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「シティテラス草加松原」完成予想図

 住友不動産は1月10日、総開発面積54ha、約6,000世帯の埼玉県草加市の「草加松原団地」再生事業の一環として開発を進めている分譲マンション「シティテラス草加松原」(538戸)のマンションギャラリーをオープンした。

 物件は、東武伊勢崎線松原団地駅から徒歩6 分、草加市松原二丁目に位置する11階建て「シーズン」259戸と「ガーデンズ」279戸の合計538戸。専有面積は70.17~87.79㎡、価格は未定だが、坪単価は170万円台の後半から180万円になる模様。竣工予定は「シーズンズ」が平成27年10月、「ガーデンズ」が平成28年4月。設計・施工は三井住友建設。

 「草加松原団地」は、高度成長期に東京のベッドタウンとして日本都市公団(現在、UR 都市機構)が開発し、昭和39 年に完成した当時は総戸数5,926 戸、324 棟が建ち並び“東洋一”と謳われたマンモス団地。建物の老朽化などにより、平成15年、UR都市機構が団地の建て替えに着手。

 全体がA、B、C、Dの4街区にゾーン区分され、駅に近いA街区から順次整備が進められている。全体で従前と同じ約6,000戸が賃貸と民間による分譲マンションになる予定。A街区は約1,500戸の賃貸と分譲が整備済み。今後、B街区約1,500戸(住友不動産のマンション以外は賃貸の予定)、C・D街区はそれぞれ約1,500戸が建設避ける模様だが、詳細は未定。一部戸建ても検討されている。あわせて草加市による道路や公園、公益施設の整備なども進められている。

 建物はコの字型に配置。住宅専有部は南向き75㎡(3LDK)が中心で、キッチンには生ゴミディスポーザー、浴室ミストサウナ、リビング床暖房など。

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 このマンションについては、先に書いた記事を参照していただきたい。分譲単価170万円台の後半から180万円は建築費がどんどん上昇していることを考慮すると予想通りではあるが、これまで松原団地駅圏で分譲されたマンションより単価は3~4割上昇。東武伊勢崎線沿線の埼玉県前駅圏と比べても最高値圏にある。専有面積は最低でも70㎡であることから多様なニーズに応えられそうになく、「高い」という印象はぬぐえない。これほどの戸数でプランが5つくらいしかないのも最近では珍しい。ユーザーがどのような反応を見せるか。

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「シーズンパークアベニュー」完成予想図

約6000戸の松原団地 建て替え本格化 戸数(面積)制限はなぜ(2015/1/12)

カテゴリ: 2015年度

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「シティテラス草加松原」完成予想図

 住友不動産が東武スカイライン松原団地駅で約6,000戸の「松原団地」建て替え事業の一環として538戸のマンション「シティテラス草加松原」を分譲する。この記事を書く前に、分譲に際してURと草加市が協議してつけた要件について触れたい。建築費の上昇と厳しい面積要件によってサラリーマンのマンション取得は絶望的になってきた。

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 昭和30年代に建設された約40,000戸のUR賃貸の建て替えが決定されたのは昭和60年代の初めだった。松原団地も昭和39年に完成した総開発面積約54ha、全5,926戸の建て替え対象団地で、計画の概要がまとまったのは平成15年。この間、URと地元の草加市はなにをやってきたのだろう。

 「松原団地」という誰も知らないようなマイナーなイメージが、信じられないような時間的ロスを生んだのか。記者はマンションの取材などで「松原団地駅」には数回訪れているが、業界関係者も含めどこにあるかを知っている人は圧倒的少数だろう。獨協大学があることで知られている駅だが、駅名を「獨協大学」に変えて欲しいという地元住民の要求はあるようだが、具体的にはなっていないはずだ。スカイツリーラインの愛称をつけた時点で駅名を変えていたらまた違った展開になっていたのではないか。

 この問題はともかく本題に入る。すでにA街区の約1,500戸の分譲・賃貸はほぼ事業完了しており、これからB・C・D街区の開発が始まる。住友不動産が分譲するマンションはB街区に該当し、B街区のほかは全てURの賃貸になる模様だ。残りのC・D街区は未定で、戸建ても含め約3.000が建設される。

 建て替え事業が始まって10年間で約1,500戸だ。全て建て替えられるまで何年かかるか分からないが、これまでの事業スピードからして30年かかるのだろうか。これから少子高齢化が加速度的に進むことを考えれば、様々な問題を抱えているといえる。

 第一に指摘したいのが、今回、住友不動産にマンション用地を売却する際の条件だ。敷地面積約2haに対して、草加市とURが課した条件は1戸につき38㎡の土地を確保することだった。2ha÷38=526。同社はほぼ条件通りに建設することが分かる。

 敷地の容積率は200%だから、容積いっぱいに住宅を建設すると、4ha÷538=74.3㎡。同社のマンションの専有面積は約70~87㎡で、平均は約75㎡というから、これもほぼ売却条件通りだ。

 さて、業界関係者の皆さんはこの条件をどう思われるか。同業の記者は「一定の条件は必要。いやなら住まなければいい」と話した。

 なるほど、確かに住宅の質は「広さ」だ。広いほうがいいに決まっている。しかし、先立つのはお金だ。いったいどれくらいのサラリーマンがお金の心配なしに自由にエリアを選ぶことができるだろうか。低中所得層が東京23区内で購入できるマンションはほとんどない。「広さ」は当然入居する人の家族構成によって変わる。単身者なら40㎡でも十分な広さではないか。一律に網をかぶせるなんて暴挙だ。

 よって、記者はURと草加市が付した条件は納得ができない。駅から徒歩6分だ。「松原団地」がマイナーなイメージしかないとはいえ、市民やその他沿線の多様なニーズが期待できる。子育てファミリーだけでなく単身者、DINKS、高齢者の需要もあるはずだ。戸数条件を設けたことは、こうした多様な需要に背を向け、商品企画の自由度を奪うものでしかない。URはこれまでも住宅用地の売却には同様の条件を付してきたが、記者はまったく理解できない。行政もURの意向にどうして沿うのかこれもまた理解できない。

 問題はこれだけにとどまらない。戸数制限(面積要件)は分譲価格に大きな影響を与える。同社は価格は現段階で未定としているが、記者は最低で175万円、アッパーで180万円と読んだ。マンションの建築費がどんどん上昇しているので、他と比べ割高ではないとおもう。

 しかし、「松原団地」駅圏のこれまでのマンションと比べればとんでみない単価になりそうだ。草加駅圏ではリーマン・ショック前に駅近で同社の物件(93戸)と東京建物の物件(63戸)が坪185万円で分譲された。東建のほうは立地条件がよく戸数も少なかったことから早期完売したが、同社は完売まで3年くらいかかったのではないか。

 草加でも坪185万円というのは限界価格だと思う。南越谷の駅近マンションもアッパーは180万円だ。

 松原団地でいえば、これまでは坪130~140万円が相場だ。今回はこれらから3~4割のアップだ。単価が上昇する分だけ専有面積を圧縮すればまた展望が開けるが、今回はそれがない。同社はこの厚い壁を打ち破れるのか。

 住宅ローン金利はただ同然まで下がったが、容易に超えられる壁ではない。街はお金持ちも低所得者も年よりも若者も住んで生き生きしたものとなる。都市計画のイロハだ。URはそれをやってこなかったから解体されようとしている。十分学習したはずだと思っていたが、まだ固陋にしがみつこうとしているのか。

 批判的なことばかり書いてきたが、一つだけ突破口になりそうな「切り口」もある。草加市は財政的に健全だが、市民の施策に対する満足度は水環境、緑環境、景観、防犯など20~30%台で決して高くない。しかし、「松原団地駅西口」の都市計画に対する満足度は57.9%で、「草加駅東口」の55.1%より高く市内でもっとも評価が高い。今後、住宅、公園などが整備されれば、「草加」を上回る住みよい街になる可能性はあるとみた。

住友不動産 全6,000戸の「松原団地」建て替えエリアで538戸のマンション(2015/1/13)

カテゴリ: 2015年度

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「(仮称)品川ベイサイド大規模プロジェクト」完成予想図

 住友不動産は1月8日、東京ガスのマンション向け家庭用燃料電池「エネファーム」と「停電時発電機能」を「(仮称)品川ベイサイド大規模プロジェクト」に搭載すると発表した。

 「停電時発電機能」を導入することで停電時に「エネファーム」が発電停止中でも、自立起動して発電し、停電時使用可能コンセントを通じて電力を家庭内に供給することができる。同社は51戸に採用する。

 物件は、JR 山手線品川駅からバス4 分・「天王洲アイル」バス停徒歩5分の全254戸。竣工予定は平成28 年2 月下旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。

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 マンション向け「エネファーム」は、東急不動産が昨年分譲開始した「ブランズ品川勝島」に採用されたのが第一号で、これまで三菱地所レジデンス・総合地所「ザ・プレミアスカイ品川中延」、サンケイビル「ルフォン石神井公園」、東京建物「Brillia東小金井」、同「Brillia山手動坂」、積水ハウス「グランドメゾン上原コート」、伊藤忠都市開発「クレヴィア小竹向原」の7件に採用されている。「停電時発電機能」を搭載しているのは今回が初めて。開放廊下側に設置するためかなりのスペースが必要で、コンパクト化が課題。

 

 

カテゴリ: 2015年度

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「グランスイート神楽坂ピアース」完成予想図

 丸紅(事業比率60%)とモリモト(同40%)の初のJVマンション「グランスイート神楽坂ピアース」を見学した。昨年10月からモデルルーム見学を受け連れているが、平日も含めほぼ予約でいっぱい。人気必至だ。

 物件は、東京メトロ東西線神楽坂駅から徒歩3分、新宿区矢来町に位置する10階建て北棟61戸と南棟57戸の2棟全118戸。専有面積は42.56~107.07㎡、価格は未定。施工は大和小田急建設。竣工予定は平成28年1月下旬。管理は三菱地所丸紅住宅サービス。販売代理はモリモト。販売開始は1月中旬予定。

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 これまで、モリモトは丸紅の物件の販売代理をいくつか行っており記者も見学してきたが、JVは今回が初めてだ。5日からマンションが見学できてラッキーだった。

 建物のデザイン監修はアーキサイトメビウス(今井敦氏)が、インテリアコーディネートは鈴木ふじゑ氏がそれぞれ担当しているように、モリモトが全体的な商品企画を担当していることが分かる。同社のこれまでの物件と同様、デザインが秀逸で設備仕様レベルが高いのが特徴だ。

 建物の外観は端正なライムストーンの白が基調。インテリアは玄関床、キッチン・洗面・トイレ天板に天然石、建具面材に高級材のマホガニーを、床に突き板を採用(一部除く)。一方で、リビングドアには丸紅が分譲して好評だった「グランスイート広尾」と同じものが採用されているように、双方の〝いいとこ取り〟のデザインでもある。

 問題の価格。立地条件からして坪単価は400万円を突破するのは間違いない。かといってすべてが億ションになるような敷地形状ではない。敷地西側は道路を挟んである銀行の中層の社宅が建ち並んでおり、住環境もまずまずだが、北棟は自己日影を受けそうな住戸や北向き住戸もある。

 したがって、高層住戸やワイドスパンの南向き住戸の10戸くらいは坪500万円以上の億ションになりそうだが、40~50㎡台は坪300万円台の後半でグロス価格も抑えられるはずだ。その意味で、シングル層向けでもあり富裕層向けでもある。建具ドアにマホガニーを採用するマンションなど最近はほとんどない。

 昨年10月にモデルルームをオープンしたが、平日も含め予約はほぼ満室で、10人くらいのスタッフでも対応するのがやっとだという。両社が組むことによる相乗効果も期待できると見た。

カテゴリ: 2015年度

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「勝どきザ・タワー」の借景

 記者が選んだ今年(2014年)の「話題のマンション」は30物件。いつものようにモデルルーム・現地見学した95物件の中から選んだもので、必ずしも物件の良否を判断して選定したわけではないことを断っておく。「ベスト3マンション」はこちら

●湾岸マンション

鹿島建設他「勝どきザ・タワー」

住友不動産「ドゥ・トゥール」

東京建物他「東京ワンダフルプロジェクトBAYZ

 今年も湾岸マンションが話題を集めた。主な新規供給鹿島建設他「勝どきザ・タワー」、住友不動産「ドゥ・トゥール」、東京建物他「東京ワンダフルプロジェクトBAYZ」の3物件。

 「勝どき」の売主は鹿島のほか三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友商事、野村不動産の4社。総戸数1,420戸のうち販売戸数は1,318戸。6月に販売開始され、これまで約800戸が供給された。この物件については「ベスト3マンション」でも触れたので、そちらの記事も参照していただきたい。戸数が多く、後続の競合物件が控えているため、価格設定を低く抑えたのだろう。意思決定するのはユーザーだ。極めて品質が高く、割安感があるということにとどめる。

 「ドゥ・トゥール」は1,450戸のツインタワー。他にSOHO216区画がある。坪単価は現状では最高値の350万円。同社によると販売は順調に進んでいるようだ。近くには前田建設工業が33階建て350戸の建設を進めているが、自社で売るのか、デベロッパーに卸すのか不明。各社が出揃った段階で決めるのか。

 「BAYZ」は、「東京ワンダフルプロジェクト」第一弾の「SKYZ」(1,110戸)に続く第2弾で、戸数は550戸。建物売主は第1弾と同じ東京建物、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、東急不動産、住友不動産、野村不動産の大手6社に、土地売主が東京電力。残りは200戸くらいか。3月末までに完売するはずだ。ここは中央区ではなく江東区なので単価は低いが、今後は信じられない値段になるはずだ。

 このほか湾岸では、三菱地所レジデンス・鹿島の「ザ・パークハウス晴海タワーズクロノレジデンス」(883戸)に続き「ティアロレジデンス」(861戸)が供給された。これらを合わせると戸数は約4,300戸。

 東京オリンピック村は22棟約6,000戸が建設され、大会終了後に民間に分譲・賃貸として売却される。そのほか50階建てタワーも2棟建設するという。

 中央区の12月の世帯数は前年比3.9%、人口は前年比4.1%それぞれ増加している。人口は最少だった平成9年の約72,000人から91.1%増の約138,000とほぼ倍増している。これからも爆発的に増える。空恐ろしい。「地方創生」は大丈夫か。

「驚きの次元が異なる」鹿島建設他「勝どきザ・タワー」(2014/4/18)

住友不動産、晴海のツインタワー「ドゥ・トゥール」分譲へ(2013/11/22)

東建など6社共同「東京ワンダフルプロジェクト」第2弾「BAYZ」分譲へ(2014/5/28)

●高額・億ション

森トラスト「フォレセーヌ赤坂檜坂」

安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」

 高額・億ションでは三井不動産レジデンシャルの「三田綱町」をベスト3マンションにしたが、他では森トラスト「フォレセーヌ赤坂檜坂」、安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」が好物件。

 「赤坂檜坂」は上層階が非分譲になっているが、分譲される可能性もあると見た。坪単価1,000万円でも驚かない。その価値はある。

 「参宮橋」は、参宮橋の一等地で、坪単価415万円。極めて割安感がある。12月分譲ですでに35戸が完売。当然だろう。どこかの掲示板に記者の「こだわり記事」が貼り付けられており「提灯記事」だの「広告」だのと書かれていたが、記者はこれまで1銭ももらったことがないし、「広告記事」も一度も書いたことがない。今後もこれは貫く。記事でミスをするかもしれないが、金をもらってユーザーをミスリードするようなことは絶対しない。

本物の億ション 森トラスト「フォレセーヌ赤坂檜坂」(2014/10/22)

安田不動産「レフィール参宮橋ヒルズ」 立地よく割安の単価415万円(2014/12/11)

●御三家の低層マンション

三菱地所レジデンス  ザ・パークハウス「上鷺宮」「二子玉川」

住友不動産「インペリアルガーデン」

三井不動産レジデンシャル他「パークコート渋谷大山町」

 低層マンションでは三井・三菱・住友の御三家がなかなかいい物件を供給した。タワーもいいが、やはり住むなら低層だ。みんな価格が高くて普通のサラリーマンには手が届かないが、価格の安い郊外型も供給すれば売れるはずだ。

23区最大の第一種低層 三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上鷺宮」(2014/4/4)

国分寺崖線に重なるランドスケープ秀逸 三菱地所レジデンス「二子玉川」(2014/11/25)

用地取得から10年 小石川植物園に隣接 住友不「インペリアルガーデン」(2014/1/16)

三井レジ他「パークコート渋谷大山町」 低層住宅街の大規模単価は470万円(2014/12/3)

●みんなで渡る〝新価格〟

代表格の日本綜合地所「ヴェレーナ木場公園」

 記者の好きな魯迅の言葉を紹介する。「思うに希望とは、もともとあるものとも言えぬし、ないものとも言えない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」(竹内好訳「故郷」より)。

 この「希望」「道」をそっくり「相場(坪単価)」に置き換えていただきたい。〝新価格、みんなで渡れば怖くない〟-他社の高値待ちで供給を先送りする物件が続出したのも今年の大きな特徴だった。

 記者が驚いた新価格は「ベスト3マンション」のトップに取り上げた野村不動産の「立川」だったが、この「木場公園」にも仰天した。「木場」「東陽町」では過去、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスなどが供給しているが、最高値は坪260万円だった。この物件は280万円。それでも売れているからなお驚いた。10年前に分譲された木場駅の駅近マンションは確か坪210万円だった。

日綜「ヴェレーナ木場公園」 木場・東陽町駅圏&同社物件の高値更新(2014/11/26)

●中堅デベロッパーの星 

モリモト「ディアナコート本郷弓町」

モリモト「ピアース高田馬場」

 記者はモリモトがデザイナーズマンションに転換してからだからもう20年くらい経つか、そのほとんどの供給物件を見学している。歓楽街で分譲されたある物件(これもよく売れたのだが)は評価しなかったが、商品企画は大手と互角かそれ以上だ。「中堅」と呼ぶのが失礼なくらいだ。

 「本郷弓町」も「高田馬場」も素晴らしい。どうして業界紙の記者やジャーナリストは同社のマンションを見ないのか。不思議でならない。

あっぱれ!モリモト階数を2層分減らし天井高2.7m確保「本郷弓町」(2014/5/23)

単身者・DINKS向けの最高レベルマンション モリモト「ピアース高田馬場」(2014/2/17)

●大手に負けない商品企画

フージャースコーポレーション「デュオセーヌつくばみらい」

ポラス中央住宅「ルピアコート新小岩」

タカラレーベン「レーベンTSUKUBA」「レーベン横濱汐見台ソラノテ」

 大手の寡占化がどんどん進んでいる。情報収集力や資金力で歯が立たない中堅デベロッパーが生き残るには、大手が供給しないすき間を狙うか地方に転出するかだが、これもまたリスクが伴う。商品企画の差別化以外に方法はない。 

 その点で、シニア層をターゲットに絞り込んだ「つくばみらい」、〝ピアキッチン〟を進化させたポラス中央住宅、「太陽光」を最大の武器にあえて大手が供給する物件にぶつけるタカラレーベンは示唆に富んでいる。

フージャースコーポ シニア向け「つくばみらい」 新しい選択肢として人気(2014/5/31)

進化するピアキッチン ポラス中央住宅「ルピアコート新小岩」(2014/11/17)

つくばの一等地タカラレーベン「レーベンザTSUKUBA」が人気(2014/4/14)

したたかタカラレーベン 日本最大級「太陽光」に全戸100㎡以上「汐見台」(2014/1/16)

●高齢者施設と複合

NTT都市開発「ウェリス津田沼」

 東京都は今年、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に一般住宅及び居住者のふれあいを促進する交流施設を併設した住宅の整備について、民間事業者からの提案を募集し、東急不動産、ナルド・コミュニティネット、NTT都市開発の3事業者を決定した。

 「津田沼」は補助事業ではないが、考え方は同じ。サ高住と一体的に開発整備し、リスクを分散させるとともに付加価値をつけて供給しようという差別化戦略だ。サ高住との複合開発はこれから注目される。

併設のサ高住のサービスも受けられるNTT都市開発「ウェリス津田沼」(2014/11/4)

●駅前再開発・市街地開発

野村不動産「プラウド京急蒲田」

大京「ライオンズタワー柏」

新日鉄興和不動産他「武蔵浦和SKY&GARDEN

三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER

近鉄不・京阪神不他「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス」

京浜急行・大和ハウス「ザ・タワー横須賀中央」

明和地所「クリオレジダンス新杉田」

相鉄不動産「グレーシア調布」

 駅前の再開発の威力をまざまざと見せつけたのは野村不動産「立川」だったが、同社の「プラウド京急蒲田」、大京「ライオンズタワー柏」、近鉄不動産・京阪神不動産・長谷工コーポレーション「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス」、京浜急行・大和ハウス「ザ・タワー横須賀中央」、三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER(グローバルフロントタワー)」など再開発マンションが話題を集めた。長期低迷を続けてきた明和地所も新杉田駅前で複合マンションを供給。順調に売れているという。相鉄不動産は京王線調布駅前の一等地で分譲した。

大京「ライオンズタワー柏」 竹中の免震で坪単価は230万円(2014/6/2)

「立川」に続き「京急蒲田」 駅直結の威力まざまざ野村不動産(2014/9/2)

近鉄不・京阪電鉄不・長谷工コーポ実利を取る戦法か「王子飛鳥山」(2014/4/23)

「武蔵浦和SKY&GARDEN」 販社に長谷工アーベストが選ばれた理由(2014/4/15)

中心市街地の活性化の起爆剤 京急・大和ハウス「ザ・タワー横須賀中央」(2014/4/14)

相鉄不動産 調布駅前の一等地で再開発マンション(2014/10/3)

三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER」(2014/6/17)

明和地所 新杉田駅前の商住一体「クリオレジダンス新杉田」(2014/4/9)

●〝元気印〟

大成有楽不動産「オーベル志村城山」など

 今年元気だったデベロッパーをあげるとすれば、大成有楽不動産を間違いなくその一社に入れる。2012年4月に建物・施設管理事業の大成サービスとマンション開発が中心の有楽土地が合併し、大成有楽不動産が誕生したが、その後着実に前進している。マンションの商品企画は一変した。2カ月で完売した「志村坂上」は立地が抜群だったし、「オーベル浦和レジデンス」、「オーベル金町レジデンス」も早期完売した。

大成有楽不動産「オーベル志村城山」 全67戸が2カ月で完売(2014/9/2)

●〝脱LDK〟〝間取り自由〟

三井不動産レジデンシャル パークホームズ「築地」「駒沢」

 将来のマンションライフを見据え、着々と布石を打っているのが三井不動産レジデンシャルだ。〝脱LDK〟の提案を「築地」で行った。「駒沢」では、女性でも簡単に動かせるキャスター付き「カナウシェルフ」を初採用した。単身女性のマンション購入を支援する女性向けサイト「モチイエ女子web」を立ち上げ、将来のマンションコミュニティを考えるイベントも行った。「新三郷」では「三井住空間デザイン賞」の発表会を行った。

三井不動産レジデンシャル “脱LDK”シニア層のニーズ取り込む「築地」(2014/1/14)

三井不レジデンシャル 可動間仕切りで間取り自由自在 「駒沢」に初採用(2014/5/28)

●最後の同潤会建て替え

三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上野」

 全部で16あった同潤会アパートのうち最後まで残っていた「上野下アパート」の建て替え、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス上野」が分譲された。ホームページを見たら残りは2戸となっていた。

三菱地所レジデンス 最後の同潤会建て替え「上野」ワイドスパンがいい(2014/4/25)

●わが街

三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス多摩センター」

清水総合開発「ヴィークステージ多摩センター」

 最後に、わが街の2物件を選定するのを許していただきたい。多摩センターは断じて〝オールドタウン〟ではない。この数年間で駅周辺に2000数百戸のマンションが分譲され、活気を取り戻しつつある。〝駅近〟で言えば三菱地所レジデンスの物件が最初で最後。多摩センター初の免震で、坪単価は「立川」より100万円以上安い。残りはわずかのはずだ。清水総合開発の物件も立地はいい。URの「わんにゃんワールド」跡地開発が待たれる。

駅近の免震 最初で最後 三菱地所レジ「ザ・パークハウス多摩センター」(2014/6/6)

住宅地としては一等地 坪200万円は妥当 清水総合開発「多摩センター」(2014/11/25)

カテゴリ: 2014年度

 今年も残りわずか。この1年間で書いた「こだわり記事」は378本。分野別の内訳はマンションが155本(うち95本がモデルルーム・現地取材)、一戸建てが48本(うち30本がモデルハウス・現地取材)。記事の半数以上は分譲マンション・戸建てだった。コピー&ペーストの記事はあまり書かなかったつもりだ。RBAの野球記事も200本くらい書いた。マンション市場を中心にこの1年間を振り返ってみる。

 その前に、誤字脱字だらけの独断と偏見に満ちた記事を読んでいただいた皆さんに紙面ならぬ画面を通じて感謝し、お詫びいたします。

 一つだけ言い訳をさせていただくと、記事は〝ラブレター〟であり、スピードが勝負です。私のモノサシで書くので誤りはつきもので、急げば急ぐほどミスも増えます。近眼・老眼が加速度的に進んでおり、集中力が欠けるのは以前からですが、加齢が追い討ちをかけています。どうかこの事情を汲み取っていただき、お許しいただきたいと思います。

◇      ◆   ◇

 分譲マンションでは、1年間を通じて価格(単価)の上昇が強く印象に残った。〝新価格〟がとくに後半から続出した。単価予想も外れることが多かった。来年はもう一段高くなるのは間違いない。都心部の一等地では坪700~800万円台が一般化するのではないか。23区内ではよほど立地条件の悪いところでないと坪200万円以下はなくなりそうだ。

 サラリーマンの実質賃金は上昇していないので郊外部の価格上昇は懸念材料だ。前半では坪130万円台も供給されたが、後半は最低でも150万円くらいになってきた。第一次取得層の取得限界は坪180万円と見ているが、限界に近づいてきた。設備仕様レベルを落とす物件も増加した。

 単価上昇を表面化させないよう専有面積圧縮でグロス価格を抑制する物件も目についた。いつか来た道だ。3~4人家族で30坪(90㎡)というのが記者のデベロッパーに託す夢だが、当分実現しそうにない。

 売れ行きは総じて好調だった。ベスト3マンションの記事でも書いたが、野村不動産「立川」と三井不動産レジデンシャル「三田綱町」が瞬く間に売れたのには驚いた。いま売れ残っている物件も、来年は新価格が満遍なく浸透するだろうから根雪のように残ることはなさそうだ。

 供給減がマスコミでも報じられたが、年間4~5万戸というのが適正な戸数だとわたしは考えている。レベルの高いリフォーム・リノベーションも増加しており、新築だけでなく中古マンションも取引が活発になるのは間違いない。全体として市場は緩やかに縮小し、大手の寡占が加速する。中小デベロッパーは企画力が勝負になりそうだ。

 分譲戸建ては取材回数が少ないので分からない部分も多いが、記者が見学した物件は総じてレベルの高いものばかりだった。積水ハウスの「5本の樹」は他社も見習うべきだ。年末に見たミサワホームの「熊谷」は最高の物件だった。三井不動産レジデンシャルと野村不動産の首位争いもみものだった。野村は戸数の少ない物件もこれからは供給しそうだ。都内に進出したポラスも意欲的な物件を供給した。フージャースアベニューの商品企画も光った。老舗の細田工務店はもっと自社のPRに力を入れてもいい。

 いわゆるパワービルダーの取材をここ数年行なっていないが、業界紙記者も物件見学はほとんど行なっていないようだ。マンションと同じくらい供給されているのに、なぜ取材しないのか。

 業界団体では、マンション管理業協会の意欲的な活動が目立った。ハウスメーカー・デベロッパーの課題でもあるが、コミュニティの「見える化」をぜひ進めて欲しい。

 国交省の取材はあまり行なわなかった。業界紙は宅建取引主任者の「宅建士」の〝昇格〟をずっと記事にしており、重大ニュースの一つにしているようだが、これが解せない。それより「日本らしく美しい景観」とは何ぞやの答申が待ち遠しい。

カテゴリ: 2014年度

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「プラウドタワー立川」

 記者が選んだ今年の首都圏ベスト3マンションは野村不動産「プラウドタワー立川」、三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田綱町」、コスモスイニシア「イニシア武蔵新城ハウス」-前職を含め30年以上も記者の独断と偏見で「話題のマンション」「ベスト3マンション」を選んでいるが、今年のベスト3マンションは最後の1物件を選ぶのに悩んだが、商品企画が素晴らしかったコスモスイニシアの創業40周年記念物件「イニシア武蔵新城ハウス」を選んだ。見学したマンションは前年とほぼ同じ95物件だった。

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野村不動産「プラウドタワー立川」

 最初の1物件はすんなり決まった。誰が選んでも野村不動産「プラウドタワー立川」は必ず入るだろう。駅前の再開発タワーマンションは同社が最近力を入れている分野で、最近では「相模大野」「武蔵浦和」「大泉学園」「京急蒲田」などを供給し、ことごとく早期完売している。他のデベロッパーを大きくリードしている。

 ベスト3の一つに選んだ最大の理由は、記者の予想をはるかに上回る坪単価342.5万円だ。断っておくが、価格に見合う価値がないと言っているのではない。あの「立川」のポテンシャルを最大限に引き上げる同社の商品企画力には恐れいったし、それがまた売れるのだから言うことなしだ。

 物件と駅をペディストリアンデッキで結び、新たに改札口を設置して広場も整備し、階高3.3m、リビングの天井高約2.6m、SI、オーダーメイド、間取り変更無償の「ライフスタイルセレクト」、設備仕様レベルなどは多摩エリアではかつてなかったものだ。

 シアター画面では「誰が想像しただろうか」「想像を超える未来」などの文言を用いて意想外の物件であることを強烈に印象づけた。その巧みなイメージ戦略にも脱帽した。多くのマンションシアターには「頂点を極める」だの「邸宅」だの「静謐」だのと手あかにまみれた、見ているほうが恥ずかしくなるような空疎な言葉が氾濫しているが、しっかりと物件の中身の「見せる化」を行っている同社を見習った方がいい。昨年の「TOMIHISA」でも「第九」が登場して仰天した。

野村不動産「プラウドタワー立川」は坪単価342万円早期完売必至(2014/7/10)

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三井不動産レジデンシャル

「パークマンション三田綱町 ザ フォレスト」

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「パークマンション三田綱町ザフォレスト」

 もう一つのベスト3もすんなり決まった。三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田綱町ザフォレスト」だ。販売戸数97戸で、すべてが億ション。バブル期はともかく、バブル崩壊後でこれほどの規模ですべて億ションとしいのは記憶にない。記者がこれまでの億ションの最高峰と思っている「麻布霞町パークマンション」は92戸で、1戸は1億円を下回っていた。単価も「麻布霞町」は630万円で、今回は725万円(予想)。単純な価格比較などできないし、これより高いマンションは数えきれないほど供給されている。

 驚くのはその販売スピードだ。瞬く間に売れた。3カ月くらいしかかかっていないのではないか。こんな芸当は他社ではできない。「完売」のリリースなど出さないのがまた同社らしい。

 物件の特性などは別掲の記事を読んでいただきたい。三井倶楽部やイタリア大使館の森などを眺められる都心の借景が素晴らしいはずだ。

 いまでもよく分からないのが、モデルルームに使用されていた家具・調度品、冷蔵庫に入っていたビールやミネラルウォーターの銘柄だ。「ヴォルヴィック」でも「エビアン」でも「ペリエ」でもなかった。お金持ちは日本のビールや水を飲まないだろうか。これは謎だ。記者が見学したときも、ヨーロッパ人らしき外国人の女性が見学していた。身なりからして富裕層であることはすぐわかった。大使館関係者は買える値段なのだろうか。日本製はTOTOのトイレくらいしかなかったのではないか。

「麻布霞町」を超えるか三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田綱町ザフォレスト」(2014/7/4)

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コスモスイニシア「イニシア武蔵新城ハウス」

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「イニシア武蔵新城ハウス」

 さて、最後のベスト3。〝鹿島ファン〟の記者が最初に考えたのは「勝どきザ・タワー」だった。これも見学したときの記事を読んでいただきたい。素晴らしいマンションだ。非の打ちどころがない。

 なのになぜ選ばなかったか。それは価格設定だ。記事を書いたときは、坪単価は臭わせただけで書かなかったが、予想した単価は坪350万円だった。東側の眺望は劣るが、北側の浜離宮を見下ろせる立地を高く評価した。しかも、浜松町駅も橋ができれば徒歩圏になる。今でも単価予想は間違っていなかったと思う。

 ところが、第1期の単価は310~320万円くらいだったようだ。当然のごとくよく売れた。戸数が多いため価格を抑えたようだ。これはこれで嬉しいのだが、やはりこの物件は高値挑戦してほしかった。そうでないと他の物件と釣り合わない。鹿島ファンだからこそ、記者の期待に応えてくれなかったというその理由のみで選外とした。

 そこで浮上したのがコスモスイニシアの「イニシア武蔵新城ハウス」だ。これも記事を参照していただきたい。創業40周年記念というだけあって商品企画が秀逸。

 リビング、居室、コーナー、天井、壁などの面に一切柱型や梁型が出ていない。カーテンボックスも埋め込み型にし、廊下と居室ドアの引き戸の高さは2400ミリ。下足入れには業界初と思われる窓を設けている。坪単価230万円というのもぴったりの値付けだ。もっと高くしても売れたかもしれない。

 売れ行きも好調のようで第1期60戸が即日完売、引き続いて分譲した第1期2次16戸も好調に推移している。

コスモスイニシア創業40周年の「武蔵新城」30年前の「シカク」蘇る(2014/10/9)

カテゴリ: 2014年度

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 良好なマンションコミュニティの価値は250万円!?-三井不動産レジデンシャルと三井不動産レジデンシャルサービスが面白くて、マンション商品企画にとって示唆に富んだアンケート結果をまとめ発表した。

 先月26日に行ったマンションの未来について語るシンポジウム「Mirai Mansion Meeting」の参加者を対象に「2020年のマンションコミュニティ未来予測」に関して行ったもので、19歳から63歳まで225名(男性119名、女性35名)から回答を得た。
 コンビニなどが近隣にないと仮定し、調理中に醤油を切らしていることが分かったとき「近所に借りられるか」という問いに「YES」と答えた人は62%、近所から醤油を貸してほしいと言われたらという質問には96%の人が「YES」と答えた。

 また、2020年ころ、今よりもコミュニティが豊かになっているとしたら、近所の人とどこまでシェアできるか聞いたところ、選択肢の中からもっとも多かったのは「調味料」で58%、次いで「調理器具」47%、「キッチン」30%、「ダイニングテーブル」24%などが多く、「風呂」15%、「寝室」4%、「寝具」4%などもあった。

 さらに、良好なコミュニティができることによって実現できそうなことについて聞いたところ、「サークル活動」17名、「共同ペット」3名など趣味や娯楽を住民同士で〝共遊〟いるという回答が多く、「子ども/ペットの預かり」15名、「看取り」1名などもあった。

 3,000万円のマンションを購入すると仮定した場合、「良好なコミュニティがあるとしたら追加でいくらまで出してもいいか」という問いには、「~250万円」がもっとも多く26%で、第2位は「~500万円」24%。全体の2人に1人が物件価格の10%程度を良好なコミュニティの「価値」として評価することが分かった。

 「理想とする居心地のいいコミュニティイメージを漢字1文字で表すとどうか」という問いには「楽」28名、「和」14名、「快」8名、「優」8名などとなった。

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 読者の皆さんはこのアンケート結果をどう受け止めるか。面白半分で聞き、面白半分で答えたと考える人も少なくないはずだ。現在のマンション生活ではまずあり得ないことだからだ。よほど親しい関係なら醤油などの貸し借りは日常茶飯に行うだろうし〝共遊〟を行っている人もいるだろう。

 記者が小さいころは、醤油に味噌、砂糖などの貸し借りは当たり前で、風呂も隣同士で貸したり借りたりした。店は徒歩で10数分のところしかなかった。味噌、醤油、酒などは量り売りだった。親につり銭を飴玉に変えてもいいという条件でよくビンを抱えて買いに行った。頭の中は飴玉しかないから、途中で醤油なのかソースなのか分からなくなることもしばしば。間違ってまた買いに行かされた。そうして我々の世代は育った。

 世の中は変わった。無縁社会だ。5年先だろうが10年先だろうが、コミュニティは益々希薄になるのではないかとみんな考えている。しかし、近所から醤油を貸してほしいと言われたらという質問に96%の人が「YES」と答えた。みんな意識の底には「群れて生きたい」という願望があると記者は考える。そのほうが「楽」に決まっている。そのきっかけがなかなか見つからないだけだ。

 だれがそのきっかけづくりを行うかだ。先日、マンション管理協がコミュニティに関する研究調査結果をまとめ発表した。ここで佐々木誠・日本工業大学淳教授はコミュニティの価値の「見える化」を図り、マンションが目指す方向性を「コミュニティポリシー」として公開すれば、マンション購入者の購入行動に大きな影響を与え、マンションの資産価値を高めることも可能と話した。

 佐々木氏の提案は説得力がある。今回のアンケートを行った三井不動産レジデンシャル市場開発部商品企画グループは決して面白半分でやったわけではないはずだ。ひょっとしたらコミュニティポリシーの実践を考えているのではないか。どこよりも早くやったら三井のマンションが圧倒的な人気を呼ぶと思う。ただ、まさか250万円を価格に上乗せはしないだろう。価値は認めてもユーザーはない袖は振れない。

マンション管理協、2年間に全4冊1630枚の研究調査報告書(2014/12/15)

主役は参加者 マンションコミュニティーを考える三井レジのシンポに340名(2014/11/27)

カテゴリ: 2014年度

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「住生活総合サービスの需要の明確化に関する研究」研究報告会(TKP八重洲カンファレンスセンターで)

 マンション管理業協会(管理協)は12月14日、「『住生活総合サービスの需要の明確化に関する研究』研究報告会」を行った。同研究はA4判150ページにのぼるもので、筑波大学教授・花里俊廣氏を代表とする研究グループが管理協から受託されて、マンションの管理組合のコミュニティとしてのあり方や管理会社が行う問題解決などについて役割や意義、有用性を明確にしてまとめたもの。昨年発刊された「『マンション管理における顧客需要の明確化』に関する研究」(A4判130ページ)に次ぐもの。会員会社、マンション管理組合、一般等から約60名が参加した。

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花里氏

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 管理協は別掲のように11月26日にも有識者への研究委託を進めている「マンション管理業の将来展望に関する研究」(代表研究者・大橋弘東京大学大学院教授)のうち、平成25年度に実施した「マンション管理業の実態調査 結果報告書No.2」(A4判、94ページ)が刊行したのに伴う調査結果報告会を行っている。

 原稿量はA4で464ページ、400字原稿用紙にして約1,630枚。長編小説数冊分だ。研究に関わった大学の先生は7名。2年間でこれほどの量で、しかも、マンション管理の現場担当者や購入者へのアンケート・聞き取りを行い過不足なくまとめたものはおそらく過去にないはずだ。マンション管理の〝バイブル〟として今後研究者や管理の現場で読まれると確信する。

 記者もすべて読んでいるわけではないので、ここで一つ一つ紹介できないが、興味のある方は管理協・電話03-3500-2721へ問い合わせていただきたい。無料というわけにはいかないだろうが、実費で購入できるはずだ。

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 今回の報告会でとくに記者が注目したのが、日本工業大学建築学科准教授・佐々木誠氏が担当した「コミュニティサービス:コミュニティの価値とサービスのニーズ」に関する論文だ。33ページにのぼりコミュニティの定義から視点、価値、支援サービスの可能性まで踏み込んでいる。ここまでマンションのコミュニティに踏み込んだ論文はまず過去にないはずだ。

 コミュニティの価値と評価については、多様なニーズがあることから例えば数値的に示すのは難しく、「中古の不動産情報へのコミュニティ情報の新設」提案は「断念」せざるを得なかったと佐々木氏は語ったが、新たなコミュニティサービスの提案はマンション管理組合-居住者-居住者複合体-マンション自治会が何らかのきっかけで複合的に結合し、単なる単棟のマンションだけではなく地域を巻き込んだより高次の地縁コミュニティの社会的意識化が可能となるとしている。

 花里氏は、様々な分析手法を用い、耐震改修を行った江戸川区のマンションは70㎡平均で139万円/戸(坪6.5万円)高く取引され、耐震改修に200万円/戸かかるとすると、公的補助が3分の1くらい出るので。元が取れると報告した。

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佐々木氏

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 花里教授をはじめ研究に携わった方々の講義をいちいちごもっともだとうかがった。花里氏の報告については中古市場がいま一つよく分からないのでコメントは保留する。新築市場は、その時々の市場が判断するので、質の高い・単価が高いマンションが売れるわけではない。

 一つだけ記者のくりごとを聞いていただきたい。管理会社だけではないマンション業界全体の「問題解決に取り組む姿勢」の問題についてだ。わが業界は「問題解決」に対していつも後ろ向きで、それが販売促進につながるかどうかという視点でしか考えてこなかったのではないかと思うからだ。

 そのいい例がマンションマナーだ。現在、「ペット飼育可」は常識になっているが、各社が「ペット飼育不可」から「可能」にしたのはせいぜいこの10数年前のことだ。バブルが崩壊しマンションの売れ行きが悪化していたときに、販促の手段として各社が採用したのがはじまりだ。記者はそれ以前に、「ペット飼育を認めるべき」と大手の管理会社に取材というより直談判したが、ほとんど門前払いだった。

 「ペット不可」から「ペット可能」へ180度の転換を図ったのと真逆の転換を図ろうしているのが、人権を無視するような禁煙ルールの規約化だ。

 ここ数年、デベロッパーは専用使用権があるバルコニーを含めてマンションの共用部分での禁煙条項を原始規約に盛り込むようになった。

 平成14年に施行された健康増進法が法的な根拠になっており、医学的根拠が希薄でもあるにも関わらず、タバコを吸わない人より吸う人のほうがガンの発生率が高いなどとする疫学的な理由でもって、そしてそれだけでは説得力がないとみると「受動喫煙」を持ち出して吸わない人の恐怖心をあおり、さらには「タバコのポイ捨て」などという理由にもならない理由を持ち出して、有無を言わさず禁煙に乗り出した。記者はこれが怖い。タバコも酒も嫌ったヒトラー的発想ではないか。

 ペットを飼う人も飼わない人も、タバコを吸う人も吸わない人もそれぞれの権利を認めあい共存するのが民主主義であり、集合住宅でのルールであるはずだ。一方の側の権利のみを振りかざすのでは絶対に快適なマンションライフは保障されない。

 マンション管理会社は、親会社のマンションデベロッパーのこの暴挙に何ら反抗しない。そのような業界団体が、本気で「コミュニティサービス」を実践するかどうか注視したい。

 もう一つは、マンションの「コミュニティ」についてだ。

 今でこそデベロッパーは「コミュニティ」の大切さをアピールし、支援の取り組みを活発化させているが、以前はそうでもなかったし、最近は〝販促の手段〟としての意図が見え隠れする。本気度が試される。コミュニティ支援活動が正当に評価され、フィーとして報われるのが理想だと思う。佐々木氏が研究論文に記載することを断念した「中古の不動産情報へのコミュニティ情報の新設」はどこか実施に踏み切ってほしい。

 さらに、マンションの「自治」「管理組合」について。

 かつて戦前の自治会・町内会は戦争推進の役割を担わされた歴史がある。今でも地方自治や大学自治をめぐっては国などの干渉、支配が問題になるケースが少なくない。だから「自治」に対して政治的な匂いをかぎ、嫌悪する人もいるのではないか。記者は英語嫌いだが、英語ではself‐government、あるいはマンションなどの集合住宅の自治会などはresidents' associationと訳されるのだろうが、自らが治める-なかなかいい和訳だ。

 「管理組合」もまたしっくりこない言葉ではないか。「組合」という語彙はわが国にはなかったのではないか。「結」とか「講」に戻せとは言わないが、すんなり受け入れられる気が利いた言葉はないのか。

マンション管理協が「管理業の実態調査」 将来展望に明かり灯る(2014/11/27)

強まるバルコニーでの禁煙 「共同の利益」に反しないのか(2014/9/27)

カテゴリ: 2014年度

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「レフィール参宮橋ヒルズ」完成予想図

 安田不動産が12月13日に抽選分譲する「レフィール参宮橋ヒルズ」を見学した。最近はほとんど供給事例がない参宮橋駅圏でヒルトップの一等地、坪単価も超割安の415万円。設備仕様レベルも高い。第1期26戸は即日完売必至と見た。

 物件は、小田急線参宮橋駅から徒歩3分、渋谷区代々木4丁目の第2種低層住居専用地域に位置する5階建て(建基法では地上4階地下1階建て)全51戸。第1期の専有面積は43.65~111.65㎡、価格は5,080万~15,980万円(最多価格帯5,080万円・5,380万円・6,580万円・7,780万円)、坪単価は415万円。施工は飛島建設。販売代理は東急リバブル。12月6日から登録申し込みが始まっており、締め切りは12月13日17:00。

 現地は旧興銀の社宅跡地。エントランス部分からもっとも高いところまで約6mの高さがある傾斜地に位置しており、建物は内廊下方式で住戸は南向きと北向き。

 外構や外観デザイン、設備仕様レベルが極めて高いのが特徴。道路に面した敷地南側の擁壁は石貼り。建物外観の基壇部は御影石、柱のタイルは縦張りとし、バルコニーの室外機を隠すために横ルーバーを配し、バルコニー天井は木目調のシート仕上げ。

 住戸内の設備仕様は極力オプション仕様を少なくしているのが特徴。玄関・廊下床、巾木は大理石、キッチン・洗面カウンタートップ・トイレ手洗いカウンターは御影石かフィオレストーンの選択制。キッチンはユーティリティシンクを採用。三面鏡下のモザイクタイルも標準。浴室のカウンターにも御影石を採用。ドア把手は本革巻き仕上げ。

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エントランスホール

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 マンション単価が信じられないくらいどんどん上昇している。このマンションも高値追求するのかと思ったが、そうではなかった。その逆だ。さすが旧安田財閥といいたい。浮利を追わないデベロッパーがあっていい。

 実は、この物件の存在は先週、別の取材で参宮橋駅に降りて初めて知った。一等地であるのはすぐわかった。もともとこの街が好きで、ひょっとしたら単価は500万円くらいするのではないかと思った。

 モデルルームで同社の開発事業本部開発第四部第一課課長代理・渡辺淳氏に単価を聞いてその安さにびっくりした。確かに北向きの住戸の3階部分あたりまでは日照や眺望が期待できず単価は400万円以下というのは納得できるが、南向き住戸は、立地の希少性、設備仕様レベルの高さからいって坪500万円の価値は十分ある。

 第1期26戸にはほとんど登録が入っており、抽選になる住戸もあるという。即日完売すると見た。

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車寄せ

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 正直に言うと、記者はもともと芙蓉グループが好きだ。マンション、ビルも(RBA野球も)トップグループから離されているが、欲を出さずマイペース。たまにドジも踏むが時としてとんでもないヒットも飛ばす。そんなところが憎めず好きなのだ。

 同社もマンションの供給は多くないが、「ワテラス」では老舗の存在感を示した。今回の「参宮橋」は、新しいマンションブランド「レフィール」にしてから11棟目の物件で、ロゴ・デザインも一新したそうだ。どこかの一流ホテルに似ており、しっかり造りこみを行っているのにもその意気込みが伝わってくる。「参宮橋」のランドマークになるのは間違いない。

 参考までに。芙蓉を含むみずほグループのデベロッパーの直近の売上高は同社が350億円、東京建物が2,300億円、ヒューリックが1,084億円、大成有楽不動産が1,037億円、日本土地建物が732億円。トータルで約5,500億円。野村不動産ホールディングスと同じくらいだ。

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モデルルーム リビング

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カテゴリ: 2014年度
 

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