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 マンション管理業協会は3月13日、「マンション管理受託動向調査」をまとめ発表、わが国のマンションストックは約604万戸で、そのうち91.1%に当たる約551万戸を同協会が管理しているなどとしている。

 平成26年4月1日現在、同協会会員が受託管理しているマンションは全国で89,390組合、107,289棟、5,505,549戸。5年間で戸数は14.3%増加した。マンションストックに対する受託シェアは年々伸びており、平成26年度で91.1%まで増加した。

 地区別管理戸数では関東がトップで55.0%、近畿が22.3%。都道府県別では東京都25.9%、神奈川14.2%、大阪11.9%、埼玉6.9%、兵庫6.8%、千葉6.8%の順。最低は2,995戸の福井県で0.1%。増減率では対21年比で沖縄が36.9%増加した。東京都は18.2%の増加率。1組合当たりの平均戸数は約61戸。

 

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山根理事長

 「よくぞ空白を埋めまとめられた。(ここに)福井先生を連れてきたかった。残念」-先に開かれた国交省の第10回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)が標準管理規約からコミュニティ条項を削除する方針を打ち出したことについて、マンション管理業協会・山根弘美理事長は3月13日行われた報道陣との懇談会で、このような賛辞とも皮肉とも取れるユーモアたっぷりのコメントを述べた。

 「コミュニティ条項」については過去9回行われた検討会では現場の専門家やオブザーバーが必要性を強調したが、2年半年ぶりに開かれた先の検討会では、区分所有法との整合性、訴訟などのリスクを回避するため条項は削除すべきとしていた。

 こうした方向性が打ち出されたことに対して、山根理事長は「地域の防災など安心・安全の取り組みが盛り上がってきた矢先だったので残念」「財産管理とコミュニティ活動を混同しないようにするようにブリッジをかけるようになってきただけに残念」と2度「残念」と発言し、「新たに出される標準規約は現場では使えない。『標準』にならない。コミュニティ活動に一生懸命取り組んできた組合の反応が心配」と、無念さをにじませた。

 報道陣の質問に答える形で、区分所有法の改正についても触れ、個人的見解として「居住者へのサービスを考えると法律そのものを進歩させる時期かもしれない」と語った。国交省出身の大島宏志・専務理事も私見として「法律改正か新しい法律か、検討もしなければならない」とコメントした。

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 山根理事長は「残念」「心配」などを連発し、検討会の座長を務めた福井氏にも牽制球を投げた。いつも真っ向勝負しか眼中にない記者も〝なるほど、こうした言い方もあるか〟と反省した。前理事長の黒住昌昭氏も寝業師だったが、山根氏も相当なものだ。ことを荒げたところで問題は解決しない。

 しかし、このまま成り行きを静観していいのだろうか。コミュニティ条項の削除は、600万人のマンション居住者とその90%以上のマンションを管理する管理協、さらには売りっぱなしは問題としてコミュニティ形成に力を入れているデベロッパーに対する挑戦でもある。

 山根理事長は「4団体(マンション管理業協会、日本マンション学会、全国マンション管理組合連合会、日本マンション管理士会連合会)と一緒に取り組んできた。思いは一緒のはず」と語ったが、不動産協会を含めて具体的な行動を起こすべきだ。

 このほかにも第10回の検討会で提示された案には見逃せない記述もある。当初頻繁に用いられていた「第三者管理」の文言が消え、理事会やコミュニティ活動などでの飲食についても問題があるとした。つまり、酒はダメということだ。

 最近は原始規約で共用部分での喫煙を禁止する動きが強まっている。酒もダメ、タバコもダメと言ったのはヒットラーではなかったか。異論を封じるのもファッショだ。そんな息苦しい、規約だらけのマンション住まいなど止めたというユーザーが増えないか心配だ。(だが〝理事などやりたくない。資産価値が上がるならいくらでも出して専門家に任せたほうがいい。コミュニティなど真っ平だ〟と考えるであろう富裕層はコミュニティ条項削除に大歓迎だろうし、検討会はそのような層の声に応えるものだろう)

 

 

標準規約からマンションコミュニティ条項が消える?第10回「管理ルール検討会」(2015/2/26)

初の防災訓練に350人習志野市の「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」管理組合(2015/3/1)

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「ヴェレーナ流山セントラルパーク」完成予想図

 日本綜合地所が3月下旬に分譲するつくばエクスプレス線「流山セントラルパーク」駅圏初の分譲マンション「ヴェレーナ流山セントラルパーク」を見学した。全住戸に全開口可能な折戸式のフレキシブルウィンドウやスロップシンク、ウッドデッキを採用した、“オープンエアリビング”や“オープンエアスペースが”付く。

 物件は、つくばエクスプレス線「流山セントラルパーク」駅から徒歩11分、千葉県流山市加二丁目(運動公園周辺地区一体型特定土地区画整理事業区域内78街区1画地他)に位置する8階建て49戸。専有面積は71.08~80.75㎡、価格は未定だが、坪単価は150万円台になる模様。竣工予定は平成28年1月下旬。施工は東京美装興業。

 駅周辺では、千葉県が施行する約232haの土地区画整理事業が進行中で、計画によると人口は平成10年度から34年度までに約21,400人に増やす計画。事業費は745億円。

 事業地内には約17.9haの流山市総合運動公園を整備する。駅前では28年度開業予定の総合病院が建設中。

 現地は第一種住居地域の三方角地で、現地周辺は第一種低層住居専用地域。敷地の南側には住民のコミュニケーションの場となる「ネーブルガーデン」を設置する。設備仕様は御影石のキッチンカウンター、食洗機、ソフトクローズ機能付き引き戸、二重床・二重天井、リビング床暖房などが標準採用されている。

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「オープンエアリビング」(1階)と「オープンエアスペース」(2階以上)

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 物件そのものは評価できる。“オープンエアリビング”についてはこれまでもたくさん書いてきたので多くは触れないが、リビングと一体化した解放空間を設けた商品企画は同社の独壇場だ。今回は2階以上にも全開口サッシ、スロップシンク、ウッドデッキを採用した。さらに、設備仕様レベルも水準以上。

 問題は街の具体的な将来像がまだ見えてこないことだ。今回のマンションが流山セントラルパーク駅圏で初めてということに象徴されるように、現地周辺は開発中という状況である。

 しかし、将来の街づくりついては期待していいだろう。流山市の井崎義治市長が街づくりに並々ならぬ意欲を示しているからだ。流山おおたかの森とは一味違った緑豊かな街づくりを推し進めるのではないか。

 この街の将来性を見込んで総合的に評価すると割安感のある坪単価と見た。同駅圏では三井不動産レジデンシャルが来年、駅から数分で350戸前後のマンションを分譲する。市況にもよるが坪180万円近くなるのではないか。

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る「ネーブルガーデン」

 

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「パークホームズ金沢八景ステーションベイフロント」完成予想図

 三井不動産レジデンシャルが第1期の登録申し込みを開始した「パークホームズ金沢八景ステーションベイフロント」を見学した。物件名にあるように、「駅近」と「ベイフロント」の再開発マンションだ。

 物件は、京急本線金沢八景駅から徒歩3分、横浜市金沢区瀬戸に位置する10階建て全119戸(販売戸数は116戸)。第1期(89戸)の専有面積は63.79~101.94㎡、価格は3,880万~8,280万円(最多価格帯4500万円台・4700万円台)。竣工予定は平成28年02月下旬。施工は鴻池・淺沼建設工事共同企業体。

 すでに3月7日(土)から登録申し込みが始まっており、締め切りは3月14日(土)まで。来場者は地元金沢区を中心に約500組にのぼっている。

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 金沢八景のマンションを見学するのは4年ぶりだ。前回は東急不動産の「ブランズ金沢八景」だった。ちょうど東日本大震災の後だったので、海に近いことが販売面でマイナスになるかとも考えたが、そんなことはなかった。早期完売した。

 この4年間で大きく変わったのは、駅前の再開発がかなり進んでおり、おぼろげながら街の将来像が描けることだ。

 駅東側の約2.4haでは、横浜市の施行による土地区画整理事業が行われており、事業期間は昭和61年度~平成28年度。駅前広場を整備するほか、金沢シーサイドラインの金沢八景駅までの延伸、駅西側への通路、京急駅舎の橋上化なども行われる。

 街区は全体で1~5街区に分かれており、すでに1街区ではパチンコ屋が完成しており、同社が分譲するのは第2街区。第3から第5街区については現段階で具体的計画が決まっていない。総事業費は約91億円。

 今回の物件は価格が若干上昇しているが、建築費の上昇、区画整理事業の進ちょくを考えるとリーズナブルなものではないか。第1期で89戸も供給できることからも、ユーザーに評価されているようだ。北東向き住戸の中層階からは平潟湾が望める。

 第3~第5街区に何が建つかによっても街の評価は異なってくるだろう。スピードアップが期待される。

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 三菱地所は3月6日、賃貸マンションブランド「PARK HABIO(パークハビオ)」の45物件目となる「PARK HABIO 赤坂タワー」(全212 戸)が同日竣工したと発表した。2004 年の賃貸住宅事業の開始以来、累計50 物件、約4,300 戸となる。

 「PARK HABIO 赤坂タワー」は、東京メトロ千代田線赤坂駅から徒歩3分。専用面積は21.96~57.56㎡。賃料は12.1万~31.4 万円/月(管理費別)。

 端正で清潔かつ透明感のある外観デザイン、白と黒を基調にしたモダンなエントランスを備え、スカイラウンジ(17 階)、ジム(2 階)などの共用施設も設置。都心のアクティブな暮らしを志向する単身~DINKS の入居者のニーズに応える。

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「江古田三丁目地区(A・C街区)」完成予想図

 積水ハウスは3月5日、都市再生機構(UR都市機構)と協働して中野区「江古田三丁目地区(A・C街区)」の公務員住宅跡地で子育て世帯向け賃貸マンション、多世代向け分譲マンション、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、有料老人ホーム、保育所などを整備し、子どもを軸にした持続可能な街づくりを進めることで合意したと発表した。

 計画地は、広大な「江古田の森公園」に隣接した「江古田三丁目地区」(約4.4ha)の一角。A、B、C街区のうちA街区(約1.7ha)は同社が14階建て分譲マンション532戸を建設し、C街区(約1.5ha)は同社がUR都市機構から一般定期借地として借り受け、賃貸マンション260戸、学生寮130室、サ高住122戸、介護付き有料老人ホーム100室を建設。このほか認可保育所、学童クラブ、コンビニ、レストラン、地域住民の活動拠点なども整備する。B街区には夜間・休日診療、病児・病後児保育機能を備えた医療法人による医療施設が建設される予定。

 今後、同社、UR都市機構、医療法人で「江古田三丁目地区まちづくり協議会」を発足させ、平成28年4月頃に着工、平成30年の竣工を目指す。

 A、C街区は、UR都市機構が企画提案と価格を総合的に評価する総合評価方式で公募したもので、応募した4者の中から同社が選定された。伊藤滋・東大名誉教授が事業企画審査委員長を務めた。

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 記者がこのニュースを知ったのは、翌日の6日に行われた同社恒例の決算・事業計画説明会の会場だった。リリースが配布されていた。

 阿部俊則・代表取締役社長兼COOは駆け足で決算、事業計画について説明した後、このプロジェクトに触れた。「これは画期的なこと。当社のグループ力の成果。これからの街づくりのモデルケースにしたい」とスタッフの労をねぎらい、同時に「記事にしていたのは1社くらい。皆さんの見解が聞きたい」と、あまり報じられていないことに不満も漏らした。

 記者は、関心がないどころか「さすが積水」と提案力に喝采を送った。阿部社長が話をしている間中ずっと〝どんな街になるのか、分譲はいくらになるか〟を考えていた。他の話はほとんど聞いていなかった。この種の複合プロジェクトは都心部では似たものがあるが、準都心部では初めてではないか。地域再生・活性化のモデルケースにもなるはずで、同社が他社を大きくリードしたのは間違いない。

 さて、分譲の価格。UR都市機構の意向を考え価格は抑制するとみた。そこで「坪単価は〇〇〇万円くらいでどうですか」と聞いたら、阿部社長は「言えないが、いい線だ」と話した。記者の予想通りだったら申し込みが殺到するはずだ。隣接する江古田の森公園などと合わせると全体で10haくらいの複合タウンになる。

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「クリオ東小金井パークフロント」完成予想図

 明和地所が3月下旬に分譲する「クリオ東小金井パークフロント」を見学した。再開発が進むJR中央線東小金井駅北口から徒歩2分、南向きの住戸の目の前が公園と広場で、後背地は戸建て住宅街という一等地に立地。人気を呼ぶか。

 物件は、JR中央線東小金井駅から徒歩2分、小金井市梶野町5丁目に位置する8階建て全89戸(分譲61戸、非分譲20戸、非分譲事務所6戸、非分譲店舗1戸、管理事務室1戸)。専有面積は53.87~102.34㎡、価格は未定だが、坪単価は300万円前後になる模様。入居予定は平成28年4月下旬。施工は大和小田急建設。

 駅北口前は交通広場となり、その次が公園、そして歩道を挟んでマンション敷地。駅まで遮るものが一切ない。区画整理事業完了が2020年で、街並みが整うまで時間があり、将来像が描きづらいが、間違いなく駅前のランドマークマンションになる。

 建物はL字形で、1階が店舗、2階が住戸と事務所。リビング・ダイニングの天井高が4mのロフト付タイプや屋上ルーフバルコニー付きのプレミアム住戸もある。

 設備仕様はディスポーザー、食洗機、ミストサウナが標準装備で、キッチンカウンターはフィオレストーン、全戸玄関窓付き。スマートマンション認定も取得している。

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 現地をみてびっくりした。間違いなく一等地だ。坪単価は300万円をはるかに突破するのではないかと予想したが、それほど高くならないようだ。

 来場者の中には、同社が20年近く前に三鷹駅北口で分譲し人気を呼んだ全戸100㎡でディスポーザー付きの「クリオレミントンハウス武蔵野」102戸のような物件になるのかという質問をする人がいたそうだ。あの業界を驚愕させた「武蔵野」の物件に近いものをユーザーも願っていたのだろう。記者も当時の記憶が一挙に蘇った。

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 同社は来期で創業30年目を迎える。現在新たなコーポレートステートメントを準備しており、4月には発表したいとしている。その意気込みに期待しよう。当時の同社のDNAは生きているはずだ。

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「スカイフォレストレジデンス」

 住友不動産の業務・住宅・多目的ホールで構成される「新宿スカイフォレスト」のマンション棟「スカイフォレストレジデンス」が竣工し、報道陣に公開された。

 物件は、JR山手線高田馬場駅から徒歩6分、新宿区大久保3丁目に位置する26階建て全361戸。専有面積は41.86~81.74㎡、価格は5,000万円台前半から8,000万円台後半。坪単価は380万円。住戸プランは3LDKが中心で、コンパクトタイプは70戸。引き渡しは平成27年3月。施工は大林組。

 昨年3月から分譲されており、これまで197戸が契約済み。契約者の住所は新宿区が約34%、豊島・中野・杉並・練馬区が約20%、その他東京が約26%、年齢は40歳代~50歳代が約49%、20歳代~30歳代が約37%、入居予定は0~1人が約33%、2人が約35%。購入動機で投資用というのはほぼ2割という。

 購入者に評価されたのは、山手線内側の都心立地に、戸山公園近接の豊かな緑と交通の利便性、文教エリア、免震構造の安心性など。

 全体竣工は来春。オフィス棟の入居も3割くらい決まっているという。オフィス棟の上層階には賃貸住居も併設される。

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エントランス

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 この物件については分譲開始時にも記事にしているのでそちらを参照していただきたい。率直な感想を言えば、よく売れていると思うし、隣接するオフィスビルとお見合いする一部北側のコンパクトタイプを除けば、南東から南西にかけての眺望がすばらしい。

 投資用に購入した人が2割くらいというのも納得だ。分譲当初は同社の池袋の「グランドミレーニアタワー&スイート」と比較されたが、記者はこちらのほうが立地に優れているし、単価的にも高くなると読んでいた。その通りで、分譲開始時の単価は「池袋」が340万円くらいで、「高田馬場」は360万円くらいだった。現在は約20万円高くなっているが、これから都心部の高値のマンションが続々供給されるので、いまとなっては安いくらいか。今後は、期分けごとに単価が上昇する局面もあるかもしれない。

 都の総合設計制度の適用を受けているので、公開空地などの緑がよく整備されているのも特徴の一つだ。

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用地取得から9年…「スカイフォレストレジデンス」分譲へ(2013/10/14)

 

 

 

 

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 旭化成ホームズ「マンション建替え研究所」(向田慎二所長)は3月4日、マンション建替え円滑化法改正後の展望と高経年マンションのコミュニティをテーマとした「第4回目メディア懇談会」を行った。多数のメディア関係者が参加した。

 第一部では、阪神・淡路の被災マンションの再生や建て替えなどに詳しい弁護士の戎正晴氏(戎・太田法律事務所、明治学院大学法科大学院教授)と同研究所・大木祐悟主任研究員が「マンション建替え円滑化法改正後の展望と課題について」パネルディスカッションを行った。

 昨年12月24日に施行された円滑化法の「マンション敷地売却制度」は、マンション敷地の買受人をあらかじめ決め、特定行政庁から「要除却マンション」認定を受けたうえ、敷地売却決議-敷地売却組合の設立-不参加者に対する売渡請求-分配金取得計画の決定-組合がマンション敷地の権利を取得-買受人に敷地を売却-買受人がマンションなどを建設-するもので、手続きが簡素化され、一気通貫で敷地売却-建て替えができる制度として注目されている。一定の要件を満たせば、容積率が最大1.5倍まで緩和される。

 一方で、自治体によって建築物の絶対高さ制限、接道制限、公開空地、外壁の後退距離などを定めた総合設計制度などにより、容積率の割り増しを受けてもマンションは建てづらいなどの報告もされた。店舗などの借家人への補償、団地型は不可などの問題も残されていると戎氏は語った。

 第二部では、同社が参画した建て替えマンションの事例を基に「高経年マンションの区分所有者とコミュニティの高齢化」について向田氏と同研究所・杉山直美氏が報告した。

 区分所有者の平均年齢は60歳以上が70.7%(70歳以上は41.9%)で、従前の空き家率は24%、単身世帯は41%など、多くの問題点を抱えていることが語られた。

 建物の解体までに少なくとも8回くらいの説明会が行われ、女性スタッフなどによる高齢者などへの個別サポートは数えきれないほどという苦労話も杉山氏は話した。

◇       ◆     ◇

 マンション敷地売却制度は、業界からも「画期的」制度として歓迎されたが、記者は冷ややかに見てきた。すんなり決議ができればいいが、様々な思惑が交錯し5分の4の賛成を得るのも容易でない。しかも、容積率が割り増しされて、高さ規制も日影規制も用途規制もなく、なおかつ居住性の優れたマンションが建つ案件は都心の商業地くらいにしか残っていないのではないか。

 個人的には不参加者に対する売渡請求の金額算定にも問題があると考えている。請求額は素地価格から解体費用などを除いた額となるようだが、敷地を売却することによって二束三文の価値しかなかったマンションが建て替え後は数倍に跳ね上がるわけだから(そうならないケースもあるが)、その利益も考慮していいような気がする。

 例えが適当かどうか分からないが、囲繞地とよく似ている。公道につながっていない囲繞地はそれこそ何の価値もない。資材置き場か畑にしかならない。しかし、公道につながる土地の所有者(不参加者)から土地を買収できれば相場の数倍のお金を払ってもいいケースはたくさんある。その意味で、不参加者の意向は事業の成否のカギを握る。

 と、ここまで書いたが、この問題は解消されるようだ。つまり、補償額は建て替え後の価値が上昇することを想定して算定されるので、不参加者の不利益にはならないということだ。記者の不勉強だった。

 もう一つは、従前と比べ価値がそれほど上がらない修繕はともかく、新築の8掛けくらいに価値を上げられる改修もこれからは大きな選択肢になるということだ。

 好例を紹介する。青木茂建築工房がリファイニング建築手法を用いて設計・監修を担当した再生マンション「千駄ヶ谷緑苑ハウス」の解体現場見学会には行政、不動産、設計事務所、研究者ら約300人が押し寄せた。マンションは相場の8掛けくらいで早期完売した。

 同工房は近く「笹塚」の見学会を行うが見学申し込みが殺到したため、申し込みを途中で打ち切った。ここも設計図書などない古い建物だという。取材してレポートしたい。

 第二部では杉山氏の話が興味深かった。同社の建て替え事業が他社よりぬきんでているのは、そうした裏方の合意形成にいたる努力があってこそではないかとずっと思ってきた。裏方の取材はできないものだろうか。

 

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防災訓練

 千葉県習志野市の大規模マンション「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」管理組合は3月1日、竣工・入居開始後初めての防災訓練を事業主の三菱地所レジデンスと管理会社の三菱地所コミュニティのサポートを得て行なった。同マンションは三菱地所レジデンスが売主の2013年6月に竣工した総戸数721戸の規模。この日はかなりの雨が降り寒かったが、午前、午後の部をあわせて約160世帯350人が参加した。

 訓練開始は9時30分(午後の部は1時)。「震度6弱の地震が発生しました。ガラスやタイルなどが落下する恐れがあり危険ですので、慌ててマンションの外へ逃げないでください。カフェラウンジに災害本部が設置されました。これより安否確認を実施いたします。各住戸の玄関扉に『安否確認シート』を貼り、自宅で待機してください」のアナウンスが各住戸と敷地内共用部分に流れた。

 管理組合オリジナルの「防災計画書」に基づき、A~D棟それぞれ5名の理事と三菱地所コミュニティの担当者が階別の安否確認シートに確認した後、参加者は1階に集合。市消防署から消火栓の使い方やマンホールトイレの設置方法を学んだほか、「被災生活ワークショップ」、「防災セミナー」などを行なった。

 防災担当の理事、安部修氏(40)は「購入したのは震災後で、耐震性や災害時の対応が問題になっていたとき。理事になって2年目だが、自分たちでつくった防災計画書を実際に動かしてみようと行なった。問題なくこなせた。すごく勉強になった」と話し、同じ防災担当の吉野修史氏(35)は、「わたしも初めてのマンション居住。仕事以外で幅広い年齢層の方々と話す機会が増えておもしろい」と理事会活動について語った。

 訓練に参加した長崎守男氏(67)は、「これまで約35年間、分譲と賃貸を合わせ2,000世帯もある大規模なマンションに済んでおり、理事長も自治会長も経験している。震災で液状化も経験した。管理組合は個人情報の問題もあり災害時には活動に限界がある。自治会では高齢者などがどこに住んでいるのか把握しているので、大きな力になる」と話した。

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消火訓練

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安部氏(左)と吉野氏

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 先週末、国交省の第10回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」が、マンション標準管理規約のコミュニティ条項を削除する方向を打ち出した直後のマンション防災訓練の取材だったので、とても興味があった。

  ここでは、いったいどこまでが管理組合の活動か自主的な住民の活動かは問わないし、線引きなどできないはずだ。生きるか死ぬかの災害時に法がどうとかなど言っていられない。家族の安否確認ができたら、ほとんど全ての人は隣近所の住民のことを考えるはずだし、近所づきあいがなければ隣のドアを叩くことすらためらうのではないか。

  ところが、「検討会」は任意団体の自治会活動は区分所有法上問題があるとして、明確に区分すべきという方向性を示した。この見解に疑義を挟まざるを得ない。別掲の記事も是非読んでいただきたい。以下に再度問題点を指摘したい。

 「検討会」に聞きたいことがいくつかある。

 まず、どうして2年6カ月間の空白があるのか。国交省の事情か委員の事情か、これははっきりさせなければならない。後回しにしていい課題ではなかったはずだ。

 もう一つ。当初、検討会の委員は6名だった。ところが途中から1人減った。第10回の会合では5人になっているから、補充はされていないはずだ。どうして1人減ったのか、議事録にはその記載はない。

 委員の増減決定は誰の権限でできるのか。欠格条件はあるのかないのか。検討会の規約第3条(委員等の任命)には「検討会の委員は、学識経験のある者のうちから、国土交通大臣が任命する」とあるから権限は国交省にあるようだが、その委員はどうして委員でなくなったのか、委員が一人減ったことは答申に影響を与えたのかどうか聞きたい。

 さらにもう一つ。10回目の会合では「第三者管理方式」という文言は出ていない。最初の会合で「第三者管理という言葉は、管理組合と管理会社と結びつくイメージが強い。名称を変えたほうがいい」という意見が出されたが、この声の影響はあるのかどうか。

 さて、これからが本題。最終的な答申がどうなるか分からないが、少なくとも標準管理規約から「コミュニティ条項」は削除される方向が示され、第三者管理方式に大きく道を開くことになるのは確実のようだ。

 旗幟を鮮明にしておく。記者は管理組合の財産管理とコミュニティは車の両輪と考えている。いずれかが機能しないと健全なマンション管理運営はできないと思っている。機能不全を起こしているマンションに対しては、救いの手を差し伸べるべきだが、他方で、コミュニティ活動を萎縮させるような今回の案には承服しかねる。

 そこで、考えたい。第三者管理方式を導入することでだれが得をするのか損をするのか、コミュニティ活動をけん制することがどのような影響を及ぼすかについてだ。思いつくままに書く。

 手間も暇もかかるのにお金にならないコミュニティ形成に専門家は関わろうとはしないしできない。専門家に出来るのは法の定めに従い粛々と事務的にことを進めることだ。

 報酬がどうなるか分からないが、常識的には月額5万円から10万円くらいではないか。これなら10件くらい受託できれば専門家としてのプライドを満たし生活もできてゆくだろう。

 そうなれば、〝俺がやりたい〟と組合員である入居者が管理者として名乗りでるかもしれないが、仮にその人が専門家の資格を持っていても、「利益相反」「欠格要因」に該当する可能性が大きい。よってそれは不可だろう。

 管理会社はどうか。これも「利益相反」が大きな壁になりそうだ。検討会委員の中には、管理会社をプリンターとトナーの関係と同じ(つまり、プリンターのリース料を安くして、トナーなどの維持管理費で儲けるというたとえ)と語ったほどだ。検討会は管理会社が管理人になることに足かせをはめるだろうし、管理会社も受けたがらない。痛くない腹を探られるのが怖いからだ。

 となると、第三者管理方式の採用で儲けるのは自ずと限られてくる。問題は、管理組合が報酬を払えるかどうかだ。富裕層向けや投資向けにはピッタリかもしれない。自分が理事になることもないし、財産をきちんと管理してくれればそれ相応の報酬を支払うことに何のためらいもないはずだ。

 検討会の委員の方へ。今回、コミュニティ条項を削除する方向を打ち出したことの意味を皆さんはよく考えたのか。

 分からないでもない。記者は組合員として理事として20数年間マンション管理に関わってきたが、いつも考えるのは「これは本来の法に基づく活動かどうか」「コミュニティ活動は法の趣旨に逸脱した活動だ。もし事故が起きたら誰が責任を取るのか」-これは多くの居住者が考えていることだ。この悩ましい問題に皆さんは正面から受け止めず、結局〝悪法も法なり〟と法を最優先した。しかし、皆さんの役割はあれやこれや評論することではないはずだ。財産管理とコミュニティをどう両立させるか、その隘路を解き明かし、解決策を提示することにあるのではなかったか。

 今からでも遅くない。考え直していただきたい。生きるか死ぬかの緊急時、専門家はほとんど役に立たないと断言できる。この日、三菱地所レジデンスからは約35人、三菱地所コミュニティからは約25人、合計約60人が応援のために駆けつけた。どこのデベロッパーも管理会社もコミュニティこそが非常時に大きな力を発揮することが分かっているからこそ必死で取り組んでいる。

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安否確認シール(左)と全世帯に配布されている防災リュックとその中身

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「被災生活ワークショップ」(トイレの問題は軽視できないこと、個人情報保護が非常時には師匠になることなどが話しあわれた)

標準規約からマンションコミュニティ条項が消える?第10回「管理ルール検討会」(2015/2/27)

 

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