ポラスグループの中央住宅 複眼の目で用地仕入れに注力
ポラスグループの中核をなす中央住宅が戸建てだけでなくマンションや複合開発、JV、リノベーション、再開発などの案件の仕入れに複眼的な手法で積極的にトライしていく。同社取締役・金児正治氏が語った。その一つ、葛飾区新小岩ではマンションと戸建ての複合開発を開始する。
金児氏は、戸建てのマインドスクェア事業部長でもあるが、今年の6月からマンションの事業責任者も兼ねており、今回マンションの用地仕入れ方針などについて次のように語った。
「昨年暮れ、私のほうから、戸建て、マンションと『複眼の目で用地を仕入れたい』と手を挙げた。品川社長からも『思い切ってやってくれ』との了承も得て、今年に入ってから各部署などからヒアリングを開始してきた。用地仕入部隊は100人弱いるが、これまではマンション用地などは素通りしてきた。しかし、これからは供給エリアを広げ、規模についても他社とのJVを視野に入れた大型案件、マンションと戸建ての複合開発、さらにはリノベーション、再開発案件にもトライしていく。マンション事業の売り上げは現在50億円ぐらいだが、5年後には100億円ぐらいに伸ばしたい。事業の柱の一つに育てたい」
その第一号案件もほぼ決まった。葛飾区新小岩で進めている案件で、マンション47戸と分譲戸建て8戸を計画している。
戸建てについて金児氏は、年明け早々に分譲する予定の「都内城北エリア初進出の『赤塚』の事前反響が3週間で100件。スカイツリーが眺められることから話題を集めた2年前の『森下』に次ぐペース」と確かな手ごたえを感じ取っていた。
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複眼の土地仕入れに転換するのは大賛成だ。これまで同社は埼玉の戸建てでは圧倒的なシェアとブランド力を誇っていたが、マンションは年間に1棟から2棟ぐらいしか供給してこなかった。記者は不思議でならなかった。ポラスファンを増やすためにもマンション事業は欠かせないはずだ。
これまでマンション用地などには目もくれなかった100人弱の仕入れ担当が複眼の目で土地を見るようになれば、情報収集力は飛躍的にアップするのではないか。
「日土地虎ノ門ビル」竣工 浮利を追わず、環境にかける同社の矜持を見た
「日土地虎ノ門ビル」
日本土地建物が10月末に竣工した「日土地虎ノ門ビル」を見学した。同社の環境フラッグシップビルと位置づけ、国内の環境評価システムの最高ランクであるCASBEEの「S」、PAL:26%・ERR:43%により東京都の建築物環境計画書制度において、最高ランクの「段階3」、さらに国際的な環境評価であるLEED-CSの「ゴールド」を取得。同社の矜持が込められたビルだ。
物件は、東京メトロ銀座線虎ノ門駅から徒歩3分、港区虎ノ門一丁目に位置する敷地面積約1,536.83 ㎡の鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造地下1階、地上11階建て、延べ床面積11,507. 82㎡。設計・監理は日本土地建物(設計統括)、日建設計(構造)、清水建設(設備)。施工は清水・坂田・日土地建設共同企業体。
すべては紹介しきれないのでいくつかを紹介するが、おそらくこの中規模のビルでは最新の技術を導入したビルであることは間違いない。
まず、屋上の太陽光パネルと屋上緑化。太陽光パネルは96枚を設置し、年間使用電力量の1%、20kwを出力。共用部の照明などに用いる。屋上緑化では11階ガーデンテラスにオリーブなどを植樹して日射負荷の低減を目指す。
各フロアの共用部分には港区のみなとモデル二酸化炭素固定認証制度の認証取得を目指すため床には厚さ15ミリのクリ無垢材と厚さ12ミリの下地合板にはスギ材を、壁には再生土を含有させたタイルを採用している。
窓にはエアフローウィンドウを採用。電動ブラインドは太陽光追尾センサーを設けることで昼光制御を行い、カーテンウォールに換気口を設置して、中間期の省エネと自然の風をビル内に取り込む。さらに、ゾーン別の空調、照明もワンタッチで調整できるようにしている。
雨水の再利用では、雨水を地下のタンクに貯留し、ろ過した水を再生水として屋上・壁面緑化の自動灌水やトイレの洗浄水に使用する。トイレは断水した時でも利用できるトイレを一部に設置する。
エネルギーの見える化では、1階のエレベータホールにデジタルサイネージを設けたり、入居者がパソコンで使用量を把握できるようにしており、省エネ対策に利用する。デジタルサイネージではニュース、天気予報なども見える。
外構・壁面の緑化では、南側の壁面にプランター方式の緑化を図っている。プランターは各フロアで維持管理がしやすいよう工夫している。メイン道路に面した建物はピロティ方式とし、空地にはシマトネリコを植樹、ドライミストも設置する。
太陽光パネル 共用部分
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記者はビルが専門ではないが、同社の矜持をみたような気がした。壁面緑化は今のビルやマンションでは当たり前と言えるかもしれないが、プランター方式にしていたのには驚いた。同じようなものは、森ビルの「元麻布ヒルズ」がマンションのバルコニーに自動灌水方式のプランターを設置していたのを見たことがある。
階段室の照明にも驚いた。普段、照明はついていないが、ドアを開けると人の動きをセンターが感知してLEDの光を灯し、階段ステップには光を蓄える性能がある素材が採用されていた。
トイレの水も手洗い水と洗浄を使い分け、断水のときでも手動で利用できるようにしている心配りが憎いではないか。
CASBEE、LEEDについては省略するが、「S」ランクはまたまだ少ないし、LEEDはわが国でも認証を取得しているところが増えているが、「ゴールド」のもう一つランクが上の「プラチナ」は数えるほどしかない。
敷地内緑化と壁面緑化
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このような最先端の技術を採用したのが銀行系のデベロッパーというのも感慨深いものがある。バブル崩壊後、〝長銀系の優等生〟と呼ばれた日本ランディックを筆頭にたくさんの銀行・証券系と呼ばれたデベロッパーが破たんし、または会社清算などで市場から姿を消してしまったからなおさらだ。
姿を消したデベロッパーをいくつか紹介する。ランディックとは対照的に〝長銀の劣等生〟と言われたエルカクエイ、三和銀行系の東洋不動産、三菱信託系の菱進不動産、日債銀系のアサヒ都市開発、東京相和系の朝日建物(朝日建物を銀行系にするには異論があるかもしれない)、大和証券系の大和土地建物、日興証券系の日興不動産などだ。
金融系で生き延びたのは第一勧銀系の日本土地建物のほか、興銀系の興和不動産(現新日鉄興和不動産)と常和ホールディングス、富士銀行系のヒューリックぐらいしかない。
日土地がバブルを乗り切ったのは、浮利を追わなかったのがその理由の一つだろうと思う。記者は「横浜白山」(430区画)「横浜あずま野」(547戸)「横浜戸塚台」(298戸)などの大型戸建て団地を取材してきたが、売れるからといってバブル期に大量供給することなく、そしてバブル後の苦しいときも街をつくりコンスタントに供給してきた。
そして1999年。バブル崩壊後のどん底の経済状況の中からようやく立ち直りを見せたときだ。同社は法人営業部を立ち上げ、CRE(Corporate Real Estate=企業不動産)戦略支援ビジネスを始めた。「不動産は問題解決業」という視点だ。これが今日の伸張に繋がったのではないか。
環境不動産のトップランナーだ。
ドライミスト
総合地所が組織改定 質の向上を追求して欲しい
総合地所は12月1日付けでソリューション事業本部を不動産開発事業本部に改称し、用地開発部と営業企画部を新設し、賃貸事業部の営業体制を強化するなどの組織改定を行なったが、組織改定に伴う事業説明会を16日開いた。
主な組織改定は、①分譲・賃貸・リノベーション事業を強化するため、ソリューション事業本部(東京本社・大阪支店)を不動産開発事業本部に改称し、用地開発部(東京本社)、大阪用地開発部(大阪支店)を新設②商品企画力、販売企画力、マーケティング力の強化を図るため企画本部に営業企画部を新設③賃貸管理の営業体制を強化するためオーナー向けの窓口であった賃貸戦略部を、エリア別に三部体制に改組し、賃貸戦略第一部・賃貸戦略第二部・賃貸戦略第三部を新設-など。
説明会の冒頭、同社取締役兼常務執行役員管理本部長・谷村大作氏は「不動産事業は建築費の上昇、消費増税後の市場への影響など、経営の舵取りが難しくなる局面を迎えるが、どう打って出るかの解答を示せたと思う」と述べた。
続いて不動産開発事業本部を新設したことについて、不動産開発事業本部副本部長・井上理晴氏が「用地開発部を新設したのは、マンション用地取得にとどまらず戸建て、賃貸、リノベーションも含んだ多面的、戦略的な専従部隊として発足させた。ボリュームを追うのではなく質を追求していく。組織に横串を通すことで連携も図れる」と、新設の理由を語った。
賃貸事業本部再編については、同社賃貸事業本部副本部長・八木橋伸二氏は「顧客満足度を高めるため三部体制を敷いた。スタッフも12名から23名に増員した。ファンド向け、オフィス・店舗などにも対応していく。現在約18,000戸の管理戸数を2万戸にするのが当面の目標」と話した。
営業企画部を新設したことについては、同社企画本部営業企画部部長・小金沢伸一氏が「マンションの価格上昇圧力が高まっているが、Web戦略、商品企画、販売企画、マーケティング力を強化してカスタマーズファーストを実践していく」と語った。
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リーマン・ショック後、同社が「ソリューション事業本部」を立ち上げたあたりから、記者は同社の動向にずっと注目してきた。「不動産はソリューションビジネス」そのものだが、言うは易く行なうは難し。何をするかだ。
その点、同社は1棟買い取りリノベーション、サ高住なども手がけるようになった。広報活動も強化した。どんな小さな案件でも報道陣向けに現地見学会を行なってきた。今回の組織改訂に伴う説明会も同様だ。ステークホルダー重視の経営には欠かせないことだ。
その「ソリューション事業本部」が改称されるのはさびしい気がしないではないが、「不動産はソリューションビジネス」という考えからすれば、各部署の呼称を変えて組織を明確にするのは理解できる。
しかし、谷村氏も話したようにデベロッパーの前途は決して明るいものではない。マンションも賃貸もリノベーションも益々競争は激化する。かつて大手は手をつけなかった分野へも進出姿勢を強めている。同社がどう独自性を発揮していくかが鍵を握っている。真価が問われるのはこれからだ。
ヒントは旧安宅地所、永昌不動産時代に培ったノウハウ、DNAをどう継承していくかだ。記者は昭和50年代から両社のマンション事業などをずっと見てきたが、決してゼネコンに丸投げするようなことはしなかった。専用カーポート付きや温泉付き、ランドスケープ重視の商品企画などで業界をリードしてきた。ステイタスとなっている〝ルネ〟マンションは少なくない。安定的な収益源の賃貸部門があるのだから、マンションは井上氏も話したように数を追うのではなく質を追求して欲しい。
積水ハウス「住ムフムラボ」来場15万人突破 暮らしを劇的に変える可能性秘める
「住ムフムラボ」外観
積水ハウスは12月16日、「共創」による研究開発拠点「SUMUFUMULAB(住ムフムラボ)」が4月に開設してから7カ月の11月末で延来場者数が15万人を突破したと、「住ムフムラボ」報告会で発表した。
生活者、有識者、大学・教育機関、メディア、ナレッジキャピタル参画団体・企業などと「生活・暮らし」に関するイベント、セミナー、ワークショップ、トークセッションなどをこの7カ月間に100日以上開催してきた。図書コーナー、カフェも併設している。
「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」との共創により視覚以外の様々な感覚の可能性と心地よさを体感できる取り組みのほか、HONDAのロボティクス、IBMの持つ最新IT技術による「食と栄養」、未来型HEMSなどの研究も行っている。
「住ムフムラボ」は4月26日(金)に「グランフロント大阪・ナレッジキャピタル」内に開設したもの。床面積は約660㎡。営業時間は10時~21時(水曜休館)、入場無料。今後も情報発信&研究開発拠点として積極的に展開していく。
住ムフムスクエア+カフェ
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「報告会」を聞きながら、同社がなぜ圧倒的な支持を得ているのかを理解した。例えばユニバーサルデザイン(UD)。同社が他社に先駆けてUDに取り組んできたのは1990年だ。UDなる言葉がまだ一般に浸透していないころだ。どこよりも早く廊下・階段のメーターモジュールを採用したのを鮮明に覚えている。ソフトクローズ機能付き引き戸も採用が早かった。
新しい取り組みでは「食と栄養」「ウェアラブルセンサー」が計り知れない可能性を秘めていると思った。「食と栄養」では、食卓に並んだ料理をセンサーが感知してカロリー計算などを瞬時にはじき出し、「塩分取りすぎ」などと警告も発すことができるという。生活習慣病に役立つのは必至だ。
「ウェアラブルセンサー」は、粘着型の使い捨てパッチ(約11㎝)にセンサーを装着させ、体に貼りつけるだけで、心拍数や呼吸数、表皮温度、消費カロリー、ストレスの測定などができるもの。HEMSなどと連動すれば予防医学につながりそうだ。実用化されれば数千億の市場になるのではないか。
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「住ムフムラボ」は、阿部社長の「営業は置かない」という方針で設置されたのもさすがというべきか。デベロッパーはこのところワンストップ営業拠点を構えて積極的に展開しているが、積水ハウスの取り組みははるかにその上をいくものだ。目先の利益だけでなく中長期的に「積水ファン」を開拓していくものだ。7カ月で来場者が15万人だから、年間では約26万人の計算だ。住宅だけでなく、食や医療、暮らしを劇的に変える可能性を秘めている「住ムフムラボ」だと思う。
UDワークショップ
積水ハウスがサプライズ懇親会 「グリーンファーストゼロ」カクテル振る舞う(2013/12/17)
積水ハウスがサプライズ懇親会 「グリーンファーストゼロ」カクテル振る舞う
山本氏が振る舞った「グリーンファーストゼロ」(実際のカクテルはもっと淡いグリーン)
積水ハウスは12月16日、報道陣向けに「住ムフムラボ」報告会&懇親会を開催したが、懇親会で報道陣も仰天するサプライズ演出をした。世界的なフレアバーテンダー山本圭介氏が登場して、同社が掲げるエネルギー収支をゼロにする「グリーンファーストゼロ」なるカクテルを報道陣に振る舞いやんやの喝さいを浴びた。
Wikipediaによると、「フレアバーテンディング(Flair Bartending) とは、バーテンダーがボトルやシェーカー、グラスなどを用いた曲芸的なパフォーマンスによって、カクテルを作り提供するスタイルである。フレアバーテンディング の技術を有するバーテンダーを、フレアバーテンダー(Flair Bartender) と呼ぶ。英語のスラングである『フレア』(flair) は、主に『自己表現』と訳される」とある。
山本氏は国内大会では9度優勝しているほか、「2011 Gold Shake Cup in Korea国際大会」で準優勝している国際的なフレアバーテンダー。
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この種の曲芸は記者も見たことがあるが、山本氏のパフォーマンスに会場は沸きかえった。ベテランの記者E氏、F氏、M氏などは「素晴らしい。こんな忘年会初めて」と感心しきりだった。驚愕のサプライズを演出したのは同社の広報マンK氏のようだ。「グリーンファーストゼロ」のカクテルはアメリカウオッカをメロンソーダなどて割ったもの。昔懐かしいメロンソーダのような味がした。
別掲のように「住ムフムラボ」報告会では、他の住宅メーカーやデベロッパーをはるかに上回る様々な取り組みを紹介。なぜ同社が好業績を上げられるか、広いユーザーから支持されるかがわかる懇親会だった。
積水ハウス「住ムフムラボ」来場15万人突破暮らしを劇的に変える可能性秘める(2013/12/17)
住友林業 36名の女性プロジェクトチーム発足
LEE 読者との座談会の様子
住友林業は12月6日、女性の視点を商品開発やサービスなどに生かすため、組織を横断した女性プロジェクトチームを立ち上げたと発表した。
プロジェクトチームは、2013 年3 月に住宅事業本部で住宅の商品、インテリア、販売、部材、施工、人財などの開発に関わる各部の担当と、住宅設備機器の製造などを行う住友林業クレストの収納部材の担当をメンバーとして発足。6 月にリビング空間の収納力と快適性を両立する収納提案「こまま(comama)」を提供。10月には、全国の支店から選ばれた営業・設計・生産・総務・インテリア担当社員もメンバーとして加え、総勢36 名で本格始動した。
本格始動の第一弾として、12月7日発売の女性誌「LEE」(集英社発行)で、木の家の良さを子育て世代の女性に知ってもらうコラボレーション企画「きれいを未来につなぐ木の家」の連載(全4回)を始める。
同社はこれまでも女性社員が中心となり、家事や子育ての負担を軽減する生活提案型商品「mamato(ママト)」などを提案してきたが、今後継続的に女性の視点を生かした商品や部材の開発を推進し、サービスなどのソフト面の提案力を強化するのが目的。
「ピンク」一色 住林の新商品「mamato (ママト) 」発表会(2011/6/2)
女性の登用と外国人労働者の採用を 東京建物・佐久間社長が懇親会で語る
東京建物グループは12月3日、恒例のグループ記者懇親会を行い、佐久間一社長は、今後の不動産市場は実体経済が回復するかどうかにかかっており、労働力不足を補うには女性の社会進出の促進、外国人労働力の受け入れなどが必要と語った。また、同社グループとしては環境・省エネ・快適性を盛り込んだサービスの提供を追求していくと述べた。
佐久間社長はまず不動産市場や経済などについて、「ムードはいいがマンション市場も個人の収入が増えるなど実体経済がきちんと回復することが必要」と語った。
さらに、生産人口の減少についても触れ、「団塊世代のリタイアによる労働人口減少に対して、生産性をたゆまなく上げていくには、諸外国より劣っている女性の社会進出を促すことが必要だ。また、海外の人を雇用するのが重要だが、介護士の試験で『嚥下』を読ませるような規制を緩和しなければならない。第三の矢と成長戦略がないと安定的な成長はない」と話した。
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この種の大手デベロッパーの懇親会の場で女性の社会進出や外国人労働者の受け入れについて語ったのは佐久間社長がおそらく初めてだ。記者は佐久間社長が女性の社会進出に触れたのに興味を持った。
同社こそもっとも女性の登用を図る土壌があると思ったからだ。もともと同社の社風はゆったりとしていて記者は好きなのだが、マンションの販売現場でも女性の視点で企画されているものが少なくない。
業界を先駆けて防災グッズ・倉庫などを備えたのは、阪神大震災のとき学生だった女性社員・田所照代さんの提案がきっかけだった。その田所さんもメンバーの一人になっている同社の働く女性による商品開発プロジェクト「Bloomoi /ブルーモワ」のプロジェクトリーダー・野口真利子さんはずっと若いときに「気合と根性」で一級建築士の資格を取得している。同社広報担当の鈴木清由里さんは不動産鑑定士だ。
記者は住宅・不動産業界などの会社約50社が参加しているRBA野球大会を23年間取材しているが、東京建物や東京建物不動産販売はこのところずっと下位に低迷している。ようやくここ2年ぐらいは上昇機運にあるが、このような女性の活躍を見聞すると、全然釣り合わない。この会社は間違いなく「女性上位」にあると思う。
佐久間社長に「もっと女性を登用すべき」と話したら、佐久間社長は「うちの女性社員の比率は3割ぐらいで管理職は2人しかいないが、将来は楽しみ。鍵は女性を登用する部長クラスの手腕にある」と答えた。
同社が不動産会社ではまだない「なでしこ銘柄」(住宅会社では積水ハウスが指定されている)や「ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれるよう期待したい。
野村不動産アーバンネット 今年度新規5店舗目の仲介「国立」オープン
野村不動産アーバンネットは11月25日、同社の仲介店舗「国立センター」を12月2日(月)に開設すると発表した。
「国立センター」は、JR中央線国立駅北口から徒歩1分、駅前ロータリーに面したマンションの1階(クレッセント国立・ディアナプレイス1階、電話:042-580-1581、FAX:042-580-1582)に出店。今年度の新規出店は「国立センター」で5店目となり、仲介店舗数は首都圏50店舗・関西圏3店舗の合計53店舗となる。
同社は、昨年発表した中長期経営計画に基づき営業店舗と人員を向こう10年で倍増する計画。10月には新ブランド「野村の仲介+(プラス)」を立ち上げた。
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正確には分からないが、三井不動産リアルティが平成22年度に全国で15店舗(うち首都圏9店舗)を出店したのが近年では最多ではないか。野村不動産アーバンネットの出店ラッシュも注目される。
三菱地所 企業メセナ活動で文化庁長官賞受賞
受賞の喜びを語る杉山社長
公益社団法人企業メセナ協議会が11月21日、「メセナアワード2013 贈呈式」を行い、三菱地所が「特別賞文化庁長官賞」を受賞した。同協議会は、企業による芸術・文化振興による社会創造(メセナ)活動への参加を促す目的で1990年に発足。全国各地の優れたメセナ活動を行っている企業や企業財団などを表彰してきた。今回23回目を迎えた「メセナアワード2013」では全国から107件の応募があり、メセナ大賞1件、メセナ各賞5件、文化庁長官賞1件が受賞した。
特別賞の文化庁長官賞を受賞した三菱地所は、障害のある子供たちの絵画コンクール「キラキラっとアートコンクール」を毎年主催していることに対して受賞したもの。
贈呈式に出席した同社・杉山博孝社長は、「賞は、ご協力いただいている社会福祉法人の東京コロニー様などを代表して頂戴したのだと思っております。障害のある子どもたちがプロとしての作家活動ができるように今後も支援していきたい」と受賞の喜びを語った。同コンクールは2002年から実施しているもので、今年は2050作品の応募があった。
メセナ大賞にはNPO全日本製造業コマ大戦協会が、メセナ各賞には岩波不動産、損保ジャパン/損保ジャパン美術財団、トヨタ自動車、SCSK、村上町屋商人会がそれぞれ選ばれた。
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記者はこの日、別の取材があり、弊社の若い女性2人に杉山社長のコメントをテープに収め、写真を撮り、記事も試しに書くよう指示した。2人はこれまで取材などまったく行なったことなどない入社1~2年生だ。2人が書いた記事は主体と客体、主語と述語の関係がはっきりせず、誤字・脱字もあり、そのままでは記事にはならないものだった。
しかし、文末に書かれた「子供たちの話をするとき、無意識なのだろう、顔を緩める杉山社長が印象的に写ったスピーチだった」という文章に目が吸い寄せられた。
「写った」のはご愛嬌。やはりここは「映った」の誤植。それでも「無意識に」顔を緩める杉山社長の表情や、2人の若い女性の視線がストレートに伝わってくるではないか。
記者はこうであらねばならないと思う。コピー&ペーストで記事はいくらでも書ける。しかし、そんな記事は何の値打ちもない。知ったかぶりなどもってのほかだ。見る目を養わなければならないのはいうまでもないことだが、記者自身が感じたこと、見たことをストレートに伝えるから読者の心を捉えるのだ。
「キラキラっとアートコンクール」は記者も一度取材している。そのときも、杉山社長は自分の孫に対するかのように話したのを覚えている。杉山社長のやさしい一面を見ることは、本業の取材でも生きてくる。作品は丸ビルに展示される。ぜひ見学を勧めたい。
贈呈式
RBA野球常勝軍団・旭化成ホームズ 育ての親の平居社長「野球」を語る
平居社長
「体育会系社員は練習する価値を知っている」
住宅・不動産・建設業を横断的に組織するRBA野球大会が今年で25周年を迎える。約50チームでスタートしたのは平成元年。バブルの絶頂期にあったが、平成2年にはバブル崩壊。さらに追い打ちをかけるようにリーマン・ショックも業界を襲った。
この間、参加チームは業界の浮沈を映すように約170チーム・社が参加しては消えた。第1回大会から連続して参加しているのは6チームのみだ。25年間を通じて断トツの強さを発揮しているのが旭化成ホームズだ。同社チームは第2回大会から水曜ブロックに参戦している。
参加した当初は強豪チームに歯が立たず、コールド負けを繰り返していた。そのチームが激変したのが平成8年。この年、4勝を挙げると翌年に無敗で初の総合優勝を遂げると、その後はほとんど毎年のように優勝争いを演じてきた。日曜ブロックの覇者と争う総合優勝戦で24回大会まで11度の優勝を飾っており、水曜ブロック優勝が12回、準優勝が2回。通算119勝19敗、勝率.862の高率をマークしている。
ターニングポイントになった平成8年こそ平居正仁社長が当時人事担当として野球選手をコンスタントに採用してきた時代と符合する。平居氏はその後、平成12年に人事部長、同16年に旭化成リフォームの社長を務めた後、同21年に社長に就任した。人事担当だったころはいつもグランドに駆けつけ応援していた。いまは業務が忙しく決勝戦にも顔を見せなくなったが、チーム育ての親であることに変わりはない。平居社長になぜ野球なのかを聞いた。
◇ ◆ ◇
平居社長が野球部を強くしようと思ったきっかけは平成6年に人事部担当になったときだ。それまで平成2年~6年、平居氏は滋賀の旭化成住工勤務だった。
「当時、社名は東芝住宅工業(旭化成住工に社名変更したのは平成3年)で、若い社員は野球をやっていました。その野球部が強く、グループ内の大会でも好成績を上げていました。みんな天狗になっていたんです。
私自身、野球は素人。そこで、私は旭化成ホームズの人事部に異動になるとき『本社の野球部を強くして、こいつらの天狗の鼻をへし折ってやる』と考え、平成7年採用のとき、慶大野球部監督の後藤(寿彦氏)さんを訪ね『住宅に興味のある部員はいませんか』とお願いしたら、たまたま鈴木鉄也(前監督)ら3人が来てくれることになった。その年の秋、慶大の4年生とうちのチームと親善試合をやったのですが、慶大チームには西武から指名を受けて、その日が入団調印式だった高木大成さんも参加され、ものすごく盛り上がりました。
この年は、青学の渡辺康平たちも入ってくれた。翌年、後藤さんの伝手で早大野球部監督の佐藤さん(清氏)にお願いしたら、山本(寿彦氏、現監督)が入ってきた。それから負けないチームになりましたね。先輩、後輩の伝手でコンスタントに入社してくれるようになりました。
当時、土屋社長(友二氏)から『お前はスポーツ選手ばかり採っているんじゃないか』と言われ、早速野球選手の営業成績を調べたら、みんな平均以上だった。しかし、支店や営業所もなかなか売り上げが上がらず苦戦していた時代で、業績が悪いと気持ちよく野球に出してくれないこともあった。やはり業績が上がらないと気持ちよく野球はできない。
その頃、鈴木鉄也(前出)が受注絶好調だったので、休日に野球部員を集めて営業の勉強会を何度か行い、その結果、他の営業マンと比較しても皆それぞれ営業成績を上げてくれた。そこで、『人事部長としての仕事をちゃんとやっているでしょ』と、決して野球選手ばかり取っている訳でなく、業績にも貢献できる人材を採用していますと、土屋に伝えました」(土屋社長はチームが優勝したときホテルで祝勝会を開いたほどの野球好き。平居氏には『野球選手は本業でも優秀であることを証明せよ』とエールを送ったのだろう=記者注)
野球選手などの体育会系の社員はどこがいいのか。この質問に対して平居社長は「一般的にはパワーがあるとか礼儀正しいとかが強みだと言われます。確かにそれもそうですが、私が体育会系を買っているのは、練習することの価値を知っていることに対してです。たゆまず練習する。スポーツ系の社員はこれを苦にしないで実践する。これが最大のポイントです。仕事も同じ。普通は何度か失敗するとあきらめて方向転換しますが、それでは仕事も上達しない。失敗したらなぜ失敗したのか、考えればいいこと。反復練習することでミスが見えてくるし、ミスをなくすことができるんです。当社の野球部の選手は本業でも全国レベルの人材がたくさんいます」
(旭化成ホームズの選手は確かにミスをしない。1試合に1つあるかどうかだ。ライバルのリスト主砲・杉山選手(横浜高校出身で、松坂にエースの座を奪われた投手)は『うちと旭化成さんの違いはミスの差』と話したことがある)
同業へのメッセージ。「いまは積水(ハウス)さん、住林(住友林業)さんも参加されています。住林の市川さん(晃氏)は〝打倒・旭化成〟を目指していただいておりますし、社長同士が集まる会合では野球の話で盛り上がっています」
「14回大会と15回大会は2度にわたって優勝できなかった年があります。〝打倒リバブル〟が達成できて気が抜けてしまったのではと思ったので、みんなを集めて『本当に野球が好きだったら、野球に恩返しをしろ』と話しました。かつてのリバブルさんのように〝打倒・旭化成〟と目標にされるような強いチームにすることが野球に対する恩返しだ』と話しました。それからまたエンジンがかかり、負けないチームになったんです。鈴木はかなりプレッシャーと戦っていたはずですよ」
(鈴木監督が負けないチームをつくったのは適材適所の起用と、チームが勝つための采配にこだわったためだ。ナインも外野への安打を放っても『あの場面はゴロを打てとの指示だった』と決して喜ばなかった。鈴木監督は試合後の反省会で必ず左利きでノートに小さな字でメモを取っていた)
「(旭化成)リフォームにも強くなってほしいのですが…補強? 補強はしませんよ。補強して強くしても面白くない。弱いチームを強くしていくプロセスが楽しいのです」と話した。
普段は各支店・営業所めぐりで忙しく、本社にいるのは月に数えるほどとか。「ここ(本社)にいても仕事にならない(笑)。各地を回って担当者から人の成長を確認するのが私の役割」とくったくがない。2泊3日の勉強会を年10回もこなすという。現場主義を貫く社長だ。
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旭化成ホームズの業績が伸びている。平成26年度第2四半期決算は、売上高前年同期比11.9%増収の2,384億円、営業利益が40.9%増益の265億円となり、第2四半期累計としては過去最高となった。通期見通しについても「消費増税の駆け込みの反動による落ち込みは限定的」(平居正仁社長)と判断し、売上高5,320億円、営業利益600億円とし、過去最高の売上高・営業利益を目指す。
同社の業績が好調なのはこれまで書いたように、人事担当時代から人を育ててきた平居社長の手腕によるところが大きいと思えてならない。これは記者の身びいきか、我田引水か。
平居社長は11月22日に開かれる25周年記念の「RBA懇親会」にも出席する。