三井不 柏の葉の調整池を親水空間にイノベーション「アクアテラス」一般供用を開始
「アクアテラス」全景
柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)と三井不動産は11月22日、柏の葉スマートシティの次期開発エリア「柏の葉イノベーションキャンパス」の中核ゾーンとなる「アクアテラス」の一般供用を開始するとともに、米国のグリーンビルディング協会(USGBC)が運営する国際的な環境性能認証制度「LEED(リード)」の街づくり部門「ND(Neighborhood Development:近隣開発)」の計画認証で最高ランクとなる「プラチナ認証」を取得したと発表した。プラチナ認証取得は日本初で、42haに及ぶ規模は世界最大級となる。
「アクアテラス」の面積は約2.3ha。雨水流出抑制を目的に造られた「2号調整池」を大規模改修し、親水空間化したもの。「調整池」に新たに6 カ所の階段・スロープを設け、利用者は街のさまざまな方向から水辺近くまで降りることができ、各所にベンチやデッキ、「三角広場」、「親水テラス」など賑わいを創出するスペースも随所に設置。地域住民や周辺企業が主催するイベントや各種のアクティビティの開催も行っていく。
また、「交流空間」としての機能の強化を実現する複合商業施設「柏の葉T-SITE」を2017 年春にオープンする。同施設は、カルチュア・コンビニエンス・クラブが手掛けるライフスタイル提案型施設で、書店・カフェ・各種ショップなどで構成される。
UDCKが柏市と協定を結び、調整池を維持・管理していく。植栽や安全管理にかかる費用は、調整池に隣接する土地所有者が協議会を設立して負担する。
「アクアテラス」オープンのテープカット(左からカシワニ、北原氏、田中地域ふるさと協議会・染谷茂会長、秋山市長、武田氏、出口氏)
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「アクアテラス」のお披露目会に先立って行われた関係者によるプレゼンテーション・トークセションで、出席した秋山浩保・柏市長は、「市の中長期計画で『柏の葉』地区を将来にわたって千葉県全体をけん引するエリアの一つとして位置付けており、規制の強化と緩和を駆使して新たなチャレンジを行っている。今回の『アクアテラス』は難易度でいえば100%難しいのだが、皆さんの熱意に後押しされて実現した。街の大きな付加価値になる」と関係者を称えた。
北原義一・三井不動産専務は「『柏の葉』は300haに及ぶ規模。『環境共生都市』『新産業創造都市』『健康長寿都市』の3つのテーマを掲げ、日本から世界に発信する他に例を見ない壮大な実証実験プロジェクト。『2号調整池』の用途変更も極めて画期的なこと」と語った。
出口敦・UDCKセンター長(東大大学院教授)は、「一つの空間に一つの機能を持たせるのが従来の都市計画の手法。今回の計画は新たなモデルケースとなる」と話した。
「柏の葉T-SITE」を出店するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の武田宣副社長は「コンセプトは『代官山 蔦屋書店』などと同じ。日常をワクワクしていただく、『T-SITE』ができて変わったなという人が一人でも増えてくれたらうれしい」と話した。
親水テラス(左)と親水ステージ
張り出しデッキ
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40年近く郊外の大規模開発を取材してきたが、調整池が〝主役〟の取材は初めてだった。調整池といえば、立派な水辺空間があるのに、コンクリとフェンスで囲まれ「立ち入り禁止」の看板が掲げられているのが普通だ。それを「アクアテラス」が覆した。秋山市長は「行政単独では費用負担も大きくまずできない」と話した。
「画期的」な親水空間の演出には違いないが、イベントに参加した地元居住者の女性は「子どもが水遊びできるようしてほしい」と話した。水辺にみんなを誘導しながら「水面への立ち入り禁止」は残酷だ。蛍を誘っておいて水を飲ませないのと一緒だ。
調整池の深さは30~80㎝だそうだ。水は流れており、魚も泳ぐぐらいの水質だ。メタンガスは発生しない。こどもの事故など起きるはずがないではないか。仮に起きても秋山市長の責任を問う住民はまずいない。
かつて調整池で子どもの事故はあったかと国交省にも聞いたが、国交省は把握していないということだった。
駅前の「オークビレッジ柏の葉」の農園
「オークビレッジ柏の葉」で「特別ですよ」といただいた富有柿
「時間をどう豊かに使うか 都市を評価する新しい指標に」 出口敦・UDCKセンター長
柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)センター長・出口敦氏
「ワークライフバランスに象徴されるようにいかに時間を豊かに使うか、これが都市を評価する新しい指標になる。これまで都市は公共性や利便性が重要視されてきたが、これからは人間の時間の使い方、豊かさをどう実現するかが重要」
東京大学大学院教授で、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)センター長を務める出口敦氏が11月22日、「UDCK設立10周年記念イベント」で語った言葉だ。
この言葉を聞いてわが意を得たりと思った。記者はここ数カ月、いやバブル崩壊後ずっと考えてきたことがある。
それは、「駅近」のマンションが〝過剰〟に評価され、その一方で豊かな自然環境や広い面積が確保されている郊外型が〝過小〟に評価されている市場はどこかいびつではないかという思いである。普通の会社員が23区内でマンションを買えない、住めない世の中は狂っている-この思いがずっと澱のように沈殿してきた。
出口教授はその解けない謎を解くヒントを与えてくれたような気がした。しかし、果たして時間を豊かに使える会社員がどこにいるのか。記者は出口教授に「先生、仰ることはよくわかる。しかし、今の会社員は時間と仕事に追われ、全てのものを犠牲にして時間を確保するため『駅近』を選択する。豊かな時間など持てない世の中ではないか」と迫った。
出口教授は「その問題を問を解くカギは可処分所得と可処分時間をどう増やすかだ」と答えた。
時間や仕事に追われない、時間や仕事を追わない-そんな社会が来ることを記者は夢見ているのだが、「可処分時間」という概念は面白い。誰にも侵されない「可処分時間」は工夫次第で作れるような気がする。「柏の葉」が時間や仕事に追われない、そんな社会の実現のための実証実験プロジェクトであることを信じたい。
「駅近」の価値については日を改めて書く。
三井不 柏の葉の調整池を親水空間にイノベーション「アクアテラス」一般供用を開始(2016/11/23)
ポラス 〝奇跡の街〟野田市七光台に地域コミュニティ支援のカフェ オープン
「Meet Up Under the Tree(あの木の下で会いましょう)」イベント参加者
ポラスグループの中央グリーン開発は11月19日、同社が2004年から2014年にかけて開発・分譲した全1,035棟の野田市の大規模戸建て住宅地「パレットコート七光台」の一角に、住民参加型のワークショップ「光葉町ミライ会議」とともに完成させたコミュニティカフェ「Meet Up Under the Tree(あの木の下で会いましょう)」のオープンイベントを開催。鈴木有・野田市長、菊地晃史・光葉町自治会長、桜井・カフェオーナーら約100名の関係者が完成を祝った。カフェは11月23日オープンする。
公募で選ばれたカフェオーナーの桜井氏は「お花がいっぱい飾られたオーストラリアのカフェで朝ご飯を食べてカルチャーショックを受けたのがきっかけ。こんな店を日本でもやりたいと思った。コンセプトは〝はじまり、つながり、ひろがり〟。デザインにもこだわった。コミュニティの輪を大きく育てたい」と話した。
菊地氏は「『七光台』が分譲開始されたとき、いい街になると直感し購入を決めた。その直感は間違っていなかった。これからもいい街にしたい。自治会加入率も引き上げたい」と語った。
カフェの敷地は、同社の旧千葉支店があったところ。当初は建物を壊し分譲戸建てを5戸建設して分譲、事業完了する予定だったが、自治会などと協議を重ね、事業完了後の地域コミュニティを支援するために今回の住民参加型のカフェに変更した。3年間のテナント料と300万円の支店リノベーション費用を補助した。リノベーションには住民も参加した。
コミュニティカフェ「Meet Up Under the Tree(あの木の下で会いましょう)」
左から菊地氏、鈴木市長、桜井氏
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この街は分譲当初から数回取材している。「奇跡の街」と書いたが、あの貧相な駅舎と蒼茫とした野原がわずか10年で1,000戸を超える住宅街に変貌したのが信じられない。いま、郊外住宅地の販売ペースは年間20~30戸だ。この街はその4~5倍のスピードで完成させた。当時の記事もぜひ読んでいただきたい。
カフェの一角
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イベント会場で参加者に話を聞いた。まず、この日のイベントに野菜を提供した千葉県野田市木間ケ瀬(旧関宿)農家「みのりFarm池澤」の30歳代のご夫婦。
読者の皆さんは野田市木間ケ瀬と聞いても皆目見当がつかないだろうし、記者自身も「旧関宿」と聞いて、「ああそうか。あの千葉県の北西の突端にある利根川と江戸川に挟まれた盲腸のような町」くらいしか思い浮かばないのだが、若い池澤ご夫妻は、その盲腸のような地で年間30種類の野菜をセットで各家庭に直接販売している。今では六本木ヒルズ、恵比寿ガーデンプレイスなどのマルシェにも出店しているというから驚きだ。
2人は19、20歳で結婚。ご主人はいわゆる〝婿〟。〝嫁ぎ先〟は子どもに同じ仕事をさせないのが家訓だったため、二人で農業の道を選んだのだそうだ。子どもは2人。
ご主人が「彼女は30キロの荷物を持てる」と紹介したので、早速奥さんに腕相撲を申し込んだ。体重は40キロ前後なのに、記者はものの数秒でねじ伏せられた。
奥さんは「わたしの専門は美容・ネイル。仕事を通じて美容と農業がつながっていることがわかってきた。土に触らない日はない。ネイルは爪が汚れても目立たないように黒を基本にしている」と笑った。
「パレットコート七光台」に当初から住んでいる6歳と4歳の子どもがいる30歳代の夫婦はどうか。
大阪出身のご主人(38歳)は都内・日本橋に勤務する会社員。「会社まで1時間半。専ら読書の時間に充てている」と、通勤をそれれほど苦に思っていないようだ。結婚して仕事を辞めたという〝専業主婦〟の奥さんは「わたしは所沢出身。最初は全然お友だちもいませんでしたが、たくさんできるようになった」と語った。
気になるのはやはり女性の仕事と子育ての両立だ。18歳から25歳まで4人の子どもかいる40歳代の女性の「いつも母子家庭状態」という声にはドキリとさせられた。
豊かな自然と広い敷地の郊外住宅に住むことが、女性にとって〝専業主婦〟〝母子家庭〟状態になることを覚悟しなければならないのか。これはみんな考えないといけない。今回のカフェでは、採用した従業員6人中4人が七光台の住民とのことで、雇用創出にも一役買っているようだ。
「みのりFarm池澤」ご一家
七光台にお住いのご一家
イベントでふるまわれた料理
本場シンガポールチキンライスが楽しめる中野セントラルパーク店 17日オープン
スチームチキンライス(左)とローストチキンライス 1,300円(ランチタイム1,100円)
威南記海南鶏飯(Wee Nam Kee Hainanese Chicken Rice/ウィーナムキー ハイナンチキンライス)は11月17日、日本3号店目となる中野セントラルパーク店をオープンする。オープンを前にした16日、メディア向け試食会が開かれた。
中野セントラルパーク店は、「ガーデン・シティ」と呼ばれる中野四季の森公園に面しており。開放的で自然光が入り込む全席ガーデンビューの店内(38席)とシンガポールリゾートを満喫できるテラス(34 席)の全72席。東洋と西洋のスタイルを取り入れたインテリアデザインが特徴で、ウィーナムキーの現地の味・製法にこだわったシンガポールチキンライスが楽しめる。
威南記海南鶏飯はシンガポールの人気店の一つで、4店舗を経営するほか、フィリピン、インドネシア、韓国でも店舗を展開しており、わが国には昨年7月、田町に第一号店を初出店。その後、9月に銀座店を出店しており、今回が3号店目。今後、主要都市で展開し当面20店舗を目指す。
シンガポールチキンライス(海南鶏飯)は、元々中国南方の海南州からの移民によって伝えられた料理で、シンガポールでは日常食のひとつ。スチームまたはローストしたチキンとチキンスープで炊いたライスに好みのダークソイソース、チリソース、ジンジャーソースを合わせて食べるのが一般的。
店内(テラス)
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記者だって少しは料理の味がわかる。中華だって本場中国で素晴らしくおいしい料理を食べた。羊の内臓料理が最高に素晴らしかった。昔のパレスホテルのナシゴレンは絶品だった。
しかし、シンガポールチキンライスは初めて食べる味で、香味野菜の香りがした。中国料理というより、やはり南アジアの料理のような気がした。蒸した鶏肉は柔らかく、量がたくさんあるので若い人にお勧めだ。パクチーが最高においしかった。
シンガポールに旅行で行ったことがあるという弊社の若い女性に聞いたら、「この店行ったことあるかも。とてもおいしかった」と話した。
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メディア向けの試食会といえども酒の一杯くらいは出るだろうと思っていたが、待てど暮らせどその気配は全くないのでしびれを切らし、また、先日亡くなられた元東京建物会長・社長の南敬介氏(享年80歳)の供養にもなるだろうと考え、「すいません、お金を払いますのでこれくれませんか」と、5年物の紹興酒(650円)を頼んだ。値段はいつも飲むビール、日本酒、焼酎と同じくらいだった。
南氏が当時会長だった2007年、東京建物はこの土地(警察大学校跡地約3.5ha)を1,437億円で落札した。あれから約9年。中野四季の森公園のクスノキの大木は見事だった。
店内からテラス・公園を望む
「倫理経営、居住福祉へシフトチェンジせよ」 リブラン・鈴木靜雄会長が熱く語る
鈴木氏(埼玉県住まいづくり協議会セミナー会場で)
埼玉県住まいづくり協議会が先月14日に行ったセミナー会場で、同協議会の副会長を務めるリブランの取締役会長・鈴木靜雄氏に久々に会った。
鈴木氏は、「会社には年に1回、正月に幹部らと話をするくらいで、経営には関わっていない」としながらも、現在の中堅デベロッパーに次のような手厳しい注文・檄を発した。
「われわれが30代、40代の頃は大手と戦ってきた。ヒューマンランド、タケツー、興和物産などもそうだった。いまの中堅デベロッパーは戦っていない。今こそ住居とは、コミュニティ、子育て、健康とは何か、これら数値ができない、業界が関わろうとしないところに価値がある。ここに焦点を当て深く掘り下げれば、数値化できない、見えない価値が見えてくる。マーケットは無限だ。決断するかどうかだ。われわれが提唱している倫理経営、居住福祉産業へチェンジすればマーケットは無限に広がる」と。
激しい口調に〝昔と全然変わっていない〟と思いながら、お歳を伺ったら74歳とのことだった。鈴木氏が60歳を迎えたとき、業界関係者らと還暦祝いの飲み会を行い、赤いちゃんちゃんこを羽織って「引退」をほのめかされたのを思い出した。あれから14年が経過したことになる。
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鈴木氏は第一線を退くまでは同社の社長として、「環境共生」を前面に掲げたマンション・戸建てブランド〝エコヴィレッジ〟を幅広く展開し、中堅デベロッパーをリードしたばかりでなく、業界全体にも大きな影響を与えた。大手と互角に戦った〝中堅の星〟的な存在だった。
今では常識となっている「パッシブデザイン」を真っ先に導入したのもリブランだったし、〝リビングイン〟を提唱したのも同社だった。ビオトープを備えた戸建て「川越ハートフルタウン霞の郷」は現時点でも最高傑作のひとつといえる物件だ。防音機能を備えたミュージシャン向けの賃貸マンションなども手掛けて話題を呼んだ。
また、コミュニティ支援にも力を入れ、地域のバレーボール大会を後援するなどCSRでも業界の先駆的役割を果たした。
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鈴木氏が第一線を退かれた以後は同社への取材も足が遠くなり、また全国住宅産業協会(前日本住宅建設産業協会)とも訳あって〝絶縁〟したこともあり、中堅デベロッパーの動静には疎くなっているのだが、鈴木氏が現在の住宅・不動産業界に〝シフトチェンジ〟を求める主張は説得力がある。
記者が見る限り、全住協会員会社が分譲するマンションは完全に大手との競争力を失っていると思う。リーマン・ショック後、金融機関の貸出態度が厳格化したために〝戦えなくなった〟事情は考慮しなければならないが、〝戦っていない〟という鈴木氏の指摘は的を射ている。「倫理経営」「居住福祉」の原点に立ち戻れば、前途に光明を見いだすことも可能かもしれない。
鈴木氏が実業家の滝口長太郎氏と出会い、「倫理経営」に傾倒し、神戸大学名誉教授・早川和男氏らが提唱する「居住福祉」を盛んに口にしたころと、同社の業態が劇的に変わり、業績も上昇の一途をたどった昭和60年代の前半と一致するからだ。鈴木氏は「倫理経営」「居住福祉」を間違いなく実践した。
鈴木氏が「(私たち不動産・住宅業界は)住宅と人間、社会との関係性に本質的思想が欠如されたまま突き進み続けました。その結果、住宅産業は景気産業に変容してしまい、様々な社会問題が勃発して、日本社会は現在、末期的様相を呈しています」(2011年11月8日号「住宅新報」)という認識は的を外してはいない。日々生起する問題が住居と深くかかわりあっていることは自明のことだ。
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この日、鈴木氏に同行していたリブランのミュージション事業部部長代理・田代聡夫氏が「会長は社内のだれよりも精力的に活動している」と話したが、鈴木氏は今年6月に韓国で行われた「第11回平和と繁栄のための済州フォーラム」に日本セッションの実行委員長として参加、「倫理資本主義で世界を救おう」と呼び掛けた。日本居住福祉学会でもデベロッパーとしては唯一理事として活動されている。
〝引退〟とは、「人間と居住の本質から見れば『廃拠』に等しい」従来型の不動産業からの決別であり、「居住福祉産業」へ突き進む第一歩だったのだろう。
〝泣かせる〟尾崎・安部夫婦がグランプリ賞 第4回JEG大会 積水ハウスが賞総なめ
第4回「JEG DESIGN CONTEST 2016」プレゼンテーション大会(四谷区民ホールで)
住宅メーカー8社が共同運営・活動する住宅エクステリアガーデン研究会(JEG)は11月14日、第4回「JEG DESIGN CONTEST 2016」プレゼンテーション大会を開き、グランプリ賞に積和建設九州の尾崎孝也氏と安部美和子氏の「晴好雨奇」を選んだ。
応募総数は1,400作品で、二次審査を通過した5部門18作品が優秀賞として発表された。5部門とも積水ハウスグループが最優秀賞を受賞した。グランプリ賞は昨年も積水ハウスだった。
今回新たに設けられた「新人賞」は、下久保美咲氏(ナテックス)の「時間・空間・こころにゆとりの国立くらし」が選ばれた。
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記者は、樹齢80年のイチョウの伐採をめぐり問題となっている千代田区の取材が急きょ入ったため、JEGの会場に駆け付けたときは、プラントハンター そら植物園代表・西畠清順氏の基調講演が終わる間際だった。西畠氏は樹齢1000年のスペインのオリーブを小豆島に移植して成功させた話をされたようだ。
小豆島のオリーブの話は千代田区のイチョウと通じるものがあると思う。国立科学博物館名誉研究員・近田文弘氏によると「イチョウは1000年以上生きる。千代田区の街路樹はまだ若木。伐る必要など全然ない」と話した。
西畠氏の〝作品〟の一つ(三井不動産レジデンシャル「パークシティ大崎」で2015年撮影)
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優秀賞に選ばれたエクステリア大型、エクステリアベーシック、ガーデン、街づくり・集合住宅、リフォーム5部門の最優秀賞はいずれも積水ハウスと積和建設の社員の作品だった。主催者だったか受賞者だったか「この研究会の認知度が低い」と語ったが、それにしてもハウスメーカー8社も揃って、積水に総取りされるとは情けない。審査員の一人でE&Gアカデミー青山校校長・古橋宣昌氏は「今回は積水ハウスが総取り。来年は各社の気合が入るのでは」と話したが、他社の奮起に期待しよう。
古橋氏はまた、「皆さんのノウハウを若い人に伝え、働きやすい環境を整え、美しい日本の街並みを伝えていく業界にしましょう」と呼び掛けた。
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記者は聞いていないのだからその理由は知る由もないのだが、グランプリ賞に輝いた積和建設九州の尾崎孝也氏と安部美和子氏の受賞シーンが〝泣かせた〟。
受賞の感想を求められた尾崎氏は、関わった関係者にお礼の言葉を述べたあと「凸凹コンビの夫婦ですので、プレゼンの練習ではテレもあったり、微妙な空気も流れたりもした。受賞には言葉もない」と話し、奥さんの安部氏は「ありがとうございます」と涙ぐんだ。
これにはまだ続きがあり、審査委員のJAG会長・正木覚氏が「(審査で)初めて涙した。自分でも止められない内容を含んでいた」と語った。さらにまた、JEG審査委員長・粟井琢美氏(三井ホーム)も「ウルルっとした」と、二人の〝幸せガーデン〟提案を褒めた。
記者は、二人が侃々諤々、自らの意見を譲らず、またプレゼンの練習で相手に難癖をつけるうちに疲れ果て、やがて怪しい空気が流れ、2匹のフカのように深い海底に沈んだと理解する。デザイン提案に至る過程が〝泣かせる〟のであって、提案そのものが〝泣かせる〟のではないはずだ。
プレゼン用写真(月見台) 敷地は市街地が望める高台で、樹木はカエデ類が中心だそうだ
尾崎氏(左)と安部氏
「ダメな木は1本もない。私は木を見て、森を見て、人間を見る」 近田文弘氏/千代田区の街路樹
イチョウ並木を観察する近田氏(神田警察通りで)
皇居や吹上御所の植物相研究などで知られる国立科学博物館名誉研究員・近田文弘氏(75)が11月14日、樹木医による診断で「枯損木の恐れあり」と判定された千代田区神田警察通りの5本のイチョウを視察し、「わたしは樹木医ではないが」と前置きしたうえで「見た限り全然問題ない。気温低下と湿度維持の働きを持つ街路樹を切り倒すのは間違い。街路樹と人が共存できるように視点を変えるべき」などと語った。
近田氏は区議会企画総務委員会委員や住民らとイチョウ並木を見て回り、「イチョウは1000年以上生き、直径10メートルに成長する。見た限りダメな木は1本もない。みんな若木だ。切らなくても数十年は大丈夫。倒木や枝の落下を心配する声があるが、まず大丈夫。しっかり木を見ることが大事。根上りはして当然。木をいじめるのでなく、根が伸びられるように舗装方法を改善すべき」と話した。
区は近く正式に樹木医の診断を受けるそうだ。
神田警察通りのイチョウ並木
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記者はこれまで、「根上り」は〝音を上げる〟と同じ、樹木が高齢化し、死期に近いことを知らせるシグナルかと思っていたが、そうではないようだ。重い幹を支えるのに太い根を張る必要があるという近田氏の説明は明快だ。根上がりがしても大丈夫なよう舗装方法を改善せよという近田氏の指摘は検討に値しそうだ。
そして、近田氏の次の言葉がぐさりと胸に突き刺さった。
「樹木医? 木の病気を診断するのだろうが、私は木全体を見ているし、森も見ている。そして何より人間を見ている」
何の学問もそうだろう。すべては人間のためであり、人間もまた自然に生かされているという視点が大事なことを改めて教わった。「ダメな木は1本もない」というのは「ダメな人間は一人もいない」に通じるのだろう。
近田氏は記者より8歳も年上だが、スニーカーを履いた足取りも軽く、みんなを先導した。来年には天山山脈の西にあるカザフスタンを旅するのだそうだ。
近田氏に「千代田区の森と街路樹が東京を潤す」と題した6ページの小論文を頂いた。葉の形・大きさ・働きについて書かれた部分を紹介する。
「カシワの葉は大きな鋸葉と短い葉柄があり、長さ10~30㎝と大型で、風を受けて鋸葉と葉柄が動いて空気の波を作り葉の周辺の太陽熱を逃がす。…街路樹ではこの働きが扇風機の役をして空気が涼しくなる」
街路樹の伐採中止・保存求める陳情書を採択 千代田区議会 企画総務委員会(2016/10/17)
大京グループ ホームステージング事業を開始
大京グループの大京穴吹不動産と大京リフォーム・デザインは11月8日、「ホームステージング」事業を開始すると発表した。
同事業を開始するのは、政府の住宅政策が新築供給からストックへの有効活用へと転換しようと図っている背景があり、大京グループは10 月26 日に発表した中期経営計画「Make NEW VALUE 2021~不動産ソリューションによる新・価値創造~」でも、売買仲介及びリノベーション事業のシェアを拡大し、市場成長率を上回る水準で成長させることを打ち出している。
大京穴吹不動産は年間約7,000 件の仲介実績と業界トップクラスのリノベーションマンション販売戸数の実績を持ち、大京リフォーム・デザインはマンションリフォーム売上で業界3 位(リフォーム産業新聞調べ)、年間約7,000 件以上のリフォーム実績があり、新築から中古までマンションに精通している強みを生かすとしている。
ホームステージングは片付けや掃除、インテリアを含めたトータルコーディネートで、空き家を含む中古住宅を魅力的に演出し、不動産売買を円滑にするためのサービスで、米国では30 年以上前から一般的に行われている。わが国では2013年8月、日本ホームステージング協会が設立されたほか、野村不動産アーバンネットも独自のサービスを行っている。
大京グループ2社は、日本ホームステージング協会の企業会員となり社員約40 名が同協会のホームステージャーの認定資格を取得した。
三井不レジ・丸紅 馬車道駅直結 横浜北仲タワープロジェクト着工
「北仲通北再開発等促進地区地区計画」
三井不動産レジデンシャルと丸紅は11月1日、横浜市中区の大規模開発事業「北仲通北再開発等促進地区地区計画」(約7.5ha)の中心に位置する超高層ミクストユースタワーの建設に着手したと発表した。
同計画は、東急東横線直通横浜高速鉄道みなとみらい線馬車道駅に直結する新たなランドマークとなり、横浜市最高層・最大規模となる総戸数1,100戸超の分譲住宅と宿泊施設、商業施設、文化施設等を一体的に開発するもの。設計・施工は鹿島建設。竣工は2020年2月の予定。2020年6月末に移転する予定の新市庁舎に近接することになり、新たなランドマークが誕生する。
建物は地上58階建て・約200m延べ床面積約168,000㎡の超高層ミクストユースタワー。5階から58階(46~51階を除く)は総戸数1,100戸超の分譲マンションとなる。ロサンゼルスに本社を置き、北米、アジア、ヨーロッパに約25,000室以上のサービス付き長期・短期滞在型宿泊施設を運営している「オークウッド」のロビーが46階に設けられ、51階までの各フロアに客室(計175室)が設けられる。低層階の1、2階には、延床面積約6,000㎡の商業・文化ゾーンとなる。
また、横浜市認定の歴史的建造物を文化創造の核として保全・復元するため、建物基壇部には、日本の産業黎明期の生糸輸出拠点となった倉庫群の復元を行い、横浜市認定の歴史的建造物である「旧横浜生糸検査所付属生糸絹物専用B号倉庫およびC号倉庫(倉庫棟)」の保全を行う。
完成予想図
「近所付き合い」必要 一戸建て79.8% マンション72.4% アットホーム調査
昨日(10月31日)、「分譲戸建てから『勝手口』が消える…」記事を書いたその日、いつもユニークなアンケート調査をするアットホームが「戸建て・マンションの“ご近所付き合いの違い”調査」をまとめ発表した。
首都圏の30~60歳代の「持ち家」に住み始めて2 年以上経っている既婚女性624名(一戸建て312 名、マンション312 名)を対象にネット調査したもので、①近所との現在の付き合いは「親しい」一戸建て50.0%、マンション34.3%②理想の付き合い方 マンションでも半数以上は「立ち止まって会話交わす」くらいが理想③近所付き合いが「苦痛」と思うことがある 一戸建て34.3%、マンション28.5%④「嫌いなご近所さんがいる」一戸建て42.3%、マンション36.5%⑤近所に苦情を言ったことがある 一戸建て13.1%、マンション25.6%⑥近所に言った苦情1 位 一戸建て「車や自転車の駐車」マンション「子供が走る音」-などの結果が出た。
近所との“仲良し度”では一戸建てが平均60.2点、マンションが平均53.8点、近所付き合いの“満足度”では一戸建てが平均64.9点、マンションが平均63.6点となった。近所付き合いは「必要」という人は一戸建てが79.8%、マンションが72.4%だった。
また、お隣のことが「好き」は一戸建てが42.9%、マンションが29.5%、お隣のことが「嫌い」は一戸建てが21.2%、マンションが12.8%だった。
近所付き合いが「苦痛と思うことがある」は一戸建てが34.3%、マンションが28.5%だった。
近所に「苦情」を言ったことがあるのは、一戸建てが13.1%、マンションが25.6%で、その1位は、一戸建てが「車や自転車の駐車」で、マンションは「子どもが走る音」だった。このほか、「ゴミやものが飛んでくる」「たばこの煙」(マンションに多い)「ペットの鳴き声」(一戸建てに多い)「子どもの叫び声(泣き声)」「歩く音」(マンションのみ)、「喧嘩の声」(一戸建てに多い)などで、「その他」も一戸建てが12.2%、マンションが22.5%だった。
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〝あばたもえくぼ〟〝愛と憎しみは紙一重〟というくらい夫婦関係だって難しいのに、近所付き合いが容易でないことが浮き彫りになった調査だが、戸建てもマンションもそんなに悪い結果でなくてほっとした。女性だけでなく、男性にも聞けばまた違った答えが出たかもしれない。今度は男性のみにアンケートを取ってほしい。記者は近所の女性を「嫌い」と思ったことなど一度もない。その逆で、「好き」な部類に入る人が圧倒的に多い。
「苦情」の原因は様々だが、「子どもが走る音」「歩く音」はその人が悪いのではなく、分譲した業者、施工した業者が悪いのだし、子どもやペット(鳴かないものもあるが)は泣(鳴)かないほうが心配だ。「喧嘩の声」に苦情=仲裁だと思いたいが=を持ち込む人は立派だ。
個人的には、マンションで「タバコの煙や臭い」を嫌いな人が22件(有効回答350名)あるのは予想できるとはいえショックだ。マッカーサー、チャーチル、吉田茂、ドストエフスキー、夏目漱石、松本清張、キセルを持つ浮世絵の美人画、ゴッホ…はみんなタバコ好きだった。淡路恵子さんは「タバコは私の6本目の指」という名言を残した。タバコを禁止したのはヒットラーであり「イスラム国」だ。タバコは文化であり、嫌煙運動は間違いなく文化の破壊、優性思想につながる。
分譲戸建てから「勝手口」が消える わが国の文化の崩壊ここにも(2016/10/31)