「新国立の図面は1年間に四千数百枚描いた」隈研吾氏 「新しい木の時代」シンポ
隈氏(東京コンベンションホールで)
昨日(12月11日)行われた「新しい木の時代 ~日本の森林再生と利活用~」シンポジウムで、隈研吾氏が約1時間にわたって基調講演した。数えたわけではないが、隈氏は内外の20プロジェクトを写真・画像を交えて話した。
ここで一つひとつ紹介する余裕はないので、隈氏が設計を担当した新国立競技場と新潟県長岡市の「アオーレ長岡」を紹介する。
まず新国立競技場から。隈氏はこの日起工式が行われた新国立競技場について「この1年間で新国立競技場の図面を約4,000数百枚描いた」と話した。
いったい図面を描くのがどのような仕事なのかさっぱりわからないが、一般的に図面はA3用紙を使うようで、重さにして30数キロ、厚さにして40数センチになる。これだけでは仕事量を紹介したことにはならないが、記者の知る限り、作家としては中国のノーベル文学賞作家・莫言氏は超大作「豊乳肥臀」1,200枚を3カ月で書き上げたというのが最近では記録的な多さだろうと思う。4,000数百枚の図面は隈氏だけが担当したわけではないだろうが、ノーベル賞ものの仕事なのかもしれない。
新国立について隈氏はまた、周辺環境と調和し溶け込むように建物の高さを抑えることに苦心し、「ザハ・ハディド案が75メートルだったのに対し、49メートルに抑えることができたので、(選ばれる)手ごたえはあった。剪定がいらない緑化、下から見上げる美しさ、わが国の伝統的な建築技法の採用、ハイブリッドの屋根、木と鉄やコンクリとの混構法、管理費の抑制などにも力を入れた」などと語った。
また、「世界中の木の建築に関わってきたが、やはり木の技術は日本が一番。住林さんはすごい」と住友林業を持ち上げることも忘れなかった。
「アオーレ長岡」外観(写真提供は全て長岡市)
ウェディング(左)と落成式典
次に「アオーレ長岡」について。地方再生・活性化、中心市街地活性化に資する事例として最適と思われるからだ。
同施設は、平成24年4月にオープンした地下1階地上4階建て延べ床面積約35,000㎡のナカドマ(屋根付き広場)、アリーナ、市民交流ホール、市民協働センター、議場、市役所本庁舎などが整備された多目的施設だ。総事業費は約132億円。
詳細は長岡市のホームページなどで調べていただきたいが、オープン以来の来館者は年間約140万人。人口が28万人の市だから驚きだ。単純比較はできないにしろ、従前施設の約4倍の来館者だ。施設は住民主導のイベントが多いのが特徴のようだ。施設がオープンして中心市街地の空き店舗が減少し、施設がある市の東側とその反対側の西との人の流れも生まれたという。
ホームページに掲載されている市民の声の一つに、「市役所機能のまちなか回帰に関する一連の整備が完了した今、まちなかに来る人々は楽しい顔をしている」とあった。
伊勢神宮 外宮(11月撮影)
伊勢市駅前のホテル二つ(左が三交不、右が伊勢外宮参道 伊勢神泉)
対照的な事例としてわが故郷・伊勢市を取り上げるのは心苦しいのだが、少し触れたい。〝日本人の心の故郷〟伊勢神宮に訪れる人は平成25年の遷宮では約1,400万人にも達した。その後、減少はしているが平成27年は約838万人だ。平年でも毎年600万人くらいの参拝者がある。
ところが、伊勢市に宿泊する観光客(だけでないが)は漸減しており平成27年は約40万人に過ぎない。外宮・内宮をお参りしてその足で鳥羽・賢島方面へ向かう観光客が圧倒的に多い。記者もたまに帰省すると、伊勢を通り越して鳥羽まで行って、カキやらサザエやらを食べに行く。伊勢市内ではありきたりの食べ物しかないし、観光客に勧められるホテルなどほとんどなかった。
ずっと空き地になっていた伊勢市駅前の空き地にホテルが数年前にでき、その対面にも三交不動産のビジネスホテルが今年11月にオープンしたが、駅前の一等地にホテル2つだけというのは情けない。伊勢が素通りされる流れは止められそうにない。
神宮の杉の大木
涌井・都市大特別教授 「わが国の自然はかみさんと一緒。美しいが扱いも難しい」(2016/12/11)
涌井・都市大特別教授 「わが国の自然はかみさんと一緒。美しいが扱いも難しい」
「新しい木の時代 ~日本の森林再生と利活 用~」シンポジウム(東京コンベンションホールで)
住友林業が協賛し、読売新聞社が主催するシンポジウム「新しい木の時代 ~日本の森林再生と利活 用~」が12月11日行われ、約400人が会場を埋めた。
この日は、2020東京五輪・パラリンピックのメイン会場になる新国立競技場の起工式が行われた日で、このタイミングを計ったように、シンポジウムでは建築家の隈研吾氏が基調講演をし、競技場の技術提案等審査委員会委員を務めている東京都市大学特別教授・涌井史郎氏、住友林業社長・市川晃氏、女優で戸板女子短期大学客員教授・菊池桃子氏、トヨタ自動車MS製品企画部主幹で「SETSUNA」開発責任者・辻賢治氏による「各分野で期待が高まる木の価値」をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。
隈氏
◇ ◆ ◇
感動的なシンポジウムだった。記者は自らの勉強のためもあるが、主に取材のためにシンポジウムを年に数回こなす。だいたいが3~4時間ある。その内容を的確に伝えるのはとても難しい。読者の方々がどのような人なのかわからないからし、聴衆のレベルを無視して持論を一方的に話す学者先生が多いからだ。
この日のシンポジウムは違った。隈氏の特別講演では、20くらいの美しい作品事例が紹介された。シンポジウムでもそれぞれ皆さんの担当する分野の話が分かりやすく伝えられた。
それでもその中身の濃い話をここでは紹介しきれない。この日の模様は読売新聞が来年1月22日(日)付朝刊で発表するそうだから、それを読んでいただきたい。過不足なく伝えるはずだ。(記者はアンチ巨人なので読売新聞はほとんど読まないが、この日だけは買うか図書館でコピーして必ず読む。皆さんもそうしていただきたい。間違いなく料金の数倍の価値があるはずだ)
なので、ここではひょっとしたら読売が書かないと思われる、しかし、これこそが真髄をついた言葉だと記者が感じた涌井氏の話を紹介する。
涌井氏
涌井氏は、わが国の美しい自然とその災害が同居していることに例え、「うちのかみさんと一緒。美しいが扱いを間違えると大変なことになる」と話した。
この言葉を文字通り解釈すれば、上野千鶴子氏あたりから痛烈な反撃を食らうだろうし、読売も女性の読者層の反発=販売部数減を恐れ、この涌井氏の発言部分をカットするかもしれない。
しかし、記者は「かみさん」を「木」に置き換えた。これほど木(女性)と女性(木)の本質を文学的に的確に、男性の側から表現した言葉はないと思う。
これは菊池氏も市川氏も辻氏も話したことと同じだし、隈氏の考えにも通じるものがある。
菊池氏は自宅の椅子が壊れた話をした。椅子に使用されていた釘から木目に沿って木が割れたのだそうだ。市川市は「木の性質をよく知ることが必要」と語った。辻氏は「経年」「想い」「継承」をコンセプトに「SETSUNA」にたどり着いたことを話した。隈氏も、街がどんどん年を重ねるごとに価値を増すと話している。
女性も木も歳(年)に関係なく美しい。その美しさは不変だ。女性の梅干しのようなしわは、酒と同じようにそれだけ美に深みが増したと考えればより一層おいしく、いとおしく思える。そのしわにケチをつけるから険悪な関係に陥るのだ。
それにしても涌井氏の話は面白い。話すのが本業とは言えこれは神業だと思う。涌井氏から「木の名前と虫の名前と鳥の名前を覚えると、一歩、歩くごとに人生3倍楽しくなる」と教わったのは20数年前だが、今回の「かみさんの美しさ」は5年前にも聞かされている。その記事も参照していただきたい。涌井氏は次のように語った。
「私はもう66歳。美しいが、性格が厳しいかみさんとどうして折り合いをつけるのかという難問の答えを知ったのは20年ぐらい前だ。『いなす』『負けるが勝ち』 これこそが夫婦円満の極意だ」
あれから数え涌井氏は71歳。東京都市大学を「停年」になったそうだが、新たに「特別教授」の肩書がついた。
シンポジウム後、涌井氏に「先生、これは終身教授という意味ですか」と聞いたら「特別教授にしてくれ」ということだった。ノーベル賞を受賞した大隅良典氏の肩書は東京工大栄誉教授だが、「名誉教授」も「栄誉教授」も退役した「教授」に与えられる称号だ。涌井氏の「特別教授」には「死ぬまで現役で続けてほしい」という大学側の強い要請があったからだと受け止めたい。
左から市川氏、菊池氏、辻氏
司会を務めたアナウンサーの渡辺真理氏
今春、ミラノサローネで世界で初めて公開されたトヨタ+住友林業の木の車「SETSUNA(セツナ)」も1階で展示された
緑の都市賞を受賞した多摩グリーン森木会が記念講演会「エゴからエコ 緑の価値を再認識しよう」涌井・東京都市大教授(2011/11/29)
第2回「マンションいい話コンテスト2016」グランプリに梶原氏 マンション管理協
第2回「マンションいい話コンテスト2016」(すまい・るホールで。左から山根、梶原、成田、高橋、玉野、伊藤、児島、齋藤の各氏)
マンション管理業協会(管理協)は12月9日、マンションでの課題解決に向けた管理組合活動を支援すると共に、マンション活動における成功事例やノウハウなどの共有を目的とした第2回「マンションいい話コンテスト2016」を開催した。
全国から応募のあった806通の中から、グランプリ(賞金50万円)は、梶原洪三郎氏の「あるマンション理事会の情景」が選ばれた。認知症を発症している主人公の80歳の組合員が輪番制により理事に選任されたことから様々な問題が発生するのだが、主人公のぽつりと漏らした一言が行方不明になった子どもを救うストーリー。
受賞した梶原氏は「とてもびっくりしている。マンションが抱えている入居者の高齢化と建物の老朽化の問題解決に少しでも役立てることにつながれば光栄」と喜びを語った。
主催者の山根弘美・管理協理事長は「われわれはマンション居住者のみな様と一緒になって、より豊かで安心・安全なマンションライフが送れるようこれからのマンション活動をサポートしていきたい」とあいさつした。
審査委員長の齋藤広子氏(横浜市立大学教授)は「作品にはたくさん涙した。感動、勇気、希望を頂いた。これからもいい話を広めていきたい」と講評した。
準グランプリ(賞金5万円)は成田耕一氏、特別賞(賞金3万円)は児島秀樹氏、伊藤都氏、玉野鼓太郎氏、高橋恭平氏がそれぞれ受賞した。
表彰式のあと、「マンションにおける認知症高齢者への対応」を題材にしたミニドラマが上映され、大ヒット漫画「ヘルプマン!!介護起業編」で主役のモデルにもなったケアワーク弥生取締役・飯塚裕久氏の「マンションにおける認知症事例とその対応策」をテーマとした講演が行われた。
齋藤氏(左)と梶原氏
マンション管理協 「マンションいい話コンテスト2015」受賞作発表(2015/12/10)
防犯ガラスの過信は禁物 旭化成ホームズ・くらしノーベションが衝撃的な調査報告
第15回「くらしノベーションフォーラム」(AP東京丸の内で)
松本氏
知らなかったのは記者だけかもしれないが、防犯ガラスは普通ガラスと比べそれほどガラス割侵入を防ぐことができないことが旭化成ホームズの調査で分かった。同社くらしノーベション研究所所長・松本吉彦氏が12月8日行われた、「科学的根拠に基づいた犯罪予防~防犯環境設計について考える~」をテーマにした第15回「くらしノベーションフォーラム」で明らかにした。
松本氏は、過去10年間の戸建て侵入被害にあった同社施工の事案を様々な角度で分析した結果を報告。
この中で、1階窓の被害があったN=363例のうち、侵入経路について2カ所にロックが付いている防犯ガラス183例ではガラス割侵入が48%、他手段の侵入が29%、ガラス割未遂が16%、他手段の未遂が8%だったと語った。
一方、普通ガラスで被害があった180例では、ガラス割侵入が61%、他手段の侵入が22%、ガラス割未遂が9%、他手段の未遂が7%だったことを明らかにした。
この結果から、松本氏は「防犯ガラスはガラス割侵入防止の効果あり」としながらも、高窓やシャッター付き窓の被害が少ないことなどから、外出時にはシャッター窓を閉め、面格子のある浴室窓を開けたままにしないよう喚起した。
また、死角に侵入させないゾーンディフェンスやハードディフェンス、二世帯住宅や2階リビングなど建て方、さらには「みまもり型防犯設計」など総合的訪販対策を講じれば被害リスクは0.25倍(一般戸建ては0.43倍)に減ると語った。
フォーラムでは、明治大学理工学部建築学科教授・山本俊哉氏が「科学的根拠に基づいた犯罪予防~防犯環境設計の効用と限界~」と題する講演を行った。山本教授は講演の中で「安全教育(Education)」(≒自助)「法制度・システムの執行(Enforcement)」(≒公助)「環境整備(Environment)」(≒共助)の「安全の3Eアプローチ」が重要と力説した。
山本氏はまた、犯罪予防の視点からル・コルビュジエの思想に異論を唱える考えもあると話した。
山本氏
◇ ◆ ◇
皆さんは、防犯ガラスと普通ガラスの被害状況の数字をどう思われるか。記者は防犯ガラスの破砕実験を体験している。大きなハンマーで叩いても割れず、破砕するまでずいぶん時間がかかり、ものすごい音が出る。間違いなく向こう三軒両隣に音が響き渡る。
ところが、松本氏の報告では2枚の合わせガラスでも特殊な工具を使うためか約5分で穴があけられるというではないか。普通ガラスは1分間くらいだから効果があるといえばあるのだろうが、防犯ガラスの値段は普通ガラスの1.5倍くらいする。それほどコストをかけても数値は61%から48%にしかならないのであれば、単に気休めに過ぎないとも思える。過信はできない。むしろ、防犯センサーとか松本氏が強調した電動シャッターなどを取り付けたほうがいい。
なお、同研究所が2011年に発表した調査報告書では「普通ガラスの侵入率を1とすると防犯ガラスは0.39と約4割に減ることが分かりました」とあり、今回の調査データを2011年時と同じ計算式で侵入率を算定すると0.6倍くらいになるという。
これだけでは断定的なことは言えないが、防犯ガラス割りの〝技術〟が進歩しているとも受け取れる。防犯対策と泥棒とのいたちごっこは続いているということか。
松本氏によると、この種のデータはどこにもないようで、衝撃的な調査報告ではないか。
◇ ◆ ◇
松本氏は、報告の中で2013年を前後に「中部三県」(東海三県ともいい、愛知、岐阜、三重)で侵入被害が〝激増〟したと何度も「中部三県」を口にした。
三重県出身の記者は、被害が多かったのは愛知県で三重県ではないと思い、また温厚な人が多い三重県人の名誉のためにも、「松本さん、私は三重県出身。(近江泥棒、伊勢乞食という言葉はぐっとこらえて)三重県は泥棒が多いはずはない」と迫った。松本氏は「確かに(木曽・揖斐)川を渡るとぐっと侵入は少なくなる」と答えた。
してやったり。松本氏から1本取った。しかし、続編がある。取材を終え、ある忘年会に出席して夜中に帰ったのだが、田舎の身内に泥棒が入ったことを知らされた。
みんなが寝静まっている深夜にどこかから侵入され、リビングに置いていた財布から多額ではないが、忘年会の参加メンバー約40人の会費を賄えるくらいのお金を盗まれたそうだ。それだけではない。娘の下着もなくなったという。
犬も寝込んだのか、全然吠えなかったそうだ。駆けつけてきた警察官には大声で吠えたという。犬まで温厚になってしまったのか、それとも権力には拒否反応を示す県民性を反映したものかよくわからない。おそらく鼻薬をかがされたのだろう。袖の下に弱いのは全国共通だ。犬も一緒。なので記者は犬よりネコが好きだ。
それにしても泥棒の主たる目的は下着なのか金なのか。つかまるリスクとそろばんをはじくとどうなるのか。山本教授が話した、人間は損得の合理的計算のもとで行動を選択するという「合理的選択理論」(ロナルド・クラーク)に照らしあわせると、獲得する報酬はどうやって測るのか。私は人間は損得だけでは動かないと思う。女性の下着の価値は泥棒しかわからないはずだ。
「クリマデザインの時代」 首都大学東京・小泉雅生教授 プレ協が環境シンポ
「ZEH元年-その先の住まいとまちづくり」環境シンポジウム(すまい・るホールで)
小泉教授
プレハブ建築協会は12月7日、「ZEH元年-その先の住まいとまちづくり」と題する2016環境シンポジウムを実施した。関係者ら約200名が参加した。
「2020年までに標準的な新築住宅でZEHの実現を目指す」という国の政策目標の達成に沿ったもので、首都大学東京大学院教授・小泉雅生氏(小泉アトリエパートナー)が「新しい環境文化の形-クリマデザイン」と題する特別講演を行った。
「クリマデザイン」とは、小泉教授や工学者の村上周三氏(建築環境・省エネルギー機構理事長)らが提唱する、パッシブデザインを一歩進めた機械設備(アクティブ)も適宜使いながら環境を制御しつつ地域性を背景とした環境文化を創造しようという新しい考えで、「環境の質を上げ、生きものとしての快適な環境を考え、『気候』をデザインする」(小泉氏)というもの。
シンポジウムでは、積水化学工業、パナホーム、サンヨーホームズの最新の事例報告も行われた。
◇ ◆ ◇
小泉氏は、「これまで様々な実践を行ってきた中で、もう一度理念、思想を考え直そう」と、クリマデザインにたどり着いたその経緯などについて話した。
記者は、パッシブデザインとどこが違うのだろうとずっと考えていたが、どうやら高気密・高断熱=アクティブのイメージが強いわが国のプレハブ住宅のいいところと、ややもするとアクティブを否定的に捉えがちなパッシブデザインの良さも取り入れながら、より快適な環境文化を育てようという理念だ。「クリマ」は気候(climate)から取った造語。
なるほどと思った。これからはボタン一つで住宅の温熱環境を自在に操る時代だ。IT技術の進展がそれを可能にする。
しかし、ボタン一つでそれが可能な、均一な住空間が果たして最適な空間かと問われれば「ノー」だ。そのいい例として、小泉氏は、爬虫類の繁殖に成功した札幌市円山動物園の本田直也氏の話を持ち出し、「亀に雨を降り注ぐと交尾が始まる。適度な負荷が必要」などと冗談交じりに話した。
われわれ人間もそうだ。われわれに楽な人生などやってこないかもしれないが、楽しい生活をクリマデザインは実現するのではないか。
興味のある方は、村上周三+小泉雅生+クリマデザイン研究会「 クリマデザイン: 新しい環境文化のかたち」(鹿島出版会)をお読みください。ついでだが、記者が最近読んだ芦原義信「続・街並みの美学」(岩波現代文学)もぜひおすすめだ。小泉氏の考えに近いものがある。
「中古住宅は既存住宅に変更」国交省・谷脇局長/三井リアルティ・竹井会長ら異論
RBA交流会(ホテルニューオータニで)
谷脇局長
国土交通省土地・建設産業局長の谷脇暁氏が「中古住宅」の呼称変更について、「他にいいネーミングがあればそれにしてもいい」としながら、「既存(きそん)住宅に変更するよう作業を進めている」と、12月1日に行われたRBA野球関係者だけでなく、不動産流通会社の会長・役員クラス、デベロッパーの幹部なども参加したRBAの交流会の挨拶で語った。
これに対して、会に出席していた不動産流通業界関係者からはおおむね賛成の声が上がったが、三井不動産リアルティ会長・竹井英久氏らは「新築があるから中古になる。新築の呼称をやめ、中古住宅の中古を取ればいい」と異論が上がった。
中古住宅の呼称変更については、以前から「イメージがよくない」という声が上がっており、積水ハウス会長兼CEO・和田勇氏は「素敵な名前があるはず」としており、当分議論を呼びそうだ。
左から竹井氏、中島氏、岩井氏
左から中島氏、岩井氏、内閣府内閣審議官・佐々木基氏、谷脇氏、三井不動産常任監査役・飯野健司氏
◇ ◆ ◇
谷脇局長の発言に対し、会に出席していた住友不動産販売会長・岩井重人氏、同社常務・村井慎一郎氏、東急リバブル会長・中島美博氏、同社専務・三木克志氏、野村不動産アーバンネット元会長・金畑長喜氏、三菱地所リアルエステートサービス専務・斎藤哲二郎氏なども賛意を示した。
これに異論を唱えたのが竹井会長だ。「中古よりいいが『住宅』だけでいいのではないか。もっといい言葉があるはず」と語った。竹井会長の言葉を補強したのが、同社企画部部長・井口正邦氏だ。「新築住宅の新築を取れば問題は解決する。流通量は中古のほうがはるかに多く、これからの時代は新築か中古かの時代でもない」と。
なるほど、これには一理ある。新築は売ったらすぐ中古になるし、中には新築でも中古並みの価格で分譲される戸建ても存在する。質から言えば新築も中古もない。新築より中古のほうが優れている局面もある。
竹井会長らの主張は正鵠を射る-と言いたいが、「新築」も「中古」も取ったら大混乱が起きる。法律の改正も必要かもしれないし、なにより新築住宅を販売するデベロッパーサイドから「われわれはいかに完成在庫をなくすかに粉骨砕身しているのに、新築と中古の区別をなくしたら売れるものも売れなくなってしまう」と猛反撃されるのは必至だ。
なので、記者はどちらがいいかよくわからない。しかし、「既存」を「キソン」と読ませることは納得できない。「キソン」は「毀損」を連想させるからで、「毀損住宅」=「欠陥住宅」の誤解を生じないか心配だ。
我々の団塊世代は「キゾン」と読んだ(呼んだ)はずだと思い、68歳の上田清司・埼玉県知事に話を向けたら「そうだ、そうだ、我々は『キゾン』と読んだ」と語り、隣にいた上田知事と同級生という弁護士の香川實氏も「おっしゃる通り。『キゾン』だ」と話した。
谷脇局長、こんなに異論が飛び出すのですから、いっそのこと「不動産流通近代化センター」が公募により「不動産流通推進センター」に呼称変更したように、公募で新しい名前(愛称)を決めたらいかがでしょうか。会場では「一般の人は『キソン住宅』と耳で聞いたら何のことかわからない人も出てくるでしょうね」という声もあった。
国語辞典で調べたら「存」の読み方は以下の通り。
・清音でも濁音でもいい例。「依存」「恵存」「現存」「残存」
・濁音の例。「異存」「一存」「温存」「愚存」「所存」「存ずる」「ご存じ」
・清音の例。「既存」(本来「キゾン」は誤りとある)「存在」「自存」「存否」「存亡」「存立」「存する」
上田埼玉県知事ご夫妻
左から村井氏、東急リバブル元専務・平元詢二氏、三木氏
スムストック住宅の一層の普及を 和田会長 「既存」の発音はなぜ「きそん」(2016/8/30)
「中古住宅」呼称は「既存住宅」か「既築住宅」か それとも妙案はあるか(2016/6/29)
三井不動産 エリア最大級 豊洲駅前の延床面積25.9haの再開発事業を着工
豊洲駅側から望む事業イメージ図
三井不動産は12月1日、「(仮称)豊洲二丁目駅前地区第一種市街地再開発事業2‐1街区AC棟」を着工した。
同事業は、豊洲駅前の「豊洲二丁目駅前地区第一種市街地再開発事業」の一環として、昨年6月に竣工した江東区豊洲シビックセンター、今年11月に竣工した東京消防庁深川消防署豊洲出張所に続く建物整備事業で、事業地の地権者であるIHIとの代表施行者として推進しているもの。
東京メトロ有楽町線豊洲駅、ゆりかもめ豊洲駅前の約1.9万㎡の敷地(2-1街区では計約2.8万㎡)に免震構造による36階建てオフィス・ホテル・商業などのAC棟と、階数未定の商業・エネルギーセンターなどのB棟を建設する。オフィス機能を中心としたミクストユースの大規模再開発で、延床面積は約18.4万㎡(来年着工予定のB棟と併せて約25.9万㎡)となり豊洲エリアで最大級となる。AC棟は2020年4月、B棟は2020年度下半期竣工予定。施工は大成建設。事業費は非公表だが、1,000億円を超える模様。
AC棟は、最先端の機能を備えたオフィスに加え、隣接する「ららぽーと豊洲」の機能を拡大する商業ゾーン、同社グループが直営するホテルゾーンを設けるほか、同社としては日本橋エリアに次いで2番目の事例となる、「電気」と「熱」の供給を行うエネルギーセンターを設置し、さらなるBCPの強化を図る。
ホテルは36階がフロントなど、33階から35階が約225室の客異質フロアとなる。360°のベイビューとアーバンビューを〝売り〟にパノラマビュー大浴場やビューバスプランのある客室も用意する。
開発地(正面奥が「ららぽーと豊洲」、その奥が「バークシティ豊洲」、左後方が三菱地所レジデンスの「晴海」マンション)
◇ ◆ ◇
三井不動産のビルやマンションのビッグプロジェクトを施工するのは圧倒的に鹿島建設と清水建設が多い印象を受けるので、同社に聞いてみたが特別の理由はないそうで、横浜三井ビルやいま施工中の東京ガス、三菱地所との共同事業「(仮称)TGMM芝浦プロジェクト」も大成建設だ。
もう一つ気になるのはBRT(バス ラビット トランジット)計画で、都心と臨海副都心をBRTで結ぶことによって交通需要の増大に対応しようという計画が東京都で進められている。
詳細は未定だが、このシステムがうまくいけば、いま三井不動産レジデンシャルが中央区晴海2丁目で開発中の超高層マンション(1,120戸)は「勝どき」駅に出るより「豊洲」駅に出るほうが便利になるのではないかと思う。
そうなると、今回の再開発事業地に近接している東急不動産のマンションとの競合関係が生じるのかどうかが気になってくる。「中央区晴海」と「江東区豊洲」のマンションはどちらが高くなるのか、気になるところだ。東急のマンションの坪単価は400万円をはるかに突破すると思われる。
さらに湾岸でいえば、住友不動産の「(仮称)東京ベイ トリプルタワープロジェクト」(1,539戸)があるし「オリンピック選手村」(賃貸含め5,650戸)も控えている。「豊洲移転」も絡んで当分、湾岸エリアは賑やかになる。
外観パース
ポラス「白岡」の戸建て 埼玉県「先導的ヒートアイランド対策モデル事業」に認定
品川社長(左)と上田知事(埼玉県庁で)
ポラスグループの中央住宅が分譲している戸建て「風と緑のまち 白岡」(全21棟)が埼玉県が今年度に新設した「先導的ヒートアイランド対策住宅街モデル事業」の第一号として採択され、その認証式が11月29日、県庁で行われた。
同事業は、ヒートアイランド対策が喫緊の課題になっている現在、埼玉県が一定以上の規模を対象に、課題を解決するための方策を盛り込んだ先導的な住宅街モデルを顕彰・補助する制度。
「風と緑のまち 白岡」は、JR宇都宮線白岡駅から徒歩7分の土地区画整理地内にある全21区画。「素材」「水」「緑」「風」の力を利用した「パッシブ・ランドデザインシステム」を導入することによって、夏季の体感温度を5℃程度引き下げることを目指している。完成を前にしてすでに17棟が契約済みという。
認証式に臨んだ上田清司・埼玉県知事は「今回の案件をきっかけに第2弾、第3弾と続:け、全ての戸建てでやっていただきたい」と述べ、同社・品川典久社長は「第一号案件に選ばれて非常にうれしい。責任も感じている。できる限り取り今後の物件にも採用していきたい」と語った。
左から同社戸建分譲設計本部営業企画設計二課課長・野村 壮一郎氏、品川社長、上田知事、同社戸建分譲設計本部営業企画設計二課係長・酒井かおり氏、ポラス暮し科学研究所住環境G主任・福代 昇一氏
◇ ◆ ◇
上田知事とポラス品川社長らとの懇談が終わり、報道陣が続々と知事室から退室したので記者も帰ろうとしたその時、背後で〝2戸買う〟〝娘夫婦〟〝シキ〟というとぎれとぎれの上田知事の言葉が、多少耳が遠くなった記者にもしっかり聞こえた。
しめた、大スクープだ。認証式など吹っ飛んだ。耳は遠くなっても、頭の回転は並みの記者には負けない。上田知事は68歳。昨年8月の知事選で他の4候補を全く寄せ付けず4選を果たしたばかりで、この日も「ずいぶん報道陣が多いな」と上機嫌で認証式に現れた。とても元気そうに映った。
そんな知事が、死期が迫りつつあることを自覚し、娘に病気の面倒を見させるために「一戸建て」を餌に呼び寄せ、子孫の為に美田を買う-大新聞社が飛びつきそうなビッグニュースに、退室にもたもたしたばっかりに得た僥倖を逃す手はない。
早速、上田知事に「書いていいですか」と聞き、「いいよ。奥さんと娘夫婦の了解は得ていないが」と上田知事から了解も得た。
そこで、正確を期すためにポラスの広報マンに「死期が迫っているので、娘さんとのも含め御社の戸建てを2戸買うと上田知事が仰ったんですよね」と念を押したら、広報マンは「『死期』じゃありません。埼玉県の『志木』ですからね。娘さん夫婦が志木市に住んでいるんじゃないですか? その志木市で今回のような戸建てを分譲するのであれば、買いたいということでした」と、記者のウイットが理解できたのかできていないのか真顔で答えた。
なるほど、何だ、ただのリップサービスではないか。しかし、ただでは起きないのが記者だ。上田知事!志木は価格が高くなりすぎ。「浦和美園」はいかがですか。ポラスさんは戸建てを分譲していますし、NTT都市開発さんは30坪で5,000万円台のマンションを分譲します。知事が戸建てとマンションを買われたら、浦和美園の人気が急上昇し、街の開発スピードも飛躍的にアップすると思いますが、いかがでしょうか。
上田知事
◇ ◆ ◇
これは大まじめ。上田知事!埼玉県の街路樹を何とかしていただきたい。この日、浦和駅から埼玉県庁に向かったのだが、総じて街路樹は貧弱で、しかも周囲の建物に遠慮するように10mくらいまで強剪定されていた。それはビュッフェの絵画のように見えなくもないが、寒々とした冬の風景をより一層際立たせ、不安を掻き立てるグロテクスなオブジェとしか記者には見えない。
東京都や神奈川県には、街路樹の美しさが街のポテンシャルとなっているところが少なくない。埼玉県にそれはあるだろうか。
浦和県庁第一庁舎(左)と第二庁舎の間の街路樹
労働環境改善活動にエール 全国低住協「じゅうたく小町部会」に参加して
全国低層住宅労務安全協議会「じゅうたく小町部会」セミナー(大和ハウスで)
ヨハンナ・オーマン氏
11月25日に行われた全国低層住宅労務安全協議会(全国低住協)の「じゅうたく小町部会」のセミナーを取材した。
同協議会は平成元年に発足。都内の住宅メーカーや専門工事店、安全関連機材・標識の製造、販売会社24社が集まり、増大する低層住宅建設の労災事故撲滅のための活動を開始。現在は住宅メーカー、専門工事店、安全関連機材・標識の製造、販売会社、電動工具メーカーなど約50社が会社の垣根を超えて活動している。
「じゅうたく小町部会」は昨年4月に発足。男性中心の労働環境下で孤独になりがちな女性の現場監督の絆を強化し、またスキルを向上させるため月1回のペースで勉強会などを行っている。
記者はこの団体を全然知らなかった。部会広報担当の壁下瑛里子氏(スウェーデンハウス)からお誘いを受け参加することにした。女性の働き方改善=男性の働き方改善に興味があったからだ。かつては〝3K〟と呼ばれ、学生に敬遠されていた建設業への女性の就職も増え、労働環境も改善されているとは聞くが、まだまだ女性にとっては過酷な環境にあるのは想像できる。その実態を少しでも知りたかったからだ。そして何よりセミナーの講師を務めるスウェーデン人のヨハンナ・オーマン氏がどのような話をされるのかに魅かれたからだ。
会場に着いたとき、すでにヨハンナ氏は話をされていた。記者はてっきりあの難しいスウェーデン語で話され、誰かが通訳する形で進められるかと思っていたが、立派な日本語で話されていたのにまずびっくり。ヨハンナ氏は高校時代に4番目の言語として日本語を学ばれたそうだ。1時間以上にわたりスウェーデンの歴史、自然、文化、教育、政治などについて話された。
福祉国家先進国のスウェーデンがあらゆる面で日本より進んでいることは周知の事実なのでここでは触れないが、どれもこれも耳が痛い話ばかりだった。グサリ、グサリと刃が胸に突き刺さった。ヨハンナ氏は「日本は大好きだが、男女平等でも民主主義でも大変遅れている」と顔をしかめた。
と同時に、記者はあのスティーグ・ラーソンの大ベストセラー小説「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(映画は見ていない)の女性主人公リスベット・サランデルにヨハンナ氏を重ね合わせた。サランデルは知的な小悪魔として描かれているが、ヨハンナ氏もタトゥー、ピアスをたくさん入れればきっとサランデルのような存在になる。核心をつく言葉に酔った。
歳を聞いたら25歳だった。今は「国費で研修中」とのことだが、スウェーデンに帰すのはもったいない。わが国の「女性活躍」推進のためにスウェーデンハウスあたりが〝役員待遇〟で採用しないか。企業の生産性も飛躍的に高まると確信する。
左から壁下氏、ヨハンナ氏、「じゅうたく小町部会」会長・前田直子氏(大和ハウス工業)
◇ ◆ ◇
セミナー後の懇親会にも参加した。20人くらいの中で男性は記者一人。集中砲火を浴び、いびり出されるのではないかと恐れたので、記者と同じスーツ姿の〝男性〟に「わたし一人では心細い。一緒に参加しませんか」と声を掛けたら「わたしは女性です」と一喝された。いびり出される前に心臓が飛び出したのだが、ここで退却するようでは〝男が廃る〟と考え、最後まで皆さんと歓談した。
ここでは書かないが、「女性活躍」は「男性活躍」と同義語であることを思い知らされた。現場での「トイレ」が大きな問題であるのにびっくりした。
◇ ◆ ◇
わが業界には全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)という14字にものぼるいかめしい業界団体がある。全国低層住宅労務安全協議会(全国低住協)はそれより1文字少ないだけで、やはり長い。「低住協」という略称も「中古住宅」と同様、いいイメージを与えない。不動産流通近代化センターが不動産流通推進センターに名称を変えたように、もっと気が利いた名称に変更してはいかがか。
もう一つ。朝の8時に現場の仕事が始まり、職人が仕事を終える17時まで働き、また事務所に戻らなければならない、しかも代わりがいない労働形態は改善すべきではないか。裁量労働制を検討してはどうかとも思った。
セミナー参加者
「202030は可能か」 日本学術会議 ジェンダー研究分科会セミナーに参加して(2016/10/25)
驚嘆のアート・オフィス・デザイン 東京に新名所 日土地他「京橋エドグラン」誕生
北原氏とそのコレクション
日本土地建物・東京建物・日建設計・清水建設の4社が特定業務代行者として完成させた「KYOBASHI EDOGRAND(京橋エドグラン)」が11月25日オープンする。前日24日、メディア向けに公開された。
記者は地下1階の共用部分といくつかの店舗のデザイン・アートに驚愕した。取材中ばったり出会ったテレビ東京「開運!なんでも鑑定団」のレギュラー出演者で、京橋生まれで京橋育ちのトーイズ・北原照久代表取締役の案内で、トーイズが賃貸している共用部分などのアート作品、おもちゃコレクションを見て回った。
見るだけで楽しく戦前戦後の世相が見えてくる。素晴らしい〝作品〟ばかりなのに驚愕した。北原代表は賃貸料を明らかにしなかったが、近くにあるブリヂストン美術館の名作に匹敵する価値がある。しかも無料だ。東京に新名所が誕生した。
北原氏のコレクション
◇ ◆ ◇
「KYOBASHI EDOGRAND(京橋エドグラン)」は、東京メトロ銀座線京橋駅に直結。敷地面積約8,000㎡、事務所、店舗、公共公益施設などからなる地下3階地上32階建て延べ床面積約113,000㎡。事業主は京橋二丁目西地区市街地再開発組合。設計監理は日建設計。施工は清水建設。特定業務代行は日本土地建物・東京建物・日建設計・清水建設。組合は2006年2月に設立され、2009年6月に都市計画決定された。
主な特徴は、①京橋エリア最大級・国内最高クラスのスペックを誇る超高層免震②高さ31mの吹き抜け空間など多様なオープンスペース③歴史的建造物「明治屋京橋ビル」を保存再生④タウンマネジメントの展開⑤中央区の情報発信拠点「中央区観光情報センター」の開設-など。
外観
オープニングインスタレーション
大階段
ガレリア
◇ ◆ ◇
内覧会では、冒頭紹介した北原照久氏のコレクションのほかいくつか見学し、試食もさせていただいた。
まず、「中央区観光情報センター」。広さは約134㎡。江戸時代の地図と昭和22年以降のNASAの協力を得て作成したという中央区の空撮写真が刻々と展開する「オーバービュー」にびっくりした。ファミコンのコントローラーのようなものを操作すれば、区の50スポットが日本語、英語、中国語、韓国語で紹介される。
「中央区観光情報センター」
店舗は「北大路 京橋茶寮」を取材した。これが最高に素晴らしかった。わが国の伝統的な仕上げと現代的なデザインを融合させた造りになっているのが特徴で、ヒノキ、ケヤキ、栃の無垢材などをふんだんに用いた面材・家具調度品、浮造りの床、大谷石の壁、手すき和紙の漆・柿渋仕上げ、備前焼き、鉄器、江戸唐紙などが目を楽しませてくれる。
驚いたのは「試食会」。試食だから料理が少し提供されるのかと思ったら、何と普段は4,000円もする和食料理が出された。記者は、このような和食(中華もイタリアンもそうだが)が出されるとパブロフの犬のように酒を飲まずにはいられない。なので「すいません。お金はちゃんと払いますので、日本酒をお願いできますか」と栃木の酒「くどき上手」1合を頼んだ。瞬く間に飲んだのだが、料理が全然減らない。残したら失礼だと思い、また酒を1合頼んだ。お猪口が銅製でちゃんと冷やされていた。もちろん、酒代3,080円はきちんと支払った。
「北大路 京橋茶寮」
ケヤキのデザイン壁(左)とお酒
「中央区観光情報センター」と「京橋茶寮」、さらにオープンイノベーションオフィス「SENQ(センク)」と北原氏のコレクションを見て満足し、帰り際に明治屋の店舗「明治屋ワイン亭」をのぞいたら、輸入ワインが飲めるというのでグラスに一杯どころか2杯も頂いた。これがまたおいしかった。
最後になったが、「SENQ(センク)」もなかなかいい。法人登記もできる個室6室のほかブース11室、ラウンジ63席とシェアキッチン、会議室のほか、カフェ「ミカフェート カフェアンドブラッスリーSENQ京橋」が併設されている。
「SENQ(センク)」ラウンジ