「アレ」を「暗黒社会」「ファッショ」に置き換えた…千代田区の仮処分申立書
神田警察通り第Ⅰ工区のイチョウの落ち葉(11月30日写す)
昨日(12月1日)行われた「神田警察通りの街路樹を守る会」緊急記者会見から一夜開けたこの日(2日)、会見を報じたメディアは2段見出しの東京新聞(50行はあったか)とベタ扱いの朝日新聞(20行くらいか)のみ。日経も読売も毎日も(産経は確認しなかった)1行もなし。記者会見と同じ日に選ばれた今年の「新語・流行語大賞」の「アレ」を「仮処分申立書」=「暗黒社会」「ファッショ」「テロ」に置き換えて考えてみた。
申立書の趣旨には「(工事現場の)土地について、午後8時ないし翌日午前6時までの間、債務者自ら又は債務者と意を通じた第三者をして、座込み、自動車の駐車その他の方法により、立ち入り、又は、立ち入らせてはならない」とあり、「申立ての理由」には「債務者らは工事に反対し、たびたび工事を妨害するため、工事が実施できていない」とある。
小生はこの文言に震え上がった。「債務者ら」とあるように、「ら」抜きではなく「ら」付きであることに注意する必要がある。文脈からすれば、現在の債務者10人にとどまらず「債務者と意を通じた第三者」もまた債務者に転落(イチョウの側からすれば名誉市民に昇格か)する危険性をはらむ。昨日も書いたように「工事妨害」の定義はないので、現場付近をぶらつくだけで「工事妨害」とみなされ、酔っぱらいを含め「工事に反対する」全ての人が「公務執行妨害者」の烙印を押されかねない。これはもう戒厳令下の赤の広場か天安門広場だ。
小心者の小生は「債務者と意を通じた第三者」になりうるか、大城弁護士に訪ねたのだが、大城氏は否定も肯定もしなかった。
何度も書いているが、小生は「イチョウの味方」-つまりイチョウは道路の付属物だから区の財産でもある。広義にとらえれば、小生の言動・記事は千代田区だけでなく全国の自治体の利益につながるはずだ。もう一人の小生が〝もっと書け〟と背中を押している。
ついでに、わが多摩市の対応について紹介する。市は令和3年、市議会で議決されたレンガ坂のユリノキ伐採工事説明会を開いた。伐採しないでほしいなどの声が寄せられたことから、市は計画を変更し、約100本のうち19本を残すことにした。工事については、安全性の観点から夜間工事はありうるとしながら、夜間工事はコストもかかることから、ユリノキの伐採は昼間に行ったはずだ。
また、図書館の新設に伴う中央公園内の樹木を伐採する際の令和3年4月、には、市は小学生などを対象に「樹木伐採起工式」を行い、阿部市長と藤原マサノリ多摩市議会議長の挨拶、多摩グリーンボランティア森木会(かつて内閣総理大臣賞を受賞)の川添会長の指示のもとで、参加者は樹木伐採作業を体験した。
千代田区が行っているのは真逆だ。住民をだまし討ちにし、人間にすれば志学の15歳か、破瓜の16歳か、芳紀の18歳か、伸び盛りのイチョウの死刑を執行しようとしている。人倫にもとる蛮行だ。「たびたび工事を妨害」とあるが、工事を行う場合は事前に住民に告知する約束ではなかったのか。約束をほごにしたから住民が行動を起こした。今回の騒動の責任は全て行政にある。
曲がりなりにも憲法でわが国民は、基本的人権は侵すことのできない永久の権利として保障され、思想、信条、宗教、集会、結社、言論、行動を含む一切の自由を有するわれわれが、突如として「公務執行妨害者」とみなされることになりかねないことを、申告書は示している。権力が〝怪しい〟と判断したら、債務者は365日24時間監視される社会になる。
千代田区長、この仮処分申告書を即刻取り下げていただきたい。申告が受理されたら全国に燎原の火のごとく広がる。貴殿はごく一部の「権力」の英雄に祭り上げられるかもしれないが、長い歴史で考えれば「全体主義へ道を開いた男」へ転落する危険性もある。千代田区民もまた歴史的選択を迫られている。自由かファッショか。
神田警察通り第Ⅰ工区(イチョウは残された)
◇ ◆ ◇
反社勢力と何ら変わらない「公務妨害者」の烙印を押された債務者の方々には酷だが、書かざるを得ない。刑法第59条には「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する」と明示されている。債務者10人の方は、この公務執行妨害罪に問われる可能性がある。怪我をさせたら傷害罪に問われることにもなりかねない。
区は用意周到。イチョウがどうなろうと全然考えていない。皆さんを陥れることしか考えていないことを申告書は証明している。例えば、「令和5年4月11日の妨害工事」には次のようにある。
「債務者●●●は、同日午前4時32分頃、作業帯内付近を警備していた訴外シンティ警備の警備員の胸ぐらをつかむ暴行に及んだ…その後、債務者●●●が、千代田通り側に急に走り出し、規制帯の端にたどり着くと、カラーコーン及びバーを取り外して作業帯内に突入した。そして、そこにいた訴外大林道路の作業員により制止されるや、同作業員を突き飛ばし、同作業員の背後にいた債権者の職員を転倒させる暴行に及んだ(証拠資料として診断書)。これにより債権者の職員は、腰椎椎間板ヘルニアの急性増悪等により6か月の療養を要する見込みの傷害を負った(証拠の診断書)」
申告書の記述は具体的だ。証拠資料としてはほぼ完ぺきに揃っている。区は4月17日付で神田警察署に被害届を提出し受理された。産経も含めてマスコミはこれを報じだ。公務執行妨害、暴行、傷害罪に問われたようだ。(メディアの怖いところだ)
この件だけでなく、申告書の債務者の言動、行動は、建築物の監理業務でかなり普及している音声付き高感度カメラで詳細に記録されているはずだ。債務者の方が「写真撮影は、工事を妨害しているという証拠づくりとしか思えない」と話したが、その通りだと思う。小生が行政担当だったら間違いなくそうする。その道のプロを雇い、債務者の一部始終を記録する。無謬の「公務」だから犯罪に問われることはない。顔認証も普及しているので、債務者の行動はその後も追尾されている可能性がある。申告書が受理されたら、工事が終わるまで追跡される。区は債務者が日常生活に支障をきたすことなど考えていないはずだ。
そこで債務者の皆さんに提案だ。これまでの活動に全国670万本の街路樹になり代わってお礼申し上げる。しかし、体が心配だ。〝わび状〟を一筆入れるのも一法だと思うがいかがか。〝泣く子と地頭には勝てぬ〟を実証する絶好の機会だ。イチョウが見事に死刑執行されるのを晴着を着て、日の丸の小旗を振って〝日本帝国万歳!〟の拍手・万歳三唱でもって見届けようではないか。みんな死ぬために生きているのだから。
神田警察署前の道路工事
うろつくだけで工事妨害!? 暗黒社会へ突入千代田区イチョウ守る会を犯罪扱い(2023/12/2)扱い
〝やめてくれよ区長さん千代に千代田のイチョウが泣いている〟30日夜の無法地帯(2023/12/1)
メディアは信頼できるか 「事実(ファクト)」とは何か 読売報道に想う(2023?11/25)
「多摩中央公園改修」の疑問氷解 樹木5000本 うち伐採予定1125本の8割は実生木(2023/10/21)
うろつくだけで工事妨害!? 暗黒社会へ突入 千代田区 イチョウ守る会を犯罪扱い
「極めて異例」「極めて疑問」「極めて異常」大城弁護士(東京高裁司法記者会で)
千代田区の「神田警察通りの街路樹を守る会」は12月1日、緊急記者会見を開き、先に千代田区が行った債務者10人を対象とした、神田警察通りⅡ期道路工事区間の歩道・車道への午後8時から朝6時までの立入禁止を求める仮処分申し立ては反対者の表現活動を禁止するものであり、住民に対する執拗な写真撮影は、民主主義、住民自治に著しく反する行為と区側の対応を批判した。
会見に臨んだ「守る会」の代理人弁護士・大城聡氏は約1時間の会見時間中に「極めて異例」「極めて疑問」「極めて異常」と「極めて」を3度も用い、仮処分申し立ては住民自治を根幹から揺るがすものと語り、「本日(1日)も工事が強行されるかもしれない。ぜひ現場を取材していただきたい」とメディアに訴えた。
このほか会見で住民代表は「わたしたちは工事自体には反対していない。イチョウ並木を残してほしいと訴えているだけ。今回の仮処分申し立ては住民同士の溝を拡大するもの」「写真撮影は、工事を妨害しているという証拠づくりとしか思えない」と話し、元区議も「悔しくてしようがない。議会決議には瑕疵がある。工事強行には断固反対する」と語った。
◇ ◆ ◇
この千代田区神田警察通りの街路樹であるイチョウ伐採に関しては数えきれないほど記事にしてきた。仮処分申し立ては昨日初めて知った。
この日(1日)配布された申立書を読んで驚愕した。申立書は38ページにわたるもので、債権者は道路所有者の千代田区で、債務者は千代田区神田地域に住む住民8人と区議会委員2人の合計10人。具体的な「工事妨害」行為の証拠資料も添付されている。
百歩譲って工事が合法とすれば、工事現場の立ち入りを禁止するのは当たり前だ。ところが、今回は妨害予防請求権なるものを根拠に「工事妨害者」を特定し、その人の道路通行を禁止するものだ。昨日も書いたが、これは反社会的勢力と同じ扱いだ。反社勢力だって公道を通ることは禁止されていない。これはもう魔女狩り、赤狩り、ホロコーストと本質的に変わらない。
「妨害行為」とは何か、大城氏にその定義を訪ねたが何もないということだった。そこで、申立書に記載されている具体的な妨害行為について読んだ。中には「警備員引き倒す暴行」「債権者の職員を転倒させる暴行」などと、事実であれば行き過ぎた妨害行為と受け止められるかもしれないが、記者が知る「守る会」の人たちは圧倒的に女性が多く、年齢も60歳以上が大半だ。屈強な警備員を引き倒す力があるとはとても思えない。わが国には伝統的な大岡裁きもあるではないか。
これらの事例はともかく、見逃せないのは、定義などないからそうなのかもしれないが、「妨害行為」かどうかの判断は区側に委ねられていることだ。区=善、祷民=悪の構図のもとに申立書は作成されているということだ。行政の無謬主義は改めるべきだと思う。
具体的事例をいくつか紹介する。「債務者●●●は、本件工事区域の作業帯付近をうろつき工事を妨害した」「債務者●●●は、作業帯付近にいて、『なんで住民をいじめるんですか』などと大声で主張した」「債務者●●●は、作業帯付近をうろつき、債権者職員や作業員に対し、文句を言うなどの行為に及んだ」「債務者●●●は、債権者の職員や訴外大林道路の作業員等を自らの携帯電話のカメラ機能により撮影していた」「債務者●●●は、債権者の職員の行動を携帯電話で執拗に撮影していた」…。
みなさん、いかがか。記者は昨夜、「撮影班」の背番号を付け、住民らを撮影してる人に取材目的である旨を告げ「わたしも同じように撮影していいか」と尋ねた。写真は債権者も債務者も区別なく撮影したが、「工事妨害」に該当するのかしないのか。
これに関連することだが、記者は公務上の公務員には肖像権は存在しないという説に賛成だ。とくに今回のような事案では、むしろ公務員の行き過ぎた行動を監視する意味で写真撮影は有効だと思う。
次にメディアについて。この日の緊急記者会見に出席していたのは小生を含め数人しかいなかった。裁判所データブック2023によれば、令和4年の全裁判所の新受全事件数は3,375,246件・人だ。一方、日弁連によると、2020年3月31日現在で弁護士は 42,164 人だ。全ての裁判に弁護士がつくかどうかは分からないが、1人当たり792件の計算になる。
このような数字を見ると、今回の事案などはメディアも無視するのかもしれないが、大城弁護士が「極めて」を3度も口にしたように、民主主義、地方自治の根幹を揺るがす問題だと思う。会見で記者の方が〝回り道もある〟と行政側の考えを紹介したが、問題はそんなことではない。住民を犯罪者扱いすることの是非が問われている。
これが通れば民主主義は死に(とっくに死滅したか)、ファシズムは床下あたりまで侵入していると考えたほうががいい。気がついたときは手遅れだ。
〝やめてくれよ区長さん千代に千代田のイチョウが泣いている〟30日夜の無法地帯(2023/12/1)
〝やめてくれよ区長さん 千代に千代田のイチョウが泣いている〟30日夜の無法地帯
11月30日20:00ころの神田警察通りの道路
11月30日20:00前後の千代田区神田警察署前の出来事だった。「来た!」という声が聞こえた。振り返ると、工事車両と思われる数台の車が車道を封鎖した。記者より体重が2倍もありそうな交通整理のおまわりさんでもない、何と呼べば分からない制服姿の一団と、それを取り巻く制服組がどたどたと駆けつけてきた。そして、だしぬけに「作業の妨げになります。大変危険です。離れてください。作業帯に入らないでください。ご協力をお願いします。通行者の皆さんは立ち止まらないでください。足元に気を付けて通行してください」とハンドマイクでがなり立てた。
何度も修羅場を潜り抜けてきた記者だが、権力の牙城である警察署の目の前で起きたこの出来事に思考力が停止した。二・二六事件もかくや。
寒さのせいか空腹と酒が切れた禁断症状か、手足口が震え、恐怖と怒りがこみ上げてきた。それでも記者の端くれだ。必死でメモを取ることにしたのだが、真っ暗なせいで何を書いているやらさっぱりわからなかった。
闇夜ではメモることはできないことを知った。口は達者なほうなので、「記録班」「撮影班」の背番号をつけた人に片っ端から声を掛けた。取材であることを告げ、「皆さんが撮影しているように、わたしも撮影していいか」と。誰も答えてくれなかった。らちが明かないので「責任者の方と話したい」と頼んだ。ようやく口を開いた方は「わたしの判断では(記者が撮影することについて)いいともダメともいえない」と話した。
取材については、別の方が「(取材に来ていることを)報告しなければならない」とのことだったので、その義務はないとは思ったが、記者は名刺を渡し、「誰に報告するのか」とただしたが、返事はなかった。これはアンフェアだ。
この間約10分。押し問答を繰り返しても何の収穫も得られないと考えた記者は、徒歩で10分くらいの区役所に向かった。ダメもとだとは思ったが、「責任者」にこの日の事態について説明を聞くためだ。
案の定、門前払いを喰らった。担当部署と思える庁舎内の灯りはついていたが、警備員によると、22:00まで開館している図書館を除き、17:00以降の一般の人の立ち入りは禁止とのことだった。「ドアの外で退館する人に声を掛けるのはどうか」と聞いたら、「(声を掛けられた人から)『怪しい人がいる』と通告が入ったら、不法侵入の疑いがあると、警察に連絡します」とのことだった。当然だ。
そこで、また現場に戻った。21:00ころか。工事の後片付けが行われていた。イチョウを伐採することはできなかったようだ。
「作業の妨げになります。大変危険です。離れてください」(危険なのは区だ)
道路をふさぐ車両
担当部署と思われる区庁舎5~6階の灯りはついていた(30日20:30ころ)
◇ ◆ ◇
上段は、今朝(30日)、「神田警察度通りの街路樹を守る会」の方からの「また伐られた」との一方で現場に駆け付けた顛末だ。
もうくどくどと書かない。全ての責任は樋口高顕・千代田区長にある。どうして文字通り闇討ち作業を強行するのか。令和4年3月17日に行われた区議会企画総務委員会でも嶋崎委員長は「そうだね。それは、協議会の合意が必要だよね…そこのところの知恵出しというか、やり方というか…多少瑕疵があったのかもしれない…」と議会議決には瑕疵があったと認めたではないか。どうして区民同士の分断を助長するのか。「過ちて改めざる是を過ちという」諺があるではないか。
この日(30日)の作業開始の手順にも問題がある。だしぬけに「作業の妨げになります。大変危険です。離れてください」はありえない。〝千代田区役所です〟〝神田警察署です〟(これはないと思うが)とどうして名乗れないのか。責任者も立ち合い、きちんと説明すべきだし、撮影班が周りの人を撮影する法的根拠を示すべきだ。
もう一つ、重大なことがある。「守る会」は11月30日付で千代田区長宛て「抗議書兼要望書」を提出した。その文書には「本件に関連し、千代田区から、神田警察通りの街路樹を守る会のメンバーに対し、午後8時から午前6時までの間、工事区間付近の道路への立ち入り、通行を禁止することを求める仮処分の申し立てがなされています」とある。
記者は仮処分申請書を読んでいないが、これでは「守る会」は反社会的勢力と同じではないか。仮に法的根拠があるとすれば、どのようにして「守る会」のメンバーを特定するのか。記者のような区の敵でも「守る会」の味方でもないニュートラルのイチョウの味方はどう扱われるのか。道路の附属物としてごみ箱か豚箱に捨てられるのか。
もう一度区長へ。来年早々に80歳になるというお母さんがこの夜もイチョウの傍に座っていた。貴殿はそれでも男か。〝やめてくれよ区長さん 千代に千代田のイチョウが泣いている〟。
端っこで成り行きを見守っていた21歳のガードマンは「ここに来いと言われてやってきただけ。どうなっているのか全然分からない」と話した。どこかで聞いたセリフだ。そうだ、ロシア兵だ。上段の美しい女性も「テロだ」と吐き捨てた。
「約束を反故。許せない」住民怒る 健全木のイチョウ 新たに4本伐採 千代田区(2023/2/7)
健全な街路樹を「枯損木」として処分問われる住民自治千代田区の住民訴訟(2022/11/12)
「苦汁」を飲まされたイチョウ 「苦渋の決定」には瑕疵 続「街路樹が泣いている」(2022/5/14)
民主主義は死滅した千代田区のイチョウ伐採続またまた「街路樹が泣いている」(2022/5/13)
千代田区の主張は根拠希薄イチョウの倒木・枯死は少ない「街路樹が泣いている」(2022/5/12)
「南船橋」駅直結の商業施設開業/再開発「日本橋」の次は「水道橋」か 三井不動産
「三井ショッピングパーク ららテラス TOKYO-BAY」
三井不動産は11月29日、千葉県船橋市で開発を進めてきたライフスタイル型商業施設「三井ショッピングパーク ららテラス TOKYO-BAY」をオープンした。開業に先立つ11月28日、プレス向け説明会・内覧会を行い、一般向けにプレオープンした。船橋市の「JR南船橋駅南口市有地活用事業」の事業者公募に同社が選定されたもので、公民連携による商業施設と分譲住宅の開発を推進する。
施設は、JR京葉線南船橋駅直結、船橋市若松2丁目に位置する敷地面積約16,740㎡、鉄骨造地上2階建て延床面積約11,200㎡。店舗数36店舗。基本設計は東急設計コンサルタント、実施設計・監理・施工は三井住友建設。運営・管理は三井不動産商業マネジメント。
関東初出店のタイ最大のコーヒーチェーン「Café Amazon」など36店舗が出店するほか、ドッグランや遊具広場を備え、フードフェスやスポーツのパブリックビューイングなどのイベントも実施する約5,000㎡の広場空間「MIXI FUN PARK(LaLa terrace Green Park)」を整備した。事業地内には三井不動産レジデンシャルの15階建てマンション「パーク・ホームズ南船橋」(212戸)と「パークリュクス南船橋」(133戸)が建設中。
案内会で主賓として出席した松戸徹・船橋市長は「周辺では、千葉ジェッツのホームアリーナが令和6年春にオープン予定であり、南船橋エリアに新しいまちのデザインが誕生する大きな流れがあります。船橋の新しい魅力を感じることができるこのまちに、皆様もぜひお越しください」と挨拶した。
主催者の同社常務執行役員 商業施設本部長・若林瑞穂氏は「南船橋は特別な思い入れがある場所。1981年にオープンしたららぽーと第一号店『ららぽーとTOKYO BAY』、物流施設『MFLP船橋』のほか、収容人数1万人の『(仮称)LaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)』も来春に開業する。今回の施設は『南船橋』のケートウエイとして位置づけ、施設単独で年間売上高40億円、年間来館者200万人を目指し、エリア全体の売上高は1,000億円を見込む」と語った。
また、同社商業施設本部 リージョナル事業部長・肥田雅和氏は、施設の特徴として①駅直結②敷地の三分の一が広場③日常使い店舗のラインアップ④施設の約12%の電力をカバーする太陽光発電搭載、国土交通省の「グリーンインフラ活用型都市構築支援事業」認定事業-などをあげた。
南船橋駅周辺では、開業から40年以上の歴史をもつ国内最大規模の商業施設「ららぽーとTOKYO-BAY」や「ビビット南船橋」、物流施設などのほか、2024年春開業予定の大型多目的アリーナ「ららアリーナ 東京ベイ」の開発が進められており、船橋競馬場も2023年度末にリニューアル工事が完了する。
左から肥田氏、松戸市、若林氏
広場と「パーク・ホームズ南船橋」
◇ ◆ ◇
取材の目的の一つは、東大野球部出身でかつての同社野球部のエース&主砲の肥田氏(52)がどのような姿を見せるかを確認することだった。あの相手の打者や投手を震え上がらせたぎょろ目の鋭い眼光はすっかり影を潜め、すっかり中年おじさんに変わり果てていたが、体形は全然変わっていなかった。「野球? もう年で体がついていけない」と話した。体・容貌が真逆だった同窓後輩の溝口の近況については、「溝口? 彼はいまマレーシア」と語った。同社は現在、マレーシアで物流施設事業を推進中。
取材では思いがけない収穫もあった。同業の記者の方が、「三井不動産といえば『日本橋』。『南船橋』も『橋』がつく」と若林氏に語り掛けた。傍にいた小生はそのような切り口もあるのかと驚き、頭をフル回転させ「橋」のつく地名を探した。「水道橋」を思いつくまではものの1分もかからなかった。
すかさず、「橋といえば水道橋。次の〝東京ミッドタウン〟は水道橋ではないですか」と若林氏にビーンボールを投げた。
若林氏は微笑を浮かべただけでさらっと交した。代わって同社広報担当者が「東京ドームには愛着があります」と、また別の担当者は「後楽園もあります」とはぐらかした。
ン…「後楽園」。調べたら、東京ドームを含む「都市計画公園後楽園」(22.1ha)には「未供用」面積が2.83ha存在する。公園街づくり制度の適用要件である「未供用区域の面積が2.0ha以上」に合致する。この制度を活用して東京ドームを含む「水道橋」か「後楽園」がそう長くない将来再開発されるのは間違いない。
「南船橋」マンションは坪単価275万円のようで、これは安い。大楽勝だろう。
肥田氏
男子用トイレ(△△ハウスロゴに似ていないか)
記者が特別に作ってもらった白菜の具が甘くておいしい「どうとんぼり神座」のお子様ラーメン500円(このほかから揚げジュースが付く)
頂門の一針、蜂の一刺しにならないが アルヒ「本当に住みやすい街大賞」批判(2021/12/12)
三井不動産 総延べ床面積70万㎡の「MFLP船橋」全体完成(2021/6/30)
〝地域工務店が主役〟は達成された JAHBnet(ジャーブネット)25年の歴史に幕
「JAHBnet経営者ファイナルカンファレンス~勝どきを上げる会~」(ホテル インターコンチネンタル 東京ベイで)
宮沢氏
AQ Group(宮沢俊哉社長)が主宰するわが国最大の工務店ネットワークJAHBnet(ジャーブネット)は11月28日(火)、25年間活動を続けてきた活動の目的が達成されたとし、2023年12月末日をもって解散すると発表した。同日、全国の会員会社代表ら約100人が参加して、最後の会合となる「JAHBnet経営者ファイナルカンファレンス~勝どきを上げる会~」を開催した。
JAHBnetは1998年設立(当時「アキュラネット」)。「地域工務店・木造住宅を主役に」「日本の住まいを安くする」をミッションに掲げ、加入会員は最大で631社、現在でも100社を超えるわが国最大のネットワークで、累計販売棟数は16万棟を突破している。
ファイナルカンファレンスでJAHBnetの主宰を務める宮沢氏は約45分間にわたりJAHBnetを立ち上げた背景、狙い、活動、成果、今後の課題などについて語った。
◇ ◆ ◇
これから本格的に〝木造の時代〟が始まると思っていた木造ファンの記者にとって寝耳に水のイベントだった。宮沢氏は約45分間にわたって熱弁をふるった。会場に充てられた「ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ」に集まった北は北海道から南は沖縄まで約100人の会員からはしわぶき一つ聞こえなかった。
メディア席は最後列だったために、記者はどうでもいい「AQらめていない」などのジョークはよく聞き取れたのだが、肝心のどうして解散するのか、今後どうするかは宮沢氏も明言を避けたためさっぱり分からなかった。
しかし、〝目的は達成されました、はいさようなら〟には絶対ならないことだけは理解した。報道陣をシャットアウトして行われた同ホテル内での「勝どきを上げる会~祝勝会~」こそ、新たな活動のキックオフイベント、決起集会のはずだ。
◇ ◆ ◇
イベントが始まってから終わるまで約1時間。メディア席に用意されたのはたった〝1杯の水〟のみ。質疑応答もなし。このままでは引き下がれないと考えた記者は、「わたしの故郷・三重県からの出席者もいるはず。コメントを聞きたい」とスタッフにお願いしたら、肩書に「アキュラホーム津庄田店店長 ナカケンホーム」とある中川直樹氏(49)を紹介された。
中川氏は「わたしは大工。父も兄も大工、大工一家。直近の1年間で14棟を建てた。JAHBnetの解散は寂しいですが、新たにFCも始まりましたから…三交ホームさんに負けたくない」と話していたところに、だしぬけに別のメディアの方が3人も割って入り、記者を無視して名刺交換をした。
無礼な振る舞いに記者はカッとなったが、記者の方たちは、このナカケンホームがAQ Group のFC第一号店であることを宮沢氏か聞きだしたようで、それを了とした。
これが今後の活動の最大のヒントだ。(記者は、トイレのために会場から出る出席者に片っ端からインタビューしようと思ったが、スタッフから断られたので断念した。宮沢氏の話はテープにも収めた。改めて書く)
中川氏
全て流通材、組子格子耐力壁を現しで表現 AQ Group「8階建て純木造ビル」見学会(2023/8/26)
〝豊かな暮らし〟とは何か ジャーブネットが第18回全国大会&シンポジウム(2017/7/26)
狩猟型から農耕型へ 第15回ジャーブネット全国大会に500名超が参加(2014/7/4)
ステップアップしたジャーブネット 地域連携強化(2013/7/13)
メディアは信頼できるか 「事実(ファクト)」とは何か 読売報道に想う
今朝(11月25日)の読売新聞の記事を読んでいて「新聞・テレビ『信頼』68%」という見出しが目に留まった。スマートニュースメディア研究所などが行ったメディア価値観全国調査結果を伝えていた。
〝そんなはずはない〟と思い、同研究所の調査結果資料を取り寄せた。その通りだった。同紙の報道は正確ではなかった。68%という数値は平均値を示したもので、同研究所は年代別にかなり詳細な調査をしており、「とても信頼している」は18~39歳で4%、40~59歳で6%、60歳以上で11%となっている。「まあ信頼している」がそれぞれ52%、65%、70%となっており、同紙は双方を合わせて『信頼』と括った結果だ。一方で、調査では「全く信頼していない」層はそれぞれ8%、6%、3%となっている。
これをどう読むかだ。記者は18~39歳の層の「とても信頼している」が4%であるのに対し、「全く信頼していない」人は8%に達していることに注目した。
同じような記事をつい先日(2023年11月5日付)、朝日新聞の論説主幹代理・沢村亙氏による「(日曜に想う)偶然を楽しむ、人生が広がる」を読んでいたからだ。少し長くなるが、以下に引用する。
「4年前の本紙オピニオン欄で、作家の真山仁さんが、高校生21人とジャーナリズムをテーマに議論する企画があった。
毎朝、新聞を読んでいたのは1人だけ。『新聞が信用できない』に挙手したのは7人。ここまでは想定できた。
ショックだったのは、その理由だ。人が書く記事は主観が入るので正しい情報ではない。つまり『人が伝えること』への不信である。人工知能(AI)が記事を書くことに『良い方法です』という反応もあった。
不信の源流と、その後の変化を知りたくて、企画を発案した池田遥さん(21)に会った。
『原発事故からジャニーズ問題まで、メディアは何か大事なことを隠している、都合よく誘導しているという感覚が、私たちの世代に染みついている』との指摘は耳に痛い」
◇ ◆ ◇
「メディアは何か大事なことを隠している、都合よく誘導している」-これに、記者は耳が痛いどころかグサリと肺腑をえぐられ、息が詰まった。
上段の同研究所もまた2022年5月31日、メディアに手厳しい調査報告書を紹介している。桜美林大学リベラルアーツ学群教授・平和博氏の「ジャーナリズムの価値観は2割の支持層にしか受け止められていない、その信頼を広げる方法とは」がそれで、同氏は米国の「メディア・インサイト・プロジェクト」の調査報告を次のように紹介している。
「『(メディアは)意図的に人々を欺こうとしている』との回答が、『自国の政府のリーダー』『企業のリーダー』に比べて『ジャーナリストや記者』が最も多く、27カ国平均で67%、日本では52%だった。
さらに『政府』『企業』『NGO/NPO』『メディア』について、『社会を統一する勢力』か『社会を分断する勢力』かを尋ねた設問では、対象24カ国の平均で『分断する』が『統一する』を上回ったのは『政府』(48%と36%)と『メディア』(46%と35%)だった。
メディアの機能に対する評価を重ね合わせるため、『権力監視(Oversight)』『ファクト重視(Factualism)』『社会批判(問題の指摘、Social Criticism)』『弱者の代弁(Giving voice to the less powerful)』『透明性(Transparency)』というジャーナリズムの5つの基本原則についても尋ねている。このうち過半数の支持が得られたのは『ファクト重視』の67%のみ。5つの原則すべてを支持する、と答えたのは全体の11%にすぎなかった」
◇ ◆ ◇
記者は、このメディアが「社会を分断する勢力」には同意しかねる。そもそも全世界は「分断社会」ではないのか。「分断社会」の「事実(ファクト)」を伝えるのはメディアの役割ではないのか、「統一」する手段などメディアは持ち合わせていない(ペンの力は馬鹿にできないとは思うが)。
それより考えないといけないのは、「事実(ファクト)」とは何かだ。これは永遠のテーマだ。小説家は「嘘」をいかに事実であるように書くのが商売だが、メディアは「嘘」を暴き、「事実」を報じるのが使命だ。表層的な「事実」を追っていたら、いつまでたっても「真実」にたどり着けない。自戒の念を込めて読売新聞の記事を紹介した。
多摩市の次に好きな草加市だが…街並みは乱杭歯〝美しくない〟と感じる市民6割超
草加松原の瘤だらけの街路樹(強剪定されており、樹高は6mくらいか。電柱の添え物になっている。落葉樹のようだが、多摩市は冬場でも緑が楽しめるよう常緑樹も多い。行政も悪いが、これをよしとする市民にも問題がある。ビッグモーターとどこが違うのか)
理由は明かせないが、草加市はわが街・多摩センターの次に好きな街(市)だ。好きだからこそ書く。ポラスグループ中央住宅「ときの環 草加松原」の記事と併せて読んでいただきたい。
草加市は、毛長川を挟んで東京都足立区と接する。足立区側の南千住、北千住、西新井も他の街も五十歩百歩だとは思うが、毛長川を超えた東武スカイツリーラインの谷塚あたりから街並みは一変する。マンションなど高い建物があれば狭小敷地の戸建てが櫛比しており、まるで乱杭歯だ。
なぜか。記者は都市計画、用途規制に問題があると考えている。都内でもっとも緑環境に恵まれている多摩市と比較するのは酷だが、草加市の用途地域分布を紹介する。 ( )内は多摩市。
市域面積は2,502ha(2,108ha)で、市域面積に占める割合・面積は第一種・第二種低層住居専用地域は4.8%・121.3ha(31.4%・662.9ha)、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域は71.0%・1,777.4ha(56.1%・1,181.8ha)、近隣商業・商業地域は4.4%・110.1ha(5.7%・119.9ha)、準工業・工業地域は16.7%・416.5ha(2.6%・54.1ha=準工のみ)、工業専用地域は3.1%・76.7ha(0%・0ha)だ。
草加市は第一種・第二種低層住居がわずか4.8%しかなく、多摩市は31.4%にも達している。両市とももっとも多い中高層・住居・準住居は建ぺい率60%、容積率200%が圧倒的に多いはずだ。近隣商業・商業は似てはいるが、比率は多摩市のほうが高い。準工・工業は草加市が16.7%、工専も3.1%なのに対し、多摩市は工業地域、工専がなく準工のみで2.6%しかない。
断っておくが、記者は工業系や工専がダメとは言っていない。一般的に嫌悪施設と呼ばれるのはこれらの用途地域に存在し、エッセンシャルワーカーが職場としているものが多い。嫌悪施設の呼称も改めたほうがいい。法律にはそんな文言はどこにもない。
必要なのはしっかりした住み分け・都市計画だ。例えば準工。風俗や危険性の伴う工場などは建築不可だが、それ以外の建築物はほとんど制限がない。一言でいえば〝なんでもあり〟の地域だ。用地をそれなりに明確にしている商業や近商よりたちが悪いと考えている。
取材の帰りに見た街路樹は若木のはずだが、樹種がまったく分からない瘤だらけの老木に見えた。ビッグモーターと大差ないと思った。何の木か調べようと思ったが、街路樹データは公表されていない。多摩市は詳細な全木データを公表している。
市の公表データによると、市のまちなみを美しいと感じている人は市全体で31.8%しかなく、「そう感じていない」人は62.5%に上る。多摩市はどうかというと、市民が好きなのは「自然や緑がたくさんある」「自然環境に恵まれている」が圧倒的多数を占める。
そんな草加市とポラスは景観協定を結んだ。今回のポラスの1宅地の緑被率は約20%だが、このエリアの緑被率は15~16%にしか過ぎないはずだ。これをきっかけに緑被率アップに真剣に取り組んでいただきたい。これ以上書くと草加市民に怒られそうなのでやめるが、多摩市の緑被率(みどり率)は53.9%だ。
草加市初景観協定&全棟ZEH 敷地分断・送電線…難点克服ポラス「草加松原」(2023/11/22)
〝美は現しにあり〟木と鉄骨のハイブリッド実現 野村不&清水建設「溜池山王ビル」
「野村不動産溜池山王ビル」
野村不動産と清水建設は11月21日、「野村不動産溜池山王ビル」のメディア向け竣工内覧会を行った。野村不動産溜池ビルの建て替えプロジェクトで、同社の事業企画・監修のもと、清水建設の「シミズ ハイウッドⓇ」を活用し木質建築部材と鉄骨造を合理的に組合せ、心地よい無柱の木質オフィス空間を実現したもの。竣工前に一棟賃貸借契約が完了している。
「シミズ ハイウッドⓇ」は、同社の「スリム耐火ウッドⓇ」「ハイウッドビーム」「ハイウッドスラブ」「ハイウッドジョイント」を鉄骨造と合理的に組合せる独自の構法。今回のオフィスでは21m×18m(最大天井3.6m)を実現した。構造材はカラマツで、現しのスキは主に長野県産材。
この構法により、木の使用量(約470㎥)を最大化させた木質オフィスを実現し、建設時のCO2排出量約125を削減するとともに、木材が成長段階で吸収するCO2約285tを固定化している。令和3年度の国土交通省サステナブル建築物先導事業にも採択されている。
物件は、東京メトロ溜池山王駅から徒歩1分、港区赤坂1丁目に位置する敷地面積約690㎡の9階建て。構造は鉄骨造一部木造。竣工は2023年10月31日。設計監理・施工は清水建設。監修は野村不動産。
オフィス内
1階エントランス
外観
◇ ◆ ◇
エントランスに入った途端、合成の芳香剤が入り混じっていることは瞬時にかぎ分けられたが、得も言われぬ本物の木の香りが鼻腔を満たし、その香りは年は取っても衰えを知らないわが繊細な心をそっと撫で、あるいはぎゅっと鷲掴みし、そしてゆるゆると頭にのぼり、記憶としてとどまった。霧のように消えることはなかった。
壁といえば、隈研吾氏の〝十八番〟でもある、見る角度によって刻々と表情を変えるランダムな本物の木を用いた縦格子のデザインと、これまた本物の観葉植物が配されていた。前の取材が長引き、内覧会開始の時間には15分くらい遅れてはいたが、この時点で取材の目的の半分は達成されたと確信した。
案内されたのは2階だったか。これまでも木質空間はたくさん見ているが、壁と柱と天井は明らかに〝現し〟仕上げで、そのデザインの美しさに息を飲み、言葉を失った。伊勢神宮の施設は、全てが木曽から切り出したヒノキでできており節など一つもないが、ここもそうだった。(後で聞いたら長野県産材のスギノキだった)
施工したのは清水建設だった。清水施工の木造建築物といえば、2019年竣工のわが国初の〝見た目〟木造高層建築物「三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア」を思い出すのだが、同社木質建築推進部部長・水落秀木氏は「当時の課題をクリアするため相当の研究を重ねた。相当進化している」と語った。また、同社プロジェクト設計部2部設計長・大栁聡氏は、「担当して3年。苦労も大きかったが出来栄えに満足している」と話した。
素人の記者は難しい技術的なことは分からないし、これまで見てきた木造建築物と比較して〝最高〟かどうかは判別しかねるが、〝現し〟の美しさに舞い上がった。
いつもそうだが、メディア関係者は鉄やコンクリと比較してコストはどうだとか馬鹿馬鹿しい質問を相も変わらず繰り返したが、美しいものを見て、どうして美しいと言えないのか。木には木の、鉄には鉄の、コンクリにはコンクリのそれぞれ特徴を持つ。比較すること自体が間違っている(小生は木造ファンだか)。高いとか安いとかを考えるのは二の次だ。
「現しにしないといけないというのは木造コンプレックスの裏返し。木の性能、コストなど科学的・合理的なことのほうが大事」と昂然と言い放った三井ホームの小松弘昭氏にまた怒られるかもしれないが、やはり〝美は現しにあり〟といいたい。
ただ一つ、首をかしげざるを得なかったものがある。1階ラウンジのテーブルは、野村不動産の「プラウドギャラリー新宿」と同じ本物の観葉植物が配置されており、天井はスギの現しで素晴らしいのだが、写真のようにぶら下げられているのは明らかにフェイクグリーンだった。これを指摘したら、同業の記者の方は何の反応も示さず、水落氏は一言も発しなかった。野村不動産都市開発第一事業本部建築部長・齊藤康洋氏は微笑を浮かべながら「課題」と話した。
画竜点睛とまではいかないが、フェイクグリーンは価値を半減させると記者は思っている。この前、三菱地所はリニューアルした本社オフィスをメディアに公開したが、フェイクだらけだった6階はほとんど全てが過剰と思えるほどの本物の観葉植物で満たされていた。
ギョッとしたものもあった。取材の帰りだ。エントランスの目の前にプラタナスの街路樹が植わっていた。何と、根元近くの胴から枝葉が突き出ているではないか(胴吹きと呼べるのか)。ビッグモーターとは逆だ。肥しをどんどんやったわけでもないのだろうが、少なくとも1年以上は剪定していないはずだ。港区さん、これは何とかしたほうがいい。
左から齊藤氏、大栁氏、水落氏
天井部分(きれいに写っていないのはカメラのせい)
天井からぶら下がっているのはフェイクグリーン
エントランス前のプラタナスの街路樹
まるで植物園 五感で体験できる 野村不動産 マンション総合ギャラリー「新宿」(2023/2/21)
ショック! 木質空間なし 現し論議に決着RCと木造混構造の特養完成 三井ホーム(2022/8/31)
さすが三井不動産 わが国初の本物の木造〝杉乃木〟ホテル「神宮外苑」に誕生(2018/11/13)
子どもの芸術家(画家)の芽を摘まないで ポラス 第5回おえかきコンクール表彰式
(左上) 中内 晃次郎代表取締役、(左下) 若色 欣爾審査委員長、(右)受賞されたお子さん
ポラスグループのポラスは11月18日、「第5回ポラスグループおえかきコンクール」(後援:越谷市、さいたま市、草加市、松戸市、松戸市教育委員会、柏市、流山市、吉川市、審査員長:若色欣爾・越谷市住まい・まちづくり協議会会長)の表彰式を開催した。受賞した697作品は11月24日(金)から「ポラスグループおえかきコンクール」ホームページに公開するほか越谷市、松戸市、さいたま市、草加市、流山市の公共施設で展示される。
コンクールは、「住んでみたい夢の家・街」をテーマに2023年4月1日から9 月8日にかけて全国の未就学児を対象に作品募集を開始し、2,366作品(第4回は2,521作品)の応募があった。審査の結果、特別賞17作品、特別優良賞20作品、優良賞160作品、奨励賞500作品を選んだ。
ポラスクループ代表・中内晃次郎氏は表彰式で次のように挨拶した。
「今年もどのような作品が見られるかとても楽しみにしていたところ、全国各地から2,366点と、大変多くのご応募をいただきました。どれも描きたい気持ちが画用紙いっぱいにあふれ、子どもならではの自由な発想で、まさに『夢の家・街』が生き生きと表現されています。大人では考えつかないような作品ばかりで元気いっぱいに描いている様子が伝わり、微笑ましい気持ちになりました。
このコンクールを通して『おえかき』の楽しさを発見し、お子様達の創造力や表現力のさらなる成長に繋がればと願っております。そして、この体験を通して描くことに楽しさを見出し、ご家族一緒に心豊かなコミュニケーションを楽しんでいただけたのでしたら、尚、幸いです」
左から審査員⾧賞 花川咲杜ちゃん(5歳)、越谷市⾧賞齋藤りんちゃん(5歳)、さいたま市⾧賞武藤双葉ちゃん(6歳)
左から草加市⾧賞 関根大志ちゃん(5歳)、松戸市⾧賞 千葉理緒ちゃん(4歳)、松戸市教育⾧賞 佐久間和ちゃん(5歳)
左から柏市⾧賞 安田友葉ちゃん(6歳)、流山市⾧賞 稲垣衣音ちゃん(6歳)、吉川市⾧賞 藤波かん太ちゃん(5歳)
左から越谷市住まい・まちづくり協議会賞 堀元聡太ちゃん(6歳)、同 千葉誠也ちゃん(2歳)、越谷美術協会賞 塚田幸之真ちゃん(5歳)
左から越谷美術協会賞 下山乃愛ちゃん(3歳)、森と木の住まい賞 間下愛香莉ちゃん(5歳)、同 佐々木望吏ちゃん(4歳)
左からポラス審査員賞 中島櫂ちゃん(6歳)、同 福木智遥ちゃん(3歳)
【ポラス_リリース】「第5回ポラスグループおえかきコンクール」表彰式を開催しました
◇ ◆ ◇
同社の「おえかきコンクール」の表彰式を見学するのは3度目だ。この種のコンクールでは、毎年50万前後の作品が集まるものもあるが、数はもちろんのこと、入賞したとか入賞しなかったことなど問題ではない。みんな芸術家の素質を秘めている。
子育てに完全に失敗した小生に語る資格はないが、だからこそ世のお父さん、お母さん、保育園・幼稚園の先生方にお願いだ。豊かな子どもの感受性、想像力を摘み取らないで頂きたい。小生の下の息子が4歳のとき、水槽の金魚を「お父さん、金魚が口紅をつけているよ」と、雨が降って来たら「お父さん、お空が泣いているよ」と話したのを今でも忘れない。
何が大事かといえば、その能力を開花させる後押しだと思う。そのために必要なのは、身近なモノ(一番いいのは動植物ではないか)を顕微鏡のごとく観察し、触り、匂いを嗅ぎ、音を聞き、ときには齧らせ、自分で考える力を身に着けさせることだ。その際心がけたいことはとにかく褒めることだ。そして毎日365日、書く(描く)ことを習慣づけさせることだ(今年100歳になった義母は一日も欠かさず日記をつけている。昼は旧字「晝」を使っているのにびっくりした)
同社のプレス・リリースと特別賞17作品を添付した。作品はみんな素晴らしい。素晴らしいが、会場に展示されていた160の優良賞の中にもこれらに匹敵する作品がたくさんあった。小生の目が届いた範囲でその5点を紹介する。17作品と見比べていただきたい。(みんなごめんね。きれいに写っていないのは、おじさんの腕と安物のカメラのせいで、じつぷっはとても素晴らしい)小生も50歳くらいまで絵を描いてきた。多少の審美眼を持ち合わせている。大人になるとよく見せようとテクニックに走りがちになる好例(悪例)を示すために小生の作品も添付する。
左から優良賞 竹中葵ちゃん(5歳)、池内智史ちゃん(6歳)、谷藤諒太朗ちゃん(6歳)
左から関口侑奈ちゃん(4歳)、清川湊崎ちゃん(5歳)
会場に展示された優良賞
小生の作品(6号 油絵)
未就学児対象「第4回ポラスグループおえかきコンクール」表彰式 応募は約2,500作(2022/10/17)
ポラスグループ 第2回おえかきコンクール 昨年の2.5倍の808点の応募 全作品を公開(2020/10/27)
「先端」と「文化」の境界を越えた交流を誘発 「HANEDA INOVATION CITY」開業
「HANEDA INOVATION CITY」
羽田みらい開発(鹿島建設、大和ハウス工業、京浜急行電鉄、日本空港ビルディング、空港施設、東日本旅客鉄道、東京モノレール、野村不動産パートナーズ、富士フィルムの9社で構成)は11月16日(木)、羽田空港跡地第1ゾーン整備事業「HANEDA INOVATION CITY」(略称:HICity「エイチ・アイ・シティ」)をオープンした。同日、主要施設をメディアに公開した。
「HICity」は、京浜急行・東京モノレール天空橋駅直結の敷地面積約5.9ha、11階建て延床面積約131,000㎡の規模。従前は「旧羽田空港」。「先端」と「文化」の境界を越えた交流を誘発し、新たな価値創造を実現するわが国初のスマートエアポートシティ。研究開発施設・オフィス、先端医療センター、イベントホール、宿泊施設、日本文化施設などを整備している。
見学会は12:45~15:20まで約2時間30分。①メトロポリタンホテル羽田②藤田医科大学東京 先端医療研究センター③termimal.0 HANEDA④表現する素材展 More than Materials(we+)⑤LIFE Scene HANEDA(保井崇志)⑥Lifestyle Marche ⑦SKY MAPPING by Sony Design Consulting Air Lines(尾角典子)⑧&SPACE PROJECT・3D フードプリンター展示⑨AI_SCAPE(デモンストレーション)⑩自動運転バス-の順で3組(1組20人くらいか)に分かれて回った。移動に要した時間を除くと、1施設当たり約12分。質問も可能だったが、時間が限られており記者は完全に消化不良。(この後、フリー取材が17:00まであったが…)しかし、書かないのは主催者に失礼なので、①~⑩まで順番に記者が感じたことなどを紹介する。
①「池袋」のメトロポリタンは好きなホテルの一つだが、ここの宿泊費は40㎡で10万円とか。1㎡当たり2,500円だ。マンション同様、ホテルの値段も暴騰している。イタリアンレストラン「il CIELO」(空という意味)に巨大な馬の張りぼて(ポコンと音がした)が置かれていたので聞いたら、ここは地方競馬発祥の地とか。
ジュニアスイート(左)ルーフトップ
②名古屋市に隣接する豊明市に本部があり、Wikipediaによれば2018年度の「THE世界大学ランキング」で日本11位、私立としては1位にランクされた。1~4階からなる施設は次世代医療の拠点に位置付けている。1階床は突板仕上げ。このほか、世界で3台(うち2台が同大学、あとの1台は慶大附属病院)しかないという立ったままでCTスキャン検査ができる装置、ロート製薬と連携した再生医療研究のためのコワーキングスペースも紹介された。
②藤田医科大学東京 先端医療研究センター
③日本空港ビルからオープンイノベーション研究開発拠点の説明があったが、医療施設見学のあとだったので「termimal.0」にはついていけなかった。
④このイベント・展示が一番面白かった。大田区内の9か所の工場などから収集した廃材などをデザイナーの視点から芸術作品に仕上げている。作品に番号を付け、説明文にひも付けしているのもいい。作品に触るのは不可ということだったが、いくつか触らせてもらった。作品にもよるが、鑑賞するだけでなく触れるというのも魅力の一つだと思う。
取材現場(撮影:仙田 祐一郎氏)
④表現する素材展 More than Materials(we+)
「超絶試作」「ウォーターベールの試作機 厚さ約1mmの超薄膜のウォーターベールで密閉空間をつり出す小型噴水…」とある
石ころ
⑤人気フォトグラファー保井崇志氏が切り取った大田区の様々なシーンの写真展を実施。演出は、空間表装を手掛ける京都の職人・井上光雅堂氏。
⑥何だったのか思い出せない。
InnovationCorridor
⑦風と飛行機の音をアニメ、プロジェクトマッピングで表現しているのがとても面白い。世界200か所の空港の音と画像をリアルタイムで紹介するイベントを行うという。
⑥Lifestyle Marche ⑦SKY MAPPING by Sony Design Consulting Air Lines(尾角典子)
⑧&SPACE PROJECTは、宇宙ロケットの開発廃材を活用し、新しいプロダクトを生み出すプロジェクト。これは面白い。3D フードプリンター展示では、3Dプリンターで作られたウニの部分を少し触らせてもらった。米粒もない微量のウニが指に付いたので舐めてみた。ウニ以上のウニの味が口腔内に広がった。値段を聞いたら、現段階では1万円でも難しいということだった。(世界の金持ちは安いと考えるのではないか)
⑧&SPACE PROJECT
⑧&SPACE PROJECT
⑨川崎重工が産業用に研究しているものだが、飲食店などにも応用できるという。24時間、文句など言わずに働き続けるのだろうから、労働争議も起こらないし、過労死もない。
⑨AI_SCAPE(デモンストレーション)
⑩この前、日本初のレベル4の福井県永平寺町の自動運転移動サービスが事故を起こしたので聞いたら、「大丈夫」とのことだった。
⑩自動運転バス
内覧会の前には、斉藤鉄夫・国土交通大臣、小池百合子・東京都知事、鈴木晶雅・大田区長らも参加して施設のオープンセレモニーが行われた。
オープニングセレモニー 左から羽田地区町会連合会会長・神山忠行氏、大田区議会議長・押見隆太氏、国土交通大臣・斉藤鉄夫氏、東京都知事・小池百合子氏、大田区長・鈴木晶雅氏、鹿島建設代表取締役社長・天野裕正氏
◇ ◆ ◇
気になったこともある。平日だったこともあるのだろうが、施設の全面開業という記念日にしては人手が少なかったことだ。なぜか。
大田区の区域面積は61.86平方キロメートル。23区でもっとも広い。しかし、海老取川の右岸に位置する昭和島、京浜島、羽田空港、令和島、城南島、東海など面積比にして34.6%、約21.42平方キロメートル(千代田区のほほ2倍)の地域には289人しか住んでいない。地区計画により住宅建設が不可の新木場エリアの1.52平方キロメートルとはケタ違いだ。
人が住まない理由を大田区に聞いた。羽田空港周辺は航空法による規制はあるが、その他のエリアはほとんど準工業地域で、地区計画などによる用途規制はなく、民間が所有する土地は少ないという説明だった。住民不在の街の賑わいをどのように創出するかが課題だと感じた。
HICitySquare
◇ ◆ ◇
取材を終え、セレモニーイベントの出店の山形県のブースで「月山ビール」と芋煮を注文した。ブース内を眺めていたら、「大吟醸500円」の張り紙が目に留まった。山形の日本酒は甘いというイメージしかないが、「楯野川 清流 純米大吟醸」(3,520円=税込み)を飲んでみた。お猪口1杯くらいしかなく、値段の高さ(1合で3,000円)に驚いたが、とても美味しかった。アルコール度数と日本酒独特の絡みつくような甘さを抑えている。洋食にもあう。
山形県のブース