サンウッド旋風巻き起こすか 2023年3月期業績好調 京王と初のJV「浜田山」分譲へ
「サンウッド浜田山」(物件ホームページから)
サンウッドは5月9日、2023年3月期決算説明会を行い、同社代表取締役社長・森毅氏が決算概要、2023年3月期業績予想、新規取り組みなどについて説明した。
2023年3月期決算は、売上高19,376百万円(前期比46.6%増)、営業利益1,959百万円(同256.7%増)、経常利益1,655百万円(同413.7%増)、純利益1,155百万円(同405.1%増)となり、営業利益、経常利益は創業来2番目、純利益は創業来最高益を達成した。
坪単価650万円超の「サンウッド瀬田1丁目」(22戸)など分譲マンション2物件が早期完売し、一棟収益物件「WHARF(ワーフ)」シリーズ6物件を計上した不動産開発事業が13,606百万円(前期比93.5%増)となり、増収増益に寄与した。完成在庫はゼロ。不動産再生事業は前期の反動減で減収となった。
2028年3月期の売上高300億円を目標とする中期経営計画を見据えた仕入れが順調に進んだ結果、棚卸資産は前期末18.7%増の22,972百万円となり、2026年3月期までの仕入れ目標をほぼクリアした。
2024年3月期は売上高19,531百万円(前期比0.8%増)、営業利益1,298百万円(同33.8%減)、経常利益1,010百万円(同39.0%減)、純利益696百万円(同39.8%減)を見込む。森社長は「前期は想定を上回る数値。今期は通常の利益率に戻る」と説明した。引き渡し予定のマンション3物件の契約が順調に進み、「WHARF」も5物件のうち4物件を契約完了している。
今期の新規取り組みとして、7月に合同モデルルーム「SUNWOOD LOUNGE新宿」を新宿アイランドに開業し、京王電鉄と初の共同事業マンション「サンウッド浜田山」(47戸)のモデルルームを設置する。また、高級賃貸マンションニーズの高まりを受け、都心5区を中心とする東京23区に特化した不動産ファンド事業を立ち上げる予定。森氏は「ファンド事業は中期経営計画に盛り込んでいないが、京王電鉄、グループの京王不動産、リビタとのシナジー効果を発揮し、マンション事業、WHARF事業に続く新しい事業の柱に育てていく」と語った。
◇ ◆ ◇
2021年11月に新たに京王電鉄グループと資本提携(京王電鉄の持株比率は21.19%)した同社の今後に注目している。
同社は1997年の創業から2012年まで森ビルと資本提携し、渋谷区や港区などで高額マンションを供給してきた。2012年に資本提携を解消し、2013年にタカラレーベンと資本提携したとき、都心部の高額マンションを得意とする同社と、郊外・地方が中心のタカラレーベンとの企業理念・社風は異なり、シナジー効果を発揮するのは容易ではないと記者は見ていた。
一方、京王電鉄は京王不動産、リビタの不動産会社を擁するが、自社開発マンションはほとんど行っていない。2022年3月期の不動産事業売上高は472億円で、グループ全体売上高の15.8%を占めるが、他の首都圏電鉄会社7社と比較すると、売上高、売上比率は下位からそれぞれ3番目だ。沿線のポテンシャルの高さを考えると圧倒的に負けていると記者は考えている。
そして今回、マンションなど不動産事業の強化が急務の京王電鉄と京王沿線での供給事例も多いサンウッドの提携は、双方に大きなメリットがあるはずで、決算説明会に出席したのも、森社長が何を話すか聞きたかったからだ。
その成果はあった。京王との共同事業第一弾となる「サンウッド浜田山」の現地は見ていないが、おおよその見当はつく。立地条件は申し分ない。同社は「価格は未定」としているが、記者は坪600万円超もありうるとみている。森社長は「井の頭沿線のナンバーワンを目指す。飛躍的に高まった資金調達能力を生かし、今後も積極的に京王さんとの共同事業を進めていく」と語った。
決算説明会で驚いたことがある。一つは、6月の株主総会で京王電鉄取締役常務執行役員開発事業本部長・南佳孝氏と、近鉄不動産元副社長で現顧問の田中孝昭氏が社外取締役にそれぞれ就任する予定であることだ。南氏は京王電鉄との関係強化が目的だから当然として、森社長は田中氏を「業界の重鎮。大手デベロッパーとの共同事業に欠かせない方」と紹介した。
田中氏の名前をどこかで聞いたような気がしたので調べてみたら、近鉄不動産が主導した「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス」と「BLUE HARBOR TOWER みなとみらい」の記事がヒットした。田中氏が関西弁でまくし立てたのを思い出す。記者は樋口武男氏、矢野龍氏、和田勇氏を関西弁の〝雄弁御三家〟と呼ぶが、お三方はそれぞれ第一線を退かれた。田中氏はその後継者だ。絶滅危惧にある関西弁を東京で復活させてくれることを期待したい。
もう一つは、今後の物件サマリだ。分譲マンションは「浜田山W2」「信濃町W6」「西荻窪W5」「尾久W7」「吉祥寺W3」「東府中W6」「反町W8」「荻窪W7」「大森W4」「横浜・中華街W5」「六本木W5」「府中W6」「国立W5」とある。いずれも10~30億円の中規模だが、このままの市況が続けば、ほっといても売れるようなものばかりだ。
「浜田山」のモデルルーム次第ではサンウッド旋風を巻き起こす可能性があると見た。参考までに2017年分譲の「サンウッド青山」の記事を添付する。
サンウッド 創業20周年の集大成 「青山」の全面ヘリンボーン床に驚愕(2017/12/8)
近鉄不・三井レジ 商・ホテル・住の複合「みなとみらい」 坪単価は400万円前後(2015/6/9)
近鉄不・京阪電鉄不・長谷工コーポ 実利を取る戦法か「王子飛鳥山」(2014/4/23)
「戦略は間違っていなかった」仲井社長 積水ハウス 第6次中計「安定成長」へ弾み
仲井氏
積水ハウスは3月10日、前日に発表した第6次中期経営計画(2023~2025年度)説明会を開催した。
同社代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、第5次中期経営計画(202~2022年度)を振り返り「営業利益を当初計画より421億円上回ったのは自信になった。戦略は間違っていなかったことを確認できた。初年度は新型コロナやウッドショックの影響などにより441億円利益を押し下げ、このうち100億円を価格に転嫁し、70億円は内部努力で取り戻したが、残りの270億円は吸収できなかった。しかし、最終的には270億円を回収し、なおかつ戸建住宅、賃貸事業が好調だったことにより205億円上方修正することができた」とし、第6次中期経営計画については、「この自信を背景に〝『わが家』を世界一幸せな場所にする〟30年グローバルビジョン実践するため、基本方針は『国内の〝安定成長〟と海外の〝積極的成長〟』とした」と語った。
第6次中期経営計画では、「国内の“安定成長”と海外の“積極的成長”」を基本方針とし、「技術力」「施工力」「顧客基盤」と、商品・技術開発から、営業・設計・施工・アフターサービスまで、住まいづくりに関わるすべてのプロセスを独自のバリューチェーンを活かし、既存事業の深化と拡張を図る。
請負型ビジネスでは、戸建住宅事業は価格レンジ別の3ブランド戦略を深化させ、CRM(Customer Relationship Management)戦略の推進を図り、新たなビジネスとして、地域ビルダーと連携して1stレンジの強化を図る。
建築・土木事業では、鴻池組の強みである環境対応・技術力をドライバーに、土木分野での環境ソリューションを強化し、建築分野での受注チャネル拡大・深化を図る。
開発型ビジネスでは、徹底したエリアマーケティングを実施、仲介・不動産事業では、資産価値の高い美しい分譲地を開発するとともに、緑化環境の整備や既存住宅の流通・活性化に取り組む。マンション事業、都市再開発事業では、四大都市圏において厳選したエリアへ資産価値の高い物件を供給するとともに、ZEHマンション・ZEBの開発を推進する。また、「Trip Base 道の駅プロジェクト」をはじめ、地方自治体等との連携による地方創生にも貢献していく。
国際事業では、米国・豪州・英国での戸建住宅の年間供給戸数1万戸を目指す。
2026年1月期の経営目標は売上高36,760億円(2024年1月期30,800億円)、営業利益3,180億円(同2,650億円)、経常利益3,110億円(同2,590億円)、純利益2,140億円(同1,930億円)、ROEは11%以上を安定的に創出し、配当は中期的な平均配当性向40%以上(110円を下限)とする。
基本方針を「コアビジネスのさらなる深化と新規事業への挑戦」と位置づけた2022年度を最終年度とする第5次中期経営計画は、3か年合計の業績は当初収益計画を上回り、2022年度では過去最高の売上高・利益を達成した。
◇ ◆ ◇
仲井社長は説明会で何度も「自信」を口にした。5~6回はあったはずだ。その理由を記者も考えた。
2022年の持家の着工戸数は前年比11.3%減の25.3万戸となり、16年ぶりに分譲住宅に抜かれた。賃貸や分譲住宅が前年比で伸びているのに、どうして持家のみが大幅に減少しているのか。巷では物価高などを中心とする消費マインドの低下がその理由に挙げられているが、ならば分譲住宅だって影響を受けるはずだ。分譲戸建ては一昨年のような勢いはなくなったが、戸数は増加している。
記者は、持家の減少は、消費マインドの低下だけではなく、いわゆるパワービルダーの分譲戸建てに市場を奪われているからではないかと考えている。2022年の分譲戸建て着工戸数約14.5万戸だが、うち全国区のパワービルダーの着工比率は50%を突破しているはずだ。
その影響は、今後発表されるハウスメーカーなどの決算に表れるはずだ。その点、積水ハウスは健闘していると思う。戸建住宅事業は売上高3,524億円(前期比0.1%減)、営業利益は383億円(同9.8%減)となった。減益になったのは原価高の影響だろうか。1棟当たり単価は4,619万円、分譲戸建ての建物部分の1棟単価は3,885万円、マンションも1戸5,207万円と極めて高い数値を示している。
飯田グループホールディングスの注文住宅単価は2,103万円、戸建て分譲単価は2,987万円(2023年3月期3Q)と比較すると、積水ハウスの住宅は似て非なるものがよくわかる。マンション単価で突出している三井不動産の2022年3月期の単価は6,442万円だ。同社と三井不のこの価格差は関西圏中心と首都圏中心の差だろう。
これらから読み取ることができるのは、同社の顧客は景気変動に影響されない高所得層が中心で、ハード・ソフト・サービスの融合によりZ住宅など付加価値の高い住宅を供給し、徹底したエリアマーケティング戦略を取っているということだ。同社の顧客の自己資金比率は25.9%、戸建ての紹介比率は38.9%というデータが裏付けている。仲井社長の「自信」はそうした盤石な基盤が構築できているからではないか。疲弊するばかりの競争が激しい市場に人材を投入しないという意思の表れでもあると記者は理解している。
10日の説明会で好調な分譲住宅について聞かれた仲井氏は「当社はCRMによって、フェースツーフェースによる顧客相談を年間30万件受けている。DXを駆使して土地なし顧客などに対応できているのが大きい」と語り、金利動向に対する質問に対しては「(1次取得層向けの)1stレンジは影響を受けるかもしれないが、主力の中高級路線の顧客への影響はそれほどでもないと見込んでいる」と話した。
社名を「株式会社AQ Group」へ変更 株式会社アキュラホーム
新ブランドロゴマーク
株式会社アキュラホームは3月1日、同日付で商号(会社名)を「株式会社AQ Group」へ変更し、新たなコーポレートロゴマークを設定したと発表。注文住宅ブランド「AQURA HOME」を主軸に「住」に関する総合サービスを展開していく。
社名変更は、1978年の創業以来、「手ごろな価格や中級価格帯の住宅から邸宅まで」「平屋から木造ビル、アパートまで」「住宅関連事業まで」と、“ホーム”に限定せず“グループ”として「住」に関するサービスを一貫し提供していく基盤が整ったためとしている。
AQには「永代家守り」=永久に暮らしを守るという想いと、ADVANCE QUALITY. の頭文字をとり「匠の心」=品質を追求する誓いが込められている。
新コーポレートメッセージは「常識を破壊し、真に豊かな暮らしを創造する。」
中島新社長の経営力、国際力、人間力、胆力を激賞 三菱地所・吉田社長
中島氏(左)と吉田氏(同社会議室で)
三菱地所は2月16日、社長交代と取締役会長の異動を発表。4月1日付で取締役兼代表執行役執行役社長に取締役兼代表執行役執行役専務・中島篤氏(59)が就任し、取締役兼代表執行役執行役社長・吉田淳一氏は取締役会長に、取締役会長・杉山博孝氏は取締役に就任する。杉山氏は6月下旬に開催予定の総会をもって取締役を退任、特別顧問に就任する予定。
同日行った記者会見で吉田氏は「2017年4月に社長に就任してから6年が経過しました。この間、2020年4月に開始した『長期経営計画2030』を立案し3年が経過、一区切りがついたタイミングであり、今後は新しい社長のもとで『2030』を推進すべきだと判断し、社長交代を決断しました。
新社長に中島を選んだのは、経営企画部門での経験、海外留学へのチャレンジ、不動産開発部門での経験、海外事業の中核企業でもあるロックフェラーグループ社のトップとしての役割などを通じ、その経営力、国際力、人間力、胆力を着実に成長させており、グローバルな視点から日本をみて新たな価値創造にチャレンジできること、加えて、私が大事にしているインテグリティを体現したような誠実、かつ実直な人間であるからです。その明瞭な知と心でもって未来をきりひらいてくれると思います」と激賞した。
また、自らの6年間の社長時代を振り返り、「6年前の記者会見の席で心がけたいこととして3点をあげさせていただいた。一つ目は将来的な視点に立ったデベロッパーマインドによる挑戦、二つ目はグローバル対応力の強化、三つ目はインテグリティを深めることでした」と語り、新本社への移転に伴う新しいワークスタイルの提案と実践、長期営計画の発表、丸の内ネクストステージの推進、ロボット、AI、IOTの実装やDXの推進による新たな社会の基盤づくり、海外事業、投資マネジメント事業などそれぞれ成果を上げてきたことについて説明した。
社長就任について中島氏は「身が引き締まる思い。『泉パークタウン』を見学して、その壮大な事業に感銘を受けて三菱地所に入社することに決めました。これまで企画担当として7年間の海外勤務や3度の中期計画を経験しました。藤和不動産との業務提携、リーマンショックの対応、黎明期の不動産証券化などにも携わってきました。そして、2011年からのロックフェラーグループでの経験が大きな財産となっています。これらの経験を通じて、何ごとも真剣、誠実に向き合うことを学びました」と語った。
社長としての役割については「まず当社の本拠であり、DNAでもある大手町・丸の内・有楽町を圧倒的に魅力的な空間にしていくことです。グループの総力を結集してビジネスだけでなく居住、文化、エンターテイメントなどを取り込んで魅力ある空間にし、国際化にも寄与したと考えています。
第二は、グローバル化。さらに海外事業、投資事業に力を入れ、成長させたい。価値観・文化もグローバル化にとって重要。多様性の社会の実現にも貢献したい。
第三は、SDGs。サスティナブルは奥行きが深い分野であり、わたしも学んでいるところですが、会社としても脱炭素社会の実現に向け先駆的な役割を果たしていると自負しています。これからも社会から要請されていることは何かという視点を大切にし、対話、コミュニケーションを大切にしながら、よりよい社会を創造するその一翼を担っていきたい」と述べた。
中島氏は、昭和38年8月9日生。昭和61年3月、東京大学法学部卒業。同年4月、三菱地所入社。平成3年6月、海外留学(人事部在籍)、同5年6月、経理部、同10年4月、都市開発企画部、同16年4月、経営企画部副長、同23年4月、休職(ロックフェラーグループインターナショナル社)、同28年4月、執行役員 欧米事業部長、令和2年4月、執行役常務、プロジェクト企画部、都市開発部、物流施設事業部、ホテル事業部担当、同4年6月、取締役 代表執行役 執行役専務、経営企画部、サステナビリティ推進部担当、現在に至る。
中島氏
◇ ◆ ◇
いつも馬鹿な質問をするからだろう。いくら手をあげても指名されないので、この日は質問をしないと決めていた。(手を挙げたすべての記者の方が指名された)
実は、小生も1つだけ質問したかった。海外留学2年も含めて都合7年間の海外勤務を経験されている中島氏の苦労、語学力、コミュニケーション能力についてだった。
ところが、小生は全く英語が話せない。英語が理解できない者に中島氏も説明するのは困難だろうと質問はあきらめた。中島氏はきっと、ボキャブラリーの問題ではなく、コミュニケーション能力の問題だと答えたに違いない。
このコミュニケーション能力がわが国に決定的に欠けている。母語を大切にし、同時に外国語教育をしっかり行わないとグローバル化についていけなくなるだろう。小生は20年近く前、中国・北京大学付属小学校を訪ねたことがある。3~4年生の生徒は英語がペラペラだった。これは負けると思った。その後、10年も経たないうちにGDPは中国に抜かれた。
小生の時代はどうだったか。昭和37年だ。中学1年の最初の英語の授業だった。担任の先生が、いきなり級長をしていた小生に向かって、まるで進駐軍みたいな命令口調で〝スタンド アップ〟と声を掛けた。カット頭に血が上り、知らんぷりを決め込んだ。先生は激怒した。政府が「もはや戦後ではない」と宣言したのは昭和31年(1956年)だが、三重の田舎町には当時、戦争の傷跡が色濃く残っていた。あの言葉で英語が嫌いになった(頭が悪いのだが)。
◇ ◆ ◇
両氏の会見はとても分かりやすかった。分からなかったのはメディアの的外れの質問だった。〝三菱地所は保守的なイメージ〟〝欧米中心なのか〟などと仏壇の奥に眠っているカビが生えた経典を持ち出した。
もちろん、両氏はこれを否定した。小生が説明するまでもないことだが、同社は丸ビルが竣工した20年前あたりから劇的に変わった。東京駅周辺の街も変わった。2011年に社長に就任した現取締役会長の杉山博孝氏はとても気さくな方で、広島カープファンであることを公言してはばからなかった(コーポレートカラーと一緒だからでもないはず)。同社のイメージチェンジに大きな役割を果たした。
吉田氏も社長に就任した2017年の翌年、大手町パークビルが完成したとき、〝本丸〟の本社オフィスをメディアに公開した。こんなことをした会社は少なくともデベロッパーにはなかった。吉田氏はデベロッパーのオフィス・住宅の木質化にも先導的な役割を果たした。
そして今、もっともワンダフル、ビューティフル、ハートフル、アートフル、ウォーカブル、チャレンジング(小生だってこれくらいの英語は分かる。スペルは書けないが)な活動を行っているデベロッパーこそ同社だ。コロナ禍でも見学会をきちんと行ったのは同社だけだ。
とんちんかんな質問をした記者の方には〝ペン(スマホか)を捨てて街に出よ〟といいたい。大・丸・有を歩けば三菱地所がどのような街を目指しているか、そしてまた日本橋、新宿、渋谷、池袋などとどこが異なるかすぐわかる。丸の内仲通りにはバギー姿があふれ、道路に敷かれた本物の芝生の上に素足を投げ出し、子どもに食事を与える母親がいる光景を見てごらん。
別の記者の方は中島氏が大・丸・有の開発に関わってこなかったことを質したが、中島氏が大・丸・有を知らないわけがないし、吉田氏がそんな人にバトンを渡すはずがないではないか。むしろ逆だ。中島氏は米国勤務時代、外からしっかりわが国の街づくりをそのよさと弱みを眺めていたに違いない。小生は中島氏の話を聞いていてカチンと響くものがあった。大・丸・有を含めた同社の街づくりは間違いなく変わると。
「産業デベロッパー目指し、日々妄想」植田俊・三井不動産次期社長(2022/12/11)
知る人は懐かしく、知らない人は行きたくなる 地所「TOKYO TORCH」仮囲いアート(2022/11/15)
三菱地所の本丸を見た 機能一新 士気高揚 トマト最高 地所が新本社公開(2018/2/12)
JR東日本&東急不HD 期間限定10年の業務提携 他社は手を握れるのか 愛は不滅か
深澤氏(左)と西川氏(オークラ東京で)
東日本旅客鉄道(以下「JR東日本」)と東急不動産ホールディングス(以下「東急不HD」)は2月14日、包括的業務提携契約を締結したと発表した。両社グループが持つまちづくりに関わるアセット、ノウハウ、人材などを活用した高いシナジー効果を追求するためで、住宅事業と再生可能エネルギー事業を軸に、その他海外事業展開などを含めた事業を推進していくのが目的。提携期間は2033年2月までの10年間。
環境共生・コミュニティ自助型の持続可能なまちづくりの柱の一つである住宅事業では、第1号案件として、JR東日本の所有する船橋市市場一丁目に位置する社宅跡地約4.5haにマンション800戸や商業施設、再エネ発電施設を整備する。完成時期は2026年度。
再生可能エネルギー事業では、総定格容量約1,400MWの自社発電施設を有する東急不HDの再生可能エネルギー施設の開発・運営ノウハウや、JR東日本グループが保有する土地・建物資産などを活用し、太陽光発電施設などの開発を進め、概ね5年以内に5か所程度の再生可能エネルギー事業開発を推進する。また、東急不HDが所有する宮城県を中心とした既存の再生可能エネルギー施設2~3か所をシードアセットとし、来年度に100億円規模のファンドを組成する予定で、今後10年間で1,000億円規模を目指す。
このほか、JR東日本がもつASEAN各国鉄道会社とのネットワーク、東急不HDのインドネシアを中心とする不動産開発の実績をベースに、環境共生・コミュニティ自助型の持続可能なまちづくり事業を展開していく。
また、ニューノーマル時代の「新しいワークスタイル」として、モビリティや通勤顧客へのサービスを提供するJR東日本と、さまざまな形態のオフィス開発・運営、リゾート&ホテル事業を手掛ける東急不HDの強みを生かし、軽井沢などの東急ハーヴェストクラブ会員権に新幹線往復チケットを付けるなど利便性の高いワーケーション商品の開発を行う。
さらにまた、JR東日本グループと東急不HDが保有する多様なアセットを活用し、新たな価値創造と事業収益の獲得を目指していく。
記者会見でJR東日本代表取締役社長・深澤祐二氏は、「提携により2023年度から5年程度で1,000億円規模の売り上げを目指す。両社が連携しグローバルアジェンダの解決に果敢に挑戦していく。タッグを組むことで、これまでどちらか一方では実現できなかった心豊かで輝く未来を実現していく」と語った。提携の決め手については、「中期ビジョン、環境共生、ユニバーサルビジョンなどが一致するから」とし、「当社はこりまでモビリティが中心だったが、生活ソリューション事業を拡充し、将来的には事業比率を5:5にする目標を掲げている。その中で不動産事業は大きなウエイトを占めている。スピード感をもって進めていく」と話した。
東急不動産ホールディングス代表取締役社長・西川弘典氏は、「当社グループの長期ビジョン『GROUP VISION 2030』では全社方針として環境経営を、事業方針の一つとしてパートナー共創を掲げ取り組んでいる。連携は非常に高いシナジー効果が期待できる。国内外の様々な課題解決をリードする存在になる。今回の提携を契機に幅広く連携し、新たなお客さま価値の創造と企業収益の拡大を目指す」と語り、連携の決め手については「不動産会社として成長していくため、重要な戦略として関与資産をいかに拡大していくかが課題となっている。そのためパート―ナー共創を掲げ、関与資産拡大の機会を探ってきた。両社の中長計画がほぼ同じであること、両社が持っている経営資源などのリソースは補完性が非常に高いと判断した」と述べた。
◇ ◆ ◇
両社が包括的業務提携契約を締結すると案内があったとき、記者は仰天した。青天の霹靂、逆転満塁サヨナラホームランを浴びたような気がした。
なぜか。デベロッパーとしたら、JR東日本が所有する駅舎などの土地は垂涎の的だ。土地代はただ同然で、容積など半分以上余しているはずだ。やろうとすれば、駅地下・駅中・駅上開発ができる。郊外では寝過ごし客相手の仮眠・宿泊施設を設けたら連日連夜満室だろう。シェアオフィス需要だって取り込める。三顧の礼、三跪九叩頭して提携をお願いしたい企業だ。日本郵政も同じだが、同社は2018年4月2日、デベロッパー日本郵政不動産を立ち上げた。社長は2代にわたって三井不動産グループ出身者だ。
そんなこともあり、記者はJR東日本と〝婚約〟発表をするのは、最近いくつかの共同事業を行っているあるデベロッパーしかないと思っていた。相思相愛、ラブラブだと信じて疑わなかった。相手が東急不HDとは毫ほども考えていなかった。そのデベロッパーは振ったのか、振られたのか謎だ。
そこで考えた。そのデベロッパーになく、東急不HDにあるもの・強みは何か。ホテル&リゾートだと結論づけた。双方の事業規模を調べる余裕はないが、同じくらいか。双方合わせれば100か所くらいになるのではないか。タッグを組めばドラスティックな改革も可能で、面白い展開ができると。
ただ、他の住宅などの不動産開発は、土地は持っているが、その土地を生かすノウハウを持たないJR東日本はフリーハンドで好きなとき、好きなデベロッパーと手を組んだほうが優位に立てるはずで、業務提携によって手かせ足かせをはめるのは得策ではないから、その点を質そうと、質疑応答で最初から最後まで手を上げ続けた。いつも馬鹿な質問をするからだろう。今回も指名されることはなかった。質問を許されたのはいつものメンバーだった。(これはやめるべき。記者はその手口を小学生のとき知った。それを許すメディアにも責任がある。みんなが手をあげればMCもスタッフもパニックに陥る)
少し横道にそれる。これまで鉄道事業会社の不動産開発をいくつか取材してきた。一言でいえば稚拙。ごく一部を除き、ゼネコンやデベロッパーに丸投げ、ぶら下がるだけ。〝揺りかごから墓場まで〟(福祉施設のことを言っているのではない)あらゆる事業で沿線住民にサービスを提供しているのに、収穫することを行ってこなかった。許認可権を握る国の責任でもあるが…。
まあ、こんな繰り言をいってもしょうがない。仕方がないので、両社の担当者に直接聞いた。JR東日本には「自由恋愛と同じように、だれとでも手を組むほうがいいのではないか」と(こんな質問をするから嫌われる)。
ところがどうだ。その担当者の方は「仰る通り。案件によっては他社と組むこともある」と。さすがJR東日本、強かな読みがある。
東急不HDには、「JR東日本さんは自ら手を縛らないと言っています。好きなように他社と手を握られたら、東急さんだって面白くないのではないか」と(これまた失礼な質問)。すると、同社担当者の方は「企画力を向上させ、選ばれるようにする」と語った。不動産仲介の専属専任媒介ではない主旨のことも話されたので、一般仲介に近いのか。
これで疑問は氷解した。他のデベロッパーにもつけ入るチャンスはあるということだ。深読みすれば、JR東日本は今回の提携により、デベロッパー間の競争を促し、より有利な開発を行おうとしているとも読める。
ただ、東急不HDの強みはほかにもある。両社社長が強調したように、環境共生やユニバーサルデザインの取り組みを、東急不HDはどこよりも早く着手したのを思い出した。再生可能エネルギー事業もそうだ。街づくりといえば東急だった。西川社長は渋沢栄一の創業精神を紹介したようにそのDNAは健在であることを思い知らされた。両社が協業の話し合いを始めたのは昨秋というから、ほとんど即断即決なのだろう。善は急げか。
もう一つ、どうしても確認したいことがあったので質問した。会見場はJR東日本のクラシックホテル「東京ステーションホテル」でも、東急グループのフラッグシップホテル「ザ・キャピタル東急」や「セルリアンタワー渋谷」でもない点だ。
これについて、JR東日本担当者は「お互いの色が付いていないから」と話した。なるほど。
そこでまた考えた。愛は惜しみなく奪うのか、限りなく尽くすのか。色に染まるのはどっちか。何? JR東日本も東急不HDもコーポレートカラーは青? ならばなおさらだ。記者はどっちの青にも染まず毅然として傍観者の「白鳥」の立場を貫くぞ!「白鳥は悲しからずや」と詠んだ牧水は自身が病んでいたらで、白鳥は健康そのものと高校のテストで答えたら×だった。今でも小生の答えが正解だと思っている。
「3億円のマンション」村上選手の誕生日に鍵の贈呈式 オープンハウス
「3億円のマンション」鍵の贈呈式
東京ヤクルトスワローズのトップスポンサーであるオープンハウスグループは2月2日、ヤクルト村上宗隆選手にプレゼントする「3億円の家」は「3億円のマンション」に決定し、鍵の授与式を行ったと発表した。「3億円のマンション」の詳細は公費要されていない。
この企画は、村上選手が2022年シーズン最終戦で本塁打日本記録を塗り替える56号を放ち、史上最年少での三冠王を獲得した偉業を称えるもの。当初は1億円としていたが、荒井正昭社長の一声で一挙に3億円に引き上げられた。
2月2日は村上選手の23歳の誕生日であることから、同社からスペシャルケーキも贈呈された。
◇ ◆ ◇
記者は昨年10月の記事で、「3億円の家」は同社の分譲マンションには該当する物件がなく、戸建ての可能性大と買いたが予想は外れた。
戸建てならこの価格帯の物件は都内ならたくさんあるだろうが、庭があれば草取りが大変だし、ファンに押しかけられたりしたら隣近所に迷惑もかかる。同社が土地を購入して注文もあるだろうが、これとて管理、防犯面の課題は残る。村上選手が難色を記したのか。
マンションだって防犯面の課題はあるが、戸建てほどではない。しかし、都心部にたくさん供給されている高額マンションを同社が買い取るなり仲介して村上選手にプレゼントするとは考えられない。となると、同社の自社分譲ということになるが、現段階ではそれが見当たらない。
ホームページで探したら、目黒駅から徒歩8分の「オープンレジデンシア目黒コート」28戸がヒットした。しかし、最大の専有面積は63.42㎡なので、一人で住むには十分だが、価格は坪750万円としても価格は1億4,000万円だ。設計変更して2戸を1戸にする手はありそうだ。
さらにまた、小田急小田原線・京王井の頭線下北沢駅から徒歩5分の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率150%)に位置する「オープンレジデンシア下北沢」18戸もある。こちらも最大専有面積は74.91㎡。坪単価750万円としても価格は約1億7,000万円。2戸を1戸にしたら予算はオーバーする。
このほか、現段階では村上選手がほしがるような物件は見当たらない。今後供給する物件になるのだろうか。その噂が流れたら購入希望者が殺到…そうなれば予定価格を引き上げて3億円を回収できることになりそうだが…。
いずれにしろ、村上選手は多額の所得税を支払うことになりそうだが、今期年俸は6億円とか。痛くもかゆくもないか。人に貸す手も考えられるが、それではオープンハウスに失礼だ。お金持ちにはお金持ちの悩みはあるものだ。まだ23歳ですぞ。
オープンハウスも広告宣伝費と考えたら安いものだ。
スペシャルケーキ贈呈式
村上選手「3億円の家」プレゼント 現段階で未定 戸建ての可能性大 オープンハウス(2022/10/10)
「社員が明るくなった」川畑社長 旭化成ホームズ オフィスを全面リニューアル
グループ会社を含め社員の連携を生む共用エリア
旭化成ホームズは2月1日、神保町本社オフィスを全面リニューアルしたのに伴うメディア向け見学会を行った。2022年に策定した中期経営計画「2030年のあるべき姿Vision for 2030」の柱の一つである「働く人が輝くHappiness Company」を実現する施策の一つで、今年から在宅勤務、フレックスを織り交ぜ、オフィスはペーパーレス、フリーアドレスとするなどデジタル社会に対応した働き方にシフトチェンジした。
新オフィスは、業務内容に応じて最適な場所を選択するワークスタイルを想定し、ワークスペースはA集中作業スペース、B Phoneブース、C ベースワークスペース、D コラボレーションスペース、Eプロジェクトスペース、F会議室の6つに設定。
同社代表取締役社長・川畑文俊氏は「2030年のあるべき姿からバックキャスティングしたもので、ビジョンが掲げる①お客様から、社会から必要とされるEssential Company②住まいを創る会社から人生を創るLife Design Company③働く人が輝くHappiness Companyの3つの柱のうちの一つを具体化するもの。生産性の向上、グループ会社間の連携強化、社員エンゲージメントの向上につなげていく。席は2割から8割、平均5割を想定している。リニューアルして社員みんなが明るくなったように思う」「各社の役員が同じフロアにいるので、様々な事案を即決できる効果が生まれている」などと語った。
設計・監理・施工を担当したイトーキの営業本部執行役員法人営業統括部長・国領隆氏は「当社は空間設計の提案に力を入れており、今回のオフィスは川畑社長の2030年を想定した熱い思いによって実現した。社員のみなさんには魂を込めていただきたい」と挨拶した。
オフィスは、東京メトロ・都営新宿線神保町駅徒歩1分の千代田区神田神保町1丁目に位置する神保町三井ビルディング4~7階、延べ床面積は約9,547㎡。勤務人員は約1,200名。
川畑氏
概念図(青がA、濃い青がB、紫がC、黄色がD、ピンクがE、赤がF)
Library(ライブラリー)
Phoneブース
ベースワークスペース(小生のようなタバコの臭いがし、キーボードを叩かないと記事が書けず、声が大きい嫌われ者の居場所はあるのか。タバコを吸いなから記事の校閲と思索にふけるために1時間に1度は離籍したらAIに追尾されるのか)
Multi Sofa
◇ ◆ ◇
見学会では、無垢のテーブルと本革の椅子を備えた定員38名の同時通訳室付き大会議室や、「当社らしく華美ではありませんが」(担当者)という足がすくみそうな立派な応接室から、150円から200円のスナック菓子やチョコレートも備えられているCaféスペースまで公開された。
社員が執務中なので写真撮影はできず、声を掛けることはできなかったが、一つひとつのブースはフムフムと納得できるものばかりだった。社長室を見たかったのだが、役員室も含め不可だった。
何が嬉しかったかといえば、RBA野球史最強のチームの象徴である川畑社長が元気だったことだ。コロナの影響か、心なしかお尻の肉が落ちたように思ったが、体形はきりりと締まりスリムになっていた。
読者の皆さんはご存じないかもしれないが、45年間業界を取材してきて、川畑氏ほど立派(主に体格)な方はいない。頼もしい限りだ。相撲を取ったら、短躯頑健そのものの野村不動産の沓掛英二会長に投げ飛ばされるかもしれないが、柔道なら寝技に持ち込み失神させるはずで、ラグビーなら神戸製鋼ラグビー部出身の大和ハウス工業の芳井敬一社長のタックルなどものともせず、引きずったまま牛歩の歩みでトライするはずだ。
そして、控えめに語った「みんな明るくなったように思う」-このフレーズに、リニューアルが半ば成功したことを記者は悟った。
しかし、課題も見つかった。取材の会場にあてられていた6階のStadiumオフィスに入った途端、フェイクの観葉植物が目に飛び込んできた。ここだけかと思ったら、案内された役員フロアの7階を始め4階、6階もすべて緑はケミカル製品だった。
「パーク」(駐車場ではないはず)「パーゴラ」「オリーブ」「ミモザ」などと名つけられたスペースもカラーリングは「調」だった。
リニューアル工事を担当したイトーキの方に聞いたら「われわれが設えたのは全てフェイク。コストもあるが、管理が大変なので…」と話した。「これは書かざるをえません」と川畑社長に直訴もした。川畑社長は「貴重なご意見ありがとうございます。バージョンアップしていきます」と話した。いつかきっと改善されるだろう。
フレーム間仕切り(pergola)
大和ハウス工業のマンションモデルルームの天井に飾られていた本物のポトス
オフィスの観葉植物を定期的に点検する業者から枝葉をタダでもらってペットボトルに入れて育てたポトス。5年以上たつが育ち続けている
〝毒をもって毒を制す〟(季節にはドクダミなどを活ける。小生の記事は時には毒を放つが、ドクダミは周囲に香しい毒をまき散らし、加齢臭も消してくれる)
自然と共生するワークスペース「コモレビズ」実装した「ザ・パークレックス天王洲」(2022/7/27)
間伐材・端材を積極活用 三菱地所ホーム 新オフィス/七夕に愛と死と街路樹を考える(2022/7/7)
素晴らしいの一語 市民に開放を ナイス 本社ビル木質化リノベ/対照的な歩道の雑草(2022/6/27)
積水ハウス「スムフム テラス錦糸町」/往年のRBA野球スター選手が勤務(2022/4/18)
アースカラーの空間演出が見事 積水ハウス「SUMUFUMU TERRACE 池袋」(2022/4/7)
三菱地所の本丸を見た 機能一新 士気高揚 トマト最高 地所が新本社公開(2018/2/12)
年頭所感 「今年のキーワードは〝臨機即決〟」長谷工コーポ・池上一夫社長
明けましておめでとうございます。
昨年は、新型コロナウイルスの影響が残る中、ロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う燃料高や資源高、中国のゼロコロナ政策などによるサプライチェーンの混乱など、激動の1年でした。また、年末には日本銀行による金融政策の修正発表がありました。当社グループの強みであるマンション事業にも大きく影響を与える可能性があるため、今後の動向から一瞬たりとも目が離せません。
国内のマンション市場ですが、今年の販売戸数は首都圏で約32,000戸、近畿圏で約18,000戸と一昨年並みの水準に戻ると見込んでいます。なお、今年も平均価格の上昇傾向は続くと思われます。
中期経営計画「NS計画」3年目となる今期も、連結経常利益850億円の期初目標の達成に向けここまでは順調に進捗しており、期末に向け追い込みを図ります。最終期2025年3月期の経常利益1,000億円と5年間累計経常利益4,000億円の目標達成に向け、長谷工コーポレーションにおいては工事受注案件の積み上げと着実な利益確保、グループ各社においては経常利益300億円の達成が必須です。
また、2030年に連結経常利益1,500億円という長期ビジョン実現に向けて具体的な行動に移す時期になってきました。収益構造の大きな変革に向けて、建替・再開発事業、海外事業は更なる拡大を目指すとともに、グループ各社においては各社ごとの成長戦略と業務効率化へ積極的に投資し、DXによる新たな収益源を創出します。全社的取り組みである「DX アカデミー」は、各社から選抜した 80名のメンバーに専門的な知識を身に着けてもらうフェーズ2が完了しました。各リーダーが学んだことを各社内に展開し、大きなうねりを起こしてもらいたいと思います。
さて、2024年から災害復興などを除き残業時間規制が罰則付きで導入されることが決定しています。建設業界はかねてより他の産業と比べて残業時間が多いとされていますが、24年3月期までに現場作業所の4週8休は着実に達成させなくてはなりません。各部門が密に連携して2025年までに現場の生産性20%アップに向け取り組んでください。
続いて統合報告書についてです。財務情報だけでなく非財務情報や中長期的な企業価値の創造に関して、幅広いステークホルダーへ向けて統合報告書を発行しました。長谷工グループとして脱炭素を中心とした気候変動対応の具現化にも触れています。TCFDへの賛同やSBT認定取得等一定の進展はありましたが、具体的な行動が伴っていなければ、ビジネス上も大きなリスクになります。全員が、脱炭素を意識していただきたいと思います。
今年のキーワードは、“臨機即決(りんきそっけつ)”とします。四字熟語「臨機応変」と「即断即決」を掛け合わせた造語で、世界情勢や外部環境の急変に翻弄されることなく、柔軟かつスピード感をもって対処する。先行きの不安に恐れて縮こまるのではなく、積極果敢に成長に向けてチャレンジしながら、ひとたび環境が変われば素早く冷静に対処してほしいと思います。
今年も皆さんと一緒に力一杯、明るく元気よく頑張っていきましょう。
年頭所感 様々なビジネスモデルの変革に挑戦 三井ホーム・池田明社長
令和5年の年頭にあたり、謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
新型コロナ感染者数が増加と減少を繰り返すなか、社会経済活動は徐々に回復基調にありますが、戸建ての注文住宅市場については、部資材価格の高騰、円安や物価上昇などの外部環境の激変に加え、将来のインフレ懸念による消費マインドの低下等により、厳しい事業環境が続いております。しかしながら、6月に国会成立した「建築物省エネ法」の改正、11月に閣議決定が公表された「こどもエコすまい支援事業」の創設などを追い風に、今年はポストコロナや脱炭素を見据えた住宅や木造施設系建築への新たな需要の活性化が期待されます。
このような事業環境の中、当社はお客さまの「すまいとくらし」へのニーズや価値観の変化、脱炭素社会実現への課題に的確に対応すべく、様々なビジネスモデルの変革に取り組んでおります。
主力の注文住宅事業では、昨年4月、新商品『IZM(イズム)』を発表いたしました。脱炭素社会のモダンデザインを標榜し、ニューノーマルにおける自分らしく、自由で豊かな暮らしを叶える商品として、子育て世帯のお客さまを中心に多くのご支持をいただいております。今後も耐震性・断熱性・耐久性に優れた「プレミアム・モノコック構法」の基本性能はもとより、ZEH等の環境負荷が少ない新商品企画や様々な面での品質向上に努め、お客さまの「憧れ」に寄り添い、一つひとつ丁寧にかたちにする、ハイクオリティな住まいづくりに注力してまいります。
また、賃貸・施設系建築事業では、木造マンション「MOCXION(モクシオン)」の訴求を強化し、昨年11月に三井不動産レジデンシャルと協業で国際的環境認証「LEED認証」を取得予定の木造4階建て賃貸マンション「パークアクシス北千束MOCXION」が着工、その他医療・介護施設等の分野においても主要都市で中大規模の木造施設系建築が竣工するなど、中層・大規模建築の木造化・ 木質化を促進しております。
さらに、10月には三井不動産や三井不動産レジデンシャルとともに、北海道、北海道森林組合連合会、北海道木材産業協同組合連合会と「建築物木材利用促進協定」を締結するなど、今後は当社グループの建築物において、国産木材も積極的に活用することで、2050年のカーボンニュートラルや持続可能なサプライチェーンの構築、林業とその関連産業の活性化による地方創生の実現に貢献してまいります。
三井不動産グループは、&マークに象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連携」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、社会・経済の発展と地球環境の保全に取り組んでおります。当社は、「高品質な木造建築の提供を通して、時を経るほどに美しい、持続可能なすまいとくらしを世界に広げていく」ことを使命と考えており、今後もその取り組みを強化することで、専用住宅や「MOCXION」をはじめとした賃貸住宅、木造施設系建築の普及・拡大に努め、SDGsや脱炭素社会の実現に貢献してまいります。また、リフォーム・賃貸管理などのストックビジネス、北米圏における海外事業の業容拡大を通じて、より一層の飛躍を目指してまいります。
本年も心新たに、持続的な成長に向け真摯に課題解決に取り組んでまいりますので、今後とも変わらぬご愛顧、ご支援賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
年頭所感 「まだ見ぬ新たな価値創造」徹底追求 野村不HD・沓掛英二社長
沓掛社長
野村不動産グループは、2030年グループビジョン「まだ見ぬ、Life&Time Developerへ」を掲げ、昨年より新たな中長期経営計画をスタートしている。その実現に向け、本年より、年8%の高い利益「成長」を達成することが重要である。そのうえで、中長期のターゲットと位置付ける2031年3月期へ向けた「成長」の準備を着実に行う。
事業を取り巻く国内外の環境が大きくが変化するなかで、我々の不動産開発や不動産に関連するサービスマネジメント分野において、まだ見ぬ新たな価値創造を徹底して追求するとともに、成長分野を先見性を持って見極め、挑戦し続ける。
そして、成長著しいアセアン諸国を中心に、人口増や所得の大幅拡大により住宅・オフィス等への需要増が加速する海外におけるビジネスを、真の成長ドライバーとしていく。