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京都・鴨川(クレーンが見えるのが現地)

 三菱地所レジデンスが10月9日、京都・鴨川に面した西日本最高価格の7億円超を含む「ザ・パークハウス京都鴨川御所東」のプレス向け発表会を行った。

 集まった記者は約40人。数人の記者が質問した。そのほとんどが価格(坪単価)に関するものだった。それに対して、同社は「価格は未定」を繰り返した。はっきりしない答えにいらだったのか、ある記者が「価格(坪単価)を出さないと会見にならない。7億円台と言われても7億1,000万円台もあるし7億9,000万円台もあるではないか」と言い募った(東京ではこんな鋭い質問をする記者はあまりいない)。

 報道陣がいらだつのも当然だ。わざわざ京都まで行って、プレス向けリリースをもらって、事業説明を聞いてモデルルームを見て、それを記事にするだけならそのままリリースを引き写せばいい。

 京都の鴨川に面した一等地のマンションがどれくらいの価値があるのか、それを価格に置き換えて記事にしたいと思うのは当たり前だ。わたしもそのうちの1人だ。

 でも、わたしは黙っていた。それは、地元の報道の方がどのような質問をするか知りたかったからだし、関西圏のマンション市場を把握していないのに質問するのも失礼だと思ったからだ。

 結局、しつこい報道陣の質問に同社は「億ションは全体の6割を超える」「南向き80~120㎡台で7,000万円台から1億9,000万円台」「坪単価400万円以上」と答えた。

 この種の発表会でデベロッパーが坪単価を発表するかどうかはまちまちだ。多くのデベロッパーは公表するのだが(坪単価の意味を知らない記者もいるが)、なかには「未定」で通すところもある。最近では東建の「目黒」がそうだった。

 「価格未定」は一種のじらし戦法だが、地所たるものそんな姑息な手段を取るべきではない。「価格未定」のダイコンを主婦は買う気になるだろうか。それと一緒だ。

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 しかし、同社が現段階で「未定」とするのもよく分かる。一般的な実需向けマンションなら相場というものがある。ところが、今回の物件は「今後、京都御所に近いこれだけの規模で、鴨川に面したマンションは出ないのでは」(同社)ということのようだから、「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」と同様、限りなく〝唯一不二〟のマンションになるのだろう。これに価格を付けるのは難しい。

 もう一つ、同社が「未定」としたのには理由がありそうだ。それは「6割はセカンドハウス需要」と呼んでいるからだ。あのバブル期には、はっきり覚えていないが、熱海では坪単価600万円のリゾートマンションが分譲された。150戸くらいがすべて億ションという物件も伊東で分譲された。セカンドハウスとはそのようなものだ。

 となれば、鴨川に隣接する価値は果たしてお金に換算できるのか、できるとしたらいくらになるのか。この問いに誰が正答できるか。「千鳥ヶ淵」の単価800万円を的中させたが、それは近くに三井不動産が分譲した事例があったからだ。「それより下回ることはない」と考えはじき出した単価だった。

 今回は比べるものがない。「京都」は「東京」と同様、世界レベルの都市であり観光地だ。その都市の一等地の〝唯一無二〟のマンションに値をつけよというのが無理な話ではないか。欲しい人はいくらだってお金を出すのではないか。

 それでも単価を予想しよう。今回のマンションで、鴨川に面している東側の「別館」は26戸(全体で85戸、そのうち10戸は事業協力者向け)ある。この住戸の坪単価は500万円どころか600万円、700万円でも驚かない。「千鳥ヶ淵」を超えるのは皇居に失礼だろうが、京都御所・鴨川の価値はそれに近いものがある。

 ただ、南向きはよく分からない。いま京都のマンションの相場(坪単価)は300万円を突破してきているようだ。となると立地条件を考えれば「坪400万円以上」(同社)というのも納得だ。

 つまり、鴨川に面した東向き住戸とそうでない南向き住戸を一括りで論じられないのがこのマンションの特性だ。

 これらを総合的に考えてあえて予想すれば坪単価450万円でどうか。500万円も考えられるが、現時点でそれだけの価格設定をする勇気が果たして同社にあるか。価格を決めるのは市場だ。市場から叩かれるリスクもある。

 個人的な意見を言わせてもらえれば、かつて住友不動産がやったようにオークションというのがもっともフェアな値付けではないかとおもう。

 ひとつ注文したいのは、「千鳥ヶ淵」の時も書いたように、購入動機がいかがわしい人、素性が怪しい人には売ってほしくない。この価値を分かる人だけが買ってほしい。モデルルームの出来栄えは素晴らしい。これについては明日書く。

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 報道陣がしつこく質問した7億円超について。

 「西日本最高価格の7億円」のニュース価値はほとんどないと思う。東京やシンガポール、ドバイなどと比べて高いのなら分かるが、たかだか7億円で驚くような話ではない。京都に失礼だ。日本の恥をさらすようなものだ。

 バブル期だが、東京では10億円以上でないと本物の億ションと言われなかったし、最高価格は1戸44億円だ。

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建設現場

カテゴリ: 2015年度

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「武蔵野富士見 ザ・レジデンス 家族デザインLABO.」発表会(左から4人目が掛川氏)

 10月6日行われた日本土地建物の記者発表会は、「武蔵野富士見 ザ・レジデンス」の「家族デザインLABO.」発表会だったのだが、会が終わり近くになって同社のマンション事業本格参入に関する発表会へと発展した。

 報道陣から今後の事業展開について聞かれた同社執行役員住宅事業本部長・掛川耕一氏は、「これまで住宅は年間300~500戸程度を供給してきたが、戸建ての『白山』など大規模団地は残りほとんどなくなってきた。都市型戸建ても供給しており戸建てを止めるわけではないが、住宅を安定的に供給するために年間500戸くらいは供給し、近い将来には年間1,000戸くらいに拡大したい」と話し、さらに「マンションの新しいブランドも検討中で、体制が整ったら販売会社や管理会社をつくるかどうかも考えたい」と抱負を語った。

 マンション市場は大手の寡占化が進行する一方だ。中小はその間隙をつくか商品企画を特化して生き延びるしかないのが現状だ。この時期に年間1,000戸をコンスタントに供給するのは容易なことではない。それを同社はやるというから驚きだ。

 しかし、その下地はあるとみた。いいときも背伸びしないで、悪い時期もコンスタントにレベルの高い戸建てを供給してきた。だからこそユーザーの支持を得てきた。バブル崩壊後、銀行系デベロッパーが生き残ったのは同社と興銀系の興和不動産(現新日鉄興和不動産)と常和興産(現ユニゾホールディングスグループ)くらいだ。他は軒並み破たん・整理された。

 同社はバブルを乗り切ったどころか、その後は住宅事業やビル事業のほかソリューションや資産運用事業など多角的に展開し、グループ全体で売上高は576億円(2014年10月期)にまで伸ばしている。

 同じみずほグループには東京建物や大成有楽不動産などマンション事業に力を入れているところがある。これらと肩を並べるのはともかく、豊富なノウハウと潤沢な資金力を持ってすればマンションデベロッパーとしての地歩を築くことは不可能ではない。 

  掛川氏は「今のところ次に決まっているのは『柏』の78戸くらいで、用地の確保には苦戦している」と正直に語った。早々に厚い壁に突き当たったということだろうが、乗り越えられないのならやる意味がない。

 これからいかに優良な情報を収集するか、「日土地しかできないマンション」を供給していくかが問われることになりそうだ。

 

カテゴリ: 2015年度

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「Brillia City 石神井台」完成予想図

 東京建物・住友商事・セコムホームライフ3社JVの「Brillia City 石神井台」を見学した。東京医科大女子寮の跡地に建設中の物件で、全279戸という練馬区最大級の大規模マンション。坪単価は250万円台の半ばになる模様だ。

 物件は、西武新宿線上石神井駅から徒歩10分、練馬区石神井台4丁目に位置する9階建て全279戸。専有面積は59.82~98.97㎡、価格は未定だが、坪単価は250万円台の半ばが予定されている。竣工予定は平成29年7月上旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。デザイン監修はINA新建築研究所。分譲は11月下旬の予定。

 現地は、急行停車駅の上石神井駅からほぼフラットな住宅街を通りぬけ、石神井川を渡ったなだらかな丘の上。敷地に隣接して早稲田大学高等学校がある。用途地域は道路に面したところが第1種住居地域(9階建て)、その奥が第1種中高層住居専用地域(5階建て)、さらにその奥が第一種低層住居専用地域(3階建て)となっており、敷地全体としては過半が第一種低層住居専用地域。建物は南西向き中心に4棟構成。

 住戸プランは74㎡の3LDKが中心で、各住戸は引き戸を多用、キッチンの隣に多目的に利用できる東建の提案「半畳スペース」が設置されているのが特徴。キッチン天板はフィオレストーン、食洗機は標準装備。

 コミュニティを支援するため、東京芸大こども未来研究所や情報ステーション、食配ラボなどと提携して「オーナーズプレミアム」と称するサービスを提供していく。

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 分譲単価だが、230万円くらいなら圧倒的な人気を呼ぶだろうと事前には考えた。しかし、このところの単価相場からして郊外部でもそれくらいで分譲されているので、あるいは250万円くらいかと予想した。

 やはりそうだった。急行停車駅で徒歩10分の立地なら250万円を超えてくるのも納得だ。

 ユーザーはこれからは23区内の恵まれた立地条件のマンションは軒並み坪250万円を突破してくることを覚悟しなければならない。子育てファミリー層の取得限界に来ているが、ローン金利が低いのが救いだ。

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「半畳スペース」

カテゴリ: 2015年度

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「ヴェレーナシティ パレ・ド・プラージュ」完成予想図

価格の安さだけではない プランがいい

 大和地所レジデンス(旧社名:日本綜合地所)が分譲中のマンション「ヴェレーナシティ パレ・ド・プラージュ」を見学した。用途地域は工業地域だが、嫌悪施設はほとんどなく、隣接して島忠とスーパーOKの大型商業施設があり、敷地の南側には桜並木と新河岸川が広がる。坪単価198万円も割安感があり、プランもいい。全175戸のうち約150戸が契約済みというのも頷ける人気だ。

 物件は、JR埼京線北赤羽駅から徒歩11分、都営三田線志村坂上駅から徒歩13分、北区浮間五丁目に位置する13階建て全175戸。専有面積は66.00~90.00㎡、坪単価は198万円。竣工予定は2016年7月下旬。施工は長谷工コーポレーション。3月から分譲されており、これまで約150戸が販売済み。

 現地の用途地域は工業地域だが、マンションなどの住宅化が進んでおり嫌悪施設はほとんどない。現地も工場跡地だが、同社が1年半前に取得した約2.5haのうちマンション敷地約6,600㎡以外を島忠とOKに売却しており、店舗も完成済み。このため商住の複合開発であるのが特徴。建物は全戸南向きで、眼前には桜並木と新河岸川が開ける。

 住戸プランは、同社独自の約47㎡のオープンエアリビング付き(10戸)、奥行き約4mのオープンエアバルコニー付き(22戸)のほか、廊下幅はメーターモジュールを採用。省エネにも力を入れている。駐車場は平置きで60%弱の設置率。

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 このマンションの特徴は1階の10戸に約47㎡のオープンエアリビングが採用されていることだ。同社のオープンエアリビングはたくさん見てきたが、これほど広いのは初めてではないか。

 先日、三井不動産レジデンシャルの「立川」を見学したが、オープンエアリビングに似た「半ソト空間」の広さは約24㎡だった。今回のオープンエアリビングがいかに広いかが分かるはずだ。

 しかし、記者が感心したのは他の住戸プランだ。最近の建築費の高騰で、各社はショートスパンを多用し、コスト・グロス圧縮と利益の確保を図っている。3LDKの間口は6mくらいしかないのが増えている。ところが、今回の標準的な73㎡台の住戸の間口は約6.4m確保されている。

 これだけではない。全住戸とも廊下幅はメーターモジュールが採用されている。玄関の床は天然石で、食洗機は標準装備。

 坪単価も読み通りだった。現地の用途地域が工業地域であることや、その他総合的に評価して坪単価は200万円くらいなら売れると読んだ。嫌悪施設がなく、商住の複合開発を考慮すればかなり割安感がある。

 割安単価に設定できた理由は、同社が用地を取得したのはまだマンション適地の地価上昇が顕在化する前で、取得した約2.5haのうち今回のマンション敷地約6,600㎡以外を島忠とOKに売却して利益を確保したからではないかと記者は読んだ。

 同社はこれまで他社との差別化を徹底して行い伸びてきた会社だ。社名が変わってもその姿勢を堅持してほしい。

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「ヴェレーナシティ千葉ニュータウン中央」

 大和地所レジデンス(旧社名:日本綜合地所)が分譲した「ヴェレーナシティ千葉ニュータウン中央」が、全国住宅産業協会(全住協)の平成27年度「優良団地表彰」を受賞した。昨年の「ヴェレーナシティ行徳」に続き2年連続の受賞。

 「ヴェレーナシティ千葉ニュータウン中央」は、北総線・成田スカイアクセス線千葉ニュータウン中央駅から徒歩5分の全217戸。奥行き約4m・広さ約10畳大の「オープンエアリビングバルコニー」、専有面積100㎡超の住戸プランが100戸以上などの商品企画が評価された。

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 今回、同表彰で受賞したのはマンションなどの住宅関連が9件、宅地関連が3件で、同社の物件は首都圏から唯一選ばれた。

 記者もこのマンションを取材しているので選ばれたのは嬉しいのだが、首都圏からはこのマンションだけ受賞というのは、いくら大手の寡占化が進行しているとはいえさびしいではないかと思い同協会に聞いた。その結果、今回の表彰制度は記者が考えていた表彰制度とは全く異なることが分かった。

 この「優良団地表彰」は、同協会が2年前に日本住宅建設産業協会(日住協)と全国住宅建設産業協会連合会(住協連)が合併する前に住協連が行っていた制度で、記者が考えていたのは日住協の「優良事業表彰」だった(同協会への取材を数年前から止めたのが誤解した最大の理由)。

 合併後も「優良団地表彰」と「優良事業表彰」がそれぞれ行われており、「優良事業表彰」は今年6月に8プロジェクトが発表されている。

  選定基準がどうなっているのか分からないが、組織が一緒になったのだから表彰制度も一つにしたほうが分かりやすいと思うのだがどうだろう。

圧巻・約34畳の空間提案 「ヴェレーナシティ千葉ニュータウン中央」(2014/2/4)

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設備仕様やインテリアカラーなどが体感できるコンセプトルーム

 住友不動産は10月1日、マンション購入を検討する女性限定の住まいさがし相談カウンター「住まいSalon for woman」を首都圏の主要駅で展開する「総合マンションギャラリー」全7 館に10 月3 日から開設すると発表した。

 「女性1人ではモデルルームに入りにくい」「すぐ買う気はないけど、相談に乗ってくれるのかな」「自分にマンションが買えるのかな」「男性の営業マンだと断りにくいな」-などの悩みや不安に対応するため、専任の女性アドバイザーを新たに配置し、女性ならではの視点で住まいさがしを支援していく。

 同社が2012年以降に供給・契約した1LDKタイプでは、女性単身比率が全体の51%を占めており、契約数も年を追うごとに増加していることから、同社は有望な市場として捉え、潜在顧客を開拓するのが狙い。

 同社の年度別・女性単身購入比率のデータによると、各年度とも平均して女性単身購入比率が約5 割を占め、今期実績(8 末時点)では全体の6 割を占めるまでになっている。価格帯別データでも、4,500万円までの価格帯では、女性比率が5 割を超えている。

 同社では初年度となる今期(10~3 月)は50戸の契約を目指している。相談カウンターを開設するのは新宿、渋谷、池袋、秋葉原、田町、横浜、川崎の7館。

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「アールブラン大倉山」完成予想図

 モリモトが分譲中の「アールブラン大倉山」を見学した。大倉山駅と新横浜駅からそれぞれ徒歩14分の中規模マンションで、坪単価239万円ながら販売開始3カ月で全82戸のうち約半分が売れている。単価上昇と〝東横線〟人気を象徴するマンションだ。

 物件は、東急東横線大倉山駅から徒歩13分、横浜市港北区大豆戸町に位置する7階建て82戸。専有面積は53.85~82.53㎡、坪単価は239万円。竣工予定は平成29年1月下旬。設計・施工・監理は新日本建設。デザイン監修はウイ・アンド・エフ ビジョン(石倉雅俊氏)。3か月前から分譲されており、これまでに約半数が分譲済みだ。

 現地は駅からややあるが、周辺は中層マンションが建ち並ぶ住宅街。物件に隣接してロマネスクだかゴシックだかアールデコだかしらないが、かなり派手な尖塔がたくさんある結婚式場が建設中なのは気になったが、嫌悪施設ではないようだ。

 設計プランは、市の高さ規制(20m)があるためか、高密度で、なおかつ容積率(300%)を満たす(消化)ためハーフバルコニータイプが多いのは難点だが、同社のいつもの商品企画レベルにはある。

 逆梁ハイサッシを採用し、2重床・2重天井で、ミストサウナ付き。82㎡のモデルルームのインテリアデザインを担当している鈴木ふじゑ氏の提案もいい。基本は3LDK+Sだが、約5畳大の洋室2室を1室にし、御影石のキッチン天板は幅約2800。

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 以前からこの東急東横線だけは相場観が狂う。坪単価予想はことごとく外れ、予想よりはるかに高い値段になる。

 なぜ外れるか。もちろん、東横線は東京と横浜を結ぶ線で、田園調布駅-日吉駅間は複々線になっており、目黒線(目黒駅-日吉駅間)が並走している。武蔵小杉駅ではJR横浜線と湘南新宿ラインとも接続している。

 このため横浜中華街から宇都宮ライン、西武池袋線、副都心線、半蔵門線、東武東上線、東武伊勢崎線、日比谷線との接続も楽で利便性は飛躍的に高まっているのは理解できる。これがマンション価格を引き上げている最大の要因であるのは分かる。

 しかし、東横線は渋谷から代官山、元住吉、日吉、菊名、妙蓮寺、白楽などは坂が多く、駅のターミナルも街路樹もプア(全部ではないが)で、道路は狭く、しかも蜘蛛の巣みたいに曲がりくねっているところが多い。生活利便施設だって他の沿線より恵まれているということはない。むしろ、昔から開発されたところだから、平地はもちろん坂にへばりつくように住宅が建てられている。平坦な住宅地が多いのは綱島、大倉山くらいだ。

 そんな街でも坪単価は高く、武蔵小杉の350万円を筆頭にみんな坪200万円をはるかに突破し、駅近だと300万円もする。どうして武蔵小杉が豊洲などの湾岸や世田谷と同じか上回るのか。この逆転現象がまったく理解できない。相場観が狂うのはこのためだ。

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 同社の物件ホームページに掲載されている現地案内図をコピーして大倉山駅から現地に向かったのだが、やはり道は狭く、車が通れるかどうかというところもあった。記者は車が嫌いだが、これでは誰が買うのかと思ったほどだ。

 現地周辺は中層マンションが建ち並びまずまずの住宅地を形成していたが、駅から徒歩13分はやや距離がある。最近の地価・建築費の高騰を考慮しても坪単価は200万円台の前半がいいところだろうと値踏みした。

 ところがどうだ。239万円もするではないか。数年前の駅近の相場だ。それでも分譲開始3カ月で半分近く売れているというから驚きだ。

 単価の高さと売れ行きに驚いたのだが、同社の担当者によると、来場者は駅からややあるのもそれほど気にせず、価格も妥当という声が多いという。

 来場者が納得するのは理由がある。最近分譲された大倉山駅から2駅目の妙蓮寺駅から徒歩2分の「プレミアムレジデンス横浜妙蓮寺」(39戸)は坪単価300万円だし、同じ大倉山駅から10分の野村不動産「プラウド大倉山ディアージュ」(40戸)が坪単価290万円で即日完売した事例があり、武蔵小杉では価格が暴騰していることもみんな知っているからだ。

 同社の販売担当者も、「お客さまから価格が高いとはあまり言われない。駅からの距離もそれほど気にされませんし、新横浜までも14分、バスを利用すれば数分の利便性と、モデルルームの提案が評価されています」とのことだった。

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 地元に詳しい関係者によれば、地域住民は子どもの通学コースを大綱小学校-大綱中学校を望む人が多く、中学校は市内でもレベルが高いという評判らしい。

 そこで、取材の帰り、中学3年生の2人連れに声を掛けた。このうちの1人は「藤沢の湘南高校を目指しています。多分受かる」と話していた。

 大倉山の人気はこのあたりにもあるのか。

カテゴリ: 2015年度

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「ジオ多摩センター」完成予想図

 阪急不動産が10月に分譲する「ジオ多摩センター」を見学した。京王・小田急多摩センター駅から徒歩12分の全300戸の規模で、多摩センター駅圏では最後の大規模マンションになるかもしれない。

 物件は、京王・小田急小田急多摩センター駅から徒歩12分、多摩市鶴牧3丁目に位置する15階建て全300戸。専有面積は76.33~101.23㎡、価格は未定だが、5階あたりの坪単価は190万円くらいになる模様だ。竣工予定は2017年2月下旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。

 物件の最大の特徴は、駅から現地まで完全に歩車分離のアクセス・アプローチであることだ。歩いて12分もしてなおかつ歩車分離の街はそうないはずだ。

 もう一つは、このマンションが多摩センター駅圏の南口では最後の大規模マンションになるかもしれないということだ。後述するようにUR都市機構は近くに広大な土地を所有しているが、多摩市の意向もあり住宅用地として売却される可能性は小さい。

 住戸プランは、南西向き中心に南東向き、西向きで、居住面積は70㎡台の後半が中心。

 コミュニティを重視しているのも特徴の一つで、「みんなのマルシェ」をほぼ2カ月に1回開催する予定のほか、「みんなの花壇」「七夕デコレーション「みんなの本棚」「コンサート」「コミュ・ブック」なども継続して行っていくという。

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 このマンションのことより記者が気になるのは、その敷地北側にUR都市機構が所有する約3.8haの土地と、その東側に隣接する元わんにゃんワールドの跡地約1.8haの土地がどうなるかだ。双方を合わせると5.6haにもなる。東京ミッドタウンに近い広さだ。

 この点についてUR都市機構と多摩市に聞いた。わんにゃんワールドの跡地についてURは「業務・商業施設として引き合いがあれば売却したい。住宅は想定していない」とのことだった。市も「多摩エリアの拠点として賑わいを創出する施設を希望している。住宅建設については考えていない。ここ数年マンションがかなり建設されており、計画数値に近づいているので、要望があれば協議となるが、学校用地などの問題もあるので難しい」と話している。

 一方、今回のマンション敷地の北側についても同様で、URは「今年いっぱいでいま貸しているところの定借期間が切れるので、これから売却をどうするか検討している」としている。

 なので、今後これらの土地がどのようになるか不明だ。多摩センターは他の街と比べても極めてポテンシャルが高いエリアだと記者は考えているのだが、民官学が連携して知恵を絞り、広域的な利用がされる施設を造ってほしいと願っている。

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 多摩センター駅圏のマンションについてはその都度記事にしているのでもう書くこともなくなったが、多摩市の住民でもあるので、多摩センターのポテンシャルが極めて高いことについて触れたい。

 記者は街のポテンシャルを3つの要素でいつも計る。一つは宴会ができるホテルがあること、2つ目はデパートがあること(つまりそこに行けば何でも買えるということ)、そして3つ目は食を中心とする文化が充実しているとことだ。

 読者の方も、自分が住む街をこの3つのモノサシで計っていただきたい。3つ揃う街は、都心部はともかく郊外ではそうないはずだ。

 ところが、わが多摩センターはこの3つが揃っている。これは自慢できる点だ。一言で言えば都心の利便性と緑が共存する街だ。新宿まで30分だ。これほど街のポテンシャルが高く交通の便もいいのに、マンションの分譲単価はずっと低く抑えられている。同じクラスの街と比較して2割は割負けしていると思う。

 例えば、新宿などの都心ターミナルから30分圏といえば町田、清瀬、所沢、志木、武蔵浦和、新越谷、津田沼、あざみ野あたりか。

 これらの街で3つの要素が揃っている街は一つもないのがお分かりのはずだ。こんなことを言ってもみんな取り合ってくれないだろうが、3つの要件が揃っており、多摩センターと比べられる街は新浦安、浦和、大宮、千葉、柏、新百合ヶ丘くらいしかないと思っているが、どうだろう。いま人気の豊洲にも武蔵小杉にもホテル機能はないので、記者の評価もそれほど高くないのだが、単価がべらぼうに高いのはよくご存じのはずだ。

 多摩センターが割負けしているのは、デベロッパーにも責任の一端はあると考えている。街の価値を最大限に引き出す努力(企画力)が足りない。

 努力不足もあって、なかなか高値追求ができないのだ。今回のマンションも坪単価は200万円以下になるのは間違いなさそうだ。仮に新百合ヶ丘駅10分でマンションが分譲されれば、坪単価は250万円はするはずだ。次に書く東急東横線大倉山駅圏は坪200万円台の後半だ。

 にもかかわらず、今回も低く抑えられているのは戸数が多く、面積が広いこと、単価が一次取得層の取得限界に近いことが指摘できる。共用施設にはたとえばゲストルームはないし、設備仕様は取り立てて強調できるものはないのもそのためだろう。(このマンションのほかに、あるデベロッパーがサンリオピューロランドに近いところで分譲するが、坪単価は最低でも230万円はするはずだが…)

 しかし、多摩センターの街の魅力を加味すればものすごく割安だと思う。最近は自分も反省しているのだが、単体としての坪単価よりも共用部・住環境を含めたトータルな価値を計ることが重要だ。記者がマンションの販売担当だったら、共用部分の面積(レンタブル比、有効率)を広告に表示し、その価値を堂々とアピールする。 

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「パークホームズ立川」完成予想図

 当欄でも紹介したが、三井不動産レジデンシャルがすまい(日常)の中にアウトドアライフ(非日常)を取りこむマンションの住戸プラン「半ソト空間」をスノーピークと共同開発し、「パークホームズ立川」に採用すると発表したので、早速見学した。採用するのは1階部分の住戸と共用部分で、なかなかいい提案だ。その他の住戸プランも工夫されており、坪単価も割安感がある。

 物件は、多摩都市モノレール線高松駅から徒歩12分(JR中央線立川駅バス5分、バス停徒歩1分)、立川市高松町1丁目に位置する12階建て全352戸。専有面積は67.87~94.96㎡、第1期(戸数未定)の予定価格は3,400万円台~6,300万円台(最多価格帯4,000万円台)、坪単価は180万円前後。竣工予定は平成29年3月下旬。施工は長谷工コーポレーション。分譲は10月下旬。

 現地は、準工だが周辺に高い建物はない。また、市は建築物の高さ規制を検討しており、このエリアは24mになる模様だ。最寄駅は高松だが、立川からバス便のほうが便利のようだ。今秋オープンする「ららぽーと立川立飛」へは徒歩10分。

 建物は東向き・南東向き・南南西向きで、1階部分の25戸に「半ソト空間」があり、3タイプ選べるようになっている。また、ほとんどの住戸が横入り玄関タイプで窓付き。ゲストルームのほか、学童保育施設も併設される。

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「半ソト空間」(モデルルームで))

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 「半ソト空間」の提案がいい。記者はオプションかと思っていたが、そうではなく、専用庭にセットできるシェード付きで、「くつろぐ」「食べる」「寝る」の3つのタイプから自由に選べるようになっている。購入すれば数十万円はするものだった。専用庭の広さは約24㎡(7坪強)。

 販売事務所の設営・モデルルームがまたいい。共用部分の「インドアパーク」がイメージできるように設営されており、モデルルームは「つなぐ」がテーマで、「半ソト空間」-リビング-キッチン-居室がつながるように工夫されている。廊下スペースを少なくすることで、約75㎡の面積を有効に使っている。バックカウンター、食洗機も標準装備。

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「つなぐ」がテーマのモデルルーム(田の字プランだとこのようにはできない)

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75㎡のプラン

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 ここ数年、同社の〝パークホームズ〟は劇的に進化を遂げているが、このマンションもユーザーの心をくすぐる仕掛け・工夫が随所に施されていた。バス便ではあるが、「ららぽーと」にも近接していることから人気を呼ぶのではないか。設備仕様などから判断して坪単価も割安だと思う。来場者も「安い」という評価をしているという(これは野村不動産のお蔭かもしれない)。

三井不動産レジデンシャルが「半ソト空間」 「パークホームズ立川」に採用(2015/9/24)

 

 

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オープンパークイメージ

 三井不動産レジデンシャルは、すまい(日常)の中にアウトドアライフ(非日常)を取りこむ「半ソト空間」というマンションの住戸プランをスノーピークと共同開発し、10月分譲予定の「パークホームズ立川」に採用する。

 「半ソト空間」とは、マンションの1 階住戸の居室内部と専用庭部分に連続性を持たせた新発想の住戸プランで、テラスから専用庭にかけてオリジナルのトライアングルシェードを設置し、居室内からシェード下のスペースを「半ソト空間」として創出する。この空間と利用目的に合わせたスノーピーク製アイテムを組み合わせることで、“くつろぐ・食べる・寝る”という3 つの生活シーンを提案する。

 「パークホームズ立川」は、JR中央線「立川」駅バス5分、バス停徒歩1分、立川市高松町1丁目に位置する12階建て全352戸。専有面積は67.87~94.96㎡、施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は2017年3月下旬。

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インドアパークイメージ

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オリジナルトライアングルシェード

 

カテゴリ: 2015年度
 

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