わが敬愛してやまない大先輩記者・大越武氏(日本不動産ジャーナリスト会議幹事、上智大学マスコミ・ソフィア会会長、東大和市都市計画審議会委員)から1月22日朝、「本日の朝日新聞朝刊の経済面トップを読みましたか」と題するメールが届いた。
メールは、〝尊大〟な態度など取ったことなどない(と思っている)、徒党を組むのが大嫌いな小生に対して「牧田ご尊台さま」という〝教祖〟扱いのあて名書きに始まり、「その記事の題名は、『外部管理者方式の落とし穴 上』とあり、明日付け以降は『中』か『下』となりますね。この記事は、『外部管理者=管理業者』としていて、ピンボケですね。キチンと『管理業者管理者方式の落とし穴』とすべきでしたね…外部管理者には、弁護士や、公認会計士・税理士、マンション管理士などの第三者の資格を持った専門家集団と、利益相反関係にある管理会社の管理業者の二つがあって、問題は、禁じ手の管理業者が管理者となる方式であって、専門家による第三者管理の外部管理に問題はないのであって、それを混同しておりますね…加えて、鎌野先生のコメントも、問題にメスを入れずに、合法化されるからいいのだというような捉え方をしていて、勉強不足かな…牧田さんの正月記事(大越論文=記者)で、火をつけたみたいで、いよいよ年初から、この問題は燃え上がってきますね。牧田さんのこれからの記事が、ますます注目されてきますね。また、出番がきましたね。フレー! フレー! マキタ!」とあるではないか。
件の記事は、朝日新聞に掲載された「外部管理者方式の落とし穴」という見出しの1月23日「上」と24日付「下」記事で、上下で新聞紙全6段分の分量があり、記者の方(片田貴也)と思われる署名入りだ。
小生もこの記事は読んでいる。見方がやや表層的だが、問題提起はいいと思った。そのままスルーしようと考えていたが、大越氏にここまで言われたら書かざるを得ない。〝書かない〟という選択肢はない。〝書け!〟という命令型だ。最近は加齢によるものか、何かにつけ〝切れ〟〝落ち〟がなくなってきたのだが、暇にあかせて、この管理業者管理者方式とメディアのあり方について持論を披瀝する。
記事の詳細を紹介する余裕はないが、見出しに「外部管理者方式の落とし穴」とあり、「マンション管理組合の運営を外部に委託する『外部管理者(第三者管理)』方式を選んだばかりに、いいようにお金を取られるトラブルが多発している」(同紙)として、〝食い物〟にされた管理組合の事例を紹介しながら、日本マンション管理士会連合会(日管連)の瀬下義浩会長のコメント「管理組合が安心して利用できる取り組みを進める必要がある」を紹介し、警鐘を鳴らす内容だ。
以下、批判的なことも書くが、最初に断っておく。三重県出身の小生は10歳のころから西鉄-西武ファン&アンチ巨人だ。新聞といえば伊勢新聞で、60年安保で樺美智子さんが死亡した黒ベタ白抜きの大見出しの記事はずっと記憶に残った。学生になってから日刊紙はもっぱら朝日新聞で、スポーツ紙も〝アンチ巨人〟の匂いがし、デザインが抜群の日刊スポーツもかつて購読していた。巨人=報知=読売新聞は読まない(マンションの窓ガラス拭きには読売が一番という話を大京アステージの方に聞いた)、日経新聞は仕事(記事)に大変役立つ。数行の記事からスクープ記事を書いたこともある。いま問題になっている産経グループの産経新聞は〝偏向〟しているので読まない(グループの儲けの大半を稼ぐサンケイビルのマンションはいい物件もある)。毎日新聞は1991年に〝腹切り〟してから読まなくなった。新聞はデザインも重視して読む。
なので、以下の記事は、職業柄、小生なりのメディアに対するエールだと受け取っていただきたい。
まず、片田氏(朝日新聞)には申し訳ないが、見出し「外部管理者方式の落とし穴」は大越氏も指摘するように適切ではない。どうして国土交通省は「第三者管理者方式」のほかに「管理業者管理者方式」などという文言を使っているか、読者に伝えるべきだった。
片田氏も朝日も「落とし穴」とは、「大きな失敗や不幸につながることでありながら、うっかり見逃している点」(広辞苑)の意味で使用しているのだろうが、一般的には「人や鳥獣をだまして落とすために地面に仕掛けた穴」(広辞苑)と理解されている。法律に〝抜け道〟〝抜け穴〟はある。だからこそ悪党はその抜け穴の間隙をついて悪事を働く。そうはさせじと、法律はまた〝囲い罠〟のように「等」を多用し、すべてを捕縛しにかかる。
この関係を陥穽(落とし穴)と受け取れなくもないが無謬主義に基づいた法律に〝落とし穴〟はまずない。本文を読んでもらうために大げさな見出しを付けるのは理解できるが…ならば、お前ならどのような見出しを付けるか問われれば、これまた難しい。第三者管理者方式と管理業者管理者方式の区別を説明するのは苦労するはずだ。
トラブルとなった事例だが、これは管理業者管理者方式と直接的には関係ない。区分所有者・管理組合の基本である「建物の管理・維持」と「区分所有者の共同の利益」「建物の価値向上」に取り組まないと、理事会方式だろうと第三者方式だろうとトラブルは防げない。利益相反取引を防止するため、ガイドラインには事前の説明などを業者に課しており、記事には、利益相反に当たる恐れがある事案について事前に説明会を開く必要があるとしながら、「区分所有者の『承認』までは求めていない」(上)とあるが、これは誤り。すべては総会の承認が必要だ。
また、管理業者管理者方式から〝脱出〟し、再生の道を歩み始めたマンションも紹介されている。理事長の奮闘とマンション管理士が第三者的な役割を果たしたのが大きかったようだ。理事長が「抜け出せぬ地獄」と語ったのもよく理解できる。戸数が10戸しかないのに脱出まで2年間もかかったというのは、合意形成がどれほど大変かを物語っている。規約に管理会社名が記載されていたら、規約変更には大変な時間と労力がかかることを事例は示している。
小生も、士業のマンション管理士が安定的な収入を得られる仕組みを構築すべきだとずっと考えているのだが、現状は極めて厳しい。国交省の令和5年のマンション総合調査によると、弁護士やマンション管理士を活用している管理組合はそれぞれ14.5%、13.8%あるが、専門家を「第三者管理者」としている管理組合はわずか3.7%で、専門家を第三者監事として活用している組合は1.1%しかない。
全国に弁護士は約47,000人、マンション管理士は約29,000人いるが、自らが理事として活動するケースはともかく、報酬を得て管理者や監事になっている人は微々たるものであることをこの数値は示している。
なぜかといえば、報酬とリスクを測る天秤が釣り合っていないからだと思う。専門家に報酬を支払える余裕のある組合は少なく、専門家もリスクを考えたら二の足を踏むからだ。管理業者管理者方式を採用する場合、監事に専門家を起用するようガイドラインは求めているが、これはかなり高いハードルになるはずだ。企業・団体の監事のチェック機能が働いていれば、不祥事は激減するはずなのにそうなっていないのと同じだ。
もうこれ以上書かない。小生も管理組合と管理会社はWin-Winの関係を構築できると信じる。小生と大越論文を再録する。読んでいただきたい。今年のマンション管理業協会の賀詞交歓会で、来賓の住宅金融支援機構理事長・毛利信二氏は「今年はマンション再生元年にしよう」と呼び掛けた。
おしまいにしようと思ったら、大越氏から23日、次のようなメールが届いた。
「『なり手不足』を餌にした『住民・市民自治の抹殺』『町内会、自治会の抹殺』につながる『反社会的行動』を業界のリーダー会社がしている…ボクは、『企業の、会社の、法人としての良心は、どこに行ってしまったのか』と、強く訴えたい」
――メディアの皆さん、この大越氏の叫びをどう受け止めるか。いま、国民の生活基盤の基本である衣・食・住の一つである「住」の分野はかつて経験したことがない新たなステージ(高位置か)に突入した。新築マンションは、都心では10坪でも億ションだ。一般的なファミリー層は手が届かなくなった。その一方で敷地規模が20坪未満の狭小住宅は隠花植物のようにじわじわと領域を拡大している。格差社会は拡大する一方だ。アンビシャス・安倍徹夫社長は「苛政の時代」と呼ぶ。
このだれもが経験したことがない社会の、その先導役を果たす住宅・不動産業をカバーする全国紙記者は小生の知る限りほとんどいない(かつて産経新聞の記者の方を取材現場でよく見かけたが、最近は姿を見なくなった)。このリアルの現場を取材しないでどうする。記者自身が情報の発信源にならないと早晩、職はAIに奪われる。
メディアに手厳しい共同通信記者出身の作家・ジャーナリストの辺見庸氏は最近、自身のホームページで、ウンベルト・エーコ「歴史が後ずさりするとき 熱い戦争とメディア」(岩波現代文庫)から引用し、「あるときウンベルト・エーコは言った。「歴史は〈発展〉の方向に進むとは限らない。〈後退〉の方向に〈進む〉ことも考えられる。だからこそ、〈新しい〉ことはすべて〈進歩〉なのだと固定観念的に考えないで、必ず批判的精神、文化的・社会的批判精神をわれわれは行使しなければならない。然り、今まさに歴史は退行している」と記している。
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