RBA OFFICIAL
 

大野城2.png
九州八重洲「大野城市プロジェクト(ジョイナス大野城駅前)」

 ポラスグループの「NOEN KASHIWA SAKASAI-ノエン柏 逆井-」の記事で、似たようなものとして、HIRAMEKI・重松剛氏が設計を担当した「レーベンプラッツ大泉学園」を紹介した。重松氏に「ほかにこのような事例はありませんか」と聞いたら、重松氏は「他にもこのようなプロジェクトはあったと記憶していますが、どこの何という詳細までは把握しておりません」ということだった。ただ、建ぺい率30%、容積率50%の事例は「別荘ならともかく、戸建て分譲ではないのではないか」と話した。

 重松氏にHIRAMEKIが担当したプロジェクトについても聞いた。「都内では数少なく、小規模プロジェクトばかりがメインです」との回答で、次の4つのプロジェクトを紹介してもらった。素晴らしい物件ばかりだ。写真も添付してもらったので、以下に紹介する。

 セット「大鋸(だいぎり)プロジェクト」(2020年)

大のこぎり1.png

大のこぎり2.png

大のこぎり3.png

 室町時代から大鋸引(おがびき)という職人たちが多く住んでいたことから名づけられた藤沢市大鋸」の荒れた山を再生する全4戸のプロジェクト。道路側から見て階段をジグザクにして出来るだけ階段を見せないように、樹木で覆いかぶさるようにしてもともとあった山のように再生しつつ住宅地化したもの。売主・セット社自慢の「作品」とか。

九州八重洲「春日原(かすがばる)プロジェクト」(2015年)

春日.png

春日2.png

 九州福岡の4戸のプロジェクト。庭を中央に集約し、緑を中心に暮らすような住宅地。

九州八重洲「大野城市プロジェクト(ジョイナス大野城駅前)」(2020年)

大野城4.png

大野城1.png

 福岡県大野城市中央2丁目に位置する全6戸。土地面積は128㎡、延べ床面積110㎡の木造2階建て。「未来のオトナへ繋ぐ住宅群」をコンセプトに、駐車場+門扉は共有、全体敷地の中央に幅13m、奥行き7.5m、R7.5mの「園庭」を設置、建物は園庭が眺められるよう扇状に配置。南側に走る鉄道線路の騒音対策として「反射角」を利用して建物配置・形状を変え、シンボルツリー、外観ライトアップ、木材の多用、維持管理が楽な常緑低木の選定、駐車スペースの一部歩道空間化なども図っている。

日本エスコン「杉並プロジェクト(Park JADE 杉並和泉)(2015年)

Screenshot 2023-05-08 at 12-28-30 suginam - 04杉並プロジェクト.pdf.jpg

杉並和泉3.png

 方南町駅から徒歩8分、杉並区和泉四丁目に位置する全18区画。敷地及び延床が30坪程度の典型的な都市型戸建開発だが、緑で境界線を曖昧化し連続感のある空間を生みだす「路庭」、4戸1組の外部空間を作りだす配棟計画とし、神田川へ繋がるパスを設け、住民同士のコミュニケーションが発生する仕掛けを施しているのが特徴。太陽光発電により神田川の地下水を汲み上げ、路庭に沿って水のせせらぎも設けている。この年のグッドデザイン賞、キッズデザイン賞を受賞。

◇        ◆     ◇

 重松氏には、ランドスケープデザインが最高に素晴らしかった2016年分譲の総合地所「ルネテラス船橋」の見学取材で話を聞いている。敷地の緑化や外構にも力を入れており、芝生より安価でメンテフリーの「ダイカンドラ」を建物の際まで敷き詰めた住戸に驚愕したのを今でも思い出す。

 デベロッパー、ハウスメーカーの担当者の皆さん、「都内では数少ない」という重松氏に注文が殺到し、業界の〝レストランひらまつ〟になってもらおうではないか。いい加減、ぺんぺん草も生えない分譲戸建てをやめようではないか。

IMG_8622.jpg
重松氏(2016年撮影)

初めて見た30%・50%×200㎡の分譲戸建て まるで別荘 ポラス「柏 逆井」(2023/5/2)

敷地延長の難点を解消したプラン光る 総合地所「ルネテラス船橋」(2016/10/1)

タカラレーベン フェンス排除した驚嘆の戸建て「大泉学園」(2013/6/7)

カテゴリ: 2023年度

IMG_6495.jpg
「NOEN KASHIWA SAKASAI-ノエン柏 逆井-」(緑は地役権設定エリア)

 ポラスグループのポラスガーデンヒルズは5月1日、千葉県柏市の分譲戸建て「NOEN KASHIWA SAKASAI-ノエン柏 逆井-」のメディア向け現場見学会を行った。建ぺい率30%、容積率50%の第一種低層住居専用地域(以下30・50%)に位置する全8棟。敷地内に数十種、約200本の中高木を植樹し、全戸とも敷地面積を200㎡とし、住戸間のフェンスを最低限に抑え、歩道空間に地役権を設定することで回遊性を高めたランドスケープデザインが抜群。これまで45年以上分譲戸建てを見学・取材してきたが、このような物件は見たことがない。

 物件は、東武アーバンパークライン逆井駅から徒歩7分、柏市逆井5丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率30%、容積率50%)に位置する全8棟。土地面積は200.05~230.14㎡、建物面積は94.14~100.19㎡、価格は4,080万~4,480万円。建物は在来工法2階建て。全棟完成済み。引き渡し予定は5月15日。昨年9月に分譲開始し、今年3月までに完売している。

 YKK APとパートナーを組み、地役権を設定することで共用の緑地空間をつくり出し、木々に囲まれた居場所や住民同士の交流の場を提供しているのが特徴。当初計画では、前面道路幅(幅員5m)が狭く、車の入れ替えが大変で、敷地延長部分の有効活用が難しく、住民同士のコミュニケーションがとりにくいなどの難点を抱えていたのを、駐車スペースを道路側に寄せることで2台並列駐車を可能にし、建物を敷地から1m以上セットバックさせ、境界ブロック、フェンスを最小限に抑え、「くつろぎの縁」「広縁」を設けることで住民同士のコミュニケーションの醸成を図ったプランに変更した。

 敷地内には数十種、約200本の中高木を植樹し、保水性の高いインタロッキング・敷石、ベンチ、散策の道などを設置。各住戸には土間、ウッドデッキ、DEN、ガビオン、立水栓、雨水タンクなどを設けることで、家の内と外のつながりを演出している。

 見学会に出席した各氏は次のように語った。(発言順)

 同社設計部部長・松井孝治氏 YKK APさんとは5年以上前から事業パートナーに加わっていただいており、今回はグリーンクリエイターの小西範揚さんにも企画に参画していただき、当社スタッフと一緒になって建物とエクステリア・外構を一体としたランドスケープストーリーを描いた。購入者は地元と都内の方が半々。青田売りでも早期完売できたのは、立地特性にあった企画が奏功したからだと考えている

 同社ガーデンヒルズ事業部ウッドガーデン事業所用地開発課課長・高島彰氏 用地は6年前、地元の不動産会社から地主さんの相続がらみで取得の打診があったが、建ぺい率30%、容積率50%では事業的に難しいと判断し取得を断念した。コロナ禍で市場が盛り上がったので〝今なら買える〟と取得を決意した。当初は5区画だったが、その後、2人の地主さんからなる隣接土地も取得できたので、当初5区画から全8区画となった

 同社ガーデンヒルズ事業部設計部企画設計課課長・工藤政希氏 建物の内と外、表と裏の空間を設計に取り込み、歩車分離、地役権の設定、南ひな壇設計、白が基調の外観、2.4mサッシ高などを採用したことで、緑豊かな空間でのんびり暮らせるイメージを表現できた。上司から〝面白いではないか〟と背中を押してもらったのも励みになった。樹木の維持・管理は、当社の供給事例からして負担は重くないことが分かっているが、ワークショップを行ってさらに居住者の負担を軽くしていきたい

 YKK APエクステリア本部クリエイティブデザインLAB統括部長・粟井琢美氏 〝モノからコト〟へ領域を広げるのがわれわれのミッション。建物が完成してからでなく、最初の段階から(ポラスさんと)一緒に考えたのがプロジェクトを成功に導いた大きな要因。無駄な空間など一つもない。余分な空間をみつけて指摘していただきたい(問いかけに答えるのが礼儀だと考え、粗探しをしようと思ったが、時間が足りなかった)

IMG_6493.jpg  IMG_6500.jpg
電線は一部地中化している

IMG_6504.jpg
回遊歩道空間(右の建物は一部平屋としている)

IMG_6512.jpg
舗装は保水性の高いインターロッキング

IMG_6505.jpg IMG_6510.jpg
ガビオン(じゃかご)

IMG_6518.jpg
左から工藤氏、松井氏、高島氏、粟井氏(4人とも今年の○○賞を総なめすることを確信しているようだった)

◇        ◆     ◇

 同社から取材の案内が届いたのは2週間前だ。取材日は記事にもした豊四季の「体感すまいパーク柏」は3月28日、今回の逆井の「ノエン柏 逆井」は5月1日とあった。それぞれ往復の交通時間だけでも4時間、2日で8時間だ。なにも生産しない、お金だけがかかる休憩・食事時間を含めたら10時間以上だ。そんな時間とお金をかける価値がある施設・物件なのか、消費時間・金額に見合う記事が書けるのかと疑問に思い、スルーすることも考えた。

 しかし、パスしたら現場主義を貫く記者の沽券にかかわる。新しい発見もあるかもしれないと応じることにした。

 「体感すまいパーク柏」は素晴らしい施設で、それにふさわしい記事も書けた。目的の半分は達成された。無駄足ではなかった。(記事参照)

 そして今回。逆井駅に着いて、一服しようと喫茶店を探したが1軒もない。豊四季と同じだった。仕方なく、道々タバコを吸い、草花を摘みながら価格を予想した。現地までは立派な戸建ても建ってはいたが、畑・荒地などもかなりあり、田舎の調整区域そのものだ。並みの敷地30坪、建物30坪だったら3,000万円で売れるかどうかだろうとはじいた。

 ところが、あにはからんや。現地を見て、飛び上がらんばかりの衝撃を受けた。記者は45年以上分譲戸建てを見学している。バブルがはじける前までは素晴らしい分譲戸建てを見学しているが、バブル崩壊後は、一部のデベロッパー、ハウスメーカーを除き、価格ありきの土地が30坪程度の都市型戸建てが主流を占め、敷地にはぺんぺん草も生えないコンクリで固めた狭小住宅が市場を席巻している。

 「ノエン柏 逆井」はそれらの分譲戸建てとは似て非なるものだった。例えていえば別荘、林間住宅だ。こんな分譲戸建てを過去に見たことがあるか、記憶を総動員させた。真っ先に思い出したのは宮脇檀が設計した「高幡鹿島台ガーデン54」で、それに近いものでは積水ハウス「コモアしおつ」「コモンシティ伊奈学園都市」、タカラレーベン「レーベンプラッツ大泉学園」…などだが、それらとはまた異なるという結論に達した。

 何が凄いかといえば、圧倒的な緑の量と質だ。積水ハウスの「5本の樹計画」も素晴らしいが、「ノエン柏 逆井」は1戸当たりに換算すると約25本だ。かつて敷地はブルーベリーの農園だったそうで、その記憶をとどめるようにブルーベリーも植えられていた。(配布された資料にはどこにどのような樹木が植えられているか図示されているのだが、字が小さくて一つも読めない。主だった樹木には名札を付けるべきだ)

 もう一つは、地役権を設定し、全8棟の庭・歩道空間を回遊できるよう、コストダウンにもつながる住戸間のフェンス、土留めブロックなどを最小限に抑えていることだ。地役権を設定したこの種の戸建てを同社グループは結構分譲しているが、何しろ今回は敷地が200㎡だ。スケールが異なる。先に別荘、林間住宅と書いたのは大げさな表現ではない。8棟のうち敷地延長住宅は5棟あるが、それが販売面で難点になりそうな住宅は1戸もない。回遊空間は風通しを良くするための建物の形状(平屋)を変え、それぞれの住戸間の〝お見合い〟を避けるため配置を変え、室内から樹木や子どもが遊んでいる様子が分かるように窓にも工夫を凝らしている。心憎い気づかいだ。

 細かいことだが、ガビオン(じゃかご)が多用されているのもいい。土が紛れ込むことで草花が生え、いろいろな生物が生息するようになるはずだ。生物多様性にも配慮しているのがとてもいい。

IMG_6502.jpg
右の花瓶の花は記者が摘んだもの

◇        ◆     ◇

 冒頭に「このような物件は見たことがない」と書いたが、同社を始めどこのデベロッパーもハウスメーカーもこのような戸建てを手掛けていないのではないか。

 根拠は示せないのだが、そもそも30・50%の用途地域を指定している自治体などあるのだろうかというのがその理由だ。記者の知る限り、隈研吾氏の設計による建ぺい率40%、容積率60%の「プロスタイル札幌 宮の森」が分譲住宅としてはもっとも厳しいエリアに立地しており、用途指定では田園調布、横浜山手町、芦屋市・六麓荘は建ぺい率40%、容積率80%だ。

 国土交通省に30・50%の用途地域を定めているところは全国にあるか聞いたが、「把握していない。各自治体に聞いてもらうしかない」という回答だった。

 そこで、柏市に聞いた。市内で唯一30・50%となっているのが、今回の物件が位置する逆井5丁目エリアだ。市の担当者によると、昭和48年、区画整理事業を予定していた逆井5丁目の調整区域を30・50%と暫定指定したが、地権者の同意が得られず区画整理事業はとん挫、そのまま30・50%の指定のみが残ったという。近隣の区画整理事業地は建ぺい率50%、容積率100%に指定されている。

 ポラスにも30・50%地域で分譲した事例はあるか聞いた。広報は「調べてみないと分からない」とのことだった。同社の調整区域開発の「ハナミズキ春日部・藤塚」(22戸)は建ぺい率60%、容積率200%だ。30・50%開発は今回が初めてのはずだ。同社が本拠とする埼玉県は、第1・2種住居専用地域は全用途の18.1%しかない(東京都は37.4%、千葉県は31.4%、神奈川県は31.0%)。

 後日、工藤氏からメールが届いた。同社はかつて、同じ逆井エリアと千葉県鎌ケ谷市の30・50%地域で分譲事例があるという。また、東京都羽村市にも30・50%地域があると教えられた。確認した。その通りだった。工藤氏はただものではない。どうして調べたのか。

 それにしても、2日間で往復10時間(取材時間を含めれば15時間)かけた甲斐があったということだ。企画によっては、見向きもされない土地に光を当て活性化させるヒントがここにある。価値のある記事かどうかは読者の皆さんが評価することだ。

IMG_6515.jpg IMG_6523.jpg
外の借景を取り込む窓(サッシはYKK APの樹脂サッシ)

IMG_6522.jpg
ドアはドアノブを含めて白で統一(デザインが美しい)

C4FDF112-73EB-480A-BBDC-D274DAF44F2C.jpg
工藤氏から送られてきた鎌ヶ谷市の都計図

延床876㎡の木造事務所 工期5か月、建築費坪110万円 ポラス「体感すまいパーク柏」(2023/4/29)

調整区域の市民農園付き200㎡邸宅 ポラス「ハナミズキ春日部・藤塚」企画秀逸(2020/7/3)

敷地100坪 建物30坪の平屋 ミラースHDの戸建て「南栗橋」企画ヒット(2022/11/13)

隈研吾氏が設計 坪700万円超でも好調スタート プロポライフ「札幌 宮の森」(2022/9/23)

あきる野市、江東区、神川町、台東区、三芳町…これは何か 首都圏 用途地域全調査(2022/10/31)

タカラレーベン フェンス排除した驚嘆の戸建て「大泉学園」(2013/6/7)

 

カテゴリ: 2023年度

IMG_6412.jpg
「北浦和みのりプロジェクト」

 ポラスグループ中央住宅は4月22日、既分譲の戸建て住宅地「北浦和みのりプロジェクト」(全51棟)に設置したポタジェ(家庭菜園)を活用したワークショップを開催し、その模様をメディアに公開した。

 同プロジェクトは、最寄り駅の武蔵野線東浦和駅、京浜東北線の北浦和駅からそれぞれ徒歩時間を含めてバス利用で20分前後かかる難点を逆手に取った「居・食・住」のコンセプトが奏功し、昨年3月に分譲した第1期分譲の34戸を即日完売するなど早期完売した。

 今回のワークショップは、近くにある見沼田んぼの「こばやし農園」とコラボしたもので、春・夏・秋の3回予定されているうちの1回目で、午前・午後の2部構成で参加は任意。午前の部には、前日とは打って変わった寒さだったにもかかわらず、対象25世帯のうち11世帯が参加。それぞれ自己紹介を行い、配布されたミニトマト、シシトウ、レタスの夏野菜の特徴、植え方などをこばやし農園の小林弘治社長からレクチャーを受け、それぞれ持ち帰って自宅のポタジェなどに苗木を植えた。欠席した家庭にも苗と植え方、育て方などが書かれたこばやし農園作成の資料が配布された。

IMG_6414.jpg
会場になった提供公園

IMG_6423.jpg
配布された左からシシトウ、ミニトマト、レタス(このほかこばやし農園自家製の米ぬか、鶏糞が原料のボカシ肥料も配布された)

◇      ◆     ◇

 昨年7月に行われた同プロジェクトの見学会でも記事にしたが、マンションも戸建ても、その地域特性にマッチしたコンセプト、ターゲットを明確にすれば、アクセスなど多少の難点があっても売れることを証明した物件だ。

 ワークショップに集まった全世帯とも、小さな子ども1~3人の子育て世代だった。通学区の小学校まで遠い家でも2分とかからないのではないか。交通事故などの心配もいらないはずだ。周りには畑などもあり遊ぶには事欠かない。育児・教育環境は抜群なのをこの日も確認することができた。

 記者自身も学ぶことが多かった。ミニトマトは育てたことがあるので知っているが、水遣りなどはあまりやらず、ストレスを与えたほうが美味しい。確か多年草のはずで、そのことを小林氏に聞いたらその通りで、わが国では冬の寒さに耐えられず枯れてしまうということだった。

 シシトウもよく食べるが、辛いのが好きなのにスーパーで買うシシトウはどうして辛くないのか、また小林氏に聞いたら、シシトウもストレスを与えたほうが辛いものができるということだった。辛いか辛くないかは食べてみないと分からないという(記者は黄色味を帯びているのが辛いと思っていたが…)。1つの苗で、収穫期には毎日食べても食べきれないほど実がなるそうだ。

 なるほど。野菜はストレスを与えたほうが美味しいものができる…人間はどうなのだろう。

IMG_6420.jpg
「ポタジェの土壌を分析しました。pHは6.13。うちの農園と同じくらい非常にいい。トマトの水遣りは天気に任せて大丈夫。ほっとくと2mくらいに育ちますので、適当なところで切り、支柱で支えてください。わき芽は取ってください。かなり楽しめるはずです」小林氏

IMG_6427.jpg
「シシトウは山のように育ちますので、本当は50cmくらい離して植えたほうがいいのですが…7月から11月ころまで収穫できます」小林氏

奇跡の「見沼たんぼ」に着想 立地難逆手に取った商品企画光る ポラス「北浦和」(2022/7/10)

 

 

カテゴリ: 2023年度

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は410日、20233月の首都圏不動産流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの取引件数は前年同月比1.1%増の3,442件、成約㎡単価は同6.8%上昇の69.83万円、価格は同6.8%上昇の4,441万円、専有面積は同0.02%増加の63.59㎡となった。

成約件数は2月に続いて前年同月を上回り、成約㎡単価は205月から35か月連続、成約価格は206月から34か月連続でそれぞれ前年同月を上回った。専有面積はほぼ横ばいながら215月以来22か月ぶりに前年同月を上回った。

中古戸建の成約件数は前年同月比1.2%減の1,186件、価格は同4.6%上昇の3,914万円となった。成約件数は221月から15か月連続で前年同月を下回り、成約価格は2011月から29か月連続で前年同月を上回った。

カテゴリ: 2023年度

モクコンの家_ノキテラス外観.jpg    モクコンの家_ハコテラス外観.jpg
「ノキテラス−2階建て−」(左)と「ハコテラス−3階建て」

 大成建設ハウジングは3月16日、建築家・隈研吾氏とのコラボレーションによる壁式鉄筋コンクリート住宅「パルコン」の新たな戸建住宅「モクコンの家」を同日から発売すると発表した。「パルコン」の強さと、木のやさしさとぬくもりのある外観とテラスを併設するのが特徴。発売地域は関東、東海、関西、九州(一部地域を除く)。

 以下、同社のプレス・リリースで紹介されているインタビュー記事全文を紹介する。

◇        ◆     ◇

-パルコンについて、どういった印象をお持ちでしょうか。

 隈氏「パルコンには、コンクリート住宅の総合的な強さを感じます。」

 住まいは人間の生活を守る、そして人間自身を守る非常に大事な器だと思います。そこでは何よりも安心感が求められます。
 大成建設ハウジングが手掛けるパルコンは、コンクリート住宅ならではの耐震性が安心感につながり、安らぎという家の基本的な条件を満たしていると考えます。また、よく知られているように耐火性、防音・遮音、断熱・気密など、他にも優れたポイントがたくさんあり、さらに劣化に強く耐久性がある点はまさにサステナビリティという時代の要請にも応えていると思います。
 いま、コロナ禍を経て住宅の役割が増えたと感じています。これまで家は社会とは切り離された場、という位置づけでしたが、社会と個人の接点として住宅が意識されるようになりました。仕事をする場所、人と集う場所、クリエイティブな場としての機能が求められます。そうした社会的な役割を果たすためにも、コンクリートという災害に強い素材こそ大切なのではないかと考えています。

 -デザインのこだわりについてお聞かせください。

 隈氏「木のぬくもりと、半屋外スペースです。」 

 私が携わる建築では、木のぬくもりが大きなテーマです。人類にとっていちばん古くからの友人として「木」がそばにありました。手触りのあたたかさ、やわらかさをいつも感じられることが大切なのです。
 今回のパルコンでも木材をふんだんに使い、見た目にも手触りとしても、自然のやさしさが感じられることを重視しました。「ノキテラス」の大屋根とファザード、「ハコテラス」の木製テラスなど、ぬくもりある木の質感が特色です。
 また、屋上の庭園スペースや、室内と屋外をつなぐテラスなど、これまでの一般的なテラスやバルコニーを超えた、空間の豊かさを持った半屋外スペースを設けました。どちらもコンクリートならではの堅牢性によって、半屋外を生活の場として使用することが可能になっています。屋外でも人がゆったりと過ごせることを前提で考え、いろいろなシーンの演出を想定してみました。外気の心地よさを、広がりのあるスペースで感じることができます。特に「ハコテラス」はバルコニー上部の開放感に注目していただきたいと思います。

 -玄関から続くミュージアムは、何を目的に作られましたか。

 隈氏「住宅と社会をつなげたい、と考えました。」

 今回のプランは、アプローチから玄関を入り、そのままミュージアムスペースが連なっているのが大きな特徴です。アフターコロナを見据えてそこにいろいろな人々が集うシーンを思い描きました。仕事をする場、クリエイティブな発想が生まれる場として機能することはもちろん、住宅と社会がつながる際のひとつの形を体験していただけるでしょう。
 ミュージアムは住む人の創造性の拠点となると同時に人を招き入れて打ち合わせや交流するスペースにもなる。またその場にいる人がリラックスできることも大切。多目的でフレキシブルに活用できるスペースです。

 -ZEHへの対応についてはいかがでしょうか。

 隈氏「サステナブルなデザインと技術があります。」

 これからの住宅を考える上で、持続可能性は大きなテーマです。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に対応しているかどうか、住む人もそこに集う人も、省エネルギーに関心が集まる部分だと思います。
 今回の家はZEH対応設備だけでなく、木材を多用した住み心地の向上、充分な植栽スペースの想定などトータルにサステナブルであることが特徴です。
 素材や構造といったエンジニアリングだけでなく、デザインとエンジニアリングが一致している部分をぜひ体験していただきたい。そうした点で、サステナブル住宅のひとつのモデルになるだろうと考えています。

 -この新しい邸宅は、一言で表すならどんな家でしょうか。

 隈氏「住む人が、自分の創造性を発見する場所です。」

 この家は住む人の「自由」を信頼している部分があります。空間はなるべくシンプルに作り、住む人がどんな風にその空間を使いこなしていくのか。住む人の自由、住む人の創造性を活かす場所がたくさんあります。
 ぜひクリエイティブに住んでいただければと思います。
 半屋外の空間にいろいろな家具を持ち込んで、いかに日常的な場として使いこなすか。屋外を生活空間に組み入れるのは新しいトレンドでもあり、そのトレンドをご自分のセンスで実現できるのです。
 そしてミュージアム。自分のコレクション、蔵書などで満たしたクリエイティブなスペースとして、ぜひ自由に使いこなして欲しいと思います。この家がキャンパスだとすると、皆さんがいままで見たことのない絵を描くだろうと期待します。家が、自分自身の新しい創造性を発見する場所になるのです。
 新しい創造力がコンクリート住宅という安心感の土台の上で開花し、サステナブルに社会と繋がるでしょう。

◇        ◆     ◇

 隈氏が「プレファブ」とコラボするのに驚いた。しかし、隈氏は20年も昔から、「木」と「コンクリ」の〝融合〟を考えていたと思われるふしがある。著書「負ける建築」(岩波書店、2004年)の「Ⅲ-3 コンクリートの時間」の中に次のような記述がある。

 「建築という『形』を持つものを用いて、移り行く不確かな状態を固定化し、確実なものにしようという欲求がこの時代(20世紀)を支配した。その意味でこの時代は『形』の時代でもあり、『建築』の時代でもあったのである」
 「その欲求に対して、コンクリートほど見事に応えてくれる材料はほかに移り行く流動的なものが、コンクリートにおいては、一瞬にして形を持ち、固定化されるのである」
 「しかし、今や、そのような固定化こそ、人々の嫌悪の対象になりつつある。自由を自由のままに楽しみ、移りゆくものを移りゆくままに享受する生活態度を、人々は獲得しつつある。そのような時代には、永遠に固定化されることのない材料、工法が求められるようになるであろう。例えば木造の時間」
 「木造はコンクリートのように液体状態の自由を持つこともなければ突然に強くなることもない。いつもそこそこに不自由で、そこそこ弱いのである」
 「時間とは永遠にだらだらと続くものだということが木造の本質である。…それは二〇世紀の『工業化』『プレファブ』の時間とも全く異質のものである」
 「いかなる形にも固定化されようのないもの。中心も境界もなく、だらしなく、曖昧なもの…あえてそれを建築と呼ぶ必要は、もはやないだろう。形からアプローチするのではなく具体的な工法や材料からアプローチして、その『だらしない』境地に到達できないものかと、今、だらだらと夢想している」

 今回の「モクコンの家」は、この夢想を具現化しようという試みのように記者は感じるのだが、みなさんはいかがか。

 

カテゴリ: 2022年度

IMG_6153.jpg
レクチャー会場となった大和ライフネクスト本社1階のスタジオ

 大和ハウス工業は3月16日、「記者レクチャー会<2023年公示地価>」を開催。マンション事業について同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏が、分譲戸建ては同社住宅事業本部事業統括部分譲住宅グループ次長・中岡敬典氏が、物流事業は同社建築事業本部営業統括部Dプロジェクト推進室上席主任・藤田渉氏がそれぞれ説明し、質疑応答にも丁寧に答えるなど、とても分かりやすい勉強会だった。

 マンション事業について角田氏は、首都圏はウィズコロナでの価値観や、変化した生活スタイルの定着が見受けられ、都心部及び郊外ともに実需層の安定した購入動向となっているとし、特に、都市部での将来資産性が期待できる物件に対し、DINKSやDEWKSなどのアッパーミドル・富裕層の安定的な購入動向が続いていると語った。

 近畿圏でも首都圏と同様の市況が続いているが、郊外部では首都圏のような需要は生まれていないと説明。地方圏では、駅直結や商業、病院などを併設した再開発・複合開発による「コンパクトシティ」への期待や関心が高まっていると説明。

 首都圏の仕入れについては、用地価格は上昇しており、適地は高値圏での争奪戦となっているとし、新価格の案件の販売が比較的好調であるため、新規買収案件の販売価格設定に強気であることも一因と指摘した。近畿圏でも用地価格は上昇しているが、建築費の上昇に伴い、入札案件では応札者が減少。施工を自社で行う会社が、競争力のある価格を提示しているという。地方圏においては、デベロッパーが計画通りに用地買収できていないことから、地方進出が進んでおり、中核都市の価格が継続上昇。特に、福岡、沖縄は新価格の新規案件も好調であり、各社の積極的な買収が散見されると説明した。(同社の坪単価520万円の「大濠」も好調)

 このほか、投資家の取得意欲は依然高く、ホテル投資は回復しつつあり、海外のファンド・機関投資家の積極的な買収姿勢が継続していると話した。

 中岡氏は、2022年10月から2023年2月までの契約ベースでの売上高は、前年同期比で建売住宅は+8%、土地は+20%になっており、前回発表時(2022年4月~2022年8月)は建売住宅が-3%、土地が+4%だったことと比較して回復しており、82名からなる用地マネージャーを組成したのが奏功し、土地は4,000区画、建売住宅は1,200棟とそれぞれ前年比2割増の手当てができており、年間で土地は4,000区画、建売住宅は2,000棟を販売できる準備が整ったと話した。

 一方で、地価は引き続き上昇傾向にあり、資材・住宅設備も仕入れ価格は再度アップしているが、消費動向などを勘案して価格に転嫁しづらい状況にあることから、内部努力と効率のいい設備を投入して価格を維持する戦略をとると語った。

 商品企画については、2016年から開始した「家事シェアハウス」は累計1,467棟、約412億円にのぼり、満足度調査でも高い数値が得られたことから、今後も積極的に採用し、「家事シェアタウン」を2023年度は36か所300棟計画。ZEHの取り組みは、2022年10月から2023年1月の着工ベースでは分譲住宅の95%がZEH対応であることを明らかにした。

 また、同社とナスタが共同開発した業界初のスマホに宅配専用ボタンを搭載した24時間防犯カメラ機能付き宅配ボックス「Next-DBox+S」を2023年4月から販売開始するなど、①ZEH②家事シェア③オリジナル設備機器の3点セットで他社との差別化を図り、販売を拡大していくと話した。

 藤田氏は、生産の国内回帰に連動する倉庫需要の拡大、建築費の上昇による賃料相場の上昇、過去最大の施設供給による空室率の上昇などの市場変化を紹介した一方で、デベロッパーとゼネコンの二つの顔を持ち多彩なスキームでの対応が可能な同社の強みを強調し、2022年2月竣工までの総開発延床面積約1,243万㎡は業界シェア23.0%、280棟は同33.8%とトップであることを報告した。

◇        ◆     ◇

 角田氏が首都圏の代表的な物件として紹介した「プレミスト昭島森パークレジデンス」に注目している。JR青梅線昭島駅から徒歩5分の全481戸だが、第2工区、第3工区を含めると約1,000戸の大規模開発だ。

 記者は、三井不動産レジデンシャルなどが2021年に販売開始した「パークホームズ昭島中神」313戸の隣接地だと勘違いしており、沿線需要を掘り尽くした後のぺんぺん草も生えそうもないところで1,000戸を売るのは容易ではなく、年間100戸として販売期間は10年かかるのではないかと思っていた。

 同社のマンションの最寄り駅は「中神」ではなく「昭島」だと聞いて納得した。なるほど。ここなら売れるかもしれない。住環境がいい。東京まで約1時間。同じ距離圏の大規模開発では〝ちびまる子ちゃん〟のNTT都市開発他「ウエリス八千代村上」967戸が今春に分譲される。坪単価は220万円台に収まるのではないか。

 「昭島」は〝ちびまる子ちゃん〟に絶対負けない。ただ、戸数が多い。100戸、200戸だったら坪270万円でも売れると思うが、1,000戸となると強気な価格設定はしないと読んだ。角田氏に「坪単価250万円は厳しい。アッパーで坪240万円はどうか」と聞いたら、「鋭いところ突かれている」と返ってきた。モデルルームがオープンしたら取材したい。坪240万円だったら、同社の「高尾」416戸、「塚田」571戸のように圧倒的な人気を呼ぶ可能性があるとみている。

〝安さ〟売り「ザ・ビッグ」に近接 三井不レジ他「昭島中神」 収穫大の今年初の見学(2021/1/13)

 

 


 

 

カテゴリ: 2022年度

IMG_6078.jpg
B/N大宮区大成町 リミテッドエディション」

 ポラスマイホームプラザの「B/N北浦和」、「フォレストレ リミテッドエディション(FORESTLE Limited Edition)南浦和」に次いで「B/N大宮区大成町 リミテッドエディション」について。戸数は1戸で価格は1億円超。物件名に「リミテッドエディション」を付しているように、一分の狂いも許さないぞと言わんばかりの同社設計課営業企画係主任・塚原俊紀氏の徹底したこだわりにあきれ返るほかなかった。注文住宅そのものだ。

 物件は、JR大宮駅から徒歩11分、さいたま市大宮区大成町1丁目の第2種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する敷地面積112.41㎡、建物面積120.69㎡、価格10,280万円。建物は木造2階建て。施工はポラテック。竣工は20231月中旬。昨年7月に販売し、同月内に完売している。

 さて、塚原氏のこだわり。記者は全然気付かなかったのだが(それが狙いか)、巾木の見付けは7ミリだと説明を受けた。同社の標準は14ミリだそうだから、その半分だ。〝シンプル イズ ベスト〟-余分なものは見せたくないという考えだろう。

 光を取り込む高窓・スリット窓を多用したこだわりがまた凄い。数えたわけではないが、通常の窓と合わせば20数か所はあるはずだ(今回見学した他の2物件も数は同じくらいか。他社物件と比較して間違いなく多い)。数が多いだけでなく、窓枠に黒または白を採用し、しかも天井いっぱいまで高さを取るなどしてデザインとして取り込んでいる。

 照明計画もしかり。調光機能付きだと思うが、間接照明、ダウンライトを多用し光の演出を行っている。

 まだある。1階のLDK22.0帖)に面した方丈の間くらいの中庭にベンチ付き吹抜け空間を設置し、そこにシンボルツリーのシマトネリコを配することで緑を取り込み、また玄関、玄関手洗い、書斎コーナーから眺められる坪庭を設置し、やはり光と緑を取り込む工夫を凝らしている。限られた空間に意味を持たせる仕掛けが施されている。

 このほか、ヘリンボーン柄の壁などへの採用、ストリップ階段・ガラス引き戸、木の格子リビング天井、2.38mのハイドア、ウッドパネル、ミストサウナガス衣類乾燥機(乾太くん)、タンクレストイレなどを装備。家族それぞれが自分の衣類などを片付け・整理できるバックヤードを1階キッチンの裏側に設けているのも目を引いた。

 塚原氏は、「シンプルデザインをテーマに、オンとオフが切り替えられる間取り、動線などに力を注ぎました」と語った。

IMG_6069.jpg
リビング

IMG_6065.jpg 
巾木見付

IMG_6066.jpg
トイレ(収納は隠れて見えない)

IMG_6075.jpg
寝室の照明

IMG_6077.jpg
検眼手洗い(右側が坪庭)

IMG_6071.jpg
唯一理解できなかったのは浴室ドアにタオル掛けがなかったこと

LDK天井高最大4m 1棟現場にN1手法用い成功 本来そうあるべき ポラス「南浦和」(2023/3/8

Z世代の声反映 可変性、多様性、シェア…住宅本来の役割具現化 ポラス「北浦和」(2023/3/8)

 


 

 

 

 

 

カテゴリ: 2022年度

IMG_6061.jpg
「フォレストレ リミテッドエディション(FORESTLE Limited Edition)南浦和」

 ポラスマイホームプラザの「B/N北浦和」に次いで「フォレストレ リミテッドエディション(FORESTLE Limited Edition)南浦和」を紹介する。1棟現場だから可能にしたのだろうが、分譲住宅の難点である誰でも住めそうな無難なプランではなく、欲しいひと一人にターゲットを絞り込んだ企画が奏功した。これまた住宅分譲の基本だ。

 物件は、JR南浦和駅から徒歩9分、さいたま市南区文蔵二丁目の第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する敷地面積約110.71㎡、建物面積約102.89㎡、価格7,998万円。建物は木造2階建て。施工はポラテック。建物竣工は2022年9月。

 同社の7つのブランドの一つ「FORESTLE」は、森を意味する「Forest」と、心地よい、寄り添うの意味を持つ「Nestle」を組み合わせたもので、「Limited Edition」には注文住宅のようにリアルな顧客の声を生かそうという想いが込められている。

 現地は、戸建てが建ち並ぶ住宅街の一角で、敷地は東南角地。建物は外からの視線を遮るため高窓にするなど窓の位置にも配慮。2階LDK(20.2帖)はこう配屋根を採用することで最大天井高4000ミリ、二連大開口窓、スキップリビング、大容量の収納、1階と2階をつなぐ吹抜け空間などを実現。

 このほか主な基本性能・設備仕様は長期優良住宅認定、挽板の床、ソフトクローズ機能付き開き戸・引き戸、ガス乾燥機(乾太くん)、1.25坪の浴室など。

 同社設計課営業企画設計2係主任・金井琢哉氏は、「マーケティング手法の一つであるN1分析により、近隣に居住し、エリア特性も熟知している方のお宅を訪ね、どのような住まい方をしているかなどをヒアリングしました。その結果、1階リビングを2階リビングにし、スキップフロアを止め、キッチンを回遊性にするなど当初プランを3回変更しました。反響が20~30件に達し、昨年4月の販売時には2組の申し込みがあるなど更地の段階で完売しました」と語った。

IMG_6051.jpg
最大天井高4mのLDK(正面は二連大開口窓)

◇        ◆     ◇

 この種の手法は、大量供給時代にもあった。分譲住戸全てに異なるプランを提案し、成功した事例もある。最近の事例では、先日記事にもした大和地所レジデンス「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」だ。全111戸に対して63タイプを提案して人気を呼んだ。ましてや戸建てだ。一つひとつ潜在的な顧客ニーズを引き出す企画力が問われている。どんなエリアであろうと敷地形状が異なろうと、経済設計のブロイラーのような「箱」そのもののマンションや分譲戸建てが売れることこそ異常だ。

 金井氏は「家を建てる体験ができ、そのまま買ってもいいというビジネスモデルにしたい」と語ったが、ぜひともそうしていただきたい。街づくりは無理としても、このような手間暇をかける手作りの手法は支持されるのではないか。

IMG_6055.jpg
吹抜け空間

IMG_6041.jpg
洗面(左)と浴室

Z世代の声反映 可変性、多様性、シェア…住宅本来の役割具現化 ポラス「北浦和」(2023/3/8)

光と風、照明計画、巾木見付一分の隙もないこだわり ポラス「大宮区大成町」(2023/3/9

 

カテゴリ: 2022年度

IMG_6083.jpg
「B/N北浦和」

 ポラスグループのポラスマイホームプラザは3月6日、いずれも1~2棟の、それぞれコンセプトが異なる分譲戸建て3現場の竣工見学会を行った。Z世代の声を反映させたり、注文住宅を建てるような体験が出来たり、細部まで設計者のこだわりを盛り込んだことなどが評価され、早期完売。分譲戸建てはかくありきの商品企画が光った。

◇        ◆     ◇

 まず、記者がもっとも注目した「B/N北浦和」から。「B/N(ビーエヌ)」は、同社の7つ目の最新ブランド。「B」は基本を意味するBASIC、「N」はNATURAL、あるいはNEUTRALの頭文字からとったもので、テーマは「シンプルモダンデザイン」。

 事前の説明で、物件は全世代向けだが、同社のZ世代のスタッフの声を企画に盛り込んだのが特徴で、北浦和駅からバス17分の全2棟、価格は4,000万円台の前半であることが紹介された。

 今の10代の前半から30歳未満と言われるデジタルネイティブのZ世代のことなどまったく分からない記者は、てっきり〝価格ありき〟のいわゆるパワービルダーと同じ土俵に上がり、消耗戦に参戦するのかと思った。

 しかし、現地について外観を眺めた限りではそのような気配はなかった。基本性能・設備仕様レベルをチェックしたが、パワービルダーの物件とは似て非なるものであることも確認できた。それどころか、価格からしてむしろ性能は高く、白と黒を基調としたデザイン・カラーリングセンスが抜群なのに驚いた。

 そして、物件の基本設計を担当した同社設計課営業企画設計係係長・高橋健太郎氏氏(47)の話を聞いて、「B/N」のコンセプト、Z世代の声をどうして反映させたか、その意図も分かった。

 高橋氏は、「敷地南側は対面の建物の室外機が目に入るので、開口部は北側に設けざるを得なかったが、北側に居室と緩やかにつながる明るい空間を設けることができた。子ども部屋は1つ、居室の扉を設けず、多目的に利用できるオープンな空間を演出することで、空間をシェアし、可変性を持たせたのが特徴」と話した。

 Z世代の声の取り込みかたユニークだ。一般的な社内プレゼンは、経験豊富な審査委員(上司)がプレゼンター(部下)の報告を評価・採点するのが普通だろうが、同社はその逆だ。スマホなどZ世代向けの商品が他の世代でも人気になっていることに着目。ベテラン事業担当者4名がZ世代の設計担当4名、営業スタッフ5名に対してプレゼンし、プレゼンターの提案を50点満点、Z世代の提案を50点満点、合計100点満点で採点。最高得点を獲得した高橋氏の基本設計をもとに、Z世代スタッフが全世代向けのプランを共同で商品化したものだ。

 実施設計を担当したのはZ世代の同社設計課実施設計係・田上彩水氏(26)で、田上氏は「わたしは姉と一緒に6畳間を寝室にしていました。違和感はありませんでした。勉強はリビング。プレゼンでは自由に提案していいということでしたので、フィットネスルームにも居室にもなる可変性のある空間、必要ない建具は極力少なくし、カラーリングもドアノブを白のドアと統一するなど目立たないようにしました。一つの写真で全て見える〝映える〟にも気を配りました」と、営業担当のZ世代の営業課2課・根本和磨氏(25)は、「フィットネスにも居室にもなるいろんな趣味が生かせる、多様性をアピールしました」とそれぞれ語った。

 写真を添付したので、じっくり見ていただきたい。LDKスペースをたっぷり取り、間仕切り壁を取り払った空間、大きめの主寝室と対照的な子ども部屋を想定した4畳大の居室などは、ライフスタイル・ステージに柔軟に対応することが求められる住宅本来の役割・機能を具現化、キーワードである「可変性」「多様性」「シェア」を見事に表現している。ドアノブ一つにこだわった田上氏はZ世代の特性なのか、それとも田上氏自身の感性か。これは分からない。次の作品を見たい。大化けするのではないか。

 物件は、JRB北浦和駅からバス17分、バス停から1~2分、さいたま市緑区に位置する全2棟で、土地面積は108.17・104.03㎡、建物面積は100.29・103.08㎡、価格は4,190万・4,290万円。木造2階建て、施工はポラテック。建物完成は2023年1月下旬

 2階リビングの1号棟は、LDK(20.6帖)、多目的に利用できるカフェ、ブックシェルフ、主寝室(9.0帖)、居室2室(5.3帖、4.6帖)など。1階リビングの2号棟はLDK(22.3帖、スタディルーム約5.8㎡含む)、主寝室(7.3帖)、居室(4.3帖)、スタディルーム、トレーニングルーム(1.0帖)、芯心1mの階段、ピクチャーレールなどが特徴。

 リビング天井高2700ミリ、床は挽板(1号棟除く)、ソフトクローズ機能付き引き戸・開き戸、階段ステップ15段などは標準仕様。

 同社部長・森田昌久氏は、「今回の3現場はすべて異なるコンセプト。一つひとつゼロから商品化したのが特徴。この『北浦和』はZ世代をターゲットにしたものではないが、全世代に興味を持っていただけるはず。今後の同様の商品を提供していきたい」と語った。

IMG_6084.jpg
〝映える〟LDK

IMG_6088.jpg IMG_6087.jpg
アメニティ、ドアノブにまで白にこだわったデザイン

IMG_6101.jpg
左から根本氏、高橋氏、田上氏

LDK天井高最大4m 1棟現場にN1手法用い成功 本来そうあるべき ポラス「南浦和」(2023/3/8

光と風、照明計画、巾木見付一分の隙もないこだわり ポラス「大宮区大成町」(2023/3/9

カテゴリ: 2022年度

アットホームは31日、過去2年以内に一戸建て・マンションを購入した人を対象に、途中でこだわるのを諦めた条件・設備に関する調査結果をまとめ発表。住まいの基本的条件では、価格は1.3倍妥協、広さは14.0㎡削減、最寄り駅からの徒歩時間は8.6分妥協。設備仕様では5人に1人が「収納スペース」「リビングの広さ」「外観のデザイン」を妥協していることが明らかになった。

調査対象は、過去2年以内(202010月以降)に住まいを探し、一戸建て・マンションを購入した1850歳の男女400名。内訳は新築マンション、中古マンション、新築一戸建て(注文住宅含む)、中古一戸建て各100名。

住まいの条件の住宅価格の妥協ラインは、「実際の住宅価格÷当初の住宅価格」で算出。予算の1.3倍まで妥協していたことが分かった。

築年数を妥協したと答えた人の中で、築年数の妥協ラインを「契約時の築年数-当初希望していた築年数の上限」で算出したところ、当初より11.1年古くても妥協していたことが分かり、その理由として「建物自体は免震構造で、共用部分の清掃・管理もきちんとなされていたため(中古マンション)」といった声があった。広さも同様、当初より14.0㎡狭い物件で妥協したと回答。

最寄り駅までの徒歩時間は当初より8.6分、通勤・通学時間は当初より17.6分遠くても妥協。その理由として、「自転車を使えばすぐだったから(新築一戸建て)」、「以前と同じくらいの時間帯の出勤で済んでいるから(中古一戸建て)」といった声があり、「在宅勤務が増えたので妥協しても問題なかった(新築マンション、中古マンション、中古一戸建て)」という回答も見られた。

このほか、妥協したものは27.0%の「収納スペースの広さ」がトップで、以下、「リビングの広さ」23.5%、「外観のデザイン」22.8%の順。その理由は、収納は「断捨離する良い機会になるから(中古マンション)」、「物を出しっぱなしにしないことで広々使えるから(新築一戸建て)」「住んでしまうと狭さを感じなかったから(中古一戸建て)」、外観のデザインは、「住んでみたら気にならなかったから(中古マンション)」「自分では妥協したと思っていても意外と来客に褒められたから(新築マンション)」など。

住まいの条件で「妥協はしていない」と答えた人は19%。

住まいの設備でもっとも妥協したものは「宅配ボックス」16.8%で、以下、「ウォークインクローゼット」15.5%、「床暖房」15.3%の順。その理由として宅配ボックスは「置き配を利用できるから(新築マンション)」「お互いの休日に上手く受け取ることができているから(新築一戸建て)」などの声があり、ウォークインクローゼットは、「普通のクローゼットで十分、使い勝手に問題はないから(新築マンション)」「和室の収納を工夫して、バッグやベルトなどの保管場所を増やしたから(中古一戸建て)」、床暖房は、「気密性の高い家にしたのでそんなに寒くないから(新築一戸建て)」「他の暖房機器があれば十分だから(中古マンション)」といったコメントがあった。

一方、「妥協はしていない」と回答した人は44.3%だった。

        ◆     ◇

 とても興味深い結果だ(同社は先に賃貸篇も発表しているが、賃貸はよく分からないので割愛した)。

 結果についてコメントする前に、課題を一つ指摘したい。今回の同社のアンケートに限ったことではないが、結果を全部足して、それを割って平均値や傾向を出しても、絵具と一緒、攪拌されて限りなくグレーに近くなる。実態はよく分からない。今回の調査でいえば、マンションと戸建て、新築と中古、そしてもっとも肝心なことだが、購入者の所得(購入価格)、年代によって回答はかなり異なっているはずで、その詳細な分析が必要だということだ。(同社リリースでは回答者の属性を一部紹介はしているが…)

 設問項目に注文もある。どうして基本的な条件に住環境、ランドスケープデザイン、断熱・遮音、天井高、サッシ高、廊下・階段幅、その他トイレなどのユニバーサルデザインに関するものはないのか。設備仕様では、同社は宅配ボックス、ウォークインクローゼット、床暖房、オール電化、シーズインクローゼット、食洗機、トイレ内手洗い、ディスポーザー、人感センサー付き照明、TV付き浴室、押入れ、複層ガラス、省エネ給湯器の12項目についても聞いているが、これでも少ないと思う。基本性能とも関連するのだが、間取り(可変性)、収納・引き戸のソフトクローズ機能、ミストサウナ、スロップシンク、キッチン天板仕様、食器棚、浴室タオル掛け、ドアノブ、トイレドア幅、床・壁仕上げ…などだ。

 これらをさておき、調査結果について。住まいの条件に対する妥協ラインが予算の1.3倍というのは正直驚いた。これは前述したように、億ションを買える人は1億円が1.3億円になっても買いあがることはできるかもしれないが、当初予算が3,000万円の人は4,000万円近くになっても購入することができるのか。

 築年数の妥協ラインは納得だ。基本性能・設備仕様レベルは最近のマンションより10年くらい前の物件のほうが高いものは少なくない。これは消費者が賢明な選択をしているということか。

 広さを14㎡(約4.2畳大)妥協したというのは、是非はともかく最近の住宅市場をストレートに反映している。

 最寄り駅までの徒歩時間は、デベロッパーが「駅近」(マンションだが)を最大の売りにしていることと全く異なる結果が出た(戸建ての回答が半数であることと無関係ではないが)。記者は、徒歩時間より大事なものがあると消費者は考えていると理解したい。

 その他の条件については、人それぞれだからコメントしないが、収納スペースについて一言。仮に住宅の収納率を10%としたら、価格が5,000万円だったら、収納スペースは500万円だ。それほど高価なスペースに後生大事にしまっておく価値のあるものはどれほどあるのか。小生などは本のみ。本は捨てられない。

 全体として住まいの条件を妥協しない人が19%というのには、やや驚いた。十全の物件など一つもない。全ての条件を満たした物件を買えるのはほんの一握りのお金持ちしかいないはずだ。

 設備仕様に関してはなにも言うことはない。「妥協しない」が44.3%というのは、このようなものか。逆に驚いたのは「複層ガラス」は7.5%、「省エネ給湯器」は6.5%の人が妥協しており、「妥協しても問題なかった」人は前者が56.7%、後者が53.8%にも達していることだ。マンションのサッシは一度付けたらほとんど変更できない。これからは樹脂サッシが当たり前の時代になる。消費者も住宅を見る目を肥やさないといけない。複層ガラスと省エネ給湯器を妥協した人の30%超の人が後悔していると回答しているのに注目すべきだ。

 全体として、調査は現在のデベロッパー、ハスウメーカーの供給するマンションや戸建てのレベルを反映していると思う。そして何よりもうれしいのは、5年前に「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」の本について3回にわたって批判した記事は間違いではなかったことを、消費者の方が証明してくれたことだ。この記事には3回で2万件を超えるアクセスがあった。

また怒り沸騰 「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」の本は買うな!()2018/2/1

カテゴリ: 2022年度
 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン