東京建物〝プラウド〟に挑戦状 ほぼ同じ単価で「日本橋三越前」
「Brillia 日本橋三越前」
「Brillia THE TOKYO YAESU AVENUE」と同じビルにモデルルームを設けた東京建物「Brillia 日本橋三越前」を見学した。
物件は、東京メトロ銀座線三越前駅から徒歩6分、または東京メトロ日比谷線小伝馬町駅から徒歩2分、中央区日本橋本町3丁目に位置する12階建て44戸。専有面積は51.21~72.75㎡、価格は未定だが、坪単価は380万円強になる模様。竣工予定は平成28年10月下旬。施工は飛島建設。販売開始は6月下旬。
現地は、先に完売した野村不動産「プラウド日本橋三越前」と目と鼻の先。元問屋街の一角。
リビング・ダイニング
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同社の女性を中心とした商品企画プロジェクトチーム「Bloomoi(ブルーモア)」のアイデアがふんだんに盛り込まれたマンションだ。意表をつく提案が随所に施されている。
まず、「おそうじ浴槽」。浴槽に洗剤入れが付いており、洗剤を入れるだけで自動的に浴槽を洗う機能付きのものだ。担当者の話をよく聞いていなかったので、てっきり浴槽に浸かるだけで身体を洗ってくれるノーベル賞級の発明かと思ったが、そうではなかったのは残念だが、これはいい。主婦(主夫)の家事労働の負担を軽減してくれる。どこのメーカーか知らないが、ここまでやるなら浴室全体を自動的に洗う商品を開発すべきだ。
プレミスト機能付きの便座もいい。便座に座るだけで便器にミストが噴(糞?)霧され、汚れが付きにくいものだという。これも掃除する人でないとそのよさは分からないはずだ。
部屋干しスペースにもなる床に人工芝を張り、天井に物干しポールを設置したコンサバトリー(サンルーム)も業界初の提案だろう。パターの練習もできる。
これらよりすごい提案は、土間スペースの提案だ。狭い空間に多目的に利用できるスペースを確保した大胆なアイデアがいい。
もう一つ、玄関から直接キッチン、居室、趣味室に入れるよう工夫したプランもいい。逆梁を巧みに利用してカウンターをキッチン、リビング、居室に設けているのもなかなかのアイデアだ。
ただ一つ気になることがある。最近の若い女性の間にはお酒を飲みながら調理をすることが流行っていると「Bloomoe(ブルーモア)」の責任者から聞いたが、これって単なる〝キッチンドランカー〟ではないのか。酒を飲みながら調理したら味など分からなくなるし、アル中にならないか。記者はそんな女性を何人も知っている。
野村不動産の「プラウド日本橋三越前」に勝てるかどうかは書かない。これはユーザーが判断することだし、そんなことを書いたらそのうちにマンションの取材などできなくなってしまう。
キッチンからリビング・居室の方向
驚!問い合わせ4500件突破 「プラウド日本橋三越前」(2015/2/27)
東京建物 東京駅徒歩圏の「TOKYO YAESU」は坪450万円
「Brillia THE TOKYO YAESU AVENUE」
東京建物は4月24日、東京駅徒歩圏初のタワーマンション、旧キリンホールディングス本社跡地プロジェクト「Brillia THE TOKYO YAESU AVENUE」と、同社の女性社員が中心の商品企画チーム「Bloomoi(ブルーモア)」の声を反映させた「Brillia日本橋三越前」のモデルルーム見学会を行った。
双方とも見どころいっぱいのマンションだが、「日本橋三越前」より「東京駅徒歩圏初」の話題性と駅力に敬意を表して前者から先に紹介する。
「Brillia THE TOKYO YAESU AVENUE」は、JR東京駅から徒歩16分、またはJR京葉線八丁堀駅から徒歩1分、中央区新川2丁目に位置する30階建て全387戸。専有面積は40.93~120.08㎡、価格は4,000万円台~2億円台、坪単価は450万円の予定。設計・施工は三井住友建設。管理は東京建物アメニティサポート。竣工予定は平成29年11月上旬。事業主は同社(事業比率80%)のほか三菱地所レジデンス(同20%)。
物件の特徴は、何と言ってもまず東京駅から歩ける初の大規模タワーマンションであること。敷地面積は約3,000㎡。総合設計制度の適用を受け、地区の建築物の高さ規制(38m、または50m)を大幅に超える100mを実現。敷地の約50%を公開空地とするとともに、1階の外壁の半分近く約200㎡を壁面緑化した。建物は免震工法を採用している。
昨年12月から物件ホームページを開設しているが、これまでに中央、港、江東区居住者を中心に資料請求は約5,000件にのぼり、4月25日のモデルルーム見学予約数は1,000件を突破している。
コンパクトタイプは10%くらいで、海外からの投資は少ないという。「目黒」との競合もあまりないというのもうなずける。需要層は異なるはずだ。
エントランスロビー
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まず、坪単価から。記者は同社の「目黒」が坪600万円と聞いてから羅針盤を失った船のように相場観が狂ってしまった。
なので自信はないが、見学前は坪480万円と予想した。「東京駅徒歩圏」と考えれば「目黒」をはるかに上回るだろうが、「八丁堀駅圏」とみれば、他の中央区の晴海などのタワーマンションと比較すればそんなに高値は付けられないし、同社はそこまで強気の価格設定はしないと読んだ。
さて、本日の見学会。28階、29階の100㎡以上(18戸)プレミアム住戸でも坪単価は600万円、平均で450万円というのは新価格ではあるが、記者予想を下回った。相当安いと思った。
規模が異なり、ランドスケープが素晴らしい「目黒」とは単純比較はできないが、住戸の設備仕様はこちらが上だと思った。キッチン天板はアフリカ・アンゴラの貴重な御影石「ステラブル」で、バックカウンターも標準装備。リビングドアなどは突板の浮造り仕上げ。天井高は2600㎜以上。他の標準タイプもキッチン天板はカナダの「カレドニア」御影石を採用しており、全体的にグレードは高い。
キッチンも特徴の一つ。「Bloomoi(ブルーモア)」とキリンビールの女性社員とが「働く女性がもっと幸せになる住まい」グループインタビューを実施して編み出したのが「お酒が楽しめる空間」だ。3種のプランが提案されていた。バックカウンターも3種とも無償でセレクトできる。
これは取材する時間が少なかったのでよく分からなかったが、女性も「(調理をし)ながら飲む」のが流行っており、その空間を提案したという(キッチンドランカーとどう違うのかは不明)。そのうちの「スマートスタイル」は天板の立ち上がりを30㎝強とり、様々な調理アイテムが収納できるように工夫されていた。これはいい。
共用部分のデザインでは、今をときめく今井敦氏や2016年竣工の銀座松坂屋再開発「銀座6丁目プロジェクト」の使用行施設の内装デザイナーに決定しているグエナエル・ニコラ氏などを起用。力が入っていることが伝わってくる。
壁面緑化
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「丸の内」と言えば三菱地所であるように、「八重洲」と言えば東京建物だ。お膝元であるだけに、相当力が入っていることが伝わってくるマンションだ。それを示す余談をいくつか。
まず、壁面緑化。200㎡という面積がどの程度のものか示すデータはないが、仮に高さを2mとすると100mだ。これほど大きい壁面緑化を施したマンションはまずないはずだ。
販売センターは、グエナエル・ニコラ氏がデザインしたエントランスロビーをそのまま再現したもので、これもなかなかいいのだが、記者が驚いたのは報道陣にふるまわれたお茶だった。
どこのマンション見学会でもお茶や水がふるまわれ、たまに「ボルヴィック」「エビアン」なども出されるが、ほとんどはペットボトルだ。今回もお茶のペットボトルだったのだが、いつものとはラベルが異なっていた。「キリン別格日本冠茶」(かぶせちゃと読むそうだ)とあった。
記者は普段ペットボトルのお茶など飲まないし買ったこともないので、このお茶がどのようなものか全く分からなかった。すでに1.8キロ入りの水のペットボトルくらいはありそうな重いパンフレットをもらっていたので持ち帰るのも嫌だったが、いくらするのか調べようと持ち帰った。若い女性にあげたので飲まなかったが、普通のお茶の1.5倍くらいの216円だった。
マンション建築費は数年前と比べ1.5倍くらいに上昇しているが、まさか同社はこのお茶の上昇分を分譲価格に上乗せしていないだろう。単価の安さからすれば、ひょっとしたらキリンからただでもらったものかもしれない。
そういえば、おなじみずほグループの大成有楽不動産の「品川勝島」マンション見学会では〝“コーヒーメーカーのフェラーリ〟と呼ばれる「LA-CIMBALI(ラ・チンバリー)」で淹れたコーヒーを頂いた。マスコミ対応でも双方は競っているのか。
ゲストルーム
伊藤忠都市開発 親子隣居を可能にした「アウタールーム」を「大船」に採用
「クレヴィア大船」完成予想図
伊藤忠都市開発が先にニュースリリースした、新しいバルコニー空間「アウタールーム」を導入している第一弾マンション「クレヴィア大船」を見学した。すでに1組のお客さんが購入希望とか。親子隣居のニーズはあるはずで、他のマンションでも採用できそうだ。
物件は、JR京浜東北線・根岸線本郷台駅から徒歩11分、横浜市栄区笠間五丁目に位置する5階建て全59戸。専有面積は64.05~74.86㎡、価格は未定だが坪単価は200万円強になる模様。竣工予定は平成28年2月下旬。施工は石黒建設。販売代理は伊藤忠ハウジング。
「アウタールーム」とは、一般的なマンションのバルコニーは奥行き約1.8~2.0mで、隣の住戸との間には隔て板を設けているのに対し、図のように隣り合う住戸のバルコニーの隔て板を設置せず、双方の住戸をバルコニー空間でつなぐというもの。これにより、親子世代の「つかず、離れず」の関係が保たれるという。
今回採用するのは、最上階タイプの6戸3組。モデルルームにも採用しており、バルコニー面積は幅約2.7m×奥行き約3.25m。双方を繋ぐと約17.55㎡(5.3畳大)の空間になる。
設備仕様は、食洗機、ミストサウナ、床暖房が標準装備。
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この種の隣居型提案は真新しいものではない。記者がよく覚えているのが、東急不動産がバブルのころに分譲した「プレステージ磯子」だ。1戸1億円以上した。分譲開始後バブルがはじけ、販売には苦労したはずだ。
もう一つは、20年くらい前に洋伸不動産が分譲した「フォルスコート武蔵小杉」がそうだったと記憶している。全20戸と規模が小さかったが、隣り合う大小の2戸をワンセットで分譲したはずだ。
今回の物件は、隣り合う住戸が同じ広さで、反転タイプとなっている。親子世帯が住むと仮定すると、一方はもっと狭くてもいいのではないかと考えるがどうだろう。
単価的には割安感があるのではないか。大船駅前の再開発では東急不動産が約250戸のマンションを建設するが、坪単価は300万円くらいになるのではないか。それと比べれば、バス便だが相当安い。来場者も「安い」と感じているようだ。
国交省の「検討会」とは雲泥の差 都のマンション部会での審議内容
東京都は昨年、住宅政策審議会にマンション部会を立ち上げ、8月から今年1月にかけ7回の会合を開いている。部会長は齊藤広子・明海大教授で、部会長代理は篠原みち子・弁護士。このほか委員が8名、それと不動産協会、マンション管理業協会、首都圏マンション管理士会などの専門委員8名から構成されている。
部会は非公開だが、その都度、議事録が要約の形で公表されている。国交省には失礼だが、「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」とは中身が雲泥の差。変なことをしゃべれば、齊藤氏か篠原氏に一喝されるだろうから、男性委員も慎重にならざるを得なかったのではないか。議事録の一部を紹介する。
<管理状況の把握について>
◎マンションの実態がわからないと、講じるべき支援策など対応しづらい。任意のアンケートで把握しきれないとなると、例えば条例で、都の調査権限を位置づけた上で、豊島区のように届出義務を設け、情報を把握する必要があるのではないか。
<管理不全マンションへの対応について>
◎管理状況が悪いマンションは周辺の市街地環境に大きな影響を与えかねないが、その中には、建替えや解消により問題が解決するものもあれば、その道すら開かれず、管理を相当一生懸命行うしかないマンションもあるので、議論の対象となるマンションをもう少し絞った方がいいのではないか。
◎管理状況が悪いマンションがどの程度あるのか把握することは難しい。管理不全に陥る前、例えば管理規約も見直さず、修繕もきちんとしていない、修繕の仕方もわからないなどといった状況のマンションに、高齢化の波が押し寄せ、役員のなり手がいないなど、様々な問題が一度に発生しており、現場は大変である。
◎管理不全に既に陥っているマンション、管理不全に陥りそうな予備軍のマンション、もう少し後押しすればうまく再生・耐震補強・建替えが可能なマンションなど様々な段階があることを意識して議論すべき。
◎修繕もきちんとされており、修繕積立金もしっかり積み立てられているマンションは、日常的な管理組合の体制がきちんとできており、管理に対する意識も相当高い。一方で管理が全くされておらず管理不全に陥っているマンションがあることも事実である。そこに陥らないための東京独自の施策に取り組むべき必要があると感じている。
◎外部不経済を起こさないためには適切な修繕等が重要となるが、そのためには日常の管理組合の体制が機能していることが重要である。
◎管理不全に陥っているマンションに対し、どのような支援メニューを用意しても、支援を受ける側にそれを活用しようという意識がないと支援は難しい。管理組合の中には、行政が支援すると言えば、自分たちは何もしなくても支援が完結するようなイメージを持つ傾向があるが、決してそうではないことを啓発する必要がある。
◎どんな支援が必要かという議論よりも、管理不全状態に陥らせないようにするにはどうしたらいいかという議論の方が先である。これには、きちんと管理すれば市場で評価され、自分たちの資産価値を上げていくという仕組みが成り立っていることが前提となる。これをしたら必ず評価されるということがわかっていれば、区分所有者はそれを行うはずである。立地や間取りだけでなく、管理そのものがマンションの価値を決めていくという仕組みが確立しないと、管理を放置し続けるマンションが出てくるだろう。
<管理不全マンションへの対応について>
◎管理不全マンションの明確な基準がない。まずは判定基準について議論すべきではないか。
◎判定基準が重要事項説明書に追加されれば、売買時の障害となるのを避けるため、管理組合は改善に向けて動くのではないか。
◎約9割のマンションが管理会社に管理委託していることから、よほど劣悪な管理会社でなければ、管理不全マンションに陥ることは考えにくいのではないか。むしろ、自主管理や一部委託を行っているマンションの実態を把握すべきではないか。
◎マンションは戸建住宅に比べて固定資産税を3割程度多く負担していると言われている。道路や下水道等の整備費は戸当たりで見れば、戸建住宅の方が多くかかるほか、小規模宅地の固定資産税については、1/6まで軽減される効果もあり、受益負担率はマンションが戸建に対し2倍多いという試算がある。税制の改正は国の政策であり難しいが、戸建てではなくマンションに対して行政が支援することには税制面からも合理的な理由がある。
◎万一マンションが管理不全に陥った場合、周辺に与える影響が高いため、対象そのものは幅広く取っておいて様々な支援メニューを用意しておく必要がある。管 理不全を防ぐためには、再生に向けた普及啓発だけではなく、条例等で自治体への情報提供や計画修繕の実施などを義務付けし、管理組合の意識を高めるといっ た方法もあるのではないか。
◇ ◆ ◇
都は、平成25年度に行ったマンション実態調査で回答のなかったマンションの中から、管理組合活動が不活発なマンションを5件選定し、マンション管理士を派遣して組合活動の活性化に向けた取組を支援するモデル事業を平成25年度に実施した。
管理組合の組織体制の見直しや管理規約の策定など、各マンションにおいて一定の成果を得ることができたが、一方で、5件の支援マンション選定にあたり、管理不活性の兆候があるマンションを訪問したが、「必要ない」「居住者間の繋がりが無く不可能」などの理由により拒否されるケースが多かったとしている。
これに対して都のマンション部会は、「管理組合が機能していないなど、調査への協力が得られにくいマンションについては、実態把握が極めて困難となっており、こうしたマンションがどこに存在し、どのような問題を抱えているのか、網羅的かつ継続的に把握することができない。仮に、何らかの方法で管理不全に陥っているマンションを把握できたとしても、現在は、行政が管理組合の活動に関与できる法的根拠はなく、管理組合に拒否されれば支援・指導することができないのが実情である」としている。
この問題については、豊島区が2013年7月に施行した「マンション管理推進条例」の届け出の状況などがゴールデンウィーク明けには取材できそうなので、機会を改めて報告したい。
三菱地所レジデンス 「洗面室のモンダイ」を解決した3つの新商品導入
片寄せ洗面ボウル+ボウルに合わせた鏡割り
三菱地所レジデンスが「洗面室のモンダイ」を解決する新商品「洗面室シリーズ」3商品を開発した。
同社の会員組織「三菱地所のレジデンスクラブ」(約21万世帯)、購入検討会員組織「ザ・パークハウスクラブ」(約18万件)や、お客さんとの相互交流が可能なWEBサイト「スマイラボ」などを通じてアンケートやグループインタビューを実施。とくに多かった5つの「洗面室のモンダイ」を、試作品での検証を経て開発したもの。
「5つのモンダイ」は、①洗濯カゴを置くスペースがあったほうがいい②バスタオルをきちんと収納したい③入浴後の着替えを置くスペースがあればいい④ぬれたバスタオルは乾かしてから洗濯機に入れたい⑤洗面化粧台は2人並んでつかえたほうがいい-で、これらを3つの商品に具現化した。
3商品は、4月以降に分譲する「ザ・パークハウス」マンションに原則導入していく。
ドライエリアにも使えるオープンスペース
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記者はマンション取材の際、洗面室・浴室・トイレ・キッチンの水回りは必ずチェックする。洗面室は全体の広さと収納の大きさを見る。
お客さんから指摘された「5つのモンダイ」のうち②が各社のマンションで一番欠けているのではないかと思う。家族数にもよるが、バスタオルはかなりかさばるし枚数も多い。①と③もよく分かる。その通りだろう⑤はあればいいが、スペースを確保するのが難しい。同社は今回、狭いながらも2人で利用できるよう工夫している。
個人的な意見だが、④はいかがなものかと思う。乾かしてから2度3度また使うほうが洗濯の手間が省けるし、きれいに洗った身体をふくのだからバスタオルはそんなに汚れないはずだ。同社はバスタオルハンガーを2本にするというが、これは2度3度使うのに丁度いい。
ここでひとつ提案。家族どうして使い回しはしないだろうから、家族それぞれ専用のバスタオルであることが分かるように色分けしたほうがいいし、子ども用は小さくてもいい。高級なふかふかのものより、安物の薄っぺらいほうが耳の中もふけるのでいい。それとも端っこだけは耳の中がふけるように工夫してはどうだろう。浴室・浴槽の掃除がラクになるものも導入すべきだ。
これまでの同社の商品では、浴室の2フック付きスライドバーがいい。他社はほとんど1つしかフックはついていない。
幅30㎝×奥行き40㎝をミニマムサイズに設定(左)と2本のバスタオルハンガー
野村不「プラウドタワー大泉学園」竣工 現金購入33%、買い増し46%
「プラウドタワー大泉学園」
野村不動産は4月13日、先に竣工した西武池袋線大泉学園駅直結の再開発マンション「プラウドタワー大泉学園」の記者見学会を行った。分譲開始からわずか3カ月で完売した人気物件で、再開発の協議会発足から約10年で竣工させた開発スピードと、地域の価値を最大限引き出した商品企画力は見事というほかない。
物件は、西武池袋線大泉学園駅から徒歩1分、練馬区東大泉1丁目に位置する地下2階地上27階建て全168戸(非分譲3戸含む)。専有面積は55.04~103.42㎡、価格は4,560万~13,470万円、坪単価296万円。設計・監理はアール・アイ・エー、施工は清水・西武建設共同企業体。
従前の現地は、駅前ロータリーが貧弱で、中小の雑居ビルなどが建ち並ぶ雑然とした雰囲気がしていた。それを解消するため北口地区まちづくり協議会が発足したのが平成17年。同社は同19年に事業参画。同23年に都市計画決定。同27年度に組合解散予定。施行面積は約0.8ha。
駅と建物をペデストリアンデッキで結び、1階にはバス・タクシー乗り場、歩行者通路を整備し、1~3階は商業施設「Grand Emio(グランエミオ)大泉学園」、4階は練馬区の公益施設が入居する。東京都のマンション環境性能評価制度で同社としては3物件目の満点「星3つ」を獲得している(その後「立川」でも取得)。
わずか10年で事業完了できたのは、地権者が個人5人、法人3人(同社と西武鉄道、JA東京あおば)と少なかったことも大きいが、公民の連携がスムーズに行われたのが最大の要因と思われる。ペデストリアンデッキには、同区がアニメーション発祥の地であることから手塚治虫などのアニメのモニュメントを区が整備した。
建物は三角形の敷地形状を巧みに利用し、デッドスペースになりがちな部分にエスカレータと吹き抜けを設け、商業棟と住宅棟の1フロアの階高の差を利用した屋上庭園などを設置している。
住宅棟では、24時間利用可能な「ライブラリー」4席(1席約1畳大)を設置し、エントランス部分には印象的な天然御影石の「ホワイトジー」のデザイン壁を設置している。3階の開放廊下側には、昼と夜とで表情が異なる鏡面仕上げのアルミのアートを設置するなど、細かな点にも工夫を凝らしている。
購入者の約7割が地元練馬区居住者で、現金購入が33%、ほとんどが買い増しの持ち家層が46%。自己資金は平均1,960万円。これはすごい数字だ。
エントランスホール
◇ ◆ ◇
この物件については一昨年の夏ころだったか、見学を申し込んだのだが、すべて完売しておりモデルルームを閉鎖したあとだった。瞬く間に完売したのに驚いた。
坪単価296万円も、今では安いのかもしれないが、西武池袋線で駅力№1と言われていた「ひばりヶ丘駅」でも西武不動産(当時)のタワーマンションは坪270万円もしなかったはずだ。当時はリーマン・ショックの後だったので環境は異なるが、今回は地元のアッパーミドル・富裕層が殺到したということだ。
商品企画も芸が細かい。24時間利用可能のライブラリーは同社としては初めての試みだったが、他社も含めてそれほど例がないのではないか。エントランスホールに「ホワイトジー」と呼ばれる御影石が採用されているが、このように具体的な名前をお客さんに説明できる営業マンは他社にいるか。これが〝プラウド〟と他のブランドの違いだ。
◇ ◆ ◇
もう一つ、これはマンションと全然関係ないのだが、今回の取材で大変うれしかったことがある。今年4月、野村不動産ホールディングスの広報IR部長に宇佐美直子氏が就任したと報告されたことだ。長い大手デベロッパーの取材の中で、女性の広報部長は初めてのはずだ。
駅前の「OIZUMI ANIME GATE」
糀谷駅前の再開発マンション好調スタート 旭化成不レジ・不燃公社
「ステーションツインタワーズ糀谷」完成予想図
旭化成不動産レジデンスが先に第1期1・2次91戸が完売したと発表した、京急糀谷駅前の再開発マンション「ステーションツインタワーズ糀谷」を見学した。一般の方には「糀谷」(こうじや)はあまり馴染みがないかもしれないが、住みやすそうな街で、坪単価290万円強もリーズナブルなものだと思う。
物件は、京急空港線糀谷駅から徒歩1・2 分、大田区西糀谷四丁目に位置する20階建て全268戸(非分譲132戸含む)の「フロント・ウエスト」棟と、18階建て全67戸(非分譲17戸含む)の「フロント・イースト」棟の2棟構成で、合計335戸(非分譲149戸)。専有面積は36.64~86.79㎡、第1期1・2次の価格は3,070 万~9,350 万円(最多価格帯6,400万円)、坪単価は290万円強。竣工予定は平成28年12月下旬。設計・監理は山下設計。施工は戸田建設。売主は同社のほか一般財団法人首都圏不燃建築公社。
現地は京急線と環八に挟まれた地域。再開発計画は、15年くらい前から持ちあがり、平成20年に都市計画決定。事業面積は約1.3ha。事業費は約219億円。小規模木造老朽住宅と狭隘な通路の解消を図るとともに、駅前広場の整備や商業・福祉(高齢者支援、子育て支援)・住宅などからなる複合建築物。
第1期1次(83戸)は3月21 日に抽選先分譲した結果、101件の登録申し込みがあり、第1期2次(9戸)は3月29日に抽選分譲し10件の登録があった。登録者の属性は30代・40代で50%、居住エリアは大田区が70%。品川へ7分、駅前の好アクセスが評価された。
◇ ◆ ◇
この物件については、モデルルームが観られる段階になったら見学しようと思っていたが、早期完売のほうが先になった。坪単価は300万円を突破すると聞いていたので、290万円強というのは納得だ。京急蒲田駅前が320万円だから、糀谷で300万円を超えても不思議ではないが、これくらいがちょうどいい。
糀谷は、昭和60年代に結構マンションの取材で訪れている。昔ながらの商店街があり、中小企業・町工場と住宅が混在していた。その後の不況でどんどん町工場は亡くなったが、それでも最先端技術が宇宙衛星に採用されたニュースが「糀谷」を全国区にした。
糀谷か京急蒲田かの選択肢は悩ましい。品川から見れば京急蒲田が玄関だろうし、羽田から見れば糀谷が玄関口だ。住むのなら記者は糀谷のほうが住みやすいと思う。
首都圏不燃建築公社(不燃公社)について。公的機関の不動産開発、住宅事業はバブルを境に環境が激変。各都道府県の住宅供給公社は一部を除きほとんど解散したか休眠状態に陥り、勤労者住宅協会、労栄協会なども破産・倒産した。
しかし、不燃公社だけは再開発物件を中心にコンスタントにいい仕事を継続して行っている。
価格の安さだけではない 巧みな需要喚起策 大成有楽不動産「品川勝島」
「オーベルグランディオ品川勝島」完成予想図
大成有楽不動産の「オーベルグランディオ品川勝島」を見学した。「品川勝島」といわれてもほとんど一般の方は知らないかもしれないが、圧倒的な価格の安さと、明快な商品コンセプトで地元だけでなく都下、さらには神奈川、埼玉、千葉方面からの需要も取り込む可能性を秘めている。〝価格表示〟はいかにあるべきかを問う物件でもある。
物件は、東京モノレール大井競馬場前駅から徒歩7分(京急本線立会川駅から徒歩11分他)、品川区勝島1丁目に位置する20階建て全452戸。専有面積は62.38~85.59㎡、予定価格は3,200万円台〜6,200万円台(最多価格帯4,300万円台)、坪単価は未定だが200万円台の前半に落ち着く模様だ。竣工予定は平成29年1月上旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は大成有楽不動産販売、長谷工アーベスト。
現地は、用途地域が準工業地域であることから倉庫街で、敷地北側には高速道路が走っている。敷地東側には東急不動産が昨年から分譲している「ブランズシティ品川勝島」が近接している。また、南方向には15階建ての官舎476戸が2016年に完成する予定。
建物はL字形で、住戸プランはファミリー向けが中心。共用施設としてはユニークなカフェラウンジ、ソフトサービスのほか、コミュニティ支援プログラムなどを用意している。
今年1月から予定価格をホームページで公開しており、これまで問い合わせ・資料請求は約2,000件に達している。4月18日から予約制でモデルルームを公開するが、すでに約300件の見学予約があるそうだ。反響は地元中心だが、神奈川県、埼玉県、千葉県からが約4割にのぼっている。
カフェテラス
「ファミリー・ラボ」(ウォールドアが付いている)
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書きたいことがたくさんあるマンションだ。まず、価格の安さと価格の公開時期について。
安さについては言うまでもないだろう。東急不動産の物件より明らかに安い。問い合わせが広域にわたっているように、ユーザーが敏感に反応したのだろう。坪単価200万円では相当の郊外・遠隔地でないと供給されないことが浸透している証拠だ。
それよりも、ホームページを公開して間をおかずに予定価格を公表したのが嬉しい。このことについては、同社の「吉祥寺Ⅱ」の物件でも書いているので読んでいただきたいが、早めに予定価格を公表するのがデベロッパーの務めだと思う。「じらす(teases)」戦法は不動産に限らずあらゆる商品の常とう手段だが、この業界は半年も平気で「価格未定」と謳う。これほど消費者を馬鹿にした売り方はない。
もう一つ強調したいのは、販売事務所の設営、アピールの仕方が巧みであることについて。ここ数年、同社のマンションの商品企画が劇的に変わったことは何度も書いてきたが、この物件もそうとう力が入っていることがすぐ理解できる。
その代表的なものがカフェラウンジだ。コーヒーやパンのサービスを行うのは他社と同じだが、ここはパスタも販売するという。これは珍しいのではないか。コーヒーメーカーは〝コーヒーメーカーのフェラーリ〟と呼ばれる「LA-CIMBALI(ラ・チンバリー)」製だという。
記者は、フェラーリもポルシェもレクサスも車のメーカー・車種であることくらいしか分からないし、ラ・チンバリーなんて初めて聞く言葉だ。その価値がさっぱり分からないのだが、助け舟を出してくれた人がいた。一緒に見学した同業の記者が「フェラーリはここのマンションの2LDKと一緒くらいの値段。ラ・チンバリーは高級ホテルで使われているマシーン」と教えてくれたのだ。確かに頂いたコーヒーはエスプレッソに近い味がしておいしかった。コーヒーの味は分かる。ある著名な有料老人ホームの食事は最低だったが、リッツ・カールトンと同じ豆を使ったコーヒーは抜群に美味しかった。
これで終わらないのが今回の取材の面白いところだ。取材を終えてからその同業の記者と一緒に帰ったとき、何と赤いフェラーリ(フェラーリレッドと呼ぶのだそうだ)が走っているのをその記者が教えてくれた。なるほど、昔、子どもに買ってあげたおもちゃと一緒だった。
それだけではない。販売事務所では、来場者にカフェラウンジを体験してもらうために無料でこの〝フェラーリ〟コーヒーやパンなどを振る舞うのだそうだ。そのため接客フロアはサロン風の造りになっている。これもいい。
プロモーションビデオがまた面白い。デザイン処理された〝新品〟の文字がスクリーン上で乱舞した。記者はすなおだから当然〝シンピン〟と読んだ。ところが、これは〝シンシナ〟と読ませるのだそうだ。つまり、この「勝島」エリアはここ数年で約1,400戸ものマンション(官舎含む)が建設され、羽田や品川、大井町、大森にも近い住宅地に変貌することを強調するために、このような面白いプロモーションビデオになったようだ。
このほか、ゲストルームのベッドはウェスティンホテルで採用されているものと同じ。コミュニティ支援では、地元のNPOなど5社・団体のサポートが受けられるようにしている。
住戸プランでは、奥行き2メートルのバルコニー、同社オリジナルの収納のほか、多目的に利用できる1畳大のファミリー・ラボ、女性が化粧しやすいように照明の位置や鏡の位置を工夫した「オレンジドレッサー」を提案。食洗機は標準装備。オプションだが、和室のガラリ付きの木調扉がいい。防音性や断熱性にも優れた2重サッシを全窓に採用している。
全体的には、東急不動産の物件をかなり研究した跡がうかがわれる。この日の見学会に同業や関係者にも声を掛けていることからも、力の入れようが伝わってきた。管理会社と一体となった体制の効果もでている。
ついでに、競馬場の影響について。記者はかつて競馬ファンであった。大井競馬もよく行った。駅に降りるとすぐ厩舎があり、あの馬糞の臭いがたまらなく発走前の馬のように興奮状態になったものだが、マンションの現地まではその匂いはほとんど届かないそうだし、上層階からも馬が疾駆する姿も見えないそうだ。
販売事務所
問題はらむ議決権割合に価値割合の導入 マンション管理検討会
国交省「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)は、総会などの議決権割合を変更してはどうかという提案も行っている。
区分所有法第14条(共用部分の持分の割合)には「各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による」とし、この規定は「規約で別段の定めをすることを妨げない」ともしている。また、同法第38条(議決権)では「各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による」としており、専有面積割合ではなく平等にしているところも少なくない。
そしてまた、建て替えの場合などは、同法第62条(建替え決議)で「集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数…」としている。つまり議決権だけではなく、区分所有者が分母になるケースもあり、個人や法人が複数住戸を所有していても区分所有者としては一人としてカウントすることが決められている。
検討会は、これを見直すことを提案している。「近年は、大規模で店舗と分譲住戸のある複合用途型のマンション、超高層マンション等の出現により、高層階と低層階、あるいは住戸と店舗とでは、床面積割合によっては住戸の財産価値(眺望、景観、日照等の付加価値)が適正に反映されないケースがみられるようになってきたため、現行のように議決権を床面積割合によって与えるのは、公平性等の点で問題がある…」というのだ。
そこで、①各住戸の床面積割合に加え②価値割合を加味し③住戸1戸につき1個の議決権を与えてはどうかとしている。
この提案は様々な問題もはらんでいる。難しい問題だ。一般的に、デベロッパーは、日照や眺望、間取り、設備仕様、向き、市場性などを総合的に判断して値付けを行っており、超高層マンションの場合などは低層階と上層階とでは10倍くらいの価格差のあるものが少なくない。
具体的にはどれぐらい異なるのか。分かりやすい例で示そう。最近書いた東京建物「Brillia Towers目黒」の場合、平均単価は600万円だが、30㎡台の最低価格の住戸の坪単価は550万円くらいになりそうだ。一方、最高価格の150㎡台は880万円くらいになる模様だ。単価差で1.6倍、価格差で8倍だ。
検討会が示した議決権割合をこれに適用すると、4億円台の住戸を取得する人はワンルームの購入者の8倍の議決権を持つことになる。これが公平かどうか記者は分からない。
そもそも、先にも書いたようにマンションの値付けは不公平が生じないよう、付加価値の高いものは価格を高くし、その分だけ購入者に負担を求めている。価値の高い住戸ほど購入者の金銭的な負担が大きいのだから、ある意味ではこれもまた公平だ。共用施設の利用でも、高い値段の住戸を買った人と低い住戸を購入した人とで差別をつける例は皆無ではないがほとんどない。お金持ちもそうでない人も公平に扱っている。
住戸1戸につき各1個の議決権を与えるべきというのも危うい。これが認められれば多数派工作は容易になる。買い占めればいいわけだ。
検討会は、価値割合を採用した場合の課題として、「床面積割合という基準が客観的かつ普遍的であるのに対し、階層別や位置別の効用は主観的かつ流動的であり、また、それが販売価格に適正に反映されているとは限らない」ことを上げている。そして、「分譲後の環境変化に伴う効用の変化(例えば分譲時の眺望が隣接のマンション建設で大きくその価値が低下したなど)の問題が可能性として生じ得ることは否定できない」としながら、「床面積割合と価格割合に相当の乖離がある場合の不公平の問題の方が大きい」と結論付けている。
これも難しい問題がある。確かに値付けは主観的判断で行なわれるので、価格が適正であるかどうかだれも分からない。しかし、あらゆる商品はそのようなものではないか。ダイコンだってキャベツだって、価格は主観的に付けられるのではないのか。適正であるかどうか結局は市場(消費者)が判断するものではないのか。
購入後の環境変化も無視できない。検討会は「床面積割合と価格割合に相当の乖離がある場合の不公平の問題の方が大きい」としているが、マンション購入後に、その敷地の前面、隣接地にマンションなどが建設され、日照・眺望が奪われるのは日常茶飯だ。複合日影といって、複数のマンションからの日影の影響を受けても、個々の建築物は違法にならないのが現行法だ。
だから、記者はユーザーには用途地域だとか立地条件には十分注意を払うようにと忠告してきた。購入時の価値判断が将来にわたって正しいかどうか、なんともいえない。
もう一つ、固定資産税や都市計画税、不動産取得税は、価値割合ではなく、いずれも土地や建物の持分比率が基準で算定される。これとの整合性はどうなるのかという問題もある。
以上、議決権割合に価値割合を反映させよという提案は説得力があるようで極めて危険な問題もはらんでいると思う。お金(力)のある富裕層が益々富み、そうでない人は益々貧しくなる、発言力も弱まる21世紀の資本主義社会がマンションでも完成するのか。
マンションコミュニティを否定するのか 国交省マンション管理検討会
平成24年1月から27年2月まで途中2年半の中断を挟み合計11回の会合を経て国交省「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫・政策研究大学院大学教授)が終了した。最終とりまとめとして近く発表される。標準管理規約に盛り込まれている「コミュニティ条項」が削除されるのは確実で、その是非をめぐって内外野から議論が巻き起こりそうだ。
この「検討会」について記者は、都合3度だけ傍聴できなかったが、ずっと取材してきた。初回の会合でいきなりビンボールまがいの発言が飛び出し、第三者管理方式、コミュニティ活動、議決権の要件などについて激論が交わされた。意見がまとまらず、第9回以降2年半も会合が開かれなかったので、空中分解、雲散霧消したものとばかり考えていた。しかし、この空白期間に何かがあったのか、最終的には現場サイドの声は全く反映されず、「コミュニティ条項」を削除するという方向が打ち出された。
いま、「コミュニティ」はマンション業界の大きなテーマの一つだ。デベロッパーも管理会社も管理組合も自治体などと連携してこの取り組みを強化している。どうしてこのような時代に逆行する、流れを遮断しようという動きになったのか。振り返ってみた。
◇ ◆ ◇
検討会は、機能不全に陥った管理組合をどう救済するかがメインテーマと思われたが、第1回会合から各委員と現場サイドの専門委員・オブサーバーとの間で意見の相違が表面化した。
中でも激しいやり取りが交されたのはコミュニティ形成についてだった。区分所有法にはコミュニティや自治について規定はまったくなく、国交省が作成したマンション標準管理規約の「コミュニティ条項」だけが管理組合の自治・コミュニティ活動に対してお墨付きを与えていた。これが問題視された。
問題を整理しよう。管理組合と自治会の関係については、前者は区分所有法による明確な法的根拠があり、目的、構成員、禁止事項なども定められている。同法は、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」(第3条)「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」(第6条)と規定している。
一方、地方自治法では「(地縁による団体)は、その規約の定める目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」(第260条の2第1項)とあり、目的は「地域住民の親睦、福祉、防犯、文化等にかかわる諸活動を行う」と自治会などを規定し、構成員は「区域に住所を有する者で加入を希望する者」となっている。
このように両者は明らかに異なる団体だ。双方に関する裁判例でも、「町内会費の徴収は、共有財産の管理に関する事項ではなく、区分所有法第3条の目的外の事項」であり、「この町内会費相当分の徴収をマンション管理組合の規約等で定めてもその拘束力はない」(平成19年8月7日、東京簡易裁判所判決)と、代理徴収は無効とされている。
今回の「検討会」でもこの問題が蒸し返された。当然と言えば当然だ。記者も現行の「コミュニティ条項」は法的な担保力が希薄で、やや無理があると思う。しかし、財産管理の組合活動とコミュニティ活動は車の両輪だ。どちらかが機能しなければ、マンションは極めて住みづらい〝ハコ〟に成り下がる。コミュニティはマンションの財産・生命・文化を守り発展させるエンジンでもある。
記者は、堂々巡りの白熱した論議を聞きながら、最終的には両論併記で丸く収められるのではないかと思ったが、そうではなかった。福井座長は第9回目の会合で次のように述べている。
「町内会費の徴集は無効だとまで言われているわけですから、仮に違法な活動に管理費を使っていた場合に、法的紛争が起きて同様の判断が裁判所で相次ぐことにでもなったら、標準管理規約以前のみっともない事態に陥る。そういう意味での安全運転をするという前提で議論いただきたいと思います」
「安全運転をする」-この言葉に福井氏の強い意志が込められている。これを聞き逃したのはミスだった。具体的にはどのようなやり取りがあったか。少し長くなるが、議事録から引用する。
自らマンション居住者だという村辻義信委員(弁護士)は、財産管理団体としての管理組合の本質的な目的を理解していない人が多いとし、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成、これに管理費を充当するんだという、この条項が明記されたことによって、さらに混迷を深めているという状況にある」と、福井座長の考えに概ね賛成であると述べた。
コミュニティ条項を削除すべきという意見の急先鋒、安藤至大委員(日大大学院総合科学研究科准教授)は、「私は村辻委員のご意見よりもさらに厳格にとらえるべきだと考えております。先ほど、防災の取り組みにバーベキューを組み合わせるという話ですが、これに全員が喜んで参加しているのかということが知りたいですし、また全員が喜んで参加するようなイベントであれば、参加費を本人たちから徴集すれば良いと思います。仮に、防災訓練には参加したいがバーベキューには興味がない人、かつ区分所有者の方からしたら、自分たちのお金が目的外に使われている状況なわけですから、これは明確にすべきです。勝手に流用されては困るという考え方もあるのです。
また、防災がそれほどまでに大事なのであれば、防災訓練の参加を現時点で、ちゃんと強制して行っているのかについても気になります。全員参加しているのでしょうか。それをせずに、参加できる、そして参加したい人だけで防災訓練を行い、気の合った人たちだけでバーベキューをやるというようなことにもし管理組合のお金を使っているのであれば、それこそまさに目的外使用であり、この最高裁の判例とかの考え方からすれば、もう完全に逸脱していると考えております」と、バーベキューなどの飲食に管理費を充当するのは目的外使用と主張した。
これらの意見に対して、村裕太専門委員(三井不動産レジデンシャル開発事業本部都市開発二部部長)は、「コミュニティの形成が良好なマンションというものが、よく清掃が行き届いていたりとか、設備の保守、維持がちゃんとできていたりと同等になるぐらい、やっぱり資産価値を高める、もしくは維持するのに必要なソフトだという認識がご購入者の方に強いからだというふうに私ども分譲主としては思っておりまして、逆に、売り主としてはコミュニティの形成に必要ないろいろなイベントなどを企画したりサポートしたりというようなことをむしろ積極的にお勧めしたり、お手伝いをしたりというようなことをやっております」と反論した。
すかさず、安藤氏は、「今、村専門委員がおっしゃったことが仮に正しいのであれば、別に管理組合がお金を出さなくても、住人全員が自分たちで進んで町内会に参加し、町内会の経費でそのような取り組みをするはずですので、まさに管理組合と町内会とを混同する必要がないということを、ご説明されたのではないでしょうか」と再反論した。
こうしたやり取りが続き、結局、議論は平行線のまま散会となった。
◇ ◆ ◇
さて、皆さんはこのやり取りと結論をどう理解されるか。ひと言で言えば、コミュニティ削除派が法律を楯に存続派を押し切った形だろう。
いずれにしろ、今回の決定は、これまで国交省が示していた標準管理規約(コメント)の「コミュニティ形成は、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものであり、マンションの適正管理を主体的に実施する管理組合にとって、必要な業務である。管理費からの支出が認められるのは、管理組合が居住者間のコミュニティ形成のために実施する催事の開催費用等居住者間のコミュニティ形成や、管理組合役員が地域の町内会に出席する際に支出する経費等の地域コミュニティにも配慮した管理組合活動である」とする見解から180度の転換だ。
しかし、その一方で、検討会は専門委員やオブザーバーの主張を考慮したのか、自治会活動は合意形成や地域の防犯面、資産価値向上につながる効果は否定できないとし、「政策論からコミュニティ活動は展開すべき」という意味がいまひとつ分からない悩ましい文言が盛り込まれた。
この相反する結論を600万人の区分所有者はどう受け取るのだろうか。一方で否定され、他方で奨励されれば、また裂き状態に陥るのではないか。
そもそも、どうしてこんなに議論が紛糾するのかという根本問題について考えないといけない。記者は区分所有法に問題があると思っている。多くの法律には「国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」(マンションの建替え等の円滑化に関する法律)のように第1条に目的規定がある。ところが、区分所有法の第1条(建物の区分所有)は「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所…は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる」としか規定されていない。この種の規定は趣旨規定というのだそうだが、やはり哲学がない。 ここに根本原因があるのではないか。
一つだけ、聞き捨てならないことがあるので言わせていただく。安藤氏が防災活動とバーベキュー活動を攻撃したことについてだ。ここまで言われると、もう完全な自主的な住民の自治活動、コミュニティ活動に対する敵視だ。悪意すら感じられる。
失礼ながら安藤氏の発言・言葉には険がある。どこか人を小ばかにするもの言いで、喧嘩を売るメディアのディベート番組を観るようで気分が悪くなる。
どこの管理組合も予算の半分以上は恒常的な建物の維持管理費に消える。少ない予算をやりくりしイベントなどの費用を捻出しているのが実情だ。役員はほとんどボランティアだ。企業の交際費や政治家の政務活動費とは訳が違う。コミュニティ活動が違法な活動であるかのように言われるのには腹が立つ。
話は横道にそれるが、安藤氏は第三者管理に御執心のようだが、富裕層向けや投資用マンションはいざ知らず、一般的なマンションや機能不全に陥ったマンションの管理組合は専門家などに支払う報酬をどう捻出するのだろうか。飲食費をそのままフィーに充てても足りないのではないか。
書きだすととまらなくなる。記者の悪い癖だ。もう最後だ。つたない記事に付きあっていただきたい。
記者も町内会が戦前、住民同士が監視し合い、大政翼賛の一翼を担わされていたことを学んだ。今でも行政の下請け的なことをやっているのかもしれない。自治会が毛嫌いされるのはそんな理由からだろう。
しかし、冠婚葬祭に代表されるようにわが国の伝統的な文化を継承し、地域ぐるみで様々な問題を主体的に解決し、行政などに街づくりを提案するなど、自治(町内会)活動は、地域社会の活性化に大きな役割を果している。今後もその役割は増大するはずだ。緊急時には公助は当てにできず、自助・共助こそが生死の鍵となることを3.11でわれわれは学んだのではなかったか。
「自治(self-governance)」とは「自分たちが決めたことは自分たちで守る」という意味ではないのか。安藤氏の主張は、マンション居住者の自治権を奪い、その権限を一部の専門家や富裕層に集中させようという企みではないかと勘繰りたくなる。細かく規制をかけるより、管理組合の創意工夫に任せたほうがマンションの価値はあがる。コミュニティがマンションの価値を計る指標の一つになる時代は必ずやって来る。
「福井先生を連れてきたかった。残念」 管理協理事長、「検討会」を批判(2015?3/13)