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2023/03/21(火) 17:51

みどりの価値再認識すべき 三菱地所レジなど6社JV「多摩センター」は坪252万円

投稿者:  牧田司

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「THE GRAND CROSS多摩センター(ザ・グランクロス多摩センター)」

 三菱地所レジデンスなど6社JVの「THE GRAND CROSS多摩センター(ザ・グランクロス多摩センター)」を見学した。多摩センター駅から徒歩9分の全289戸で、坪単価252万円という安さに多摩市民歴35年の記者は衝撃を受けた。安いのは結構なことだと思う半面、多摩センターの〝価値〟は所詮その程度かという落胆のほうが上回った。

 物件は、京王相模原線京王多摩センター駅・小田急多摩線小田急多摩センター駅から徒歩9分、多摩市鶴牧三丁目の商業地域に位置する敷地面積約4,021㎡、21階建て全289戸。4月中旬分譲予定の第2期1次(戸数未定)の専有面積は55.57~72.04㎡、予定価格は3,900万円台〜6,000万円台(最多価格帯5,100万円台)、坪単価は252万円。竣工予定は2024年11月上旬。設計・施工は長谷工コーポレーション。売主は三菱地所レジデンス(事業比率20%)・長谷工不動産(同10%)・積水ハウス(同20%)・TC神鋼不動産(同20%)・大林新星和不動産(同20%)・京阪電鉄不動産(同10%)。販売代理は長谷工アーベスト。

 現地は、歩車分離の舗道を抜けた四叉路の角地。対面には東京海上日動ビルがあり、KDDIビル、JUKI本社、ミツミ本社ビルなどにも近接。ココリア多摩センター、丘の上プラザ、丘の上パティオ、パルテノン多摩、多摩中央公園(公園内には7月開業予定の中央図書館が建設中)、クロスガーデン多摩などが徒歩圏。従前敷地は駐車場。

 建物はV字型で、敷地南側と東側にビルが建っていることから、日照を確保するために敷地南側に駐車場を設け、住戸は南西向きと西向きが中心(一部東向き)。住戸プランはほとんどが70㎡前後の3LDKで、1スパン19戸が55.57㎡の2LDK。

 主な基本性能・設備仕様は、直床、リビング天井高2500ミリ、食洗機、ディスポーザー、床暖房など。浴室タオル掛けはなし。

 1月20日に第1期1次65戸を販売開始し、これまで90戸を供給し約60戸が成約済み。来場者は300件強。

 販売代理の長谷工アーベスト担当者は「まずまずの出足。反響は地元が約4割、八王子が約10%、日野市、川崎市麻生区がそれぞれ5%。成約率は地元の人が高く、60歳以上のコンパクトへの買い換えが目立ち、2LDKタイプは残り僅かの状況」と語っている。

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エントランス

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多摩中央公園

◇       ◆     ◇

 坪単価予想は外れた。東京建物などの「聖蹟桜ヶ丘」が坪270万円なので、これが上値圧力となっており、これを上回ることはないとみており、とはいえ多摩センターの魅力を考えれば坪260万円を下回ることはないと予想していた。坪252万円と言えば、東京都では八王子、立川以遠、神奈川県は平塚、本厚木、金沢八景以遠、埼玉県は川越、朝霞台、久喜、越谷以遠、千葉県は柏の葉、我孫子、千葉以遠だろう。新宿まで35~36分のわが多摩センターの〝価値〟はそんなものなのか。多摩市民歴35年の小生の〝子育てなら多摩センター〟の思い込みが強すぎるのか。近く分譲される日本エスコンの「レ・ジェイドシティ橋本」に坪100万円近く引き離されそうなのにショックも受けた。

 愚痴など書きたくないのだが、書かざるを得ない。まず、これほど安い価格設定をせざるを得ない多摩市・多摩センターのポテンシャルについて。

 京王電鉄を俎上に上げる。電鉄会社の不動産開発が沿線の価値向上に大きな役割を果たしていると考えるからだ。同社の2022年3月期の売上高は2,998億円で、不動産事業の売上高は472億円(全体に占める割合は15.8%)、営業利益は104億円(売上高営業利益率は22.0%)だ。首都圏の同業他社と比較してみよう。連結売上高、不動産事業売上高(全体に占める割合)、営業利益(売上高営業利益率)の順。

 東急は8,791億円、2,232億円(同25.4%)、452億円(同20.3%)、小田急電鉄は3,587億円、809億円(同22.5%)、185億円(同22.9%)、京急電鉄は2,652億円、794億円(29.9%)、109億円(同13.7%)、相鉄ホールディングスは2,166億円、638億円(同29.5%)、142億円(同6.6%)、東武鉄道は5,060億円、622億円(同12.3%)、155億円(24.9%)、西武ホールディングスは3,968億円、591億円(同14.9%)、198億円(同33.5%)、京成電鉄は2,141億円、274億円(同12.8%)、87億円(同31.8%)だ。

 京王電鉄の不動産事業の売上高、営業利益とも京成に次いで下から2番目だ。この数値だけで割り負けしている理由にはならないかもしれないが、京王線の地価水準・街のポテンシャルを100とすれば、京成線はせいぜい半分だ。西武線と比べても互角以上のはずなのに、どうして負けるのか。東急と相鉄がタッグを組んだ「THE YOKOHAMA FRONT」(ザ ヨコハマ フロント)が坪単価700万円を突破したにもかかわらず、圧倒的な人気を呼んだのと対照的だ。街のポテンシャルを左右する「京王プラザホテル多摩」も今年1月で営業中止になり、その後どうするかも現段階で公表されていない。唯一目立つのは、きれいな女性のCM「高尾山」くらいだ。同社はサンウッドを傘下に収めたが、これに期待しよう。

 ここまで書いたが、責任は京王電鉄だけにあるのではない。沿線の自治体の発信力の弱さとも関連がありそうだが、これについては触れない。参考になりそうな記事を添付したので、そちらを参照していただきたい。

 肝心要の多摩市・多摩センターの魅力について触れよう。これについては何度も書いてきたが、歩車分離の街づくりもそうだが、魅力は何といっても緑環境のよさだ。平成30年の東京都のみどり率は、都全域では52.5%(区部:24.2%、多摩部:67.8%)、多摩市は53.9%となっている。

 この数値だけなら、多摩市は都の平均値で、高さ3m以上の高木街路樹16,485本(街路:78,373本、遊歩道8,612本)の本数は江戸川区と八王子市より少なく、町田市と同じくらいだが、人口1,000人当たりでは100本を超え、これらの区市より多い。1本当たり維持管理費も高いという課題はあるが、クスノキやシラカシも多いことから、真冬でも緑にあふれていることは街を歩けば誰でも分かる。

 緑環境が優れているとどうなるか。「多摩市街路樹よくなるプラン改定委員会」の委員でもある東京大学大学院農学生命科学研究科准教授・曽我昌史氏が同改定版に寄せたコラムを紹介する。

 「都市のみどりは、私たちが健やかな生活を送るうえで重要な役割を持っています。実際にこれまでの研究から、緑地や舗道を訪れたり眺めたりすることは、運動機能の維持・向上、ストレスの減少、地域社会の連帯感の形成、認知機能(記憶、思考、計算などの知的な能力)の維持・向上など様々な面で人の健康に貢献することが分かっています。驚くべきことに、最近海外で行われた研究によれば、家の周りの緑の豊富さ(緑地の面積や街路樹の本数など)は、肥満や高血圧、糖尿病、うつ病、循環器系疾患などの発症を抑える効果を持つことが示されています。

 これらの病気の治療には毎年多額の税金が使われている(かつ近年増加傾向にある)ことを考えると、都市のみどりは良好な都市景観の形成の他に、医療費削減という経済面でも大きく貢献する可能性があります」

 皆さんいかがか。小生は街路樹についてもしつこいほど書いてきたが、都市のみどりが地球温暖化防止だけでなく、運動機能・認知機能の維持・向上、ストレスの軽減、地域社会との連帯感、肥満や高血圧、糖尿病、うつ病、循環器系疾患などの発症を抑える効果があることが科学的に実証されているというではないか。

 マンション選好要因は人それぞれだが、国土交通省の令和3年度住宅市場動 向調査では、「住宅の立地環境が良かったから」が分譲マンション取得世帯は69.6%、中古マンション取得世帯は66.2%とそれぞれトップになっている。平成30年度調査では、分譲マンションは72.3%で、中古マンションは60.5%だったので、マンションの率が下がり、中古マンションは逆に上昇したのは謎だが、今も昔も住宅の立地環境がもっとも重要というのに変わりはない。

 最近は〝駅近〟やら〝通勤・通学の利便性〟が重視されているようだが、デベロッパーも住宅購入検討者ももう一度原点に立ち返って考え直すべきだ。〝時は金なり〟-これは「時間」=「金」ではない。時間を有効に使いなさいということだ。

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建築現場

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クロスガーデン多摩から現地を望む(クレーンの見えるのが現地) 

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多摩中央公園と建築中の中央図書館

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カルガモの夫婦か(多摩中央公園で)

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パルテノン大通り

日本エスコン「橋本」は坪330~350万円 販売代理リストの顧客対応はフル回転(2023/3/3)

多様な価値観生かせる多摩ニュータウン 多摩市市制50周年 コンセプトムービー(2022/7/24)

1人当たり街路樹 最多は江戸川区の8.9本1本当たり維持管理費は1.5万円(2022/8/17)

相鉄不・東急 横浜駅直結タワマン 第1期129戸完売 坪717万円(2022/1/26)

「志茂」「多摩センター」は〝割安〟か 東京カンテイ「2020年 マンションPER」(2021/5/8)

〝生きた実験場〟〝やるしかない〟 多摩NT再生 第6回シンポ 藤村氏もエール(2019/2/8)

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あの熱気どこに 多摩市 第5回 多摩NT再生プロジェクトシンポ(2018/2/5)

「多摩NTに風が吹く」 女性の仕事・子育て・地域活動を考える 多摩NT学会が討論会(2016/6/13)

眼の前に多摩中央公園 立地に恵まれたサンウッド「ガーデンコート多摩センター」(2016/1/6)

阪急不動産「ジオ多摩センター」 同駅圏 最後の大規模マンションになるか(2015?9/29)

人・街・未来を語り合う 多摩市 第2回「多摩NT再生シンポジウム」(2015/2/5)

住宅地としては一等地 坪200万円は妥当 清水総合開発「多摩センター」(2014/11/25)

駅近の免震 最初で最後 三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 多摩センター」(2014/6/6)

多摩ニュータウンの課題を解決し、魅力をどう発信するか(2014/2/13)

「何もしなければ多摩NTの人口は50年後に半減」西浦・明星大教授(2014/1/29)
 

 

 

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