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OSI研究会勉強会

講演する山田氏
現在の建築のあり方の是非を問う社会文明論

墓石もそうだが、高級マンションやビルディングなどの建材・モニュメントに重宝されている伊達冠石をご存じだろう。記者は、その伊達冠石を産出する宮城県南の丸森町に位置する大蔵山の所有者で採石会社・大蔵山スタジオ(旧・山田石材計画)の山田政博相談役(73)にお会いし、その著書「山にいのちを返す-大蔵山採石場にて-」(石文社、2011年刊)を読む機会に恵まれた。古今東西の浩瀚な文献・書籍を渉猟し、持論を展開する論文はあまたあるが、山田氏の著作はそれだけにとどまらず、「石」の本質に迫り、〝産業廃棄物〟のようにスクラップアンドビルドを繰り返す現代社会の是非を問う社会文明論でもある。自然への畏怖と畏敬の念を忘れず、自ら重機を駆使し、ノミを打ち続ける実践者であるからこそ書ける著作だ。ぜひ皆さんに読んでいただきたい。
山田氏にお会いしたのは先月末、NPO法人OSI研究会(沖縄観光産業研究会・佐藤基之理事長)の勉強会&懇親会で、山田氏は採石により荒廃した大蔵山の修復・再生事業に取り組んできた経緯などについて講演した。講演は画像を紹介しながら説明するのに多くを費やされたため、記事化するのは難しいと判断し、著作を通じて山田氏を紹介することにした。
大蔵山スタジオは、東北新幹線白石蔵王駅から車で15分、宮城県伊具郡丸森町の標高300m前後の大蔵山(約50ha)に位置。創業は1887年。山田氏は1953年生まれで、明治大学経営学部卒。1986年4月に4代目として家業を継ぎ、2017年(平成29年)8月、社長を息子の山田能資氏に譲り、自らは相談役に退いた。
山田氏の別の著作によると、伊達冠石は両輝石安山岩に属する。地表近くに押し出されたマグマは冷え固まる段階で規則正しい柱状を示すが、伊達冠石は比較的ゆっくり冷却したためか、不規則的に割れた岩脈から丸みのあるものや動きのあるもの、あるいは直線的なものなど様々な形状で産出される。岩脈は、表土から約10m下の幅約20m、厚さ約10m、南北約2㎞、の層となっている。原石表面の黄土色、内面の灰黒色との色合いのコントラスト、石膚と対照的な研磨面など、尽きることのない造形的な可能性を秘めているという。現在の採石量は約200t。
OSI研究会は、明治大学名誉教授・百瀬恵夫氏(92)が2003年に立ち上げた関係から会員には明大卒業者が多く、懇親会では口さがない会員は〝石がすごい〟などと妬み半ばの賛辞を送った。記者は、対面に座り雑談を交わしたのだが、自然の恵みを享受する僥倖に恵まれた、酒好きのただのおやじに見えた。

1960年代の採石場現場

赤土の表土に覆われた大蔵山採石場

一般に公開されている広場

伊達冠石リチャードロング作品(東京フォーラム)

伊達冠石デザイナーズ商品展示会風景

ワークキャンプイベント風景

「神様の石」を山にお返しする現代イワクラ建設作業

「この石は神様だ」と作業員が発した過去最大級5mクラスの伊達冠石原石

円錐形状に積み上げた頭頂部には伊達冠石が設置されている

伊達冠石が割れた面
「ビジョン」を見た翌日、自然も石も美しく見えた
しかし、著作はこのようなイメージとは全く異なった。「神は鉱物の中で眠り、植物の中では目覚め、動物の中では歩き、人間の中では思惟する」-「ウパニシャッド」の言葉で始まる本を読みだしてすぐ、眼が釘付けになった。4ページ目だ。次のようにある。
「私にとっての転機は、突然訪れた。それまで会社の牽引役であった父にかわり、会社を経営することになったのだ。会社は相当の混乱状態。精神的にもかなり追い込まれていたこの時期に、私は自分の中であるひとつの『ビジョン』をみた。極めて個人的な体験なので、詳しくは割愛するが、この『ビジョン』を経験した翌日、庭に咲く花々の白や葉の緑が、昨日とは違って色鮮やかに見えた。空の青さが、今まで感じたこともないほどに迫ってくる。採石場に行けば、石の形や石肌が美しい。今まで不良品にしか見えなかったキズ肌や割れ肌さえも、美しい石の表情をもっている。草花はそれだけで美しいと感じるのは当然だが、石も美しいと感じた自分が不思議だった」
花や空、石のキズ肌などが美しく見えるこの極めて個人的な体験=「ビジョン」とは何か。世には〝人生を変えた〟ものには、1冊の書籍やら失恋、失業、妻あるいは夫の一言、夢、旅行…数え上げたらきりがないほどある。ただ、これらはその後の人生が好転した〝後付け〟として語られることが多い。その一方で〝魔が差して〟人生を台無しにするどころか、社会に致命的な打撃を加えてしまうケースも少なくない。社会も人生も一寸先は闇ということだ。
その時点で、この「ビジョン」の正体を探し出すのに主眼を置き、一気に読んだ。B6判、全200ページ。1ページに1枚以上の白黒写真が紹介されており、とても読みやすい。著作には、石に関する参考文献・資料は74、石工と石工集団に関する文献は71ある(書庫には芸術や民族信仰など石にまつわる本が約2000冊収められているそうだ)。大半はほとんど知らない専門家によるものだが、ゲーテ、ダ・ヴィンチ、フロイト、ユング、ベルグソン、ヨゼフ・ボイス、ガストン・バシュラール、空海、立花隆、小林秀雄、柳田國男、中沢新一、折口信夫、小泉八雲、谷川徹三、草野心平、唐木順三、澁澤龍彦、藤本義一、白川静、中沢新一などわれわれも少しは知っている哲学者、作家の著作や言葉などが頻繁に出てくる。
自説を補強する添え木として、あれやこれやのデータや学説を寄せ集めるのはよくあるケースだ。中には、参考文献が支柱で、持論・自説は柱と梁をつなぐ金物か、支柱がないと伸びないつる草のような論説や記事を読まされることも少なくない。(小生の拙い記事をそのまま無断で転載していた大学名誉教授や人気ブロガーを見つけたが、謝罪の一言しかなかった)
山田氏の著作はそうではない。ほぼ全編に肺腑をえぐる「伊達冠石」のような文章がちりばめられている。いくつか紹介する。
文献を読んでも「石の霊性を知る」ことにはならない
「(採石は)二度と復元することのできない破壊行為」(30ページ)
「石の歩留まり率とか、原価とかいう経済的な観点からではない。残された石や廃材捨て場に捨てられた石を見るたび、石を人間の価値観で推し量り、使える石・使えない石と決めてかかることが果たしてどうなのか」(45ページ)
「いくら文献を読んだところで『石の霊性を知る』ことにはならない。必要なのは、文献を読んで得られる知識より、直感的に霊力を感じたことがあるというような『経験』である。いいかえれば、石の霊力というものにどれくらい思いを巡らせているか、思いをめぐらせるなかで何をどう感じるかということが重要なのだ」(58ページ)
「現在は、あらゆるものが石から別の素材へと置き換えられ、それにともなって『石屋』『石工』の活躍する場が狭められている。しかしその現象をよく見ると、たとえば建築・土木の分野では限りなく石が薄くなり、ハリボテ状に使われていくだけで、いわゆる石本来の性格からかけ離れていくばかりである。耐用年数などを『計算』しているからなのだろうが、せいぜい五十年も持てばよいということか。もっともそれを支えているコンクリートや骨材も怪しいもので、何百年後に残る歴史的な建築物などははたしてどのくらいあるのであろうか。百年サイクルでみると、すべてが産業廃棄物のようにも思えてくる」(84ページ)
「モノのかたちは、中身(質量)があるから外観(輪郭)があるのであって、モノの中身がどのように意識されてつくられているかということは、とても重要なことだ」(105ページ)
「石の美しさや石の力を石ならではの表情として引き立たせようとする繊細な美意識」(123ページ)
「機械で仕上げられたものよりは、手仕上げの石造物のほうが、より深く、より自然に、人の魂やこころに響いてくるのではないか」(129ページ)
石の霊力を得た山田氏自身が「伊達冠石」

読み終えた時の感想は、山田氏そのものが「伊達冠石」ではないかということだった。自らが重機を運転し、寝食を忘れるほどノミを打ち続ける実践家だからこそ発せられる箴言だ。山田氏はこう述べている。「少なくとも私自身のプリミティブな感覚は、大蔵山採石場から生まれてくる自然石によって呼び覚まされたといっても過言ではない」(61ページ)と。
最初に戻る。「ビジョン」とは、この「私自身のプリミティブな感覚」ではないかと推測し、山田氏に「ビジョンとは何ぞや」と聞いた。山田氏は、この「ビジョン」の正体を自身のブログ「石好きおじさんの石巡り」に明かしており、文章を送ってくれた。やや長いがそのまま紹介する。
「(石への目覚め)私は代々石材業を営む家系の四代目として生まれ、当然のように家業を受け継いだ。石材業といっても加工業や施工業など様々な職域があるが、私の会社は主に山から石を採掘する採石業者である。採石している現場は大蔵山といって、宮城県の最南部に位置する白石市と丸森町にまたがった標高300mの小高い山で、そこから玄武岩質安山岩の自然石を採り出している。
私が会社を引き継いだのは1986年、当時33歳の時であった。忘れもしない昭和61年3月31日。父が十数億円という負債を抱えた状態で事業に行き詰まり、混乱のさなか受け継いだ。会社の後継者としてどんな困難にも立ち向かうのが使命と思い、家族を親戚の家に預け、各方面の債権者たちとの交渉に追われながら事態の収拾にあたっていた。しかし、何せ初めての経験で、相当気を張り詰めていたこともあり、その日から一週間後ぐらいで、精神的にかなり追い詰められた状態となった。
そんな精神状態になりながら、ある晩、いつものように自宅のお風呂に入った。お湯に浸かっていると、やがてうとうととして意識が飛んでいくような状態になったらしい。夢心地の中でいると突然、意識の中で井戸のイメージが浮かび、どんどんと体ごと下方に引っ張られていくような感覚に陥った。どこまで落ちていくのだろうと思っていると、やがて水面が現れ、ゆらゆらと揺れている。何かと思いそこを覗き込むと、人の顔のようなものが浮かび、誰だろうと思うとそれは自分の顔である。自分の顔だと自覚した瞬間、その顔はニコッと笑い返してきた。
それまでよく眠れない日が続いていたが、その晩は、不思議なくらい深い眠りに落ちた。
翌日も、相変わらず混乱が続く会社に出社しなければならない。会社と自宅は地続きで、自宅の庭を横切っていく。庭先には赤や黄色のチューリップの花が咲いていた。今までそんなに気に留めることがなかった花の赤や黄色が色鮮やかに飛び込んでくる。不思議に思って空を見上げると、空の青さまでが明るく際立っている。目に映るものや景色が今までとは違って鮮やかなのだ。その日以来、解放されたような気分になり、気持ちが楽になったのを覚えている。
数日後、採石場の現場確認のために大蔵山に行く機会があった。いつもの採石場の風景が広がり、大量の石が積み重なっている。それらの石たちも、いつも見慣れているはずの石なのに、これまでとは違ったものとして目に映ってくる。それまでは価値のないものとしか思わなかったキズの入った石や不定形に割れた石、形が不格好な石が実に美しく見える。割れた表面の表情や、絶妙な線を描くエッジが神秘的に思え、表面を彩る色の具合が輝いて見える。特殊な形をしたものはどうしてこんな姿になったのか不思議に思えてくる。すべては神様の仕業。それ以来、お金を生むものとしか見えていなかった大蔵山の石が初めていとおしく思え、同時に石の持っている本来の価値に気づかされたような気がしたのだ。
振り返ってみると、あの晩の錯乱した精神状態で浮かんだ、井戸の中に落ちていくようなイメージのなか、大地の中に引き連れ込まれたような夢見の経験よって、自分自身の意識の中で、どこか別の感覚が目覚めたらしい。笑顔の自分の顔によって、何かとても救われたような感じさえもしたのだ。もし、あの時の顔が恐怖心におびえていたり情けない表情だったりしたら、きっと私は発狂していたことであろう」
皆さんいかがか。記者は「霊」なるものの存在を信じないし、「レム睡眠」の正体も分かっていないようだ。錯乱状態で見た夢見の経験が正夢になることはあるのか。これは謎のままだ。
◇ ◆ ◇
経済産業省のデータによると、令和5年の採石場は2,410か所、生産量は154,906千t(砕石用がほとんどで、石材用は1割未満)、事業者は2,038業者、資本金別では全国1,597社のうち資本金が3億円超は35社(2.2%)。令和元年比では、砕石場は53.3%減、生産量は75.9%減、事業者は61.9%減となっている。
石の需要が減るわけがないと思って調べたら、石灰石の自給率は100%だが、他の鉱物資源は輸入に頼っているようだ。
採石法もざっと読んだ。土地の返還を定めた第8条には「採石権者は、採石権が消滅したときは、その土地を原状に回復し、又は原状に回復しないことによって生ずる損失を補償して、土地を返還しなければならない」とあるのは当然として、許可要件には「その土地が鉄道、軌道、道路、水道、運河、港湾、河川、湖…公園、墓地、学校、病院、図書館若しくはその他の公共の用に供する施設の敷地若しくは用地又は建物の敷地」のほか、農地法などの制限も受けるとある。

大蔵山銀座スタジオに設置されているテーブル(300万円とか)

大蔵山銀座スタジオに展示されているWASHBASIN(40数万円の値が付いていた)

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