「利便性、資産性がこれほど重視される時代はない」 トータルブレイン久光社長
久光社長
「今日ほどマンションの利便性、資産性が重視される時代はない。富裕層・アッパーミドル向けは絶好調だが、年収が400~600万円台の第一次取得層向けは激減している。この傾向は益々強まり、〝新々価格〟が前倒しで一部供給されているように、価格もこれから10%は上昇する。郊外を除き3,000万円台の物件がなくなる。消費税率も10%に引き上げられるのは間違いない」-マンションのコンサルティング事業を展開しているトータルブレイン・久光龍彦社長がこう語った。
一般サラリーマンにとってはショッキングな話だ。しかし、久光氏が語るとなると信じざるを得ない。並みの評論家などとは比べようがないくらい裏付け・根拠がしっかりしているからだ。
久光氏は言う。「本業をフォローする意味はありますが、いま月に40~45社くらい回っています。20社くらいは定期的に回っているところですが、残りは大手・中小、さらには流通業界までフォローしています。業界のご意見番として役立てればとやっています。
マスコミじゃありませんからトップや秘書に直接電話してアポをとり出かけています。時候のあいさつもなし。すぐ仕入れやら単価の話に入る。相手のトップの方も外に漏れる心配がないから本音で話してくれる。皆さんからは『いつも少し先を読んでいらっしゃる』と仰っていただいています」
月に40~45社というのはすごい。久光氏は74歳だ。1日2~3社もよく回れるものだ。
マンション事業は水もの。一つのプロジェクトで用地の仕入れ-販売-引き渡しまで最低で1~2年だが、この間、一瞬にして市況が変わることもある。かじ取りを誤ればたちまち苦境に陥るのがこの業界だ。業界各社の動向を熟知している久光氏から各社のトップが情報を得ようとするのは当然だろう。お互い損得もないから忌憚のない言葉を交わせるのもうなずける。
マスコミ関係者はこういう芸当はできない。昔は広報を通さず直接企業のトップに取材することもできたが、最近は広報のチェック体制が強化されており、そのような取材をやろうものなら取材チャンネルは遮断されるし、取材を受けたトップの責任も問われかねないからだ。
記者はアポを取るのに時間はかかるしトップに易々と会えないから、現場に飛ぶようにしたのがマンション取材をするようになったきっかけだ。現場は正直だ。現場に行くと見えないものが見えてくるし話では分からない部分も分かるようになる。それでもいまは年間100件も見学していない。
久光氏にはもう一つ、誰もが真似のできない経験・経歴がある。同社は今から15年前に久光氏が立ち上げた会社だが、久光氏はそれ以前に長谷工コーポレーション専務-長谷工不動産社長-長谷工アーベスト社長-長谷工コミュニティ社長を歴任している。施工から開発、販売・仲介、管理までマンションの川上から川下まですべて知り尽くしている業界人は久光氏をおいてまずいない。
そういう人だから話は説得力がある。以下に久光氏の見解を紹介する。
「年収が400~600万円台のサラリーマンが無理なく買える3,000万円台の物件は間違いなく少なくなります。建築費はこのところ20%くらい上昇していますが、このうち10~15%は売り値に反映させないようコストを削減すれば吸収できます。ところが20%を超えてくるとなると、体力のある大手はともかく中堅デベロッパーは価格にオンするか損切りせざるを得なくなると見ています。大手もこれ以上価格を上げると売れなくなるのは分かっているから、利益率を圧縮して〝新価格〟程度に抑えるはずです」
「マンションの歴史を50年以上見ていますが、今日ほど好立地、利便性が重視される時代はありません。その背景には少子高齢化、空き家問題があります。最寄駅から遠い物件は中古になって売れない、貸せないとみんな思っています。だから狭くても高くてもいいから駅から近い物件を買う人が増えているのです。デベロッパーも(郊外の駅から遠い)価格の安さで勝負できなくなってきました」
「価格はこれからあと10%は上昇するとみています。デベロッパーにはとにかく立地、好立地の仕入れに経営資源、人材を投入すべきと言っています。幸い、ブランド立地のものはファミリーもDINKS・単身者向けも投資需要も旺盛です。投資需要では湾岸マンションは台湾人など外国人が30%くらい買っています。一次取得層にとっては中古マンションが国の政策的な後押しがありますから大きな選択肢の一つになる時代がやってくるでしょう」
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久光氏の見解をよく吟味して物件選考の参考にしていただきたい。記者がコメントを挟む余地などまったくない。ただ一つだけ言わせていただければ、記者は子育て層には駅から遠くても住環境がいい緑が豊富な郊外物件も選択肢に入れるべきだと思う。マンションは金融商品ではない。ライフスタイルをよく考えてほしい。
アッパーミドル・富裕層向けマンション 驚異的な売れ行き
「プラウドタワー立川」完成予想図
都心部のアッパーミドルや富裕層向けマンションが極めて良好な売れ行きを見せている。希少性はもちろんだが、アベノミクス効果による景気回復やオリンピック誘致決定を受けた先高観を背景に〝上がるから買う、買うから上がる〟株の世界と同様のバブリーな動きになってきた。さらに、来年の相続税・贈与税の税制改正を睨んだ節税対策としても格好のターゲットにもなっている。
希少性、先高観に節税対策も要因
アッパーミドル・富裕層向けマンションが爆発的な売れ行きを見せるようになったのは昨年あたりからだ。昨春、隈研吾氏がデザイン監修した豊島区庁舎との一体開発で話題になった東京建物他「Brillia Tower池袋」(全432戸、分譲322戸)が坪単価340万円という池袋駅圏では最近にない高値だったにもかかわらずわずか7週間で完売した。
その後、坪単価800万円というリーマン・ショック後の最高値になった〝唯一無二〟の三菱地所レジデンス「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」(73戸、分譲22戸)が即日完売。野村不動産他「Tomihisa Cross」(1093戸、分譲992戸)も坪単価330万円ながら実質半年で完売。大手デベロッパー6社JV「SKYZ TOWER&GARDEN(東京ワンダフルプロジェクト)」(1110戸)も瞬く間に売れた。
好調市場は今年に入って加速している。7月末に分譲開始された三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田綱町ザフォレスト」(97戸)の第1期80戸がほぼ完売した。坪単価は725万円で、最低価格でも1億2000万円台、最高が7億円台という文字通りすべてが億ション。登録数は80戸を大幅に上回る110件に達した。
敷地北側はオーストラリア大使館、東側は綱町三井倶楽部、その先がイタリア大使館、慶大三田キャンパスがある都心の一等地というのが人気の要因だ。同社のこれまでの「パークマンション」シリーズと比較して来場ペースは倍近いという。
JR中央線立川駅前の野村不動産「プラウドタワー立川」(319戸、分譲292戸)の第1期230戸の即日完売も業界関係者を驚かせた。坪単価340万円というこれまでの立川駅圏のマンションをはるかに上回る価格だが、ランドマークとしての資産性が評価された。
同社はこのほか、「プラウド白金台三丁目」(83戸)の第1期53戸と「プラウド自由が丘」(28戸)の高額2物件を相次いで即日完売した。前者は70年の定期借地権付きで坪単価は460万円台。後者は坪単価430万円台で、ほとんどが億住戸だった。
オリンピック選手村にも近い湾岸マンションも総じて好調だ。鹿島建設他「勝どきザ・タワー」(1420戸)は1期500戸の坪単価を307万円に抑えたのが奏功したのか、600件を超える申し込みが入った。逆に、住友不動産「ドゥ・トゥール」(1450戸、他にSOHO216区画)は坪単価350万円の高値挑戦だが、売れ行きは好調に推移している。
港区芝浦の三井不動産レジデンシャル他「GLOBAL FRONT TOWER」(883戸)は坪単価330万円だが、1期380戸の最高価格1億8200万円の住戸にも5組の申し込みが入った。
住友不動産「シティタワー武蔵小杉」(800戸)は他社物件より1割高い都心並みの坪単価320万超だが、これまで230戸を契約した。同社は坪単価400万円の「インペリアルガーデン」(167戸)も54戸を供給して45戸を契約するなど、順調な売れ行きを見せている。
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これからも単価上昇は続く。高値追求する物件が続々供給される見込みだ。
今秋にモデルルームが公開される東横線代官山駅近のアパ「THE CONOE代官山」(209戸)の坪単価は650万円くらいになると予想される。同社はこのほか「三田綱町」(45戸)「西麻布」(16戸)などを予定しているが、関係者は坪800万円を超えると明言した。
このほか、東京ミッドタウンに隣接する三井不動産レジデンシャルの物件は隈研吾氏がデザイン監修しており、坪単価が1000万円を超えるかどうかが注目される。湾岸エリアは下値が300万円超となる。
千代田区一番町のイギリス大使館も一部国に返還されることが決まった。皇居に隣接していることから、マンションになれば「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」の坪単価800万円の比ではく、1000万円をはるかに超えるのは間違いないとみられる。
建設中の「パークマンション三田綱町ザフォレスト」
蕨市&総合地所 子育て支援など街づくりで官民連携の協定結ぶ
協定書を交わす徳田社長(左)と頼高市長
総合地所は8月22日、蕨市の将来ビジョン「コンパクトシティ蕨」の推進に寄与する防犯・防災、子育て支援、地域コミュニティ活性化などの取り組みを近く分譲するマンション「ルネ蕨ガーデンシティ」盛り込むことで蕨市と合意し、協定書を蕨市と交わした。
蕨市は市域面積約5.1k㎡の日本最少の市で人口は約7.2万人。市域面積が小さいことは将来の街づくりの強みになると判断して、今後10年間に目指すべき将来像を「コンパクトシティ蕨」として今年度に策定。重点プロジェクトとして安全・安心のまちづくり、駅前の再開発を中心とする賑わいの創出、地域コミュニティの活性化などを掲げている。
一方の総合地所は、「街と暮らしと未来のために」を企業スローガンとして掲げており、これまでも分譲マンションの敷地の緑化やコミュニティ支援活動に取り組んできた。市が目指す方向と同社の企業理念が一致していることから、同社が市に呼びかけたことから今回の協定が実現した。
協定調印式に出席した頼高英雄・蕨市長は、「市の歴史・文化を継承し、利便性の高い立地条件をアピールして日本一のコンパクトシティを目指していく。町内会への加入を呼び掛けていただくのもコミュニティ形成に貢献してもらえる。官民連携の第一号として歓迎したい」と語った。
これに対して徳田賀昭・総合地所社長は、「当社はカスタマーズ・ファーストを掲げているが、市の目指すコンパクトシティは当社の企業理念と一致する。安心と安全、賑わい創出、コミュニティ活性化などに共鳴した。責任を持って事業を推進していく」と応えた。
マンションは蕨駅から徒歩12分の12階建て全164戸。専有面積は68.20~84.94㎡。施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は平成27年9月上旬。
企業の社宅跡地で四方道路に囲まれており、敷地北側には市のコミュニティセンターが隣接。敷地内に市民も利用できる防災設備を設けるほか、定員40人の認定保育所を誘致し、蕨市初の「埼玉県子育て応援マンション」の認定を受ける予定。敷地の外周を取り囲む約3m幅の歩道空間も整備する。
「ルネ蕨ガーデンシティ」完成予想図
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マンション管理組合が町内会費を代理徴収するのは違憲との判例が出ているが、これは難しい問題だ。財産管理を主たる目的とする管理組合と、入居者同士や地域のコミュニティ形成に自治活動は欠かせない。車の両輪のようなものだ。
マンションデベロッパーは、強制力はないだろうが購入者に町内会に加入することを勧めてほしい。蕨市の町内会加入率は68.9%で、待機乳幼児の数は47人だそうだ。
庭園(完成予想図)
東京建物 目黒駅前の再開発マンション 坪単価は500万円超か
「目黒駅前地区第一市街地再開発事業」完成イメージ
東京建物が参加組合員としてマンションを分譲することになっている「目黒駅前地区第一市街地再開発事業」の着工式が8月21日行われた。目黒駅から徒歩1分の都バス営業所跡地などを再開発するもので、敷地面積は約2.3ha。1棟のオフィスビルと2棟のタワーマンション945戸(うち分譲は661戸)が建設される。竣工予定は2017年11月。マンションの分譲は来春。
同事業は平成15年、「東京都先行街づくりプロジェクト」の指定を受け、良好な住宅供給とにぎわい創出、公共・公益施設の整備を目指すもの。
全体敷地約2.3haのうち駅に近いAソーンには40階建ての商業・業務・住宅棟が建設される。住宅は528戸(うち分譲は320戸)。敷地南側のBゾーンには38階建て417戸(うち分譲341戸)が建設される。施工は大成建設・竹中工務店。総事業費は約800億円。竣工予定は2017年11月。
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注目のプロジェクトがいよいよ始動した。山手線沿線のしかも駅前でこれほどまとまった規模の再開発マンションは2007年の旭化成ホームズなどが事業参画した日暮里駅前以来か。旭化成ホームズの分譲マンションは坪260万円だった。極めて割安感があり、記者は知り合いに「黙って買え」とみんなに勧めた。
今回も間違いなくいいどころか、住環境は比較にならないほど良好だ。これほど立地条件に恵まれた物件はまず今後供給されない。しかし、起工式後の囲み取材で東京建物住宅プロジェクト開発部長・田代雅実氏は「30㎡台から150㎡台まで豊富な間取りで多様なニーズに応えたい」と語ったのみで、坪単価については一切話に乗ってくれなかった。
だから、以下の単価予想はあくまでも記者の予想であって、的中しないからと言って責任を問わないでいただきたい。自信のほどは50%くらい。
比較になる物件はほとんどないが、敢えて探すとすれば三井不動産レジデンシャル「パークコート千代田富士見ザタワー」だ。一昨年分譲で、坪単価は476万円。ご存知のように最多価格帯が9,000万円台の高額だったにもかかわらず圧倒的な人気を呼んだ。
「恵比寿ガーデンプレイス」が分譲されたのは約20年前だ。バブル崩壊後の厳しいときだったが、瞬く間に売れた。分譲単価は500万円強だったはずだ。
目黒駅前のマンションでは8年前、三井不動産レジデンシャルが「パークタワー目黒」を分譲した。これもよく売れた。坪単価は400万円だった。
さて、これらの物件と比較し、さらにもっとも大事な市況がどうなっているかなどを総合的に考慮して、記者がはじき出した坪単価は最低でも500万円だ。550万円と聞いても驚かない。さすがに600万円はないと判断した。
根拠はないが、「立川駅前」の再開発マンションが340万円の時代だ。三井不動産レジデンシャルの「三田綱町」は坪単価725万円でほぼ完売した。今秋分譲されるアパの「代官山」は650万円くらいになる。今後、都心の一等地マンションは800万円台に突入するはずだ。
ならば、アドレスは「品川区」だが目黒駅前の再開発マンションが500万円を突破するのは間違いないと思う。東京建物には商品企画を練り、設備仕様を上げて高値挑戦してほしい。
完成予想図
三井不動産レジデンシャル 億ションの「三田綱町」第1期80戸がほぼ完売
三井不動産レジデンシャルが7月末に登録を締め切った「パークマンション三田綱町ザ フォレスト」」第1期80戸がほぼ完売した。
詳細は別掲の記事を参照していただきたい。全97戸が億ションで、登録数は110件にのぼり、現在契約手続き中だが全戸が完売する見込みだという。坪単価は725万円。
野村不動産 「白金台三丁目」と「自由が丘」の高額2物件が即日完売
、「プラウド白金台三丁目」(左)と「プラウド自由が丘」(完成予想図)
野村不動産は8月5日、「プラウド白金台三丁目」第1期53戸と「プラウド自由が丘」の全28戸が即日完売したと発表した。
「プラウド白金台三丁目」は、東京メトロ南北線・都営三田線白金台駅から徒歩3分、70年の定期借地権付き全83戸の規模で、今回分譲は第1期の53戸。専有面積は70.0~100.83㎡、価格は8,990万~17,480万円(最多価格帯9,900 万円台・11,100 万円台)、坪単価は460万円台。
「プラウド自由が丘」は、東急東横線・大井町線自由が丘駅から徒歩11分の販売戸数28戸。専有面積は72.02~111.28㎡、価格は9,390万~17,590万円(最多価格帯9,300万円台)、坪単価は430万円台。
旭化成不動産レジデンス マンション建て替え強化 10年後に累計100物件
「―成功例に学ぶ―マンション建替えレポートVol.2」と「ATLAS COLLECTION」
旭化成不動産レジデンスは8月1日、マンション建て替えを検討する管理組合や区分所有者向けに、これまで同社が携わった20件のマンション建て替え事例の概要と合意形成までの経緯をまとめた小冊子「―成功例に学ぶ―マンション建替えレポートVol.2」を発刊するとともに、10年後にはスタッフをほぼ倍増の200名体制に増強し、累計で100物件着工を目指すと発表した。
小冊子は、同社が行った最近の10プロジェクトについて具体的に紹介しており、希望者には無料で配布する。
また、事業強化の一環として、東京都文京区に建設中の常設モデルルーム「ATLAS COLLECTION」を2015年1月オープンする。
会見に臨んだ渡辺衛男社長は、「3年前に分社化してこれまで順調に業績を伸ばしてきた。2013年度の売上高は858億円だが、2024年には売上高2,500億円を目指す。用地取得を伴わない法定再開発、マンション建て替え、都心市街地共同化に特化していく。マンション建て替えは〝日本一〟と自負しており、スタッフは現在の205名から10年後には200名体制に増やし、累計で100物件着工を目指す。キーワードは〝権利者とともに創るマンション事業〟だ」などと語った。
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マンションの建て替えは今後間違いなく増加する。しかし、その一方で、還元率が100%以上期待できる好条件の物件は少なくなり、大手デベロッパーとの競争も激化する。争奪戦になるはずだ。また、建物の絶対高さ制限やダウンゾーニング、人口減少問題もあり、さらに建て替えではなく耐震補強、リファイニング手法など多様な選択肢も想定される。
そうした中で〝建て替え実績日本一〟を自負する同社が今後も業績を伸ばしていけるかどうか。
カギは、渡辺社長も強調したように、同社の強みである〝人にフォーカスした事業〟〝権利者とともに創る〟姿勢を徹底できるかどうかだろうと思う。
今日も記事にしたが、用地を取得して利益優先のマンション事業などは早晩行き詰まる。住民とともに街のポテンシャル、価値を引き上げるような事業でないと生き残れないと思う。〝急がば回れ〟〝Slow and Steady Wins the Race〟だ。
マンション計画の住民説明会 街づくりを語り合う場にならないか
わが街、多摩センターのマンション計画に対する住民説明会が行われたので聞きに行った。
どこの区市町でもそうだが、マンション紛争を事前に防止するために、一定規模以上の計画に対して、建築確認の前に計画概要や工事に伴う遵守事項などを近隣住民に説明するよう事業者に求める条例や指導要綱を定めている。
多摩市の場合は「多摩市街づくり条例」を定めており、近隣住民への周知義務として、「開発事業者は、規則に定める近隣住民に対し、前条第1項の規定による標識の設置以後において、説明会の開催等の方法により当該開発事業の事業計画及び工事計画について説明しなければならない」(第44条)としている。今回の説明会もこの規定に基づくものだ。
ここでは具体的な計画については伏すが、敷地面積が約8,000㎡、15階建て全300戸という大規模なものだ。敷地南側にはマンションが建っているが、北側は店舗、事務所などで、日照を阻害するような住宅はほとんど建っていない。
説明会は、工事を担当するゼネコンから近隣住民に迷惑をかけないということが説明された。騒音・振動を抑えるとか、塵埃の飛散を防止する、交通安全に配慮する、作業時間を事前に告知する、テレビの電波障害については必要な対策を講じるなどだ。
質疑応答では、約40人参加していた住民からは建物の高さや電波障害、交通対策、工事による騒音、塵埃などについて質問があった程度で、予定されていた1時間30分は平穏に終わった。
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マンションの住民説明会の取材は、「国立」マンションなど住民が反対運動を展開した案件では何度も経験があるが、このように平穏無事に行われたのはほとんど経験がない。問題になりそうな事項はほとんどないからだし、商品企画について説明する場でもない。基本的には法律に違反しない限り〝自分の土地に何を建てようが勝手〟だし、近隣住民もまた〝他人の土地にあれこれ注文を付ける〟立場にはない。
しかし、「多摩市街づくり条例」の目的は、「多摩市(以下「市」という。)が市民とともに目指す街づくりの基本理念及び街づくりの推進に必要な事項を定め、優れた住環境と地域の特性を生かした快適で安心して市民が住み続け、だれもが住みたいと感じる魅力ある街づくりを実現すること」(第1条)であるはずだ。
そのような視点に立てば、マンションの工事にともなう遵守事項について説明するのはもちろんだが、住民と一緒になって街をつくるマンションをつくる創造の場に説明会はなる。
多摩市に限らずマンションは建てれば売れる時代ではとっくになくなった。経済設計がまかり通る時代でもない。少子高齢化が加速度的に進む。都市間競争も激化する。事業者も住民も目先の利益だけでなく、30年後、40年後を見据えたあるべきマンション像を語り合える場にはならないのだろうか。
例えば、近隣住民が利用できる公益的施設を併設する。建物の階高を高くして各住戸の天井高を高くする。空地率を増やして緑化面積を多くする。行政も質の高いマンションに対しては優遇策を取ることも考えていい。
そうすれば、近隣対策としての住民説明会から住民のニーズを引き出す、街のポテンシャルを引き上げる説明会へ劇的に変わり、地元だけでなく他のエリアからも移り住みたくなるようなマンションになるのではないか。デベロッパーもゼネコンも世間の嫌われ者でなくなるに違いない。
そのようなことを考えながら聞いていたら、記者と同じように考えている人がいた。若い女性がこういった。「私は超素人。超素人の立場から言わせてもらうと、どうして敷地の割に戸数がこんなに多いのか。もっとゆったりしたマンションは建てられないのか」と。これに対して、ゼネコンからの明快な答えは出なかった。
三井不動産レジデンシャル 女性向けwebサイト「モチイエ女子web」
三井不動産レジデンシャルが販売する新築マンション購入者のうち女性単身者の購入者推移
三井不動産レジデンシャルは7月29日、女性が「住」について興味を持つ機会を提供する女性向けwebサイト「モチイエ女子web」(http://www.mochiiejoshi.com/mj/)を公開した。運営は女性メンバーで構成するチーム「モチイエ女子project」が行う。
同社は公開の理由を、女性単身者のマンション購入が増えているにもかかわらず、「そのイキイキとした実情とはかけ離れたイメージを持たれているのが現状」とし、「このような現状を打ち破り、彼女たちがより輝ける文化を醸成することを目的」としたという。
切り口はマンガ、写真、コラム、インタビューなど6つのコンテンツから構成されている。
リリースによると、同社が販売するマンションを購入する単身女性は2009年が250人くらいだったのが年々増加しており、2013年には750人くらいに達している。
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公開されたwebのトップページを見ただけで記者は退散したが、結構なことだと思う。
女性単身者がマンションを購入する動きは平成7~8年あたりから顕在化した。記者も特集で記事にしたことがあるし、「女性のための快適住まいづくり研究会」の小島ひろ美代表には何度か取材している。
男性と異なり、手堅く自己資金を貯め、劣悪なワンルームマンションではなく、広めのマンションを購入していることがよく分かった。リリースにある「イキイキとした実情とはかけ離れたイメージ」がどのようなものかはここでは書かないが、男性よりはるかに賢明な選択をしている女性というイメージのほうが記者は強い。最近は2戸、3戸と買い増ししている女性も多いと聞く。
明和地所「クリオ両国」は坪単価250万円 上々のスタート
「クリオ両国」完成予想図
明和地所が分譲中の「クリオ両国」を見学した。先週末から第1期20戸の分譲を開始しており、10戸が契約・申込済みでまずまずのスタートを切った。
物件は、都営大江戸線両国駅から徒歩8分、JR総武線両国駅から徒歩13分、墨田区緑3丁目に位置する15階建て全59戸、現在分譲中の住戸は専有面積58.56~72.57㎡、価格4,324万~5,867万円(最多価格帯4,400万円台・4,800万円台)、坪単価250万円。施工は南海辰村建設。
現地は京葉道路に面しているが、敷地の南側は高さ制限28mのエリアで、10階以上の住戸は南面が開けている。
モデルルームは約9.9mのワイドスパンで、キッチン・バックカウンター天板は御影石。食洗機が標準装備。
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両国駅圏のマンションは2~3年前までは坪単価240~260万円で分譲されていたが、建築費の上昇から最低でも250万円、高い物件では270万円を超えてきている。先日、同社の「聖蹟桜ヶ丘」を見学したとき、この「両国」を250万円で分譲すると聞いたので見学した。
現地の販売担当者によると、購入者は地元の人で立地と価格の安さを評価しているという。交通量の激しい京葉道路には面しているが、この立地でこの単価、設備仕様レベルは割安感があると思う。