住宅リフォーム推進協 市場活性化に向け官民連携して活動強化
記者発表会(ホテルメトロポリタン エドモントで)
統一ロゴマーク
住宅リフォーム推進協議会(略称:リ推協、会長:吉田忠裕・YKK AP会長CEO)は9月30日、「リフォームで生活向上プロジェクト」を本格始動したと発表した。
地方自治体、地域リフォーム推進協議会、住宅リフォーム事業者などが行う様々なイベントを統一ロゴマークや共通コンテンツを使って官民を連携させることで、リフォーム市場の活性化を図るのが目的。本格始動にあわせプロジェクト公式ソング「リフォームで~SMILE~」を作製し、PRしていく。
また、リフォームをする際のヒントとなる情報ツールとして「祖父母の家に対する意識調査」報告書をまとめた。調査は、インターネットを通じて祖父母の住宅について聞いたもので、子どもは食事やおしゃべりなどコミュニケーションが取れることを楽しいと思っている一方で、もっとも苦手なのは寒い・暗い・狭い「トイレ」だった。
今年度は、協賛団体や事業者などが行う全国1,000カ所のイベントで30万人以上の参加者を見込んでいる。
左から三人目が吉田氏
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記者は、他の取材があり記者発表会に遅れて参加したのだが、大勢の記者の前で吉田会長が挨拶をしていた。隣には国交省、経産省の担当者も席についていた。
後で聞いたのだが、報道陣の参加者は55名。もともとハウスメーカー系の記者発表には多くの記者が集まるのだが、これほどの人数が集まるのは「リフォーム」に対する関心の高さだろうと判断した。(事務局の力かもしれないが)
質疑応答の時間になり、いくつか質問したかった。聞きたかったのは、主催者が度々話した「リフォームの認知度が低い」ことと、悪徳業者をどのように排除していくのかについてだった。発表会の雰囲気は記者の認識とかなりずれがあった。しかし、遅れてきて、しかもリフォームについてほとんど知らないのに質問するのは失礼だと思い黙っていた。(認知度については別の記者が質問してくれた)
以下に、記者が認識する「リフォーム」について率直に書く。当否は読者の判断に任せるほかない。
これまでリフォームについてはほとんど取材してこなかった。理由は簡単だ。市場が漠として読めなかったからだ。自分には手に負えないと思っていた。
もう一つは個人的な理由からだ。20数年前、自宅の和室を洋室にしたときだ。ある名の知られたところに依頼した。工事は1日で済んだのだが、留守から帰り仰天した。玄関からキッチン、洗面、リビング、他の部屋にいたるまで、まるで雪のようにあらゆるものにほこりがかぶっていた。カガミだろうとテーブルだろうと指で字が書けるほどだった。当然抗議したが、責任者が菓子折りを一つ持ってきて謝っただけだった。
これでリフォーム会社のレベルを知った。ユーザーにも作業する人にもきちんと説明などしない、玉石混交の業界なのだろうと理解した。そんなことがあったから今でもリフォーム業界にはいいイメージを描けない。
「認知度が低い」のではない。一般の人もリフォーム=悪徳というのは言いすぎかもしれないが、いいイメージを持っていないのではないか。リフォームに関する苦情がここ数年激増しているのは周知の事実だ。グレーの部分が多すぎる業界ではないか。
正さなければならないのは悪徳業者の排除と、業界の自主規制だ。〝不良〟が多いからこそ国もわざわざ「長期優良住宅化リフォーム推進事業」など「優良」の文言を使っているのではないか。「優良リノベ」を謳った団体もあった。
同協議会が本腰を入れて悪徳業者の排除に取り組んで欲しいのだが、ここで一つ疑問も湧く。
同協議会には、住宅・不動産業に関するたくさんの公益・一般社団法人や47都道府県・政令都市、各都道府県住宅供給公社など175の団体・企業が名を連ねている。それなのに認知度を高めなければならないというのが理解できない。烏合の衆ではないだろうし、船頭多くして…でもないはずだ。
トラブル・苦情が後を絶たないのであれば、小規模木造にも宅建業法のような消費者保護法を検討していいのではないか。「協議会」を格上げして、もっと強制力、指導力を持たせる団体にはできないのだろうか。
全建女 未来へつなぐ…次世代に伝えたい…テーマに全国大会
第25回全国建築士連絡協議会(代々木・オリンピックセンターで)
日本建築士会連合会女性委員会(略称:全建女、委員長:永井香織・日本大学准教授)は9月25・26日、第25回全国建築士連絡協議会を開催し、「未来へつなぐ居住環境づくり」「次世代に伝えたい、こと・もの、くらし」をテーマに約200名の参加者が知見を深めた。
大会では、今年のアピールとして、次の4点を採択した。
①これからの四半世紀を見据え、子供や高齢者が安心できる防災を強化した「居住環境づくり」の構築を目指す
②これから求められる「未来のくらし」を視野に入れた新しいくらしのあり方について取り組む
③震災復興報告の情報発信を通じ、忘れない・風化させない・続けていくことを基本に私たちを取り巻く「こと・もの・くらし」を見つめなおし、これからのくらしを守る
④性別や年齢、職種の枠を超えた様々な分野の専門家とのつながりの重要性を再認識し、これからの女性建築士の役割を次世代に伝えていく
全大会の前に行われた記者会見で、永井委員長は、「25周年を迎えて毛色を変えて考えようと、初代委員長の村上美奈子さんに基調講演をしていただき、パネルディスカッションでは各界の20代から80代の方々にワークライフバランス、ユニバーサルデザインなどにも踏み込んだ論議をしていただき、今までのやり方にこだわらないこれからの四半世紀をどう暮らすのかの知識を深めたい。前回から取り組んでいる異業種との交流が私たちの発展のカギを握っているのではないか」などと語った。
永井氏
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「ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」-啄木ではないが、わが故郷三重県の〝な言葉〟を聞きたくて三重県からの参加者4人、大森尚子氏(大森建築設計室)、森本千刈氏(エラ・プラン取締役)、浦山真美氏(建築設計事務所)、川北睦子氏(みえスマ理事長)に声を掛けた。ワークライフバランスについて聞くためだ。各氏のコメントを紹介する。(順不同)
大森氏 わたしは東京出身。結婚を期に三重に移り住みました。設計事務所自営。個人住宅が主ですので時間のやりくりはできましたが、実家は遠く、母子家庭で4人の子どもを育てるのは大変でした
森本氏 結婚して子供ができてから建築会社に就職しました。職場の仲間に建築士の資格を取得するよう勧められて取得しました。2級です。子育てはおばあちゃんに助けられました。おばあちゃんがいなかったら仕事は続けられなかったと思います
浦山氏 工業高校を卒業して27~28歳で1級の資格を取得しました。わたしが経営者で、自宅で個人住宅の仕事ですからやってくることができました。結婚? わたし晩婚でして、最近45歳で結婚したばかりです
川北氏 1級の資格は持っていますが、いまはNPO(みえスマ)の活動を通じて家づくりをサポートしています
聞く時間が10分くらいしかなかったので、深く聞くことはできなかったが、建築士の仕事は自分で都合をつけて働けるからこそ仕事と家庭・子育ての両立ができるのだろうと思った。
大森氏に三重県のPRをと勧めたら、「三重県は林業のさかんな県。ぜひ三重県産の木材を使って木造住宅をどんどん建ててください」と話した。
左から川北氏、大森氏、森本氏、浦山氏(〝あのなぁ、そやなぁ、やっぱり三重の女性が一番ええなぁ〟-これは記者もそうですが、ある高名な作家が言いました)
“女性だからこそ”安心・安全の居住環境づくりを 女性建築士が全国大会(2015/3/2)
東京ガス・三井不動産・三菱地所 田町駅前の大規模複合着工
「(仮称)TGMM 芝浦プロジェクト」(左がA棟、右がB棟)
東京ガス、三井不動産、三菱地所の3社は9月28日、田町駅東口の芝浦エリアで開発計画を進めている「(仮称)TGMM 芝浦プロジェクト」を10月1日に着工すると発表した。
同プロジェクトは、JR田町駅東口隣接の東京ガス所有地(約28,000㎡)にオフィス、商業施設、ホテルなどからなる全体延床面積約30万㎡の複合ビジネス拠点を創出するもの。東京ガスの先進的な環境エネルギー技術と、三井不動産・三菱地所が日本橋エリア・丸の内エリアなどでそれぞれ培ってきた不動産開発ノウハウを盛り込む。
外装デザインは、世界的な建築設計事務所であるKPF(Kohn Pedersen Fox Associates)が担当。東京のスカイラインに浮かび上がる、2棟のオフィスタワーの門型フレームは、同プロジェクトや国際都市・東京を訪れる人々を迎え入れる「ゲート」をイメージしている。
建物は31階建てA棟、9階建てホテル棟、36階建てB棟、6階建て生活支援棟の4棟。設計監理は三菱地所設計・日建設計。施工は大成建設、清水建設。全体竣工は2019年。
メジャー7 「住んでみたい街」調査 初めて「恵比寿」がトップに浮上
大手デベロッパー7社(住友不動産、大京、東急不動産、東京建物、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス)が共同で運営する新築マンションポータルサイト『MAJOR7』が恒例の「住んでみたい街アンケート」で、首都圏の「住んでみたい街」トップには2005年に調査を開始してから初めて前年4位の「恵比寿」が躍り出た。メジャーセブンではその理由を明らかにしていない。アンケートは全国のマンション購入意向者約72万人が対象。
調査によると、首都圏1位・恵比寿駅(前年4位)、2位・吉祥寺駅(同1位)、3位・麻布十番駅(同14位)、4位・表参道駅(同12位)、5位・自由が丘駅(同2位)、6位・鎌倉駅(同7位)、7位・二子玉川駅(同6位)、8位・青山一丁目駅(同20位以下)、9位・みなとみらい駅(同)、10位・横浜駅(同3位)。
前年5位の広尾駅は11位に、同8位の中目黒駅は15位に、同10位の代官山駅は16位にそれぞれ後退。前年19位の武蔵小杉駅は13位へ、20位以下の赤坂駅と白金台駅が17位に、代々木上原駅が19位に、神楽坂駅が20位にランクイン。
住んでみたい街の選択理由は、「恵比寿駅」「表参道駅」「自由が丘駅」が交通の便、おしゃれ、「吉祥寺駅」は公園の多さ、商業施設の充実、「麻布十番駅」は高級感、ステータス感、「鎌倉駅」は歴史のある街、海に近いことなどが上位に挙がっている。
また、2020年までに発展していそうな街ランキングは1位・豊洲駅、2位・品川駅、3位・勝どき駅、4位・武蔵小杉駅、5位・東京駅の順。
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恵比寿がトップに躍り出たのには記者も驚いた。その理由が見当たらないし、メジャーセブンも理由などは公表していない。
リリースには「昨年までは、自由回答形式にて住んでみたい街上位3位を記入頂いておりましたが、今年から調査結果の精度向上などを目的として、197個の選択肢から上位3位を選んで頂く方式に変更いたしました」とあり、このあたりが影響したのかもしれない。まあ、順当な結果ではないか。
more trees 隈研吾氏とコラボした「つみき」 マクアケで支援者募集
「つみき」イメージ
森林保全団体more trees(モア・トゥリーズ)と世界的な建築家・隈研吾氏がコラボし、宮崎県諸塚村の国産スギを素材にした新しいつみきデザインを発表、9月29日(火)まで「クラウドファンディングサイト マクアケ」で開発資金を募っている。
建築の要素を取り入れたシンプルな山型のつみきは、簡単にインテリアオブジェをつくりだすことができ、デスクや本棚の上に飾るなどインテリアのアクセントや子どものおもちゃにもなる。素材に国産スギの無垢材(無塗装)を使用しているため木の温もりを感じてもらえると、支援参加を呼び掛けている。
more treesは「もっと木を」をコンセプトに、音楽家・坂本龍一氏によって2007年に設立された森林保全団体。国内では間伐を、海外では植林による森林再生を中心に自治体や現地の人々とも協力し、様々な活動を行っている。
クラウドファンディングの詳細はこちらから。
more treesホームページから
長谷工グループ 11月1日(日)にマンション再生セミナー
長谷工グループは11月1日(日)、管理組合の方を対象とした改修・建替えに関する「マンション再生セミナー」を開催する。
今回は8回目のセミナーで、テーマは「あなたのマンションの将来を考えよう」。同社グループの長谷工総合研究所、長谷工コミュニティ、および弁護士の戎正晴氏が“マンション再生につながる情報を提供する。
同社グループは1980年に専門部署である「建替え相談室」を設立して以来、32件の建替え事業を推進(竣工済28件、施工中3件、準備中1件)、昨年4月には高経年マンションの相談窓口としてマンション再生事業部を新設している。グループの修繕・改修実績は約43万戸で、マンション管理戸数は約31万戸。
日時は11月1日(日)13:50~16:50、会場は「建築会館ホール」(東京都港区芝5-26-20)、定員は100名(完全予約制)、参加費は無料。
参加希望は≪セミナーお申込フォーム≫http://www.haseko.co.jp/saisei/seminar/
または≪フリーダイヤル≫長谷工コーポレーション マンション再生事業部 0120-095-356(受付8:30~17:00、土・日・祭日除く)へ。
東京都港区 平成27年度 課税標準額1000万円以上 過去最多を更新
東京都港区の課税標準額1,000万円以上の納税者は平成27年4月1日現在で19,003人となり、過去最多だった前年度の17,830人より1,173人、6.6%増加していることが分かった。区全体の納税者に占める割合も前年度の14.0%から14.5%に増えた。
その半面、課税標準額が1,000万円以上の層の総所得額は前年度の1兆776億円から8,112億円へと約2,700億円も減少した。これは税法が改正され、平成25年12月31日までに株式などを売却した場合の税率が10%だったのが、26年1月以降には20%になるため、前年度は駆け込みで大量に株式などが売却されたためのようだ。
また、所得割額は区全体で628億円であるのに対し、課税標準額1,000万円以上の層は414億円となり、区全体に占める割合は前年度の67.3%から65.9%へと減少した。
こうした高額所得者の増加やその他の給与所得者の所得が増えたこと、さらには前年に所得が大幅に伸びた人への課税額が増えたことなどで、同区の平成26年度の特別区民税は730億円で前年度比18.6%増の高い伸びを示した。一般会計歳入額も1,605億円で前年度比37.6%増と激増している。
省CO2先導事業に三井不レジの渋谷区新庁舎・公会堂建替など 国土交通省
国土交通省は10月10日、省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクトとなる住宅・建築プロジェクトを国が公募し、整備費等の一部を補助する「サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」の平成27年度第1回採択プロジェクト9件を発表した。
不動産業界からは、建築物(非住宅)として三井不動産レジデンシャルの「渋谷区スマートウェルネス新庁舎プロジェクト」が採択された。
このプロジェクトは、渋谷区の新区庁舎・公会堂の建替計画で、庁舎に適した省CO2技術を結集するとともに、自然採光・自然換気・緑化ルーバーやゆらぎを生み出す空調システムなどによって、健康で快適な執務環境の実現を目指すもの。
共同住宅は福岡県住宅供給公社の「ふくおか小笹賃貸共同住宅における燃料電池を利用したエネルギー融通プロジェクト」、戸建て住宅はアロック・サンワの「福井発『子育て応援・住教育』プロジェクト」が選ばれた。
「2020年に向かう、新たな森づくりシンポジウム」10月6日開催
美しい森林づくり全国推進会議と林業復活・地域創生を推進する国民会議が10月6日(火)、「2020年に向かう、新たな森づくりシンポジウム~都市での木づかいから生まれる森と木の循環、そして地域創生へ~」と題するシンポジウムを全国都市会館「大ホール」(千代田区平河町)で開催する。
都市での木づかいが、地域における森づくりにや地域創生につながっていく新たな循環を作りあげていくことが必要であることから、産業界、建築業界、林業・木材産業界、行政等の幅広い関係者が集い、オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を一つの区切りとして、木づかい・森づくり・地域創生の方策を議論する。
涌井史郎氏(東京都市大学教授)、林野庁代表者、山本恵久氏(日経アーキテクチュア元編集長)、網野禎昭氏(法政大学教授)などが基調報告、概要報告、パネリストとして参加し、宮林茂幸氏(美しい森林づくり全国推進会議事務局長、東京農業大学教授)がパネルディスカッションのモデレーターを務める。
参加費は無料。定員約300名になり次第申込を締め切る。
「女性活躍」待ったなし 第三弾 大京アステージ課長代理・山岸真樹氏に聞く
山岸氏
不動産業界で先駆的な「女性活躍」の取り組みを行っているのが大京だ。オリックス専務執行役だった田代正明氏が社長・グループCEOに就任した2005年あたりから急激に変わった。
2006年、新しいシンボルマークを導入し、グループ全社員共通の「家族想い」を「Family First.」という言葉(ブランドタグライン)に込めた。2007年には「時短」「休日・休暇取得促進」「仕事と家庭の両立支援」を大幅に拡充し、2008年には大京、大京アステージ、大京リアルド(現大京穴吹不動産)が「仕事と子育ての両立支援に取り組む企業」として厚労省の認定マーク「くるみん」を不動産業界ではスターツに次いで2番目の早さで取得。現在、業界最多の3回目を取得している。
2009年には「大京グループ子ども参観日」を開催し、2010年には育児休暇取得者のスムーズな職場復帰を支援する先輩ママ社員との「情報交換昼食会」を行っている。
そして今年3月、グループのマンション管理会社・大京アステージが女性専門職による「お客さま係」を立ち上げ、2017年度までに全国24カ所の全支店に配置すると発表した。「お客さま係」は、従来の顧客対応では拾いきれなかった潜在的なマンション居住者の〝困りごと〟を女性ならではの気配りで掘り起し、大規模修繕や商品企画に反映させようというのが狙いだ。
「女性活躍」第3弾は、「お客さま係」の育成・マネジメントに携わる「大京アステージ ライフサービス事業部CA推進室CA推進課(CAはカスタマーアドバイザーの略、「お客さま係」の社内呼称)課長代理」の山岸真樹氏(44)にお願いした。
山岸氏にお会いするのは3年ぶりだ。初めて会ったのは、2011年に分譲された「ライオンズ志村坂上レジデンス」「ライオンズ多摩センター ステーションブライト」のモデルルームで、当時は「大京 商品企画部 リビングラボ課 課長代理」だった。エネルギッシュに東奔西走する行動力と説得力のある話し方、商品企画力の確かさなど、その活躍ぶりを目の当たりにして、彼女のバイタリティに惚れ込んだ思い出がある。
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山岸氏は開口一番、「わたしたちは御用聞きではありません」と切り出し、次のように続けた。
「わたしたちはマーケッターです。スタッフはアルバイトやパートではなく、いろいろな部署で働いてきた女性専門職ばかりです」
「お客さまの声は各部署にフィードバックできるようにしています。たとえば、かつてわたしが商品開発に携わった『L's KITCHEN(エルズ キッチン)』が企画意図通りに使われているかどうか検証することで、わたしもすごく参考になりました」
「マンションの排水管掃除などに立ち会って、入居者宅を訪問し、困りごとや設備の不具合をお聞きしていますが、作業する男性が部屋に入ってくるのを不安に感じていらっしゃる女性の方が多く、わたしたち女性がいることでその不安が解消されます」
「細かいことですが、上層階に住んでいる方から『どうして清掃はいつも1階からなの。うちも午前中の早い時間にやってほしい』という声があがりますが、『上の階からやると下の階の排水管が詰まることがあります』と説明すると、納得していただけます。このようにお客さまに近い距離にいるから対応も敏速に行えます」
同社は、「お客さま係」を立ち上げてからこれまで2,000戸以上の居宅訪問を行っているが、人員はまだまだ増やす考えのようだ。
山岸氏は「スタッフは総勢14名。近い将来50名くらいに増やしたい。男性中心の職場と違うところは、とにかく時間厳守。保育園の迎えの時間は決まっていますので、だらだらと会議などしていられません」と語った。
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大京の「L's KITCHEN(エルズ キッチン)」を知ったとき、記者はそのきめ細かな商品企画に驚嘆した。その後の業界全体の収納や水回りの設備仕様を劇的に変えたと思っている。
「L's KITCHEN」の誕生は2005年。女性だけのスタッフ8名で構成するデザインインテリアチームが、座談会やヒアリング、アンケートなどを通じてライオンズマンションに居住する女性、仕事と家事を両立させている女性、専業主婦、子育て中の女性などライフスタイルの異なる女性の声を商品企画に反映させ、女性のため、家族のための使い勝手のよいキッチンが誕生した。
2006年発売のライオンズマンションから採用され、その後、どんどん進化を遂げていった。例えば、2009年に見学した「ライオンズ石神井公園ステーションゲート」は次のような仕様になっていた。
調理台には「LILカウンター」と名付けた補助調理台が付いており、三面鏡の裏側には化粧用の拡大鏡が付いていた。カウンタートップには、化粧グッズがたくさん入るボックスもあった。天井のライトは「キレイライト」と呼ぶ自然光、夜用、昼用の3種の調光ライトが付いていた。浴室は音楽が聞け、浴槽をライティングできるようになっていた。玄関のシューズボックスは奥行きを3 センチ広げることで、収納力を通常の1.5倍に広げる工夫もされていた。
当時、水回り・収納で話題を集めた野村不動産の「Luxmore(ラクモア)」があるが、「ラクモア」の商品化は2008年。「リビングラボ」のほうが3年早い。
山岸氏は「リビングラボ課」のメンバーの一人。商品企画の意図を理解してもらうため、「もういい。分かった。耳にタコができる」と言われるまで、全国の各支店を東奔西走した。
その甲斐あって、「L's KITCHEN」は同社だけでなく業界に瞬く間に広まり、その後の商品企画競争に火をつけた。
お客さま係 イメージ図
大輪が咲くはず 大京アステージ 「お客さま係」新設 将来60名体制(2015/3/17)