日経平均株価 34年2か月ぶりに過去最高値更新へ 住宅・不動産株の過去と今
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2月13日の東京株式市場の日経平均は終値37,963円をつけ、1989年12月29日の大納会に記録した過去最高値38,915円にあと952円まで迫った。34年2か月ぶりに記録を更新する可能性が高まった。当時と現在の主な住宅・不動産会社の株価を比較してみた。
当時と現在の社会経済状況は、よく似ているところもある。1989年といえば、世の中はリクルート問題が沸騰しており90人以上の政治家などがリクルートコスモスの未公開株を譲り受けたことから、収賄罪、政治資金規正法に抵触する罪で起訴・逮捕された関係者も出た。天安門事件もこの年だった。
為替は、円は1ドル120~150円台で推移し、公定歩合は3度引き上げられ、年初は4.5%だったのが年末は7%に乗った。長短期金利の逆転現象が起きた。
別表を見ていただきたい。1989年12月29日の時点で東証に上場していた不動産会社は一部、二部、店頭を含めて26社。株価は、飛ぶ鳥を落とす勢いにあったマンションデベロッパーの大京が5,800円をつけ、同社に次ぐ供給量を誇っていたダイア建設が8,140円、リクルートコスモスが6,000円をつけている。〝マンション転がし〟が流行語になったように、マンションや株式が投機マネーを呼び込んでいた世相を反映している。その他のデベロッパーやハウスメーカーも概ね2,000円を突破していた。
ところがその翌年の1990年3月、いわゆる銀行の土地融資を抑制する総量規制が実行され、8月にはイラクがクウェートに侵攻した湾岸戦争が勃発。原油高も重なり、9月には株価が付かないストップ安が続き、マンションの契約率も50~60%台に急落。バブルは完全に崩壊した。
別表の上場企業も、親会社に吸収合併された企業を除きエルカクエイ、ニチモ、ダイア建設、マルコー、第一コーポレーション、セザール、箕輪不動産、殖産住宅、ニッセキハウスの9社が破綻、市場から消えた。さらに2008年のリーマン・ショックにより多くのデベロッパーが市場から退場を余儀なくされた。
さて、現在の株価はどうか。1989年12月29日の株価を上回っている当時の住宅・不動産上場企業は三井不動産、東京建物、住友不動産、スターツ、大和ハウス工業、積水ハウスと関連の長谷工コーポレーションの7社のみだ。このうち上場来の高値圏にあるのは三井不動産、大和ハウス、積水ハウス(スターツも株式分割を行っているので理論値では過去最高値圏にある)。現在も東証に上場している当時の不動産銘柄は9社しかない。消長の激しさを物語っている。全ての企業が高値更新を射程圏に入れているわけでもない。
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1989年のマンション市場について。記者は当時、前職で毎月マンションと分譲戸建ての販売状況を調べていた。少し紹介すると同年11~12月のマンション坪単価は茗荷谷が890万円、代々木が1,694万円、高輪が1,082万円、平塚が426万円、相模原が445万円、溝の口が415万円、松戸が370万円、船橋が352万円、西川口が510万円、軽井沢が492万円…などとある。 その一方で、郊外部では坪200万円を割る物件も結構供給されており、郊外部でも軒並み坪200万円を超えてきている現在とはやや異なる市場を形成していた。
戸建ても同様で、都内物件は軒並み1億円以上で、藤が丘が1億9,000万円台、柏逆井が8,000万円台、高坂が6,300万円台、佐倉が8,000万円台、成田が4,600万円台…それでも売れていた。
二地域居住促進へ 改正法律案を閣議決定/参考になるFRKの基礎調査報告書
国土交通省は2月9日、二地域居住の促進を通じて、地方への人の流れを創出・拡大するための「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されたと発表した。コロナ禍を経て、UIJターンを含めた若者・子育て世帯を中心とする二地域居住へのニーズが高まっている一方で、「住まい」「なりわい(仕事)」「コミュニティ」に関するハードルが存在することから、都道府県、市町村、支援法人、地域住民、不動産会社などが連携して二地域居住を促進する基盤を整備する。
法律案では、①都道府県が二地域居住に係る事項を含む広域的地域活性化基盤整備計画を作成したとき、市町村は二地域居住の促進に関する「特定居住促進計画」を作成可能②二地域居住者に「住まい」・「なりわい」・「コミュニティ」を提供する活動に取り組む法人の指定制度を創設。市町村長は、二地域居住促進に関する活動を行うNPO法人、民間企業などを「特定居住支援法人」として指定可能とし、空き家などの情報、仕事情報、イベント情報などの関連情報を提供する③市町村は、特定居住促進計画の作成などに関し協議を行うため、当該市町村、都道府県、特定居住支援法人、不動産会社、交通事業者、商工会議所、農協などを構成員とする二地域居住等促進協議会を組織可能とする。
KPIとして、①特定居住促進計画の作成数:施行後5年間で累計600件②二地域居住等支援法人の指定数:施行後5年間で累計600法人を目指す。
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不動産流通経営協会(FRK)が2020年7月、この二地域居住に関して極めて興味深い「複数拠点生活に関する基礎調査」を公表している。最後の「まとめ」の「(二地域居住)実現に向けた住居取得とそのハードル」をそのまま以下に紹介する。
①積極的目的での複数拠点生活を増やすために有効と思われる施策
全体では、新たな滞在先の維持費・確保費用が最も実施のハードルとなっており、地域社会との交流・貢献などを目的とする人や20・30代ほど、この傾向は強い。また、20・30代の若い人たちは、住宅ローンが組めないことでも苦労しているようである。現在、検討している人も新たな滞在先を取得する上で税制優遇措置が受けられたり、住宅ローンを組めれば実現可能性が高まるとしたりしており、ローン要件の緩和、優遇措置を行うことで、こうした若者、または地域交流などを目的とする複数拠点生活実施者を増やすことができるのではないだろうか。
②消極的での複数拠点生活を支えるために有効と思われる施策
介護など消極的な理由で複数拠点生活を実施する場合、移動時間や交通費が負担となっているようである。また、現在検討している人は、新たな滞在先を持つための初期コストや維持費を抑えられることが後押しになるとみている。介護問題など家族の絆を活かした安心社会を構築するという観点で、こうした目的による複数拠点生活を支えるためには、住宅に対する初期投資やその後の維持費・交通費等の負担を軽減するような政策支援が求められると言える。
――これらのニーズを救い上げ、課題を解決する官民連携に期待したい。船頭多くして…にならないことを祈りたい。
東急不など5社「白金一丁目西部中地区」再開発認可 1.6haにマンションは980戸
東急不動産、大成建設、三井不動産レジデンシャル、大成有楽不動産、日本郵政不動産の5社は2月9日、参加組合員として参画している「白金一丁目西部中地区第一種市街地再開発事業」の権利変換計画の認可を受けたと発表した。
同事業は、東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅から徒歩3分の先行再開発が進む白金高輪エリアの中心地に位置する施行面積約1.6ha。地上39階建てには約980戸の共同住宅、商業施設や子育て支援施設を整備するほか、約3,300 ㎡の広場や地域住民の交流・活動の拠点として広場横に「地域交流スペース」を整備する。2025年6月に着工し、2028年度に竣工予定。
野村不動産 地域密着型商業施設「SOCOLA」7棟目の「所沢」開業
「SOCOLA所沢」
野村不動産と野村不動産コマースは2月7日、埼玉県所沢市にて、地域密着型商業施設シリーズ「SOCOLA(ソコラ)」の7棟目で、埼玉県初進出となる「SOCOLA所沢」を2024年4月25日(木)に開業すると発表した。
施設には、所沢市初進出の食品スーパーマーケット「ライフ」、「キッズランド(おもちゃ売り場)」を併設した家電量販店「ジョーシン」をはじめ、日用必需品をワンストップで買い物ができる店舗が複数出店。太陽光パネルやEV充電器、シェアサイクルの設置による省エネ、創エネの取り組みを行っている。
施設は、西武新宿線・西武池袋線所沢駅東口から徒歩約11分、所沢市北秋津に位置する敷地面積約17,997㎡、2階建て延床面積約9,799㎡。店舗数は12店舗。
ワンダフル! パニック犬は皆無 住友不 愛犬と泊まれるホテル「芝公園」防災訓練
宿泊者を避難誘導するスタッフ(避難訓練)
住友不動産ヴィラフォンテーヌは2月6日、同社が運営する愛犬と泊まれるホテル「inumo芝公園by Villa Fontaine」で首都直下地震を想定した防災訓練を実施、模様をメディアに公開した。お客さん20人(愛犬13匹)など関係者42人が参加した。愛犬を連れたホテル会員をはじめ芝消防署や港区防災危機管理室も参加するなど、万が一の発災を想定したリアルの訓練だったが、約2時間、パニックを起こす犬はほとんどいなかった。飼い主の皆さんのしつけがしっかりしているからだろう。一番落ち着きがなかったのは記者だったかもしれない。
訓練後の総評で芝消防署予防課防火管理係自衛消防担当係長・染谷氏は、「この種のワンちゃんと一緒の実践的な訓練は初めて。皆さんの防災に対する意識が非常に高いのを感じました。能登地震の例が示すように、首都直下型地震はいつ起きても不思議ではありません。日ごろからこのような訓練をしていただきたい。今回の試みはいい経験になったはずです」と総括した。
同社事業企画部兼店舗運営第一部兼レベニューマネジメント部部長・内橋渉氏は、「ホテル開業から約2年間、万が一に備えるため月に1回の割合で合計25回の訓練を実施してきました。スタッフの9割以上が都の消防署の上級救命技能認定証を取得している。安心・安全の取り組みをしっかり行っていきます」と挨拶。「inumo芝公園」支配人・田中美佐緒氏は、災害時に飼い主が注意すべき6項目について説明し、「ワンちゃんがパニックになるのも想定していましたが、みなさんいかがでしたか(「ワン」と答えた犬は一匹もなかった)」と話した。
港区防災危機管理室防災課長・鳥居氏は、「国が示している災害時に備える備蓄品ガイドラインでは、人間は最低3日分と言われていますが、犬は5日分。港区は人にもワンちゃんにも優しい街づくりを進めていきます」と語った。
「inumo芝公園」は、都営三田線御成門駅から徒歩3分・都営大江戸線大門駅から徒歩4分・JR浜松町駅から徒歩8分、港区芝公園1丁目に位置する9階建て全70室。室内ドッグラン、トリミングサロン、愛犬の調理ができるキッチン、愛犬と入れるイタリアンレストランを備える。
「inumo芝公園by Villa Fontaine」
染谷氏(左)と鳥居氏
内橋氏(左)と田中氏
客室 ツイン
客室 inumoルーム
食事イメージ 犬用
レストラン
ドッグラン
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訓練は午後3時スタート。「こちらフロントです。ただいま強い地震が発生しました。お客さまは身の安全を確保してください。非常階段を確認してください…火事です、火事です。3階が火事です。すぐ逃げてください。エレベータは使わないでください。ワンちゃんはリードを短くするか、抱きかかえてください。煙を吸い込まないようタオル、ハンカチで鼻を覆ってください。逃げた後は部屋には戻らないでください。119番に連絡は済んでいます」などのアナウンスがあり、ピーポー、ピーポーのけたたましい消防の音が耳を聾した。
記者の班は、地下1階のロッグラン内での発災を想定した場面からスタートしたのだが、驚いたことに、飼い主に抱きかかえられた犬はとても静かで、数分間一声も発しなかった。その後の非常階段を下りる場面、避難場の駐車場に集まったとき、訓練後の総括のときも、吠えた犬はほとんどいなかった。
駐車場に避難して点呼を受けるお客さん
3歳の♂のチョップ君(独身とか)
8歳の♀のシラスちゃん
立派な靴を履いた8歳の♀のフクミちゃん(肉球を保護するためとか)
10歳の♀のミーちゃん
1歳10か月の♂のペポくん
100年後も住み続けられるコミュニティを育もう ネオポリスサミット宣言 大和ハウス
ネオポリスサミット会場(コトクリエで)
ネオポリスサミット実行委員会(代表:大和ハウス工業)は2月5日、奈良県奈良市の大和ハウスグループみらい価値共創センター「コトクリエ」で1月27日に開催した「ネオポリスサミット2024~ネオポリスの再耕に向けて~」の概要を発表した。サミットには、ネオポリス居住者240人(うち半数はオンライン参加)のほか、大和ハウス工業代表取締役社長・芳井敬一氏や学識経験者らが参加した。
開催の背景・目的は、大和ハウス工業が1962年から全国61か所で開発している大規模戸建住宅団地「ネオポリス」のうち、再耕(再生)事業「リブネスタウンプロジェクト」を推進している団地の住民が取り組むコミュニティ再生に向けた活動に着目し、住まい手、有識者、企業人による対話を通じて持続可能な住宅団地の課題解決の糸口を探るため。240人が参加した。
パネルディスカッションでは、8か所の団地居住者が「高齢化が進むとさらに多くの課題が出てくると思うので、自分たちの活動に対する大和ハウス工業や行政の支援も期待している」「次世代へのバトンタッチができると、取り組みの幅も広がるのではないか」「子どもが素晴らしい発想の提案をしてくれることもある。多世代が時代を共有していることを実感している」などの声が上がった。
コメンテーターからは、どこの団地もその地域にあったユニークな取り組みであることや、開発から50年前後の団地の歴史があり、その期間に培った知恵・資源・ネットワークなどを活用している現在の活動が、今後のまちづくりを再耕(再生)する上で重要であるとコメントがありました。また、各団地に共通する課題と地域ごとに特徴のある課題を改めて認識し、団地再生には住まい手が主体となり、産官学民の連携が不可欠であることなどが述べられた。
芳井氏は「住まい手の皆さまがまちを再び耕そうとしていただき、また当社スタッフとも協力していただいていることに大変感謝いたします。子どもたちや若い世代が団地に帰ってこられるよう、また、廃校となった幼稚園や学校が復活できるような魅力づくりなどに、これからもしっかりと取り組んでいく」と述べた。
サミット最後に「私たちのまちづくりは●すべての住まい手が主役になる●企業や行政、大学などの多様な主体と共に進める●地域の個性を活かす100年後も住み続けられるコミュニティを育もう!!」の「ネオポリスサミット2024」が宣言され、採択された。
住宅団地再生 産・官・学・民連携を 大和ハウス 講演会に630人参加(2024/1/28)
戸数、面積減を工事予定額が補う 前年比6.8%増加 公共は38%増 令和5年の住宅着工
国土交通省がまとめた令和5年の住宅着工戸数の総数は819,623戸(前年比4.6%減となり、3年ぶりの減少となった。利用関係別では持家224,352戸(同11.4%減、2年連続の減少)、貸家343,894戸(同0.3%減、3年ぶりの減少)、分譲住宅246,299戸(同3.6%減、3年ぶりの減少)。分譲住宅の内訳はマンション107,879戸(同0.3%減、昨年の増加から再びの減少)、一戸建て137,286戸(同6.0%減、3年ぶりの減少)。
床面積は64,178千㎡(同7.0%減)となり、利用関係別では貸家を除く持家、分譲住宅が減少。構造別では鉄筋コンクリート造が増加したが、その他の木造、非木造とも減少した。分譲マンションの床面積は7,675千㎡で、前年比0.7減となった。
一方で、工事予定額は285,652億円(前年比6.8%増)となり、公共が前年比38.2%増となったほか、居住用は160,842億円(同4.9%増)、構造別では木造が93,142億円(同6.7%増)、非木造が192,510億円(同 6.8%増)。鉄筋コンクリート造は7,411億円(同21.3%減)となった。
分譲マンションが増加 戸建ては14か月減 持家は25か月減 12月の住宅着工
国土交通省は1月31日、令和5年12月の住宅着工統計をまとめ発表。総戸数は64,586戸(前年同月比4.0%減、7か月連続の減少)。利用関係別では持家は17,031戸(同13.8%減,25か月連続の減少)、貸家は25,869戸(同3.6%減、5か月連続の減少)、分譲住宅は21,320戸(同5.5%増、7か月ぶりの増加)。分譲住宅の内訳はマンションが9,722戸(同19.8%増、先月の減少から再びの増加)、一戸建てが11,470戸(同4.2%減、14か月連続の減少)。
首都圏マンションは5,681戸(同18.4%増。都県別は東京都1,986戸(同22.1%減)、神奈川県1,907戸(同218.4増)、埼玉県572戸(同105.8%増、千葉県1,216戸(同11.5%減)。
1~12月の首都圏マンションは52,746戸(同0.7%増)。都県別は東京都25,840戸(同12.6%減、神奈川県15,339戸(同40.2%増)、埼玉県5,822戸(同4.9%増)、千葉県5,745(同9.0%減)。
野村不&丸紅都市開発 赤羽駅東口の再開発事業認可 マンションは約270戸
野村不動産と丸紅都市開発は2月1日、「赤羽一丁目第一地区市街地再開発準備組合」と推進している「赤羽一丁目第一地区第一種市街地再開発事業」が1月31日付で事業認可を受けたと発表した。
事業は2016年6月に市街地再開発準備組合が設立され、2020年6月に丸紅都市開発、2022年11月に野村不動産事業協力者に加わり、再開発計画を進めてきた。赤羽駅東口の一等地。
施行区域面積は約0.5ha、敷地面積は約2,890㎡、地上26階建て延床面積約約33,340㎡。主要用途は住宅・店舗・駐車場・駐輪場など。住宅は約270戸。参加組合員は野村不動産、丸紅都市開発。事業協力者は熊谷組。事業コンサルタントはシティコンサルタンツ。
〝めっちゃ〟10連発 井上咲楽さん LIFULL HOME'S「住みたい街ランキング」発表
中山氏(左)と井上さん(同社本社で)
不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULL(ライフル)は1月31日、恒例の「2024年LIFULL HOME'S みんなが探した!住みたい街ランキング(首都圏版)」を発表した。ベスト3は、「買って住みたい街」が「勝どき」「平塚」「大宮」、「借りて住みたい街」が「本厚木」「葛西」「八王子」となった。当日は、タレントの井上咲楽さんが出演し、LIFULL HOME'S総研副所長・チーフアナリストの中山登志朗氏や人気上昇している「浦安」「橋本」エリアの地域不動産会社社長らとトークセッションを行った。発表会のメディア参加者は約40人。
冒頭、LIFULL 代表取締役社長・伊東祐司氏は「当社はサービスの拡充と情報の発信に力を入れており、サービスの拡充では住宅弱者など社会課題にも取り組んでいる。情報の発信では今回の『住みたい街ランキングが最大』。ユーザーの年間を通じての生の声を反映したもの」と挨拶。
続いて中山氏は、今回の結果について「『買って住みたい街』」で5年連続トップとなった『勝どき』は圧倒的な規模と価格の安さなどが評価された。このほか準都心部も上位に進出するエリアが多い一方、子育て世代を中心に利便性が高い割に価格がそれほど上昇していない郊外・準郊外も安定して上位を維持しているように、二極化がみられる。『借りて住みたい街』も同様に、都心回帰がみられるものの、生活や交通利便性などのバランスが良好な郊外部も評価されている」と分析した。
このあと、井上咲楽さんと中山氏、橋本エリア代表の落合不動産代表取締役・落合健氏、浦安エリア代表の明和地所代表取締役・今泉向爾氏とのトークセッションが行われた。
18歳で上京し、池上、西小山、荻窪など7~8回引っ越ししたという井上さんは「めっちゃ楽しい」「めっちゃ面白い」「めっちゃいい」「めっちゃめっちゃ大事」「めっちゃめっちゃ便利」など〝めっちゃ〟を10連発。「部屋で大事なのはテレビ用コンセント」と話した。
落合氏は、橋本はリニア新幹線停車駅であることが人気急上昇の要因だが、海や山、豊かな自然も近くにあることから〝オンとオフ〟の切り替えができる街だと強調し、今泉氏は、「『浦安』は千葉県でもっとも面積が小さい市だか2キロ四方に約2,000戸のマンションが建っており、しかも100㎡超も多く、みんな広い」と〝狭くて広い〟浦安(新浦安)をアピールした。
伊東氏
井上さん
井上さん
左から今泉氏、落合氏、井上さん、中山氏
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この種の街や住宅地を対象とした「○○ランキング」は5つも6つもある。その一つ、過去7年にわたり住宅評論家やタレントなど起用して年末に賑々しく発表されてきたSBIアルヒ「本当に住みやすい街大賞2025年版」は年を越してもまだ発表されていない。理由も公表されていない。〝街や住宅を笑いものにし、自社の広告宣伝に利用するのはいかがなものか〟といささか腹を立てている。LIFULLの今回のイベントに取材申し込みしたのは、消費者をミスリードする内容であれば、一言苦言を呈しようと考えたからだ。
結果はそうではなかった。元データは、消費者のアンケートでも投票でもなく、同社の独自判断でもなく、あくまでもこの1年間の不動産物件サイトに寄せられた問い合わせ、反響などの件数を駅圏ごとに落とし込んだものであることの説明があった。その件数は非公表だったが、「買って住みたい街ランキング」トップの「勝どき」が100%であるのに対し、その比率は2位の「平塚」が44.1%、3位の「大宮」が42.2%、10位の「五反田」が32.3%と公表されていた。
「借りて住みたい街ランキング」も同様に、近くに大規模マンションの分譲があったり、都心へのアクセスの割には賃料が低いままであったりすることが消費者に評価されているのだろう。
「LIFULL HOME'S 注目の街」では、「北綾瀬」「橋本」「浦安」「八街」「大宮」「蕨」がリストされているが、これは選ぶのは同社の勝手だ。「橋本」を取り上げるのは当然だろう。それは分かるのだが、ならばわが多摩センターについても触れてほしかった。恵泉女学園が廃校となり、京王プラザホテルも閉店となり地盤沈下は甚だしいが、緑環境、歩車分離の街づくりは首都圏のどこの街にも負けない。このほか、京王線は「住みたい街」も「借りたい街」も「調布」「千歳烏山」「笹塚」くらいしかなく、割り負け感がぬぐえない。
まあ、愚痴はこれくらいにしておく。今回の発表会で嬉しかったのは、最後の中山氏の締めだ。中山氏は今年4月から省エネ住宅性能表示制度が変更になり、住宅の質を重視して選択して欲しいと呼びかけたことだ(発表会はメディア向けだから、メディアがきちんと消費者に伝えるかどうかは別問題)。
取材して得た結論は、同社だけでなくどこのランキングもデベロッパーの大規模開発が行われているところが上位に進出し、つられてその駅周辺の割安感がある住宅地などか浮上するということだ。ランク下位、または圏外に住む人は悲観などする必要はさらさらなく、上位との差は僅差で、つまり五十歩百歩、住めば都ということだ。記者がイベント担当なら向こうを張って「住みたい街 圏外ベスト100」を企画し、大真面目に論議する。
越年しても発表されないSBIアルヒ「本当に住みやすい街大賞」なぜか(2024/1/13)