港区 課税標準額1000万円以上の層 過去最高の約18,000人
東京都港区の平成26年7月1日現在の課税標準額が1,000万円の納税者は過去最高の17,830人(前年比978人増)となり、全納税者に占める割合は14.0%(同0.5ポイント増)となった。
課税標準額とは、所得税や住民税を課す際の対象となる額のことで、給与所得、退職所得、山林所得などの総所得から社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除などを差し引いた額を指す。
港区では、これまで課税標準額が1,000万円以上の納税者がもっとも多かったのは平成21年度の17,752人(構成比15.0%)。リーマン・ショックの影響などで22年には16,135人(同13.7%)に減少したが、その後、漸増していた。
平成26年7月1日現在の課税標準額が1,000万円の層の総所得金額は1兆776億円で、これも過去最高となった。単純に17,830人で割ると6億円だ。区全体の所得割額は約649億円で、このうち課税標準額1,000万円の層の所得割額は約436億円。区の納税者の14%に当たる層が全体の67.3%の税金を納めていることになる。
高額納税者が増えている要因はデータだけでは分からないが、景気回復による所得増、株高、富裕層の転入、贈与などが考えられる。
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記者は港区内でお金持ちが増えている要因の一つに外国人、とくに米国人の増加が要因の一つと仮説を立てた。
平成20年ころ、港区に住む米国人は約5,000人を超えていたが、リーマン・ショックや東日本大震災の影響もあってか平成23年には4,000人くらいに減っていた。記者は米国経済の回復やアベノミクス効果で持ち直していると考えたのだ。
ところが、これが大外れ。平成26年7月現在の米国人は3,342人だ。この5年間で3割以上も減少している。減った米国人はどこに行ったのか。この理由が全く分からない。港区に住むお金持ち外国人は巷間言われるように米国人ではなく、中国やシンガポールなどの東南アジアの人たちか。
そこで、中国、韓国・朝鮮の港区居住者を調べた。何と双方ともリーマン・ショックも東日本大震災も関係なしに増え続けており、今年7月現在、中国人は3,580人、韓国・朝鮮人は3,587人だ。米国人を逆転しているではないか。平成20年ころは中国人も韓国・朝鮮人もともに米国人の半数しかいなかった。
RBA常勝軍団生みの親 旭化成ホームズ元会長・土屋友二氏が死去
右から土屋氏、平居氏、一人置いて初代監督の堀井慶一氏(2013/11/22 ヒルトン東京)
旭化成元代表取締役副社長で旭化成ホームズ元代表取締役会長の土屋友二(つちや ゆうじ)氏が9月15日、肺炎のため都内の病院で死去した。享年78歳。葬儀は近親者で行われた。喪主は妻雍子(ちかこ)さん。
和歌山県出身で昭和34年、東大卒。同年、旭化成入社。平成5年、住宅事業部門長、同10年、代表取締役副社長、同13年、住宅カンパニー社長、同14年、旭化成ホームズ代表取締役会長などを務めた。
連絡先は旭化成ホームズ総務部広報室、電話03-3344-7115。
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土屋氏とはRBA野球大会を通じて何度かお話をさせていただいた。昨年11月に行われたRBA野球大会開催25周年記念の懇親会にも旭化成ホームズ・平居正仁社長(現旭化成副社長執行役員)らとともに出席され、次のようなコメントを寄せられた。
「この大会の草創期に当社はクリエイト5000という中期目標を掲げており、私は背番号5000番のユニフォームを作って野球部を応援していました。今の私の願いは、この背番号5000番をつけてまたグラウンドに立つこと」
この願いはかなえられなかったが、旭化成ホームズの野球チームはいま2年連続13度目の優勝目指し戦っている。
RBA野球大会がどのような大会で、旭化成ホームズがどのような位置にいるか紹介する。
平成元年、第三企画・久米信廣社長が「業界の発展と親睦」を目的に住宅・不動産業界に呼び掛けて始まった。大きな特徴は、住宅・不動産業界だけでなく、不動産流通・販売会社、管理会社、建設会社など業種の垣根を越えて行ってきたことで、毎年50~60社・チームが参加している。
土・日曜日が定休日の日曜ブロックと水曜日が定休日の水曜ブロックに分かれ、それぞれの優勝戦と総合優勝戦は東京ドームで行われている。試合数は年間100試合くらいにのぼる。優勝チームがオーストラリアや中国に遠征、交流試合や野球教室などを行ったこともある。今年6月には長年の活動に対して国土交通省から表彰状が授与された。
旭化成ホームズは平成2年の第2回大会から出場しており、総合優勝12回、水曜ブロック優勝13回、通算成績119勝19敗、勝率862(第25回大会まで)の最強チームだ。この10年間で負けたのは4回しかない王者として君臨している。
しかし、土屋氏が住宅事業部門長に就任したころは〝出ると負け〟状態だった。強豪チームにはいつもコールド負けしていた。
そんなチームを最強チームに育て上げたのが土屋-平居コンビだ。土屋氏が生みの親であり、平居氏が育ての親だろう。
平成7年、平居氏が人事担当として慶大野球部監督の後藤寿彦氏を訪ね、「住宅に興味のある部員はいませんか」とお願いし採用ルートを確保してからチームが一変。平成9年の第9回大会で初優勝した。
この時、土屋氏は専務。よほど嬉しかったのか何と祝勝会をヒルトン東京で行った。記者も参加させていただいた。
残念ながら会場でどのような話をされたか覚えていないが、その後、優秀な選手がどんどん入社した。記者が嬉しいのは、野球はもちろんだが、仕事でも全国トップレベルの成績を上げている選手がたくさんいることだ。「フォア・ザ・チーム」-野球も仕事も同じだ。
土屋さん、心からご冥福をお祈りいたします。
イヌイ倉庫「月島荘」の大いなる挑戦 秋まつりで夢を語る若者
約50人が参加した「ショートスピーチ」
イヌイ倉庫は9月15日、乾康之・同社社長も参加して中央区月島三丁目のシェア型企業寮「月島荘」の秋まつりを行った。乾社長などのショートスピーチ、パネルディスカッション、「月島荘ごはん」などのイベントが行われた。全644室のうち26社二百十数名が入居済み。入居者の約7割が20歳代で、男女の比率は7:3。
たこ焼きをつくる居住者
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「月島荘」がどのようなシェア型企業寮であるかは様々なメディアが取り上げているし、記者も昨年の9月に竣工した際に見学し記事も書いているのでここでは詳細を省くが、乾社長の損得を抜きにした大いなる挑戦の一端を垣間見ることができた…これは正確ではない。乾社長はこのシェア型企業寮構想の実現まで9年間もかけたというのだから、用意周到、考えに考え抜いたに違いない。儲けるためだけなら他の選択肢もあったはずだが、単に住宅を提供するだけでなく人を育て、地域に貢献・還元する価値を十分計算に入れているはずだ。
その用意周到にして大胆な計画は、まず、常識破りの取材対応に如実に表れている。マンションやビルの完成見学会はこれまでもたくさん経験してきたが、入居者から声を聴いたり写真を撮ったりすることはほとんど許されなかった。個人情報保護法が施行されてから異常、過剰といえるほど当事者はナーバスになっている。
今回も入居者からたいした声は聴けないだろうと思っていたのだが、そうではなかった。ほとんどフリーだった。規制があったのは入居する企業名の公表を避けるということだけで、居住者インタビューは本人の了解さえ得られれば写真を撮ったり名前を公表したりすることも許された。施設内の写真撮影ももちろんOKだった。
これには驚いた。なによりも自由なのがいい。自由だからこそ規律も規範も生まれてくるし人材も育つ。
記者は居住者がつくった200円のたこ焼きと500円の「コロッケ、餃子の皮のピザ、サングリア」を頼み、居住者とビールを飲みながらフランクに話した。インタビューを拒否された人は一人もいなかった。3時間は瞬く間に過ぎた。
「月島荘ごはん」コーナー
居住者の一人で、世界中の人権侵害を監視し告発する人権NGOで働く女性(30)の話には胸を打たれた。
この女性は高校のとき父親の勤務の関係で渡米。「渡米するとき日本は好きではなかった。みんな右向け右の日本人気質がいやだった。国連で仕事が出来ればと思っていた。しかし、外から眺めた日本の文化は素晴らしいと考えるようになった。大学は自分の意志で米国を選んだ。日本も世界もハッピーにしたいと」と夢を語った。
やはり居住者で世界経済フォーラム(ダボス会議)など世界を舞台に活躍している男性も「世界で生起している出来事は他人事じゃない」と語ったが、これからの時代は国際的な感覚の持ち主が求められる。「月島荘」がそのような人材を輩出してくれるのではないかと思うと嬉しくなった。
取材を終え、帰ろうと喫煙室でタバコを吸いながら話を聞いた3人組がまた素晴らしい。「イヌイさんがハードを造った。ソフトをつくるのは俺たちだ」と話した。
「月島荘ごはん」の男性スタッフは「料理は何でもできる。完璧に主夫がこなせる。あとは相手だけ」と話したが、これもまたいい。ジェンダーフリーを実践しようという心構えが好きになった。
普通の賃貸マンションだったら入居者同士の関係は希薄どころかコミュニティは絶対に生まれない。若い人たちがお互い刺激し合い、夢を語れる場があるというのは素晴らしいではないか。
〝若者、ばか者、よそ者〟が街をつくり、世の中を動かす原動力になることをひしひしと感じた。
居住者から寄贈された書籍
月島荘の暮らしを紹介するMovieを見入る参加者
三井不動産リアルティ 「空家・空地巡回サービス」開始
三井不動産リアルティは9月1日から「空家・空地巡回サービス」を開始した。
居住していない一戸建て、マンション、土地を顧客に代わって定期的に巡回し、劣化防止・防犯をサポートするサービス。月に1回、メンテナンス確認、雨漏り・カビ確認、通気・換気・郵便物の確認、清掃、庭木の確認などを行い、書面で報告する。
上記のサービスを行うマンション・戸建ての基本プランは月額7,650円。メンテナンス確認、清掃、庭木の確認のみを行う戸建て・土地のシンプルプランは月額5,400円。
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この種のサービスがビジネスになるのかどうか記者は分からないが、同じようなサービスは同業では東急リバブルが今年4月から開始しており、住宅管理会社、介護関連の企業も行っているようだ。
総務省の調査では、全国の住宅に占める空き家は13.5%、820万戸になっており、今後も加速度的に増えると思われる。国や自治体も空き家対策の取り組みを急いでいる。
記者は一昨年、大量の空き家が発生しているある首都圏の郊外団地を取材したが、〝廃屋〟でも土地に対する固定資産税が大幅に軽減されている。ここにメスを入れない限り空き家は減少しないと思う。一方で空き家の再生・活用も大きなテーマになるはずだ。
サ高住は終の棲家になるか 日比谷花壇・東建不販「グレイプスガーデン西新井大師」
「グレイプスガーデン西新井大師」
日比谷花壇と東京建物不動産販売は9月9日、足立区西新井に完成したサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「グレイプスガーデン西新井大師」の記者内覧会を行なった。日比谷花壇が事業主・一部サービス提供事業者となり、東建不販が企業不動産(CRE)戦略支援として貸主・管理運営事業者、やさしい手がサービス提供事業者として参画する3社コラボレーションプロジェクト。
物件は、東武大師線大師前駅から徒歩8分、足立区西新井6丁目に位置する7階建て全62戸。専用面積は19.08~30.66㎡、月額賃料は62,000円~140,000円、管理費は11,000円~15,000円、基本サービス料は35,640円。10月1日から開業する。
日比谷花壇が物流センター-駐車場として使用していた土地に建設したもので、同社としては初めてのサ高住。1階の庭園と6階屋上庭園に年間を通じて100種以上の草花を配し、大学などと共同開発した「フラワーアクティビティプログラム」、植物との関わりや園芸作業を通じて体や精神機能の維持・回復を目指す「園芸療法」、「看取り」や「日比谷花壇のお葬式」も提供する。
内覧会に出席した同社宮島浩彰社長は、「サ高住は『花とみどりを通じて、真に豊かな社会づくりに貢献する』企業理念にマッチした投資で、当社の高齢者向けサービスを直接提供するとともに、東京建物不動産販売さんの企画・コンサルティング、やさしい手さん、医療連携する社団あすは会さんなどのサービス・ホスピタリティを結集したプロジェクト」と話した。
また、東建不販・種橋牧夫社長は、「企業不動産(CRE)戦略として賃貸マンションなども検討したが、当社のサ高住と日比谷花壇さんの『ガーデン』を融合した提案を行なった。当社のサ高住としては4棟目の完成物件となるが、2016年までに11棟を予定している」と語った。
宮島氏(左)と種橋氏
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記者がこれまで取材してきたサ高住や民間の有料老人ホームは「自立」型のものが多かった。今回、日比谷花壇が「看取り」や「葬式」サービスを行い、医療連携する医療法人社団あすは会・髙本雄幸理事長が「医療難民をなくすためにも要介護度が高い方もどんどん受け入れていただきたい」と話したのにはやや驚いた。
確かに「入院医療」から「在宅医療」「地域包括ケアシステム」へわが国の社会保障・医療制度が急展開すると聞いたのはもう20年以上も昔だ。特養は入りたくても入れず、病院は長期入院患者を受け入れなくなった。
サ高住入居者の居住年数がどれくらいかよく分からないが、おそらく7~8年くらいだろう。東建不販が2009年に完成させた「グレイプス浅草」(98戸)ではこの5年間で30~40人が退去したという。退去理由は様々だろうが、死亡、長期入院、重度の要介護者がほとんどのはずだ。
この傾向を今回の物件に当てはめ、「エンディング」サービスが行なわれると年間に数件にのぼる。住棟内で頻繁に「看取り」「葬式」が行なわれたら、入居者はどう感じるのか髙本氏に質問した。髙本は「見ず知らずの人なら違和感があるかもしれないが、人間関係が築かれ時間が経過すれば、居室内での『看取り』は自然な形になる。サ高住がパンク状態になっている病院に代わる第二のベッドの受け皿になる」と話した。
特養との垣根も取り払われ、サ高住が終の棲家になるということか。
1階の庭園(左)と屋上庭園
ニッチの生け花
乾杯は日本酒、国産材の輸出の話に花咲く 初めて木住協を取材
国産の銘木
日本木造住宅産業協会(会長:矢野龍住友林業会長、略称:木住協)の平成25年度の440社の会員による住宅着工戸数は97,479戸(前年度比107.5%)と5年連続して増加し、このうち木造戸建住宅は94,757戸で初めて9万戸を超え、国交省の新設木造戸建住宅着工に占める会員シェアは18.8%となった。9月3日行われた記者報告会&懇親会で発表した。
このほか、平成25年省エネルギー基準適合住宅の戸数は5,348戸となり、次世代省エネルギー基準適合住宅と合わせ、会員の両省エネルギー基準の適合比率は74.5%で、前年比1.7%増加した。
長期優良住宅戸建て着工戸数は31,390戸で、木住協戸建住宅に占める割合は33.1%となった。
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木住協を取材するのは初めてだった。これまで縁がなかっただけで、会員会社が供給する分譲戸建ては結構取材してきている。
さて、この木住協だが、木造建築工事業者だけでも約5万社もいるこの業界で会員が440社で、その会員の木造戸建住宅の着工戸数シェアが18.8%というのは高いのか低いのか。記者は判断材料を持たないが、会員の1社当たり着工戸数が約215戸で、省エネ基準適合住宅や長期優良住宅の着工比率などからすれば、わが国の木造軸組工法の普及・技術革新に貢献し、水準以上の〝良質住宅〟を供給している住宅メーカーの業界団体ということができる。
記者は木造住宅のファンでもあるが、初めての取材で面白いことをいくつも発見した。以下に紹介する。
ひとつは懇親会の乾杯について。同業の記者は40人くらいいたか。乾杯が始まるとき、甘い香りが漂った。スタッフが紙コップを配った。自分でビールを注げというのでもなかった。中に少量の水ではない日本酒が入っていた。
これには驚いた。30数年間、業界の記者をしていて日本酒で乾杯する会合は初めてだった。いま日本酒で乾杯する行事は神事か鏡割り、正月のお屠蘇くらいだろう。
挨拶に立った熊建夫・同協会専務理事は「木の文化は日本酒に通じる」と話した。なるほどと思った。いっぺんに熊氏が好きになった。熊氏は山口県出身だそうで、早速、記者と山口県の名酒「獺祭」の話になった。いつもは熊氏が手に入れた獺祭で乾杯するのだそうだが、最近は手に入らないので、この日は獺祭によく似た兵庫県の「龍力」が出された。誰も手を付けないから、記者は720mlの龍力をほとんど一人で飲んだ。熊氏は洒落者だ。龍力が獺祭に似ているのではなく、きっと矢野会長の「龍」にあやかったものだと思う。
熊氏は絨毯敷きのマンションの床をフローリングにするかどうか奥さんと検討しているそうで、記者は熊氏を挑発した。「木住協の専務理事が輸入材では情けない。ここは絶対国産材」と。熊氏は「コストと相談する」と話した。さてどうなるか。
もう一人は能勢秀樹・同協会運営委員長(住友林業顧問)の話だ。能勢氏は約5分間、住宅業界の近況を話したのだが、この間、「想像を超える苦戦」「こんなに悪いとは」「心配」「危惧している」「苦しい」「落ち込んでいる」「30代は住宅取得をあきらめざるを得なくなる」などと業界の置かれている状況を正直に話した。
能勢氏は、他の木造住宅に関する会合などで何度も話を聴いているが、能勢氏に「マイナスのことばかりではなく、一つ前向きの話を聞きたい」と水を向けた。能勢氏は国産材の輸出の可能性を熱っぽく話した。暗い話はすっ飛び、話に花が咲いた。
最近農産物の輸出の話はよく聞くが、国産材の輸出が有望な市場になるという能勢氏の考えは検討に値すると思う。木の話をさせたら能勢氏の右に出る人はいないのではないか。
熊氏と能勢氏には「木造住宅の普及のため、厳しすぎる防火・耐火基準を緩和すべきだと思うが、私は〝それじゃ燃えていいのか〟という反論には黙らざるを得ない」とはなしたら、能勢氏は「確かに。木は火に弱いという刷り込みをなんとかしないといけない」と話した。
ついでにもう一つ。会場となった木住協の会議室には225種くらいの世界の銘木見本が3つの額に収められ飾られていた。
木住協の銘木見本は貰ったもののようで、かつて喫煙室にあったそうだ。タバコに燻されていい表情を出すのかもしれないが、木を大切にする木住協としてはいかがなものか。今はちゃんときれいに掃除して飾っているとのことだった。
記者は戸建てやマンションの取材のとき、必ず使用されている床材や建具・家具の樹種を聞く。すぐに答えられる営業マンは少数だ。知らない記者も問題だか、どのような木が使われているか説明できない営業マンは失格だ。しっかり調べお客さんに説明すべきだろう。街路樹もそうだが、われわれは木について知らなさすぎる-ここに森林・林業の荒廃があり、鉄やらコンクリに押され気味の木造住宅の現状が象徴的に表れているような気がする。
外国産の銘木
代ゼミの廃校問題 法律の壁厚く不動産事業への展開は難しい
学校法人高宮学園が経営する三大予備校の一つ、代々木ゼミナールが全国28校舎のうち本部校(新宿)など7校拠点に集約し、その他の校舎については平成27年度から募集を停止することが話題になっている。
現段階では廃校になる校舎がどのようになるか代ゼミは公表していないが、校舎がほとんどすべて地方都市の一等地に立地することから、不動産業界が跡地利用に大きな関心を寄せている。
記者は、学校法人のことや廃校となる校舎の敷地規模、権利関係はいっさい分からない(抵当権などはついていないと思われるが)ので適当なことは言えないが、学校法人のまま不動産事業を展開するにはハードルが高すぎるような気がする。
代ゼミが「受験人口の減少や現役志向の高まりに伴う浪人生の減少」を理由に校舎の集約を行い、27年度以降も継続して募集すると発表したのは、本部校(新宿)、札幌校、新潟校、名古屋校、大阪南校、福岡校、および造形学校(渋谷区原宿)の7拠点。
廃止するのは仙台校(仙台駅東口前)、高崎校(高崎駅東口前)、大宮校(大宮駅西口2分)、柏校(柏駅西口4分)、津田沼校(津田沼駅南口1分)、池袋校(池袋駅東口5分)、立川校(立川駅南口5分)、町田校(町田駅東口5分)、横浜校(横浜駅東口5分)、湘南キャンパス(大船駅5分)、浜松校(浜松駅1分)、京都校(京都駅中央口8分)、大阪校(江坂駅2分)、神戸校(三宮駅2分)、岡山校(岡山駅8分)、広島校(広島駅5分)、小倉校(小倉駅10分)、熊本校(熊本駅1分)など21校。
各校の交通便を見ると、すべてが最寄駅から10分圏内というより、かつて丸井がCMでヒットしたのと同じ〝駅のそば〟だ。もっとも駅から遠い小倉校も川を挟んだ対面は北九州市役所。ここも市内の一等地であるのは間違いない。首都圏の池袋校、柏校、大宮校、津田沼校、町田校、横浜校などは仮に分譲マンションだったら坪単価は最低でも二百数十万円はするし、池袋校なら400万円を突破する。敷地規模がまったく分からないが、すべての校舎の資産価値は千億円単位だろう。
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デベロッパーならずとものどから手が出るほど欲しい物件だが、処分するなり代ゼミが不動産業を営むのはかなり難しいハードルがある。
学校法人は、その公共性・公益性を考慮して様々な税制上の優遇措置が講じられている。法人税・事業税は収益事業から生じた所得に対してのみ課税され、税率も軽減措置が取られている。国税の所得税などは非課税だし、校舎などの不動産については不動産取得税・固定資産税、都市計画税などが非課税となっている。
収益事業とは日本標準産業分類に定められている18業種で、ほとんどの事業ができることになっている。禁止されるのは投機的事業、風俗業、規模が学校の状態に照らして不適当なもの、その他学校法人としてふさわしくない方法によって経営されるものなどだ。
代ゼミが廃校する施設を売却するなり自らが事業を興す場合は、法律に基づき管轄する東京都の許認可が必要になる。
これが難問だ。東京都は「現在、代ゼミさんからは何の相談もないのでコメントできませんが、学校経営より収益事業が大きくなる場合は難しいですし、売却する場合でもきちんと審査します」と話している。
小泉内閣による一連の規制改革で、設立認可の弾力化によって学校法人を作りやすくし、株式会社による学校法人の経営参画をやりやすくする方針が打ち出された。
代ゼミの問題はその逆だ。「受験人口の減少や現役志向の高まりに伴う浪人生の減少」を理由に、いとも簡単に廃校-収益事業に転換できるとしたら「教育」を隠れ蓑に課税を逃れ、営利事業ができることにならないか。とはいえ、廃校となった一等地の不動産をどう活用するのかはしっかり論議すべきだ。
積水ハウス 暗闇の世界が体験できる「対話のある家」
積水ハウスは9月2日、同社の大阪の情報受発信拠点「SUMUFUMULAB(住むフムラボ)」でダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの共創プログラム「対話のある家<秋~冬プログラム>」を9月28日から12月22日まで実施し、実施に先立ち9月5日からチケットを発売すると発表した。
光が完全に遮断された「純度100%の暗闇」の中にグループ(6人まで)で入り、暗闇のエキスパートである視覚障がい者のアテンドのサポートのもと、住まいにおける様々な生活シーンを体験する。
昨年の開催から約5,700人が来場しており、対話の大切さ、五感で感じる心地よさ、家族の絆など新たな発見や新鮮な気づきがあったという来場者の声がたくさん寄せられているという。
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これは記者もお勧めだ。田舎育ちの記者は「真っ暗闇の世界」が日常だった。今と違って、昔は街灯などなかったから、夜、外に出ると真っ暗闇の世界が広がっていた。明かりは月と星、夏ならホタルくらいだ。聞こえるのは風の音と梢のささやき、せせらぎの音、虫の音、犬の遠吠え、フクロウのラブコールくらいだった。
実は本日、里山を保全しつつ持続可能なライフスタイルを提案するNPO「よこはま里山研究所(NORA)」のメルマガに掲載されているNORAの理事でもある松村正治・恵泉女学園大学准教授のコラムを読んだのだが、それは激減する「草地」のことが書かれていた。(NORAのメルマガはhttp://nora-yokohama.org/)
記者は早速、「私などは少年のころ、草地に寝そべり、あれやこれや夢想しはらはらと涙を流したものです…野原一面に咲いた彼岸花を木切れでなぎ倒す快感を皆さんは理解できるでしょうか」と返事した。
「真っ暗闇」も同じだ。流れ星を数えながら家族のこと、世のはかなさ・せつなさ、初恋の彼女などを思いめぐらし甘くてしょっぱい涙をハラハラと流した。涙には「痛い」涙があることは失恋して初めて知った。自然の暗闇と人工の暗闇とは全然異なるだろうが、疑似体験を経験してみる価値はありそうだ。
ところで皆さん、先日、千歳烏山の「七つの子」の記事を書いたが、「七つの子」とは「7羽」なのか、やはり人間で言えば「7歳の子」なのか、どちらでしょうか。「カラスの勝手」などと言わないでください。昔、農家の母親はみんなカラスが家に帰るころになっても野良から帰ることはほとんどありませんでした。
「モチイエ女子」は自立する女性が多い 「モチイエ女子project」調査
三井不動産レジデンシャルが立ち上げた〝今どきモチイエ女子の赤裸々な暮らしぶりを明らかにする〟「モチイエ女子project」が、家で過ごす平均時間からひとりごとの実態、飲食事情、家事、風呂上りに着るものなど職場の同僚、友人・知人には見せない家の中での生活実態を調査した結果をWebで公開した。
調査結果によると、「モチイエ女子」が「外出せずに、家にずっといても平気な日数」「毎日酒を飲む」「一人で外で食事をする」「家事頻度」などの項目で他を圧倒していることが報告されている。
調査対象は、住宅を購入した「モチイエ女子」、「賃貸一人暮らし女子」、実家暮らしの「実家女子」の3タイプで、大都市圏に住む年収が250万円以上の25歳から45歳の単身女性。
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「モチイエ女子project」のWebは、派手な色づかいといいたくさんマンガが出てくるのには面食らってしまうし、「30歳のとき、家でゴキブリを発見したことを機に引っ越しを決意し、賃貸ではなく家を購入」した主任研究員、「悩みを人に相談することはあまりしないタイプ。でも実は寂しがり屋。今住んでいる賃貸マンションのお風呂が狭いことがちょっと不満」の賃貸一人暮らし研究員、「マイペースな性格で、読モ経験があるほど可愛い」実家暮らし研究員の行動や考えが理解できない。
ゴキブリを発見しただけでマンションを購入するということは資金がないとできないことだし、賃貸マンションの風呂が狭いのは当たり前だし、悩みを打ち明けられる人をつくるべきだし、「読モ」はもうさっぱり分からない。ウィキペディアで調べたが女性雑誌の表紙を飾ることか。
それでも確かに独身女性の一人暮らしぶりが〝赤裸々〟に報告されていると思う。飲酒で言えば、「モチイエ女子」は酒を楽しみ、「実家女子」はストレス発散のために飲む機会が多いというのは面白い。湯上り後、「パンツだけ」とか多くはないが素っ裸でいる「モチイエ女子」がいることも驚いた。
「うわ」「ふざけんな」「ムカツクー」「ただいま」「がんばるぞ!」などぶつぶつと独り言をしゃべっているのは、職場や地域で正当な扱いを受けていない独身女性の叫びであり自分を奮い立たせる努力であろうと思うと、男としての責任も感じるし、「より輝ける文化を醸成する」ことが目的の「モチイエ女子project」にエールを送りたい。
調査結果から何を読み取るかは人それぞれだが、記者は「モチイエ女子」がより自立した女性が多いと理解した。我田引水だが、自立を促すマンションの記事を書いてきたことは間違っていないと確信する。
三井新宿ビル 重さ1,800t、マンション52戸分の制振装置一部完成
完成した制振装置TMD(中央が錘、緑の部分は変形を抑制するオイルダンパー、縦の鋼鉄は錘を吊るすケーブル)
三井不動産は9月1日、「コレド室町2」「コレド室町3」などの店舗と連携した誘導訓練、帰宅困難者訓練と、竣工46年を迎える「霞が関ビル」、竣工40周年を迎える「新宿三井ビル」の防災設備補強工事見学会を行った。記者は、一番興味がある「新宿三井ビル」の安心・安全、BCP(事業継続計画)の取り組みを見学した。面さ約1,800t、容積にして20坪のマンション52戸分の制振装置TMDには驚愕した。
同社は、既存ビル60棟を対象に約200億円を投じるBCP改良工事を5カ年計画で進めており、「新宿三井ビル」では非常時の電源を確保するため72時間稼働の非常用発電機を低層棟に3台設置した。費用は約15億円。
制振装置はBCP工事とは別枠で、55階建てのビルの屋上に鹿島建設が開発した日本で初の超大型制振装置TMDを設置する工事。費用は約50億円。
TMDとは、スカイツリーなど超高層ビル・建築物の風揺れ対策として採用されている振子式の錘(おもり)技術を発展させたもので、超高層ビルの地震の揺れ対策として実用化したもの。屋上に設置するため、眺望が阻害されたり有効床面積が減少することもなく、居室内工事がないためテナントへの影響を大幅に低減できるメリットがある。
新宿三井ビルに設置されるTMDは6基で重さは約1,800t。東日本大震災時に観測された同ビルでの長周期地震動(振幅幅約2m)を半分以下に抑えることができるという。ビル全体の荷重は8万tだから、補強工事も軽微で済んだという。メンテフリーだともいう。完成後は覆い隠される。
人と比較しても1基の大きさが分かるTMD
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この制振装置は、昨年7月、同社と鹿島建設がリリースを発表したとき、必ず見学しようと決めていた。リリースを読んだだけではよく分からなかったからだ。原理としては理解できても、およそ1,800tなるものの振子の錘がどのようなものか想像すらできなかった。
実際に見学して驚愕した。完成した1基の面積は11m×13m、高さは12m。その中に重さ300tの鉄の錘がケーブルで吊るされていた。いまは工事途中なので、錘は動かないよう固定されていた。
巨大な建屋がどれくらいのものか分かりやすく紹介するために20坪(66㎡)のマンションと比較してみた。マンション1戸の高さは3mとして計算した。その結果、6基全体では52戸に相当することが計算上分かった。中規模マンション1棟だ。
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もう一つ気になるのがこの工事によって賃料はいくらになるか、周辺ビルへの影響だ。新宿エリアでは東新宿や西新宿で最新の大型ビルが竣工し、既存の昭和40年代後半から50年代にかけて建設されたビルの空室率は年々大きくなってきている。耐震補強を行っていないビルもあり、大量の空きを抱えたビルもある。
これについて同社は多くを語らなかったが、他のビルとの競争力が増したのは間違いなく、他のビルも対応策を取らざるを得なくなるのではないか。賃料を下げることだけで解決する問題でもなさそうだ。
参考までに聞いたら、非常時に余剰電力を周辺のビルに供給することは法律で禁止されているとのことだった。地域防災の観点から法律の見直しが必要ではないか。
非常用発電装置(これも巨大、横幅は8m、縦幅は2m、高さは5mくらいか。燃料はジェット燃料)