野村不動産他「富久クロス」完成 四半世紀の波乱乗り切り街再生
完成した、「富久クロス」
野村不動産は9月9日、「富久クロス」(全1,222戸)の竣工記者見学会を行った。このマンションについては既報の記事を読んでいただきたいが、坪単価328万円という分譲当時としては高かったにもかかわらず、1期1~3次、2期まで即日完売し、分譲992戸がわずか6カ月で完売して話題となった。
完成した建物を見て、人気になるのも頷けるのだが、バブル崩壊-リーマンショック-東日本大震災-建築費高騰などの〝失われた25年間〟の荒波を乗り越えてよくぞ見事な再開発を成し遂げたと感服するほかなかった。
見学会で挨拶した同社開発企画本部プロジェクト推進部長・渡辺弘道氏は、「バブルによる地上げで虫食い状態になっていたところをバブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災などの度重なる(再開発計画の)存続の危機を地権者、地元、行政、大学などが連携して乗り越え、平成2年の勉強会から25年目にして竣工にいたった。当社は平成22年に特定業務代行として事業に参画してきた。商品企画にあたっては、実に10万人の意見を募り、その中から1000件に絞り込み、その声をすべて建物に反映した。わずか6カ月で完売できたのもそのような企画が評価されたからだと考えている。当社はいま約30地区で再開発計画を進めているが、これはデベロッパーのなかでもっとも多いのではないか」と胸を張った。
渡辺氏は、リーマンショック前の分譲単価は坪400万円くらいが想定されていたことも明らかにした。
また、総合プロデューサーとして19年にわたってこの計画に携わってきたまちづくり研究所代表取締役・増田由子氏は、「激しい地上げで247世帯が120世帯に半減した。何度もくじけそうになったが、2002年に都市再生緊急整備地区に指定されて流れが変わった。経済状況の悪いときに大変苦労したと」と、計画を振り返った。
地上げからの〝守り神〟になったお稲荷さんも再生された
ベントテラス
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記者は前職のとき、勤務先が近くだったこともあり、当時のすさまじい地上げの実態を取材している。いまの方は理解できないだろうが、この富久も地上げが始まった昭和60年代の初めの地価は坪500万円くらいだったのが、最終的には3,000万円に吊り上った。西新宿も同様に坪300万円がゼネコンに売却されたときは平均3,000万円だった。接道部分などは坪1億円で売買された。
富久も西新宿もそれこそ街が死んでいた。地上げ屋が怖くて歩くのも怖いくらいだった。
あれから25年。富久も西新宿も見事な街に生まれ変わった。関係者の努力には頭が下がるばかりだが、どれだけの犠牲を払ったかを考えると言葉が詰まる。
地上げが結局成功しなかったのは、当地にあったお稲荷さんの権利者が80人くらいおり、その所在が分からない人もかなりいたのがその理由だと聞いた。そのお稲荷さんに賽銭泥棒が入ったことは記者もよく知っている。
お稲荷さんは〝地域の守り神〟として敷地内に祀られている。
左側の壁は庵治石が張られ、正面は壁面緑化が施されたエントランスホール
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完成した建物をみて驚いたのは、まず共用施設の充実ぶりだった。エントランスホールの高さ5mくらいの壁には大きな庵治石が50枚は張られていたはずだ。ホール正面にやはり高さ5m、幅約5mの観葉植物の壁面緑化が施されていた。
3室あるゲストルームのうちの和室タイプの床は無垢のナグリ仕上げとなっており、フィットネスルーム、パーティラウンジ、キッズラウンジ、スカイラウンジ、図書コーナーなどの10のラウンジも充実している。各フロアの廊下には版画などのオブジェが200点くらい展示されている。
接地型の住宅に住みたいという地権者向けにペントテラス住戸17戸や地権者が所有する7階建て賃貸住棟(121戸)が併設されている。スーパーや認可保育所も設けられている。
ラウンジ
アール状になっている共用部分の配置
大成有楽不動産他「ユトリシア」完成 坪単価は115万円
「ユトリシア」
大成有楽不動産が同社など6社JVの習志野市郊外の大規模分譲マンション「ユトリシア」の最終街区が竣工いたのに伴い、報道関係者向けに完成お披露目会を行った。
「ユトリシア」は壱番街から五番街で構成される全1,453戸、総開発面積約66,000㎡の大規模分譲マンション。2009年2月に壱番街が竣工して以降、既に1,100世帯が居住。ガーデンや本格的体育館をはじめとする30もの共用施設が集まる「センタープロムナード」、様々な菜園がある中庭など広大な敷地を利用したランドスケープデザインが特徴。共用施設を活用したコミュニティ活動は2014年度の「グッドデザイン賞」を受賞している。
物件は、京成本線実籾駅から徒歩11分、習志野市東習志野2丁目に位置する14階建て全1,453戸。専有面積は71.34~123.26㎡。施工は長谷工・大成建設共同企業体。売主は同社のほか名鉄不動産、三交不動産、東レ建設、新日本建設、長谷工コーポレーション。
分譲開始は7年前。当初は坪単価130万円で分譲されていたが、市況の変化を受けて現在は115万円。最終街区の「五番街」272戸のうち約130戸が分譲済み。住戸プランはディスポーザー、食洗機が標準装備、バルコニー奥行きは約2m。
中庭
中庭に設けられている菜園(手前はオクラ、その奥にはダイコン、サツマイモ、シソなどが植えられていた。オクラの実はどうして下ではなく上を向いているのか。そう言えば、どうして朝顔のツルや記者の頭は左巻きで、巻貝はほとんどが右巻きなのか)
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現地を見学してランドスケープデザインが優れているのに目を奪われた。とくに敷地を南北に貫く「センタープロムナード」と、横軸に配した中庭がいい。提供公園には生け垣の迷路もあった。休日になると子どもたちで大賑わいになるそうだ。
坪単価115万円というのは、新築の単価では考えられない安さだ。都心へのアクセスはいいとは言えないが、30坪で3,000万円台という価格は魅力だ。竣工を受けて販売スピードは加速するのではないか。
ゲストルームなどを併設した体育館にも驚いた。2階建てで建坪は約100坪くらいではないか。公式のバスケットボールのコート(縦28m、横15m)も可能だという。同じようなものはこれまで「ガーデンアソシエ」(大船)と「コロンブスシティ」(千葉市)にも建設されたという。
われわれはマンションの価値を坪単価でしか評価しない測れない習性がある。中小規模マンションにはこれが当てはまるのだが、大規模物件では共用施設とか緑の量と質を適正に評価する指標を持たないといけないことをつくづく感じた見学会だった。
体育館
東急不動産 「品川勝島」完成 「シェア・デザイン」の価値をどう伝えるか
「ブランズ品川勝島」のエントランス付近のケヤキの植栽
東急不動産は9月8日、国土交通省の平成25年度(第2回) 住宅・建築物省CO2先導事業に採択され、同社の新しい暮らし方提案「シェア・デザイン」の第一号事例「ブランズ品川勝島」が竣工したのに伴い、記者見学会を行った。
物件は、京浜急行鮫洲駅から徒歩11分(東京モノレール大井競馬場前駅から徒歩8分)、品川区勝島1丁目に位置する18階建て全356戸。引き渡しは2015年9月29日の予定。分譲開始は昨年の7月。これまで総戸数の約75%が供給ずみだ。
この物件については、同社が分譲前に記者発表したときの記事を参照していただきたいが、当時〝世界初〟と言われた東京ガスのマンション向け「エネファーム」を全戸に搭載しているのが大きな特徴だ。
マンション向け「エネファーム」はその後、10数物件で採用されており、今後の普及が期待される。縦約400ミリ×横約400~560ミリ×高さ約1800ミリとややかさばるのが課題だ。
「シェア・デザイン」は、エネルギー、環境、コミュニティの3つのテーマをそれぞれシェアすることで、省エネ・省CO2の暮らしを進めようというもので、同社と東急コミュニティー、東急住生活研究所が共同して提案した「東急グループで取り組む省CO2推進プロジェクト」が国交省の先導事業に採択された。プロジェクトには石勝エクステリア、東急ホームズ、東京都市大学、東急ストアなどの東急グループも参画している。
エントランス付近のケヤキの植栽
エネファーム
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販売開始から1年ちょっとで全戸数の75%が供給できたということは、後発の大成有楽不動産 「オーベルグランディオ品川勝島」(452戸)との競合を考えればよく売れていると評価できる。都心部のマンション価格相場は強含みで推移しているので、完成してからコンスタントに売れていくのではないか。
ただ、率直に言えば、同社が力を入れている割には販売スピードはそれほどでもないという印象を受けた。
それはなぜか。分譲前の記者発表時にも感じたことだが、省エネ、環境、コミュニティはそれぞれ喫緊の課題で、当然デベロッパーもこれらを重要なテーマに掲げている。ユーザーの意識も高まっており、これらが購買動機の上位を占める物件もある。
しかし、記者はまた別の見方をしている。省エネ、環境、コミュニティは欠かせないものではあるが、デベロッパーが期待するほどユーザーは反応を示していないのではないかということだ。
その理由として、エネファームは一次エネルギー利用率が85.8%で、火力発電の37%よりはるかに高く、年間の光熱費が約4.8万円節約できるとか地球環境にやさしいなど〝見える化〟が理解されやすいのだが、環境をシェアしたりコミュニティをシェアしたりすれば具体的にどのようなメリットがあるのかが分かりづらいので、購買動機につながらないのではと思っている。
いい例が植栽だ。完成した建物の公開空地には鹿児島から取り寄せたケヤキの大木が16本も植わっていた。最近のマンションの外構に多く植えられるのは値段の安いシラカシだが、ケヤキとどれくらい差があるか、記者が販売担当者なら来場者にきちんと伝えるが、デベロッパーの販売担当者は知らない人のほうが多いのではないか。
また、都の「マンション環境性能表示」でも満点の星15個に一つ欠けるだけの14個を獲得しているのだが、この価値をユーザーにきちんと伝えられているのか。記者はこれもまた高く評価している。
これは同社だけの問題ではない。とくに電鉄(系)会社は、良くも悪くも鷹揚なところがある。各社が知恵を絞って〝見せる化〟をより一層進める必要がある。「コミュニティの価値」を価格に換算したら250万円というデベロッパーのアンケート調査結果もあるが、これはそのまま鵜呑みにできない。実際の消費行動はまた別ではないか。
それと、やはり基本的には住戸プランの差別化というか魅力づけをしないと、立地条件に難のある物件は消費者の需要を喚起・創造することはできないと思っている。その点で、同社のプランはどうだったのか。
例えば食洗機。記者は共働き世帯で食洗機は必需品だと思っているが、同社の物件はオプションだが、大成有楽の物件は標準装備されている。
〝世界初〟が強調された割には、〝世界初〟に見合うメリットを具体的にユーザーにアピールできていないのではと感じた。
かなり批判的なことを書いたが、東急不動産はユーザーから見たら東急電鉄グループだ。電鉄(系)会社の総合力は普通のデベロッパーより高いと思う。東急電鉄も毎日数百万人の足になっている。大学まで持っているデベロッパーなどない。それだけに歯がゆさを感じるのだ。
エントランス部分
シェアラウンジ
「リサイクルシェアスペース」(コンシェルジュの了解を得て不用品を交換したり売買できるのだという)
三井不レジ キッチンを動かせる画期的商品「Imagie(イマジエ)」開発
キッチン
三井不動産レジデンシャルは9月8日、ライフスタイルやライフステージに応じて住戸内のレイアウトを変えられる間取りフリープラン「Imagie(イマジエ)」を開発し、10月末に分譲するマンション「パークホームズ赤羽西」に採用すると発表した。キッチンをキャスター付きとして可動させるというもので、前代未聞の企画にユーザーがどのような反応を示すか興味津々の物件だ。
物件は、都営地下鉄三田線本蓮沼駅から徒歩7分、北区赤羽西六丁目に位置する10階建て全160戸。専有面積は68.63~87.64㎡、価格は未定。竣工予定は2016年9月中旬。施工は長谷工コーポレーション。
「Imagie」とは、「imagination(想像力)」と「ie(家)」を合わせた造語で、住む人が想像をふくらませることができる意を込めたという。
特徴は以下の6つ。①整形かつ天井・床面を完全フラットにした独自の空間設計②キャスターで可動するオリジナルキッチンユニット(Imagie kitchen)を新開発③専有部内の3カ所のキッチン接続ポートによって、キッチン移動工事の工程を大幅に削減④玄関前にゆとりあるウェルカムポーチを設けることで、バルコニーのような使い勝手を実現⑤プランに合わせて自由にグルーピングできる照明計画⑥主要な設備スイッチの集約で、空間レイアウトがさらに自由に-。
記者発表会の冒頭挨拶した同社開発事業本部都市開発二部部長・各務徹氏は、「マンションのマーケットは都心部を中心に順調だが、外部環境は建築費が高止まりし、お客様の選別も厳しくなってきている。企業努力をしないといけない時代だ。今回の新商品も多様化しているニーズに応えたものの一つ。新商品は専有部分の8割を自由にプランニングでき、しかも安価でできるのが特徴。これからもどんどん付加価値をつけて進化させていきたい」と語った。
キッチン下部キャスター(左)とキッチン接続ポート
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「Imagie」を商品化できたのは、排煙ダクトがいらない循環式レンジフードを設置し、IHを利用することで排煙の問題(ガスでは具合が悪い)をクリアしたことがまず挙げられる。
重さが400キロ近いキッチンをどう動かすかだが、これもキャスターを付けることで問題を解決した。キャスターを浮かせて床に固定する際の問題点も、京大防災研究所の実験で震度7相当でも強度は十分であることが確認できているという。
さらに、接続ポート(電気・給排水・給湯設備)を3カ所に設置したことで、間取りの可変性をさらに高めた。しかも、工事は10万円以内で収まるという。階高(約3m)はそれほど変えずに、玄関に入る前からスロープ式にして住居内をフルフラットにし、給排水管の勾配もクリア。二重床・二重天井にし、妻側住戸6戸に限定したことで、音の問題も解消できたという。ただ、ディスポーザーには現段階では対応できないそうだ。
「パークホームズ赤羽西」完成予想図
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この嬉しさは何に例えたらいいのだろう。例えば、難しい方程式が解けたとき、囲碁・将棋、カルタ、チェスで劣勢を一挙に挽回したとき、ジグゾーパズルの最後のピースがはまったとき、知恵の輪を解いたとき、こんがらがった毛糸玉をほぐしたとき、小指のトゲが抜けたとき、生え変わりの歯が抜けたとき、〝そこそこそこ〟おばあちゃんの肩のつぼを探り当てたとき、贔屓チームの起死回生の逆転満塁サヨナラ本塁打のシーンに出会ったときect.…
今回の発表会は、そんな嬉しさがこみ上げてきた。そして、ストンと胸に落ちるものがあった。同社の〝パークホームズ〟はたくさん見てきた。間取りプラン提案などは思い出せないくらい多く同社は熱心に取り組んできたし、可動間仕切りは他のデベロッパーも10年、20年前から取り組んできた。
何が嬉しかったかと言えば、キッチンをキャスター付きで自由に動かせることだった。現場に居合わせた開発協力企業の一つ、タカラスタンダードの担当者によると、可動キッチンは商品としてはあったそうだが、マンションなどの住宅は給排水、換気扇などの問題があり、採用するところは皆無だったという。
記者も可動キッチンなど考えたことがない。しかし、IHの普及と循環式レンジフードの開発によって、考えとしてはキッチンを自由に設置することは不可能ではないと思っていた。野村不動産と長谷工コーポレーション、ブリヂストンが共同開発した「サイホン排水システム」によって、マンションの間取りはそれこそ自由自在にできると考えていた。
今回のシステムは「サイホン排水システム」ではないが、それを先取りしたものだ。よくぞ考え出したものだ。開発に当たっては日建ハウジングシステム、タカラスタンダード、富士工業販売、大塚家具、プロセブン、パナソニック、LIXIL、長谷工コーポが協力会社として関わっている。天晴れ、快哉を叫びたいくらいだ。
嬉しいことはこれだけではない。冒頭挨拶した各務氏には、同社と伊藤忠都市開発が12年前、全701戸の平均専有面積が120㎡という、テーマが〝絆〟の「パークシティ東京ベイ新浦安」を3カ月で完売したときお会いしている。
各務氏は当時、商品企画担当で、常識を超えた企画を「考え出すと夜も寝られず、悶々とする日もあった。『もっと小さくてもよかったのではないか』と考えたこともあった。気持ちがぐらついたとき、『経営陣も『面白い』といってくれた」と語っている。東日本大震災のあと〝絆〟は流行り言葉になったが、同社はそのころから〝絆〟をテーマにしていた。
あの「新浦安」を手掛けた各務氏がまた、キッチンを可動式にするなど信じられないようなプランを開発し、責任者としてOKをよくぞ出したものだと思う。根っからの企画マンなのだろう。
「Imagie」を説明したのは、各務氏の部下でもある同部開発室主任・長戸佐紀子氏だったが、長戸氏もまた嬉々として商品企画について記者団の質問に答えていたのが嬉しかった。
いま記者は「女性活躍」をテーマに取材をしているのだが、同社はここ数年、ビッグプロジェクトも含め女性担当者が説明するケースが増えている。長戸氏は今回の商品開発に当たって、「キッチンを動かしたいという考えはかなり前から脈々と受け継がれてきた。キッチンを動かしたら楽しいじゃないですか。このプロジェクトにはすべて私も関わってきました」と話した。
嬉しかったのはまだある。販売を担当する山際寛生氏とばったり出くわしたのだ。これは取材の趣旨とは離れるのだが、山際氏は第三企画が主催するRBA野球大会に平成12年にデビューした。
愛知の名門・東邦-中大硬式野球部出身で、身長は185センチ。打席こそ4打席と少なかったが、3打数2安打5打点、本塁打も2本放った。投げては王者ケンコーポの小笠原から速球で三振を奪うなど、奪三振率は15.0をマークした。
あの怪力ぶりはいまでも忘れられない。その後、仕事が忙しいのか野球大会にはほとんど出場しなくなったが、こうして現場で活躍されているのが何よりも嬉しい。山際氏のように販売現場ででも頑張っているRBA野球選手は何百人もいるはずだ。
長々と書いてしまったが、連綿と引き継がれてきた同社の商品企画担当者の考え・夢がこうして実現したことに記者は感動を覚える。「Imagie」にユーザーがどのような反応を示すか、楽しみだ。人生に夢がある若年層ファミリーには大うけするかもしれない。その価値は「100万円高くても安い」と若い女性記者が語った。
ウェルカムポーチがまた面白い。これに似たものは同社がもう20年も前にどこだったか忘れたが、提案したことがある。この提案も無限の可能性を秘めている。
最後に坪単価について。同社は「価格は未定」としているので、以下はあくまでも予想だ。外れても責任は取らない。
実は、同業の信頼できるある記者と行く途中で一緒になり、あれやこれや歓談し、二人で坪単価はいくらになるか話しあった。その記者は「坪250万円くらいか」と投げかけたので、わたしは「250万円でも驚かないが、三井さんはそこまで高値追求しないんじゃないか。230万円というのはあり得ないが、坪240万円くらいで分譲してくれたら拍手喝采したい」とかえした。分譲は10月末だが、もう少しすれば価格ははっきりする。坪240万円はいい線だろうと思う。
ポーチ扉
ウェルカムポーチ
長戸氏
山際氏
「類まれな」レベルの高さ 野村不・三井レジ「桜上水ガーデンズ」完成
D棟屋上部分からクラブハウス、B、C棟を望む
野村不動産は8月27日、このほど建物が完成した三井不動産レジデンシャルとの共同建て替えマンション「桜上水ガーデンズ」を報道陣向けに公開した。敷地約4.7haの建て替えは23区内最大級のマンションで、全9棟が免震、既存樹を多数残したランドスケープデザイン、駐車場の地下・屋内化とその屋上緑化、〝3~5戸1〟エレベータ、天井高約2.6mの居住空間など総合的な評価では京王線のナンバー1マンションが完成したといえそうだ。
物件は、京王線桜上水駅から徒歩3分、昭和40年完成の「桜上水団地」(17棟404戸)を9棟878戸に建て替えたもので、敷地規模約4.7haの建て替えプロジェクトとしては23区最大級。6階建て14階建て全9棟を全棟免震構造にしたのも都内では例がないと思われる。事業主は同社(事業比率50%)と三井不動産レジデンシャル(同)で、野村不動産が幹事会社。事業コンサルは日建設計。設計は日建ハウジングシステム、施工は大林組・清水建設。建物の絶対高さ制限は31mだが、地区計画によって45mに緩和されている。
従前の豊かな緑を継承しているのも特徴の一つで、法定容積率200%を160%に抑えることで緑化率・空地率を高め、世田谷区の保存樹に指定されたケヤキの大木など既存高木を180本残したランドスケープデザインとしている。駐車場(476台)を地下・屋内化しその屋上を緑化している。
住戸プランでは、従前の〝2戸1〟階段を継承するため〝3~5戸1〟エレベータを設置して両面バルコニータイプを多くし、天井高約2.6mを確保した。
見学会に臨んだ同社住宅事業本部マンション建替推進部部長・岩田晋氏は、「団地の将来を考える会が発足したのは平成元年。当社と三井さんが事業協力者として参画したのが平成14年。この間、合意形成に向け、組合員の人数だけあった様々な意見を考えられないような長い時間をかけ、苦労してまとめられた地権者の方々の努力がすべて。180本というびっくりするほどの既存樹を残し、免震、地下駐車場、両面バルコニーなど、四半世紀を経て類まれなマンションに生まれ変わった。当社は完成済みも含めて16件の建て替え事業に参画しているが、老朽化マンションの再生は社会的使命」と語った。物件は竣工を待たずに完売している。
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地権者の〝持ち出し〟がない建て替えマンションとしては都心部の条件に恵まれているところはともかく、準都心・郊外ではこれが最後かもしれない。タワーマンション以外では、全棟免震の記録では、ナイスの「ヨコハマオールパークス」12棟1,424戸の例があるが、都内ではこのマンションが初めてかもしれない。
既存樹180本のうち区の保存樹木は14本。2013年に竣工した大成有楽不動産「芦花公園」の保存樹木は10数本。残念ながら正確には何本だったかは当時取材できなかったのだが、「数本」というのは普通は5~6本だろうが、3~4本をいう場合もある。果たして多いのは今回の「桜上水」か「芦花公園」か。規模が小さいので、密度としては「芦花公園」に軍配はあがるがどうだろう。保存樹木に指定されると、剪定など維持管理に補助が出るはずだ。
「桜上水ガーデンズ」エントランス部分
クラブハウス前から
クラブハウス屋上のテラス・ガーデン(手前はヨーロッパから取り寄せたという日本に1台しかない卓球台)
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岩田氏が「類まれな」と形容したが、これは〝誇大広告〟でも大げさな表現ではない。記者も心底からそう思った。と同時に、想像をはるかに超えるレベルの高さに、記者のイマジネーションの貧しさに頭をどやされたような、穴があったら入りたいくらいの恥ずかしさを覚えた。
このマンションについては、分譲開始前に記者発表会が行われており記事にした。
その記事を読んでいただきたいのだが、記者も当時の記事を読み返した。特徴は過不足なく、つまりニュースリリースに盛り込まれていることは紹介できていると思う。
しかし、当時、記者は坪単価330万円というのはかなり高いと考えた。そこで、「単価設定について『高くないか』と質問した。当時の同社広報部長・北井大介氏は『マンションの価値は単価だけではない。二度と出ない立地で、免震や緑化も図った。最上級のマンションで、価格は妥当と考える。お客さまにも評価されるはず』と答えた」と書いている。北井氏の仰る通りだが、それでもずっと今日の見学会まで「高い」と思っていた。
そして今日、完成した建物をみた。最初にエントランス部分の差し渡し1mくらいありそうな世田谷区の保存樹に指定されているケヤキの大木が目に飛び込んできた。舗道は本物の石が採用されていた。これには度肝を抜かされた。
記者は京王線に長く住んでおり、主だったマンションはそれなりに見てきているから言えるのだが、総合的な評価は、このマンションが間違いなく京王線ナンバー1と確信を持って言える。(井の頭線には三井不動産レジデンシャル「パークシティ浜田山」があるが)
問題は、分譲開始前の記者発表会でどうして「最上級のマンションになる」という確信が持てなかったのかということだ。過ちを犯した最大の原因は、「高い」という先入観が先走り、物件を総合的に評価しなかったことだ。駐車場地下化、3~5戸1エレベータ、日建設計、既存樹180本などの価値を過小評価したことだ。
もう一つ、これは言い訳になるのだが、記者は年間100件くらいのマンションの取材を行っている。その多くは分譲開始前や分譲中で、せいぜいモデルルームを見たりニュースリリースを読んだりして商品企画の良否などを判断する。その判断はそれほど間違っていないと思う。
ところが、完成後のマンションを見学するのは年間で20件あるかどうかだ。デベロッパーが竣工見学会をあまりやらないからだ。売れるか売れないか、高いか安いかの判断はできても、実際にどのような建物になるか分からない-これが記者の決定的な欠点、弱点、泣きどころだ。
さらに言わせていただければ、これはデベロッパーにもその責任の一端がある。販売時に見学会を行っても完成後の見学会はあまりやらない。ここに問題がある。記者を育てる意味でも各社はどんどん竣工見学会をやるべきだ。実際のものをみないとその良否はわからない。最近見学会を行ったコスモスイニシア「武蔵新城」、大京「港北ニュータウン」も素晴らしかった。
駐車場の屋上を緑化した「スクエアガーデン」
既存の大谷石や銘板を配した「ビンテージガーデン」
大京 間取りや設備を選べるシステム開発「鴨居」のマンションに初導入
「ライオンズ横濱鴨居ザ・リゾーティア」完成予想図
大京は8月26日、多様化するライフスタイルに応えるため、マンション専有部の間取りや設備を選べる「WHITE CANVAS SYSTEM(ホワイトキャンバスシステム)」を開発し、「ライオンズ横濱鴨居ザ・リゾーティア」に初導入すると発表した。
同システムは、「東京ガス都市生活研究所」と協力して開発したもので、性別や年代、子どもの有無、子どもの年齢などの属性や家族構成別に様々なライフスタイルに合わせた間取りを選択し、それをベースに室内設備の仕様までカスタマイズできるようにした。6つの間取りプランと3つの収納空間、キッチンやバスルームなどの室内設備を自由に組み合わせることができる。今後、物件の特性に合わせて同システムを順次採用していく。
「ライオンズ横濱鴨居ザ・リゾーティア」は、JR横浜線鴨居駅から徒歩12分、横浜市緑区白山一丁目に位置する7階建て全99戸。専有面積は60.47~80.45㎡、価格は未定。竣工予定は2016年6月30日。
コスモスイニシア 新ブランド第一弾「イニシアクラウド二子玉川」公開
「イニシアクラウド二子玉川 イースト・ウエスト」完成予想図
コスモスイニシアは8月25日、新しいマンションブランド「INITIA CLOUD(イニシアクラウド)」の第一弾「イニシアクラウド二子玉川」のモデルルーム見学会を一般公開に先駆け報道陣向けに行った。第2種低層住居に位置する41戸の規模で、5つのコンセプトと3つのテーマが盛り込まれており、ありきたりのプランに飽き飽きしているユーザーの心を捕えそうなマンションだ。分譲は10~11月の予定。
先行分譲する「イニシアクラウド二子玉川 イースト」は、東急田園都市線二子玉川駅から徒歩22分(バス7分徒歩6分)、世田谷区岡本二丁目の第2種低層住居専用地域(高さ制限12m)に位置する4階建て41戸(ウエストとあわせ2棟67戸)。専有面積は77.19~98.34㎡、価格は未定だが坪単価は約295万円の予定。竣工予定は平成28年1月下旬。施工はライト工業。
現地は、丸子川が近くに流れ、その北側には国分寺崖線が走る住宅地の一角。敷地は元果樹園で、四方が道路に囲まれている。住戸プランは西南西向きと東北東向きで、ワイドスパンの77㎡の3LDKが中心。
間取りはクランクインの玄関がほとんどで、ライフスタイルやライフステージによって間取りが変えられるのが大きな特徴。各居室はスライドウォール・引き戸を開閉することで1LDKから3LDKまで自在にレイアウトできる。
また、テーマの一つでもある「タッチ」では、リビングドアはナグリ調仕上げにしたり、床は凹凸のある木目調フローリングにしたりして、素材感や自然の肌触りが味わえるように工夫を凝らしている。キッチン、洗面所、玄関収納のカウンタートップはシーザーストーン。引き戸はソフトクローズ機能付き。
このほか、コンセプトを生かすようキッチンも含めた全居室に床暖房を設置し、ベランダのバルコニーは隔壁で仕切るのではなく独立性を確保しているのが珍しい。食洗機、リビングの物干しポールも標準装備。
LDK モデルルーム
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まず、単価。駅から距離がややあるので坪300万円はしないだろうが、280万円で果たして分譲するかと必死で頭を回転させていたが、坪295万円と聞いて落ち着くところに落ち着いたと納得した。
坪単価を300万円以下に抑える一方で、居住面積を3LDKではやや広めの77㎡を確保しているのがミソだ。グロスで7,000万円を切るような価格設定だと思う。
「INITIA CLOUD(イニシアクラウド)」のコンセプトはしっかり伝えられていると思う。間取りを自由自在に変更できるのも、木のぬくもり・優しさを感じさせる素材の採用も、ここ数年の時代の流れだ。ありきたりのプランでは満足しない層にターゲットを当てたのは正解だろう。全居室が冷暖房付きで、独立型バルコニー付きというマンションなどそうないはずだ。
ひとつだけ、主寝室くらいは独立型で遮音性に配慮してもいいのではないかと考えたが、販売担当者によると、「2枚引き戸を壁にするには30~40万円くらいの費用で済むが、逆に壁を引き戸に変更する場合はその3倍の費用がかかる」とのことだった。なるほど、よく考えたものだ。
手前の主寝室とその奥の居室は2枚引き戸で開閉できるようになっている
手前のリビングと隣接の居室は3枚引き戸で開閉できる
玄関・ホール(クランクイン型となっている)
コスモスイニシア 「‘柔らかさ’のある住まい」テーマの新ブランド「INITIA CLOUD」(2015/6/30)
野村不動産 武蔵小金井駅前の再開発に参画 マンション690戸建設へ
「武蔵小金井駅南口第2地区第一種市街地再開発事業」完成予想図
野村不動産は8月21日、「武蔵小金井駅南口第2地区第一種市街地再開発事業」の市街地再開発組合の設立認可を受け、参加組合員として事業参画すると発表した。
同事業は、小金井市の総合拠点である武蔵小金井駅前に相応しい土地利用のため1970年頃から第1地区も含めたまちづくり組織活動が行われており、2012年3月に事業が完了した第1地区と連続した一体的なまちづくりを目指すもの。2012年4月に市街地再開発準備組合を設立し、2014年8月の都市計画決定を経て、今回、再開発組合の設立が東京都より認可された。
同事業地はJR中央線武蔵小金井駅から徒歩3分、地域に開かれた公共空地・空間を整備し、地区全体の回遊性やにぎわいの創出、住環境や地域の防災性の向上を図る。
建物は地上22階・地上27階建て延床面積約110,000㎡の高層ツインタワーマンションで、戸数は約690戸。2018年春に分譲開始予定。2020年に全体完成予定。施工は清水建設。
パッシブとスマートを融合した大京「港北ニュータウン」完成
「ライオンズ港北ニュータウン ローレルコート」
大京は8月20日、パッシブとスマートを融合した次世代環境共生住宅「ライオンズ港北ニュータウン ローレルコート」が完成したのに伴い竣工お披露目会を行った。同社はもともと環境共生に積極的に取り組んできたデベロッパーだが、〝ここまでやるか〟とうなってしまった。素晴らしいマンションだ。
このマンションについては、分譲前の記者発表会の記事を書いているのでそちらも参照していただきたい。横浜市営地下鉄グリーンライン北山田駅から徒歩12分の7階建て全221戸ですべて完売している。
港北ニュータウンのまちづくり方針に沿って総延長約15㎞の緑豊かな幹線〝グリーン・マトリックス〟の風景を敷地内に再現したのが特徴で、総延長100mのせせらぎの道・ビオトープを設置、緑地率は約30%確保し、約3,700本の在来種の植栽を施している。
屋上に設置した25kwのソーラーパネルで発電した電力は44kwの蓄電池に蓄え、その電力を利用して深さ約90mの井戸水のポンプを稼働させ、せせらぎ・ビオトープ、草花の自動灌水、エントランスや中庭のウォーターカーテンへの利用、防災井戸に利用している。
緑をたくさん確保することで、風の流れを促しクールスポットを醸成し、さらにまた専有部の高機能吸気口、通気ルーバー、換気機能付き玄関ドアを装備することで、一般的なマンションの約4倍の換気量を確保し、真夏の室温を4.9℃引き下げる効果をもたらした。
光りと水、緑、スマートを融合させたことで年間約180万円の管理費の節約となり、1㎡当たり約149円という管理費を設定することができた。
同社はまた、「としまエコミューゼタウン」を設計した「ランドスケープ・+」と協力して自然環境・生物多様性保全に対する取り組みも行い、向こう3年間の持続可能な生態系配慮型植栽管理のスケジューリングを済ませている。
こうした取り組みは、集合住宅では初の「いきもの共生事業所認証」を取得した。
ビオトープ
ビオトープ
せせらぎの道
〝ホワイトカーテン〟
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環境共生住宅(マンション)についてはかなり取材してきた。いま思い出すのは、その走りともいうべき埼玉県住宅供給公社の「グローブコート大宮南中野」や、同社の物件で言えば「グリーンティアラ星が丘」、「フォレストレイクひばりが丘」(381戸)などだが、今回の物件は10年前の「ひばりヶ丘」と比べ規模がそれほど大きくないにも関わらず、環境共生に取り組む姿勢、意気込みは勝るとも劣らない。
まず、目に飛び込んできたのが、エントランス部分の植栽と〝ホワイトカーテン〟と呼ぶ井戸水を利用した水のカーテンだった。高さは約3m、幅は20mはあっただろうか、それこそ滝のように勢いよく水が水盤に落ち、水音を立てていた。ホテルならいざ知らず、このような演出がされているマンションを初めてみた。水音はガラス越しにカフェテラス・ライブラリーコーナーまで聞こえた。同じような水のカーテンはエントランスホールの奥の中庭にも設置されていた。毎日、26トン(夏場、冬場は7トン)の井戸水をソーラーパネルの電力によって汲み上げているからこそできる演出だ。ある高額マンションでは、せっかくのカスケードは管理費がかさむことから止められていたのを見ている。
せせらぎの道とそれに続くビオトープも立派なものだ。水源となる場所にはオブジェが設けられており、冷たい水が湧き出ていた。井戸水は鉄分が多く飲用水としては利用できないとのことだったが、あの懐かしい井戸水の匂いがした。メダカやヤゴが棲めるのだから人体に害はないと思う。
在来種ばかりの植栽、高さ3m幅5mのエントランス周りの壁面緑化、駐車場の壁面緑化、駐輪場屋根の緑化、近隣にも開放する藤棚付きの広場の提案もいい。丸いコンクリ製のテーブルは防災かまどにも早変わりするとのことだった。
この日は、同社グループの社員約200人も見学に訪れたそうで、同社の環境共生の取り組みをしっかり共有できたのではないか。社員は胸を張っていい。
カフェテラス・ライブラリーコーナー
井戸水が湧き出るオブジェ
住民にも公開する公園
創業30周年の明和地所 「クリオ青葉台」で廊下幅1.5m実現
「クリオ青葉台」完成予想図
明和地所が分譲中の「クリオ青葉台」を見学した。東急田園都市線青葉台駅から徒歩5分の住居系エリアに立地するレベルの高い全34戸のマンションで、4月末から分譲開始しているが、残り5戸と販売も好調だ。
物件は、東急田園都市線青葉台駅から徒歩5分、横浜市青葉区榎が丘の第1種住居地域に立地する6階建て全34戸。専有面積は60.22~84.61㎡、現在、先着順で分譲している住戸(5戸)の価格は5,476万~7,994万円(60.50~82.71㎡)、坪単価は286万円。入居予定は平成28年6月下旬。設計はいしばし設計。施工は大勝。
4月末のゴールデンウィークから販売が始まっており、現在、残りは5戸。戸建てからの買い替えや買い増しが多いのが特徴という。
建物は南向きが中心で、建物の外周を緑で覆い、エントランス部分には鉄平石を配しているのが特徴だ。キッチンや洗面化粧台はカラーセレクト・デザインセレクト・アイテムセレクトが無償で選べる〝conomi〟を採用している。
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リーズナブルな単価を聞いて、80㎡台のモデルルームを見学してすぐ、人気になるのが分かった。モデルルームはリビングももちろん大事だが、記者は玄関を入ったときの印象を重視する。
このマンションのいいところは玄関とそれに続くホール・廊下にある。廊下幅は何と約1.5mもあった。メーターモジュールの廊下幅を確保しているマンションが少なくなっているとき、この広さを確保しているのにびっくりした。トイレも含めドアノブは壁面まで後退させるか、引き戸を採用していた。
廊下幅が広いのはこのモデルルームだけでなく、60㎡台でも960ミリ(芯心)確保し、1130ミリというのが中心だ。
キッチンもいい。カウンターはステンレスで、食洗機もバックカウンターも吊戸棚も標準。間取りプランでは、主寝室にDEN(約1.4畳大)を設置するとともに、娘との同居を想定した親子で使えるクローゼット(約2畳大)を提案しているのがいい。
最近のモデルルームは子育てを意識したものが多いが、主人や主婦の居場所をもっとデベロッパーは考えるべきだ。その点で、このモデルルームは双方の心をくすぐる工夫を凝らしている。だからこそ、戸建てからの買い替え・買い増しの潜在的な需要を掘り起こしたのだろうと思う。
モデルルーム
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同社は今年で創業30周年を迎えた。記者は創業の経緯から今日までずっと同社を取材し続けてきた。創業してすぐにバブルが崩壊したが、同社はそれほど影響を受けなかった。それどころか、100㎡の〝ㇾミントンハウス〟に象徴されるように商品企画で業界をリードするまで成長した。しかし、あの〝国立問題〟をきっかけに同社は長い迷路にはまり込んでしまった。
今回の物件を見学して、その長いトンネルから同社が抜け出すのではないかという予感がした。1.5m幅の廊下だ。かつての同社にはそのようなチャレンジ精神が満ちていた。何かをつかむきっかけになってほしい。この物件のほか最近供給した「東小金井」「大島」「清瀬」なども売れ行きは極めて順調に推移しているという。今後の商品企画に期待したい。
エントランス