三菱地所 インド3案件目 ベンガルールで1,500戸超の住宅開発に参画
三菱地所は2月26日、インド有数の企業グループAditya Birla Group傘下の不動産会社Birla Estates Private Limitedが進めるベンガルールでの大規模分譲住宅事業「Birla Evara(ビルラ イヴァーラ)」に参画したと発表した。
T産業を中心に発展しているベンガルールの市街地南西部の敷地面積約104,000㎡に合計13棟、戸数1,500超(延床面積約36.4ha)の分譲住宅を供給する。同社の事業比率は51%。竣工は2031年の予定。ベンガルールでの分譲住宅開発は日系企業として初の試み。
同社のインドでの開発事業は、チェンナイのオフィス開発(貸床面積約24ha)、デリー近郊の物流施設投資(同約18ha)に次ぐ3案件目。インドで初の分譲住宅事業への参画となる。
三井不・経年優化&積水・経年美化 先に発信したのは?〝三井のすずちゃん〟新CM
三井不動産は2月27日、俳優の広瀬すずさんが主人公を務めるTVCM「三井のすずちゃん」シリーズ「経年優化」篇(30秒)を、同日から放映開始したと発表した。
同作品は、“三井のすずちゃん”こと広瀬すずさんが、同社の街づくりや施設、不動産業を超えた新しい取り組みを紹介していくシリーズCM。今回の「三井のすずちゃん」シリーズは、同社グループが目指す街づくりの理念である「経年優化」がテーマ。広瀬さんが真剣な眼差しで友人たちとかるたイベントに臨むシーンから始まり、「経年優化」のカルタの札が読まれた瞬間に反応し、「はい!」と声を上げて勢いよく札を飛ばし、勝ち取った札に書かれた一句を流暢に読み上げ、日本橋の街を歩きながら「『経年優化』の街づくり」について無邪気に語るというもの。TVCM内で表示される文字は広瀬さんの直筆となっているという。
広瀬さんは、同社のリリースの「時を経るごとに魅力が増していく『経年優化』というワードが今回のCMテーマになります。長年、俳優として活躍している広瀬さんですが、「大人になったな」「成長したな」と感じたような出来事はありますか? 」との問いに「10 代や20代前半の時よりも、心のゆとりは自分でも自覚があるほどできたと感じています。焦らなくていい時間が増えて、マイペースに自分がやりたいことも1つずつ明確に年々なってきていて。ゆとりができてのんびりできていることに対して大人になったなと感じます。年齢を重ねて経験も増えて、自分の価値観や感性がちょっとずつ変化した上で、こうなったんだと思うと、大人になったのかもしれないなと思います。明確にやりたいことや、『こういうシーンにしたいな』『こういうお芝居をしたいな』という欲が出てきたことが、個人的には嬉しくて。だからこそ1つ1つに集中できますし、好奇心も生まれて楽しいです」とコメントしている。
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記者はテレビをあまり見ないのだが、〝三井のすずちゃん〟も〝あなたはいつだって、今がいちばん好き〟〝三菱地所と、次に行こう〟〝環境先進マンション〟〝森と人は、良き隣人になろう〟などは目と耳に飛び込んでくる。最近は阪急阪神不動産、関電不動産開発が積極的にCMを流しているその意図はよくわかる。
なぜ、この新CMについて触れるか。今回のCMで広瀬さんが読み上げる「時を経るごとに魅力が増していく」は秀作ではないような気がするが(記者はまだそのCMを見ていない)、「経年優化」はずいぶん前から同社が記者会見で代表者が口にし、リリースなどでも記載している言葉だ。一方でまた、同社ほどではないが、積水ハウスは「経年美化」を前面に掲げている。どちらが先にこの言葉を発信したかを確認するためだ。どっちでもいいと思う人はいるかもしれないが、記者は極めて大事なことだと思う。「経年優化」も「経年美化」も素晴らしいが、先に言ったほうが勝ちだ。だれかが先につくった道をついていくのは簡単だ。先に発信したほうを絶賛したい。
「経年」は昔から使われていた言葉で、「年数を経ること」(広辞苑第6版)という意味だ。しかし、意味は何となく分かるが、「優化」は完全な造語だ。広辞苑にもない。また、「美化」は「美しく変化させる」(同)「実物以上に美しく表現すること」(同)とあるように言葉としてはあるが、「経年」と「美化」を結びつけた言葉はない。
この「経年」「美化」で連想される言葉に「経年劣化」がある。これは一般名詞として使われているが、いったいこれらの言葉はいつからどこが最初に使ったかをChat GPTに聞いてみたら、「『経年劣化』は、古くから使われている言葉で、工業や建築、材料科学の分野で一般的に使われてきました。特に1960年代以降、耐久性試験や品質管理の分野でよく見られるようになりました」「『経年優化』は比較的新しい造語で、…初出の正確な時期は不明ですが、2000年代以降に一般的に使われるようになったと考えられます」「『経年美化』も比較的新しい表現で…この言葉も2000年代以降に普及した可能性が高いです」と答えた。
ChatGPTも初出はわからないようだ。記者も分からない。なので、今回の三井不の新CM制作を担当している代理店と、積水ハウス広報に〝どちらが先かを〟聞いているのだが、問い合わせてから4時間が経過しても双方からの返事はない。(一生懸命確認しているのが、どうでもいいこととしてほったらかしにしているのかわからないが、どちらが先に返事がくるか)
みなさんはいかがか。どっちが先にこの言葉を発信したか、答えられる人はいないのではないか。
吉永小百合さん「あなたはいつだって、今がいちばん好き」に胸キュン(2024/7/29)
〝3番人気〟新社長・大友浩嗣氏の得意技は「現場主義」 大和ハウス マスコミ懇談会
芳井氏(左)と大友氏(パレスホテル東京で)
大和ハウス工業は2月20日、マスコミ懇談会を開き、同社代表取締役社長CEOの芳井敬一氏をはじめ、4月1日付で新社長に就任する取締役専務執行役員・大友浩嗣氏ら役員が出席。報道陣との交流を深めた。
懇談会の冒頭、芳井氏は「当社には3つの〝切る〟がある。一つは新しいことに踏み切る、2つ目は合理的に踏み切る、そして3番目は思い切る。この3つを大事にして職務を全うしていく」とあいさつ。次期社長の大友氏を紹介したが、「週刊D社の次期社長予想記事では大友は3番目候補だった(爆笑)」と、(贔屓にしているはずの)D社をからかった。
続いて登壇した大友氏は「(社長交代を発表した前日の)12日夜8時半ころ、芳井から話があると連絡が入って、なんの準備もしていなかったが、明日、社長交代の記者会見をやる、国内事業をやってほしいと。これまで住宅事業本部長を7年、経営戦略本部長を2年半、海外本部長を1年務めたが、入社してから33~34年間は本社とは縁がない地方担当だった。自分の得意技は、その時に会得した現場主義。これを基本にみんなのモチベーションを挙げで元気な大和ハウスになるよう尽力する。芳井の圧を感じるが…(爆笑)」と語った。
懇談会の締めで、同社代表取締役副社長技術統括本部長・村田誉之氏は「大友さんは品行方正。やりたい放題でいい、大胆にやっていただきたい。芳井代表と二人三脚(国内と海外という意味か)で音頭をとれば、役職員はみんなで舟をこぐ」と締めくくった。
昨年と同様、懇談会後には参加者全員にランの鉢がプレゼントされた。
村田氏
懇談会会場((パレスホテル東京で)
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同社の社長交代は近いと小生は考えていたので、大友氏の新社長就任は極めて妥当だと思った。なので、D社の予想記事で大友氏が〝3番人気〟だったのには驚いた。芳井氏も大友氏も〝1番人気〟を暴露したようだが、小生は耳が遠く、一番人気の方がどなたか全然わからなかった。心当たりがある方ではなかった。
D社のF記者さん、どなたを1番人気にしたかわからないが(小生も昔、この種の記事を書いたことがあるが、的中したことはほとんどなかった)、これから社長になるには第一に現場をよく知っていること、第二に経営を学んでいること、第三にグローバルな視点を持っていることだ(バイリンガルは欠かせない)。この3つをチェックすれば候補者は絞れると思うが、もう一つ欠かせないのは、記者自身が現場を知らないといけないということだ。
大和ハウス新社長・COOに取締役専務執行役員・大友浩嗣氏芳井社長は会長へ(2025/2/16)
住友林業と大東建託 幅広い分野で業務提携 国内最大級の2×4材製造目指す
光吉氏(左)と竹内氏
住友林業と大東建託は2月13日、両社の企業価値向上と脱炭素社会の実現に向け森林から住宅・不動産まで国内外の幅広い事業分野で業務提携することに基本合意したと発表した。合意したのは①海外事業分野②国内事業分野③木環の杜・国産材関連分野④その他。
提携の第一弾として、大東建託が住友林業子会社の木環の杜(こわのもり)(本社:福島県いわき市)に出資。地域のステークホルダーとも協働し国産構造用製材(ディメンション材※)の安定した供給・調達体制を構築し、国産材の利活用拡大と付加価値の最大化を図る。木環の杜が新設する四倉工場(福島県いわき市:2026年3月稼働予定)は年間原木投入量11万㎥を計画し、国内最大規模となるディメンション材の製造を目指す。
住友林業代表取締役執行役員社長・光吉敏郎氏は「木材の付加価値最大化と国産材の利用促進に向けた木材コンビナートの設立を掲げており、第一弾が木環の杜でのプロジェクトです。賃貸住宅の最大手である大東建託様と木造注文住宅を手掛ける当社の協業で質の高い国産材の構造用製材を供給し、国内林業の活性化に寄与していく」と、大東建託代表取締役社長執行役員CEO・竹内啓氏は「当社は2007年に地産地消による国産ディメンション材の利活用を開始しました。この度、住友林業様と森林から住宅・不動産まで国内外の幅広い事業分野において協業し、脱炭素社会の実現に貢献していきます」とそれぞれコメントを寄せている。
※ディメンション材とは「2×4(ツーバイフォー)材」をはじめとする構造用製材。主に木造枠組壁工法(2×4工法)による住宅に使用されている
大和ハウス 新社長・COOに取締役専務執行役員・大友浩嗣氏 芳井社長は会長へ
大友氏
大和ハウス工業は2月13日、新しい代表取締役社長・最高執行責任者(COO)に取締役専務執行役員・大友浩嗣氏が、現在の代表取締役社長・最高執行責任者(COO)・芳井敬一氏は代表取締役会長・最高経営責任者(CEO)・海外本部長にそれぞれ4月1日付で就任すると発表した。異動の理由は、次期中期経営計画を見据え、経営体制を変更することで、国内外での事業展開を更に加速させるためとしている。
大友氏は、1959年8月31日生まれ。1984年12月、同社入社。2011年4月、執行役員、2015年4月、常務執行役員、2022年10月、経営管理本部経営企画部長、経営戦略担当、2024年4月、取締役専務執行役員に就任(現)。
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同社が社長交代のリリースを発表したのは2月13日の午後2時過ぎ。ちょうどその時、記者は三菱地所ホームの神戸元町の一等地での木造2階建て延床面積約20坪のメディア向け見学会に出席していた。
異動のニュースを知ったのは午後7時過ぎだった。リリースには、同日午後5時から大阪証券取引所ビルで芳井氏と大友氏が同席して記者会見を開くとあった。残念至極。神戸から移動しても楽々間に合った。SNSなど一度も利用したことがない弊害がこんなところで現れた。
同社のこれまでの社長の任期からして、交代は近いと見ていた。最近の芳井氏の動き言動からして〝仕上げ〟の段階にあると思っていた。
旭化成ホームズ 新社長に大和久裕二・取締役兼専務執行役員、川畑社長は会長へ
大和久氏
旭化成ホームズは2月6日、新しい代表取締役社長兼社長執行役員に取締役兼専務執行役員・大和久裕二氏が、現在の代表取締役社長兼社長執行役員・川畑文俊氏は代表取締役会長にそれぞれ4月1日付で就任すると発表した。2025年4月に新たにスタートする中期経営計画の実行に向けて経営体制の刷新を図るため。
大和久氏は1963(昭和38)年7月19日生まれ。満61歳。千葉県出身。1987(昭和62)年3月、中央大学法学部卒。同年4月、旭化成工業入社。2008(平成20)年4月、旭化成ホームズ東京営業本部マーケティング室長、2018(平成30)年4月、同社執行役員兼埼玉・北関東営業本部長、2022(令和4)年4月、同社取締役常務執行役員兼マーケティング本部長、2024(令和6)年4月、同社取締役専務執行役員兼マーケティング本部長に就任。
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川畑氏が旭化成ホームズ社長に就任したのは2017年4月。その前の2016年度の旭化成の住宅部門の売上高は5,702億円、営業利益595億円で、主力の建築請負部門の売上高は4,043億円、不動産部門は1,094億円、リフォームが561億円だった。
2025年3月期の予想は売上高10,000億円、営業利益870億円。売上高の部門別予想は建築請負4,140億円、不動産部門2,230億円、リフォーム585億円、海外3,000億円、その他45億円だ。この8年間で売上高はほぼ倍増となるが、不動産部門と海外部門が業績伸長に貢献した。
今回の社長交代は、三段跳びに例えるなら、業界最重量の川畑氏がホップ、ステップで勢いをつけ、大和久氏は更なる飛躍を目指すジャンプの役割を担う。
どこまで伸ばせるか。記者は不動産事業がカギを握ると見ている。この日(2月6日)、旭化成不動産レジデンスの不動産開発事業を吸収分割し、旭化成ホームズが承継すると発表したのもその布石だと思う。不動産開発事業の競争は厳しいが、同社の強みである建て替え、再開発に注力するのではないか。独自の開発もこのところ目立つ。新規事業にも注目したい。大和久氏には野球部の強化・応援に力を入れていただきたい。
大東建託 不動産開発事業強化へ デベロッパーのアスコット子会社化
大東建託は1月31日、スタンダード市場上場のアスコットを公開買付けにより取得し、子会社化することを決議したと発表した。アスコットの親会社・森燁有限公司(所有割合44.96%)と、第2位株主のSBI ホールディングス(同32.17%)と同日付けで本公開買い付けに応募する旨の契約も締結した。買い付け額は351億円(普通株式1株260円)。
アスコットは1999年4月設立。首都圏を中心に分譲マンションや賃貸マンション事業を展開してきたが、一方で、2024年9月30日時点で、スタンダード市場の上場維持基準である流通株式比率25%以上を充足していないなどの経営課題を抱えていた。
大東建託は、中期経営計画で2030年までに不動産開発事業をグループの柱の一つとすることを目指している。
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少し驚いたが、まあ納得できる。大東建託が不動産開発事業に力を入れることを読めなかったのが悔しい。同社は昨年10月、経団連会館で記者懇親会を開いた。竹内啓社長は体調不良とかで、代わりの方があいさつし、「不動産事業を拡大する」と話した。
記者は同社が分譲事業部門を立ち上げると解釈し、その方に質問したのだが、言下に否定された。あれからわずか3か月だ。当たらずとも遠からず。M&Aのほうがはるかにコスト・エネルギーは抑えられる。
そのアスコット。中央区日本橋・人形町で商品企画に優れたマンションを供給していたというイメージしかない。資金力・情報力に勝る大手デベロッパーとは戦えず、最近は地方に転出しているのではないか。
大東建託が何を考えているかよくわからないが、中途半端なことはしないほうがいいと思う。同社の建設・賃貸事業で培ったノウハウ・資源を生かせば、既存の不動産開発市場に風穴あけることができるのではないか。分譲戸建て、不動産売買・仲介に留まらず、〝地方創生〟〝令和の日本列島改造〟の風の流れをつかむことができるかどうかではないか。
新型コロナ不動産業界再編促すかアスコットTHEグローバル社を連結子会社化(2020/11/14)
従業員給与 年率23.5%アップ 新卒初任給25万円⇒35万円へ 大和ハウス工業
大和ハウス工業は1月20日、株式会社(本社:大阪市、社長:芳井敬一)は、同社従業員の月例給与水準を改定し、2025年4月1日から年収で平均10%アップさせ、新卒社員の初任給を月額25万円から月額35万円に引き上げることを決定したと発表した。
給与水準の改定(ベースアップ)の対象者は正社員1.6万人で、平均昇給率は23.5%、平均昇給額は92,945円。
新卒初任給は大学卒が350,000円(現行250,000円、昇給額+100,000 円=40%)、大学院卒が362,000円(同262,000円、同+100,000円=38%)、高専・専門学校卒が332,000円(同232,000円、同+100,000円=43%)。
大幅な給与水準の改定について同社は、より安心して意欲的に能力が発揮できる環境を整備するとともに、中長期的に事業の成長を担う人財を確保するためとしており、社会情勢や当社業績を踏まえ、特に若年・中堅層への配分を厚くし、年収で約 10%の増加を実現するとしている。
「次世代デベロッパーへ」2027年度事業利益950億円 東京建物 中期経営計画
東京建物は1月16日、2025年度から2027年度までの3年間を計画期間とする中期経営計画を策定し発表。長期ビジョンに「次世代デベロッパーへ」を掲げ、事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することを目指す。
前中計期間(2020年~2024年)の事業環境認識では、新型コロナウイルス感染症の流行による顧客の価値観・行動様式およびマーケット環境の変化、異次元の金融緩和政策の転換、地政学リスクの高まり・顕在化、インフレ・人手不足などによる建築費の急激な高騰を挙げ、事業環境の不確実性は一層高まっており、変化のスピードも加速しているとしている。
中期経営計画の基本方針には、「次世代デベロッパーへ」を掲げ、強靭かつしなやかな事業ポートフォリオの構築により、成長加速・資本効率向上を実現するとしている。
定量目標としては、事業利益は950億円(2027年度)、ROE10%(本中計期間)、配当性向40%(2027年度)とし、財財務指標(2027年度)はD/Eレシオ2.4倍程度、有利子負債は12倍程度としている。
重点戦略は、〝BASE〟(成長の礎)をコンセプトに①大規模再開発の着実な推進②分譲マンション事業の更なる成長③投資家向け物件売却事業の加速④海外事業の拡大⑤サービス事業の拡大⑥新規事業のむ確立-の6つ。事業ポートフォリオ戦略の考え方として「賃貸:分譲・売却:サービス=30%:60%:10%」を維持しながら、成長投資のためのキャッシュ創出および資本効率の向上を図ることから、当初想定より「賃貸」の割合を減らし、「分譲・売却」の割合を増やす方向で見直した。
重点戦略の大規模再開発では、2026年竣工の「八重洲プロジェクト」をはじめ重点エリアである八重洲・日本橋・京橋(YNK)エリアで複数の大規模案件を推進する。
分譲マンションでは更なる成長を目指し、建て替え・再開発へ注力し、本中計期間中に約4,300戸を計上する予定で、年間2,000戸供給体制を目指す。投資家向け物件の売却も加速化し、オフィス、ホテル、物流、商業施設など本中計期間中の売却益計上額は約1,100億円を見込む。
海外事業では、事業利益に占める割合を2030年に10%程度に引き上げる。タイ・中国では分譲住宅に加え、物流施設など多様なアセットタイプへの投資も実施する。
サービス事業では、投資家向けの「不動産マネジメント」と一般消費者向けの「体験型施設運営」に力を入れ、ノンアセット(ライトアセット)ビジネスを拡大する。
新規事業では、アリーナ、複合型スポーツレジャー施設などのスポーツ・エンターテイメント、メガソーラー、データセンターなどのサステナビリティに注力し、ビジネスモデルを確立し、将来の新たな利益の柱となる事業を創出する。
成長を支える経営インフラの高度化では、環境面ではCO2排出量(2019年度比)2030年度まで46.2%削減、再エネ電力の創出・活用、ZEB・ZEHの開発、メガソーラー開発などを行う。社会的取り組みでは人権の尊重、持続可能なサプライチェーンの構築、地域社会への貢献活動を強化する。ガバナンスでは、取締役会の機能強化、リスクマネジメントの強化などを図る。人的資本の拡充では「事業戦略を支える人材ポートフォリオの構築」と「多様な人材の活躍」を両輪として企業価値の持続的向上を実現する。DXの取り組みとしては、デジタル活用により「体験価値」工場、「場の価値」創出、「事業機会」の拡大を目指す。
前中期計画の振り返りとして、2024年12月期(予想)の事業利益は780億円(中計目標750億円)、ROE12.1%(同8~10%)、D/Eレシオ2.3倍、有利子負債11.4倍(同2.4倍、12倍程度)ネット投資額累計約5,060億円(同5,000億円)となり、おおむね中継を上回る見込み。
年頭所感 グループ第二創業期へ。木造建築新時代の幕開け AQ Group・宮沢俊哉社長
宮沢氏
純木造8階建てビルの建築技術から誕生した
AQダイナミック構法と木のみ構法
昨年の能登半島地震、大雨災害に被災された皆さま並びに、ご家族の皆さまには心よりお見舞い申し上げます。
日本における2024年のスタートは非常に困難なものでした。物価の上昇、円安など不安定な経済環境が続いた中、住宅業界においても建築資材の高騰や人材不足などの影響もあり、郊外エリアでの分譲需要の冷え込みやハウスメーカーの苦戦が散見されました。
一方、AQ Groupの2024年は、長年チャレンジしてきたプロジェクトが具現化した年となりました。2022年9月に着工した日本初※1、純木造8階建て本社ビルが2024年3月に竣工。5月には創業の地である、埼玉県さいたま市に本社を移転し、グループとして新たなスタートを切りました。構造体に鉄やコンクリートを一切使用せず、一般流通材で建てられた純木造のビルは、国内の建設業界・メディアだけでなく海外でも反響を呼び、弊社が掲げる「木造建築の復興」の大きな一歩となりました。
6月には他のハウスメーカーでは類を見ない木造建築技術研究所がオープン。意匠権出願中のAQトラス架構にて16mスパンの無柱大空間を実現し、“日本初”の木造専用500kN複合試験機で戸建住宅から中大規模木造まであらゆる構造試験が可能な「構造実験棟」が本格稼働しています。また12月には建築現場における効率化などを研究、実証実験する施設である「施工効率化センター」も稼働しました。
純木造8階建て本社ビルと構造実験棟においては、第三者機関から様々な表彰をいただくことができ、弊社において2024年は20年以上前から掲げていた「木造建築の復興」に向けた投資や挑戦が具現化し、高い評価をいただくことができた一年となりました。
住宅事業においては主力ブランドである「AQURA HOME」、高級邸宅ブランドの「AQレジデンス」に加え、高コスパ住宅の「AQ HAUS」がスタートし、より多くのお客様に弊社の家づくりをご提供できるようになりました。これらの住宅ブランドで使われる「AQダイナミック構法」は、ビル建築の技術から生まれたもので不要な壁や柱を取り除いた広く自由な空間と建物の強さを両立させた弊社オリジナルの先進技術であり、“未来構法”と呼べるものです。
一方、4階建て以上の中大規模木造建築には安価かつ短工期を可能にした「木のみ構法」を開発し、7月には弊社初となる木造マンションシリーズ「AQフォレスト」の記念すべき一棟目を着工、マンション業界に新風を吹き込むムーブメントになることを期待しています。
2024年度(2025年2月期)のAQ Groupの業績は、過去最高の売上高を更新する見通しです。これは多くのお客様に弊社を選んでいただいた結果であり、この場を借りて心より御礼申し上げます。
AQ Group第二創業期へ。木造建築新時代の幕開け
2025年の住宅業界は、4月に建築基準法の改正が予定され、4号特例が縮小されます。構造計算等の負担が増加し、対応できない工務店も少なくないでしょう。また、国の2025年度補助金施策である「GX志向型住宅」がトレンドとなり、環境負荷を最小限に抑えつつ、エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの利用を重視した住宅の分野で競争が生まれることが予想されます。ハウスメーカーや工務店にとってはこれまで以上に技術力が問われる年になると考えています。
弊社はこれまでも飛躍のための挑戦を数多く行ってきましたが、創業47年を迎える本年を「第二創業期」と位置付け、より一層挑戦を加速していきます。「技術のAQ Group」を象徴する2つのオリジナル構法、「AQダイナミック構法」と「木のみ構法」が誕生したことで、全国の工務店、中小ゼネコンなどつくり手たちと手を携えて、「木造建築と、未来へ」の鍵を握る「フォレストビルダーズ※2」の動きも加速し、持続的な地球環境、脱炭素社会へ向けたCO2削減に貢献していきます。
そういう意味では、⽊造軸組構法を継承した森の国ジパングの木造技術を世界に発信していく可能性が見えてきたといえるのではないでしょうか。
いつの日か「AQダイナミック構法」や「木のみ構法」が世界においてもスタンダードな構法になることを信じています。「木造建築と、未来へ」、節目となる創業50年に向けて、さらなる進化を続けてまいります。