課題山積 アナログの物流業界 荷待ち・再配達は有料化すべきだが…大和ハウス勉強会
物流業界がアナログ業界であることは以前から聞いていた。この日(3月1日)の物流業界をテーマにした大和ハウス工業「業界動向勉強会」で配布されたHacobuの資料にもその後進性が示されていた。国土交通省は「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」を改正し、荷待ちルールなどを守らない事業者の罰則強化を図るようだが、魑魅魍魎の世界をどう変えるのか。
資料によると、物流は企業間物流と宅配便ラストワンマイル(宅配便をこう定義づけているようだ)に分けられ、前者の市場が29兆2,750億円、後者が2兆9,250億円。圧倒的多数を企業間物流が占める。関係する業種はメーカー、メーカー倉庫、流通事業者、小売事業者で、それぞれfirst、second、third の運送業者と電話・ファックスでやり取りするのが主流になっている。
このアナログ的なコミュニケーションが様々な問題・課題を抱えているようで、国土交通省が調査した「荷待ち時間の発生有無に対する認識」では、「発生している」は荷主出荷(n:296)が24.0%、荷主入荷(n:297)が20.6%、実運送(n:1022)が73.4%、元請(n:599)が54.5%となっている。認識に大きなずれがあることが分かる。これは男女間、恋人同士でもよくあることだ。捨てられるときは、永遠に待っても返事すらないのが普通だ。
もう少し詳しく知ろうと、元データである国交省のアンケート「R3年度トラック輸送状況の実態調査結果」を調べた。対象者は運送委託者(荷主)が5,200社、運送事業者が5,000社で、回答数は前者が666 社(回収率12.8%)、後者が42社(同19.7%)だ。運送委託者(荷主)の概要は、従業員数50人以下が79.7%、資本金5,000万円以下が86.2%となっており、中小・零細企業が大多数を占めている。
記者はこの回収率の低さに驚いた。どこかの調査機関のアンケートなら分からないではないが、市場改善を図るための国の調査であるにもかかわらずこの低率だ。回答しないその理由を聞きたい。
調査は86ページに及ぶもので全てを紹介することはできないが、問題が山積していることが分かる。例えば「荷主等に対して燃料費上昇分を不当に据え置くことが勧告・公表の対象となることについて質問をしたところ、実運送では67.6%、元請では71.1%が『知っている』との回答であったが、実運送では32.4%、元請では28.9%が『知らない』と回答」とある。また、「標準貨物自動車運送約款について質問をしたところ、『知っている』が49.5%であったが、『改正された約款の存在も内容も知らない』と答えた荷主企業が49.8%で半数を占めていた」「『トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン』について質問したところ、ガイドラインの存在について知っているとの回答が半数以上の52.7%を占めたが、『ガイドラインの存在も内容も知らない』との回答が47.3%もあった」とある。
「標準運送約款」「ガイドライン」がどのようなものか、記者はもちろん知らないが、マンション標準管理規約を知らない管理組合が多いのと一緒。守るべきことを知らなければ業務改善ができるわけがない。
今後の課題や国に対する要望も多数寄せられている。以下に列挙する。
・納入日や納入時間は、納入先の要望によるため断ることが出来ない。納入先によっては待機場所が無く、待ち時間が多くなる場合がある。
・ 零細企業では、運賃や条件等の要望が受け入れてもらえない現状があり、運送事業者から言われるまま対応するしかない。
・ 送料無料を廃止しなければ、運送業界の待遇は改善されないと思う。物流にはコストがかかっていることを認識させる必要がある。
・送料無料に対し、運賃は運送事業者に支払うものであるという認識が浸透してほしい。
・荷物を運んでもらえないと困るので、運送事業者の言いなりになっている。顧客と運送事業者との板挟みになることも少なくない。
・繁忙期では明らかにドライバーの疲労がみられる。物流量に対してドライバーが不足している。
・出荷先・納品先との相互理解が必要であると考える。
・荷主への罰則がないと、協力を求めても改善は実現しない。
・荷受・荷卸先、倉庫等関係者が多く、荷主との交渉では(労働時間は)改善されない。
・時間帯指定が多く、保有車両の削減ができない。
・最低運賃が設定されない限り、低運賃の事業者と競争となる。
・休息をとるための駐車スペースがないため、沿道の空きスペース活用してトラック専用の駐車場の整備をして欲しい。
◇ ◆ ◇
課題・要望はみんなよく理解できる。テレビショッピングで当たり前となっている「送料無料」もそうだ。あらゆるサービスがそうであるように「無料」はありえない。小生はAmazonで書籍をよく購入するが、本体(書籍)より送料のほうが高いものも少なくない。いまネットで調べたら、「モデルハウス先着10,000組へQUOカードなど゜20,000円進呈」とあったが、「進呈」は正確ではない。「裏金」処理のように収支があいまいにされることもあると思うが、普通は商品に価格転嫁されているはずだから、これは消費者負担だ。わが住宅・不動産業界も多くの問題を抱えている。
「荷待ち」「再配達」の有料化について。宅配便は、送り主と受け手が契約を結んでおらず、送り主が一方的に送るケースも少なくないので、再配達料金を受け手が支払う義務はないような気もするが、企業間物流は、きちんと契約を書面化(データ化)すれば、荷主-配送業者-受け手それぞれの責任の所在が明確になり、契約を履行しない事業者が荷待ち、再配達料を負担するのが当然だと思うが…。
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抜群に美味しい「ザファーム」のミニトマト 「ららテラスHARUMI FLAG」
「TEAM JAPAN 2020 VILLAGE Cafe&Restaurant CENTRALE」サラダコーナー
昨日(2月29日)行われた三井不動産「三井ショッピングパーク ららテラスHARUMI FLAG」プレス説明会・内覧会で2,000円分の食事券(商品券)を頂いた。消費しないと申し訳ないので、野菜サラダが食べ放題で、飲酒も可能な1階のレストラン「TEAM JAPAN 2020 VILLAGE Cafe&Restaurant CENTRALE」を利用した。東京2020大会選手村でも提供されたGAP認証食材を活用しているのが〝売り〟の一つになっている店だ。
注文したのはパン、飲み物付きの「SALAD LUNCH SET(サラダランチセット)」1,400円。白のグラスワインをお願いし、大きな皿いっぱいにミニトマト、ごぼう、ニンジン、カボチャ、レタス、玉ねぎ、ダイコン、カボチャ、ピーマンなどを盛った。
糖尿の記者は食べ物にこだわりはない。酒(主に焼酎だが日本酒、白ワイン、ビールもよく飲む)だけで1日の摂取カロリーの半分以上を占めているはずで、カロリーの高い肉や炭水化物などはあまり食べない。よく食べるのは魚だが、トマトも必需品だ。トマトだけは一般的な家庭の消費量の数倍は食べているはずだ。しかし、外ではあまり食べない。〝まずい〟というイメージしかないからだ。
なので、恐る恐るミニトマトを食べたのが、実に美味しかった。ミニトマトによくある水っぽさがなく、甘みと酸味のバランスがとてもいい。食べ放題とはいえ何度もお代わりするのは失礼だし、恥ずかしいとは思ったが、ミニトマトだけ4~5回、1回につき数個のお代わりをした。全部で30個くらいか。勧められるままにワインのお代わりもした。
勘定を済ませ店を出ようとしたら、ミニトマトを含めた野菜を納入している「THE FARM(ザファーム)」の代表取締役・武田泰明氏を紹介された。お礼を述べ、写真撮影の許可も得られたので紹介する。
ザファームは千葉県香取市にあり、農園のほかグランピング、コテージ、 おふろcafé、キャンピング場、ドッグラン施設も備えている。
ミニトマトは「あまばんが」のブランドで地元を中心に販売されている。オンラインショップで購入することができる。1kg 2,685円(税別)、2kg 4,908円(同)だ。糖度は8度以上で、一般的なものより2~3度高いとあった。
かみさんに聞いたら、「アメーラは1㎏1万円するものも売られており、美味しいか分からないけど、その値段なら安い」とのことだ。アメーラ(これは固有名詞か)にも負けないはずだ。
武田氏
「SALAD LUNCH SET(サラダランチセット)」
店内(一つだけ気になったのはカボチャの周辺のグリーンがフェイクだったこと。記者ならニンジン、パセリ、クレソンなどを水盤に活ける)
「ららテラスHARUMI FLAG」3月1日オープン三井不動産
「ららテラスHARUMI FLAG」3月1日オープン 三井不動産
「三井ショッピングパーク ららテラスHARUMI FLAG」
三井不動産は3月1日、HARUMI FLAGエリア内のライフスタイル型商業施設「三井ショッピングパーク ららテラスHARUMI FLAG」をオープンする。オープンに先立つ2月29日、プレス説明会・内覧会を行った。初年度は240万人の来館、売上高50億円を目指す。
施設は、都営大江戸線勝どき駅から徒歩16分、船橋駅からバス(BRT)11分の晴海五丁目ターミナル(マルチモビリティステーション)から徒歩1分、中央区晴海五丁目に位置する敷地面積約11,300㎡、3階建て延床面積約19,800㎡。店舗数39店舗。「三井ショッピングパーク ららテラス」としては国内10店舗目。
約13haの土地に約5.600戸の住宅と商業施設が整備され、約12,000人の住む新しい街「HARUMI FLAG」居住者を中心に地域の「生活」(日用品や生活必需品)「子ども」(習いごと保育施設)「医療」(かかりつけ医)「趣味」(スキマ時間利用)を支える。
施設はサステナブル社会の実現に向けて太陽光パネルの設置、屋上緑化、近接する水素ステーションを活用した水素燃料電池利用などを行い、「ZEB Oriented(物販等)」 認証を取得している。
1階には、都心エリア最大級で、エリアのニーズを踏まえて冷凍食品は既存店の約2倍用意したスーパー・サミットや三井のリハウス、東京2020大会選手村でも提供されたGAP認証食材を活用する本格レストラン「TEAM JAPAN 2020 VILLAGE Cafe&Restaurant CENTRALE」が入居する。
2~3階には四川料理店、つけ麺ラーメン店、ハンバーグ店などレストラン・カフェ6店舗、ダイソーのほか、健康食品店、寝具、衣料品店など物販7店舗、ポピンズナーサリースクール、MONEY DOCTOR PREMIERのほかフォトスタジオ、会員制フィットネスクラブ、内科、産婦人科、小児科、動物病院、ゴルフスクール、買い取り専門店、英会話、そろばんなどのサービス24店舗が入居する。
プレス説明会・内覧会にで同社常務執行役員商業施設本部長・若林瑞穂氏は「住宅の入居、BRTの試験運行も始まり、区立小・中学校も4月に開校し、新しい街が動き出す。施設は東京2020のレガシーも継承し、『ららぽーと豊洲』との相乗効果によって活気ある街づくりに貢献する。また、水素エネルギーのかつようによりサステナブルな社会実現のための取り組みもおこなっていく」と挨拶した。
取材の帰りは、BRTを利用して晴海五丁目ターミナルから新橋駅(日テレタワーに直結)に着いたのだが、所要時間は11分ぴったり。停留所が3か所しかなく、信号も2か所くらいか。遅延はほとんどないのではないか。
(日テレタワー
同社商業施設本部アーバン事業部長・牛河孝之氏(左)と若林氏
2階ピクトグラム
2階喫煙室
共用部
スーパー・サミット
「TEAM JAPAN 2020 VILLAGE Cafe&Restaurant CENTRALE」エントランス
晴海五丁目ターミナル(マルチモビリティステーション)
晴海五丁目ターミナルから勝どき駅方面臨む(右端のマンションは2009年竣工のコスモスイニシア「ザ・晴海レジデンス」。坪単価は210万円くらいだったはず)
ランドスケープ&デザイン、共用施設…最高に素晴らしい「HARUMI FLAG」板状棟
「グラングリーン大阪」9月6日まちびらき うめきたMMOが公園指定管理者に決定
全景パース(提供:グラングリーン大阪開発事業者)
三菱地所を代表企業とするグラングリーン大阪開発事業者JV9社(構成企業:三菱地所、大阪ガス都市開発、オリックス不動産、関電不動産開発、積水ハウス、竹中工務店、阪急阪神電鉄、大林組)は2月26日、JR大阪駅前で開発を進めるうめきた2期地区開発事業「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」の先行まちびらき日を2024年9月6日に決定しし、事業者JVの組成する「一般社団法人うめきたMMO」(MMO)がうめきた公園指定管理者として指定されたと発表した。
MMOは、JR大阪駅前に誕生する約45,000㎡の「うめきた公園」のパークマネジメントとまち全体のエリアマネジメントを一体的に行う目的で2023年6月1日に設立された。今回の決定を受け、2024年9月6日から「うめきた公園」の指定管理を開始する。
パークマネジメントとエリアマネジメントの一体的な取り組みとして、公園と民地での植栽管理水準の統一による良質な景観形成、周辺道路の管理運営・利活用の連動、イベントなどによるまち全体の賑わい形成、まちの魅力と企業価値を共に成長させる。
プロジェクトは、オフィス、ホテル、中核機能施設、商業施設、都市公園、住宅を有する複合開発事業。先行まちびらき時には、うめきた公園の一部(サウスパークの全面・ノースパークの一部)、北街区のホテル「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」、商業施設、中核機能施設「JAM BASE」がオープン予定。
青々とした天然芝を舞台に、日常を彩るプレイスメイキングを展開(提供:グラングリーン大阪開発事業者)
うめきた公園サウスパーク(提供:グラングリーン大阪開発事業者)
先行まちびらき範囲(平面図)
芳紀十八 乙女の絹肌を見た 北山杉の手摺り ナイス本社ビル木質化 新たな発見
節(しみ)ひとつない長さ約9メートルのすべすべ肌の北山杉(2階)
ナイスの本社ビル木質化リノベーションの一つである本社屋外装木質化と、北山杉を活用した階段手摺り・家具などを見学した。木質化リノベーションは2022年から進められているもので、そのとき見学取材しているのだが、また新たな木の魅力に触れることができた。
本社ビルの外装木質化工事は2023年12月に完成。スギ本来の長所を維持しつつ表面硬度を高めた同社オリジナルの「GywoodⓇ」、耐久性の高い飫肥杉の赤身部分のみを用いた「ObiREDⓇ」、凸凹形状を生み出す「凸凹GywoodⓇ」技術を採用し、木の持つあたたかみを演出したもので、木材使用量は約11.2㎥、炭素貯蔵量は二単価酸素換算で6.5t-CO2。塗装を施した部分と無塗装の部分に分け、経年による変化を検証し、需要拡大、商品開発に生かす。
北山杉の活用は、北山林業の持続的かつ健全な発展や、北山杉の利用促進に関する相互連携等を図ることを目的に締結された「建築物等における北山杉の利用促進協定」に基づいて実施されたもので、2023年2月に完成。1階ロビーや2階の接客スペースに北山杉の磨き丸太(枝締め・本仕込み)が採用されている。
北山丸太は、昭和以降に和室の床柱としてピーク時の平成元年には約24万本が生産されたが、和室の減少により需要が低迷し、育林から加工まで一般的な丸太の数倍以上の手間がかかる後継者の高齢化、担い手不足から技術の伝承が大きな課題といわれている。
北山杉の1階手摺り
外装木質化
◇ ◆ ◇
百聞は一見に如かずとはこのことを言う。北山杉は東山魁夷の版画、その他写真・映像などでたくさん見てきたが、実際に仔細に眺め、触れ、香りをかぐのは初めてだった。もう50数年も昔の、あのすべやかなしみ一つない絹肌の、まさに芳紀十八、乙女とのほろ苦い出会いがよみがえった。
育林から加工まで一般的な丸太の数倍以上の手間がかかるという600年の歴史を持つわが国の伝統技術の凄さも伝わってきた。
「枝締め」とは「伐採する前の年の冬11~3月頃、枝を適度に打ち落として太りを抑えます。こうすることで木肌が引き締まり、表面の干割れを抑え、また色艶、光沢を良くする効果が得られる」(京都北山丸太生産協同組合ホームページ)作業のことで、「本仕込み」とは「伐採した丸太を山で立たせたままの状態で皮を剥き、天日で乾燥させるもの」(京都市ホームページ)とある。
北山杉を用いたソファ、テーブル
外装
外装
素晴らしいの一語 市民に開放を ナイス 本社ビル木質化リノベ/対照的な歩道の雑草(2022/6/27)
「みなとみらい21中央地区」に世界初のゲームアートミュージアム 大和ハウス・光優
「みなとみらい21中央地区 52街区開発事業」
大和ハウス工業と光優は2月21日、世界初のゲームアートミュージアム、地域熱供給プラント、オフィスを併設した「みなとみらい21中央地区 52街区開発事業」を2月22日に着工すると発表した。
事業は、「中央地区」「新港地区」「横浜駅東口地区」から構成される「みなとみらい 21地区」で一番広い「中央地区」での開発で、横浜高速鉄道みなとみらい線新高島駅から徒歩約2分、横浜駅から徒歩約10分に位置する敷地面積約11,818㎡、29階建てオフィス棟と3階建てミュージアム棟の延べ床面積約113,898㎡。設計は久米設計。事業主はオフィス棟がDKみなとみらい 52街区特定目的会社、ミュージアム棟が光優。施工はフジタ・大和ハウス工業特定建設工事共同企業体。着工は2024年2 月22日。竣工予定は2027年5月30日。オープン予定は2027年7月。
敷地の南側には世界初となる最先端のCG技術を用いた体験もできるミュージアム、敷地の北側には様々な業種に対応可能なオフィスと店舗などを構えるオフィス棟、地下には脱炭素社会の実現に向け、地域熱供給プラントを設置する。
また、ミュージアム棟とオフィス棟の間にデッキを設け、周辺の街区との繋がりも形成するなど、『まちを楽しむ回遊性の強化と国際的魅力あふれるビジネス・文化・交流複合拠点を整備した「SMARTOASIS」の実現』をコンセプトに、事業全体の緑地率約 30%を目指す。
ChatGPTを活用したAI査定サービス試験運用 三菱地所・三菱地所ハウスネット
三菱地所と三菱地所ハウスネットは2月22日、ChatGPTを活用した住まいのAI査定サービス(ベータ版)の試験運用を2月20日から開始したと発表した。
サービスの対象となるのは、住宅系会員組織「三菱地所のレジデンスクラブ」の一部会員で、顧客が営業担当者に質問するような双方向コミュニケーションが可能で、住まいの価格査定結果をはじめ、住まいの所在エリアのマーケット状況、類似物件の売出事例などの情報を提供する。ベータ版の質問は選択式だが、今後フリーテキストでの入力も検討予定。将来的には、対象の会員を広げることや会員以外も利用できるサービスを展開することも検討している。
両社は2023年9月、住宅購入検討者向けサービス「KAUnSELL(カウンセル)」を共同開発したが、技術開発に当たってはプライスハブルジャパン(PriceHubble Japan)の支援を受けている。PriceHubbleは、スイスを拠点とする200名を超えるスタッフが在籍する不動産テック企業で、デジタルソリューションは全世界1,300社以上に採用されている。
日経平均株価 34年2か月ぶりに過去最高値更新へ 住宅・不動産株の過去と今
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2月13日の東京株式市場の日経平均は終値37,963円をつけ、1989年12月29日の大納会に記録した過去最高値38,915円にあと952円まで迫った。34年2か月ぶりに記録を更新する可能性が高まった。当時と現在の主な住宅・不動産会社の株価を比較してみた。
当時と現在の社会経済状況は、よく似ているところもある。1989年といえば、世の中はリクルート問題が沸騰しており90人以上の政治家などがリクルートコスモスの未公開株を譲り受けたことから、収賄罪、政治資金規正法に抵触する罪で起訴・逮捕された関係者も出た。天安門事件もこの年だった。
為替は、円は1ドル120~150円台で推移し、公定歩合は3度引き上げられ、年初は4.5%だったのが年末は7%に乗った。長短期金利の逆転現象が起きた。
別表を見ていただきたい。1989年12月29日の時点で東証に上場していた不動産会社は一部、二部、店頭を含めて26社。株価は、飛ぶ鳥を落とす勢いにあったマンションデベロッパーの大京が5,800円をつけ、同社に次ぐ供給量を誇っていたダイア建設が8,140円、リクルートコスモスが6,000円をつけている。〝マンション転がし〟が流行語になったように、マンションや株式が投機マネーを呼び込んでいた世相を反映している。その他のデベロッパーやハウスメーカーも概ね2,000円を突破していた。
ところがその翌年の1990年3月、いわゆる銀行の土地融資を抑制する総量規制が実行され、8月にはイラクがクウェートに侵攻した湾岸戦争が勃発。原油高も重なり、9月には株価が付かないストップ安が続き、マンションの契約率も50~60%台に急落。バブルは完全に崩壊した。
別表の上場企業も、親会社に吸収合併された企業を除きエルカクエイ、ニチモ、ダイア建設、マルコー、第一コーポレーション、セザール、箕輪不動産、殖産住宅、ニッセキハウスの9社が破綻、市場から消えた。さらに2008年のリーマン・ショックにより多くのデベロッパーが市場から退場を余儀なくされた。
さて、現在の株価はどうか。1989年12月29日の株価を上回っている当時の住宅・不動産上場企業は三井不動産、東京建物、住友不動産、スターツ、大和ハウス工業、積水ハウスと関連の長谷工コーポレーションの7社のみだ。このうち上場来の高値圏にあるのは三井不動産、大和ハウス、積水ハウス(スターツも株式分割を行っているので理論値では過去最高値圏にある)。現在も東証に上場している当時の不動産銘柄は9社しかない。消長の激しさを物語っている。全ての企業が高値更新を射程圏に入れているわけでもない。
◇ ◆ ◇
1989年のマンション市場について。記者は当時、前職で毎月マンションと分譲戸建ての販売状況を調べていた。少し紹介すると同年11~12月のマンション坪単価は茗荷谷が890万円、代々木が1,694万円、高輪が1,082万円、平塚が426万円、相模原が445万円、溝の口が415万円、松戸が370万円、船橋が352万円、西川口が510万円、軽井沢が492万円…などとある。 その一方で、郊外部では坪200万円を割る物件も結構供給されており、郊外部でも軒並み坪200万円を超えてきている現在とはやや異なる市場を形成していた。
戸建ても同様で、都内物件は軒並み1億円以上で、藤が丘が1億9,000万円台、柏逆井が8,000万円台、高坂が6,300万円台、佐倉が8,000万円台、成田が4,600万円台…それでも売れていた。
二地域居住促進へ 改正法律案を閣議決定/参考になるFRKの基礎調査報告書
国土交通省は2月9日、二地域居住の促進を通じて、地方への人の流れを創出・拡大するための「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されたと発表した。コロナ禍を経て、UIJターンを含めた若者・子育て世帯を中心とする二地域居住へのニーズが高まっている一方で、「住まい」「なりわい(仕事)」「コミュニティ」に関するハードルが存在することから、都道府県、市町村、支援法人、地域住民、不動産会社などが連携して二地域居住を促進する基盤を整備する。
法律案では、①都道府県が二地域居住に係る事項を含む広域的地域活性化基盤整備計画を作成したとき、市町村は二地域居住の促進に関する「特定居住促進計画」を作成可能②二地域居住者に「住まい」・「なりわい」・「コミュニティ」を提供する活動に取り組む法人の指定制度を創設。市町村長は、二地域居住促進に関する活動を行うNPO法人、民間企業などを「特定居住支援法人」として指定可能とし、空き家などの情報、仕事情報、イベント情報などの関連情報を提供する③市町村は、特定居住促進計画の作成などに関し協議を行うため、当該市町村、都道府県、特定居住支援法人、不動産会社、交通事業者、商工会議所、農協などを構成員とする二地域居住等促進協議会を組織可能とする。
KPIとして、①特定居住促進計画の作成数:施行後5年間で累計600件②二地域居住等支援法人の指定数:施行後5年間で累計600法人を目指す。
◇ ◆ ◇
不動産流通経営協会(FRK)が2020年7月、この二地域居住に関して極めて興味深い「複数拠点生活に関する基礎調査」を公表している。最後の「まとめ」の「(二地域居住)実現に向けた住居取得とそのハードル」をそのまま以下に紹介する。
①積極的目的での複数拠点生活を増やすために有効と思われる施策
全体では、新たな滞在先の維持費・確保費用が最も実施のハードルとなっており、地域社会との交流・貢献などを目的とする人や20・30代ほど、この傾向は強い。また、20・30代の若い人たちは、住宅ローンが組めないことでも苦労しているようである。現在、検討している人も新たな滞在先を取得する上で税制優遇措置が受けられたり、住宅ローンを組めれば実現可能性が高まるとしたりしており、ローン要件の緩和、優遇措置を行うことで、こうした若者、または地域交流などを目的とする複数拠点生活実施者を増やすことができるのではないだろうか。
②消極的での複数拠点生活を支えるために有効と思われる施策
介護など消極的な理由で複数拠点生活を実施する場合、移動時間や交通費が負担となっているようである。また、現在検討している人は、新たな滞在先を持つための初期コストや維持費を抑えられることが後押しになるとみている。介護問題など家族の絆を活かした安心社会を構築するという観点で、こうした目的による複数拠点生活を支えるためには、住宅に対する初期投資やその後の維持費・交通費等の負担を軽減するような政策支援が求められると言える。
――これらのニーズを救い上げ、課題を解決する官民連携に期待したい。船頭多くして…にならないことを祈りたい。
東急不など5社「白金一丁目西部中地区」再開発認可 1.6haにマンションは980戸
東急不動産、大成建設、三井不動産レジデンシャル、大成有楽不動産、日本郵政不動産の5社は2月9日、参加組合員として参画している「白金一丁目西部中地区第一種市街地再開発事業」の権利変換計画の認可を受けたと発表した。
同事業は、東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅から徒歩3分の先行再開発が進む白金高輪エリアの中心地に位置する施行面積約1.6ha。地上39階建てには約980戸の共同住宅、商業施設や子育て支援施設を整備するほか、約3,300 ㎡の広場や地域住民の交流・活動の拠点として広場横に「地域交流スペース」を整備する。2025年6月に着工し、2028年度に竣工予定。