国分寺崖線に重なるランドスケープ秀逸 三菱地所レジデンス「二子玉川」
「ザ・パークハウス二子玉川ガーデン」完成予想図
三菱地所レジデンスが近く販売を開始する「ザ・パークハウス二子玉川ガーデン」を見学した。国道246号に面しているが、丘の上で敷地の一部と後背地は第一種低層住居専用地域。国分寺崖線にも重なっており、ランドスケープデザイン、設備仕様レベルも高い。人気必至と見た。
物件は、東急田園都市線・大井町線二子玉川駅から徒歩10分、東急田園都市線用賀駅から徒歩10分、世田谷区瀬田4丁目に位置する地上9階建(建築基準法上は地下1階地上8階建)全130戸。専有面積は59.35~97.33㎡、第1期(戸数未定)の価格は5200万円台~13900万円台(最多価格帯7,400万円台)。竣工予定は平成28年1月上旬。施工は東急建設。
現地は、会員制スポーツクラブと「瀬田温泉」の敷地約7,600㎡の跡地。二子玉川駅から比高差にして約14mのなだらかな坂を上った頂上にあり、9階建てのD棟と5階建てのA棟との差も約3m。A~C棟が南西向きでD棟が北西向き。A~D棟は約2層分のエントランスホール・ギャラリーと連なっている。全体として提供公園や植栽帯、隣接の低層住宅街に面して配棟されているのが大きな特徴だ。
ランドスケープデザインはパレスホテル東京・赤坂サカスなどを手掛けた「ソラ・アソシエイツ」が監修。周辺の低層住宅街と連なるように緑地帯を設置。樹高約23mのケヤキなど40本以上の既存樹も保存する。移植については、造園を担当する「石勝エクステリア」の「TPM工法」を採用している。屋上は緑化し、太陽光発電を実施する。
外観デザインはマリオンと外壁スリットをランダムに配して豊かな表情を演出するとともに、人の目線に触れる1・2階部分は「のこびき」細工の天然石を使用する。また、2階ギャラリーはガラス張りとし、「雪山銀狐」と呼ばれる御影石を壁面に配置。後方から光を当てることで夜間には幻想的な文様が浮かび上がる仕掛けになっている。
設備仕様レベルも高い。玄関床・キッチン・洗面化粧台・トイレ内カウンターのトップは全て御影石。バックカウンター・収納も標準装備。有償オプションだが輸入クロスもグレード感がある。
11月29日から第1期分譲を開始するが、戸数は80戸くらいになる模様だ。
外観
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現地を見た段階では坪単価は350万円くらいかとも考えたが、レジデンスギャラリーで説明を聞き、モデルルームを見学して坪380万円でもおかしくない単価だと確信した。
既存樹の巨木を残したランドスケープが秀逸。北西向きの住棟も敷地内の緑地帯や後背地の国分寺崖線の緑が展望されるはずだ。
唯一気になるのは国道246号に面していることだが、ものは考えようだ。これが国道から一歩入った閑静な住宅街だったら、坪単価は400万円をはるかに突破する。温泉付き会員制クラブ「Aqua sports&spa」も隣接地に建設される。
模型(左)と「雪山銀狐」
住宅地としては一等地 坪200万円は妥当 清水総合開発「多摩センター」
「ヴィークステージ多摩センター」完成予想図
清水総合開発が分譲中の「ヴィークステージ多摩センター」を見学した。坪単価は200万円。わが街多摩センターのポテンシャルを考えると極めて妥当な価格だと思う。
物件は、京王相模原線京王多摩センター駅・小田急多摩線小田急多摩センター駅から徒歩7分、多摩都市モノレール多摩センター駅から徒歩5分、多摩市鶴牧1丁目に位置する15階建て全165戸。専有面積は70.19~85.08㎡、坪単価は200万円。竣工予定は平成27年9月上旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売代理は東京建物不動産販売。
現地は多摩センター駅南口の商業地域だが、賑やかな商業エリアから外れており、住宅地としては一等地。現在分譲中の駅から4分の三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス多摩センター」を除けば、今後、これほど駅に近いマンションは南口ではまず供給されない。ペディストリアンデッキで結ばれており、車道を通らず駅まで行けるのが大きな特徴。
多摩中央公園、三越、丸善などが入居する「ココリア多摩センター」、パルテノン多摩、京王プラザホテル、多摩郵便局、多摩中央警察署、多摩南部地域病院、イトーヨーカ堂などの生活利便施設がほとんど徒歩数分圏。マンションには保育施設も予定されている。
建物・商品企画は二重床・二重天井、ディスポーザー、食洗機が標準。
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わが街だから当然だが、この10年間に多摩センター駅圏で分譲されたマンションは10件くらいあり、そのすべてを見学した。駅近物件では大京と三菱地所レジデンスの2物件があるが、この物件はそれに続く。
三菱地所レジデンスの物件は、南側と西側に駐車場ビルが建っており、パチンコ屋も近くにあるのは難点だが、多摩センター初の免震で、駅まで4分の近さを考えると、単価(210~220万円)も極めて割安感があると思う。すでに全175戸のうち85%を契約済みだ。
今回の物件も単価がどうなるか気になっていたが、坪200万円に挑戦したのは大歓迎。
立川で342万円、町田で300万円の時代だ。街の美しさから言ったらはるかに上回る多摩センターはいかにも割負けしている。根拠がない〝オールドタウン〟などとマスコミが酷評したからイメージダウンを招いたのだが、この数年間に駅周辺で2,000戸を上回るマンションが供給された。街の賑わいは復活しつつある。
坪単価200万円以下は、都内23区なら足立、江戸川、葛飾区などの城東エリアの相当駅から距離がある物件か、千葉、埼玉の郊外なら遠隔物件でないと供給されない。
その点、多摩センターはどこにも負けない都市施設が整っているし、絶滅危惧種の草花も季節になると花を咲かせる。これほど子育てに恵まれた地域はそうない。ここも学区の小学校まで車道を通らなくて済む。校庭は是非はともかく芝張りだ。
販売代理を担当する東京建物不動産販売は多摩センターと永山で1,000戸を超える販売実績があるから、しっかり多摩ニュータウンの魅力を伝えてくれるはずだ。
リノベーション必要な築20年以上の中古マンション314万戸 インテリックス
リノベーション事業を展開するインテリックスが、全国602万戸のマンションのうち半数近くの314万戸がリノベーションを必要とする築20年以上の物件などとする中古マンションストックの現状をレポートした。
レポートによると、わが国の総住宅数は6,063万戸に上り、総世帯数の5,246万戸を817万戸上回り、602万戸あるマンションストックのうち半数を超える314万戸が築20年以上の物件とし、築20年以上のストック数は2025年には577万戸へ1.8倍に増加すると予測している。
国は2020年までに中古住宅流通市場やリフォーム市場の規模を20兆円に倍増させることを目標に様々な施策を打ち出している。
進化するピアキッチン ポラス中央住宅「ルピアコート新小岩」
「ルピアコート新小岩」完成予想図
ポラスグループの中央住宅が近く販売を開始するマンション「ルピアコート新小岩」を見学した。リビング・ダイニングと水回りの動線をつなぎ、さらに家族とのコミュニケーションを大切にした〝ピアキッチン〟が最大の売りで、従来タイプを進化させている。
物件は、JR総武本線新小岩駅から徒歩14分、葛飾区東新小岩2丁目に位置する12階建て全50戸。専有面積は58.42~87.35㎡、第1期(18戸)の価格は2,980万~5,890万円。坪単価は200万円。竣工予定は平成27年8月下旬。設計・監理は複葉アーキテクツ。施工は川村工営。販売代理は東京中央建物。
現地は、蔵前通りに面した商業化、マンション化が進んでいる準工地域。徒歩1分にバス停があり、バス停から新小岩までは約5分。
住戸商品企画は、二重床・二重天井とし、全住戸の4割を実用新案取得済みのピアキッチン付きとし、出窓付き、ロフト付き、窓付きシューズインクロークタイプ、新和室の提案などを行っているのが特徴。食洗機、キッチンバックカウンター・収納も標準装備。
リビングダイニング
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駅から徒歩14分をどう評価するかはさておき、モデルルームの提案は差別化が徹底されており、ユーザーを惹きつける魅力が十分ある好物件だ。今回のピアキッチンの特徴は、キッチンの隣にあったトイレの位置を玄関の方に変更し、正面に子ども部屋を配することで、トイレの音のストレスを解消し、家事をしながら子どもの様子をうかがえるようにしていることだ。
細かな点では、バックカウンター・収納を標準装備とし、キッチン周りの壁にホーロー壁を提案しているほか、出窓付き、窓付きシューズインクローク、ソフトクローズ付き引き戸の多用などだ。
建築コストがどんどん上昇している中、デベロッパーは設備仕様レベルを落とす傾向にあるが、しっかり提案しているのは評価されるはずだ。坪単価は、周辺物件が軒並み坪200万円を突破してきている現状を考慮すれば、妥当な価格だろうと思う。
キッチン(正面に子ども部屋)
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同社が9月に記者見学会を行った「ルピアコート光が丘公園」の坪単価は245万円で、販売に苦労するのではないかと思っていたが、何と第1期25戸が完売したという。ピアキッチン付き、ライトコート付きが人気で、周辺に良好な物件がないのも評価されたという。
同社はこれまで東武伊勢崎線を中心に年間数棟しかマンションを供給しておらず、都内ではほとんど無名に近い。ピアキッチンやきめ細かな商品企画は間違いなくユーザーに評価される。あとはどうやって認知度を高めていくかだ。大手と同じように現地近くに販売センターを設置して、チラシを配布して、ネットで告知をする従来方式では限界があるように思うが、どうだろう。
ピアキッチン
ポラスの新ブランド「ルピアコート光が丘公園」 “新価格”でどう挑む(2014/9/4)
外観、ランドスケープに力 三菱地所レジデンス「二子玉川」
「ザ・パークハウス二子玉川」完成予想図
三菱地所レジデンスは11月13日、首都圏で初となる「ザ・パークハウス」と「THE SAZABY LEAGUE」がレジデンスギャラリーでコラボする「ザ・パークハウス二子玉川ガーデン」のモデルルームを11月15日にオープンすると発表した。
「THE SAZABY LEAGUE」は二子玉川エリアで9ブランドを展開しており、地域との親和性も高いため、今回のコラボとなった。
マンションのランドスケープデザインは、パレスホテル東京、赤坂サカスなどを手掛けた「ソラ・アソシエイツ」が監修。石勝エクステリアの大径木を重機で移植する「TPM工法」を用い、樹高約23mのケヤキをはじめ40本以上の既存樹を保存する。住戸プランは66タイプ。
9月27日に事前案内会を開始して以来、これまで約450件の来場がある。
物件は、東急田園都市線・大井町線二子玉川駅から徒歩10分、世田谷区瀬田4丁目に位置する8階建て130戸。専有面積は59.35~97.33㎡、予定価格は5,200万円台~13,900万円台(予定最多価格帯7,400万円台)。竣工予定は平成28年1月上旬。施工は東急建設株。
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ニュースリリースからも外観やランドスケープデザインに力をいれていることがうかがわれる。
「SAZABY」の喫茶とか「KIHACHI」くらいは知っているが、衣料ブランドは全く知らない。同社と「SAZABY」とのコラボマンションはこれまで結構あるのではないか。モデルルームを見学して詳報したい。
サブエントランス
単価予想が難しい 旭化成不動産レジデンス「アトラスタワー町田」
「アトラスタワー町田」完成予想図
旭化成不動産レジデンスが12月にも分譲を開始するJR横浜線町田駅直結の「アトラスタワー町田」を見学した。価格は未定で単価予想は極めて難しいが、坪300万円前後になるのではないか。
物件は、JR横浜線町田駅から徒歩2分、小田急小田原線町田駅から徒歩8分、町田市原町田3丁目に位置する22階建て全155戸(事業協力関係者取得住戸17戸含む、別に店舗)。専有面積は58.52~88.67㎡、価格は未定。設計・施工・監理は戸田建設。竣工予定は平成28年2月末日。
2階に設けたエントランスからJR横浜線町田駅までペディストリアンデッキで結ばれており、隣は市立図書館。
建物は制震工法を採用。住戸は南東向きの間口7~12mのワイドスパンで、角住戸比率は50%超。セミSI工法によりメンテナンス性を高めており、リビング天井高は約2.6m、サッシ高は2.12m。住戸によってキッチンは同社オリジナルの対面型キッチンが選べる。
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これほど単価予想が難しい物件もそうない。比較できそうな物件がなかなか見つからないからだ。JR町田駅周辺の物件では2年前に野村不動産が分譲した「プラウド町田」(161戸)が180万円だった。駅から5分で、所在地は相模原市だ。これとは比較にならない。
同じ沿線の小田急・JRの駅直結の再開発タワーマンションでは野村不動産「プラウドタワー相模大野」(308戸)と、横浜市住宅供給公社「マークワンタワー長津田」(209戸)がある。双方とも3年前に分譲され、圧倒的な人気を呼んだ。単価は230万円くらいだった。
この2物件が今回のマンションと比較になりそうだが、市況が激変しており、これより高くなるのは間違いない。駅力も町田は相模大野や長津田に負けない。よって、建築費の上昇も考慮に入れると下限は250~260万円と見た。
アッパーはどうか。直近ではやはり野村不動産「プラウドタワー立川」(319戸)と「プラウドシティ蒲田」(320戸)がある。立川は342万円、「蒲田」はやや低く330万円くらいだ。
「JR町田」が「立川」や「京急蒲田」と比較してどうかだが、これが微妙だ。記者の個人的な評価からすれば似たり寄ったり。街並みはあまり美しくない(美しいのは多摩センターだが、マンション単価では比較にならないほど負ける)。
旭化成不動産レジデンスはまさか立川や京急蒲田ほどの高値追求はしないとみた。前例もある。
同社は7年前、現在と同じように価格がどんどん高くなっているとき、小田急線の「アトラスタワー向ヶ丘遊園」(251戸)と日暮里駅前の「ステーションプラザタワー」(285戸)を分譲している。前者の坪単価は210万円、後者は260万円くらいだった。記者は双方とも極めて安いと評価した。「日暮里」は周囲の友人にみんな勧めた。中古でも当時より坪100万円くらい高いのではないか。
よって、アッパーは310万円とみた。自信はない。外したらゴメンナサイというほかない。
「立川」に続き「京急蒲田」、駅直結の威力まざまざ 野村不動産(2014/9/2)
商・住・公の機能備えたハイレベルの野村不動産「プラウドタワー相模大野」(2011/8/2)
「横浜ポートサイド」の再現なるか 横浜公社「マークワンタワー長津田」(2011/7/22)
ここも唯一無二か わが国最高階数の三菱地所レジ他「ザ・パークハウス西新宿タワー60」
「ザ・パークハウス西新宿タワー60」完成予想図
三菱地所レジデンス、相鉄不動産、丸紅の3社は11月6日、新宿区西新宿5丁目の再開発タワーマンション「ザ・パークハウス西新宿タワー60」のモデルルーム記者内覧会を行った。関係者は「分譲単価は未定」としているが、今年5月の起工式の段階で予想した「坪単価310~320万円」は大幅に上方修正する。340万円でも安いかもしれない。
物件は、東京地下鉄丸ノ内線西新宿駅から徒歩9分、都営大江戸線都庁前駅から徒歩8分、新宿区西新宿5丁目に位置する60階建て全954戸(事業協力者住戸177戸含む)。専有面積は33.90~156.99㎡、価格は未定。竣工予定は平成29年7月下旬。施工はフジタ。販売代理は三菱地所レジデンス。販売開始は平成27年1月下旬予定。
物件の特徴については、別掲の起工式に書いた記事を参照していただきたい。「西新宿5丁目」は老朽化した木造住宅や店舗・ビルなどが密集しており、東京都は「木密地域不燃化10年プロジェクト」の一環として、今回の「西新宿5丁目中央北地区第一種市街地再開発事業」(施行面積約1.5ha)と隣接する「西新宿5丁目北地区」(同1.5ha)、「西新宿5丁目中央南地区」(同0.8ha)を「不燃化推進特定整備地区」に指定し、災害に強い街づくりを進めている。今回分譲されるマンションはコアとなるものだ。
「ザ・パークハウス西新宿タワー60」の特徴は、現段階でわが国最高階数の60階建て(現在の最高階数マンションは三井不動産レジデンシャル「パークシティ武蔵小杉ミッドタウン」の59階)もさることながら、新宿中央公園と連続する約1.900㎡の公開空地「結いの森」を整備し、居住者間のコミュニティ形成の施設として国産材をふんだんに用いた交流スペース「ENGAWA(エンガワ)」を設置、さらに自然、防災・減災、多様性の3つのコンセプトを軸にコミュニティ支援プログラム「CLASS 60」を実施するなど、森とコミュニティも大きなテーマとなっている。
住戸は幅広いニーズに対応し、70㎡台を中心に33㎡台のワンルームから、最高3億5,000万円台(156㎡)の億ションまで供給する。建物は制震構法を採用している。
内覧会の冒頭挨拶した三菱地所レジデンス社長・小野真路氏は、アベノミクスや為替相場などについて触れた後、「新宿は、世界的には赤坂、六本木に劣らないほど有名。これがインバウンドにつながる。いい場所にいい物件を供給することがアベノミクスにもつながる」などと話した。
また、共用部分の「ENGAWA」を監修した東京おもちゃ美術館館長・多田千尋氏は「スギの学名はクリプトメリア ジャポニカ(Cryptomeria japonica)で日本語に訳すと『隠された日本の宝』。材と匠の技で巨大な縁側を演出する」と熱弁。「ENGAWA」には三菱地所とも縁のある山梨の杉をふんだんに用いた「木育ひろば」などを設ける。
さらに、コミュニティ形成支援の取り組みを担当するHITOTOWA Inc.代表・荒昌史氏は、「入居前の2015年から入居後の2020年まで6年間にわたり『CLASS 60』を60回開催し、魅力ある街づくりを支援していく」と語った。
「結いの森」
◇ ◆ ◇
小野社長のあいさつは相当力が入っていた。外国人の購入も意識してか、台湾ドルやシンガポールドルとわが国の円相場に触れ「我が国は他のアジアと比較して3~4割はディスカウントされている」と述べた。
多田氏や荒氏も小野社長のお株を奪うほどの熱の込めようだった。話した時間は小野社長を上回ったかもしれない。スギが「隠された日本の宝」とは全然知らなかった(「ヒマラヤスギ」は和訳するとどうなるのか)。
記者の最大の関心事はいったいいくらで売るかだった。話を聞きながらずっと考えていた。起工式の時には「310~320万円」と予想したが、小野社長や多田氏、荒氏の力の入れようから、これはもっと高くしないといけないと考えた。
最終的に決断した単価予想は「330~340万円」だ。この単価をはじき出した第一の根拠は3氏が語ったように街の将来性だ。現況は雑多な街だが、このマンションが完成し、さらに「北地区」の約1,000戸マンション計画(住友不動産が参加組合員となる予定)、「中央南地区」の約440戸のマンション計画(三井不動産レジデンシャルが参加組合員となる予定)を考慮すれば、素晴らしい街になると思うからだ。近くには「西新宿3丁目西地区」(8.5ha)の再開発計画もある。
さらに、これまた関係者が話したように、このあたりのエリアはまだ下町の風情、コミュニティも残っており、歓楽街・新宿のイメージを変える可能性を秘めていることだ。新宿中央公園へ徒歩数分の緑の環境も担保される。この価値は大きい。
もう一つ、日本最高階数の60階建てというのはそれほど訴求力がないと思っているが、よく考えると「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」と同様、〝唯一無二〟と考えられなくもない。最高価格が3億5,000万円台(坪740万円)というのにはびっくりしたが、これもまたリーマン・ショック前はみんなタワーマンションの最上階はこれくらいの値段がついていた。わが国最高峰だから、坪単価740万円でも顧客満足を満たすかもしれない。59階と60階は特別仕様で分譲戸数は14戸。
そんなわけで単価予想を上方修正した。59階と60階の単価が全体の単価を押し上げるので、平均するともっと高くなる可能性もある。現段階でモデルルーム来場者は500件を超え、問い合わせは5,000件を突破しているという。
それにしても、倉庫街や木密地域を再開発する先導役を三菱地所が務め、住友不動産、三井不動産がおいしいところを狙うカラス(これは失礼か)のように高みから見物する様は「中央区晴海」の構図と一緒だ。「地上にはもともと道はない。歩く人が多くなれば、それが道となるのだ」の魯迅の言葉をまた思い出した。地所は魯迅か。
「木育空間」(モデルルーム)
モデルルーム(100㎡)
西新宿の日本最高峰60階建て976戸三菱地所レジなど再開発起工式(2014/5/12)
三菱地所レジデンス「ザ・パークハウスグラン千鳥ケ淵」が即日完売(2013/9/17)
併設のサ高住のサービスも受けられる NTT都市開発「ウェリス津田沼」
「ウェリス津田沼」完成予想図
NTT都市開発が12月上旬に分譲する「ウェリス津田沼」のモデルルームを見学した。「家族をつなぐ多世代永住の住まいづくり」がテーマで、分譲マンションに隣接して開発するサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の施設を利用でき、購入者とその親族がサ高住に優先的に入居できるという業界で初の試み。
物件は、新京成線前原駅から徒歩8分、またはJR総武線津田沼駅から徒歩18分、船橋市前原西六丁目に位置する6階建て全58戸。専有面積は72.27〜83.87㎡、予定価格は2,900万円台~4,300万円台、坪単価は160万円台になる模様。入居予定は平成27年11月上旬。設計・監理は嘉環境建築設計。施工はナカノフドー建設。販売代理はフージャースコーポレーション。
現地は、NTTの社宅(独身寮)跡地。敷地を分筆して、今回分譲するマンションと、隣接地に70戸程度のサ高住「ウェリスオリーブ津田沼」を建設する。サ高住はNTTグループのテルウェル東日本が介護サービスやデイサービスを提供。棟内に訪問介護事務所、デイサービス施設を設置する。
マンション購入者はサ高住の見守りサービスや食堂が利用できるうえ、家族と親族が優先的にサ高住に入居できるのが最大の特徴。トイレと浴室には緊急コールボタンを設置し、調理台は高齢者にも配慮してIHクッキングヒーターを採用する。
同社は平成22年、運営会社のベネッセスタイルケアとともに第一弾のサ高住「ウェリスオリーブ新小岩」(45戸)を開設しており、今後2~3年間に10棟を開発する予定。そのノウハウをマンション事業にも生かし、それぞれの事業リスクの軽減を図るとともに、多世代永住型の住まいを提供していく。
◇ ◆ ◇
民間分譲マンションとサ高住を併設して、サ高住の施設を利用できるようにしたのはおそらく同社が初めてだろう。
サ高住の適正規模は60~70戸と言われており、その一方で、郊外マンションの場合は大型化することの販売リスクもある。今回のプロジェクトは双方のリスクを軽減するとともに、新たな付加価値を付与するものだと思う。
現段階でユーザーがどのような反応を見せるか不明だが、現地の後背地には戸建てエリアが広がっており、このエリアに住む高齢者にも関心を呼ぶのではないか。50歳以上の反響は通常マンションだと20%であるのに対し、今回は約30%という。
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記者は、分譲マンションと隣接・近接する高齢者向けマンションの共用施設を双方の入居者が利用できないものかとずっと思っていた。最近見学した都の「コーシャハイム千歳烏山」は賃貸居住者も併設されているカフェやサ高住の食堂が利用できるようになっていた。
都は今年度、「一般住宅を併設したサービス付き高齢者向け住宅整備事業」としてサ高住に一般住宅を併設した場合に補助金を出す制度を実施しており、募集3事業者のうち東急不動産とナルド・コミュニティネットの2事業者が決まっている。
野村アーバン タワーマンション売りやすくする「ホームステージングサービス」
野村不動産アーバンネットは11月1日からタワーマンションを対象にした「ホームステージングサービス」を期間限定で実施する。
「ホームステージング(Home Staging)」とは、売却不動産を家具や小物で演出することで、早期に好条件での売却を目指す販売手法。中古住宅流通量の多いアメリカでは、過去30年以上、不動産売却時に有効な手法として用いられている。単にインテリアコーディネートをするのではなく、その住宅の購入を検討する人が住まい心地を実感できるよう演出するもの。
「野村の仲介+(プラス)」各店では2014年8月から「野村のステージング」サービスを開始しており、今回はそれをさらに発展させた。
対象不動産は首都圏の20階以上のタワーマンションで、専有面積が60㎡以上。利用期間は2014年11月1日から2015年3月31日まで。売り出し価格が同社査定価格の125%以内であることなどが条件。
空室の場合は、同社が無料でリビング・ダイニング・キッチンの家具、玄関からリビングの導線、水回りのコーディネートを行い、居住中の場合はコーディネートのほか室内荷物の一時預かりも行う。
快適住まい 購入希望住戸から360°CG映像が見える「目黒都立大」
バーチャルモデルルームが設置されている「快適サロン工房」
ばかばかしい前置きから読んでいただきたい。
本日(10月30日)、長谷工コーポレーションが記者発表した「BIM(ビム)」の記事を書き、毎号頂いている、封がしているままになっていた長谷工総合研究所の「CRI」435号を読もうとした。「シングル層の住宅事情」が特集として取り上げられていた。全6ページ。最初のほうはマクロデータが紹介されていた。ざっと読んだ。
3ページ目に、記者も面白いと思っている三井不動産レジデンシャルの「モチイエ女子web」が紹介されていた。
そして、最後の6ページ目に「独身女性のマンション購入を応援したい」という見出しのコラム記事で、(社)女性のための快適住まいづくり研究会代表の小島ひろ美氏が載っていた。その中に「今回初めて売主として『サクラティアラ目黒都立大』(総23戸)を販売しましたが…」とあった。
考えるより先に行動するタイプの記者だ。あとは読んでいない。すぐ快適住まい研究会に電話した。モデルルーム見学をお願いするためだ。小島代表が出られて「バーチャルモデルルームは近くにありますが、それでよかったら私がご案内します」と仰った。飛んで行った。
以下が小島代表からお話を伺い、バーチャルモデルルームを見学した記事だ。「長谷工」がきっかけで見ることになったのだが、バーチャル映像の考え方はひょっとすると長谷工を超えるかもしれない、それほど面白い企画だ。
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「サクラティアラ目黒都立大」は、東急東横線都立大学駅から徒歩9分、目黒区大岡山に位置する敷地面積約347㎡(容積率200%)の地下1階地上4階建て全23戸。専有面積は30.19~44.17㎡、現在分譲中の住戸の価格は2,698万~4,688万円、坪単価は342万円。竣工予定は2015年2月下旬。施工は村本建設。事業主は首都圏不燃建築公社。売主は快適住まいづくり。企画は女性のための快適住まいづくり研究会。販売代理は丸紅不動産販売。
360°のCG画像(ほとんどの住戸からどのように眺望が展開するか分かる)
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ここで詳しく紹介する余裕はないが、売主の快適住まいづくり(木村吉伸社長)と企画した女性のための快適住まいづくり研究会は以前から取材しており、一言で言えば、単身女性がマンションを買うようになった平成7年ころから一貫して女性のマンション購入を支援してきた会社と団体だ。コンパクトマンションを手掛ける多くのデベロッパーは小島氏に足を向けて寝られないはずだ。企画・販売協力は735物件、女性会員は74,670名にのぼっている。
その会社・団体がどうして自社分譲なのか。ここが一番の興味の的だ。きっかけが面白い。たまたま小島さんが物件が売りに出ているのを見つけて、直接売主の建売住宅業者に電話して取得したのだそうだ。建売住宅にすると価格は当然1億円をはるかに突破する。売れないと読んでいたその業者にしてみれば〝渡りに船〟だったに違いない。
そこからは圧倒的な会員数と企画・販売協力してきた実績がものを言う。事業主は首都圏不燃建築公社、販売代理は丸紅不動産販売、管理は三菱地所丸紅住宅サービス、セキュリティシステムはセコム。これ以上ない事業スキームを立ち上げた。
商品企画はお手のものだ。過剰と思える設備機器はすべて排除した。直天に床暖房はなし(オプション可)、エアコンスリーブは1カ所などだ。そのかわり収納や使い勝手のよいフックなどはしっかりと設けたという。
販売事務所を設置し、モデルルームやらパンフレット、模型などを作っていたのではそうでなくても利益率を抑えているのに利益などでない。会員を中心に分譲し、営業経費や広告宣伝費を削減することで数千万円の販管費を節約している。
唯一と言っていいくらいお金を掛けたのがバーチャルモデルルーム。全16タイプの住空間を見ることができ、3階、4階の全住戸からは360度の眺望を見ることができる(2階は固定画面)。10億円以上も投資する長谷工の「BIM(ビム)」には質的に劣るが、バーチャル映像は素晴らしい。これこそ記者がデベロッパーに希望するものだ。
さらにきめ細やかな配慮もしている。購入希望者には1回2時間の「ゼミ」をトータルで5回、つまり10時間受けてもらう。ここで不動産の基礎をしっかり学んでもらい、納得の上で購入してもらうのが目的だという。
すごいのは「ゼミ」の終了ごとに「カルテ」を提出してもらって、疑問などを書き込んでもらって、小島氏が直々に返事を書くというものだ。分厚いファイルを見せてもらったが、細かい手書きの文字でそれは埋められていた。52人分あった。
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まだまだ書きたいことがある。小島氏は他の女性もそうだろうが、間違いなく石橋だろうが鉄の橋だろうが叩いて渡るタイプだ。売れなかった時のリスクもきちんと考えている。頭金が不足していたり、ローン返済に不安を持っていたりしている人には車の試乗と同じように賃貸で貸すことも考えているという。
最初賃貸で住んでもらって、購入する際にはその賃料のなにがしかを返戻することまで考えている。
これは名案だ。かつて東急不動産は住宅が売れないころ、昭和50年代の後半だったと思うが、所有権と賃借権の選択制を採用したことがある。それとよく似ている。土地価格が下がる一方の局面では難しいかもしれないが、都心部の地価・建築費はまだまだ上昇する。これはヒットするかもしれない。
同社は最近、コンパクトマンション事業を展開するためスタッフ3人の分譲事業部を新設した。2件目の「石川台」の分譲も決まっているという。自社分譲となると、企画・販売協力会社と競合しないかという心配もあるが、デベロッパーがやるような土地では間違いなくなさそうだ。
ゼミの模様
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