野村アーバン タワーマンション売りやすくする「ホームステージングサービス」
野村不動産アーバンネットは11月1日からタワーマンションを対象にした「ホームステージングサービス」を期間限定で実施する。
「ホームステージング(Home Staging)」とは、売却不動産を家具や小物で演出することで、早期に好条件での売却を目指す販売手法。中古住宅流通量の多いアメリカでは、過去30年以上、不動産売却時に有効な手法として用いられている。単にインテリアコーディネートをするのではなく、その住宅の購入を検討する人が住まい心地を実感できるよう演出するもの。
「野村の仲介+(プラス)」各店では2014年8月から「野村のステージング」サービスを開始しており、今回はそれをさらに発展させた。
対象不動産は首都圏の20階以上のタワーマンションで、専有面積が60㎡以上。利用期間は2014年11月1日から2015年3月31日まで。売り出し価格が同社査定価格の125%以内であることなどが条件。
空室の場合は、同社が無料でリビング・ダイニング・キッチンの家具、玄関からリビングの導線、水回りのコーディネートを行い、居住中の場合はコーディネートのほか室内荷物の一時預かりも行う。
快適住まい 購入希望住戸から360°CG映像が見える「目黒都立大」
バーチャルモデルルームが設置されている「快適サロン工房」
ばかばかしい前置きから読んでいただきたい。
本日(10月30日)、長谷工コーポレーションが記者発表した「BIM(ビム)」の記事を書き、毎号頂いている、封がしているままになっていた長谷工総合研究所の「CRI」435号を読もうとした。「シングル層の住宅事情」が特集として取り上げられていた。全6ページ。最初のほうはマクロデータが紹介されていた。ざっと読んだ。
3ページ目に、記者も面白いと思っている三井不動産レジデンシャルの「モチイエ女子web」が紹介されていた。
そして、最後の6ページ目に「独身女性のマンション購入を応援したい」という見出しのコラム記事で、(社)女性のための快適住まいづくり研究会代表の小島ひろ美氏が載っていた。その中に「今回初めて売主として『サクラティアラ目黒都立大』(総23戸)を販売しましたが…」とあった。
考えるより先に行動するタイプの記者だ。あとは読んでいない。すぐ快適住まい研究会に電話した。モデルルーム見学をお願いするためだ。小島代表が出られて「バーチャルモデルルームは近くにありますが、それでよかったら私がご案内します」と仰った。飛んで行った。
以下が小島代表からお話を伺い、バーチャルモデルルームを見学した記事だ。「長谷工」がきっかけで見ることになったのだが、バーチャル映像の考え方はひょっとすると長谷工を超えるかもしれない、それほど面白い企画だ。
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「サクラティアラ目黒都立大」は、東急東横線都立大学駅から徒歩9分、目黒区大岡山に位置する敷地面積約347㎡(容積率200%)の地下1階地上4階建て全23戸。専有面積は30.19~44.17㎡、現在分譲中の住戸の価格は2,698万~4,688万円、坪単価は342万円。竣工予定は2015年2月下旬。施工は村本建設。事業主は首都圏不燃建築公社。売主は快適住まいづくり。企画は女性のための快適住まいづくり研究会。販売代理は丸紅不動産販売。
360°のCG画像(ほとんどの住戸からどのように眺望が展開するか分かる)
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ここで詳しく紹介する余裕はないが、売主の快適住まいづくり(木村吉伸社長)と企画した女性のための快適住まいづくり研究会は以前から取材しており、一言で言えば、単身女性がマンションを買うようになった平成7年ころから一貫して女性のマンション購入を支援してきた会社と団体だ。コンパクトマンションを手掛ける多くのデベロッパーは小島氏に足を向けて寝られないはずだ。企画・販売協力は735物件、女性会員は74,670名にのぼっている。
その会社・団体がどうして自社分譲なのか。ここが一番の興味の的だ。きっかけが面白い。たまたま小島さんが物件が売りに出ているのを見つけて、直接売主の建売住宅業者に電話して取得したのだそうだ。建売住宅にすると価格は当然1億円をはるかに突破する。売れないと読んでいたその業者にしてみれば〝渡りに船〟だったに違いない。
そこからは圧倒的な会員数と企画・販売協力してきた実績がものを言う。事業主は首都圏不燃建築公社、販売代理は丸紅不動産販売、管理は三菱地所丸紅住宅サービス、セキュリティシステムはセコム。これ以上ない事業スキームを立ち上げた。
商品企画はお手のものだ。過剰と思える設備機器はすべて排除した。直天に床暖房はなし(オプション可)、エアコンスリーブは1カ所などだ。そのかわり収納や使い勝手のよいフックなどはしっかりと設けたという。
販売事務所を設置し、モデルルームやらパンフレット、模型などを作っていたのではそうでなくても利益率を抑えているのに利益などでない。会員を中心に分譲し、営業経費や広告宣伝費を削減することで数千万円の販管費を節約している。
唯一と言っていいくらいお金を掛けたのがバーチャルモデルルーム。全16タイプの住空間を見ることができ、3階、4階の全住戸からは360度の眺望を見ることができる(2階は固定画面)。10億円以上も投資する長谷工の「BIM(ビム)」には質的に劣るが、バーチャル映像は素晴らしい。これこそ記者がデベロッパーに希望するものだ。
さらにきめ細やかな配慮もしている。購入希望者には1回2時間の「ゼミ」をトータルで5回、つまり10時間受けてもらう。ここで不動産の基礎をしっかり学んでもらい、納得の上で購入してもらうのが目的だという。
すごいのは「ゼミ」の終了ごとに「カルテ」を提出してもらって、疑問などを書き込んでもらって、小島氏が直々に返事を書くというものだ。分厚いファイルを見せてもらったが、細かい手書きの文字でそれは埋められていた。52人分あった。
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まだまだ書きたいことがある。小島氏は他の女性もそうだろうが、間違いなく石橋だろうが鉄の橋だろうが叩いて渡るタイプだ。売れなかった時のリスクもきちんと考えている。頭金が不足していたり、ローン返済に不安を持っていたりしている人には車の試乗と同じように賃貸で貸すことも考えているという。
最初賃貸で住んでもらって、購入する際にはその賃料のなにがしかを返戻することまで考えている。
これは名案だ。かつて東急不動産は住宅が売れないころ、昭和50年代の後半だったと思うが、所有権と賃借権の選択制を採用したことがある。それとよく似ている。土地価格が下がる一方の局面では難しいかもしれないが、都心部の地価・建築費はまだまだ上昇する。これはヒットするかもしれない。
同社は最近、コンパクトマンション事業を展開するためスタッフ3人の分譲事業部を新設した。2件目の「石川台」の分譲も決まっているという。自社分譲となると、企画・販売協力会社と競合しないかという心配もあるが、デベロッパーがやるような土地では間違いなくなさそうだ。
ゼミの模様
三井不動産レジデンシャル、女性向けサイト「モチイエ女子web」(2014/7/29)
“マンションを買って結婚する”女性増える 快適住まい・木村社長(2012/9/21)
〝やるなら今でしょ〟 長谷工コーポ BIM(ビム)で3割コストダウン目標
「ブランシエラ板橋西台」完成予想図
長谷工コーポレーションは10月29日、新しい設計手法である「BIM(ビム)」を企画設計から実施設計-施工-販売まで活用したマンション「ブランシエラ板橋西台」の説明会を行った。
「BIM(Building Information Modeling)」とは、コンピュータ上にパーツを組み上げて作成した3次元の建物のデジタルモデルに、仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースのことで、設計業界を中心に広まっている最新の技術。同社は2012年10月にBIMの活用を推進する体制を立ち上げた。今年4月には設計と施工部門を統合した「BIM設計部」を新設。約10.2億円を投資して、2016年度には「長谷工版BIM」を同社が設計・施工する全ての物件に実施設計ベースで導入する。
BIMは設計情報の「連動性」「可視化」「一元性」を容易にし、同社の強みである95%という高い設計・施工比率とマンションに特化していることなどから他社との差別が図れる。今後は販売やマンション管理、リフォームにも活用していく。
発表会に臨んだ同社取締役兼常務執行役員・池上一夫氏は、「これまで2億円を投資して開発を進めてきたが、設計-施工-販売まで完成した。当社の強みである一貫体制を発揮して、将来的には建物の維持管理、リフォームまで活用してトータルな顧客満足度を高めることができる。トップランナーとしてまだまだ進化させていく」などと話した。
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建築物に限らずあらゆる商品がコンピュータで作図されるのは常識だろうが、いとも簡単に自由自在にマンションの設計図が完成するのを目の当たりにすると驚きだ。部品は約5,000。部品一つ変えるとコストがどれくらい違ってくるか瞬時にはじき出される。構造計算もできる。これはすごい。
記者は設計-施工-販売にBIMを採用すればどれくらいの時間とお金が削減でき、顧客の満足度が上がることの価値を金額に換算したらトータルでいくらコストダウンできるか聞いた。
これに対し池上氏は「トータルなコスト削減を定量的に測るのは難しい問題。目標としては3割くらいに置いている」と話した。
3割のコストダウン-これには驚いた。マンションの建築費はこれまでもかなり上昇したが、これからも少なくとも1割はアップする。3割もコストダウンできれば上昇懸念は吹っ飛ぶではないか。記者は「いつまでにやるのですか、やるのなら今でしょ。オリンピックが終わってからでは遅すぎる」と突っ込んだが、池上氏は時期を明確にしなかった。
しかし、同社がマンションの設計・施工では圧倒的優位な立場に立つことだけは間違いない。マンションの設計では日建ハウジングシステムが採用しているそうだが、日建は設計だけだ。施工、販売、さらには管理までトータルで提案できるのかどうか。
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「ブランシエラ板橋西台」の販売は長谷工アーベストではなく第一弾ということもあり同社が行う。お客さんの反応をフィードアップさせる狙いがあるのだろう。
従来の販売事務所と異なるのは模型図がないこと。外観も各戸の間取りも商談ブースのパソコンでバーチャル住空間が体験できる。設備仕様を瞬時に変更できるし、変更したらいくらになるのかも分かるはずだし、カラーリングも自由自在。重いパンフレットなどいらなくなる可能性を秘めている。
物件は、都営三田線西台駅から徒歩9分、板橋区高島平9丁目に位置する9階建て80戸。専有面積は67.45~87.57㎡、価格は未定だが、坪単価は190万円+α。販売開始は2016年1月下旬。
記者は23区内で坪単価180万円以下のマンションは建設できないと思っているが、そのことを証明したことだけは確かだ。この単価にBIM効果が反映されているかどうかは微妙。
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課題がないわけではない。外観が映し出された画像は自由自在に見ることはできるのだが、樹木は貧弱だった。マンションの外構は大事な要素だ。いくらお金がかかるか知らないが、やはり樹種によって樹形、樹皮、さらには経年による成長具合などを見られるようにすべきだろう。これができたら完璧と言いたい。
もう一つは、好きな住戸からどのような眺望が展開するのか分かるようにはできないかということだ。同業他社もこれだけはできていない。お金を掛ければ技術的には可能だろうから、実費で見られるようにはならないか。
色や質感を出すのも課題だ。画像では化粧板なのか無垢材なのかは分からないし、自然素材の色、質感を表現するのも不可能だ。これだけはいかに技術が発達しようが無理だ。高性能カメラだって人の肌や草花の微妙な色を表現できない。自然光を表現できないのと一緒だ。
三井リアル 都心の1棟リノベーションマンション加速 「南青山」で見学会
「THE UPPER RESIDENS AT MINAMI-AOYAMA」外観
三井不動産リアルティは10月28日、都心の1棟リノベーションマンション「THE UPPER RESIDENS AT MINAMI-AOYAMA」のプレス向け案内会を行った。バブル期に外国人向け賃貸マンションとして建設されたもので、内外装を一新させて富裕層向けに販売する。立地に恵まれた都心部のリノベーションマンションは、新築と比較し価格的に優位にあり、都心部での仲介で他社をリードする同社はこの分野での事業を加速させるとみられる。
物件は、東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅から徒歩6分、港区南青山5丁目に位置する7階建て全41戸(住戸36戸、店舗3戸、倉庫2戸)。建物完成は平成4年。既存建物施工は竹中工務店。改修工事施工は三井不動産リフォーム。今回分譲は4戸で、専有面積は115.82~166.51㎡、価格は19,800万~35,000万円。坪単価600万円。売主はTSMアセットマネジメント。媒介は三井不動産リアルティ。
設備機能の劣化、デザインの劣化に対応するため、大規模修繕を実施し30年の長期修繕計画を策定、外観デザイン、専有部デザインにもプロを起用して再生を図っている。
建物は現在、一般賃貸借契約による入居者もいることから、契約解除できたものから順次リノベーションし、一般に販売していく。全住戸の販売には3年くらいを見込んでいる。
もう一つの大きな特徴は、同社が売主になるのではなく、不動産・債券などの流動化・証券化事業のプロ集団TSMアセットマネジメントを核に事業リスク回避のためのスキームを立ち上げていることだ。
モデルルーム リビング
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個人的なことで申し訳ないが、案内会はサプライズの連続だった。最初に同社の富裕層向けビジネスであるリアルプラン事業について挨拶したのが執行役員・石井雄二氏だった。続いて、都心部のマーケットについて説明したのがコンサルティング事業部部長・佐藤邦弘氏だった。そして、今回の物件について説明したのが同部営業グループ主査・神義一氏だった。
何がサプライズかと言えば、同社は26回目を迎えたRBA野球大会で初の東京ドームでの決勝進出を決めたのだが、石井氏は応援団長的な存在だ。佐藤氏も野球部を応援しており、今回の案内会では完璧の説明を行った。
ここでは詳しく紹介しないが、同社がリアルプラン事業を立ち上げたのは、バブル崩壊で新築も中古市場も氷河時代に突入しようかという20年前だ。その後、どんどん店舗数を増やしてきた。この間、閉鎖した店舗もあるが、アッパーミドル・富裕層向けビジネスは不動産分野だけでなくあらゆる分野で注目されており、どこもこの分野に力を入れている。
どこよりも同社が早くこの分野の取り組みを強化してきたからこそ今がある。同社は都心のプレミアムマンション148物件、約17,000戸のマーケットを抑えている。佐藤氏の説明は詳細な情報に裏打ちされていたから説得力があった。
2009年から取り組んでいる1棟リノベーション事業は2014年度の9月末時点で取扱高121億円45戸(平均17,800万円)の実績をあげている。この数字は2013年度の通年実績とそれほど変わらない。
神氏
さて最大のサプライズは神氏だった。石井氏と佐藤氏の話を聞きながら「みんなRBAの応援団ではないか」と勝手な解釈をしていたら、〝大トリ〟に何と同社の野球チームの主砲が登場したではないか。これには飛び上がらんばかりに嬉しくなった。すかさずシャッターを切った。
神氏は同社のリアルプランチームが〝出ると負け〟を繰り返していたときからの主砲だ。今回決勝進出を果たした立役者の一人だ。野球で長い間チームを引っ張ってきた人物が、会社を代表してこれからも成長分野の事業について堂々と話したことが嬉しかった。リノベーション事業を立ち上げたときは神氏ともう一人の2人だけだったスタッフは現在13人に増えたという。
今回の物件は、専有部の内装にもうすこしグレード感のある自然素材を採用してほしかったという希望はあるが、坪単価600万円というのは割安感がある。すぐ近くで大手デベロッパーが工事を進めているマンションは間違いなく坪800万円を超えるはずだ。
野球大会の決勝で対決する旭化成ホームズには歯が立たないだろうが、野球はやってみないと分からない。神氏が相手エースを叩き、石井氏や佐藤氏が大応援団を繰り出せばあわやのシーンもあるかも。
アプローチ
ついでながら余分なことを書く。この記事を含め三井不動産グループの記事が昨日から連続して4本目になった。同社だけを選んで取材しているのではない。たまたま現場案内会が集中したためだし、現場取材は極力参加することに決めている。その点で、デベロッパーは記者を育てる意味でも重要な現地見学会などを増やすべきだと思っている。
もう一つ書く。一昨日の三井ホームの見学会では同社関係者などが一生懸命説明しているとき、メモも取らず舟を漕いでいた若い見慣れない記者がいた。叩き出したくなったが、その記者とはかなり離れていたので声が掛けられなかった。そのあとの懇親会で注意してやろうと思っていたが、いつの間にか姿を消していた。
外観
緑・子育て環境のよさも好調要因か 三井不レジ「流山おおたかの森」
「パークホームズ流山おおたかの森ザレジデンス」完成予想図
三井不動産レジデンシャルが分譲中のマンション「パークホームズ流山おおたかの森ザレジデンス」を見学した。同社が同じ沿線で分譲中の「パークシティ柏の葉キャンパス二番街」(880戸)とどちらがいいとは言えないが、沿線のマンションとしてはトップクラスの質だと思う。
物件は、つくばエクスプレス(東武アーバンパークライン)流山おおたかの森駅から徒歩3分(4分)、に位置する11階建て全257戸。専有面積は58.86~90.67㎡、坪単価は190万円前後。入居予定は平成27年12月上旬。施工は長谷工コーポレーション。今年6月から販売を開始しており、これまで約150戸販売済み。
建物のデザイン監修は建築家の藤原益男氏。全戸南西向き3棟構成で、外壁にレンガやライムストーンなどの自然素材をモチーフとした色調のタイルを組み合わせることで各棟の表情を微妙に変えている。「樹木は限りなく多く、高さ10mクラスの高木もできるだけ取り入れています」(パンフレット)とあるように植栽にも配慮している。線路に沿って「フォレストコリドー」を設置し3棟を繋げているのも特徴。
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まだ販売開始して間もないがよく売れている。これまで同駅圏で分譲されたマンションがどれだけあるかデータはないが、2006年に分譲された第一号のオリックス不動産・東京建物「ザ・フォレストレジデンス」(524戸)をはじめ、住友不動産が4棟590戸を供給しており、そのほかプロパスト、藤和不動産(現三菱地所レジデンス)、大成有楽不動産、三交不動産などの物件をトータルするとこの8年間で2,000戸をはるかに突破しているはずだ。
この数字は驚くべき数字だ。隣の「柏の葉キャンパス」では三井不動産レジデンシャルが「一番街」(977戸)と「二番街」(880戸)を分譲しており、他を合わせるとやはり合計では2,000戸を突破しているが、「流山おおたかの森」は今回の物件を含めると「柏の葉キャンパス」よりは多いはずだ。
そして、特筆できるのは不振物件がほとんどないことだ。第一号の「ザ・フォレストレジデンス」は坪単価160万円だった。当時の相場より2割くらい高かったが、瞬く間に売れた。プロパストの物件は185万円もしたが、これも早期に完売した。
新しい街の「駅力」ランキングを相撲の番付表に例えれば、西の正横綱は間違いなく「武蔵小杉」だし、東は総合力で勝る「柏の葉キャンパス」が正横綱だろうが、「流山おおたかの森」はかつての「張り出し横綱」か「大関」だろう。
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なぜ「流山おおたかの森」のマンションや戸建てが高くても売れるのか、その理由の一つに、子育て環境がなかなか充実していることがあげられる。
今回の同社のマンションにも保育所が併設されるが、これは大規模な住宅開発には併設することが市から要請されていることを受けて設置されたようだ。
市は昨年6月、「流山市子育てにやさしいまちづくりの環境を整えるための大規模な共同住宅等の建築における保育所設置の協力要請に関する要綱」を施行した。地域の保育園の状況から判断して200戸以上のマンションなどを建設する事業者に市が設置を要請するという内容だ。要請を拒否しても罰則は書かれていない。
考えてみれば、この程度の規模で保育所が併設されるのはあまりないかもしれない。要綱ができる前に建設が始まった住友不動産「シティテラスおおたかの森ステーションコート」(328戸)には保育所はない。
もう一つ、「保育送迎ステーション」制度。市が平成19年に導入したもので、「流山おおたかの森」と「南流山」にそのステーションはあり、朝は7時以降、保護者が通勤途中に連れてきた子どもを送迎ステーションが預かり、バスでそれぞれの保育所に送迎(ただし、バスを利用できる園児は安全性の確保等から概ね2歳以上)し、夕方は18時までに保護者が送迎ステーションに迎えに行けばよいというサービス。午後9時までの延長保育(有料)も行っている。ステーションで預かっている時間はもちろん普通の保育サービスも受けられるというものだ。
1回(1日)の利用料金は100円/月額2,000円。平成25年度の利用登録者は全保育園利用者の10%弱で、年間の利用者は約56,000人(回)だという。
待機児童がほとんどゼロの横浜市でも同様の取り組みを行っている。厚労省にこの「保育送迎ステーション」について聞いたが、その実態を国は把握していないということだった。
モデルルーム
自然素材が見事に調和 モリモト「ディアナコート用賀翠景」
「ディアナコート用賀翠景」完成予想図
モリモトの「ディアナコート用賀翠景」を見学した。同社としては10年ぶりの「用賀」駅圏での供給で、同業他社を含めても供給が少ないエリアということもあってか、ホームページを開設してから1カ月で1,000件以上の反響があるそうだ。人気になるか。
物件は、東急田園都市線用賀駅から徒歩5分、世田谷区用賀4丁目に位置する5階建て全27戸。専有面積は38.76~74.02㎡、価格は未定だが、坪単価は360万円台の半ばになる模様。竣工予定は平成27年8月中旬。設計・監理はスペーステック、デザイン監修はアーキサイトメビウス、カン・デザイニングオフィス。施工は森本組。
現地は、商店街を抜けた戸建てや中層マンションなどが建ち並ぶ住宅街の一角。
デザイン監修はすっかりお馴染みのアーキサイトメビウス(今井敦代表)。前面道路は4mだが、舗道と緑地帯を設けることで建物を5.5mセットバックさせ、緑地帯には水平ラインが印象的なコリドーを設置。外観タイルはベージュ系の3種を組み合わせ、シンプルな仕上げにしている。
住戸プランは角住戸比率を74%にし、ワイドスパンが中心。他の同社の物件と同様、床、壁、建具面材には天然素材を多用しグレード感を演出している。
反響が多いことから、同社は早期完売に自信を見せている。
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今回も道すがら坪単価を予想した。同沿線の近隣物件などと比較しながら「350万円くらいに抑えられればすぐ売れるだろうが、どこも単価がアップしているのでそれでは収まらないだろう」と結論づけた。
単価は360万円台の半ばというから、やはりそうだった。しかし、モデルルームの出来栄えをみてさすがだと思った。設備仕様はまず近隣物件に負けない。
玄関・ホールの床材は「シーキューストーン(Comfort Quick Stone)」と呼ばれる遮音等級取得済みの目地がない天然石複合材を採用。建具・面材はナラ、チーク、ウォールナットを標準装備。床も突板仕上げ。キッチン天板・出窓カウンターはシーザーストーン。ドア把手はイタリア・コロンボ製。主寝室の壁はオプションだが塗装壁。サッシ高さは2.3m。
これだけ天然素材を用いると、お互いが干渉しあいごてごてした感じになるものだが、それがまったくない。カン・デザイニングオフィス(鈴木ふじゑ代表)がコーディネートしたテーブル、ソファ、調度品も含めて見事に調和している。
同社のマンションはほとんど見学しているが、どれも期待を裏切らない。顧客満足度が高いからどんどん〝モリモトファン〟が積みあがっていく。現在、会員は約3万人いるそうだ。増えることがあっても減ることがない。マンションデベロッパーはかくあるべし。
モデルルームは「桜新町」駅近くにあるが、清水総合開発「ヴィークステージ桜新町」(127戸)のモデルルームと呉越同舟。清水総合の物件も立地がよく、坪単価は400万円の大台に乗るのではないか。
次代へ道を開くか「広がる通りみち」 第8回 「三井住空間デザイン賞」
「広がる通りみち」(バルコニーに向かって狭まっているように見えるが、実際は逆)※写真提供は雑誌「新建築」
三井不動産レジデンシャルは10月23日、第8回三井住空間デザインコンペ最優秀賞「三井住空間デザイン賞」を受賞した一級建築士・小野裕美氏(29)の作品「広がる通りみち」を、このほど完成したマンション「パークホームズLaLa新三郷」で報道陣向けに公開した。作品は4,280万円(83㎡)で一般に分譲される。
「広がる通りみち」は、玄関を入ってバルコニー側に向かって扇状に広がる空間「通りみち」を中央に配し、その左右に「水回り」と「寝室」をレイアウト。自然の光と風を取り込むとともに、すべての空間が緩やかにつながり、家族同士の気配が感じ取れる間取りになっているのが特徴。開き戸はトイレ以外になく、すべて引き戸を採用。カラーリングは白が基調で、巾木、ドア枠も目立たないようすっきり仕上げている。
小野氏は、「家族それぞれが空間をフレキシブルに使えるようシンプルにし、居室は窓を閉じたり開けたりしてゆるやかにつながるよう工夫した。自然の光と風を取り込む環境も確保した」と受賞の喜びを語った。
三井住空間デザインコンペは、同社が分譲する物件を対象に、新たなニーズを生み出すテーマに添って実際に住むことを前提にして提案を求めるもので、審査員は渡辺真理・法大教授など4名。今回は第8回目。テーマは「現代の共働き夫婦の子育て住宅」で588作品(応募登録1,185件)の応募があった。
審査員の渡辺氏は、「昨今、子ども部屋ひとつとっても、個人のプライバシーのための〝個室〟ではなく〝個室=孤室〟となってしまっているように感じます…かつてはプライバシー性の高まりを受けて個室へ向かって間取りが、時代背景とともに変化し再び『家族としての居場所』が見直されてきています。今後は建築デザインにおいても間取りにとらわれず、開かれた居住空間の提案が求められるのではないかと見ています」とコメントを寄せた。
同社は近く9回目のテーマを発表し作品の公募を行う。近く分譲する「豊洲」のマンションにはこれまでの受賞作のエッセンスをプランに盛り込むという。
小野氏
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素晴らしい作品だと思う。白を基調にしたカラーリングが素敵だ。玄関を入ってすぐ不思議な空間に導き入れられたが、違和感はなかった。小野氏は「目の錯覚を利用した」と話したように、見事に小野氏の企てにはまってしまった。60㎝角のタイルを全面に敷いているのもいい。巾木、ドア枠、把手のデザインもすっきりしていていい。
しかし、限られたマンションの居住面積の中でホールや廊下をどうするかは永遠のテーマだろう。その意味で、小野氏の作品は示唆するところが多い。
バルコニー側に向かって扇状に広げる、つまり長方形の空間に斜めの線を入れ、3つの居室を台形状にするのは普通常識では考えられないはずだが、「通りみち」の強烈なコンセプトを前にして審査員の方もだまるしかなかったのだろう。
記事を書きながら魯迅の好きな言葉「地上にはもともと道はない。歩く人が多くなれば、それが道となるのだ」を思い出した。このプランは次代につなぐ道になるかもしれない。小野氏は普通のマンションで育ったそうだ。
価格4,280万円(坪単価168万円)は、小野氏が選んだ家具付きでもあり割安感がある。
左は子ども部屋を想定した居室。右は「広がる通りみち」(これも形状が分からないのが残念)※写真提供は雑誌「新建築」
主寝室(壁とベッドの狭まりようで変形居室であることが分かる)※写真提供は雑誌「新建築」
完成した「パークホームズLaLa新三郷」
本物の億ション 森トラスト「フォレセーヌ赤坂檜坂」
「フォレセーヌ赤坂檜坂」完成予想図
森トラストが11月下旬より分譲を予定している億ション「フォレセーヌ赤坂檜坂」を見学した。全54戸(非分譲13戸)が1億円以上で、全97戸が億住戸だった三井不動産レジデンシャル「パークマンション三田綱町ザフォレスト」とともに今年の高額マンションでは双璧をなす好物件だ。
物件は、東京メトロ日比谷線・都営地下鉄大江戸線六本木駅から徒歩6分、港区赤坂6丁目に位置する地下2階地上7階建て全54戸(非分譲13戸)。今回販売対象となる住戸の専有面積は73.46~170.46㎡、価格は1.1~4.7億円、記者の予想では坪単価は850~900万円とみた。竣工予定は平成28年1月下旬。設計・監理は日建ハウジングシステム、施工は前田建設工業。販売代理は三菱地所レジデンス。
最大の特徴は、ミッドタウン周辺ではヒルトップの位置にあり、敷地北側方向には氷川神社を含めた森が望める一等地であることだ。
建物は免震工法を採用。1階の3住戸は専用ガレージ付き。地下の駐車場から専用のらせん階段を上って住戸にアプローチできる。共用部分には縦格子のロートアイアンを多用。エントランス奥のコリドーには金沢「箔一」の職人による2m角の銀箔を用いた飾り壁が設置される。防災面では72時間対応の非常用発電機、防災井戸も設置する。
住戸プランは、北側の借景を生かすよう4階以上には大きなルーフテラスを設置。最上階の7階は1住戸のみで専有面積は239㎡、ルーフテラスは約100㎡。設備仕様ではウォールナットの面材を床・壁・ドアなどに採用。ドアは一部ナグリ仕上げ(オプション)。玄関・ホール、キッチン天板、洗面カウンター、浴室床・壁には天然御影石を用いている。とくに玄関・ホールの御影石は金箔をちりばめたような「スターギャラクシー」と呼ばれる御影石が採用されている。
これまで反響は800~900件。このうち6~7割の人がこの現地を知っており、極めて認知度が高いそうだ。敷地は高級賃貸の戸建てが建っていたところで、同社は2008年に用地を取得している。
景観(右下が物件完成予想図)
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間違いなく本物の億ションだ。この界隈のマンションで最近見学したのは2年前に分譲されたモリモト・東急不動産・近鉄不動産「ミッドガーデン赤坂氷川」(135戸)がある。こちらは敷地が不整形で谷の部分にあったために坪単価は400万円を切っていたが、今回は立地がまったく異なる。
氷川神社を含めた周辺の緑豊かな借景も見事だ。もちろんミッドタウンの檜町公園も歩いて約1分である。
さて問題の単価。同社はいくらになるか明かさなかったが、平均で850万円が妥当な線だろうと思う。公開していない最上階や「非分譲」としている上層階部分も含めると900万円くらいでないか。最上階は10億円の価値があるかもしれない。こんなことを書くと怒られるかもしれないが、三菱地所レジデンス「千鳥ヶ淵」は皇居が見下ろせた。今回は深い周辺の緑がわが庭のように見渡せる。その価値を換算したらやはりこちらに軍配を上げざるを得ない。なにしろ東京のど真ん中だ。
ついでながら書くが、三井不動産レジデンシャルは今回の物件よりややミッドタウン寄りの「ヴァンガード」跡地に隈研吾氏の設計によるマンションを来年あたりに分譲するはずだ。記者は坪単価1,000万円でも驚かない。
ブリヂストンも近くで社宅を改築中だが、分譲にはならないという。一般社員向けの賃料もリーズナブルなもので、役員用でもないという。
車寄せ(左)とコリドー(完成予想図)
エントランスラウンジ(完成予想図)
モデルルーム リビング
モデルルーム キッチン
モデルルーム 茶室
住友不動産 「大井1丁目」の再開発組合設立認可 住宅は約650戸
「大井一丁目南第1地区第一種市街地再開発事業」完成予想図
住友不動産が参加している「大井一丁目南第1地区第一種市街地再開発事業」が平成26年10月16日付けで再開発組合の設立認可を受けた。
JR大井町駅西側に位置し、細分化された敷地の統合と建物の共同化によって土地の高度利用を図り、区画道路や広場などを整備することで、市街地環境の改善と防災性の強化を図る。
施行面積は約0.8ha、建物は29階建て、住宅は約650戸を予定。平成28年7月に着工し、完成は平成31年2月の予定。総事業費は約261億円。
光井純氏デザイン監修 オープンハウス「南青山」 上々スタート
「オープンレジデンシア南青山」完成予想図
オープンハウス・ディベロップメントが分譲開始した「オープンレジデンシア南青山」を見学した。建築家・光井純氏がデザイン監修を行っており、新たに渋谷にオープンしたモデルルームも秀逸だ。
物件は、東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線表参道駅から徒歩4分、港区南青山三丁目に位置する9階建て全33戸。第1期(13戸)の専有面積は40.59~82.55㎡、価格は6,783万~12,043万円(最多価格帯8,500万円台)、坪単価は475万円。10月19日に抽選分譲が行われ、11戸に申し込みが入った。販売代理はオープンハウス。設計・監理は長谷建築設計事務所。施工はファーストコーポレーション。竣工予定は平成27年9月下旬。
現地は、青山通りから一歩入ったところで、北側には賃貸マンション予定地があり、その北側は現在工事が行われている東急不動産の「表参道計画」。
モデルルームは渋谷・常設モデルルームを今回分譲のため新たに改装したもので、一部オプションも含まれるが、シーザーストーンを玄関・ホール、キッチン天板、バックカウンターに標準装備。洗面はDURAVIT、ガラスのリビングドアはオプションだが150万円もする高価なもので、居室のドア把手はイタリア・コロンボ製のような気がした。
現地(看板がかかっているところがエントランス、建物はその右側に建つ。手前右側は高級賃貸)
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同社のマンションは低層の「レジデンス」もマンションタイプの「レジデンシア」も結構取材してきた。都心・準都心に特化し、土地は不整形なものが多いが、その不利な立地条件を逆手にとって一定のユーザーに支持されているメゾネットタイプにするなど圧倒的な価格の安さ・割安感で好調を維持してきた。
メゾネットタイプについては、業界記者の中には「長屋」だとか「駐車場がない」とかかなり批判的に見ている人が多いが、記者は「あなたたち、ちゃんと見なさい」といいたい。中堅デベロッパーが大手と戦うには同じ手法では歯が立たない。工夫を凝らさないとまず売れない。同社が2008年に第一号を供給してからこれまで60棟を超える。しっかりビジネスモデルを構築した。
とはいえ、今回の「南青山」はやはり気になった。一般的な物件だったら、間違いなく坪単価は600万円くらいになるはずだが、同社のこれまでの手法で果たして大丈夫かと正直思った。光井純氏をデザイン監修に起用したのは正解だが、光井氏のブランド力に応えられる商品企画であるかどうかを確認するのが今回の取材目的だった。
先にも書いたが、立地はたしかにいま一つだが、デザイン・設備仕様は単価の安さからして素晴らしいものだと思う。駐車場がないのはネックにならないかと担当者に聞いたら、「青山通りにでればタクシーはすぐ拾える。ネックにはあまりなっていません」とのことだった。
参考までに。光井氏がこれまで手掛けたマンションの設計・デザイン監修は三井不動産レジデンシャルが圧倒的に多く、20物件近くあるはずだ。他のデベロッパーでは東京建物が3物件くらいある。中堅デベロッパーではフージャースコーポレーションの「府中」がそうだった。失礼ながら「府中」の購入者が光井氏を知っているかどうかはやや疑問に思ったが、これもなかなかいいデザインだった。
光井氏によるデザイン監修マンションは、オープンハウスとしては「目白」「青葉台」(渋谷)に次いで3件目のプロジェクトだそうだ。
モデルルーム(LDK)
モデルルーム(廊下)