時代の要請の変化にスピード感を持って対応 プレ協・堀内容介会長 新年賀詞交歓会
堀内氏(アルカディア市ヶ谷で)
プレハブ建築協会は1月12日、新年賀詞交換会を行い、冒頭、参加者全員が先の能登半島地震で亡くなられた方々にご冥福を祈る黙とうをささげたのち、同協会会長・堀内容介氏(積水ハウス副会長)が次のように挨拶した。賀詞交歓会には400人超が参加した。
初めに、元日の能登半島地震でお亡くなりになられました皆様、並びに翌2日航空機事故で亡くなられた海上保安庁職員の皆様へ心よりご冥福をお祈り申し上げます。そして、被災されました全ての皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。
当協会は1月2日、応急仮設住宅建設本部を設置して、被災県担当者とコンタクトをとり、甚大な被害を受けられた石川県には4 日より担当者を派遣しました。
そして、自治体からの応急仮設住宅への要望に対して、速やかに対応できるように、災害対策本部並びに現地建設本部を立ち上げました。
本日12日に輪島市と珠洲市において計55戸分の建設工事を開始し、今後、建設箇所を拡げ、1 日でも早く多くの被災者の方々に入居していただき、安心・安全な生活ができますように迅速に進めてまいります。
さて、皆様、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。日頃よりお世話になっています行政・友好団体・研究機関、及び会員会社の皆様に多数ご出席をいただき、誠に有難うございます。厚く御礼を申し上げます。
昨年11月には「デフレ完全脱却のための総合経済対策」が打ち出され、その裏付けとなる補正予算には、①「こどもエコすまい支援事業」の後継事業として、「子育てエコホーム支援事業」の創設と大幅な予算額増の計上、(令和6年度当初予算と併せて2,500億円)②断熱窓への改修促進、高効率給湯器導入促進のための「住宅の省エネリフォームへの支援」の強化などが盛り込まれました。
また、昨年末の税制改正大綱では、住宅ローン減税制度において、子育て・若年夫婦世帯が、高い環境性能を有する住宅を購入する場合には、借入限度額の上限が1 年間延長して、維持されることとなりました。
これらの施策の実現にご尽力と、切れ目が実質的に生じないよう特段のご配慮を賜りました関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。
コロナ禍の3年間を乗り越え、わが国の経済は改善しつつありますが、住宅市場の足元の環境は、資材の高騰や地価の上昇に伴い、新設住宅着工動向を始め、大変厳しい状況が続いております。
また、住宅ストックにおきましては、十分な耐震性能や省エネ性能を満たさない住宅が数多くあり、課題は山積しております。
本協会といたしましては、関係の皆様との連携を強化しつつ、新たに措置された施策を有効に活用し、将来世代に継承できる、良質な住宅ストックの形成と円滑な流通に全力で取り組んで、市場の回復に繋げていきたいと考えております。
特に、今回の国の施策におきまして、一層鮮明化されましたZEH等の低炭素住宅や、長期優良住宅の普及の加速化、既存住宅の省エネリフォーム促進等の政策テーマについて、当協会としては、積極的に先導役を担ってきたところであり、辰年の今年は、戸建住宅はもちろんのこと、低層集合住宅においても目標値を掲げて、弾みをつけて大きく発展させていきたいと考えております。
近年、豪雨・台風災害は激甚化、頻発化しており、石川県能登地方で大きな地震が昨年に続き発生する中で、首都直下地震や南海トラフ地震も想定されています。
本協会の大きな使命として、自然災害発生時における、応急仮設住宅の供給や災害公営住宅の建設で役割を果たしていかなければなりません。
引き続き、平常時からの地方公共団体との連携の一層の強化、デジタル・トランスフォーメーションなど新たな技術の導入を図りながら、災害発生時に迅速に対応できるよう体制を充実してまいります。
本協会は、昨年1月に創立60周年の節目を迎え、これから先、カーボンニュートラルの実現や豊かで暮らしやすい持続可能な社会を創っていくためにも、住宅業界が果たすべき役割は、以前にも増して大きくなっていると考えております。
今年も時代の要請の変化に、スピード感をもって対応し、活発な協会活動を展開していく所存です。
引き続きご支援・ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
結びになりますが、被災地の復旧・復興、そして本日ご参加の皆様のご健勝を心より祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせて頂きます。ありがとうございました。
環境・都市・住宅政策の取り組み強化 不動産協会・吉田理事長 新年賀詞交歓会
吉田氏(オークラ東京で)
不動産協会と不動産流通経営協会は1月10日、新年合同賀詞交歓会を都内のホテルで開催した。会の冒頭、参加者全員が能登半島地震で亡くなられた方々のご冥福を祈る黙とうをささげたのち、不動産協会理事長・吉田淳一氏が以下の通り挨拶した。参加者は1,050人。
皆様、それぞれお健やかに新しい年をお迎えのことと存じます。不動産協会理事長の吉田でございます。
本日は不動産協会、不動産流通経営協会合同の新年賀詞交換会に、堂故(どうこ)国土交通副大臣をはじめ、日頃よりご指導いただいております国会議員の先生方、関係諸官庁・友好団体や報道関係の皆様など、多数ご出席いただき、まことにありがとうございます。主催者を代表いたしまして、ひとこと年頭のご挨拶を申し上げます。
まずは、今般の能登半島地震で亡くなられた方へご冥福をお祈りするとともに、被災された方々へ心よりお見舞いを申し上げます。被災地の一刻も早い復旧・復興を心から願っております。
さて、今年の新年賀詞交換会は人数制限なく通常にお食事を提供して開催しております。活気ある会にしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
昨年を振り返ってみますと、コロナの5類移行により完全にコロナ禍からの脱却が図られ、社会経済活動の正常化が進められてきました。インバウンド観光客もコロナ前を上回る勢いで増加しており、経済の活性化に貢献しています。
スポーツにおける明るい話題もありました。WBCでの侍ジャパンの優勝をはじめ、バスケットボールやラグビーのワールドカップでの日本チームの健闘には、大きな感動を覚えました。スポーツの力の大きさを改めて実感した次第です。スポーツやエンターテイメントへの取り組みを魅力的なまちづくりにも活かしていきたいと考えています。
一方、ロシアによるウクライナ侵攻は、いまだ終結の兆しがなく長期化しており、さらにはパレスチナでの紛争が勃発し、こちらも停戦の兆しが見えません。国際秩序の維持に向けて、各国が連携を深めていくことが期待されます。
そうした中で、我が国の経済は緩やかな回復基調にありますが、物価上昇や世界経済の下振れリスク等の不透明な状況により、先行きについては予断を許しません。また、少子化・人口減少をはじめとした構造的な課題にも直面しています。
こうした中、GXやDXを加速させ、経済社会の変革を進め、持続的な成長を実現するためには、様々な社会課題の解決を経済成長のエンジンに変え、民間投資を拡大、我が国の競争力を一層強化するとともに、分厚い中間層を形成していくことが不可欠です。
当協会では、そうした観点から、税制について、要望活動を積極的に進めてきました。先日決定された令和6年度与党税制改正大綱では、最重点要望であった住宅ローン減税の借入限度額の維持について、1年間、子育て世代に対して認められたのをはじめ、土地固定資産税の負担調整措置や国家戦略特区の特例の延長など、当協会の主要な要望は概ね認めていただいています。経済の力強い成長に寄与する措置として大いに歓迎したいと思います。ご尽力いただいた先生方、関係の皆様方に、厚く御礼申し上げます。
さて、今後の協会の活動について簡潔にお話しいたします。
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、官民連携してGXを促進する取り組みが進んでおります。環境政策につきましては、持続的成長と経済合理性、社会課題解決、顧客共感という三要素の共通理解・同時実現が不可欠です。当協会としても不動産業界におけるGXを加速させるための環境整備に引き続き取り組んでいきます。
そうした中で、普及促進の途上にあるZEH、ZEB水準への取り組み加速や、中高層建築物の木造化促進、SCOPE(スコープ)3への取り組みについてもしっかりと行っていくことが重要です。
都市政策につきましては、都市の国際競争力の強化が引き続き重要です。世界中から多様な人を呼び込むビジネス・生活環境の整備として、都市の魅力を高める機能集積を図り、質の高い賑わい空間を創出すべく、まちづくりGXの推進、ウォーカブルな空間形成、エリアマネジメントの着実な進展に取り組みます。
住宅政策につきましては、豊かな住生活の基盤となる安心・安全で良質な住宅ストックの形成・循環に向け、質の高い住宅の供給、こども・子育て世代等、多様なニーズへの対応を進めてまいります。
とりわけ、マンションにおいては建物と居住者の両方における高齢化の「2つの老い」が進行し、課題となっています。今後、高経年マンションストックの急増が見込まれる中、区分所有法の改正が議論されており、マンション建替え決議の多数決要件引下げなど合意形成の円滑化、適正な管理の推進に向けて取り組んでいきます。また、子育て世帯等を支える住まいと環境づくりについては、今般、政策支援をいただいておりますが、継続・充実化に努めてまいります。
その他、国際化への対応を進めるほか、事業環境の整備について、2024年問題への対応も踏まえ ますます重要性を増す物流不動産、インバウンドの回復により事業機会が拡がるリゾートの開発なども対象として、幅広く取り組んでまいります。
当協会としては、国民の暮らしを豊かにするまちづくりや住環境の整備を通じ、我が国の経済・社会の発展に向けて、貢献していきたいと考えておりますので、引き続きご理解、ご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
結びにあたりまして、皆様の一層のご活躍とご健勝をお祈りし、また今年一年が皆様や国民にとって明るく良い年となることを祈念申し上げて、私の挨拶とさせていただきます。
ありがとうございました。
左から三菱地所元社長・杉山博孝氏、三井不動産会長・菰田正信氏、吉田氏
吉田氏(左)と鹿島建設・押味会長
最多はカイヅカイブキ 外来種のヒマラヤシダー、フウなど目立つ 神宮外苑の既存樹木
神宮外苑イチョウ並木(青山通りから写す)
全樹木の樹種分布
年末年始は神宮外苑再開発の既存樹調査に没頭した。昨年末に行われた千葉商大主催のシンポジウム「神宮外苑の歴史的文化的資産の価値を守る-イチョウ並木と100年の森-」で、基調講演を行った中央大学研究開発機構教授・石川幹子氏(イコモス日本国内委員会理事/東京大学名誉教授)が「なぜマスコミは事実を報道しないのか」の一語に触発されたからだ。
小生もメディアの端くれだ。「事実」とは何かという問題はあるが、どのような樹木がどこにどれだけ植えられているかを伝えるべきと判断して調べることにした。誤解を招かないように改めて旗幟を鮮明にする。記者は再開発に反対ではない。秩父宮ラグビー場には一度も行ったことがないが、神宮球場は老朽化か進んでいる。西武球場や東京ドームもいいが、エスコンフィールドのようないい環境でヤクルト(対戦相手も同様)、六大学、東都大学の野球選手が活躍できるようにしてほしい。
問題なのは、再開発の根拠になっている東京都の公園街づくり制度であり、神宮外苑を都市公園と考えている人たちへの説明が不足しており、歴史的、文化的に貴重な巨木を大量に伐採する計画であることだ。これらについては何回も記事にしてきた。再開発を主導している三井不動産は「parkシティ浜田山」や「HARUMI FLAG」などで素晴らしい街づくりを行っている。どうして今回は分かりやすい説明をしないのか、不思議でならない。
まあ、こんな繰り言はともかく、既存樹木のデータは揃っている。事業者は2022年8月、ホームページに85ページにわたる膨大な「既存樹木調査データ」(PDF)を公表した。3m以上の樹木が対象で、本数は2,470本。秩父宮ラグビー場、イチヨウ並木、野球場、建国記念文庫、軟式野球場などエリア別に樹種名、樹高、幹周りなどの規格、活力度評価、保存の必要性、移植の難易度、現況などの関連事項、保存・移植・伐採などについて1樹木につき43列の詳細な調査結果がまとめられている。
しかし、データはPDFであるため1本1本の樹木の現況は把握できるが、全体として神宮外苑の森がどうなっているのかを把握するのは難しい。
そこで、弊社のスタッフに全データをエクセルに変換してもらい集計した。別表がそれだ。確認できたのは1,931本。内訳は保存が901本、移植が253本、伐採が777本(うち秩父宮ラグビー場のイチョウ18本は移植検討)となった。公表データより539本少ない。(事業者は「既存樹木については、一本一本を大切に扱い、様々な工夫により、極力、保存又は移植し、四列のいちょう並木は保存するとともに、新たなみどりも創出することとして、みどりの割合は約25%から約30%に、樹木の本数は1,904本から1,998本に増加させる」「3m以上の樹木の伐採本数は743本」としている)
集計ミスだろうと何度もやり直した。結果は変わらなかった。理由は分かった。PDFデータには連番が付されているが、ほとんどのエリアで番号が飛んでいる。例えば軟式野球場西側は445本のはずが330本しか表示されない。軟式野球場東側も277本のうち207本しかない。
なぜか。考えられるのは、調査を行ったのは2018年12月25日~2019年1月28日で、2022年5月12日に436本を対象に追加調査した結果をデータとして公表しているので、この間に枯損木として処分された樹木に敬意を払い、永久欠番にしたではないかということだ。
それにしても539本の差は大きい。消えた樹木はどうなったのか、3m未満なので切り捨てたのか、通し番号通りになっていない理由を聞きたいものだ。(小生の集計ミスか)
しかし、そんなことを考えていてもらちが明かないので全樹木のリストを紹介した。一般的な寺社仏閣とは全然異なることが分かる。わが故郷・伊勢神宮の象徴であるスギ(学名:Cryptomeria japonica=日本の隠れた財産)(は2本のみで、〝松竹梅〟のうち松はクロマツとアカマツ合わせて33本、梅は2本、竹は1本もない。その逆に、樹高が20mを超えるヒマラヤシダー73本、フウ18本、ユリノキ9本、プラタナス9本、メタセコイア7本、タイサンボク5本など明治時代以降に輸入された外来種が存在感を示していることが分かる。
伐採樹木でもっとも多い204本のカイヅカイブキも同じだ。コニファーに似ていることから昭和の時代に洋風生垣として多用されたようだが、小生の田舎で生垣といばマキノキが主流だった。創建の目的が明治天皇を奉ることであり、デザインもそうだが欧米の文化を積極的に取り込んでいた当時の社会状況を反映しているのは明らかだ。
カイヅカイブキはこのうち164本が伐採されることになっており、全伐採樹木777本の21%を占める。樹高はほとんど5m以下なので代替えもきく。みどり環境に及ぼす影響は少ないのではないか。同様に樹高が5m以下の樹木は49本のサンゴジュ、25本のモクセイ、13本のツバキ、9本のサザンカなどもそうだ。
これらのことを考慮すると、事業者が現在のみどり率25%を30%に引き上げる計画としているのはそれなりに説得力がある。再開発に反対する人たちは屋上緑化も「みどり」に含めると批判しているが、足元のみどりを増やすことは可能だと思う。
2番目に多い166本のマテバシイはどこにでもよくある常緑広葉樹で、3番目の158本のイチョウはほとんど樹高が20mを超えている神宮外苑のシンボルだ。
鈴木敏・澤田晴智郎氏著「公園の話」(技報堂出版)によると、このイチョウ並木は「1923年(大正12年)から4年がかりで、新宿御苑の一本のイチョウから取れた実を育て、その苗を植えたものだそうです」とあるから凄いではないか。みんな兄弟姉妹だ。地下では根を絡ませて仲良くしているのか、分捕合戦を演じているのか。「母」の枕詞として知られる垂乳根は雄株にも生えるというのも面白い。施設に近接している西側より東側のイチョウのほうが樹高が2mくらい高いのは、その東側に植樹帯があるためだ。
このほか、総じて常緑樹が多いのも特徴で、〝なんじゃもんじゃ〟の愛称で知られるヒトツバダコは59本。
細かいことだが、気になった樹種名もある。シダレザク48本、ヤエザクラ33本、ヤマザクラ18本、ソメイヨシノ29本、カンヒザクラ」4本、カワヅザクラ1本と品種で表示されているのに、「サクラ」も39本ある。このほか、43本のモクセイと9本のキンモクセイは異なるのか、24本のイロハモミジと6本のノムラモミジ、7本のモミジはどうなっているのか。
以下は小生にもなじみが深い樹木について。カキやビワ、イチョウ(銀杏)はもちろんだが、ヤマモモが最高に美味しかった。裏山の至るところに自生しており、初夏のころになると、父親と木に登ってかごいっぱいに収穫し、砂糖をふりかけて食べた。クワの実もなかなか美味しい。カヤノキの実は、形はアーモンドに似ており、拾っては家に持って帰り、炒ってもらってよく食べた。それほど美味しいものではない。シイノキの実も美味しくはないが、よく食べた。モチノキは、実を擦ってメジロ獲りに使った。これも美味しくはない。カクスノキはもっとも好きな木の一つで、いつも葉っぱをちぎっては匂いをかぐことにしている。ドクダミの葉っぱと同じで、記者にとって鎮静剤だ。
各エリアの樹木については稿を改めて紹介する。活力度と保存・移植・伐採の関連性も探ってみたい。
カイヅカイブキ
日本イコモスなどは左側の「ロイヤルガーデン カフェ青山」に面するイチョウが弱っていると警告している
秩父宮ラグビー場のイチョウ(立派な垂乳根もある。雄株か雌株か)
,メタセコイアの葉っぱ
ヒトツバダコ(絵画館前広場)
倒壊した5階建て(7階建てか)ビル含む約3割の建築物が旧耐震 石川県
北國新聞は1月1日20時30分、令和6年1月1日16時10分に発生した最大震度7の令和6年能登半島地震によって「輪島市内で大規模な火災が発生し、中心部の河井町では輪島塗の五島屋のビルが横倒しとなった。中に人が取り残されているとの情報がある」と報じた。
五島屋のホームページによると、創業は大正13年(1924年)で、「昭和47年(1972年)地上7階地下1階(現在地下は埋設)工場兼店舗の社屋建設」とある。
昭和56年(1981年)6月1日施行の新耐震基準以前なので、いわゆる旧耐震基準によって建設されたものと推測される。(耐震補強が行われているかどうかは不明)。
石川県県ホームページには、平成25年(2013年)現在、県内の住宅戸数439,900戸の約32%(139,000 戸)、多数の者が利用する建築物では、総数約5,500棟の約36%(1,959 棟)が旧耐震(昭和56年以前)の建築物で、同県では平成37年度(2025年度)までに住宅は95%、多数の者が利用する建築物は95%の耐震化を目標としている。
また、「平成19年3月25日午前9時41分、最大震度6強の能登半島地震が発生し、約700棟の住宅が全壊し、2,600人を超える人が避難所生活を余儀なくされました」とあるが、今回の地震は最大震度7なので、被害の拡大が心配される。
持家は24か月連続、貸家、分譲住宅も6か月連続の減少 11月の住宅着工
国土交通省は12月27日、令和5 年11月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総数は66,238戸となり、前年同月比8.5%減、6か月連続の減少となった。内訳は持屋が17,789戸(前年同月比17.3%減、24か月連続の減少)、貸家が28,275戸(同5.3%減、4か月連続の減少)、分譲住宅が19,578戸(同5.2%減、6か月連続の減少)。分譲住宅のうちマンションは7,671戸(同5.2%減、先月の増加から再びの減少)、一戸建住宅は11,835戸(同4.3%減、13か月連続の減少)。
構造別ではプレハブは7,880戸(同20.0%減、6か月連続の減少)、ツーバイフォーは8,072戸(同2.1%減、3か月ぶりの減少)。
令和5年1月から11月の累計では総数は755,037戸(前年同期比4.7%減)、内訳は持家207,321戸(同11.2%減)、貸家318,025戸(同0.1%減)、分譲住宅224,979戸(同4.4%減)となっている。分譲住宅の内訳はマンションが98,157(同1.9%減)、一戸建てが125,816戸(同6.1%減)。
首都圏マンションの累計は47,065戸(同1.1%減)で、都県別では東京都が23,854戸(同11.8減)、神奈川県が13,432戸(同29.9%増)、埼玉県が5,250戸(同0.4%減)、千葉県が4,529戸(同8.2%減)。
パークシステムの復活はあるか 都市再生は可能か 「川」を考える
玉川上水
今年はわが西武ライオンズの山川選手に翻弄された1年でもあった。チームは5位に終わったが、過去のことは忘れよう。来季に期待しよう。悪夢を断ち切るためにも、単純にして明快な真理-それなしには生きられない山と川、とくに「川」について考えてみた。
◇ ◆ ◇
国土交通省が特に重要と定め指定するわが国の一級水系は109水系、一級河川は14,079本、都道府県知事が指定する二級水系は2,713本、二級河川は7,029本、市町村が指定する準用河川は14,314本となっている。全国に一級水系がないのは沖縄県のみで、政令指定都市で一級河川がないのは福岡市のみであることから分かるように、ほとんどの都市は河川流域に存在する。
川は、安全に水を海に運び(治水)、飲料水をはじめ農林水産、工業などあらゆる産業を支え(利水)、親水・公園・リクレーションなどわれわれの生活を潤し、生物多様性にも大きな役割を果たしている。小説や音楽などの舞台になり、絵画、写真などの題材にもなる。
記者は、かつてはアユやハヤ、カニなどが面白いように獲れた、現在でももっともきれいな川の一つとして知られる三重県の宮川・一ノ瀬川流域で生まれ育った。まずまず人間らしい生き方をしてきたのも、その豊かな自然環境のお陰だと思っている。
成人してからも、マンションや分譲戸建てなどの取材を通じてかなりの川を紹介してきた。「川」のワードで過去10年間の記事を検索すると、東京都だけで多摩川の40件を筆頭に、仙川24件、日本橋川24件、玉川上水23件、神田川18件、国分寺崖線18件、石神井川11件、隅田川10件、目黒川8件、荒川5件、渋谷川4件などがヒットする。川が分譲住宅などの販売促進の役割を果たしていることが分かる。
六郷用水
◇ ◆ ◇
皆さんは「渋谷駅南方から天現寺橋までの2.4kmを流れる二級河川。渋谷ストリーム北辺の『稲荷橋』地点を起点とし、広尾、麻布の台地下を流下して、芝公園の南側を通り、東京湾に注ぐ」(Wikipedia)渋谷川をご存じか。名前だけなら知っている人は多いだろうが、水源はどこか、どこに注ぐかを知っている人は少ないはずだ。記者は考えたこともなかった。
知ったのはつい先日(12月17日)、千葉商科大学環境情報科学センター主催のシンポジウム「神宮外苑の歴史的文化的資産の価値を守る-イチョウ並木と100年の森-」だった。中央大学研究開発機構教授・石川幹子氏(イコモス日本国内委員会理事/東京大学名誉教授)は、渋谷川の水源は新宿御苑(高遠藩)・明治神宮内園(井伊家下屋敷)・明治神宮外苑(青山練兵場)の公園三部作と玉川上水の余水であると報告した。
石川氏は共著「岩波講座 都市の再生を考える」(岩波書店、2005年刊)の第4章「公共空間としての公園・緑地」で、渋谷川について「消失した川、コンクリートで固められた貧弱な川からは、想像もつかないような巨大な緑地を水源林として有していることが分かる」(105ページ)とし、「水と緑の回廊」(渋谷川パークシステム)の再生シナリオを<新宿御苑地区><明治公園地区><原宿地区><代々木公園、宇田川地区><宮下公園地区><渋谷駅周辺><渋谷駅-恵比寿駅周辺><広尾病院、慶應幼稚舎、北里大学周辺><白金、麻布十番、三田小山町><麻布十番、赤羽橋、金杉橋、東京湾河口>の10の地区別に描き、「川は、失われたとはいえ、公共空間としての得がたい特質を保持している。この貴重な資産を軸に、断片的に存在する公共の緑地や、地区ごとのルールをつくることにより生み出されるささやかな緑地などを結び付けることにより、新しい公共空間を生み出していくことができる」(109ページ)と述べている。
そして、「100年をかけて失ってきた都市の自然の回復には、100年のヴィジョンに裏打ちされた夢と、実現に向けての緻密な歩みが必要である。これからの公共空間は、公の空間という土地所有の呪縛から解放され、『多くの人びとの安全と生活の質の向上、さらには地球環境の持続的維持のため、複雑で零細な土地利用の中から、互いに分かち合いつつ生み出される集合体としての空間』という考え方に変容していかなければならない」(111~112ページ)と締めくくっている。
渋谷川
渋谷川
◇ ◆ ◇
同著の第2章「都市再生の理念と公共性の概念の再構築にむけて」では、蓑原敬氏は「現代の日本社会の中で、都市、地域の再生を図るためには、日本の地域計画、都市計画を本来の姿に戻すことが不可欠である。また、住宅政策の根本的な見直し、住まい街づくり政策への転換が不可欠である。だが、都市計画を巡る日本社会の仕組みみの現状は、これを阻む構造になっている」(29ページ)と問題提起し、「口当たりのよい総論的な言説を繰り返し、各論への介入を不可避にする実態の変革を避けた表面的な表現だけを重ね、各論の段階では常に既往の制度の部分的な手直しでお茶を濁してしまい、総論で掲げた目標はいつの間にか消え失せているのが日本の行政構造の現実である。それが、この20年間、日本の都市が『非人間的、反社会的、そして自然破壊的な面が目立っている』ことに繋がっている」(33ページ)と指摘。「新たな、住まい街づくり政策の確立と国土計画法、都市計画法、建築基準法集団規定を一体化した、都市田園法と街並み計画法の策定が必要である」(56ページ)と説く。
石神井川
石神井川
◇ ◆ ◇
石川氏が力説する「パークシステム」の復活はあるのか、蓑原氏がいう「本来の姿」を取り戻すことができるのか。
記者などは、渋谷川や日本橋川を見るにつけ、建物は押しなべて川に背を向け、深い擁壁の底に沈み、流れているのかどうかも判別できない、黒い水面にブクブクと泡立つ不気味な光景に絶望するしかない。〝死の川〟そのものだと。
「本来の姿」を取り戻す道のりも険しいと言わざるを得ない。千代田区の神田警察通りの道路整備計画、二番町地区地区計画、神宮外苑まちづくり計画に関する会合を傍聴したり審議会の議事録などを読んだりしたが、法的手続きに瑕疵がなければ、住民はもちろん議員や委員などの声はただ聞き置くだけの扱いを受けるのを嫌と言うほど知らされた。官僚主導は貫徹されている。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし」(方丈記)
小松川親水
玉川上水
玉川上水
日本橋川
氷の微笑、根回し、考え方更新、都市公園とは…神宮外苑を考えるシンポ千葉商大(2023/12/19)
記者とは無縁の「融通無碍」ブログ発信者 長谷田一平氏(76)とバッタリ
長谷田氏(大船駅構内で)
ブルースタジオ「SUNKA」の取材を終え、大船駅近くの焼き鳥(レバー)が抜群に美味しい飲み屋でビールを飲んで駅の改札をくぐったときだった。だしぬけに声を掛けられた。確かにどこかでお会いした人だ。記憶をフル回転させた。すぐわかった。ジャーナリストの長谷田一平氏(76)だった。
最近は、人の名前と顔は右から左、左から右へと素通りするのに、どうして長谷田氏のことを覚えているかと言えば、もう10年近く前だ。長谷田氏の著作「フォトアーカイブ 昭和の公団住宅―団地新聞の記者たちが記録した足跡」を読んでいたからだ。そんじょそこらにある回顧ものではない。足で稼いだ名著だ。6年前の積水ハウス「江古田の杜」の取材でもお会いしている。
改めて名刺交換もした。「二科会写真部神奈川支部会員」の肩書付きで住所は鎌倉市とあるではないか。お元気そうなのは「鎌倉夫人」のお陰だろうと読んだ。「わたしの行きつけの店でちょっと三十分どうですか」と誘われた。渡りに船とはこういうことを指す。
店の名前は「石狩亭」。お品書きのほか、「鎌倉の町 中華№1に選ばれました」などあちこちに張り紙が張られていた。人気店なのだろう。
長谷田氏から「日本一美味しい緑茶酎ハイ」を勧められるままに飲んだ(小生にとってはお茶そのもの)。何杯お代わりしたか分からない。それより、長谷田氏の第一声「ボケ防止を兼ねて開設したブログ『融通無碍』はYahoo!やGoogleで『ココログ融通無碍』と入力すると真っ先にヒットする」に驚いた。ブログ融通無碍のURLは次の通りだ。
http://kamakura-photo-press.cocolog-nifty.com/blog/
融通無碍なる熟語は、融通が利かない小生などとは無縁で、取り立てていうほどでもないが、人によっては珠玉の輝きを放つ。隈研吾氏がそうだ。いくつかの著作でも述べられているが、2021年に完成した「大田区 田園調布せせらぎ館」のインタビュー映像で「施設全体は融通無碍に使える、利用者の様々なアイデアに柔軟に対応できるデザインとした」と話したのを鮮明に覚えている。同じ言葉を長谷田氏が口にした。
冒頭にも肩書を紹介したが、長谷田氏の写真がまたいい。何かの取材で撮ったらしい、小生がもっとも美しいと妄信しているある大女優の写真を見せてもらった。のどから手が出そうになった。カメラも上等なのはもちろん、被写体に向き合う姿勢が違うのだろう。
そんな長谷田氏にもやり残したことがあるそうだ。億ションを見たことがないという。これはやむを得ない。1955年の旧日本住宅公団設立から1997年の〝亀(亀井静香氏)の一声〟によって分譲事業から撤退するまで42年に約約150万戸(うち分譲住宅は半数近くに上るはず)の住宅を建設してきたUR都市機構は1戸の億ションも供給しなかった。(公営住宅で初めて億ションが登場したのは2007年の横浜市住宅供給公社「横浜ポートサイドプレイス タワーレジデンス」)
今は億ションなど珍しくないので、いつでも紹介できるのだが、「その女優の方の取材があったら、カバン持ちとして連れててってください。億ションの見学会には必ずお声掛けします」と交換条件をだした(この大女優の方が少なくとも2か所で都心の億ションを買ったことを長谷田氏はしらないだろう)。
政治の話もした。小生はもう何十年も投票に行ったことがないと話したら、「それはダメ。白票を投じないと。白票が政治を動かす」と長谷田氏は諫めた。
「日本一美味しい緑茶酎ハイ」
鎌倉市産のきくらげ
裏山の借景致しも断熱等級6クリア ブルースタジオ 賃貸住宅「SUNKA(サンカ)」(2023/12/26)
緑の質量に圧倒 エントランスに樹齢100年巨木「江古田の杜」街びらきに千数百人(2018/9/23)
江古田の杜 コミュニティ施設に「Casita(カシータ)」のサニーテーブル(2017/12/12)
RBA復活 感動の5物件 腸煮えくり返った千代田区の仕打ち 2023年記者の回顧
「HARUMI FLAG」の「PARK VILLAGE」に導入された足湯(ASHIYU LOUNGE)=純水素型燃料電池で発電時に発生した熱を居住者が利用できる足湯とし活用したもの。熱を発生させるコストはゼロというスグレモノ
今年も残りひと桁を切った。この時期になると、わが業界紙は必ず大所高所の視点から〝重大ニュース〟と称し、様々な出来事を紹介する。記者は、野球に例えれば、9つあるポジションのうち1つどころか、補欠にも入れない技量しか持ち合わせていない。マウンドから指呼の間しかない18.44m先のホームベースまで〝アレ、アレレレ〟球が届かない。そんな馬鹿な記者が書くことをご承知のうえで、以下の1年間の回顧記事を読んでいただきたい。
RBA野球大会 4年ぶり開催 54チーム参加
東急リバブル、三菱地所が優勝
東急リバブル(左)と三菱地所の胴上げ
記者にとって最大のトピックスは、コロナ禍で中止となっていたRBA野球大会が4年ぶりに開催されたことだ。水曜ブロックは33チーム、日曜ブロックは21チームが参加した。コロナ前より参加チームは若干減少したが、かつてない盛り上がりをみせた。水曜ブロックは東急リバブルが18年ぶり、日曜ブロックは三菱地所が28年ぶりにそれぞれ優勝した。発信した記事は約150本。総アクセス数は8万件くらいに達しているはずだ。
皆さんは〝たかが野球〟と思われるかもしれないが、売上高が1兆円以上の住宅・不動産業界の企業のうち参加していないのは住友林業(4年前までは参加)と飯田グループくらいで、参加54チームの所属する会社の売上高をトータルすると約50兆円(うちトヨタ自動車は37兆円)に達する。社会人・都市対抗には勝てないが、住宅・不動産業界だけでなく鹿島建設、清水建設、長谷工コーポレーションなどゼネコンも参加するこのような幅広い業種を束ねた野球大会を弱小企業が35年も継続して行っている。延べ参加選手は3万人くらいになるのではないか。親子で同じ会社・チームに参加する事例も出始めた。そんな大会を30年間にわたって取材できたことに感謝!感謝!感謝!
価格上昇続くマンション、変調きたす分譲戸建て市場
「HARUMI FLAG」(板状棟)「MINAMO GARDEN」
「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」305㎡のモデルルーム
「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」カーギャラリー
麻布台ヒルズ外観(ⒸDBOX for Mori Building Co., Ltd. - Azabudai Hills)
野球大会より長く40年以上にわたり取材してきた分譲住宅の記事を今年1年間でマンション約120本、一戸建て約20本を書いた。しかし、現地見学・取材はコロナ以降激減しており、市場を把握するには程遠く、内心忸怩たるものがある。
調査機関による今年の首都圏マンション供給量は約3万戸だが、着工戸数の6割くらいしか捕捉できていないことを忘れてはならない。残りの4割は高額物件のクローズド販売、建て替えマンションの地権者住戸、30㎡未満の住戸などだ。
いわゆる億ションも4,000戸くらい供給され、平均価格も1億円に上昇したことが報じられているが、郊外部の坪単価が250万円くらいのとその4倍もある1,000万円超の物件などすべてを合算し、平均値を出せばそのような数値になるのは当然だ。マクロデータだけでなく、基本性能・設備仕様レベルがどうなっているかも調べないと、市場を把握したことにはならない。
今年見学取材した物件でもっとも印象に残ったのは「HARUMI FLAG」(板状棟)だった。ランドスケープデザインが抜群で、これほど素晴らしいものは過去にないはずで、将来も供給されないだろう。街づくりでは「麻布台ヒルズ」も最高に素晴らしいと思った。
「三田ガーデンヒルズ」の坪単価1,300万円を的中させたのは我ながらあっぱれ。記者冥利に尽きる。郊外物件では大和ハウス「プレミスト昭島」(481戸)が圧巻だった。残りは100戸しかない。販売スピードにびっくりした。「うめきた2期」の積水ハウス他「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」は〝負けたらあかんぞ東京に〟の意地を見た。
分譲戸建ては、圧倒的シェアを占めている飯田グループなどの物件を10年以上見ていないので語る資格もないが、コロナ後の勢いは完全に止まり、資材高騰などの影響を受けそうで、今後の展開には注視する必要がある。
見学した物件では、建ぺい率30%、容積率50%のポラス「NOEN KASHIWA SAKASAI-ノエン柏 逆井-」(8棟)が最高に素晴らしかった。
「NOEN KASHIWA SAKASAI-ノエン柏 逆井-」
価格上昇〝もうはまだ〟なのか〝まだはもう〟
新築市場と連動するから当然といえば当然だが、中古マンションの単価、価格上昇が続いている。買取り・再販事業も伸びるはずで、立地、環境に恵まれたいわゆるビンテージマンションの争奪戦が始まるのではないか(もう始まっているか)。課題は中古物件の断熱性能を高めることだ。管理規約を改正し、単板ガラスサッシを二重サッシや樹脂サッシに容易に変更できるようにすべきだ。改正区分所有法ではそうなるはずだ。
もう一つの問題は、新築も中古もいつまで価格上昇が続くかだ。〝もうはまだ〟なのか〝まだはもう〟なのか。これは分からないのだが、少なくともアッパーミドル・富裕層向けは現在の好調市場が続くのではないかと記者は見ている。
2023年の港区の課税標準額が1億円を超える層は2016年の957人から45.5%増の1,392人(全納税者の0.9%)、課税標準額1,000万円超の納税者も7年前より40.2%増の27,680人(全納税者の18.6%)になっているのもその根拠の一つだ。格差社会は加速度的に進んでいる。
落ち込む持家 木造は増えるのか 住宅着工
住宅着工では、持家の落ち込みが気になる。今年10月まで23か月連続して前年同月比で減少しており、今年1~10月では前年同期比10.6%減の189,532戸だ。前年に引き続いて分譲住宅を下回る可能性が高い。
記者は持家の着工戸数は元に戻らないと悲観的な見方をしている。建て替えはともかく、適地は減少しているはずで、価格は高いがアクセスに恵まれた分譲マンションや、圧倒的に価格が安い分譲戸建てに相当数が流れていると思う。
構造別では、平成21年度に木造率が50%を超えてから50%台の半ばで推移しているが、記者は近いうちに6割に達するのではないかとみている。大和ハウスが11月に行った「戸建住宅事業 計画説明会」で2022年度実績の5,762棟(請負:4,191棟、分譲1,571棟)から2027年度には10,000棟(請負:3,000棟、分譲7,000棟)に拡大し、分譲戸建ての鉄骨:木造比率が7%しかない「木造」を「分譲は全て木造にしたいくらい」と同社取締役常務執行役員住宅事業本部長・永瀬俊哉氏が語ったのに衝撃を受けた。
一方で、25年の歴史を持ち累計販売棟数16万棟を突破している工務店ネットワーク「JAHBnet(ジャーブネット)」(主宰:AQ Group宮沢俊哉社長)は2023年12月末日をもって解散すると発表した。プレカットを含めた分譲戸建て業界の再編があるかもしれない。
第三者管理者方式増加へ 区分所有法改正へ マンション管理
マンション管理では、第三者管理者方式のガイドラインの整備に関するワーキンググループの会合が始まった。来年3月までに答申される模様で、予算に余裕のある管理組合や富裕層向け、投資向けマンションに採用するケースが激増するのではないか。
また、法務省は、区分所有建物の管理・再生の円滑化、被災建物の再生の円滑化に向けた区分所有法制の見直しは喫緊の課題とし、所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組み、管理不全状態にある専有部分や共用部分の管理に特化した新たな財産管理制度、共用部分の変更決議の要件の緩和、建替え決議の多数決要件の緩和などの見直し作業を進めている。来年度には法改正が行われる見込みだ。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家等対策特別措置法)が改正され、今年5月に施行されたが、テーマが大きすぎで、記者は取材をしたことがほとんどない。どうなるのかもさっぱりわからない。
危機に瀕するみどり環境 SDGsはどうした
記者は最近、胸にSDGsバッジをつけ、目標17項目に少しでも貢献できるように心がけている。折に触れ千代田区・神田警察通りのイチョウの街路樹伐採、神宮外苑まちづくり、都市公園、フェイクグリーンなど「みどり」について記事にしてきた。緑環境は危機に瀕している。
どれだけ軽視されているか。東京都の「マンション環境性能表示」制度で公表されている961物件の「断熱性」「省エネ性」「再エネ」「維持管理・劣化対策「みどり」の5段階表示の分布を以下に紹介する。
評価項目 | ★3つ | ★2つ | ★1つ |
断熱性 | 488 | 336 | 137 |
省エネ性 | 786 | 157 | 36 |
再エネ | 73 | 90 | 472 |
維持管理・劣化対策 | 420 | 386 | 155 |
みどり | 131 | 309 | 461 |
いかがか。「再エネ」もそうだが、マンションの「みどり」の取り組みが遅れていることが一目瞭然だ。なぜそうなのかは全物件を調べる必要があるが、マンションの立地(用途地域)と関係があるはずで、★1つは商業系用途、★3つは大規模再開発や第一種低層住居専用地域など住居系が大半を占めていると思われる。
★3つの物件をデベロッパー別にみてみた。共同事業や再開発物件をどう案分していいか分からないので正確ではないが、★3つを取得しているデベロッパーは20社くらいしかない。もっとも多いのは三菱地所レジデンスの27件で、住友不動産の24件だった。他では野村不動産と三井不動産レジデンシャルが続き、東京建物や積水ハウスも目立つ。この6社で過半を占める。供給がそれほど多くない〝5本の樹計画〟を推進している積水ハウスの〝健闘〟が光る。
カーボンニュートラル実現への道のり
カーボンニュートラル実現、建築物の木質化の具体的取り組みでは、長谷工コーポレーション「ブランシエスタ浦安」、三井ホーム「IZM(イズム)」モデルハウス、ナイス「Rita School」、ポラス「体感すまいパーク柏」、三井ホーム「MOCXION四谷三丁目」、三井不動産レジデンシャル「北千束MOCXION」、三菱地所ホーム「江北小路」、AQ Group「8階建て純木造ビル」、三菱地所ホーム「KIGOCOCHI(キゴコチ)」ショールーム(モデルルーム)、三菱地所レジデンス「上野毛テラス」、野村不動産&清水建設「溜池山王ビル」などを取材した。
道のりは容易ではないが、この種のつくる段階からCO2削減・固定化する取り組みが加速することに期待したい。ウッドデザイン協会と農水省・経産省・国交省・環境省が「建築物木材利用促進協定」を締結したのもとてもいいことだと思った。
各省庁へお願いだ。アメリカなどで普及している景観価値を含めた樹木・緑の定量的評価制度「i-Tree Eco」の日本版を開発していただきたい。都市計画に関する審議会の議事録を読むと、建ぺい率、容積率、建物の絶対高さなどの論議が中心で、この「i-Tree Eco」の視点が欠落していると強く感じる。環境経済学の出番だ。
2050年のカーボンニュートラルの実現を図る事業として、子育て世帯・若者夫婦世帯による高い省エネ性能(ZEHレベル)を有する新築住宅の取得や、リフォームを対象とした「こどもエコすまい支援事業」が創設された。予算額は1,709億円で、注文・分譲住宅は1戸当たり100万円、リフォームは60万円。3月から受付が開始され、9月末で予算額(注文・分譲住宅134,573戸、リフォーム294,031戸)に達したため完了した。結構な事業だが、期間限定ではなく、継続して行うべきだし、ZEHレベルに応じて補助額に差をつけてもいいのではないかと思う。
感動した5物件 はらわたが煮えくり返った千代田区の対応
野村不動産&清水建設「溜池山王ビル」
野球大会を除き、年間取材を通じもっとも感動を覚えた建築物は「HARUMI FLAG」「麻布台ヒルズ」「グラングリーン大阪」「溜池山王ビル」「ノエン柏 逆井」の5物件で、逆にはらわたが煮えくり返るような怒りを感じたのは、千代田区・神田警察通りの道路整備に関する区の蛮行だった。「メディアは信頼できるか」の記事と併せて読んでいただきたい。
11月30日20:00ころの神田警察通り
世界的潮流か 大河のようなウェーブ、アール形状が美しい 森ビル「麻布台ヒルズ」
ランドスケープ&デザイン、共用施設…最高に素晴らしい 「HARUMI FLAG」板状棟(2023/12/1)
〝美は現しにあり〟木と鉄骨のハイブリッド実現 野村不&清水建設「溜池山王ビル」(2023/11/21)
〝ぶっ飛んだみどり〟だけでない 「グラングリーン大阪」タワマンに絶句(2023/10/12)
初めて見た30%・50%×200㎡の分譲戸建て まるで別荘 ポラス「柏 逆井」(2023/5/2)
「アレ」を「暗黒社会」「ファッショ」に置き換えた…千代田区の仮処分申立書(2023/12/2)
うろつくだけで工事妨害!? 暗黒社会へ突入千代田区イチョウ守る会を犯罪扱い(2023/12/2)扱い
〝やめてくれよ区長さん千代に千代田のイチョウが泣いている〟30日夜の無法地帯(2023/12/1)
メディアは信頼できるか 「事実(ファクト)」とは何か 読売報道に想う(2023?11/25)
ネイチャーポジティブの視点欠けていないか 大和ハウス業界動向勉強会<環境篇>
リコージャパン茨城支社(右の自動車はEV車)
大和ハウス工業は12月18日、業界動向勉強会<第23回:環境篇>として、同社環境部長・小山勝弘氏が気候変動関連の動向と同社グループのカーボンニュートラル実現の取り組みを説明し、同社か施工したリコージャパン茨城支社の実例見学会を行った。
ドバイで開催された気候変動会議COP28にも参加したという小山氏は、〝地球沸騰化〟の時代を迎え、IPCC第6次評価報告書統合報告書(2023年3月)で示された「気温上昇を1.5℃に抑えるために残されたカーボンバジェットは500Gt-CO2(2020年時点)しかなく、約10年で上限に達することや、G7広島サミット(2023年5月)で共有された「決定的に重要な10年」などを紹介し、個人的見解としながら「2030年に、新築でZEH・ZEB水準」とのロードマップが描かれているが、竣工後10年に限れば、エンボディドカーボン(建物の建設・解体・廃棄に伴うCO2排出量)が約7割を占めことの課題を指摘した。
同社グループのカーボンニュートラルの取り組みでは、2030年までに「やれることはすべてやる」決意を掲げ、①原則すべての屋根に太陽光パネルを設置②2030年度 原則ZEH・ZEB率100%③新築自社施設の原則ZEB化・太陽光、23年度再エネ100%――を取り組みの3本柱として2030年までにバリューチェーン全体で40%維持用のCO2削減を達成すると話した。
ステークホルダーとの共創共生の取り組みも強化し、信金中央金庫との連携締結や、今回の実例見学会会場となったリコージャパンのZEB化支援を紹介した。
リコージャパン茨城支社は、築30年の老朽化したオフィスを建て替えたもので、2022年に竣工。建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)で定める「Nearly ZEB」の第三者認証を取得、一次エネルギーの75%以上削減を達成した。
新オフィスのキーワードは「集中」と「コミュニケーション」で、照明・空調をスケジュールとセンシングで自動調整するほか、時間帯による調光調色の省エネ、太陽光・蓄電池による創エネ、EV(電気自動車)などを導入している。
小山氏
◇ ◆ ◇
自社のオフィス内をメディアに公開する会社などほとんどないはずなので、今回の勉強会を楽しみにしていた。見学会では、女性の方が1階から3階と屋上を丁寧に案内・説明した。
他社の施設を見ていないので何とも言えないのだが、オフィス内はとてもゆったりしていて、スタッフ約80人が働く環境としては最高に素晴らしいと思った。廊下幅は1.8mと広く、休憩室のお茶、紅茶、コーヒーなどは70~90円(たくさん買って家に持ち帰るのは可能か聞けばよかった)。
課題もあるように思った。同社だけの問題でもないと考えるので敢えて書く。敷地はとても広いのだが(駐車スペースが信じられないほど広いのは、車なしでは移動できない市の街づくりによる)、樹木は1本もなく、法面などは人工芝だったことだ。SDGsの17の目標がスタッフの収納扉、階段室に貼られていたが、そのうちの13の目標である「気候変動」、15の目標の「陸の豊かさ」を考えたらこれはありえない。
なぜ、このようなことを記者は言うか。10年以上前から「街路樹が泣いている」記事を書いているからだが、つくば市は、緑被率が60%を超える緑豊かな都市で、同市の取材の楽しみの一つは、街並みの美しさを見られることにある(わが多摩市は60%弱なのでつくば市には負ける)。
もう一つは、オフィス内の「みどり」は全てフェイクグリーンだったことだ。ただのフェイクではなく、光触媒加工により大気中の有害物質を取り除いてくれるのはいいのだが、本物の緑の効果には勝てないはずだ。なぜか、同社に聞いたら「本物は手入れが大変」といつも聞く答えが返ってきた。
本当にそうだろうか。スタッフが自らとみんなの働きやすい環境を整えるのに「手入れが大変」を理由にフェイクでいいと考えるならそれはそれで結構。何も言わない。記者は、オフィスの観葉植物を定期的に点検・手入れする会社の方が「捨てる」といったポトスの枝葉をもらってデスクに飾った。1~2週間に1度くらいの水交換で十分。取材の帰りには道端に咲いている雑草のドクダミなどを摘んでは仕事先や自宅に飾る。
まだある。敷地内は館内も含め禁煙だった。これもSDGsの10の目標「人や国の不平等をなくそう」、16の目標「平和と公正をすべての人へ」に反する。つくば市はとくに喫煙規制がきつい。麻布台ヒルズには喫煙室が完備している。日本一お金持ちの東京都港区の取り組みを見ていただきたい。港区は「たばこを吸う人も吸わない人も、誰もが快適に過ごせるまちづくり」の一環として、屋外の公園を含めた指定喫煙場所を約40か所設けている(屋内は数えきれないほどある)。禁煙を強いるのは差別だ。生産性を低下させると信じている。
さらに、また一つ、これが一番肝心なことだ。ハウスメーカーもデベロッパーも建物のZEH化、ZEB化に必死で取り組んでいるのは結構なことだが、「みどり」の取り組み=ネイチャーポジティブが決定的に欠けていると思う。なせ「神宮外苑」問題が炎上したか。みんな生理的に「みどりが破壊される」と感じたからではないか。
リコージャパン茨城支社のエントランスのフェイクグリーン(同社だけでないが、記者はこのような神経が理解できない)
電力使用量を〝見える化〟
個人ロッカー(SDGsのステッカーが張られていた)
階段にもSDGsのステッカー
自動ではないが、ブラインドは操作するとせりあがってくる
これもフェイク
太陽光パネル
氷の微笑、根回し、考え方更新、都市公園とは…神宮外苑を考えるシンポ 千葉商大
左から原科氏、石川氏(千葉商大丸の内サテライトキャンパスで)
左から藤井氏、Rochelle氏(千葉商大丸の内サテライトキャンパスで)
千葉商科大学環境情報科学センターは12月17日(日)、「神宮外苑の歴史的文化的資産の価値を守る-イチョウ並木と100年の森-」と題する対面&オンライン形式によるシンポジウムを同大学丸の内サテライトキャンパスで開催。同大学学長で日本不動産学会会長・東京工業大学名誉教授の原科幸彦氏が趣旨説明、中央大学研究開発機構教授・石川幹子氏(イコモス日本国内委員会理事/東京大学名誉教授)が基調講演をそれぞれ行い、藤井英二郎氏(千葉大学名誉教授)、Rochelle Kopp氏(経営コンサルタント/神宮外苑問題の署名活動代表)を加えた4氏がパネル討論会を行った。
冒頭、原科氏は「神宮外苑は都市公園です。樹木伐採は停まっているだけで、危険な状態。神宮外苑は公共空間ですが、この10年間、密かにことが進み、民間企業の利潤追求の場に使われようとしています。これはおかしい。カーボンニュートラルを実現するため環境に配慮した都市開発を行うのが基本。都市開発事業者、不動産開発事業者の責任は、公園緑地を減らす都市開発はできないということです」と切り出し、神宮外苑の果たしてきたCO2固定化など公共的な役割ついて語り、SDGsの観点からも再開発計画は大量のCO2を排出し、歴史的文化的価値を無視するものであり、イコモス本部が緊急アラートを発したにもかかわらず応えようとしない事業者の対応を批判した。
続いて登壇した石川氏は、論点として①移植すれば、森を守ることができるか、本数が増えればいいのか②危機に瀕するイチョウ並木を公明正大、科学的調査に基づいて論議すべき③江戸・東京の400年の歴史をどう考えるか④社会が分かち合う社会的共通資本(コモンズ)とは何か-を示し、〝見えないところを見なさい〟という恩師の教えを紹介しながら、フィールドワークで調査した神宮外苑のシラカシ、スダジイ、ヒトツバダゴ(なんじゃもんじゃ)、イチョウ並木などの惨状などを報告し、環境影響評価書には虚偽があり、間違いは正すべきと主張した。また、新宿御苑(高遠藩)・明治神宮内園(井伊家下屋敷)・明治神宮外苑(青山練兵場)は公園三部作であり、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した折下吉延のパークシステムを紹介しながら、社会的共通資本(コモンズ)を維持しなければならないと語った。
藤井氏は、神宮外苑創建に関わった職人の土壌改良、根回しなどの技術を「素晴らしい」と称え、「過去の歴史の年輪を刻んでいる情報を謙虚に受け取るべき」とし、一変して新国立競技場に話を転じ、「実態はひどすぎる。担当者も工程表も設計担当も、施工も悪い。オリンピックが無観客だったのが幸いした。大勢の世界の人々に恥をさらすところだった」と皮肉った。
Rochelle氏は、「緑に尊敬していない。〝更新〟という言葉を使い、古い樹木を若い樹木に植え替えようとしている。ひどい。これを人間に言ったら大問題になるでしょ。樹木をモノとしか考えていない。何度も何度もそのようなことが伝えられるとそれが力となる。樹木に対する考え方を更新すべき」と訴えた。
このほか、シンポに参加していた大方潤一郎氏(東大名誉教授)は、風致地区のただし書き、地区計画制度の問題点などを指摘した。
「神宮外苑の歴史的文化的資産の価値を守る-イチョウ並木と100年の森-」シンポジウム(千葉商大丸の内サテライトキャンパス)
◇ ◆ ◇
記者は、いつものように〝街路樹の味方〟として今回のシンポジウムをリアルで視聴した。嬉しかったのはRochelle氏の話だった。10年以上前から「街路樹が泣いている」の見出しで記事を書いてきた甲斐があった。神宮外苑のイチョウは雄株か雌株か垂乳根(雄株にできるのか)も見られるので、古木ではないにしろ立派な成木だが、人間に例えれば志学15歳か破瓜の16歳か芳紀18歳の伸び盛りの神田警察通りのイチョウを死刑宣告した千代田区こそ無期懲役刑(記者は戦争が最たるものだが、人が人を合法的に殺すことには同意しない)に処すべきだと思っている。Rochelleさん、「RBA」ホームページから「街路樹」「都市公園」などで検索していただくと200件以上の記事がヒットするはずです。
藤井氏のスピーチは複雑な気持ちで聞いた。隈研吾ファンだからだ。完成した新国立国技場を何度も見たが、建物本体はともかく植栽計画にはがっかりした。プアそのものだ。藤井氏が「貧困」と語ったのだから間違いない。
Rochelle氏と藤井氏もそうだが、石川氏が何を話すかをリアルで聴くのが今回の取材の最大の目的だった。イチョウ並木の毎木調査を行い、現存植生図など一連の報告書、提言、要望書を主導したからだ。何千本もある樹木データが頭の中に詰まっているはずで、一部でもいいからその中を覗き見ようと思った。
石川氏は最初、厳しい表情を崩さなかった。最高の写真を撮ろうとデジカメのシャッターを押し続けた。10分間くらいか。ことごとく空振りに終わった。石井氏は視線をそらした。これは一筋縄ではいかないぞと覚悟を決めた。
それでもしつこく迫った。石川氏もあきらめたのか、講演が半ばに達したころから表情を崩し始め、それからというもの、微笑は最後まで絶えることがなかった…微笑…と、突然、何の脈絡もなしに「氷の微笑」のシャロン・ストーンと重なった。気難しい学者からいっぺんにファンに変わった。(農学者に惹かれるのはなぜか)紹介する1枚はその一つだ。
石川氏は、「わたしはあきらめない。一言いいたい。なぜマスコミは事実を報道しないのか」と締めくくった。肺腑をぐさりとえぐられた。
新しい発見もあった。石川氏の配布資料には秩父宮ラグビー場の所有者は「国」と書かれていた。ご本人にも確認した。現在もそうだという。事業者は新ラグビー場の土地・建物所有者は独立行政法人日本スポーツ振興センターと「想定している」と公表している。つまり、現在の秩父宮ラグビー場の土地・建物の権利は新ラグビー場に移転し、代わりに現在の秩父宮ラグビー場の土地・建物は明治神宮所有になるものだと理解していた。すでに所有権は移転・交換しているのではないかと(新ラグビー場もまた「未供用」になるのか=だとすれば多額の税金が減免されることになるはずだ)。
そうでないとつじつまが合わない。国が所有する土地に、六大学や東都大学野球大会が行われるので公共性は高いとはいえ、プロ野球球団の本拠地とし、営利を目的にしたホテル建設などありえないからだ。いま、この点について関東財務局に問い合わせたところ、土地・建物の権利者は日本スポーツ振興センターとの回答があった。
そこで、日本スポーツ振興センターに聞いた。石川氏の資料も関東第無極の回答もその通りで、記者の推測も的は外れていない。都市再開発法に基づく市街地再開発事業の権利変換手続きはこれから行われる模様だ。
今回のセミナーで唯一、腑に落ちなかったのは原科氏が最初と最後に「神宮外苑は都市公園」と2度も話したことだった。都市公園と都市計画公園は似て非なるものだと思う。神宮外苑が都市公園だったら、このような再開発計画は俎上に上らなかったはずだ。事業者も「公園を整備するものではない」と明言している。
神宮球場(12月13日撮影、以下同じ)
イチョウ並木
この木は何の木か(スダジイか)
樹木を避けて再開発は可能のはず 「神宮外苑地区まちづくり」をまたまた問う(2023/12/10)
「アレ」を「暗黒社会」「ファッショ」に置き換えた…千代田区の仮処分申立書(2023/12/2)
戦争と同じ「見解の相違」で済ませていいのか「神宮外苑地区まちづくり」を考える(2023/11/7)
〝喬木は風に折らる〟誤解解く取り組みの見える化急げ「神宮外苑地区まちづくり」(2023/10/17)
樹木を避けて整備都の日比谷公園整備PJ/「生き物を殺していいの」二の句継げず(2023/8/7)