年頭所感 アセット・ノウハウ・人財を総動員し社会課題解決へ 三菱地所・中島篤社長
中島氏
グループ一丸となり世界一のデベロッパー目指す
2024年は、「変化の年」となった。日銀によるマイナス金利解除や日経平均株価が史上初の4万円台を記録するなど、日本経済における大きな転換点が訪れた。一方、世界に目を向けると、出口の見えない紛争により地政学的リスクは依然として高まり続けている。また各国の政治体制や方針にも変化が見られた。このような状況下で、持続可能な成長を遂げるためには、内外の課題に的確に対応し、価値観や環境の変化を見据えた柔軟な取り組みが求められる。
ビジネス環境の変化・高度化が進み、企業は人的資本経営へシフトを加速させている。オフィス整備をコストではなく投資と捉え直す流れが顕著になってきており、不動産デベロッパーには「床貸し」を超えた付加価値提供が求められている。当社も昨年9月「グラングリーン大阪」の先行開業を迎え、今年3月には南館の開業も予定されているが、「みどりとイノベーションの融合」という新たな価値提供には強く手応えを感じている。国内外各都市で、まちにどのような価値を生み出すべきかを柔軟に考え、求められる魅力的なまちづくりを進めていく。
2025年は、長期経営計画2030の折り返し地点を迎え重要な年となる。2024 年に「Be the Ecosystem Engineers」を共通基本方針とし、「Return to Basics(原点回帰)」を目標達成に向けた一つの指針として掲げた。変化の時代だからこそ原点に立ち返って不動産事業の「稼ぐ力」を底上げするとともに、当社グループと社会、双方の持続可能性を確立すべく、アセット・ノウハウ・人財を総動員して事業を通じた社会課題の解決を目指す。
まちづくりを通じた付加価値提供を加速させ、それを当社リターンにしっかりとつなげていく1年になる。グループ一丸となって未来を見据えた挑戦を続け、世界一のデベロッパーを目指していく。
年頭所感 大義あれば「妄想」⇒「構想」⇒「実現」へ 三井不動産・植田俊社長
「産業デベロッパー」という「プラットフォーマー」として
社会のイノベーション・付加価値の創出に貢献
謹んで新年のお慶びを申しあげます。
昨年は歴史的な選挙イヤーとなり、米国大統領選挙でのトランプ氏勝利、日本では衆議院総選挙の結果、石破首相による少数与党政権となりました。日本経済においては、日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新、実質賃金がプラスに転じ、日銀の利上げにより「金利のある世界」が戻り、デフレから脱却し成長型経済へ向かう「時代の転換点」ともいえる歴史的な1年となりました。
このような転換期において、昨年、当社グループは、新経営理念と長期経営方針「& INNOVATION 2030」を策定し、「新たなスタート」を切りました。これからは、付加価値が正当に評価され、イノベーションが加速する時代です。不動産デベロッパーの枠を超えた「産業デベロッパー」という「プラットフォーマー」として、社会のイノベーション・付加価値の創出に、これまで以上に貢献してまいります。個別プロジェクトでは、当社初のアリーナ事業である「LaLa arenaTOKYO-BAY」が開業、「築地地区まちづくり」では、事業予定者に選定され、東京の国際競争力を高め、都民に愛され、世界中から人々が集まり、賞賛されるような、魅力的で先進的なまちづくりを進めていきます。
今年は、長期経営方針2年目の年として真価を問われる1年と捉え、一人ひとりがいかに付加価値を創出し高められるかを念頭に置き、事業に取り組んでまいります。突拍子もない「妄想」でも、そこに大義があれば仲間が集まって「構想」になり、勇気があれば「実現」につながっていきます。多様な変化に適応しながら、イノベーションを起こし、付加価値を創出することで、日本の産業競争力に貢献していきたいと考えています。また、首都圏・愛知・台湾で7物件の商業施設の開業を予定しており、当社の強みであるリアルの場の優位性を活かして、スポーツ・エンターテインメントの力を活用し、付加価値を最大化させる街づくりを推進いたします。
最後に、サステナビリティ・環境との共生については、代表事例として、昨年、日本橋にて国内最大級の木造賃貸オフィスビルに着工しました。国産木材の使い道を広げる挑戦を通じて、森林資源と地域経済の好循環への貢献を目指す取り組みを推進しています。100年先の未来の子供たちへこの地球環境を受け継いでいく想いで、持続可能な社会に貢献してまいります。
皆様のこの一年のご健勝とご多幸をお祈り申しあげます。
年頭所感 新中計「新たな始まりと成長」達成に向け全力 東京建物・小澤克人社長
小澤氏
社会課題解決と企業としての成長を両立させ「次世代デベロッパー」へ
昨年は日経平均株価がバブル期以来の最高値を更新したほか、日銀が金利政策を見直し、いわゆるマイナス金利政策を解除して17年ぶりの利上げを実施するなど、日本経済は大きく転換したといえる1年だった。そのような中でも当社は安定した成長を続けることができ、2024年を最終年とする中期経営計画を無事達成できる見込みである。
本年は新中期経営計画を1月16日に公表する。新中期経営計画では、長期ビジョン「次世代デベロッパーへ」で掲げている「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することを目指し、東京建物グループの更なる成長と発展を目指す計画となる。
事業環境の面では、エネルギー価格や建築費の高騰など、我々の事業を取り巻く環境は予断を許さない状況が続いている。
オフィス市場では空室率の低下や平均賃料の上昇がみられるが、リアルなコミュニケーションの場としてのオフィスの重要性の再認識に伴う更なる付加価値の提供が求められている。分譲マンション市場も高価格での成約が続いているが、物価上昇や金利の動向次第では市場に変化が現れる可能性があり、Brilliaブランドの更なる価値向上が重要となる。
当社が参画する東京駅前八重洲一丁目東第一種市街地再開発事業(A地区・B地区)については、2026年の竣工に向けて順調に進捗している。当社も本社移転を予定している本プロジェクトB地区のオフィスでは、心身の健康だけでなく、仕事における満足度ややりがいを含む、総合的な幸福を意味する「ウェルビーイング」をテーマとしている。この言葉は当社グループの役職員にとっても大事な考え方で、これを実現するためには、一人ひとりが自らの仕事に誇りを持ち、最大限の力を発揮できる企業文化を育むことが大切だ。その中で、持続的な企業価値の向上を実現し、社会にとって必要とされる会社であり続けるために新社長として全力で取り組みたい。
本年は新しい中期経営計画をスタートさせる当社グループにとって「新たな始まりと成長」を象徴する年である。次のステージへの第一歩を進む年ともなるよう、社員一丸となって、目標達成に向けて邁進していきたい。
年頭所感 5月に新中計「強靭化フェーズ」発表 東急不動産HD・西川弘典社長
テーマは都市間競争力強化 GX実現、地域資源価値最大化の3つ
昨年はインフレ経済への転換点という大きな節目を迎えた。足元の不動産市場は仲介市場の好調など良好な状態を維持している。ただ、国内の金利情勢など、そして海外に目を向ければ米国でのトランプ政権への政権交代、ウクライナ戦争、そして韓国の内政不安などリスク要因は枚挙に暇がないが、今こそこれまでの傾向延長にない高い成長や売上拡大を図り、利益を生み出す好循環へのシフトを模索する機会だ。金利のある世界を意識して、顧客に本当に価値があると認められる商品・サービスの提供に加えて、「スピード感」を今まで以上に意識しながら事業に取り組んでいきたい。
最重要拠点の「広域渋谷圏」では、昨年4月に新しい体験価値を享受できる場所「創造施設」を目指す東急プラザ原宿「ハラカド」が開業し、昨年7月には渋谷最大級のスケールとインパクトを誇る“次世代型ランドマーク”「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」の街開きを迎えるなど、複数の大型再開発で旺盛な不動産需要の取り込みを図ったほか、線路や幹線道路をまたぐデッキを新設するなど課題だった渋谷駅周辺のバリアフリー化も同時に進めることができた。また当社グループは「環境経営」に注力しており、具体的には再生可能エネルギー100%のデータセンターを北海道石狩市で着工するなど再エネ電気を活用した事業展開のほか、広域渋谷圏や長野県の蓼科でTNFDに基づく生物多様性の取り組みを積極的に進めてきた。
当社グループは今年5月、新しい中期経営計画を発表する。2030年度までの 10年間の長期経営計画における前半戦の再構築フェーズは、外部環境の追い風もあり全ての財務目標を2年前倒しで達成することが出来た。後半戦の「強靭化フェーズ」では、強固で独自性のある事業ポートフォリオを構築していく。新中期経営計画の6年間では、金利上昇影響の顕在化に加え、AIの技術革新による付加価値の定義の変化や、富裕層、アッパー層が増えたことによる消費の二極化の進行、また脱炭素などの環境価値が事業活動の「付加要素」から「前提条件」となり転換していくと考える。新しい中計では、強靭化フェーズにおける重点テーマとして、広域渋谷圏戦略を推し進めることによる「国際的な都市間競争力強化」、再生可能エネルギー事業を中心とした「GXの実現」、そしてリゾート事業に代表される「地域資源の価値最大化」の3つのテーマが重要だと考えている。その実現のために財務面と非財務面を統合した価値創造を推進していく。
年頭所感 3月に複合施設「ポラステクノシティ」開業 ポラスG・中内晃次郎代表
中内氏
木の魅力や交流と学びの場提供し、地域との繋がり強化
2025年は、昨年7月の日銀による政策金利の引き上げ以降、「金利のある時代」が復活したことにより、長く続いたデフレ経済からインフレ経済に切り替わるとともに、モノの価格を上回るレベルで賃金レベルの上昇を目指すことになります。
国際情勢に目を向けると、ウクライナ情勢、中東の動きやトランプ氏のアメリカ大統領就任など日本経済に影響を及ぼす大きな出来事が予定されており、引き続き注視していく状況にあります。
一方で国内では、昨年1月1日に令和6年能登半島地震が発生し、夏には南海トラフ地震臨時情報の発表がされるなど今後も更なる災害等の対策及び備えが必要となります。
2024年の住宅業界は、土地や資材価格の高止まり及び新設住宅着工戸数の減少による市場規模が縮小傾向となっております。当社においては、地域密着経営により地域の魅力を維持、向上させる街づくりを推進し、新築戸建事業、不動産仲介事業が堅調な一年となりました。
本年は、4号特例の縮小による構造計算業務の拡大が予想されます。当社では、予てより全棟構造計算を行ってきましたので引き続き注力していく所存です。また、プレカットと設計業務を合わせたサービス提供により安心、安全な木造建築の供給に寄与できると考えております。
3月には、ポラスグループ初の複合施設として、「ポラステクノシティ」がオープンします。木の魅力や交流と学びの場として地域との繋がりをより一層大切にしてきたいと思います。
予測困難な時代だからこそ、どのような局面においても、冷静に対応し、お客様にご満足いただける商品・サービスの提供に努め、困難を乗り越えていける一年にしたいと考えております。
年頭所感 今年を表す私の一文字は「心」 大和ハウス工業・芳井敬一社長
芳井氏
人材育成 社内起業制度に総数約900件の応募
2024年は、元日に「令和6年能登半島地震」が発生し、さらに9月には「能登半島豪雨」にも見舞われたことにより、13万棟以上の住宅が被害を受け、住まいのあり方が問われた年でした。また、住宅業界では政策金利の引き上げや物価上昇などが影響し、厳しい環境が続きました。このような状況下、当社グループは開発物件売却の順調な進捗や海外事業の業績拡大などもあり、2025年3月期の第2四半期決算において過去最高の業績を達成することができました。役職員全員の頑張りに心から感謝申し上げます。
しかし、好業績でも決して慢心してはいけません。挑戦し続ける企業として、常に変化し、成長していくために、新年のスタートに際して、皆さんにお願いしたいことを3点お伝えします。
1点目が、創業100周年をつくるリーダー人財を育てることです。当社の社是は「事業を通じて人を育てること」から始まります。人を育てることが事業の始まりであることを説いていますが、企業の発展も衰退も従業員の育成にかかっているということです。現在、当社では30年後の2055年に“将来の夢”を実現できる人財を育てるため、様々な制度を拡充させています。昨年に開始した、人財育成を兼ねた社内起業制度では、総数約900件の応募がありました。広い視野・視点で世の中の変化を捉え、次のビジネスの創造や業務改革に取り組むことは成長の大きな機会となります。皆さんも部下や後輩、そして自らを成長させるチャンスと捉え、積極的に挑戦してください。
2点目が、本年を表す私の一文字「心」です。日々の業務において「その行動、発言、対応に心がこもっているか? 」「それは真心か? 」と自問してください。大和ハウスグループは、協力会社や取引先などお世話になっている多くの方々の力添えがあってこそ成長して来られました。社員一人ひとりが相手の立場に立ったコミュニケーションを大切にして、感謝の気持ちを忘れず、真心を持って行動し続けてください。
最後に、「会社は社会の公器」です。当社は本年4月に創業70周年を迎えます。これは多くのステークホルダーに支えられてきた証しであり、人々に喜ばれる事業を通じて社会に還元しなければいけません。本社のある大阪では、2025年日本国際博覧会や大阪マルビルの建て替えなどを通じて、地域社会への貢献を進めています。各事業所でも地域と共にあることを改めて認識し、お客さま、取引先に感謝の意を示す機会を設けてください。
本年も様々な課題があると思いますが、皆さんとともに全力で取り組んでいくことをお伝えし、私の挨拶とさせていただきます。
積水ハウスCVC 生成AIリーディングカンパニーPFN社に出資
積水ハウス、積水ハウス イノベーション&コミュニケーション(積水ハウス イノコム)は12月23日、コーポレート・ベンチャー・キャピタル・ファンド(CVCファンド)「積水ハウス投資事業有限責任組合」を通じ、生成AI分野で先進的な取り組みを行うPreferred Networks(PFN社)へ出資したと発表。PFN社の先進的な生成AI技術を活用し、営業、設計、施工、アフターフォローといった住宅事業の各業務においてさらなる深化を目指す。
同CVCファンドは、積水ハウスグループのオープンイノベーションの取り組みを加速させるために2024年4月に設立。本件は4社目の投資実行となる。
PFN社は2014年3月設立。生成AIやAI半導体、先端技術を応用したソフトウェア・ハードウェア・ネット ワーク技術の研究・開発・販売を行っている。
野村不HD 都心型戸建ての安定供給のため戸建て施工会社・中里建設を傘下に
野村不動産ホールディングスは12月19日、戸建て施工会社・中里建設の株式を取得し、2025年4月1日付で野村不動産グループ入りすると発表した。都心型戸建事業の安定供給体制構築が目的。
中里建設は中里建設は2004年6月設立。本社は埼玉県新座市、社長は中里且也氏、資本金は500万円、従業員数は23名。これまで戸建の施工を中心に累計1,000戸超の戸建て施工実績があり、とくに難易度の高い都心エリアでの施工を強みとしているという。
野村不動産は、都心型戸建事業に力を入れており、これまで累計150戸(2024 年12月現在)を供給している。今後、建築費上昇や労働力不足など受注先の選定は難易度が増す可能性があり、中里建設をグループに迎えることで都心型戸建事業の安定的な供給体制を構築する。
リサイクル部材だけの「循環する家(House to House)」 2050年に発売 積水ハウス
積水ハウスは12月4日、「循環する家(House to House)」プロジェクト発表会を開催し、住宅業界のサーキュラーエコノミー(以下、CE)移行を目指し、3万点以上からなる家の部材を見直し、リサイクル部材(リユース、リニューアブルなど含む)だけで構成された家「循環する家(Circular Design from House to House)」(House to House)を2050年までに発売すると発表した。
発表会で同社代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、「当社は①脱炭素②生物多様性保全③資源循環を三本柱にCEに取り組んでおり、これまでに工場、新築施工現場、リフォーム、アフターメンテナンスにおいてゼロエミッションを達成しており、『資源循環センター』では80分別し再資源化している。この取り組みは、国際的な非営利団体CDPによる、世界でたった12社、国内に限ると2社(もう1社は花王)しかないトリプルA認定を取得している。今後も解体廃棄物の回収、製品化、リサイクル・リユース、さらに解体を前提とした新築段階での設計にも取り組み、本日、『循環する家(Circular Design from House to House)』プロジェクトの開始を宣言する」と挨拶した。
その一方で、「しかし、これは非常に難しいプロジェクト。我々だけで実現できるものではない。すべてのサプライヤー、住宅業界、ステークホルダーと協力しないと実現しない。一致団結して開発・研究を重ねて住宅業界の未来を変えたい」と述べた。
続いて登壇した経済産業省GXグループ資源循環経済課・水上智弘氏は、CEの市場(静脈産業)は今後大幅に拡大が見込まれるとし、日本国内では2020年50兆円から、30年80兆円、50年120兆円の市場規模を見込むとする一方で、マテリアル輸入の増大、価格高騰による国富流出、国内物価上昇のリスクもあり、CE性を担保しない製品は世界市場から排除される可能性があると図示し、対応が遅れれば、成長機会の損失だけでなく、廃棄物処理の海外依存の可能性があると指摘した。
◇ ◆ ◇
記者はこの日(4日)、RBA野球大会の取材がありそちらを優先し、同社の発表会はアーカイブで視聴することに決めていた。視聴したのは昨日(7日)だった。その2日前(5日)には、「家具の買取再販は2030年にはサーキュラー デザイン(CD)のスタンダードになると聞いたのにいささかショックを受けた」と、12月3日に行われた三井デザインテックのメディア向けセミナーに関する記事を書いた。その2日後に「循環する家」だ。Wショックを受けた。
三井デザインテックも積水ハウスもそこまでの具体的な工程表・タイムテーブルは示さなかったが、世の中は劇的に変わるということだ。
一つ疑問も湧いた。CE、CDは避けられないにしろ、使用・流通しているケミカル製品などを回収し新たな製品に再生するのに要するコスト、CO2消費量と、ケミカルを中心とするマテリアル素材を使って同種の製品を製造するコスト、CO2消費量とをはかりにかけたらどうなるのかということだ。
例えば、いま世界中で注目されているプラスチック規制。三井デザインテックのセミナーではプラスチック由来の「BENCH SOFA」も紹介されたが、多分、再生コストは新製品製造コストの数倍かかっているはずだ。(時価10万円と思われる本革の椅子を再生するコストはいくらもかかっていないはず)。つまり、仲井氏も話したが、解体を前提とした、環境に負荷を与えない部材の採用・設計が肝になると記者は思う。
だとすると、住宅は木造以外ありえない。坂茂氏の「紙の家」もあるかもしれないが、そもそも木由来の紙をつくるのには大量の水を消費する。「紙の家」は限定的にならざるを得ない。
発表会でもそれらしきヒントも与えられた。同社R&D本部総合住宅研究所長・東田豊彦氏は「かつてわが国の住宅は木と石でできていた。立ちどまることも必要」と語った。質疑応答では「もともとわが国の住宅はサーキュラーエコノミーだった。(それを壊したのは、大量生産・消費してきた)プレハブにも問題があるのではないか」という記者の質問も飛んだ。
確かに、この記者の方の指摘は正しい。小生は昭和24年生まれだから、もちろん住宅は木と石(土と紙と植物も重要な役割を果たしていた)でつられていた。電化製品などなく、エネルギー源は薪炭だった。だが、しかし、質問した記者の方も化石燃料、ケミカル製品のおかげで生きているはずだ。小生などは薪炭時代への逆戻りなどまっぴらだ。
もう一つ、考えたことがあった。仲井氏も紹介した環境省のCDの定義だ。同省は「従来の3Rの取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等を目指すもの」とある。
この定義に照らせば、これまた木造しかありえないと思う。同社ESG経営推進本部業務役員環境推進部長・井阪由紀氏は「循環する家」はどのような工法かなどについては示さなかったが、築60年の「セキスイハウスA型」を紹介した。これもヒントになるのか。おそらく同社は、重量鉄骨と木造由来の2タイプを発売し、選択できるようにするはずだ。あと26年。記者が生きていたら100歳だ。予想は的中するか。
コルク・食品廃棄物をオーナメントに 三菱地所「サーキュラーシティ丸の内」第5弾(2024/12/8)
「金利0.01%で55%が預貯金は正気の沙汰じゃない」「不動産は愛」シーラ杉本氏
杉本氏
既報の通り、シーラテクノロジーズ(以下、シーラ)とクミカ(旧リベレステ)は2025年2025年6月1日付で経営統合すると発表した。シーラ取締役会長・杉本宏之氏は発表会でシーラのMISSION「世界中の不動産投資を民主化する」、VISION「愛とテクノロジーで世紀を超えて永続する」、TARGET「不動産資産運用プラットフォームを通じ社会問題解決に挑む」を紹介し、「民主化(非民主的)とは何か」「不動産への愛」とは何かについて、〝記事はラブレター〟〝人生は愛〟がモットーの記者の質問に次のように答えた。
「非民主的というのは、わが国は島国という地政学的な要因と、太平洋戦争以前のABCD包囲網下でなにもかも自分たちで調達しなければならなかったという歴史的な背景による国民性の問題だと思っています。さすがに(個人の金融資産は約2,141兆円)のうち55%が0.01%の金利で貯金を続けているのは、私の個人的な見解では正気の沙汰ではないと。パブル崩壊とリーマン・ショックを経験しているので、不動産に対するアレルギーがあると思うんですが、これは是正しないといけないという使命感を持っています。不動産投資について、一つひとつ丁寧に説明し、理解を求めていくしかないと思っています。非民主的というのは国民性に起因するというのが私の考えです」
(杉本氏のいう通りだと思う。ただ、これは不動産業に限ったことではないが、消費者保護を宅建業法でうたわなければならないのは、かつて消費者を欺く商法があったからだ。さらにまた、おとり広告が後を絶たない現状がある。業界全体がしっかり取り組まないといけない)
「不動産への愛」については、「前回の失敗から学んだのは、自分たちがしっかり手掛けたプロジェクトは一つも失敗事例がなかった一方で、利益を出そう、業績のためにやめにやろうとした仕事はことごとく失敗したということです。その反省点に立って考えたのは、モノのづくりへの愛です。まず、創業者が情熱をもって命をかけて全力で事業に取り組まないとベンチャー企業の成長はない。『利回りくん』などのサービスもそうですが、面白い、楽しいとお客様に触れていただいていると実感している。自信を持って言える。お客様に対してやらなければならないことと、自分たちがやりたいことがようやく一致するようになってきた。ワンルーム事業としてありえない共用部分の充実を図ってきたことが結果につながってきた。創業者と社員のモノづくりへの情熱と愛、これが全てです」
シーラとクミカが経営統合統合後クミカはシーラHDに社名変更/億ション即完(2025/12/2)
会見場(シーラテクノロジーズで)