・経団連審議員会副議長のあいさつ文
日本経済団体連合会(経団連)は10月29日、「日本再興への道」と題する未来都市モデルプロジェクト・シンポジウムを開いた。約500人が集まった。
「未来都市モデルプロジェクト」は、経団連が2011年3月から11の都市・地域を選定し、世界に先駆けた社会的課題の解決を目指し官・学などと連携しながら民間企業が主体的に取り組んでいるプロジェクト。その解決モデルを世界に発信し、経済成長へと結びつけるのが目的。分野は環境・エネルギー、先端医療、次世代交通・物流、次世代電子行政・電子社会、国際観光拠点、先進農業、子育て支援・先進教育など。
シンポジウムの冒頭、経団連審議員会副議長経済広報センター副会長・岩沙弘道氏(三井不動産会長)が挨拶した。わが国の抱えている問題、目指すべき方向が過不足なく述べられているので、ほぼ全文を紹介する。( )内の見出しは記者が付けた。
(冒頭のあいさつ 略)
成長なき経済から再び成長軌道へ 民間の役割
さて、わが国経済は、安倍政権が進める経済政策、アベノミクスの効果もありまして、生産、設備投資が持ち直し、企業収益や業況が改善するなど、本格的な景気回復に向けた動きを見せ始めております。こうした動きを、持続的な経済成長へと確実につなげていくことが重要です。この機を逃さずに、20年余り続いた成長なき経済から脱却し、再び成長軌道へと回帰させなければなりません。
そのために何よりも重要なことは、アベノミクスの第三の矢である成長戦略を、着実にかつ迅速に実行していくことであります。そして、われわれ民間企業には、成長のメインプレーヤーとして、積極果敢に事業を展開するとともに、イノベーションを推進し、新たな需要を創造していくことが求められているかと存じます。
課題解決につながる未来都市モデルプロジェクト
こうした中、経団連では、未来都市モデルプロジェクトを立ち上げ、都市を舞台にしたイノベーション実証実験を推進してまいりました。
現在、プロジェクトが進みます全国11の都市・地域で、環境・エネルギー、医療、交通インフラ、農業等の分野において、先端技術を用いた実証実験が行われております。そして社会的な課題の解決や産業システムの変革、さらには地域の活性化へとつなげる成果が芽生えつつあります。今後は、これらの成果を事業化・産業化へと結びつけていくことで、企業の競争力強化、ひいてはわが国の経済成長へつなげていくことが重要だと考えます。
プロジェクトを通じまして、課題解決につながるサービスを提供し、国内の新たな需要を掘り起こす、さらには、成功事例を積極的に海外展開していくことで、海外の需要を取り込むことも可能となります。このように、未来都市モデルプロジェクトは、内需と外需、2つの推進力によって、わが国の経済社会を新たな成長ステージへと離陸させる、成長戦略の重要な柱となると確信しております。
大胆な規制緩和で民間活力の発揮を
一方で、個々のプロジェクトを進めるうえで、課題となるのが、様々な制度面での規制であります。この後のパネルディスカッションの中でも紹介されると思いますが、とりわけ、エネルギー、医療、農業といった分野の規制は厳しく、事業を進めるうえでの壁となっております。
安倍総理は、規制改革の推進が、成長戦略の一丁目一番地だと指摘されました。我々企業といたしましても、成長戦略の担い手として、これまで以上に、積極的かつ主体的にビジネスを展開してまいります。官の皆様におかれましては、大胆に規制緩和を推進し、民間活力の発揮につながる環境を整えていただきたいと存じます。
官・民の連携がグローバル市場では不可欠
また、未来都市モデルプロジェクトを通じまして、私どもがチャレンジしている高齢化やエネルギー・環境問題、水・食糧問題は、わが国特有のものではありません。いずれ多くの国が抱えることになる世界共通の課題であります。他国に先駆けてこれらの課題を解決することができれば、国際社会への貢献となるだけでなく、グローバルな市場で、わが国が強みを発揮することにもつながります。
ただ、世界各地でスマートシティの建設が進んでおりまして、それに見られます課題解決ビジネスをめぐっても、国際競争が激化しております。グローバル市場での需要を取り込もうと、世界各国で都市を実験場にしたイノベーション創出競争が展開されており、欧米の先進国企業のみならず、国の政策的後押しを受けた新興国企業もプレゼンスを高めつつあります。
このように、企業の枠を超えた、国を挙げての国際競争が繰り広げられている中で、世界の競争相手と渡り合っていくためには、官・民の連携・協調が不可欠であります。本日は、国、自治体の関係者にも多数お越しいただいております。是非、この点について、理解を深めていただければと願っているところであります。
(結び 略)
近所付き合い 金額に換算したら160万円? アットホーム調査
不動産情報サービスのアットホームがまたまた面白いアンケートを行った。1都3県に在住する20~40代で、2012年10月1日から2013年8月28日までの間に新築・中古住宅を購入した男女600名を対象に「近所付き合い」に対する意識調査を実施したもので、近所づきあいを価格に換算して結果を公表した。
ニュースリリースによると、「近隣住民の雰囲気も住宅購入の決め手になった」人が58.3%で、「現在、近所付き合いに満足している」人は全体で49.7%(新築46.0%、中古61.9%)、「近所付き合いは大切にしたい」人が65.8%、「良好な近所付き合いを買うことができたら、物件価格に上乗せしてもいい額」は平均160万円というものだ。
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記者もなにもかも金額に換算するのは大好きで、あの東京ミッドタウンの用地の落札価格を1,800億円と予測して的中させたのには快哉を叫んだし、主婦(夫)労働はとてもサラリーマンの給与で賄えないとはじき出したときはショックを受けた。
今回のリリース記事を業界紙で読んで腰を抜かすほど驚いた。「近所付き合い」を金額に換算したのはおそらく初めてだろうし、その価値をユーザーが160万円とはじいたことに狂喜乱舞でもしようかと思ったほどだ。
しかし、残念ながら「平均160万円」は著しく不正確だ。スポーツ紙もこんな見出しはつけないのではないか。回答者のうち35.3%の人は「0円」と答えているし、「1円~100万円未満」の人も31.7%いる。その一方で「300万円台」が5.8%、「400万円以上」が3.6%だ。
これらを足して割って平均値を出したところで、果たして近所付き合いの価値を正確にはじき出したと誰もが思わないのではないか。価値を0円としか見ていない人が4割近くいるのだ。つまり、近所付き合いは大事だが、それを分譲価格に上乗せしたらびた一文出したくないという人がたくさんいるということだ。160万円は新築の首都圏マンション消費増税額(8%)と同じぐらいの価格だ。
もう一つは「良好な近所つきあい」の「良好な」とはどのようなものかも考える必要がある。つかず離れずがいいのか、土産物のおすそ分けやおかずのやり取りをするのがいいのか、挨拶を交わす程度でいいのか人さまざまだ。
さらに、購入に際して「不動産会社の担当者から近隣住民についての説明や情報を受けている」人が48.5%という数字にも興味が引かれる。これが多いのか少ないのかの判断だが、記者は圧倒的に少ないと思う。不動産の価値は、個別単体の価値だけではない。地域のポテンシャル、近隣のコミュニティとも密接につながっている。ユーザーは不動産会社に近隣住民の情報など期待していないのかもしれないが、新築にしろ中古にしろ、近隣のコミュニティについて把握していない営業マンは失格だ。
個人情報の保護に過剰に反応して〝見ざる言わざる聞かざる〟が蔓延しているとしか思えない。無猿(縁)社会とはよくいったものだ。
それにしても、アットホームの意表をつくアンケートは面白い。どんな人が企画するのか今度聞いてみよう。
日本土地建物 船橋のシェアハウス賃料は51,000円から
日本土地建物が千葉県船橋市で開発を進めている全85戸の大型シェアハウスの名称が「シェアリーフ西船橋グレイスノート」と決まり、賃料も51,000円/室~83,000円/室(別途共益費18,000円)と決まった。
リビング・ダイニング、多目的ルームのほか、音楽スタジオを3室設置するなど共用施設を充実させているのが特徴。個室は9.6畳大が基準で、最大15.8畳大。入居募集開始は来年1月から。入居開始は3月上旬。
建設労働者不足率 9月は前月の2.1%から2.5%へと拡大 国交省調査
国土交通省は10月25日、9月10日~20日の建設労働需給調査結果をまとめ発表。全国の8職種の過不足率は8月の2.1%の不足から9月は2.5%の不足と0.4ポイント不足幅が拡大。特に鉄筋工(建築)の不足率が5.8%と大きくなっている。型枠工(建設)も不足率は3.9%(8月は3.1%)と拡大している。
今後の労働者の確保に関する見通しについては、翌々月(11月)は「困難」と「やや困難」の合計が36%で、対前年同月比12.9ポイントの上昇。
また、10月1~5日現在の主要建設資材の価格動向については、異形棒鋼、H形鋼は“やや上昇”、その他の資材は“横ばい”で、需給動向については全ての資材が“均衡”となっている。
三井不動産 東武東上線エリア最大級の商業施設「(仮称)ららぽーと富士見」着工
イメージ図
三井不動産は10月25日、埼玉県富士見市のリージョナル型ショッピングセンター「(仮称)ららぽーと富士見」を着工したと発表した。
東武東上線エリア最大級の規模で、敷地面積は約152,000 ㎡、延床面積約185,000 ㎡、店舗面積約80,000 ㎡の4 階建て(店舗部分は3 階建て)。店舗数は約300 店、駐車場台数約4,600 台を予定。開業は2015年春の予定。施設は富士見市のシティゾーンに位置し、富士見川越バイパス(国道254号)に接している。
三菱地所 賃貸マンション2015年まで4,500戸供給
「PARK HABIO恵比寿」
三菱地所は10月23日、同社の賃貸マンション「PARK HABIO(パークハビオ)」の竣工物件「PARK HABIO恵比寿」の見学会を行った。
「PARK HABIO」は、都心の駅近好立地の物件に絞り込み、分譲マンションと同様の耐震性・耐久性・セキュリティなどを確保し、三菱地所グループのバリューチェーンを活かした事業で、2004年にスタート。2009年からは世帯構成の変化に対応し単身者・DINKS向けにシフト。賃料にして12万~19万円/坪の物件を中心に企画。計画中の物件を含め2015年8月までに53棟、約4,500棟を供給する。
事業スキームは、用地取得・企画を同社賃貸住宅事業部が、企画・設計・品質管理を三菱地所レジデンス・三菱地所設計が、インテリアデザインをメックデザインインターナショナルが、リーシング・PMを三菱地所ハウスネットが、管理を三菱地所コミュニティが、アセットマネジメントを三菱地所投資顧問がそれぞれ担当。
これまで竣工した34棟のうち29棟は売却済みで、そのうちの約半数は三菱地所投資顧問が運営する日本オープンエンド不動産投資法人に売却している。
挨拶した同社賃貸住宅事業部長・坂口泰之氏は、「投資家、エンドユーザーにも高い評価を得ており、稼働率は90%を超えている。分譲・注文などとのバリューチェーンを強化していきたい」と語った。
「恵比寿」は、恵比寿駅から徒歩3分の14階建て全109戸。住戸面積は25.04~50.30㎡。募集賃料は13.5万~28.1万円/月。
坂口部長
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賃貸住宅のことはよく分からないが、キッチンの天板にクォーツストーンが採用されており、キッチン下収納の内引き出しがソフトクローズ機能付きだったのには驚いた。
分譲マンションでクォーツストーンを標準装備しているのは坪単価にして200万円以下はまずないはずだ。内引き出しをソフトクローズにしているのは茶碗などが割れないようにするためだという。「ピクチャーレールはオプションか」と聞いたら、「賃貸にオプションはありません」と笑われてしまった。床は直床だが、天井は2重天井。同業の大手は2重床、直天井にしているケースが多いという。間口を3m以上確保しているのも〝こだわり〟だそうだ。
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投資家は年金や金融機関が中心で、投資家の期待利回りは4.5%ぐらいとのことだった。他の不動産投資商品と比べ利回りは低いようだが、長期・安定投資としては都心部の賃貸住宅は投資リスクも小さいだろうから、4.5%という利回りはむしろ高いと考える。「麻布狸穴」(84戸)の現場を見たときはびっくりした。
リビング(ベッドが横に置けるのが〝ミソ〟だそうだ)
プレ協「エコアクション2020」12年度実績で考えたこと
「木材の管理体制」はなぜ重要か「緑化配慮」は進んでいるか
プレハブ建築協会は10月24日、環境行動計画「エコアクション2020」の2012年度の実績について報告した。
報告では、太陽光発電システムや家庭用燃料電池の普及が進んだこと、国の補助金制度、固定買取価格制度などの支援策があったことから、2012年度に供給した戸建ての居住段階でのCO2排出量は2010年度比14.2%減の2,004㎏-CO2/戸となり、太陽光発電システム設置戸建ての供給率は61.7%(前年比3.3ポイント増)となっており、かなり成果をあげていることが分かった。
また、既存住宅の居住段階でのCO2排出量削減では、太陽光発電システム設置工事件数は12,776件(前年比18.4%増)となり、生産段階でのCO2排出量は供給床面積当たり30.8㎏/㎡(同1.5%減)となった。
「エコアクション2020」は、「低炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けて数値目標を掲げて取り組んでいるもので、標準的な戸建てでは2020年までにZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)実現を目指すほか、生産・施工におけるCO2排出量を2010年比で10%削減などを掲げている。
調査対象となっているのは会員会社の10社で、10社の戸建て供給戸数は67,119戸、低層集合住宅66,393戸。
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ニュースリリースには「自然共生社会の構築」と題して、「会員各社は、木材調達方針(ガイドライン)を策定し、サプライチェーンの協力を得ながら、トレーサビリティや、合法性の確認や持続可能性の評価を行う体制を確立する等、持続可能な木材の利用を推進している。管理体制を規定している会員会社は6社である」としている。
記者は、この「管理体制を規定しているのは6社」に興味を持った。合法性(コンプライアンス)は当然のことだし、食材ほどではないにしろ「トレーサビリティ(追跡可能性)」が重要なのは論を待たないと思った。問題が生じた時、コンプライアンス、アカウンタビリティ、トレーサビリティは3点セットではないのか。家庭の主婦は肉も野菜も「トレーサビリティ」(産地・生産者表示)が欠けていたらまず買わない。
調査対象となっている10社は、わが国、つまり世界を代表する大手(系)ハウスメーカーが過半を占めている。にもかかわらず木材の管理体制を規定していないところが4社もあるのが信じられなかった。管理体制など確立しなくても、木材は石油化学製品などで覆い隠されるから問題がないのだろうか。輸入材だろうが国産材だろうが品質に差はないのだろうかと考えてしまった。昔の大工さんは生産地や樹種はもちろん部位によって使い分けたというではないか。
協会の関係者に聞いたら管理体制はもちろん重要で「今年度中にはもう1社加わって7社になる予定」とのことだった。「管理体制とは何ぞや」をきちんと説明(アカウンタビリティ)しないといけないのではないか。
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もう一つは、同じ「自然共生社会の構築」の項目で、「地域の生態系の保全に配慮した住宅地の推進」についてだ。リリースには、2012年度に会員各社が分譲した建売住宅4,654戸(前年比780戸増)のうち「CASBEE戸建新築」の基準に基づいて緑化に配慮して分譲した建売住宅が1,935戸(前年比2921戸)、供給率にして前年とほぼ同じ41.6%であることが報告された。
この比率が高いのか低いのかの判断材料はないが、各社の大都市圏と地方圏の供給比率から類推して、地方圏では緑化配慮住宅はかなり進んでいるが、大都市圏ではまだまだ遅れていることが容易に想像できる。緑化の推進は大都市圏こそ重要だ。来年は大都市圏と地方圏の圏域別の取り組み状況を明らかにして欲しい。
消費者が木材の管理体制の有無に関心を持ち、緑化配慮住宅に価値を見いだすような市場を形成するためにもプレ協は先頭に立って啓蒙すべきだろう。森林・林業の再生は待ったなしではないか。
「リニア、圏央道は広域連携を進める絶好の機会」明星大・西浦教授
西浦教授
「何もしなければ座して死を待つばかり」と警告
明星大学教授で多摩ニュータウン学会の筆頭理事、多摩市の多摩ニュータウン再生検討会議の委員などを務める西浦定継氏が10月20日、調布市などが後援する「東京都多摩地区生涯学習インストラクターの会」で「広域で人口減少に対応する方策は? 多摩地域の広域計画を考える」と題する講演を行った。西浦教授は「広域連携」を以前から主張されており、リニアが橋本に停まることの決定をみてどのような発言をされるか興味があったので受講した。
稲城、多摩、町田、八王子、相模原の各市の多摩圏域の現在の人口は約181万人で、2050年には148万人に、2070年には111万人へ減少すると予想されている。西浦教授は「何もしなければ人口は坂道をすべり落ちるように減る。言葉は悪いが、座して死を待つしかない」としながらも、「多摩圏域のポテンシャルは極めて高い。努力すればオセロゲームのように一挙に黒から白に好転する可能性も秘めている」と、各市が行政の枠を超えて連携する必要性を訴えた。
具体的には将来にわたりリスクを軽減する都市の構築へ向けての戦略が必要とし、公共施設をシェアすべきという。空き家・空き地対策も重要で、限界集落などは移住を促す方策もやむを得ないとした。
その一方で、リニアの橋本停車、圏央道の開通は大きな可能性を秘めると強調。「リニアが開業すれば品川から橋本まで10分。橋本は名古屋、関西方面への玄関口となる。企業や研究所の誘致も可能になる。圏央道の開業によって中央道ともつながることになり、さらに多摩モノレールの八王子や町田への延伸、横田基地の利用なども考えると、地域ブランドを確立する絶好の機会」と語った。
西浦教授はまた、米国のデトロイト、クリーブランド、ピッツバーグなどのかつての工業都市が衰退する一方で、成長し続けているポートランドとその周辺都市の大都市圏について紹介。
ポートランドの大都市圏には3つの郡と25の都市があり、人口は約130万人。各郡や各都市にそれぞれ首長はいるが、それとは別に直接民主制で選ばれる地域政府の存在が大きく、クラスター状のコンパクトシティが形成されているという。自転車専用レーンを設けた公共交通システム、森林保全などでも成果を上げていると、西浦教授は話した。
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わが国でも住民投票で自治体の首長や議員を罷免できる制度がある。また、原発施設、ごみ処理場などの嫌悪施設の建設是非を問う住民投票が行なわれるが、これらは首長や議会に対して圧力をかけることは出来ても法的決定権を持っていいないのが現状ではないか。
ポートランドのように住民投票によって大都市圏の憲法とも言うべき「住民憲章」が設けられているのは驚きだ。
わが国ではあり得ない制度だろうが、土地所有者の声が街づくりに反映できるようにしたり、投票権者に在勤者や外国人居住者にも門戸を広げ、さらに20歳以上という年齢制限も引き下げたりして、住民の声が行政に届くようにすべきだと思う。議員にしたくない候補者に対しては「拒否」権投票が出来るようにすれば、選挙の投票率は高まるはずだ。
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東京-名古屋間を40分で結ぶリニアの開業予定は2027年だから随分遠い将来のことだが、停車駅となる橋本を中心に多摩エリアの住宅開発などがどうなるか予測してみた。
橋本は、JR橋本駅すぐの相原高校に駅舎ができる。近接するイオンの商業施設はドル箱になるはずだ。マンションの単価は現在、駅近で180万円ぐらいだが、調布と同じぐらいの300万円くらいになるかもしれない。周辺エリアの地価が高騰するのは間違いない。京王や小田急が津久井方面への延伸を打ち出すかもしれない。相模線や八高線の輸送力増強も図られるはずだ。町田、相模大野などの小田急線沿線の住宅需要も高まるはずだ。問題は、橋本にはホテル機能がないことだ。イベントなどは品川などの都心に奪われそうだ。
八王子市もリニアや圏央道の開業によって大きな恩恵を受ける。石森孝志市長は市のホームページで「本市は経済、文化などあらゆる面において”多摩のナンバーワン”であり、多摩地域の牽引役として相応しい真の多摩のリーディングシティを目指している」「私の大きな目標の一つに『中核市への移行』があります。実現すれば東京都初となり、子育て、高齢者、環境、都市計画、景観行政など様々な分野で独自の取組みが可能となる」と、都市間競争に打ち勝つ意欲を見せている。
わが街、多摩市はどうか。どうも相模原市や八王子市の攻勢にたじたじの観がしないではない。デパートもホテルもコンサートホールもあり、丸善もブックオフもある。大学もある。絶滅危惧種の野草も咲く。ポテンシャルはどこにも負けないと思うが、マンションの分譲単価は200万円が大きな壁になっている。
立川、町田、調布、府中などに多摩市は全然勝てない。日野市も豊田駅前で再開発が行なわれている。都市間競争に敗れる前に各市に連携を働きかけ、キャスティングボードを握って欲しいと思う。「多摩ニュータウン学会」も装いを新たにし、「多摩メガロポリス推進協議会」とでもしたらどうだろう。