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2021/09/21(火) 10:56

「開発法」の具体的事例は把握せず 依頼者プレッシャーには触れず 鑑定協から回答

投稿者:  牧田司

 記者が日本不動産鑑定士協会連合会(鑑定協)に対して質問していた、不動産鑑定手法の一つである「開発法」や「依頼者(クライアント)プレッシャー」などについて、鑑定協から9月20日付で以下の通り回答があった。全文を紹介します。

1 開発法について

開発法は更地の評価にあたって適用される手法の一つで、原価法、取引事例比較法及び収益還元法の三手法の考え方を活用した手法とされます。

マンション分譲や土地分譲が最有効使用と判定される更地の評価において広く一般的に適用される手法です。

なお、具体的事例については、不動産鑑定士の守秘義務の関係もあり、連合会では把握しておりませんので、お答えしかねます。

2 鑑定評価の条件について

「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項(国土交通省)」によれば、鑑定評価の条件設定の意義は以下のように示されています。

「鑑定評価に際しては、現実の用途及び権利の態様並びに地域要因及び個別的要因を所与として不動産の価格を求めることのみでは多様な不動産取引の実態に即応することができず、社会的な需要に応ずることができない場合があるので、条件設定の必要性が生じてくる。

条件の設定は、依頼目的に応じて対象不動産の内容を確定し(対象確定条件)、設定する地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件を明確にし、又は不動産鑑定士の通常の調査では事実の確認が困難な特定の価格形成要因について調査の範囲を明確にするもの(調査範囲等条件)である。したがって、条件設定は、鑑定評価の妥当する範囲及び鑑定評価を行った不動産鑑定士の責任の範囲を示すという意義を持つものである」

以上から、鑑定評価の条件設定は、依頼者の最大の利益を引き出す目的のものではないと理解されます。

3 社会的地位の向上について

当連合会では、さまざまな活動によって不動産鑑定士の社会的地位の向上に資するよう努めてまいります。引き続き、ご指導賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

回答は以上となります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

◇      ◆     ◇

記者の質問は以下の通り。

オリンピック選手村の鑑定評価に当たっては、都から依頼された日本不動産研究所が不動産鑑定手法の一つ「開発法」により評価額を地価公示のほぼ101の価格をはじき出しました。

一方で、この価格が「不当」として住民らが原告となって都知事に対し、「適正価格」との差額約1200億円の請求を事業者に求める裁判が行われております。

原告側は「適正価格」を算出するに当たって不動産鑑定士に依頼しています。裁判は結審し、年末には判決が出るものと思われます。

私は、原告と被告の不動産鑑定価格はともに瑕疵はないと思っており、都は都民に対して説明責任を果たしているかどうかの問題はさておき、被告側の不動産鑑定が法律的にも手続き的にも違法でないとすれば、被告が勝訴すると思っています。

しかし、言葉は悪いですが、前提条件次第で不動産鑑定価格はどうにでもなることが今回の裁判でも明らかになり、不動産鑑定のあり方が改めて問われることになると考えます。

そこで、お聞きします。

不動産鑑定のいわゆる三手法(原価法、収益還元法、取引事例比較法)と開発法の関係はどのように理解すればいいのでしょうか。私は原価法に近いのではないかと思っていますが。

これまで開発法手法によって鑑定評価された事例はどれくらいあるのでしょうか。具体的事例もお聞きしたいと思います。

前提条件次第で鑑定価格に大きな差が出るということは、貴連合会が問題視されている依頼者(クライアント)プレッシャーを生むことにつながっていると私は理解しますが、いっそのこと、不動産鑑定は、弁護士と同じようにそれぞれの依頼者の立場から最大の利益を引き出すようにしたほうが分かりやすいと思いますが、いかがでしょうか。分かりやすく言えばエージェントです。

不動産鑑定士の合格者の平均年齢は30歳を超えています。司法試験合格者は30歳を切っているはずです。大学を卒業してからとても難しい試験に合格するまで10年間も費やし、それに比して報酬額はとても低い。

私の知り合いは、大学を卒業してから数年後に資格を取得したのに、会社からはびた一文も出ない(宅建士は数万円の手当てを出す会社があります)と嘆いていました。不動産鑑定士の社会的地位の向上のために改革が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

以上、よろしくお願いいたします。参考までにこれまでのいくつかの記事を添付いたします。

またも平行線 「早く結審を」(被告)「議事録開示を」(原告)第8回選手村裁判(2020/1/18

オリンピック選手村裁判 原告側桝本鑑定士の意見書は証拠価値なし 被告側が意見陳述

「選手村マンション増収分折半」 選手村裁判の原告団が声明文

HARUMI FLAG」 土地と建物の価格比率は調整区域並みの793 算定は妥当
オリンピック選手村住民訴訟も佳境に 原告、被告双方 相手を「著しく」非難

「晴海」坪250万円予想の根拠 「週刊文春」も裏付け 当初単価は244万円と報道

東京2020オリ・パラ選手村 敷地売却価格は地価公示の10分の1以下の??2016/8/4

不動産鑑定のあり方が問われている 「士」を安売りすべきでない(2017/3/4

       ◆     ◇

 質問後にRBAのホームページにアップした記事は次の通り。

選手村裁判 開発法による鑑定手法が適法なら当初の坪単価250万円は妥当(2021/9/19

選手村裁判 不可解な調査報告書は2つ&掘削工事の事実ない 原告の準備書面(2021/9/19

選手村裁判が結審 「HARUMI FLAG」利益は消費者(購入者)に還元すべき(2021/9/9

 

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