住宅地、中古マンションとも緩やかな上昇続く 野村アーバン調査
野村不動産アーバンネットは1月14日、2016年1月1日時点の「住宅地価格動向」「中古マンション価格動向」の調査結果を発表。2015年10~12月期の首都圏の「住宅地価格」・「中古マンション価格」ともに平均変動率は2013年7月調査以降、連続してプラスとなった。
「住宅地価格」の価格変動率は首都圏エリア平均で0.5%(前回:0.3%)、エリア別の平均変動率は全エリアでプラスを維持した。
「中古マンション価格」の価格変動率は、首都圏エリア平均で0.5%(前回:0.6%)、全エリアでプラスを維持した。
2015年1月~2015年12月年間ベースでは、首都圏の「住宅地価格」・「中古マンション価格」ともに平均変動率は2014年1月調査以降、連続してプラスとなった。
ポラス サステナブル建築物等先導事業の構造見学会
建築中の「ポラス建築技術訓練校」実習棟の内部
ポラスグループは1月14日、国交省「平成27年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」に採択された「ポラス建築技術訓練校」の構造見学会を報道陣向けに行った。
「先導事業」は、再生可能な資源である木材を大量に使用する木造建築物の技術向上に資するとともに普及啓発を図ることを目的とした補助事業。
同社の訓練校は一般に流通する安価な集成材を合せ柱・合せ梁・重ね梁として複数本集束させることで強度を高める技術を開発したのが特徴。「実例モデル」として公開することで木造非住宅の受注と同工法の普及促進を図る狙いがある。
建設地は埼玉県越谷市レイクタウン六丁目。建物は木造軸組工法3階建て準耐火構造。延べ床面積約1,396㎡(実習棟約549㎡、事務所棟約846㎡)。竣工予定は平成28年3月。
「合せ柱」の据え付け(1辺315ミリ)
美しい実習棟の天井(完成時にはボードで覆い隠されるのか)
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見学会では同社の担当者数人が建物の概要、構造設計、構造部材、耐火性能、施工状況などについて説明した。例えば、「合せ柱」は105×105の集成材を9本集束したものだが、防耐火性能を満たすためには各集成材ごとに燃えしろを確保しなければならず、構造計算上難しいことから、燃焼実験を経て問題がないことを確認して設計しているという-こんなことを書いても書いている本人が理解できないので、これ以上書かない。
大変な苦労があったということだろうが、それでも実習棟は縦30m×横12m×高さ6mの大空間がすべて木造でできているのはよくわかった。梁などは欧州マツだが、柱は国産のカラマツを使用したという。完成後も木造建築物であることを知ってもらうために、道路沿いの外観はカーテンウォールとし、視覚的に木造であることが分かるように工夫している。
3階建ての事務所棟は最大10m×8mスパン。室内の一部を表しとし、テラス外周部を回廊とし、木製格子パネルを設置して木質感を演出する。
重ね梁の設置
架構状況
事務所棟の内部
三井住友建設 1カ月の指名停止処分 横浜傾斜マンション問題で国交省
国土交通省は1月13日、横浜市都筑区の傾斜マンションの元請けの三井住友建設、第1次下請けの日立ハイテクノロジーズ、第2次下請けの旭化成建材が建設業法に違反する行為を行ったとし、三井住友建設は指名停止1カ月、日立ハイテクと旭化成建材は営業停止15日の処分をそれぞれ行った。
三井住友建設に対しては、三井不動産レジデンシャルから請け負ったマンションのくい施工工事で1次下請の日立ハイテクノ、2次下請の旭化成建材が工事現場に専任の主任技術者を設置せず、日立ハイテクノが施工を旭化成建材に一括して請け負わせていたことを認識しながら、法の規定に違反しないよう指導や是正を怠り、また、許可行政庁等への通報も行っていなかったことは、建設業法第24条の6に違反し、建設業法第28条第1項本文に該当し、平成28年1月13日から平成28年2月12日までの1カ月間、指名停止処分を行うとしている。
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当然の処分だが、元請けの三井住友建設は建築士法による「監理」も怠った可能性が大きく、追加処分されるのではないかと思うし、問題が発覚してからの同社の対応は「CAT」、つまり「Compliance」(法令順守)「Accountability」(説明責任)「Traceability」(追跡可能性)に問題があり、経営陣の責任は免れないと思う。
同社は問題が発覚してから1か月後の11月11日、定例の決算発表会の会場で永本芳生副社長が「『試験的に打つ杭に立ち会い、残りは施工報告書で確認すればよい』とする国交省の標準仕様書に沿った対応だったとして、『日々の管理に落ち度はなかった』」(各紙)と記者団の質問に答えている。
この「日々の管理(監理のはず=記者)に落ち度はなかった」という発言の是非について、もう一度国民に説明する責任を同社は負っているはずだ。「監理に落ち度はなかった」と今でも強弁するのであれば、再発は絶対に防げない。
三井住友建設、日立ハイテクの違法性にも言及 旭化成 杭打ちデータ流用で報告書
旭化成は1月8日、同社の子会社旭化成建材が施工した横浜傾斜マンションの杭打ちデータ流用問題に関する3名の弁護士からなる外部調査委員会の「中間報告書」を公表した。
報告書は、昨年12月25日に国交省に提出された「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」(委員長:深尾精一・首都大学東京名誉教授)の「中間とりまとめ報告書」が指摘した問題と同様、ずさんなデータ管理、不明確な役割分担などが原因としたうえで、元請の三井住友建設、一次下請けの日立ハイテクノロジーズ、二次下請けの旭化成建材それぞれの建設業法や建築士法に関する違法性にも踏み込んでいる。
また、事件発覚を受けて三井住友建設が行なった「試験の結果に基づいて支持層未達等杭が存在すると判断することには慎重であるべき」とし、近く行なわれる再検査結果を待たなければならないとしている。
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これまでの同社の記者会見では三井住友建設や日立ハイテク、旭化成建材の建設業法、建築士法に関する違法性について暗示はされていたが、明言・明示はされていなかった。今回、報告書が初めて各社の違法性に触れた。
今回の工事について報告書は「元請業者であるSMC(三井住友建設)は監理技術者を、下請業者である旭化成建材等は主任技術者を、それぞれ設置する必要があり、また、本件マンションのような共同住宅に関する建設工事は『公共性のある重要な工事』に該当するため、監理技術者及び主任技術者は、本件杭工事について専任の者でなければならない」とし、「SMCは、本件杭工事に関し、建築士法に基づいて工事監理者を、建設業法に基づいて監理技術者を、それぞれ置く必要があったが、それが誰であったのかは、旭化成建材に残された資料からは判明しなかった」と、建築士法や建設業法に触れる可能性を示唆した。
この点について、三井住友建設は「永本副社長は、『試験的に打つ杭に立ち会い、残りは施工報告書で確認すればよい』とする国交省の標準仕様書に沿った対応だとして、『管理に落ち度はなかった』と強調した」(日経WEB版)と、監理に瑕疵はなかったとしている。
さらに、「日立ハイテクは、事実上、旭化成建材と一体となって、SMCに対する営業活動を行う役割が大きかったが、その担当責任者は…本件杭工事現場に常駐していなかった可能性が高い」「日立ハイテクは、本件杭工事に関し、建設業法に基づいて主任技術者を置く必要があったが、それが誰であったのかは、旭化成建材に残された資料からは判明しなかった」と、建設業法に抵触するのではとしている。
旭化成建材に対しては、「本件杭工事に関し、建設業法に基づいて主任技術者を置く必要があったところ、主任技術者は…法令が定める『専任』義務を果たしていなかった」と法令に触れる可能性を指摘している。
事件発覚を受けてSMCが行なった「スウェーデン式サウンディング試験」については、「一般的に用いられる地盤調査方法の一つとして一定の信頼性があるとされているが、複数の専門家に対するヒアリング結果によれば、地表からおおむね10メートルを超える深度の支持層を測定するには必ずしも妥当な調査方法ではないとの見解も見受けられる」とし、横浜市が「建築基準法第12条第5項に基づく報告を行うよう求めているので、今後、これを踏まえた検証がなされるものと理解している」「SWS試験の結果に基づいて支持層未達等杭が存在すると判断することには慎重であるべき」とした。
報告書は、「杭の施工さえ適切に行っていればデータはそれほど重要ではないという現場の感覚は、一般社会の感覚と大きく乖離しているといわざるを得ない」と、業界の体質についても言及した。
杭打ちデータ流用、ルール守れば再発防げる 国交省・対策委員会(2015/12/25)
杭打ちデータ流用問題 結局は大山鳴動…早々に幕引きへ 国交省・対策委(2015/12/12)
マンション杭打ちデータ流用問題 闇の多重下請け構造浮き彫りに(2015/11/16)
五感で「花」が楽しめる展示・イベント 三井不動産 日本橋で開催
草月流とコラボした「植物の繭」
三井不動産は1月8日、東京駅丸の内駅舎の3Dプロジェクションマッピングなどで知られるネイキッドがプロデュースした「FLOWERS BY NAKED」を「日本橋三井ホール」で開催する。「花」をモチーフにしたもので、生花、オブジェ、映像、インタラクティブ、香り、飲食など五感で楽しめるよう工夫されており、「いけばな草月流」とのコラボレーション作品「植物の繭」も展示される。
開催に先立つ7日、プレス内覧会・オープニングセレモニーが行われ、ネイキッド代表・村松亮太郎氏と草月流家元・勅使河原茜氏、テーマソングを担当する水曜日のカンパネラ、コムアイ氏がゲスト出演しトークショーを行った。
「FLOWERS BY NAKED」は1月8日~2月11日まで「日本橋三井ホール」で開催される。また、重要文化財「三井本館」や「仲通り」「コレド室町1~3」などのイルミネーション「NIHONBASHI ILLUMINATIONS collaborated with FLOWERS」も同時開催されており、春の花に見立てた三井本館の外壁が徐々に開花していく様子が表現されている。
左からコムアイ氏、村松氏、勅使河原氏
「Big Book」
「BIG FLOWERS」
生け花
「DANDELION CLOCKS」
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会場の入り口では、大きな本の造作〝Big Book〟と人の背を超える蓮のような花が出迎え。壁面にはフィボナッチ数列に基づいたモザイクが映し出され、息を吹きかけるとそれに反応して音とともに100万本の綿毛が舞い上がる「DANDELION CLOCKS」、ドクドクと鼓動が伝わる草月流とのコラボ作品「植物の繭」、和紙でできた桜に光り輝く花が舞う「桜彩」…。
不思議な世界に人を引き込むのは間違いない。とくと写真を見ていただこう。約5,000円で「世界にたった1本のバラ」をプレゼントできる「BLANC」もおすすめだ。
ピンク色に染まる三井本館(極彩色に染まるかと思ったが、そうではない。隣の三越、日本橋三井タワーがライティングされているので目立たない。派手にして重文がショックを受け風邪をひかないように配慮したためか)
仲通り
野村不動産アーバンネット 仲介店舗「広尾センター」開設
野村不動産アーバンネット1月9日(土)、不動産仲介店舗「野村の仲介+」の「広尾センター」を開設する。
今回の店舗開設により、「野村の仲介+」の部店数は首都圏63部店・関西圏5部店の計68部店となる。
「広尾センター」は、東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩2分、外苑西通りに面した「広尾リープレックス・ビズ」5 階。センター長は中村偉氏。電話:03-5791-7691、FAX:03-5791-7695。
今年注目されそうな都道府県 1 位「東京」に続き「三重」 アットホーム調査
またまた、さらにまたやってくれました。アットホームがやってくれました。同社のいえ・まち・くらしの情報サイト「at home VOX(アットホームボックス)」(URL: http://www.athome.co.jp/vox)が1月7日、全国47都道府県出身の20~50 代男女1,457名を対象に「2016 年注目されそうな都道府県」について調査を行ったところ、第1位の「東京」に続き、第2位にはわが故郷「三重」(さんじゅうじゃありません)が入ったじゃありませんか。
この情報サイトはいつも奇想天外な、とんでみないアンケートをやるが、今回は至極ごもっとも、星三つを献上したい。
1位になった「東京」は、回答率18.19%で断トツだったが、その理由は「オリンピックに向けて、何かと注目されそう」「首都なので、いろいろと話題が生まれそう」「東京は常に注目されている」とのことらしい。
さて、「三重」は回答率7.82%で「東京」に10ポイントも引き離されたが、3位「北海道」の7.55%を振り切り、4位「大阪」、5位「沖縄」、7位「京都」、17位「愛知」などを上回った。
その理由はいうまでもなく「伊勢志摩サミット」。ニュースリリースによると「三重県民からの指示が54.84%と高いのも特徴」とある。(えっ、三重県民が投票するよう指示を出した? 温厚な三重県民がそんな姑息なことをやるはずがない。何かの、というより明らかに誤植)
ちなみに最下位は回答率0.41%の「佐賀」。理由は「(佐賀に)住んでいるから」。ブービーは「愛媛」、以下、「香川」「奈良」「徳島」と続く。
昨夜は、日本橋の「三重テラス」で食事をしようと思っていたが、「獺祭」の誘惑には勝てず、コレド室町の店に入ってしまった。北海道の「厚岸」にも入ろうと思ったが、予約いっぱいで入れなかった。カキが人気のようだが、三重には世界ブランドの的矢(まとや)のカキがある。小粒で濃厚。
ほかにも三重の魅力はたくさんあるが、あまり書くと皆さんに怒られそうなのでこのあたりでとどめる。今年は三重だ!
「消費税の動向に左右されない負担軽減を」 不動産協会・木村理事長
挨拶する不動協・木村理事長(ホテルオークラ別館で)
不動産協会(理事長:木村惠司・三菱地所会長)と不動産流通経営協会(略称:FRK、理事長:田中俊和・住友不動産販売社長)は1月6日、合同の新年賀詞交歓会を開催した。アベノミクス効果が出てきたためか、参加者は例年より多い1,150名(昨年は1,050名)にのぼった。
冒頭、挨拶に立った木村・不動産協会理事長は、バブル崩壊後20数年が経過したことで社会構造が変わり、非正規雇用の増加による中間層のレベル差、企業の国際競争の激化、国内需要の伸び悩み、労働力不足などの問題に対し、「これから先は今までの価値観では済まないことを念頭に置きながら、デフレ脱却、持続的な経済成長、希望が持てる社会の実現に向けて政官民が力を合わせて努力しなければならない」とし、「経済成長の面で住宅の安定的な投資が不可欠であり、合わせて大都市の競争力をつけ地域の活性化が大事な問題になってくる」と、業界の役割が大きいことを指摘した。
また、昨年末の税制大綱では「ほぼすべて要求が認められた」ことを受け、これから先の施策・住宅着工動向などを注視し、住宅が成長をけん引することに貢献していくためにも状況によっては幅広い観点から機動的な政策を行っていただきたいと国に求めた。
消費税については「消費税の動向に左右されない安定的な負担軽減も求めていく」とした。
不動産協会では、社会構造の変化を受け、「これから先2025年、2030年の将来を見据え大都市や住宅はどうあるべきかについて政策提言をまとめている」とし、「大都市」「街づくり」「ストック形成」についてそれぞれ方向性を示した。
「大都市」については、「大都市は持続的な成長、豊かな社会を実現する原動力であり、海外からヒト・モノ・カネ、情報、企業が集まりイノベーションできる場とし、グローバル競争に勝っていくためにも施策をスピーディに展開することが重要であり、ハード・ソフト両面での環境整備が必要」と述べた。
「街づくり」では、子育て・就労、健康保持の構築が喫緊の課題であり、業界は街づくりを通じて政府が進める「一億総活躍社会」の実現に貢献していく必要性を強調した。
「ストック形成」では、良質な新築住宅を供給するとともに、既存住宅はリノベーションなどを図りながら「多種多様なニーズに応え、日本の安定的持続的な成長と、国民が将来に希望の持てる社会の実現に向け邁進していく」と決意を述べた。
乾杯の音頭を取った田中・FRK理事長は、「足元の不動産流通市場は昨年春以降2ケタの伸びを見せており、新税制は市況を下支えするはずで、我々は安心・安全の取引を通じて消費者に喜んでいただくよう取引の透明性を一層高め、流通市場の活性化のために創意工夫を凝らし一丸となって取り組んでいく」と話した。
賀詞交歓会には石井啓一国交相など30名を超える国会議員も詰めかけ盛大な会となった。
挨拶するFRK・田中理事長
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岩沙弘道・不動産協会会長(三井不動産会長)がデフレ脱却に並々ならぬ決意を披露した。
「今年の干支は丙申(ひのえさる)。前回60年前の丙申は〝もはや戦後ではない〟と言われた年だったように、今年こそデフレ脱却を宣言できる年にしなければならない。アベノミクスの果実は実りつつある」とし、「経済と消費の好循環を実感できるよう多様な雇用・働き方ができる取り組みをしっかりやっていくことが大事」などと述べた。
「大手デベロッパーは地方の再生・活性化に消極的ではないか」という記者の質問に対しては、「都市と地方を対立軸として考えるべきではない」とし、「地方の活性化にも(当社は)しっかり取り組んでいますよ」と話した。
来賓としてあいさつした野田毅・自民党 税制調査会最高顧問が気の利いた発言をした。税制改正では「私は90点くらいだと考えていたが、木村さんや岩沙さんからは『120点くらい』と評価された」と会場を笑わせたあと、「消費増税の反動などに過剰に反応することが海外からも批判される。われわれ日本人は合成の誤謬に陥っている。ビヘイビアを注意しなければならない」と語った。ミクロ、マクロ両面から物事を考えないといけないということだ。
公明党の井上義久幹事長は「地方都市にも目を向けていただきたい」と業界に注文した。
岩沙会長
ルール守れば再発防げる 杭打ちデータ流用 国交省・対策委員会
記者会見する深尾氏
業界自主ルールの徹底で再発は防げる-国土交通省・基礎ぐい工事問題に関する対策委員会(委員長・深尾精一首都大学東京名誉教授)は12月25日、横浜傾斜マンションに端を発した基礎杭データ流用問題に対する「中間とりまとめ報告書」をまとめ発表。横浜の事案を除き、データ流用は施工不良につながっていないという検証結果を踏まえ、建設業界が自主的に定めたルールを徹底すれば再発は防止できるとした。国交省は近く「告示」としてガイドラインを示す。
報告書はA4判で40ページにのぼるもので、問題の概要・経緯について触れた後、発注者、設計・工事監理者、元請、一次下請け、二次下請けのそれぞれの課題を指摘。それぞれ責任の所在が明確化されていなかったことに遠因があるとして、国交省が施工ルールを定め、業界が自主的に定める施工ルールを誠実に実行することを求めている。業界の構造的な課題については、施工技術の継承を含めて腰をすえて検討すべきとしている。
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「基本的なルールを業界が定め、それを業界全体で共有し守ればデータ流用はなくなる」-深尾委員長は石井国交相に報告書を提出したあとの会見で何度も繰り返した。
その通りだろうと思う。報告書は過不足なく問題点が指摘されており、極めて明快な方向性が示されている。
問題発覚からわずか2カ月で問題が収束の方向に向かっているのは、日建連を中心とする業界団体の自主規制が強く働いたからできないか。深尾委員長も「早期に方向性が示せたのは業界団体の真摯な取り組みがあったから」と否定しなかった。
しかし、全て問題が解決したわけではない。データ流用と横浜の傾斜マンション問題の関連性は低いとはいえ、国民の建設業界に対する安心・安全の不安は今回の報告書でもっても払拭できないばかりか増大した。深尾委員長も「サラカンの監理に関しては改善の余地がある」と話し、横浜の問題が年明けの再調査待ちになったことに対しても「残念」と不快感を示した。記者団から元請の責任を追及する質問がたくさん出たのは当然だろう。原因を徹底解明して欲しい。
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以下、深尾委員長に対する記者の質問と答え。
-わずか2カ月で明確な方向性を示したが、その感想は
業界団体が再発防止に真剣に取り組んだことが大きい
-新国立競技場選定で、先生はA案、それともB案を支持されたのか
ノーコメント。いろいろ言いたいことはあるがノーコメント。マスコミの姿勢も問題だ。僕のところに夜中に電話してきた(バカな)記者がいたし、伊東さんにあんなことをしゃべらしちゃいけない。デザインだけじゃないんだよ。ゼネコンなどとの共同提案なんだよ(先生、申し訳ない。われわれはつい建築家のデザインに目が行くんです。木造ファンの記者はA案)
-今日はクリスマス。先生はこれからどうされるのか
これからだよ。今年は業界の三大ニュースに全部関わったんだよ。大変だよ(深尾氏は今回の対策委員会委員長とJSCの技術提案等審査委員会委員、東洋ゴム工業のデータ改ざん問題に関する国土交通省の有識者委員会委員長を務めた)
杭打ちデータ流用問題 「信頼回復」のカギは監理機能の厳格運用(2015/12/13)
杭打ちデータ流用問題 結局は大山鳴動…早々に幕引きへ 国交省・対策委(2015/12/12)
国立求償裁判 国立市が逆転勝訴 東京高裁、第一審判決を破棄
明和地所の国立マンション建設をめぐる訴訟で、国立市が同社に支払った損害賠償金約3,120万円は当時市長だった上原公子氏が賠償すべきとした裁判(東京地裁平成26年9月25日判決言渡し)の控訴審言い渡しが12月22日、東京高裁で行われ、小林明彦裁判長は東京地裁の原判決を取り消し、国立市の請求権を認める判決を言い渡した。
2014年9月25日の第一審判決では、東京地裁は「元市長への求償権行使は信義則に反し許されない」として、市の訴えを退けた。これに対して、市が控訴していた。
控訴審判決に対して上原氏は「とんでもない判決。年内に上告します」とコメント。国立市は「現段階で詳細を把握できておらず、コメントは差し控える」とした。
◇ ◆ ◇
42席ある法廷の傍聴席は裁判が始まる午後2時までに満席となった。上原氏はいつものように和服姿で登場した。この日は、濃紺の地に薄い笹の文様をあしらったもので、帯は鮮やかな沖縄の伝統的な染色技法の一つ紅型(びんがた)。時おり支持者に笑顔を見せていた。
判決言い渡しはきっかり2時に始まった。
「主文 原判決を取り消す。被告訴人は国立市に対して3,120万円と…」-小林裁判長が判決を言い渡した。すかさず上原氏の代理弁護士が「説明がない…」と異議を唱えたが、小林裁判長は「判決要旨は差し上げることになっているので、法廷では読み上げません。これで終了」ぴしゃりと、打ち切りを宣言した。この間、20~30秒。
傍聴席からは「ひどい!」「最低!」「悪代官」などの声が飛び交った。「わたしは皆さんと立場が逆で、国立市を支持するものですがコメントをいただけませんか」と声をかけたが、ほとんど無視され「お前は官憲か」とも言われた。(わたしは皆さんと考えが異なりますが、敵ではありません。聞く耳は持っています)
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判決後、国立市は次のように市の見解を発表した。
「本日平成27年12月22日、東京高裁にて国立市が上原元市長を被告として訴えていました損害賠償請求訴訟で、市の請求を認証する旨判決がありました。なお、現時点ではまだ判決の詳細を把握できておりませんので、コメントは差し控えさせていただきます」
◇ ◆ ◇
上原氏と弁護団は判決後、記者会見を行い、次のような声明文を発表した。
「控訴審においては、2013年12月19日における法規決議が違法であるか否か、放棄決議があるにもかかわらず市長が求償権の放棄をしないことが首長の権限乱用になるか否かが問題であった。この点について、本判決は、2015年5月19日、国立市議会が上原公子元市長に対して『求償権を行使せよ』との決議を行ったことを取り上げて、理由も付さずに権限乱用を否定した。
…このような認定が横行すれば、地方自治・住民自治を委縮させ、発展を阻害することになる。
…控訴審では…何ら論争が行われず、全く事実の審理が行われなかったにもかかわらず、独断と偏見に基づいて(原判決とは)正反対の判断が行われた。
本事件は、住民自治のあるべき姿が根本的に問われている事件であり、このままでは、今後の地方自治をますます委縮させることになりかねない。
上原元市長と弁護団は、ただちに、上告する予定である」
上原元国立市長に対する求償裁判 12月22日(火)に東京高裁判決言い渡し(2015/9/10)
国立 市議会勢力図が逆転 どうなる上原氏への損害賠償請求(求償権)(2015/5/1)