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「飯田橋グラン・ブルーム」(左)と「パークコート千代田富士見ザタワー」

 三井不動産は5月29日、「飯田橋グラン・ブルーム」&「パークコート千代田富士見ザタワー」の竣工披露内覧会を行なった。内覧会は3時間近くにわたるもので、ひと・もの・かねの動きを一挙に変える同社のすごさを見た。

 飯田橋駅から徒歩1分、区域面積約2.5ヘクタールのオフィス・商業、住宅、教会の複合再開発で、街全体の名称は「飯田橋サクラパーク」。まちづくりの検討が始まってからわずか13年で竣工を迎えた。

 オフィスワーカー約7,000人、505世帯の安心・安全、新たな賑わいの創出、環境負荷低減、地域との共生がテーマ。千代田区で初めて防災用飲料水供給設備を導入したほか、帰宅困難者の受け入れ、10種類の桜約40本の植樹などを施している。街全体の緑化率は約40%確保している。

 「飯田橋グラン・ブルーム」は、30階建て延べ床面積約12万㎡のオフィス・商業ビル。熱源トータル最適制御システム「E-SCAT(イースキャット)」を導入して、年間約40%の二酸化炭素の削減を図る。オフィスはほぼ満室稼動するという。1~3階の商業施設「飯田橋サクラテラス」は10月10日グランドオープンする。

 40階建ての住宅棟「パークコート千代田富士見ザタワー」は全505戸のうち425戸が億ション。坪単価は476万円。わずか10カ月で完売した。

 教会は、120年余の歴史を持つ日本基督教団に属する「富士見町教会」。偶像崇拝を排除するため屋内には1つも十字架を掲げていないのが特徴。戦中でも欠かさず礼拝を行ったという。1955年にヘレンケラー女史が来日した際の講演会場となった。

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「富士見町教会」(左)と「飯田橋グラン・ブルーム」

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遊歩道(江戸城と同じ工法を用いた石垣)

◇     ◆   ◇

 見学の途中、マンションのエントランスホール付近の壁に掛かっていた絵画が目に留まった。8号くらいの日本画だった。近くに寄って銘板を見た。「加山又造」とあった。「まさか」と思った。同社の担当者は「本物ではありません。レプリカです。それでも相当な額です」と話した。それにしても名画とは不思議なものだ。絵のほうから呼びかけてくる、どこかで見たような既視感がある。

 レプリカではあるが加山又造の絵画がさりげなく掲げられていることが、このマンションのレベルの高さを象徴している。グランドホールに掲げられていた刺繍絵画は縦数メートル、横3メートルくらいあるもので、担当者によれば価格は「外車1台分かそれ以上」とのことだった。

 旧江戸城や熊本城などの城壁修復などを手がけたという日日石材の石匠が担当した住宅棟の石垣には見とれてしまったし、いたるところに専門家によるオブジェ、絵画が配置されていた。共用施設には紫檀、チークなどの高級材がふんだんに使用されていた。内廊下は高級ホテルでもないようなふかふかのジュータン張り。1泊7,000円のゲストルームは、ホテルならルームチャージで十万円はしそうな豪華なものだった。

 ただ、個人的な好みからすれば、ハーシュ・ベドナー・アソシエイツ(HBA)が手がけた〝和〟のデザインには違和感を覚えた。とくに床などに用いられていた七宝文様は大柄すぎないか。和と洋の融合はしっくり溶け合っていないように感じた。その一方で、いろいろな壁にアクセントとして用いられていた桜の文様は美しいと思った。

  

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マンション外観(左)とグランドエントランス

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グランドホール

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ライブラリー(左)とパーティルーム

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加山又造の絵画レプリカ

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 マンション505戸の購入者の属性は不明だが、間違いなく富裕層が多数を占める。千代田区の納税義務者は約2.8万人。課税標準額が2,000万円以上の階層は港区に次ぐ多さで、比率にすれば4%くらいに達するはずだ。東京都全体では1%くらいだから、いかに港区や千代田区が突出しているかが分かる。

 今回のマンション購入者のうち課税標準額が2,000万円を超える人は少なく見積もっても300人いるはずだ。つまり、同区の高額納税者比率を1%引き上げる力を持つということだ。

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 開発スピードも刮目に値する。再開発計画がスタートしたのは2001年。旧東京警察病院の移転が決定したことが契機だった。その後、再開発組合が設立されたのが2010年。その翌年に着工。そして今年6月に竣工。この間、わずか13年しか経過していない。

 再開発は20年、30年の歳月が掛かるのか普通だ。三井不動産がどの段階から再開発計画に携わったか分からないが、地権者は同社や前田建設工業、教会など12名と少数だったからでもあるだろうが、このスピードは驚異的だ。2001年といえば、同社などが東京ミッドタウンの用地を取得した年だ。そして、その6年後には竣工した。この2つのプロジェクトもそうだし、「柏の葉キャンパスシティ」もつくばEXの開業から10年もたたないうちに完成形に近づきつつある。このスピードには感嘆の声を上げるしかない。

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教会のパイプオルガン

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ヘレンケラーが講演したという講演台

江戸の「粋」と「エスプリ」を融合 「パークコート千代田富士見ザ タワー」(2012/11/8)

カテゴリ: 2014年度

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中小ビルリノベーション事業第一号物件(神田岩本町)

三菱地所レジデンス 中小ビルリノベーション賃貸事業に進出

 三菱地所レジデンスは5月30日、中小ビルリノベーション事業に進出すると発表。同日、第一号物件の千代田区岩本町にある築40年の内覧会を行った。約15万円/坪(総額約1,500万円)の耐震補強・リノベーション費用で賃料は従前より50%アップでき、ほぼ満室稼働する。

 同事業は、築年数の経過などで競争力が低下し、継続的な運営が困難な中小事務所ビルを一括賃借、耐震補強工事を含むリノベーション工事を行い、バリューアップを通じて再生・転貸するもの。10年後にはオーナーに返還する。今後3年間で15棟、5年間で30棟の事業規模を目指している。千代田区神田小川町の第2号物件もリノベーションが完了し、順調にリーシングが進んでいるという。

 リノベーションにあたっては、同社の子会社メックecoライフとオープン・エー(東京R不動産)と企画・連携し、リノベーション物件のニーズを的確にとらえ、飲食・物販・住居・オフィスなどの多様な用途に改修する。

 環境負荷が大きいスクラップ&ビルドに頼らない既存ストックの有効活用につながり、資金面で改修できず競争力を失った中小ビルをバリューアップすることは、社会的意義も大きいとしている。

 内覧会で同社リノベーション事業部資産活用室資産活用グループ・明嵐(めあらし)二朗氏は、「当社の『大・丸・有』エリアとシナジー効果が期待できる神田エリアを中心に展開していく。神田は食・住・商が混在する一方で、後背地などは土地の細分化も進み、大型の再開発が困難な地域。これらを再生・支援する意義は大きい」と語った。

 第一号物件のビルは、築40年の敷地面積約73㎡、延床面積約387㎡の7階建ての物販・オフィスビル。1、2階に耐震補強を施したうえ、1戸については住居兼SOHOに改修した。改修費は約1,500万円(15万円/坪)。賃料は約1.2万円で、従前より50%増の設定。転貸するのは1~6階で、すでに1~5階は入居者が決まっているという。

 同社は、昨年10月、リノベーションマンション事業に進出。今年4月には体制を強化のため「リノベーション事業部」を新設。年間100戸、売上高30億円を目指している。

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住居兼SOHO

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 リノベーションについてはよく分からないが、古いビルやマンションの耐震改修は喫緊の課題だと思う。しかし、所有者の高齢化が進み、資金難から進まないのが現状だ。その費用を同社が負担するというのは、オーナーにとっても決断しやすいのではないか。

 今回のリノベーションビルは、耐震壁以外はそれほど設備仕様にはお金を掛けていないようだ。床はコンクリートのままで、天井高を2.5mから2.8mにして、配線などは天井にむき出しで設置するようだ。窓も単板ガラスのままだった。

 1戸だけ住居兼SOHOになっていたが、複数の住戸にコンバージョンするためには2方向に避難箇所を設置するよう求めている建築基準法がネックになったためだという。階段など1カ所しか避難箇所がない古いビルを住宅用にコンバージョンするのは難しいようだ。

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明嵐氏

カテゴリ: 2014年度

 

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新たに開設する「ヘーベルROOMS 新宿」

 旭化成不動産レジデンスは5月26日、旭化成ホームズの賃貸仲介ブランド「ヘーベルROOMS」の直営アンテナショップ「ヘーベルROOMS 新宿」を6月4日にオープンすると発表した。

 「ヘーベルROOMS」は、旭化成ホームズが供給する賃貸住宅「へーベルメゾン」など賃貸住宅の入居者募集強化と入居者サービスの向上を目指すもので、昨年1月に立ち上げた賃貸住宅入居者募集代理店ネットワークのブランド。

 今回、アンテナショップを開設するのは、直接入居者募集を行うことで入居希望者のニーズを直接把握するとともに、実際の募集活動を通じて独自のサービスやノウハウの開発をおこない、代理店ネットワークにその成果をフィードバックするため。

 ブランド力向上のため、昨年度に引き続き旭化成キャンペーンモデルの久慈暁子さんを採用したポスターなどで広告宣伝活動を行っていく。

 アンテナショップは、同社が管理する首都圏のヘーベルメゾン約4.8万戸(常時紹介できるのはうち約1,500戸)を紹介するほか、「プライベートブース」を設け、希望に応じて女性が対応する。定休日なし。仲介経験の豊富な「ニチワ」と店舗スペースをシェアする。店舗はJR新宿駅から徒歩2分、渋谷区代々木2-11-17 ラウンドクロス新宿9階。

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  同社の賃貸部門の業績はこのところ飛躍的に伸びている。管理戸数は2008年が約36,000戸だったのに対し2014年度は約64,000に達する見込みで、売上高は334億円が608億円に大幅に増加。空室率は4.0%から3.6%へと減少している。同社は2020年までに売上高1,000億円、管理戸数100,000戸を目指す。

 記者は賃貸住宅の管理についてはよく分からないが、同社の「へーベルメゾン」や旭化成不動産レジデンスの分譲マンション「アトラス」の賃貸に特化した管理事業では業界トップクラスのようだ。一般的な賃貸マンションやアパートなどと比べ耐震性や遮音性、その他の基本性能が高いからこそ空室率が3.6%という低い水準を維持できている要因だろうということは容易に想像できる。

 ただ、私見を言わせていただければ、大手流通業界もそうであるように、これからはグループの総合力が問われる時代だ。たんに賃貸だけでなく中古の売買から、個人住宅の受注、建て替え・リフォーム、不動産投資・資産管理などワンストップで消費者のニーズに応えていくことがグループ全体の業績アップにつながっていくと思う。「へーベル」は首都圏に限っていえば圧倒的なブランド力があるはずだ。

 発表会に臨んだ同社副社長賃貸営業本部長・池谷義明氏も「近い将来はワンストップで対応できるような店舗展開も考えたい」と話した。

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「19歳、大学2年です。1年間たくさんPRしていきますのでよろしくお願いいたします」久慈さん(青山学院の2年生。久慈さんの左右には池谷氏のほか同社の担当者も並んでいたので、撮ったのだがピンボケで使いものにならず。同社広報そのことをに話したら、痛いところをつかれた。「最初から撮るつもりなかったんでしょ」当たり!)

カテゴリ: 2014年度

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「わが家 千峰」

 ブルースタジオは5月23日、築85年の木造平屋をシェアハウスにリノベーションした「わが家 千峰」を関係者に公開した。同社が企画・設計したもので、延べ床面積は約108㎡、部屋数は6室。すでに3室に申し込みが入っているという。建築基準法がない時代の建物であることから、国土交通省が定めた「寄宿舎」には該当しない。

 物件は、西武新宿線野方駅から徒歩4分、中野区若宮1丁目に位置する木造平屋建て延べ床面積約108㎡。竣工は昭和4年(その後、増築あり)。浴室、シャワーブース、トイレ2カ所、キッチン、洗濯機付き。専用面積は約9~11㎡。月額賃料は6.5万~6.8万円。共益費は1.5万円。耐震補強など改修費は約15,000万円。

 「おばあちゃんやお母さんが大事にしてきた昭和の空気を残したい」というオーナーの希望から、当時の建物や建具を極力残して今回のシェアハウスになった。「千峰」という名称は、オーナーの亡くなったおばあちゃんの雅号。

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中庭から撮った居室(左)と共用部分の床の間付き和室

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大島氏

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 現在、国土交通省はシェアハウスの規制に乗り出しているが、今回のシェアハウスは「寄宿舎」ではない。同社専務取締役クリエイティブディレクター・大島芳彦氏は次のように話した。

 「区や消防とも協議したが、建基法がない時代の建物であることから、国交省が定めた『寄宿舎』には該当せず、建基法も遡及適用しないことになった」 

 記者は法律に疎いが、Wikipediaによると「実行時に合法であった行為を、事後に定めた法令によって遡って違法として処罰することを禁止する」という法律不遡及の原則が適用されたことのようだ。

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浴室(左)とキッチン

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 悲しい性か誇るべき習性か、分譲であろうと賃貸であろうと、建物を見ると記者は坪単価をはじいてしまう。

 古ぼけた民家を見て〝こんな家に誰が入るのか〟と不思議に思った。見学の際に手渡された資料を見てさらに驚いた。賃料は65,000円とあった。「えっ、10㎡で家賃65,000円? 坪いくらですか」とたまらず声を掛けていた。

 「シェアハウスは共用部分がありますから、坪単価では計れません」とピシャリと関係者からくぎを刺されてしまった。

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キッチンの隣にある冷蔵庫と水屋(高価そうな食器が入っていた。使用するのは自由だそうだ)

◇      ◆     ◇

 木造のシェアハウスを見学するのは20年ぶりくらいだ。最初に見学したのは、シェアハウスの走りのころで、木造民家に10人以上が住んでおり、まるで〝タコ部屋〟(記者が勝手に想像したもので、記者自身タコ部屋を見たことはない)だった。火災でも起きたら大変だと心配したが、家賃の安さから隠花植物のように世にはびこるのだろうと予感した。

 今回見学したシェアハウスはその時のものとは雲泥の差があるが、それでも理解の埒外の建物だ。大島氏が「ターゲットは30歳代。20歳代に味気ないひとり暮らしを経験している人、プラスの発想をする人。コミュニティ活動にも積極的にかかわろうという人だ。昭和の住宅を住こなしてやろうという気迫が必要。すき間風とか隣の声を気にするような人は住めない」と話した。

 なるほどそうだ。シェアハウスには共用施設の風呂もあった。レトロな檜風呂だった。風呂を使用するのは自由だが、使用後はしっかり掃除するのがルールだという。

 夏はいいが、真冬には小窓から寒風が吹きつけるはずだ。真っ裸で風呂洗いをする光景を思っただけで、記者などは震え上がった。風呂から上がり、掃除をして出ようと思ったら湯冷めしてまた入りたくなる-そんな風呂にだれが入るのか。見学に来ていた若い女性に聞いたら、「毎日入ろうとは思わない」と話した。最近の女性は毎日風呂に入らないのか、それとも銭湯に行くのか。野方に銭湯はあるのか。

 そんな建物に、見学者は同業や同社の関係者、オーナー中心に180人にものぼった。昨年の青木茂先生のリファイニング建築には300人集まった。いったい、いつから人はまた群れて住むようになったのか。薄い壁一つ隔てた6畳間に女性が住んでいて安眠などできるのか-こんなことを考えると、今晩は眠れないかもしれない。

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玄関(見学者はきちんと揃えていたが、昔見たシェアハウスは乱雑に脱いだままも少なくなかった)

カテゴリ: 2014年度

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「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト研究」施設(庇の下に「ライトシェルフ」がある)

 首都大学東京リーディングプロジェクト「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト研究」に基づいて建設された都の施設を見学した。

 同施設は、東京都と首都大学東京都市環境学部特任教授・山本康友氏らが中心になって4年間にわたり研究を続けてきたもので、IT技術を駆使し、太陽光発電、再生可能エネルギーの導入、地中熱利用ヒートポンプ、木材の利用、壁面緑化など現状で最高水準の省エネと省エネ仕様で整備したもの。

 都財務局建築保全部機械技術担当課長・中村圭一氏は、「この施設と同等規模のものと比べ半分以下のエネルギーで運営できるよう試算して建設された。環境配慮のためにコストをかけており、この施設のデータ結果を踏まえ、今後の施設に採用していく」と話している。今後、計測データを蓄積して検証する。

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「エコパティオ」(ツタが生長していないのが分かる)

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屋上の太陽光パネルと屋上緑化

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 この施設について山本教授が「最高レベルの環境配慮型ビルにした」と語ったよう、様々な最新技術が導入されている。まず、自然光採光・自然換気装置。自然光採光では、南側外壁に取り付けられた「ライトシェルフ」は太陽光を取り込み、反射させて室内の天井などを明るくする。

 自然換気システムは、最低と最高の温度を設定すれば、その温度内で窓が自動的に開閉し、外気と室内の空気や風の入れ替えを行い、快適な執務環境を保つものだ。強風時には、室内の書類などが飛散しないよう自動的に閉じられる。三協立山の製品だった。

 南側から取り入れた風は北側の窓から抜け、「エコパティオ」を通じて上空へ流れるようになっている。「エコパティオ」の壁面には緑化も施されている。地中熱利用は大きなスペースが必要でイニシャルコストが掛かることから期待はされているほど普及は進んでいないが、この施設では冷暖房費を大幅に削減できるとしている。

 屋上には太陽光発電施設や屋上緑化とともに保水性のタイルが採用されていた。建物の北側壁面には「エコウォール」が採用されており、車の排気ガスや騒音などの環境負荷を軽減する。1階の受付コーナーのカウンターには多摩産材のスギが使用されていた。

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自然換気装置の窓が開いている状態(左)とエコウォール(ここもイタビカズラがほとんど生長していない)

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 記者が感動した最高レベルの環境配慮型ビル「日土地虎ノ門ビル」との比較にはならないが、立派な施設だ。一つ注文がある。壁面緑化と外構だ。竣工したばかりなのでやむをえない部分もあるが、「ココパティオ」(中庭)」の壁面緑化用のアルミ柵は剥き出しで、カロラインジャスミンなどのつた植物は10センチほどもなく、壁を這い上がるどころか地を這っていた。中村氏は「計画ではもちろん4層まで届くことになっているが、コストもかかるのでどうしても外構にしわ寄せがくる」と申し訳なさそうに話した。外構の樹木も幼木が目立った。

 ビルもマンションも価値を大きく左右するのは緑だ。時間が経過すれば立派な樹木に育ち、壁面緑化も完成するのだろうが、都が誇る建物とは対照的な貧弱な緑が気になった。

 もうひとつ、これはどうでもいいことで尾篭な話で申し訳ないのだが、面白かったので紹介する。雨水利用のトイレだ。

 都心部のオフィスビルほど豪華ではなかったが、女性用トイレはしっかりと気配りされていた。便器は消音・擬音装置付きで、すがすがしいさわやかな軽井沢の小川のせせらぎのような水音がした。

 その一方で、男性用の小便器は小型で飛沫が四方八方へ飛散するのではと心配になった。大便器も女性用とは対照的に、糞尿はもちろんだが義憤やら憤怒やらの不条理を一挙に海に放出するかのような九頭竜川の激流の水音そのものに聞こえた。

 木村技研の「節水トイレ」が採用されており、同社のホームページには「画期的な商品」「トイレブース内に利用者が滞在する時間を対人センサーで計測し、滞在時間の長さに応じて大用・小用を判断します。それぞれに必要な水量を流し分けることで、ムダな洗浄水をカットすることができます」とある。

 しかし、ちょっと待ってほしい。いくら最近は草食系なり絶食系が増えているとはいえ、わざわざ小を足すために大のブースに入り、長く滞在する男性はいるのだろうか。時間センサーでなく臭いセンサーはできないのか。擬音装置は小川のせせらぎがいいのかよく分からないが、華厳の滝は逆効果か。

 施設は一般の方が見学に押し掛けられると業務に差し障りがでるのかオープンにされていないが、もちろん拒否ではない。壁面のツタが生い茂る数年後には素晴らしいビルになるはずだ。

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男性用トイレ

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外構

全てが腑に落ちる首都大学東京「リーディングプロジェクト最終成果報告会」(2014/3/19)

「日土地虎ノ門ビル」竣工 浮利を追わず、環境にかける矜持を見た(2013/12/18)

カテゴリ: 2014年度

今野投手あわやノーヒット・ノーランあと一人で交代

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山本監督を胴上げする旭化成ホームズナイン

  1 2 3 4   合 計
ケンコーポレーション  
旭化成ホームズ  

 

ケンコーポ 6度目の正直ならず 小笠原の力投報われず

 旭化成ホームズが2年ぶり12度目の総合優勝-第25回RBA野球大会総合優勝戦、ケンコーポレーション-旭化成ホームズが5月14日、東京ドームで行われ、旭化成が2-0でケンコーポを倒し2年ぶり12度目の優勝を飾った。木下が5回、1死満塁から決勝2点打を放った。今野投手は7回3分の2をノーヒット・ノーランに抑えたが、あと一人で降板。最後は期待の新戦力・篠永投手が三振に抑えた。これまで両チームの総合優勝戦は5度ありいずれも旭化成が勝利しているが、今回も旭化成が勝利し6連勝。山本監督は就任1年目で優勝監督に輝いた。

 ケンコーポ小笠原投手は力で強打の旭化成打線を抑えたが、5回は連続四球から失点したのが悔やまれる。打線も凡打の山を築いた。

 ケンコーポ小笠原、旭化成・今野の投手戦のまま0-0で迎えた5回裏、旭化成はこの回先頭の5番大久保と続く久保田が連続四球を選び、7番佐藤の犠打安打で無死満塁と攻め立て、8番津久井は浅い左翼飛で倒れた1死満塁から9番木下が前進守備の二遊間を抜ける安打を放ち2点をもぎ取った。放った安打はこの回の2安打を含め4安打のみだったが、ワンチャンスをものにした。

 今野投手は初回、2三振を奪うなど絶好の立ち上がりを見せると抜群のコントロールで相手打線を翻弄。3回と5回の味方の失策と8回の死球による走者を許したのみで7回3分の2を完璧に抑えた。球数は85球のみで、奪った三振は7個。あと一人で登板した篠永は最後の打者を三振に切って取った。

 ケンコーポは小笠原の力投に応えられず完敗。得点圏に走者を進めたのは2度のみで、今野-篠永にノーヒット・ノーランに抑えられた。

 小笠原投手は初回、変化球の制球に苦しみ先頭打者の北寒寺に四球を与えたが、後続を断ってから波に乗り、力勝負のストレートで4回まで1安打に抑えた。しかし、5回に与えた2四球が命取りになった。1点もやれない重圧がコントロールの乱れになったか。小笠原の球数は97球。

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旭化成ホームズ木下

○山本監督 言うことなし。多くの選手を出すことができた。あと一人の場面で篠永を投げさせるのは最初から決めていた

○今野投手 今日は調子がよかった。捕手のリードもよかった。ほとんど狙い通りに投げられた。9回完投するつもりで臨んだ

○篠永 今野さんには申し訳なかったが、おいしいところで出させてもらった。最後に投げさせると監督から指示は受けていました

○木下 みんなが作ってくれたチャンス。あそこで取れなければ流れ的にきつかったので、打ててよかった

○北寒寺 あれは僕のエラー(後述する2回の守りについて)

○大久保 僕の四球がきっかけで得点できた。小笠原さんが意識してくれたお陰(2年前、小笠原から特大の3塁打を放っている)

○平山 今野さん? 僕だったら打てる(2番手投手も出番なし。練習では鋭い変化球を投げていた)

●田辺監督 完敗。今野投手にやられましたね。守りはよかった。打てなさすぎ

●小笠原 今野さんの投球術を学ばないといけない

●小田 スライダー狙いでその通りの球だったが打ち損じ

●笠&奥さん あれは内野安打でしょ。北寒寺さんの守備が深かった(内野安打か失策か微妙な当たり)

●金子 バント失敗に併殺打。最悪。最初の打席は全部スライダー。今野さんは出し入れがうまい(巧打者も今野に脱帽)

●矢澤 ダメでしたね

笠の当たりは内野安打か失策か

 今野のノーヒット・ノーランを消した? 

山本監督采配は是か非か

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旭化成ホームズ勝利の瞬間(中央は今野投手)

 ヒットかエラーか、あと一人でノーヒット・ノーラン投手を降板させるのは是か非か、記者にとってこれほど悩ましい試合は過去に経験がない。

 まず、ヒットかエラーか。2回のケンコーポの攻撃。1死から7番笠が三遊間深い当たりのショートゴロ。ここで守備はプロ級の旭化成・北寒寺がファンブル、すばやく1塁に投げたが笠の足が速くセーフ。記者は失策と判断したが、RBAの並みの遊撃手なら間違いなく内野安打だろうとも思った。旭化成のベンチはエラー。ケンコーポは内野安打と記録した。

 そこで北寒寺のファンでもあり笠ファンでもある「俺がルールブック」の記者は、今野には申し訳ないが、この時点で内野安打と記録した。記者はまた今野ファンでもあるのだが、安打の1本や2本は許すだろうし、今野も許してくれるだろうと考えた。

 しかし、今野は絶好調。素晴らしいピッチングで7回まで全然安打を許さなかった。8回で試合終了と告げられたとき、今野がそのまま8回を抑えたら笠の安打を失策にしようと考えた。プロの公式記録員だってたまには記録を訂正する。今野は8回の先頭打者・大原に死球を与えた。次打者・金子は右翼前にポトリと落ちる安打に思えたが、大原は走れず2塁封殺。金子は右翼ゴロに。金子の代走・村上は盗塁に成功したが、続く笠は三振で2死。

 記者は、25年のRBA野球の歴史の中で初のノーヒット・ノーラン試合(完全試合は1試合ある)になるものと確信した。

 ところがだ。山本監督は何を思ったのか、今野を降板させたではないか。今野が怪我をしたわけではない。DHを解き、今野を1塁の守備に付かせた。記者は2007年の日本シリーズの第5戦、中日の山井投手があと1回で完全試合という場面で、落合監督が岩瀬投手に交代したのを思い出した。当時、プロの専門家の間でも賛否両論が飛び交った。非情采配だ、いや勝負にこだわるのなら当然だとかいう意見が相半ばした。

 まさか、山本監督はRBAでも物議を醸す演出をやろうとしたわけではないだろうが、この采配には唖然とした。最終回2死から大逆転の試合などいくらでもある。ここで一度も登板したことがない投手を送り出すなど常識では考えられない勝負に山本監督は出た。監督と選手間の信頼関係がなければできない決断だ。

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旭化成ホームズ応援席

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ケンコーポ応援席(なぜか、どこがいいのか、女性の矢澤ファンは20人くらいいた)

【お断り】 さすがに記者も歳。今日(15日)の仕事に支障をきたしそうですので、以後の記事は15~16日に配信します(5月15日3時) 

カテゴリ: 2013年度

 

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「ダイワユビキタス学術研究館」(東大春日門すぐ)

 大和ハウス工業と東京大学は5月14日、このほど完成した東京大学大学院情報学環「ダイワユビキタス学術研究館」を報道陣向けに公開した。

 同研究館は、大和ハウスが寄贈したもので、同大学大学院情報学環・坂村健教授が監修。世界最先端の技術を導入し、「情報」に関する諸領域を流動的に連携させる研究機関として利用される。

 デザイン・設備設計は同大学大学院工学系研究科・隈研吾教授が担当。構内通路側の外観には約15トンの不燃処理を施した杉板をウロコ状に張り巡らし、隣接する懐徳館庭園側の外壁には、わが国を代表する左官職人・挟土秀平氏による土壁を配し、日本庭園と建築との融合を図っているのが特徴。

 公開に先立って挨拶した同社代表取締役会長・樋口武男氏は、「創業者の石橋信夫が亡くなる1年前に『創業100周年までに10兆円企業にしてくれ。これか俺の夢だ』と聞かされた。その夢の実現のために邁進しているが、社会貢献も創立時の精神。石橋も草葉の陰で喜んでいるはず。今回の施設を世界に誇れる人材育成の場として役立てていただきたい」と語った。

 建物は地上3階地下2階建て延べ床面積約2,700㎡。構造はラーメン構造で、施工は大和ハウス工業。実物大の虚像展示を可能とする空間物アーカイブプレゼンテーションルームや126席の「ダイワハウス石橋信夫記念ホール」、カフェ「厨菓子くろぎ」も併設されている。

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挨拶する樋口氏(左)と隈氏

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テープカット(左から坂村氏、樋口氏、東大大学院情報学環・須藤修氏、隈氏)

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 完成予想図は見ていたが、やはり完成した建物に鳥肌が立つほど感動した。隈氏の〝特許〟と思われる格子は、最近作では「ザ・キャピトルホテル東急」や三井不動産レジデンシャルの「神楽坂」のマンションでも見ているが、今回もどうしてこんなことができるのかと唸ってしまった。

 隈氏は、「外観のテーマは、コンピュータ技術と建築デザイン、それと自然をどう融合させるかだ。一枚一枚、杉板の角度を変え、すき間もアトランダムに開けたが、これはコンピュータ技術が可能にしたもの。裏側の土壁は特殊な接着剤を用いて挟土さんが全部作った。懐徳館との融合を図った。庭を借景にしたカフェも設けた。デザインを工事に落すところが難しかった」と語った。杉板は多摩産材で、外壁に5500枚、軒天に2300枚それぞれ使用されている。

 表も美しいが裏もまた美しい。この日は懐徳館庭園も公開されたが、挟土氏の土壁は表の杉板とそん色なかった。

 こんなことを書くと、貧弱な想像力しか持ち合わせていないプロの建築家は「杉板が朽ちたらどうする」と批判するかもしれないが、隈氏は自らの作品を堅忍不抜、未来永劫にわたってそのままの姿にとどまっているのが美しいとは思っていないはずだ。学問も同様。30、40年後に中身も含めてリノベーションすればまた違った味わいのある建物になるのではないか。

 記者は、「我が国の耐火・防火基準は厳しすぎないか」と樋口氏と隈氏に質問した。「耐火基準は厳しいが、緩和の方向にある」(樋口氏)「林農水相(国交省ではない)も建築学会で木造建築物の普及に力を入れると力説された」(隈氏)とのことだった。もっと前向きな答えを期待していたのだが、〝燃えていいのか、死んでいいのか〟という反論に黙らざるを得ない記者の薄弱な論理ではこの問題には踏み込めないもどかしさを覚えた。

 隈氏ファンの富裕層には朗報だ。圧倒的な人気を呼んだ東建「Brillia Tower池袋」の次は東京ミッドタウンに隣接する三井不動産レジデンシャルのマンションだそうだ。どんな物件かは知らないが、最低でも坪単価は800万円、ひょっとすると1,000万円になるかもしれない。

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構内通路 反対側から撮る

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 カフェのコーヒーもおいしい。850円は高いが、それだけの価値はあるし、3~4杯分の量がある。店舗内のデザインは隈氏によるもので、サクラの突板が用いられていた。

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懐徳館庭園

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懐徳館庭園に面した挟土氏の土壁

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カフェ「厨菓子くろぎ」


究極の隈研吾マンション 豊島区庁舎と一体の「Brillia Tower池袋」(2013/3/19)

大和ハウス、東大に学術研究棟を寄贈 設計は隈研吾氏(2012/10/10)

「神楽坂『赤城の杜』プロジェクト」完成(2010/8/20)

カテゴリ: 2014年度

 国土交通省は5月12日、平成25年度の「建設工事受注動態統計調査」結果をまとめ発表した。受注高は75兆8,905億円で前年比10.1%増加した。このうち元請受注高は51兆8,107億円で同12.4%、下請受注高は24兆797億円で同5.5%それぞれ増加した。

 元請受注高のうち公共機関からの受注高は16兆5,762億円で同21.7%、民間などからの受注高は35兆2,345億円で同8.5%それぞれ増加した。業者所在別では東北6県が前年比31.2%増と全国平均を大きく上回っている。

 民間などからの受注工事のうち建築工事・建築設備工事の発注者別でもっとも多かったのはサービス業の2兆4,951億円(同69.4%増)で、不動産業がそれに次ぐ2兆3,437億円(同6.5%増)。

 同調査は、わが国の建設業者の建設工事受注動向及び公共機関・民間などからの毎月の受注額を発注者別、業種別、工事種類別、地域別に把握しているもので、建設業許可業者(約48万業者)の中から約12,000業者を対象にまとめている。

 

カテゴリ: 2014年度

 住友不動産「グローブアベニュー国立」が建物の高さ20mで7階建てであることを昨日書いた。その理由は同社が自主規制して高さを抑えたためだ。

 現地の用途地域は桜通りから20mまでは第一種住居地域(建ぺい率60%、容積率300%)、その他は第二種中高層住居専用地域(同60%、同200%)だ。斜線制限はあるが高さ制限はない。建てようと思えばもっと高いマンションも建築可能だ。

 ところが、同市が平成13年に定めた「国立市都市景観形成条例にかかる取扱基準」では、用途地域が商業地域と近隣商業地域の建築物については高さが31mを超えるもの、その他の地域は高さが20mを超えるものについては、学識経験者などで構成される国立市都市景観審議会へ諮問しなければならないことになっている。条例は、「文教都市くにたち」にふさわしく美しい都市景観を守り、育て、つくることが目的だ。

 つまり、高さ20mを超えてマンションを計画する場合は、景観審議会に諮問し、その答申が出る「半年から1年半ぐらい」(都市計画課)までは工事着手できないことになっている。同社は、この期間のリスクを避けるために自主的に高さを20mに抑えたわけだ。

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 これまでことあるごとに建築物の絶対高さ制限はやめるべきと書いてきた。今回も同様だ。国立市が高さを商業エリアで31m、その他の地域で20mにそれぞれ抑えるきっかけとなったのは明和地所の超高層マンション計画だった。

 当時、市は「大学通りのイチョウ並木に調和するよう」指導は行っていたが、高さそのものについての規制はなかった。そこで記者は、当時の上原公子市長にインタビューした際、「市長、イチョウ並木と調和する建築物とはいったいどの程度の高さですか」と聞いた。市長は一瞬考えた末、「イチョウやサクラは20mくらいですからその程度じゃないですか」と答えた。その後、この20mが独り歩きし、条例にも盛り込まれることとなった。この答弁を引き出してしまったことは今でも忸怩たる思いがする。返ってくる答えが分からない質問はしてはならないという禁を記者は犯してしまったのだ。

 いうまでもなく、美しい都市景観としての建物がイチョウやサクラ、ケヤキ、クスなどの街路樹と同じ高さでなければならない合理的な理由など一つもない。一方でスカイツリー、東京タワー、京都の五重塔を醜いという人はほとんどいないし、牛久や大船の大仏、あちこちにある山上の風力発電塔も異議を唱える人は少数派だ。いったいわれわれは何を根拠に美醜を分けるのか。ノミの夫婦はほほえましいのかそうでないのか。

 高さ規制を緩和すればマンションの居住性は高まるはずだ。そうすれば公開空地を広く取ることができるし、市民に開放もできる。もし日影規制をいうのであれば、自己日影や複合日影についても考えるべきだ。

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 「文教都市くにたち」は、住宅地としても人気が高い。記者も「大学通り」のイチョウ、サクラ並木は都内でも屈指の美しさだと思う。

 久々にこの「大学通り」を歩いておやっと思ったことがある。並木に沿って植えられているサツキ、ツツジの剪定が十分でなく伸び放題になっており、際も不揃いだった。緑地帯も雑草がかなり生えていた。市民の誇りである美しい並木が泣いていた。

 市にこのことを聞いたら、今年度から予算を計上して剪定していくとのことだった。いままで放置していたのは何だといいたい。国立市は多摩エリアでは武蔵野市に次いで1人当たりの市民税納税額が多い。樹木の剪定費など微々たるものではないのか。

 市政に呼応しているのかしていないのか、これまたよくわからないのが一橋大学のキャンパスだ。外周は剪定などやったことがないような、誰がどう見てもお化け屋敷だ。荒れるに任せている。東大だって樹齢100年もありそうなケヤキをぶった切っているように、たいしたことはやっていないが、同大学は東大の向こうを張って〝あるがまま〟が美しいとでも思っているのだろうか。環境とか景観とかにはまったく関心がないようだ。しっかり刈り込んでいる国立高校や桐朋学園とは対照的だ。

 ついでに調べたら、平成24年度の市税延滞金は平成15年と比べると約3倍の2,923万円に増加し、市税減免も1,071万円から2,770万円へ増えている。それでも市の担当者は「市税の収納率は多摩エリアトップ」と話した。〝ほっといてくれ〟-一部の富裕層とそれに同調する普通の住民のしわぶきが聞こえてくる不思議な街が国立だ。

住友不「国立」 気になる単価 野村不「立川」とも競合(2014/5/6)

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「おりひめトイレ」

 積水ハウスは5月1日、東日本大震災の教訓を生かし、女性や子どもも快適に利用できる仮設トイレ「おりひめトイレ」を仙台市と共同開発したと発表した。

 防犯ベルやベビーチェア、荷物置き場を設置したほか、ドアを開けたときトイレの中が丸見えにならないような角度にしているのが特徴。開発に当たっては、同社の女性社員や仙台市の女性デザイナーも参加した。広さは約1.85㎡、重さは約500㎏で、トラックに積載して運べるという。

 東日本大震災では、仮設トイレの利用を我慢したために健康被害が生じたことが報告されている。同社が社員やNPOと連携して独自に行ったアンケート調査では、仮設トイレは「汚い」「暗い」「怖い」「使いにくい」などの不満が多く寄せられたという。

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 さすが「なでしこ銘柄」に選定された会社だ。ニュースリリースに添付されている平面図はとても仮設トイレとは思えぬ〝豪華〟なものだ。ドアにはコートフックがあり、防犯ベルがあり、便器は洋式トイレで流水擬音装置付き。

 よくぞやったと拍手喝采を送りたい。というのも、記者も3.11のあと液状化被害を受けた千葉市美浜区を取材したとき、仮設トイレを利用はしなかったが体験しているからだ。

 公園に数個が並んで設置されていたが、見るからに急ごしらえの仮設トイレ然としており、これでは若い女性などは利用しづらいだろうと思った。トイレの中をのぞいてさらにびっくりした。

 便器は和式で、床面より膝頭くらいの高さに設置されていた。50cmくらいか。ステップがあればともかく、これでは小さい子どもやお年寄りは手すりがないと這い上がれないと思った。汚いのはもちろんだ。用を足す考えは吹っ飛んだ。新浦安では、若い女性などは寒い中、10分も20分もかけて駅まで歩いたという話を聞いた。

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 立派なトイレはもちろんいいのだが、トイレを我慢した結果、亡くなった人がいたと聞いて悲しくなった。生きるか死ぬかのときにトイレを我慢するなんて信じられない。我慢せずに人前だろうとなんだろうと堂々と用を足す勇気も必要だ。

 記者の小さいころ、男は当然、女性、といってもおばあちゃんたちだが堂々と立ちションをする姿はごくありふれた光景、日常茶飯だった。

 宮尾登美子さんは小説「櫂」でその様子を克明に描いている。朝日に小水が湯気を立て、キラキラと黄金色に光り、小さな弧を描いて大地を潤し、しぶきが着物の裾にかかる光景は美しいではないか。宮尾さんもきっと立ちションをしたのだろうと想像すると愉快だ。

 最近はないが、昔、郊外の新興団地を取材したときなどは喫茶店などまったくないから、藪の中で用を足したのは一度や二度ではない。

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