省エネ基準、長期優良、太陽光、ZEH伸びる 木住協 令和4年度自主統計
日本木造住宅産業協会(木住協)は8月30日、「令和4年度 木住協 自主統計および着工統計の分析」結果を報告書(A4版54ページ)にまとめ発表した。会員469社を対象にしたもので、回収は406社(回収率86.6%)。
報告書によると、令和4年度の木住協会員の新設住宅着工戸数は89,880戸(前年度比3.5%減)、このうち戸建て住宅は85.647戸、共同住宅は4,233戸(同27.9%減)。住宅着工の木造戸建て住宅に占める木住協シェアは20.5%で、前年度より1.0ポイント増加した。
戸建て住宅の質については、「平成28年省エネルギー基準適合住宅(平成25年度適合住宅含む)」は66,848戸(前年度65,819戸)となり、戸建て全体の78.1%を占め、前年度より2.3ポイント増となった。
「設計評価住宅」は26,030戸で全体の30.4%(前年度は26,267戸、30.1%)、「建設評価住宅」は16,814戸で、全体の19.6%(前年度は17,643戸、20.2%)だった。全国統計の「設計」30.0%、「建設」21.0%と比較すると、「設計」はプラス0.3ポイント、「建設」はマイナス1.4ポイント。
「長期優良住宅」は33,080戸で、全国統計115,509戸に占める木住協割合は28.6%となり、木住協戸建て住宅に占める割合は38.6を占め、前年度の38.7%から0.1ポイント減となった。
「太陽光発電搭載住宅」は26,920戸で、新設戸建て住宅の31.4%を占め、前年度の23,272戸、26.7%と比較すると、戸数、シェアとも増加した。
「ZEH適合住宅」(ニアリーZEH含む)は前年度の15,883戸から増加し20,854戸となり、木住協戸建て住宅に占める割合は24.3%(前年度18.2%)となり、6.1ポイント増加した。
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記者はこれまで、全国住宅着工戸数に占める木住協会員シェアは低すぎると思っていたが、考えを改めた。どこかの玉石混交の団体とは一線を画し、会員増・シェアアップを図るより、「良質住宅」の建設・供給に比重を置いたほうがいいと。
報告書からは、その傾向が読み取れる。住宅着工の木造戸建てに占める木住協のシェアは20.5%なのに対し、全国着工に占める木住協会員シェアは、長期優良住宅が28.6%、太陽光搭載住宅が31.4%だ。省エネ適合住宅とZEH適合住宅は公表されていないが、ともに上回っている可能性が高い。
住宅性能評価の「設計」「建設」とも全国統計より低いのはなぜなのかよく分からない。個人的には、それより長期優良住宅やCASBEEのほうを重視すべきだと思っている。
住宅性能評価の分譲戸建てシェア74% 飯田GHは「ZEH化50%」に舵切りを(2023/8/28)
木造戸建て住宅に占める木住協会員シェア20% 飯田グループの加入はないのか(2021/8/28)
ケイアイスター不 生成AI活用に向けた実証実験開始 リリースもAIが作成
ケイアイスター不動産は8月29日、社員を対象とした生成AIの利用実態調査を踏まえ、生成AI活用に向けた実証実験を10月に開始すると発表した。
実証実験を開始することについて同社は、「生成AIの認知は約84%と高く、認知はあるが業務に活かす具体的な方法が見つからずにいるという現状が見受けられた」としながら、「回答者の99%が生成AIの活用により業務改善や新たな価値創出に期待していることから、こうした技術の活用が組織全体の効率化や新たなビジネスモデルの創出につながる可能性を秘めている」と判断し、生成AIを安全かつ社内で活用しやすくするために独自システムを構築し、実証実験を10月に開始するとしている。
具体的には、まずは社員200人程度を対象とし、対象部署へのヒアリングを行い、どの業務において効率的に利用できるのか、またはどのような問題を解決するのに適しているのかを明らかにすることで、活用方法を洗い出し、文章の要約や調査作業、校正などの業務の簡素化、同社のマインドセットを踏まえた人材育成により、社員一人ひとりの働きやすさと業績向上を図る。
利用実態調査は、6月30日から7月8日まで、Google フォームにより同社社員を対象に行ったもので、有効回答は710件。
調査の結果、生成AIの業務利用時に対する懸念点を回答した人は約60%にのぼり、情報漏洩を懸念事項とした回答者は約26%、生成AIからの間違った情報をそのまま使ってしまうといった回答が約16%、個人のスキルが衰えるといった回答が約14%あったとしている。
同社は、首都圏を中心に全国各地で戸建分譲事業を展開。年間7,176 棟(土地含む)を販売しており、2023年3月期の売上高は2,418億円。一般社団法人日本木造分譲住宅協会の立上げに参加し、国産木材の利用を促進するなどESGにも力を入れている。
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同社のプレス・リリースは、A4版で5ページにわたるもので、冒頭には「本記事は生成AI(GPT-4API版)を活用して執筆を行い、デジタル化推進部の担当者にて校正をしました」とあるので、上段の記事は、入れ替えは行ってはいるが、極力そのままの文書を要約した。
リリースを読んだ感想は、文章は非の打ちどころがない。完璧だと思う。誤字・脱字もないはずだ。難点を指摘すれば、やや饒舌、文書が長すぎることだ。「実証実験の内容」は、画面イメージ図を除いても1,000字を超える。半分以下にすべきだ。同業他社のプレス・リリースにも言えることだが、文章全体ではA4版3ページくらいにまとめられるはずだ。
もう一つ言わせてもらえば、「日本木造分譲住宅協会の立上げに参加し、国産木材の利用を促進する…」は字余り。触れないほうかよかった。
この点に関して書き出せば止まらないのでくどくどと書かないが、協会理事はオープンハウスに吸収されることがほぼ確定した三栄建築設計を含めて3者(社)しかない。一般社団の設立要件に問題はないが、実効あるものにするには多くの同業が参加する組織にすべきだ。業界トップの飯田グループをはじめ、4位のポラス、ハウスメーカートップの積水ハウス、さらにはデベロッパー1位の三井不動産レジデンシャル、2位の野村不動産も参加するような組織にして、分譲住宅の質を高めてほしい。
このことを生成AIに聞いたらどのような回答が得られるか。多分、〝情報を持ち合わせていない〟とでも返ってくるか。
「しわぶき」を「しわ(wrinkle)」と誤訳 高度な言語表現に適応できないChatGPT(2023/7/25)
「ChatGPT」を初体験「感情や主観的な意見を持たない」鵺(ヌエ)が支配する時代へ(2023/7/23)
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「第17回キッズデザイン賞」258作品のうちポラス26作品、積水ハウス9作品受賞
キッズデザイン協議会は8月23日、子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つ優れた製品・サービス・空間・活動・研究などを顕彰する「第17回キッズデザイン賞」受賞作品258点を発表した。
今回は、今年4月に発足したこども家庭庁の後援により新たに「こども政策担当大臣賞」を新設。各大臣賞などの優秀作品は9月20日(水)発表する予定。
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ポラスグループは同日、グループ各社の26作品が第17回キッズデザイン賞を受賞したと発表した。受賞は5年連続で、昨年度は13点だった。
また、積水ハウスは同日、第17回キッズデザイン賞で9作品が受賞したと発表した。
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住宅・不動産業の住宅はファミリー向けが中心なので、受賞作品が多いのは理解できるが、それにしてもポラスグループの26作品、積水ハウスの9作品受賞はすごい。双方で受賞作品の約14%だ。
全て流通材、組子格子耐力壁を現しで表現 AQ Group「8階建て純木造ビル」見学会
建築中の「8階建て純木造ビル」
AQ Groupは8月25日(金)、さいたま市で建築中の新社屋「8階建て純木造ビル」の構造現場見学会を開催した。今年9月10日予定されている上棟式を前に、純木造のよさを理解してもらうのが目的で、1階と6階部分がメディアに公開された。また、建築中のビルをメイン会場にした総勢15,000人の「夏休みの木育課外授業 つくろう!木育フェス」も同日実施した。
「8階建て純木造ビル」は 市場に流通している住宅用のプレカット材を採用し、特殊金物を用いないで地場の工務店が在来工法で建築するわが国初の試み。木材使用量は約3,655㎥(木造住宅300~400棟相当分)、国産材はヒノキ、カラマツなど全体延床面積の7.7%、CO2排出量は非木造の2分の1以下、炭素貯蔵量は約2,578t-co2(スギ約5,104本相当)、11mスパン、階高3800ミリ、天井高3000ミリなどが特徴。耐用年数はRC造と同様の47年の評価を取得する予定。
見学会で宮沢俊哉社長は、「今から100年前に関東大地震が起こり、わたしが生まれた1949年には伊勢湾台風に見舞われ、以来、木造禁止令のごとく、わが国の建築物は鉄やコンクリが中心になった。現在は、木造は世界的に注目を浴びている。大工の一人として、わが国の伝統的な在来工法を広めるのが天職・使命として新社屋の建設を決意した。経営者としては不安だらけ、大きな挑戦だが、トライ&エラーを繰り返しながら、コストの壁、工法の壁、偏見の壁を乗り越え、木造建築物を普及させていく。コストは一般的な鉄骨造と比較すると同じか、やや高くなる程度」と語った。
わが国の木造建築研究の第一人者で、同社の木造建築技術向上に大きな役割を果たしてきた東京大学大学院教授・稲山正弘氏は、「大規模木造ビルとしては昨年4月に完成した免震工法の大林組のビル(11階建て延床面積約3,502㎡の「Port Plus大林組横浜研修所」)があるが、木造軸組工法による耐震構造のビルとしては今回が日本初。阪神・淡路大震災クラスの震度7を想定した5階建て実大実験でも完全性が確認できた。特殊金物を使わず、在来技術と流通材を使用した8階建て6,000㎡超のビルというのが最大のポイント。4階までは2時間耐火、4階以上は1時間耐火で、組子格子耐力壁を室内現しデザインとして採用している。耐力壁は一見してきゃしゃで細いものに映るが、20トンの重量に耐えられる」と話した。
ビルの基本設計・実施設計を担当している野沢建築工房担当者は建築概要を説明し、コストのかかる特殊金物を用いず、大臣認定が少ないサッシ・外壁・区画貫通部材の少なさ、スプリンクラーを設置せず法令の範囲内で現わしを実現した苦労などを紹介した。
施設は、JR大宮駅からバス約15分、さいたま市西区三橋5丁目に位置する敷地面積約9,000㎡(約2,700坪)。本社ビルは敷地面積約5,424.46㎡、木造軸組工法による耐震構造の延床面積約6,076㎡。基本・実施設計は野沢正光建築工房。構造設計はホルツストラ。施工は田中工務店、伊佐建設。このほかショールーム、実験棟、宿泊体験棟6棟合計の総延床面積は約11,200㎡。着工は昨年9月。完成予定は2024年春。
左から宮沢氏、稲山氏、野沢建築工房担当者
見学会会場となった1階部分
完成予想図
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いま、木造による集合住宅、ビル建築が脚光を浴びており、大手ゼネコンやデベロッパーが〝覇権〟を争っている。一方で、AQ Groupは非上場、施工の田中工務店は埼玉を本拠とする地場建設業者だ。耐力壁に使用している木は埼玉県産材や国産材だ。これが嬉しいではないか。
宮沢氏は、今回のビルには「耐力壁ジャパンカップ」「カベワンGP」などで培った技術の一部を注ぎ込んだと語ったが、それは「組子格子耐力壁」に表れていた。稲山氏は「きゃしゃで細い」とも話したが、どうしてどうして、これが強い。特殊金物をたくさん用いた耐力壁と互角の争いをしたのを記者は何度も見ている。写真を見ていただきたい。何かに似ていないか。六角形、ハチの巣、ハニカム構造だ。(坂茂氏が設計した芝浦工大のレストランにもこのハニカム構造が採用されていた)
コストについて。この種の見学会では、必ず鉄やコンクリとの価格が話題に上る。誰もが知りたいことではあるが、記者はもうそんな論議はなしにしたほうがいいと思う。
木造メーカーは鉄やコンクリと比べて安いことを全面に掲げてきた。しかし、考えてみれば、あらゆる商品は価格が安ければいいかということではない。価格に見合う価値があるかどうかで判断するのが普通だし、そもそも木造と鉄、コンクリはそれぞれ特徴があり、単純比較などできないはずだ。例えていえば、ペットは犬か猫か、ナイフとフォークを使って食べる肉と手づかみで食べるウルメイワシのどっちが美味いか、ワインか日本酒かを論じるようなものだ。文化と趣向の違いだ。
もうそんな不毛な論議はやめて、木造であれば、燃やしてもCO2を空気中に増やすことにならず、炭素を固定する脱炭素社会・カーボンニュートラル社会の実現に欠かせない資源であり、国産材の利用はわが国の森林・林業の再生・活性化に貢献しており、さらにまた外観・内観が人にもたらす心理的効果などを定性的かつ定量的にきちんと図るモノサシを確立すべきだと思う。
国産材を採用したハニカム構造の「組子格子耐力壁」
工事中の6階部分
6階部分の天井
接合部分
わが国初の「5階建て純木造ビル」/「カベワンGP」7度目V アキュラホーム(2022/11/15)
木造の英知結集 日本初 現し8階建て 特殊金物用いず低コストで建設 アキュラ本社ビル(2021/10/28)
ミサワホーム 「いつも」「もしも」ZEH対応 トレーラーハウス「MOVE CORE」発売
トレーラーハウス「MISAWA UNIT MOBILITY『MOVE CORE』」
ミサワホームは8月24日、工業化技術を生かした「いつも」「もしも」の両面で社会課題解決に貢献するフェーズフリーのトレーラーハウス「MISAWA UNIT MOBILITY『MOVE CORE』」(以下、「ムーブコア」)を9月1日から全国販売を開始すると発表。発売を前にした8月23日、同社高井戸本館に設けた実売モデル2台をメディアに公開した。
「ムーブコア」は、半世紀以上も南極昭和基地の建設実績や、「南極移動基地ユニット」を開発し、JAXAなどとの共同研究成果をもとに商品化したもの。
仕様は、同社の工業化住宅とほぼ同じで、車検対応のトレーラーシャーシを利用するため自由に移動が可能。車検、道交法の適用は受けるが、建築基準法による建築物でないため、容積率、建ぺい率など様々な規制の適用を受けず、固定資産税、都市計画税などの課税も課せられないのが特徴。
設備は、可変性を可能にするため糊や釘を使わず容易に施工できる乾式内装とし、重量規制に適合させるため、天井は700g/㎡の超軽量のボード(通常は6.6㎏/㎡)にしたり、着脱可能な設備にしたりしている。
エクステリアは、設置・取り外しを容易にするため乾式外構を提案しており、蛇篭、100%リサイクル素材「M-WOOD2」のウッドデッキを採用。また、災害時の停電や断水に対応することを想定し、太陽光発電システム、蓄電池、電気自動車から電気の供給を受ける「クルマde給電」、雨水・海水などを生活用水として利用できる水循環利用システム、災害時でも通信可能な衛星通信の設置も可能。
用途は、宿泊施設、オープンカフェ、リゾートオフィス、応急仮設住宅、医療施設、個人住宅の離れなどを想定している。
発表会に臨んだ同社執行役員 商品・技術開発本部長 桜沢雅樹氏は「防災の日でもあり関東大震災から100年目の節目である9月1日に販売開始する。当社のこれまでの工業化技術をそのまま利用したもので、住宅と同様、ZEHレベルを満たしている。多様な用途に対応が可能なので、無限の可能性を秘める商品。BtoB、BtoCを中心に事業化を図っていく」と語った。
構造は「耐震等級3相当」(建築物と想定した場合)、防火は「不燃」、断熱性能は「Ua値0.59W/㎡・K」、遮音等級「Dr-35」など。寸法は全長約6,140ミリ×全幅約2,490ミリ×全高約3,780ミリ。重量は約3.5トン。価格は800~1,000万円。
宿泊施設内観
応急仮設内観
モジュールファニチャー
宿泊施設のシャワーブース(左)とトイレ
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この種の取材・見学は3度目だ。最初は、三菱地所が2020年にオープンした新宿三丁目の「バスあいのり3丁目テラス」で、2度目は一昨年の三井不動産「HUBHUB(ハブハブ)プロジェクト」だ。
建築物ではないから、建築基準法の規制を受けず、固定資産税などの課税も受けないのが味噌だ。桜沢氏は「無限の可能性を秘める」と語ったが、記者もそう思う。外周から計算するとトレーラーの広さは15.3㎡(4.6坪)。サッシは樹脂サッシで、天井高は2500ミリ、トイレはパナソニック「アラウーノ」。用途によってリビングベンチ下収納、スライドベッド、「蔵」収納などを設けることができるようにしている提案もいい。
水循環利用システム
エクステリア
蛇篭
「柳屋」に勝てるか 旅館業&トレーラーがミソ 三井不「HUBHUB 日本橋人形町」(2021/11/18)
三菱地所 生産者-産地-消費者つなげる屋外空間「バスあいのり3丁目テラス」開業(2020/9/5)
三菱地所 インドに初進出 350億円(同社持分50%)のビル事業に参画
アトリウム
三菱地所は8月22日、同社グループとして初のインド投資事業となる、チェンナイでのビジネスパーク開発「International Tech Park Chennai, Radial Road」に事業参画したと発表した。
事業は、シンガポールの大手デベロッパーCapitaLandグループの投資運用会社CapitaLand Investment Limitedが推進するプロジェクトに参画するもの。チェンナイは、ベンガル湾を望む南インドの玄関口に位置するインド第4の都市で、今後10年超にわたってアジア全域でも有数の成長が見込まれるという。事業地は「New IT Corridor」と呼ばれるIT企業等が集積するRadial Road沿いに立地。敷地面積約5.25ha、11階建て2棟、延床面積約240,000㎡。総事業費は約200億インドルピー(約350億円)、同社事業持ち分は50%。既に着工済みで、竣工予定は2024年末~2025年初。インドのビジネスパーク開発としては、初のネット・ゼロビル認証を取得する予定。
同社は、引き続きマーケットの特性を総合的に勘案しながら、チェンナイに限らず、インドでの事業機会を模索していくとしている。
外観
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わが国の不動産投資事業のことすら分からないので、海外事業のことなどさっぱりわからないのだが、国連人口基金(UNFPA)の「世界人口白書2023」によると、これまで人口が世界最多とされてきた中国は14億2,570万人なのに対し、インドは14億2,860万人だ。いつの間にか抜き去った。出生率からしてこの差は拡大するのは間違いない。
カントリー・リスクが高い中国を始め東南アジアにどんどん進出しながら、どうして有望市場であるはずのインドにデベロッパーは進出しないのか、記者はずっと不思議に思っていた。
現状はどうか。在インド日本大使館がジェトロと共同で作成した2021年10月時点での「インド進出日系企業リスト」によると、進出日系企業は1,439社で、拠点数は4,790か所(2020年4,948か所)。業種別では「製造業」が全体の48.7%を占めており、不動産業は大和ハウス工業のほか10社くらいしかない。
三菱地所の進出で後続するデベロッパーが続出することになるのか。
旭化成ホームズ・松本吉彦氏「一緒に登山…」 故・小林秀樹千葉大名誉教授を語る
松本氏
既報の通り、千葉大学名誉教授・小林秀樹氏(享年68歳)が昨年(令和4年)10月11日、癌のため亡くなったが、小林氏の後輩で旭化成ホームズくらしノベーション研究所・二世帯住宅研究所所長・松本吉彦氏(64)に小林氏のエピソードをお願いし、快諾していただいた。以下に全文を紹介します。
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小林先生とは私が卒論を書いている際に東京大学工学部建築学科の建築計画研究室(鈴木成文・高橋鷹志研)博士課程でご一緒したのが出会いとなります。当時は集合住宅の住まい方調査を基にした居住者の行動や心理の考察など、建築学に心理学や社会学、動物の生態学などの本を参照しながら研究室内では研究を進めていたと思います。今回の追悼する会のコメントで小林先生の研究の特徴としてこうした分野を導入した研究が高く評価されていたのですが、これは当時の研究室内全体のトレンドでした。私が未だに仕事で居住者調査を基に研究しているのはこの時の原体験が効いていると思います。
その頃の小林先生の研究の多くは1992年刊行の名著「集住のなわばり学」に記されています。集合住宅の共有領域に住人の「日常的支配」が及び、それが防犯の観点からオスカー・ニューマンの「まもりやすい住空間」などで指摘された「自然監視性」を生んでいること(P81-83)、LDKの窓は共有領域に面しているほうが日常的な関わりを生じやすいこと(P82)、コミュニティ形成には10戸前後のクラスターに分割することが有効であること(P153)など、実際の設計に役立つノウハウにまとめられています。
「集住のなわばり学」は、中古価格が1万円前後の高値となっていることについて、生前小林先生ご本人が、もっとたくさん持っておけばもうかったのに、みたいなことをおっしゃっていました。
ナワバリ学を家族関係に発展させたものが2013年刊行の「居場所としての住まい」です。住戸内の室配置の構成原理を家族関係から読み解き、二世帯住宅のような親子同居、シェアハウスのような他人同士の集住にも応用した点がユニークで、nLDK型など実際の間取りと家族関係を対照しながら考察しています。この著作を題材として、2014/1/21に第12回のくらしノベーションフォーラム「ナワバリ学で家族と住まいを読み解く」を開催し講演していただきました。
小林先生の業績では、資産や投資としての建築、といった経済的、実務的な取り組みを扱うことに特徴があるかと思います。学術研究に留まらず、実際に社会で使われるノウハウの開発では、共同研究で大変お世話になりました。二世帯住宅の居住者インタビューや空き世帯の活用を模索した二世帯住宅シェアハウスプロジェクトhttps://www.kobayashi-lab.net/project/2010/nisetai.pdf (最終講義記念冊子プロジェクトNo17)や子育て共感賃貸住宅「BORIKI」の居住者調査(同No19)など、いくつかの共同研究をさせていただきました。
学生時代より長きにわたってお世話になってきた先輩を失うことが残念でならないのと、近年登山にご夫婦ではまっておられたので百名山全山登頂達成者である私としては、一緒に登山する機会がなかったことが悔やまれるところです。
千葉大学名誉教授「小林秀樹先生を追悼する会」に約210名(2023/8/5)
秩父宮ラグビー場が「未供用」の謎 「広場」は都市公園ではない 神宮外苑再開発
神宮外苑イチョウ並木(左がロイヤルガーデンカフェ青山)
「神宮外苑地区まちづくり」の事業者・三井不動産ら4者は8月7日、プロジェクトサイトに設けた質問受付ページに寄せられた質問に対する回答を掲載したと発表した。
質問は7月17日から7月26日までに受け付けた174件で、質問部分を抜粋し、質問ごとにまとめ全て回答したという。多かった質問は「スポーツ施設における建替えの必然性」「風・日照・騒音など周辺環境への影響」「各施設の施設計画」「高層ビルを建てる目的」「樹木本数やみどりの割合の算定方法」など。
今後も、「質問受付ページや住民説明会で頂いた意見をしっかりと受け止め、より良い計画となるよう検討を進めていく」としている。
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全てではないが、主だった質問と回答を読んだ。再開発は都の公園街づくり制度を適用して行うものだが、適用要件である「未供用区域面積が2.0ha以上」にどうして秩父宮ラグビー場が該当するのか、その理由が分かった。この点について、日本イコモスは疑義を呈しているが、制度の手続き上の瑕疵はないのではないか。その根拠は以下の通り。
東京都は令和3年7月、公園街づくり制度を適用する旨を事業者に通知した。平成25年12月に東京都が創設した同制度は、センター・コア・エリア(首都高速道路中央環状線内側の地域)内にある長期未供用区域を含む都市計画公園・緑地エリアを対象に、民間の力により街づくりと公園緑地の整備を両立させるのが狙いだ。
適用要件としては、都市計画決定からおおむね50年以上経過し、未供用区域面積が2.0ha以上ある区域で、「再開発等促進区を定める地区計画」を定め、都市計画公園を削除する面積の60%以上、かつ1.0ha以上を緑地として確保することを求めている。
どうして現在も様々な大会が行われている、ラグビーの聖地と言われる秩父宮ラグビー場が「未供用」なのか不思議だが、都によると、明治神宮外苑が完成した大正15年10月当時ラグビー場はなく(完成は昭和22年)、昭和32年に都市計画明治公園として指定されたときの記録は辿れないが、記録が残っている昭和50年当時は「未供用」扱いにされており、昨年4月に削除されるまで「未供用」のままだったという。再開発計画を同制度に適合させるために「未供用」としたものではないと話した。
つまり、実態として広く一般に開放されていても「開園の告示」がされなかった秩父宮ラグビー場が再開発を可能にした施設であるともいえる。この点について、ラグビー場の所有者で事業者でもある日本スポーツ振興センターに問い合わせたら、「『未供用』の告示を行ったのは東京都だから、この問題については答えられない。『広く一般に開放していた』かという点については、敷地内は公開空地ではない。管理上、日常的に不特定多数の方に開放しているわけではない。開催日に敷地内の立ち入りを可能にしている」(広報)との回答があった。
都市計画公園とは都市計画決定された都市施設である公園・緑地のことで、「供用」とは、都市公園の開園が都市公園法に基づいて告示され、広く一般に開放されていることをいい、「未供用」は供用以外の状態をいう。
以下、軟式野球場(5月撮影)
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今回のQ&Aには本質的な問題に触れる応答がある。
質問には、「絵画館前の軟式野球場、バッティングセンター、フットサルコートがなくなりますが、何か代替策はお考えでしょうか」「秩父宮ラグビー場脇のテニスコート、軟式野球場、第2野球場などリーズナブルに都民が利用できる施設が減る設計ですが、その代替施設はあるのですか。公園は多くの人が利用できるようにするのが本来の目的だと思います」「建設予定の芝生地域で野球をしたり、テニスをしたりゴルフをしたりできるのですか」などがある。
これに対して、事業者は「軟式野球場のある絵画館前エリアは、現状、野球をする人しか利用できない施設ですが、創建時の『開かれた外苑』という考え方を継承していくため、誰でも入ることができる広場の整備を計画しております。ゴルフ練習場、軟式球場、打撃練習場の3施設は事業を終了いたしますが、新ラグビー場、絵画館前の広場、中央広場、複合棟Bの低層部に計画している室内球技場を合わせた四つの新たな空間では、スポーツの種類を限定することなく、その時々に応じ、一般の方々の様々なご利用が可能になる計画です。…なお、神宮外苑の街づくりは、民間事業者が所有する土地において、多くの方が利用できる広場などを整備するものであり、国や自治体等が管理する公園を整備するものではありません」と答えている。
回答は、「広場」「オープンスペース」などは事業者が所有・管理するものであることをはっきり示している。プロジェクトのホームページには、整備する区域内に「公園」設けるとは一言も触れていない。「絵画館前広場」「オープンスペース」「中央広場」などは「都市公園」ではないということだ。
樹木を避けて整備 都の日比谷公園整備PJ/「生き物を殺していいの」 二の句継げず(2023/8/7)
歴史・文化の破壊に疑義を唱える声に耳を傾けるべき 神宮外苑再開発 地元説明会(2023/7/21)
威風堂々〝聖地〟神宮外苑野球場の巨木 事業者VS.イコモス 鳥や虫の視点で考えて(2023/5/23)
樹木を避けて整備 都の日比谷公園整備PJ/「生き物を殺していいの」 二の句継げず
第二花壇
東京都が8月4日(金)~6日(日)開催した「バリアフリー日比谷公園プロジェクト」に関するオープンハウス会場を見学した。目的は、同プロジェクトで謳っている「整備工事は樹木を避けて実施する」ことが事実かどうかを確認するためだった。都の建設局公園緑地部職員は「このような文言を盛り込んだのは今回が初めて。緑に関する関心が高まっていることを考慮した」と話した。
同プロジェクトは、令和3年(2021年)7月に策定した「都立日比谷公園再生整備計画」に基づく実施計画としてまとめたもので、「日比谷公園を年齢、性別、国籍、障害の有無などに関わらず、誰もが利用しやすく、楽しめる公園に進化させ、将来の都民へ引き継いでいく必要がある」とし、基本的な考えとして①歴史的文化的な価値を継承しつつ、誰もがより楽しめるWell-beingとなる公園に進化させる②公園の緑を守っていく③アクセシビリティを向上させ、より多くの方が公園を訪れることを目指す-としている。
樹木の取り扱いについては、①樹木を避けて整備を実施する②移植が必要となる場合には樹木診断を行い、公園内で移植する-としている。
オープンハウスは、同プロジェクトを都民に告知するとともに、アンケートなどで意見を聞くために実施したもの。3日間で約120名が訪れた模様。
整備工事は、令和5年9月の「第二花壇周辺」を皮切りに、開園130周年を迎える令和15年(2033年)までに公園を9つのエリアにわけ段階的に行われる。
オープンハウス会場
第二花壇周辺で行われていたイベント
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以下は、添付した記事とあわせて読んでいただきたい。都が「樹木を避けて整備を実施する」と謳っているのに満足したのだが、会場の近くで整備計画に反対する人たちに話を聞いて、頭をどやされたような気がした。
神宮外苑の再開発に反対するビラ配りの活動をしているという「ただひとりの母親としてこの国が心配」の女性に「神宮外苑の四列イチョウ並木を残す? これは本質から目をそらす罠。地下40mまで杭を打つんですよ。イチョウの根が傷つけられないわけがない。伊藤忠のビルは190mですよ。その隣は180m。日陰になっちゃう。神宮球場は古い? 同じくらい古い甲子園球場は改修工事でリニューアルに成功しました。ビル風の影響も受けます。軟式野球聖地もなくなっちゃう。日比谷公園の樹木の移植? 移植すれば樹木に負担がかかるんです。土中にはセミが生息しているんです。ミミズもいる。ものとしか見ていないからそんなことができるのです。生きものを殺していいんですか。そもそも移植にどれだけの費用がかかるか。知らないでしょ。樹種にもよるでしょうが、巨木となると1本1億円もすると専門家から聞きました。都民の税金で賄うんですよ」とやり込められた。
この言葉に記者は二の句が継げなかった。仰る通りだ。自分で「鳥や虫の視点で考えて」と記事にしたばかりだ。数年から10年、土中にひっそりと暮らすセミを殺してもいいとは思わない。イチョウは劣悪な環境でも育つと思うが…。神宮球場はZOZOマリンの比でない風の影響を受けるかもしれない。
さらに、別の方から追い打ちをかけられた。「神宮外苑も日比谷公園も主導しているのは三井不動産。あなた、魂まで売っていいんですか」と。
記者は、基本的には是々非々で取材しているつもりだが、立場・見解が異なるとそのような見方もできるかもしれない。なさけない爺と映るのだろう。「樹木を伐採せず、避けて整備する」に膨らんだ胸は〝ハチの一刺し、二刺し〟でいっぺんに萎んだ。
すごすごとその場を離れ、目的の一つだった松本楼でクラフトビールを飲み、ビーフカレーを食べ、第二花壇周辺を観察して歩いた。花壇周辺では屋台のイベントも行われており、また一杯。それにしてもキッチンカーのビールは高い。1杯700円とは。多摩センターは500円くらいだ。
松本楼
心字池
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千葉大学名誉教授「小林秀樹先生を追悼する会」に約210名
「小林秀樹先生を追悼する会」(建築会館ホールで)
昨年(令和4年)10月11日、癌のため亡くなった千葉大学名誉教授・小林秀樹氏(享年68歳)の「小林秀樹先生を追悼する会」が8月5日、港区芝の建築会館ホールで行われた。会場に用意された約210席は満席となり、関係者らが最後のお別れを行った。
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記者は小林先生が亡くなったのを昨日(8月4日)知った。千葉大学のある先生を検索しようとしたとき、小林先生のことが頭によぎり、「小林秀樹」で検索したら、千葉大学工学部小林秀樹研究室のホームページトップに「小林秀樹先生を追悼する会」が表示された。
〝万に一つ〟の奇跡が起きることを望んでいたが、そうはならなかった。神も仏もない。
早速、実行委員会に連絡を取り、追悼の会への出席は許可されたが、遺族の方や関係者への取材は「不可」だった。やむを得ない。
先生、わたしは、先生の若々しくて格好のよさに、先生とほぼ同学年の西城秀樹さんとダブらせ嫉妬しながらファンになり、陰ながら応援し、これから本領を発揮するのではないかと期待もしておりました。
それがかなわなくなった。残念至極。さようなら、先生。先生の後継者が現れることに期待しようじゃありませんか。
献杯!
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