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職人の技は世界に誇る無形の文化財

「日本ぐらし館 木の文化研究会」第2回シンポ

 


第2回シンポジウム「庭との関係に学ぶ木造住宅の未来」会場

 

 全国の工務店ネットワーク「ジャーブネット」(主宰:アキュラホーム宮沢俊哉社長)と京都に拠点を置く「日本ぐらし館 木の文化研究会」(委員長:髙田光雄氏)が共催して第2回シンポジウム「庭との関係に学ぶ木造住宅の未来」を先に行った。

 同研究会は、日本の伝統と京町家の居住性、そこで育まれた暮らしの文化を現代の「住宅」へ継承フィードバックしていくための産学連合の建築・文化研究を行っており、今回は「家と庭のつくり手」の関連性がテーマ。協賛したアキュラホームのニュースリリースから要旨を紹介する。

 

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 まず、京都大学大学院教授・髙田光雄氏は「庭との関係に学ぶ木造住宅の未来」について解説。庭に関わる現代的課題として「地域居住文化の継承・発展」と「地球環境への配慮」の2点をあげ、作庭のポイントとして、①四季にとどまらない微妙な季節の変化を楽しむ②環境調整機能の確保③領域形成機能の確保④住まい手が働きかけることによって生まれる「住みごたえ」の実現⑤マネジメントとセキュリティの考慮--の5点を指摘した。

 「歴史にみる大工と庭師」について基調講演を行った京都工芸繊維大学准教授・矢ケ崎善太郎氏は、「大工は古代からものさしをもって指図をする人であり」「庭師は自然を読み取る優れた能力や吉凶をみる能力など、特殊な能力を持つ者」と紹介。

 「日本の建築は寝殿造でも書院造でも、原則として建物の周囲に縁を設ける伝統があった。対して、茶人たちによって作られ始めた数寄屋建築はそれとは正反対のもので、千利休の茶室になると縁は完全になくなり、土間から畳に直接上がる『くぐり木戸』が発明された。このように建物の際まで露地の土間が深く入り込むことによって土庇(つちびさし)がうまれ、ここで大工と庭師の協働が始まった」と語った。

 また「数寄屋大工の覚悟を示す言葉として、『見える部分を何気なく、見えない部分をきちんとすることで本質を間違ってはいけない』『日本の建築は常に手を入れながら維持されるものこそ良い建築である』といった言葉が見受けられる。現代の日本の木造建築は、こういった覚悟をもって仕事をしつづけてきた職人たちがいたからこそ世界に誇る伝統的な建築文化になっている。木造建築の伝統をつくってきた日本の職人たちの技は世界に誇る無形の文化財でもある」と強調した。


高田氏

矢ケ崎氏

 

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 引き続いて行われた事例紹介では木村工務店大工棟梁・木村忠紀氏、京都庭園研究所庭師・比地黒義男氏がそれぞれ携わった事例を紹介。パネルディスカッションでは、京都大学大学院教授・鉾井修一氏、京都大学大学院教授・林康裕氏、京都府立大学教授・檜谷美恵子氏が登壇。それぞれ次のように語った。

 「コストを抑えながら四季折々の自然を感じられる空間を提案することは可能。庭は生き物であり、建築とは異なる感性に働きかける」(比地黒氏)

 「環境工学的にはこれまで、蒸散による冷却効果や通風を促す場として庭の機能を捉えている。最近はさらに、庭や建物下の地盤の熱容量に着目して放熱を促す場としてヒートアイランド対策に積極的な活用ができないかと考えている」(鉾井氏)

 「維持管理について施主を教育する必要がある。メンテナンスして初めて 30 年、 50 年と維持できるものであることを今の施主の多くが教育・継承されていない」(木村氏)

 「庭を愛でる文化を一部の人だけの領域にするのではなく、一般にも広げられるような取り組みが必要」(檜谷氏)

 「木の名前をほとんど知らないといったことが今は普通になっている。文化として育てていく必要がある」(林氏)

 「設計士にはもっと勉強して欲しい。木の名前も知らない設計士がいまだにいる」(木村氏)

 

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 矢ケ崎氏は「職人技は世界に誇る無形文化財」と語った。その一方で、林氏や木村氏は「木の名前をほとんど知らないのは普通になっている」「木の名前を知らない設計士がいる」と指摘した。

 記者もその通りだと思う。まず前者について。昨年、三井不動産レジデンシャルの「目黒」の建売住宅を取材したときだ。職人さんが水平器と定規とコテだけで高さ1mを超えそうなレンガの門柱を作っていた。記者は聞いた。職人さんは「誤差? 2ミリぐらい。ここまでやれる技術?まあ、5年はかかる」と話した。レンガを一つひとつ積み上げ、縦、横、高さの誤差を2ミリ以内に仕上げる技術に感動した。

 平成22年の国勢調査(速報値)によると全国の左官業従事者は87,400人だ。多いか少ないか記者は分からないが、平成12年は152,273人だ。この10年間で42.6%も減少している。平成2年の200,452人と比べると56.4%減少している。それだけ「世界に誇る文化財」が減っていると理解していいのか。マンションも建売住宅も仕上げはサイディング、PC板、クロスなどで、左官が現場仕上げするケースはほとんどなくなった。

 次に後者について。記者は昨年、街路樹について取材した。電話口にでた埼玉県戸田市の担当者は、市内の街路樹の名前を3つぐらいしか言えなかった。マンションや建売住宅の取材などで現地はよく訪れるが、開発担当者なども外構の樹木の名前をすらすらと言える人はほとんどいない。樹の名前、特徴を知らずしてどうして植えるのか。不思議でならない。

カテゴリ: 2013年度

 4月5日の日経平均株価は、日銀が決めた量的・質的金融緩和が期待以上の内容だったため前日比199円高の12,833円となり、2008年9月1日以来4年7カ月ぶりの高値を付けた。その牽引車となったのが金融株と同時に不動産株だった。

 日経Web刊マーケットによると、値上がり率ランキング上位50社のうち17社が不動産・Jリート株が占めた。東京建物が前日比150円高の857円を付け、値上がり率21.22%で2位となったのをはじめ、ダイビルが19.14%(前日比231円高の1,438円)で3位、ヒューリックが19.08%(同150円高の936円)で4位、NTT都市開発が16.03%(同150円高の1,086円)で6位、東急不動産が16.03%(同150円高の1.086円)で7位、イオンモールが15.94%(同473円高の3,440円)で8位、フージャースコーポレーションが15.59%(同166円高の1,231円)で9位とベスト10に7銘柄が入った。

 11位以下にもランド(11位)、三井不動産(16位)、住友不動産(19位)、東京建物不動産販売(21位)、タカラレーベン(28位)、三菱地所(29位)、平和不動産(36位)、トーセイ(42位)、レオパレス(47位)がベスト50入り。Jリートの日本リテールも34位に入った。

 週間値上がり率ランキングでもダイビルが2位(値上がり率30.37%)、住友不動産が4位(同30.46%)、東京建物が5位(同30.05%)、トーセイが8位(同27.98%)、三井不動産が9位(同25.43%)と5銘柄がベスト10に入った。

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 不動産株の上昇については公示地価が発表された3月21日に書いたが、5日の終値は3月15日比でもすさまじい伸びを見せている。大手各社はリーマン・ショック前の高値に迫る勢いにある。

遅行指標の地価公示と先行指標の株価どう読むか(3/21)

カテゴリ: 2013年度

建て替え阻む法の壁と市場価格との乖離拡大

旭化成不レジ 第2回高経年マンション問題 メディア懇談会

 


建替えられる「調布富士見町住宅」

 

 旭化成不動産レジデンスは4月2日、第2回高経年マンション再生問題メディア懇談会を行い、同社が手掛ける建て替えマンションとしては16件目で、事業協力者となっている調布市の「調布富士見町住宅」の事例を基に建て替えの問題点などについて説明した。懇談会には団地建替組合の理事長・今井裕隆氏と同副理事長・多田陽子氏も出席し、建て替えにいたった経緯などについて話した。また、同社の「同潤会江戸川」「国領」「諏訪町住宅」などこれまでの代表的な団地建て替えに携わったNPO法人マンション再生ナビ事務局長・関根定利氏も団地建て替えの課題について講義した。

   
向田氏(左)と大木氏

 

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 「調布富士見町住宅」は京王線調布駅から徒歩10数分、東京都住宅公社が昭和41年に竣工した敷地面積約12,000㎡、延床面積約10,000㎡の5階建て全176戸。専有面積は約50㎡。平成20年に建替え推進決議、事業協力者の決定などを決議。一団地規制の廃止、公道の付け替えなどに手間取りながらも23年一括建替えを決議。25年4月に解体工事に着手する。

 建替え後は延床面積約35,000㎡(建ぺい率50%、容積率200%、高さ制限25m)の6階建て・8階建て全331戸となる。専有面積は57.31~94.64㎡。還元率は1.16倍。竣工予定は27年春。

 建替えに至ったのは、建物が老朽化して漏水事故が絶えず、旧耐震であることの不安、5階建てでエレベータなし、間取り・設備の陳腐化などで、ほぼ全員が建替えに合意したという。


多田氏(左)と今井氏

 一団地規制の廃止を得ると同時に、敷地北側の駐車場と2棟の建物敷地の間にあった道路を付け替えないと建て替えが困難であることから、建物を2棟にしてその中央に道路を付け替えることで最終的な計画がまとまった。建替え後の建物は雁行させることで光と風を取り込む設計となっているのが特徴。

 懇談会で挨拶した同社マンション建替え研究所長・向田慎二氏は「今回の懇談会は、皆さんに団地建替えの実態を見ていただくのと、昭和40年代の団地型マンションはそもそも建て替えを想定していないところに問題がある」と指摘。同主任研究員・大木祐悟氏は「建て替えを想定していない昭和30年代から40年代の団地型マンションは、法改正を含めた抜本的な改革が必要」と語った。

 また、関根氏はNPOを立ち上げた7年前から年間30~40件の建て替え相談を行っている経験をもとに、「修繕・改修を行う場合でも再生の負担が大きく、建替える場合もよほど立地に恵まれた都心部などはともかく、建築費だけでも坪100万円はかかる現状を考えると、郊外団地では容積を余していたとしても分譲価格と折り合わないケースが多い」などと厳しさを増す建て替えの現状について話した。再生を円滑に進めるためには「結論を急がず、きちんと手順を踏み、全員が参加できる環境づくりが大切。そのためには高齢者が孤立しないようなコミュニティの再構築が必須」と強調した。


関根氏

 

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 現段階で分譲単価を予測するのは難しいが、調布駅周辺は駅と線路の地下化で街並みが一変すること、駅からやや距離があることなどを考慮すると市場価格はアッパーで240万円とみた。230万円台に落ち着けば早期完売するのではないか。

 若い記者はびっくりしていたが、われわれの年代は下のような浴槽は別に驚くことではない。昭和30年代、40年代はこのようなものが普通だった。いかに間取り・設備が陳腐化しているかの証左だ。こうした地道な同社の懇親会が記者を育て、法を動かし、ユーザーに〝建替えの旭化成〟を浸透させる。


従前の浴槽(またぎ部分は50cmぐらいあった)

23区の旧耐震の5割が既存不適格か 旭化成不レジ(2012/3/27)

カテゴリ: 2013年度
 

 

 

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