積水ハ 上尾市の医療・介護、子育て、戸建て一体型街づくり 上田知事が視察
「ライフコミュニティータウン」(賃貸住宅棟)
積水ハウスなどが開発を進めている埼玉県上尾市の多世代コミュニティ街区「ライフコミュニティータウン」に上田清司・埼玉県知事が「とことん訪問」の一つとして11月13日、現地視察を行った。
「ライフコミュニティータウン」は分譲宅地、子育て世帯向けの賃貸住宅、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)+デイケアセンター、保育所が共存する全国的にも珍しいプロジェクト。
上田知事はじめ島村譲・上尾市長、県議会議員、市議会議員なども出席して、同社埼玉営業本部長・新井富士夫氏やサ高住を運営する医療法人社団昌美会西村ハートクリニック院長・西村昌雄氏などから概要の説明を受けた。
上田県知事は、子育て賃貸のトレードマークに子どもの3人が描かれているのを見て「3人がいい。2人じゃ人口は増えない」と話した。
物件は、JR高崎線北上尾駅から徒歩12分の第一種低層住居専用地域に位置する総面積約1.1haの規模。ブリヂストンサイクルの社宅跡地としてしばらく更地になっていたのを医療・介護、子育て賃貸、戸建て、保育施設など一体として開発する同社、レーベンハウス、医療法人昌美会の提案が受け入れられたもの。
積水ハウスの分譲区画は32区画。1区画40坪以上で1年前から坪単価46~60万円で宅地分譲されており、これまでに15区画が分譲済み。建物を含めた価格は5,000~6,000万円台。スマートシティがテーマになっている。
子育て支援賃貸は3階建て2棟24戸(うち1棟は一括借り上げ)で、地元のレーベンハウスが管理・仲介を行う。子ども一人に付き賃料を1,000円減額するのが特徴の一つで、募集開始後瞬く間に入居者が決まったという。12世帯のうち半数が子育て世帯。積水ハウスの「5本の樹計画」も盛り込んでいる。
サ高住は、3階建て全56戸。専用面積は20~62㎡。地域の約800人の患者の医療を常時行っている昌美会が直接運営する。開業は来年の7月。昌美会は隣接する敷地に託児所も開設する予定。
関係者の説明を聞く上田県知事
埼玉県のユルキャラ「コバトン」の隣ののぼりには「現場主義!」と書かれていた
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分譲戸建て、賃貸、サ高住、保育施設が一体となって開発されたプロジェクトは、近いものでは東京都住宅供給公社の「コーシャハイム千歳烏山」や東京都の「一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅整備事業」、NTT都市開発の「ウェリス津田沼」などがあるが、埼玉県では初めてで全国的にも珍しい取り組みであるのは間違いない。
記者が注目したのは、西村院長の「サ高住は私の長年の夢の具現化の第一歩」という熱弁だった。
西村院長は、「私どもは3名の常勤医師で年間169名の在宅看取りを行っている。この実績が評価され、平成24年、厚生労働省から単独機能強化型在宅療養支援診療所に認定されたが、在宅医療は様々な問題を抱えている。
例えば、平成18年、中医協が本格的に始動するようになったが、同時に病院のベッド数削減が加速し、医療難民が急増した。これらの医療難民は医療の必要性が高いとの理由で介護施設では収容されず、介護難民化した。行き場のないこれらの方々は家庭に復帰せざるを得なかったが、家庭でも介護する家族が日中いない、あるいは老々介護、独居生活などの理由で家庭内でも受け入れられず、家庭難民化した。
現行のサ高住は、他の介護施設と同様、介護業者が介護サービスを提供するが、医療サービスを医療法人が直接提供することはない。制度の形がい化も進んでおり、24時間対応と銘打っていても、電話対応のみの在宅療養支援診療所がほとんどというのが実情。
私どもは医療難民、介護難民、家庭難民化した方々に救いの手を差し伸べるには、医療を主たるサービスとするサ高住を創り、医療法人が直接運営する以外に道はないとの結論に至った。したがって、私どもの施設は、看護士が24時間常駐し、医師は30分以内に駆け付けられるようにする。住宅としての機能を整備し、全職員がおもてなしの心で入居者に接したい」と、熱っぽく上田知事にアピールした。
子育て賃貸の前で記念写真
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西村院長によると、埼玉県は東京都のベッドタウン化していることが大きな要因だろうとは思われるが、人口10万人当たりの医師の数や病床、介護施設数は全国で最低レベルだという。それだけにサ高住も質の高いものにしたいという願いが込められていたのだろうと思った。上田県知事は西村院長の声をどう聞いたのだろう。
この西村院長の話を聞きながら、貧弱な埼玉県各市の街路樹のことを考えた。埼玉だけではないのだろうが、いま一つ街のポテンシャルが上がらないのはみどり・街路樹がプアだからと記者は思っている。
埼玉県は上田県知事が在任中の平成16年に知事の任期を3期までとする多選自粛条例を定めた。上田県知事は現在3期目。来年で任期が切れるが、いまのところなにもコメントしていないという。
お辞めになるのか4選を目指すのか分からないが、知事には「医療・介護」が全国最低レベルと言われないよう、街路樹・みどりが貧弱と言われないよう、都民が埼玉県に住みたくなるよう総仕上げを行っていただきたい。
サ高住「コーシャハイム千歳烏山」 「囲い込み施設にしない」JKK狩野氏(2014/3/31)
サ高住は終の棲家になるか 「グレイプスガーデン西新井大師」(2014/9/10)
併設のサ高住のサービスも受けられるNTT都市開発「ウェリス津田沼」(2014/11/04)
続「街路樹が泣いている~街路樹と街を考える」流山と越谷、三郷の差(2014/10/17)
「くまモン」にあやかれ 三交不動産「MSストラクチャー」グッドデザイン賞特別賞
三交不動産の木造軸組構造「MSストラクチャー」が「グッドデザイン賞2014」の特別賞「グッドデザイン・地域づくりデザイン賞」を受賞した。作品は宮川森林組合、エム・エス・ピーとの共同受賞。
「MSストラクチャー」は、三重県の宮川流域に位置する大台町の木材を積極的に用いた同社の構造体で、山を育てる宮川森林組合から良質な木を確保し、大台町との第三セクターでプレカット工場を設立することで地元に雇用を生み出し、加工まで品質を確保する一連の取り組み。グッドデザイン賞ベスト100に選出された際に「地場の林産業、木材産業、木材加工業から伝統工法を用いる住宅提供までをひとつのサイクルにまとめた総合的な木造住宅供給モデルとして、高く評価できる」「派生する端材や下等級材の二次利用などを含めた大きな構想に期待感がある。」という審査委員のコメントが付されていた。
「グッドデザイン・地域づくりデザイン賞」は、くらしや産業、社会をさらに推し進め、未来を示唆するデザインと認められるものに贈られる特別賞のひとつ。昨年度は熊本県が応募した「キャラクターを活用した地域プロモーション[くまモン]」が受賞している。
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わが故郷のデベロッパーが初めてのチャレンジで、グッドデザイン賞特別賞に輝いた。とても嬉しい。テーマがいい。森林・林業の再生・活性化はアベノミクスの肝だと思っている。いいビジネスモデルになってほしいと願う。首都圏のデベロッパーもハウスメーカーもどんどん三重県産の木材を使ってほしい。
今回の特別賞には、野村不動産・三井不動産レジデンシャル・積水ハウス・阪急不動産4社共同の「オープンディスカッションによる住宅企画Tokyoイゴコチ論争」も受賞した。これはわずか6カ月で全戸が完売するという圧倒的な人気を呼んだ「Tomihisa Cross」(992戸)の街づくりについて、企業や団体、個人の声を取り入れていく取り組みだ。たしかにこの取り組みには驚かされた。
それにしても、大手デベロッパーと同じ特別賞を受賞し、しかも「くまモン」も受賞している「地域づくりデザイン賞」というから、ひょっとしたら「MSストラクチャー」が全国的にヒットするのではないか。
細田工 構造材と床材に無垢材を採用した「プレミアム」発売
左からヨーロピアンオーク、ヨーロピアンアッシュ、ビーカン
細田工務店は10月31日、構造材と床材に無垢材を採用した注文住宅「<木ここち杢>プレミアム」を発売した。
既存ブランドの注文住宅「<木ここち杢>」をベースに、土台に純国産「乾燥無垢檜」を採用。さらに、これまでの3種類の無垢床材に加え、新たに3種類(ヨーロピアンオーク、ヨーロピアンアッシュ、ビーカン)を追加した。
工法は標準仕様となっている高耐震+制震の2つの性能を併せ持つ「ハイブリッドキューブ」を採用。住宅性能表示の耐震等級で最高の「3」を取得可能。
詳細は次のホームページまで。
三井ホーム 和モダンの「川越モデル」がヒット 2カ月弱で7件成約
「川越モデルハウス」
川越エリアとの親和性を高めた三井ホームの商品企画モデルハウスがヒットした。日本古来の風情が色濃く残る小江戸文化をモチーフにし、現代風にアレンジした「川越モデルハウス」を8月末に開設してから来来場者は他社を大きく引き離し、2カ月弱で7件を成約するなど上々のスタートを切った。10月27日、報道陣向けに見学会を行った。
初代「オークリー」の発売から15年が経過するが、川越エリアでも従来から和風を要望する顧客が多かったためにモデルチェンジしたもので、粋でお洒落な小江戸文化のモチーフを、現代風にアレンジして外観デザイン、設備仕様に取り込んでいるのが特徴で、人を招き入れる、人とつながる家という「ジャパニーズモダンインテリア」がコンセプト。
コイズミ照明とコラボし、LEDの特徴や光と心理の関係性をとらえ、必要なところに必要な光を配することで心地よい暮らしを提案しているのも特徴。
見学会で挨拶した同社埼玉支店支店長・幸田知久氏は「来場のすごさに驚いている。立地はくじ引きでそれほどいい立地ではなかったが、これまでの来場はトップ。他の大手の2倍、3倍くらいある。オークリー仕様での契約は従来も年間で10件くらいあったが、今回はすでに7件。成約単価も従来と比べ上昇傾向にある。アッパーミドル・富裕層も多い川越エリアで三井らしい和風の提案を行ったのが人気の要因」などと語った。
スキップライブラリー
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写真を見ればよく分かるが、外観が美しい。ほぼシンメトリーでレットシダーの天然木に塗り壁、石を想起させるタイルを多用し、縦と横のラインを強調することで品格を醸し出している。玄関には本物の大谷石とタイルを組み合わせ、壁などにはナグリ調の化粧板やウォールナットの床・建具・格子を多用。
圧巻は光壁のあるリビングと4段の階段でつながるスキップライブラリー。高さ約5.4mの吹き抜けまで届く本棚の演出が見事だ。
また、広い土間や和室の「おもてなしの間」など人を迎え入れる空間設定にも力を入れており、多目的に利用できる「三和土」がまたいい。関係者らは商品開発に当たって隈なく市内を練り歩いたというが、このあたりがその成果ではないか。三和土は「勝手口」に近いものだが、それよりやや広く腰掛けるベンチもあり、畑仕事やら近所づきあいのスペースとして適している。2階に設けたチーク材のヘリンボーンの寛ぐ空間「リトリート」もなかなかいい提案だ。
記者は木造の時代が到来したと思っているが、同社も今回の和モダンがヒットしたことから木の良さを前面に打ち立てて攻勢に出るのではないか。
モデルハウスの建築費は8,000万円(70坪、坪単価114万円)。
「おもてなしの間」
リビングルーム
ダイニングキッチン
リトリート
メーカー7社共演「流山おおたかの森」 シンボルツリーは「ハナチルサト(花散里)」
幅員9mのメインストリート(中央はセンターサークルのシンボルツリー)
住宅生産振興財団がコーディネーターとなり、大手ハウスメーカー7社が開発を進めている全95区画の「クイーンズフォレスト流山おおたかの森」を見学した。
物件は、つくばエクスプレス・東武野田線流山おおたかの森駅から徒歩10分、千葉県流山市十太夫に位置する全95区画。建ぺい率60%・70%、容積率200%地域。土地面積は150㎡以上。現在分譲中の建築条件付き宅地分譲(16区画)は3,230万円から。分譲住宅(16戸)は5,672.4万~6,980万円(最多価格帯6,200万円台)。
昨年4月から分譲されており、これまで58区画が分譲済み。各社の販売区画は以下の通り。
積水ハウス6区画(全22区画)、大和ハウス5区画(全20区画)、ミサワホーム東関東11区画(全20区画)、住友林業ゼロ(全5区画)、トヨタホーム12区画(全15区画)、パナホーム1区画(全5区画)、三井ホーム1区画(全8区画)。
もともとマンション用地だったところを、街のシンボルとなる戸建て住宅地に変更されて開発されたもので、2年前、7社JVがUR都市機構から用地を取得した。電線を地中化し、植栽豊かな開放的な街づくりがされており、ガードマンが巡回するタウンセキュリティも導入されている。管理組合が設立されており、立派な平屋の集会室もある。
分譲開始から1年半だが、先日書いた越谷、三郷などの街路樹より立派
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同行していただいた同財団の天谷正法事業部長に街づくりについて説明を聞いたのだが、嬉しくなるような話から始まった。天谷氏は同財団が発行する「家とまちなみ」に掲載されている井崎義治・流山市長の意気込みを紹介し、井崎氏が市長に当選して最初に見学した団地が日野市の「高幡鹿島台」だったことを話した。
記者は、井崎氏が市長に当選してから3年目くらいだったか、流山市の街づくりについて話し合ったことがある。つくばEX沿線で大量の住宅地が供給されるが、従来型の街づくりでは成功しないこと、都市間競争に勝てないことで意見の一致をみた。井崎市長には先進的な取り組みをしているデベロッパーも紹介した。
そのとき、「高幡鹿島台」の話が出たかどうかは覚えていないが、「高幡鹿島台」は宮脇檀氏が設計した代表的な団地で、記者も数回訪ねている。こんな素晴らしい団地はもうできないだろうし、井崎市長がわざわざ東京の西の外れまで見学に行ったというのが嬉しかった。
写真を見ていただければ分かる通り、メインストリートの道路幅は約9m。建物は1mくらいセットバックされているので見事な街並みが形成されている。植栽も見事。センターサークルには「ハナチルサト(花散里)」という葉っぱが七色に色づくという高木が植えられていたが、これこそ宮脇氏がよく用いた「道から造る」手法の一つだ。宮脇氏はシンボルツリーに貧弱な幼木を植えるようなことはしなかった。亡くなって16年になるが、その街づくりの思想は生きていると思った。
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各社の売れ行きにかなり差があるのも注目される。記者は街並みを見学しただけでモデルハウスはごく一部しか見ていないので何とも言えない。
ただ、住友林業と三井ホームがよく売れているので、「木造の家」がユーザーに支持されたのだと勝手に解釈した。住林の販売を担当した柏営業所担当者もそのことを否定しなかった。担当者は「あのエリアには自然志向の人が多いのか、当社はモデルハウスを建築中に契約できたし、残りの4区画についてもまったく営業活動はしていない。瞬く間に売れた」と話した。
同じ木質系のミサワホームのモデルハウスは見学したが、ヒット商品の「蔵のある家」だった。5層もあるのは大家族にはいいが、小家族にはどうかと思った。
野村不「プラウドシーズン仙川」分譲 三鷹市の開発奨励制度初の「ゴールド」
「プラウドシーズン仙川」
野村不動産は10月17日、三鷹市エコタウン開発奨励制度で初の「ゴールド認定」を取得した戸建て分譲住宅「プラウドシーズン仙川」の記者発表会&感謝状贈呈式を行ない、住宅は11月上旬に販売開始すると発表した。
物件は、京王線仙川駅・つつじヶ丘駅から徒歩13分、三鷹市中原一丁目の建ぺい率40%、容積率80%の地域に位置する全45区画。敷地面積は120.09~136.08㎡、建物面積は94.76~102.86㎡、価格は未定だが6,000万円台から7,000万円台が中心。構造は2×4工法2階建て。入居予定は平成27年2月下旬~11月上旬。設計・施工は東急建設・細田工務店。
プラウドスマートデザイン「SMART&GROWING」のコンセプトに基づき、全戸に太陽光発電パネル、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)、蓄電池(5kwh)、電気自動車充電用コンセントの4つの設備を搭載。
街の防災にも配慮し、住宅に搭載された蓄電池から屋外コンセントと庭園灯に電気を供給し、非常時の停電にも街に明かりが灯る設備を導入するほか、「かまどベンチ」を隣接の公園に設置し、蓄電池を地域の防災備品として公民館に寄付する。
同社、市、町会関係者が出席した感謝状贈呈式には清原慶子・三鷹市長も出席。「市はこれまでも地域の再生・活性化に取り組んできたが、これからは創生が大事とエコタウン開発奨励金制度を昨年から始めた。国が掲げる地方創生を先取りしたのではないかと思う。野村さんの住宅地は、緑化率を高めるほか環境に優しい創・蓄・省エネルギーの取り組みで初のゴールド認定となった。〝プラウド〟の名の通り地域の価値を高めるとともに、誇り高い街づくりを進めていただきたい」と挨拶した。
これに対して、同社執行役員・鈴木浩一郎氏は「住宅のみならず、地域のコミュニティ向上に積極的に関わっていきたい」と応えた。
三鷹市エコタウン開発奨励制度は、3,000㎡以上の戸建住宅の開発行為に対してエコな取り組みをする事業者を奨励する制度。同社は太陽光発電、蓄電池、電気自動車用充電設備、エネルギー管理システムで1戸当たり合計19ポイント(1ポイント1万円)を獲得。ポイントは価格に反映される。
記者発表会に臨んだ同社戸建事業部部長・大矢寛之氏は記者団の質問に答えて、今年度の戸建て供給は1,000戸の大台に乗せ、今後も1,000戸体制を継続していくと話した。数年前までは影すら踏めなかったのに、ついに三井不動産レジデンシャルを捕らえた。「引き離すのか」との質問には「1,000戸くらいが限界」と慎重な構えも見せた。
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同社の戸建てシリーズ「プラウドシーズン」は結構取材しているので、外観デザイン・設備仕様などについて改めて書くことはない。デザインモール、アクセントウォール、コーナーグリーン、ゲートウォールなど細部にもよく配慮されている。門扉も設置される。
問題は価格だろうと思っていたが、6,000万円台~7,000万円台というのはぴったりだろう。8,000万円を超えてくると厳しいのではないかと見ていた。
ポイントはやはり三鷹市の奨励制度だ。金額的には1戸19万円だからそれほどでもないが、市からお墨付きをもらったという意味では効果が大きいのではないか。デベロッパーはもちろんだが、自治体も独自制度で住みたくなる街づくりを進めるべきだ。
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お墨付きの威力を垣間見るような光景があった。感謝状贈呈式の後で、同社が贈呈したかまどベンチの見学会が隣接の「中原すくすく児童遊園」で行なわれたのだが、小学生数人が遊んでいた。清原市長はその子どもたちになにやら声をかけた。「一緒に見ましょう」とでも言ったのだろう。その結果、子どもたちも一緒になってかまどベンチを見学した。
そのあとで記者は、〝知らない人に声をかけられても答えるな〟と教えられているはずの子どもたちに「あの人が誰か知ってる? 」と声をかけたら、「みんな知ってるよ。清原市長。運動会にいつも来てるもん」と返ってきた。3期目の清原市長は絶大な人気があるようだ。知らない記者の質問に答えるはずはないと思ったが、清原市長には「国立の求償権裁判はどう思いますか? 」と質問した。一瞥されただけで、「他の市のことにはノーコメント」と交された。
左から「ひばりが丘町会」田中悟会長、鈴木氏、清原氏、同会・田邊健一前会長(「かまどベンチ」の前で)
ポラス 「ハワイ」など4リゾート地テーマの「越谷レイクタウン」分譲開始
「パレットコート越谷レイクタウンリゾート」モデルハウス
ポラスグループの中央グリーン開発は10月18日、全98棟の「パレットコート越谷レイクタウンリゾート」第1期30棟の販売を開始した。「リゾート感覚で暮らす家」が開発コンセプトで、「ハワイ」「地中海」「カリフォルニア」「アジア」の4つのリゾート地をテーマにした戸建て分譲住宅。第一弾の今回は「ハワイリゾート」。今後、他のテーマ住宅も順次販売していく。
物件は、JR武蔵野線越谷レイクタウン駅から徒歩9分の全98棟。1期1次・1期2次(18棟)の敷地面積は155.46~192.80㎡、建物面積は95.22~111.41㎡、価格は3,780万~5,400万円。1期1次9棟は優先分譲として販売済み。
現地は「水との共存文化を創造する都市」として開発が進められている計画人口約22,400人の「越谷レイクタウン」区画整理事業地内の一角。「地区計画」のほか「まちなみ景観協定」により、最低敷地面積150㎡、一部電線地中化・宅地内電柱、壁面後退、建物意匠制限などにより将来にわたって美しい街並みを保全していく。
全98棟を「ハワイ」(30棟)「地中海」(23棟)「カリフォルニア」(23棟)「アジア」(22棟)の4つのゾーンを6ブロックに分け、リゾートテイストの暮らしを提案するのが特徴。幅27m以上のメインストリートに面した宅地を中心に13本の景観木「ココスヤシ」を植樹する。
今回の「ハワイ」をテーマにした住宅地は、シンボルツリー「ドラセナ」を中心に個性的な街並みを提案。外観はオレンジと赤茶色の屋根、白壁、深い庇のあるポーチなどを採用。内装・プランニングは、ハワイの高級リゾートを連想させる交流重視型や子育て重視、趣味重視、居心地重視の4つのプランを用意している。
販売に先立って17日行われた記者発表会で同社開発事業部長・戒能隆洋氏は「10年前に分譲開始した1,035戸の『七光台』は先に完売した。2年前に分譲開始した214戸の『六町』も残り一ケタ。今回の用地はUR都市機構かせ今春に購入した。リゾートを全面に打ち出したのは広域から集客できる力があるからで、万人向けの商品を供給しても競合が多いこのエリアでは販売が長期化するだけ。幸い、この3週間で71組の集客ができている。18カ月で完売を目指す。社員の思いが詰まった住宅地」などと語った。
モデルハウス1-3号棟
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これまで海外リゾート地をコンセプトにしたマンション、戸建てをたくさん見てきたが、中国、モンゴル以外の海外に行ったことは一度もないし、木造の和風住宅が好きだからなんともコメントしづらい。
ただ、2つあるモデルハウスのうちの1-3号棟は素晴らしい。戒能氏が話した分譲住宅は万人向けするものではなく個性的な商品であるべきという考えは賛成だし、ユーザーがどう評価するか楽しみだ。
景観樹・シンボルツリーについて。13本で数百万円という「ココスヤシ」には度肝を抜かされた。「地中海」のシンボルツリーはオリーブだそうだ。未定だが「カリフォルニア」はオレンジか。樹高100mにもなるというセコイアを植える勇気はないだろう。「アジア」なら日本のサクラだろうと思うが、そうではなく「バリ」のバンブー(竹)らしい。インドネシアには「ロンボク」という木はないのか。
それともう一つ注目すべきなのは「パレットコート」の販売スピードだ。一般的な郊外戸建て分譲住宅地は年間30~40戸売れればいいほうだ。100戸というのは驚異的だ。
モデルハウス1-4号棟
造り手の想いが伝わる ミサワの軸組工法による分譲戸建て「一橋学園」
「アルビオコート・一橋学園」
ミサワホームの軸組工法による分譲戸建てブランド〝アルビオコート〟第一弾「アルビオコート・一橋学園」を見学した。注文住宅の伸びが期待できない今後の市場を見据え、分譲戸建てでカバーする狙いがありそうだが、全13棟とも造り手の思いが伝わってくる商品企画だ。同業他社や大手デベロッパーとも十分戦える商品と見た。
物件は、西武多摩湖線一橋学園駅から徒歩13分、小平市小川町2丁目に位置する全13区画。建蔽率40%、容積率80%地域。敷地面積は122.20~124.34㎡、建物面積は96.67~99.36㎡。現在分譲中(5戸)の価格は4,390万円~4,890万円。構造・規模はミサワホームMJウッド(耐震木造住宅)2階建て。施工はミサワホーム多摩。建物は竣工済み。販売代理は三井不動産リアルティ。
道路には保水性のインターブロックを敷き詰め、建物外観は南仏・プロバンスの街並みをモチーフにオレンジの瓦と塗り壁風の白の外壁が特徴で、凹凸をつけることで陰影を醸し出す工夫も凝らしている。全棟に印象的な意匠ウォールを施している。
建物プランが面白い。全棟とも「階段書斎のある家」「思い出ギャラリーのある家」「小料理屋さん風キッチンのある家」「ホームパーティができる家」「土間部屋のある家」「週末はアウトダイニングの家」など個性的なものばかりだ。
これまで青田の段階で4棟が売れており、ほぼ半数の契約が現段階で見込まれている。年末までは完売したい意向だ。
同社は3年後までに軸組工法による分譲戸建てを400~500戸供給する目標を掲げている。
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同社の分譲戸建てを見学するのは久々だし、もちろん軸組工法は初めてだ。最近見学した三井不動産レジデンシャルの「ファインコート国分寺日吉町」とはコンセプトもターゲットも全然異なるので比較はできないが、どちらかと言えば野村不動産の〝プラウドシーズン〟に似ているといえば似ている。いわゆるパワービルダーの戸建てとは全く異なる。
街並み、建物の商品企画・設備仕様などを総合的に評価すれば、価格は間違いなく安い。
思い切った商品企画を採用しているのは、他社と異なり一人の担当者が一気通貫で担当するからだろう。この現場も説明を受けた分譲開発部建売分譲課の多井中新介氏が用地の仕入れからプランニング-販売までを担当している。多井中氏が自ら作ったというコンセプトブックは3冊もあり、全部で56ページもあった。
個性的なプランの提案は勇気のいることだが、平凡な万人向けのプランよりいい。そのプランを気に入った一人に買ってもらえばいいのだから。本来の分譲戸建てとはそのようなものだ。
意匠・デザインはそれぞれ好みがあるので何とも言えないし、他社との差別化を図ろうという意図があったのだろうが、巾木が10㎝くらいあるのはいいのだが、回り縁が〝立派〟すぎ、ケーシングもやや派手だと思った。同社の注文住宅は〝シンプルイズベスト〟だそうだが、記者も賛成だ。シンプルなほうが美しい。
もう一つ、これはいいと思ったのが子ども部屋だ。広さは4.5畳大になっていた。同社は「子ども部屋」の「個室」は「子失」という考えが浸透しており、広さを狭くし、その代わりに親子や家族が集えるスペースを確保することに力を入れているとのことだった。
スウェーデンハウス 10kwの大容量太陽光発電システム搭載可能
「SOL HUS 10(ソルヒューステン)」
スウェーデンハウスは10月3日から10kwの大容量の太陽光発電システムを搭載可能にした「SOL HUS 10(ソルヒューステン)」の販売を開始した。
両片(りょうかた)流れの屋根形状を採用し、バルコニーまで屋根をかけることで従来の2.3倍の太陽光発電システムを搭載することを可能にした。夏冬の日差しや春秋の自然の風を考慮し、自然環境をありのままに受け容れる工夫もしている。
116.37㎡(35.20坪)の建物に10.24kWの太陽光発電システムを搭載すると、年間発電量は同社のオール電化住宅の年間使用電力量を大幅に上回る。発電した電力を全て売電できる「全量買取方式」を選択することも可能で、20年間にわたり固定価格で売電ができる。
「SOL HUS 10」の年間発電量は灯油1,082リットル分、一日の発電量はEV車が東京から名古屋へ走行できる電力量に匹敵する。年間販売棟数は50棟。
大和ハウス 子育て応援住宅 「吉川美南」で公開 おちまさと氏がプロデュース
「+Child firstの家」
大和ハウス工業は10月3日、厚労省の「イクメンプロジェクト」推進メンバーでもあるオールラウンド・プロデューサーのおちまさと氏(48)がプロデュースした子育て応援住宅「+Child firstの家」を、同社が開発中の埼玉県吉川市の「IKUMACHI(育まち)吉川美南プロジェクト」戸建住宅街区内で公開した。
「+Child firstの家」は、子どもの安全・健康に配慮した設備提案に加え、親子の時間を共有し、子供の成長に合わせて間取りを変更する工夫など55項目のアイデアを盛り込んでいる。
記者発表に臨んだおちまさと氏は、「4歳の娘がいるが、生まれたときから楽しく子育てしている。3歳の時から海外旅行を2人でよく行っており、この1年間で6回行った。海外ではチャイルド・ファースト、レディ・ファーストが浸透しているのにわが国はそうではない。〝55〟は親子がヒフティ・ヒフティという気持ちを込めた。出来上がった建物は、年配の方の住まいとしてもいいのではないかと思う」などと話した。
てーっぶカットする同社埼玉東支社・稲村敏伸支社長(左)とおちまさと氏
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55項目のそれぞれの設備・アイデアは他社も採用しているものも少なくないが、これだけ揃えたのは初めてかもしれない。「55」は、タレント歌手が歌っている〝5、5、5、5〟のどこかのハウスメーカーに対抗したものではないということだ。
珍しいものでは、子どもでもインタホンが押せるステップ付き門柱、サイドスロープ付きアプローチ玄関、蒸気処理付き食器棚、排気レス食洗機、ステップ付き2ボウル洗面台、鍵付き扉のある階段、川の字寝室などだ。2階バルコニーがフラットであることも他社と比べて優れている。
注文を付けるとすれば、サイドスロープ付きアプローチ玄関は傾斜がきつすぎだ。ベビーカー用にはいいが、そこまでするのなら、玄関の隣にあるウッドデッキのほうに回り込んで庭-エントランス全体をスロープにすれば車椅子も利用できるではないかと思う。さらに言えば、浴室が1.25坪なのはいいが、浴槽に子どもが落ちて溺死しないようあるメーカーは研究開発を行っている。同社もやるべきだ。もう一つの課題は階段の幅だ。メーターモジュールも採用すべきだ。
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おち氏の話を聞きながら、よくもそんなにまめに子育てができるものだと感心してしまった。何か特別の事情があるのかと思ったがそうではない。娘を連れて海外旅行するのは奥さんの負担を軽くするのも目的の一つで、小さい時から子離れする訓練のためにも行っているそうだ。
「お子さんは2人目、3人目はどうですか」と聞いたら、「分かりません」ということだった。
フラットな2階バルコニー(左)と1階のウッドデッキ
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同社が開発を進めている「IKUMACHI(育まち)吉川美南プロジェクト」の戸建街区は270区画。1年半前から分譲開始しており、これまで130棟が販売済み。全棟太陽光発電、エネファーム、リチウムイオン蓄電池を搭載しており、道路と敷地の縁石をなくしてフラットにし、親子ベンチ、ストリートゲートなども設置居ているのが特徴。価格は5,000万円前後。
駅前の大規模マンションも住友不動産と共同で昨年暮れから分譲しており、全429戸のうちこれまで280戸を販売済み。坪単価は140万円。こちらについては改めて紹介する。
サイドスロープ付きアプローチ玄関
既分譲の戸建て街区