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 三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事の事業者4者は4月14日、東京都から4月6日付で受けた「神宮外苑地区におけるまちづくりに関する再要請」に答える形で「神宮外苑地区まちづくりを進める意義等について」を発表。都の指摘を真摯に受け止めており、新たな取り組みを今秋にスタートし、4月からプロジェクトサイトの構成や文章、デザインを刷新し、より見やすい内容にリニューアルしたと報告した。

 都は、令和4年5月26日付文書で「外苑の成り立ちを踏まえた幅広い都民参加や既存樹木の保全、わかりやすい情報発信などに取り組み、多くの都民の共感と参画を得ながらまちづくりを推進するよう」求めていたにも関わらず、4月6日付で「未だ具体的な取組内容や実施時期などが示されていない」と再要請していた。

◇               ◆     ◇

 今回、改めて都から都民の共感と参画を得るよう要請されたのを受け、報告では、「4列のいちょう並木が伐採される」「神宮外苑のみどりが減る」というのは誤解、憶測であり、4列のいちょう並木を保存し、みどりの量と樹木本数を増やすと強調。計画地のオープンスペースは現行約21%から再開発後は44%へ、緑の割合は25%から30%へ、樹木は1,904本から1,998本に増えるとしている。

 これは理解できる。4事業者のうち「経年優化」をスローガンに掲げる三井不動産は、同社の分譲住宅、オフィス・商業施設などの取材を通じて、他のデベロッパーに負けない充実した植栽を施しているのを知っている。今回の開発でもみどりをふんだんに採用するのは間違いない。

 しかし、今年2月17日付記事でも書いたが、問われるのは緑・樹木の質だ。計画では伐採樹木741本の具体的な樹種、樹齢などは記載されていない。

 この伐採樹木の明細をきちんと公開し、その是非を問うべきだ。例えば聖徳記念絵画館前の広場の再生。「広場の再生」とは、戦後、軟式野球場として利用されてきた約40,550㎡の敷地をテニス場・駐車場としてリノベーションすることだが、「再生」などといわれると、記者も20数年間RBA野球大会の取材で通った軟式野球場は老朽化し、樹勢も衰えているかのような印象を受ける。

 軟式野球場をテニス場にリノベーションするその是非はともかく、ここには樹齢100年くらいの立派なヒマラヤスギ、イチョウ、コブシ、ケヤキなどの巨木がグラウンドを囲むようにたくさん植わっている。この先100年も200年も生きるはずだ。

 計画では巨木はほとんど伐採されるようだが、巨木を避けてテニス場を整備することはできないのか。上位計画には「歴史的景観を将来に継承」とあるではないか。

 どうしても伐るのなら、参加者を募り伐採式を行い、伐り倒した樹木の墓碑銘くらいつくってほしい。〝ここに神宮外苑の樹齢100年の御神木眠る〟と。

 いま、千代田区の神田警察通りの街路樹である樹齢60年のイチョウ30本が「枯損木」として伐採されようとしている。神宮外苑と千代田区の街路樹問題の根は同じ-樹木をないがしろにするのは人間をそのように扱うのと一緒だ。

緑、樹木は増えるが問われるのは質 三井不動産など「神宮外苑」再開発 施行認可(2023/2/18)

これは事実か「枯損木記載は都の慣例に倣ったもの」千代田区の主張 住民訴訟(2023/1/17)

 

カテゴリ: 2023年度

 国土交通省は3月31日、令和5年2月の住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は64,426戸(前年同月比0.3%減)で先月の増加から再びの減少、利用関係別では、持家が18,368戸(同4.6%減)で15か月連続の減少、貸家が24,692戸(同4.7%増)で24か月連続の増加、分譲住宅が21,062戸(同1.8%減)で3か月ぶりの減少。分譲住宅の内訳はマンション9,750戸(同0.2%増)で3か月連続の増加、一戸建住宅は11,202戸(同3.3%減)で、4か月連続の減少。

 首都圏マンションは5,472戸(同1.9%減)で、都県別では東京都2,816戸(同11.6%減)、神奈川県1,218戸(同3.1%減)、埼玉県332戸(同37.2%増)、千葉県1,106戸(同23.7%増)。

 令和4年度では、総戸数787,135戸(前年同期比0.3%減)で、内訳は持家230,648戸(同11.6%減)、貸家314,842戸(5.5%増)、分譲住宅236,496戸(同5.0%増)。暦年と同様、分譲住宅が持家を16年ぶりに上回る可能性が高まった。

 

カテゴリ: 2022年度

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「新橋ぷらっとホーム」

 野村不動産は3月31日、事業協力者として参画している「新橋駅西口地区市街地再開発事業、以下本再開発事業」区域内の遊休地を活用し、街の賑わいづくりの拠点として、環境に配慮した木造の「新橋ぷらっとホーム」を建設したと発表。再開発事業後も見据えたエリアマネジメントによる、地域活性化の拠点として地域の情報発信やイベント等を開催していく。

 室内に木材を多用した1階には、カフェ・イベントスペースを設け、地域の情報発信や賑わいづくりのためのワークショップなど定期的なイベントを実施。2、3階には再開発準備組合事務所を設置する。

 建設に係るCO2排出量は約93トン、鉄骨造、RC造と比べそれぞれ約63トン、約17トン削減が見込まれ、構造躯体に使用する木材は32㎡、炭素固定量は49トン(CO2ベース)。建築地(94.10㎡)の約18倍の広さにスギを植林したときの炭素固定量に相当。使用した一部木材は解体後に本再開発事業における新設建物へ再利用する。

 物件は、JR・東京メトロ銀座線・都営浅草線新橋駅から徒歩3分、港区新橋3丁目の敷地面積94.04㎡、木造3階建て延床面積213.75㎡。1階カフェ・イベントスペース、2・3階事務所。設計・施工は住友林業、竣工は2022年12月。1階カフェ・イベントスペースは、営業時間:平日8:00~21:00、主なメニュー:ブレンド(400円)、シングルオリジン(550円)、レトロプリン(450円)。

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再開発計画エリア(新橋駅西口)

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再開発計画エリア(新橋駅西口)

カテゴリ: 2022年度

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「西参道公衆トイレ」

 日本財団「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの最後の17か所目、藤本壮介氏による「西参道公衆トイレ」を見学した。目がくらむほどの白に圧倒された。ヘンリー・ムーアクラスの芸術品かもしれない。これで17か所全て見学したことになる。

 場所は、京王新線初台駅から徒歩7分、渋谷区が首都高速から賃借している舗道上。広さは10坪くらいか。表も裏も床も壁も蛇口もブース内も全て真っ白。見学したときは昼時で、真上から太陽に照らされていたためか影もなく、床と壁の境目も分からず、目がくらんだ。カメラもどこに焦点を当てていいか戸惑ったようで、みんなピント外れ。

 白といえば、槇文彦氏の「恵比寿東公園トイレ」もそうだが、こちらは陰翳もあるので周囲の景観に溶け込んでいる。藤本氏のトイレは、地面の黒のアスファルトや周辺の建物などと隔絶された空間に映った。主張しないようで、これほど存在感のある公共トイレは他にないのではないか。

 欲をいえば、藤本氏は世界一広いトイレも設計したというではないか。手洗いをもっと大きく深くして水も貯められるようにすれば、ウオータースライダーとして子どもにあそばせるのに最適だ。どこかでやったら名所になるはずだ。

 藤本氏は1971年、北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年藤本壮介建築設計事務所を設立。2014年フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞(ラルブル・ブラン)に続き、2015、2017、2018年にもヨーロッパ各国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。国内では2025年、日本国際博覧会の会場デザインプロデューサーに就任。千葉県市原市の小湊鐡道飯給(いたぶ)駅にある広さ約200㎡の公衆トイレが世界一広い屋外女性専用トイレとして、ギネスに認定されている。

 コンセプト 器・泉(うつわ・いずみ)公衆トイレは都市の中の水場、街の泉であるといえるのではないでしょうか。トイレを利用する人だけではなく、さまざまな目的を持った多様な人々に開かれた、公共の水場としての手洗い空間を提案します。それはみんなのための、ひとつの器(うつわ)です。中央が大きく凹んだこの形は、様々な高さの手洗い場をひとつの形に内包したもので、子供からお年寄りまでが、この器を囲んで手を洗い、水をくみ、会話をして、小さなコミュニティが生まれるきっかけとなるはずです。 水を囲んで人々が集う場所として、新しい公共空間のあり方を提案したいと思います。

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石積みの擁壁と銅屋根が印象的 マーク・ニューソン氏「裏参道公衆トイレ」(2023/3/31)

「幡ヶ谷」「笹塚」の強烈なメッセージ 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2023/3/29)

日本財団「THE TOKYO TOILET」13か所目 後智仁氏のトイレは植栽にも注目(2022/7/23)

日本初の手をつかわないトイレ「Hi Toilet」誕生 佐藤カズー氏デザイン 日本財団PJ(2021/8/12)

森に溶け込む淡い7色きのこ 伊東豊雄氏担当の日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/7/16)

誰もが使いやすいトイレ「LIXIL PARK」 フジテレビ広場で公開LIXIL 7/21~9/5(2021/7/20)

佐藤可士和氏担当の恵比寿駅西口は「白」の箱 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/7/15)

隈研吾氏の〝十八番〟外観は吉野杉のルーバー 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/6/25)

マスク越しに強烈な匂い 平塚駅前公衆トイレ 利用者はほとんど男性 トイレ考Ⅲ-3(2021/4/3)

富士を観ながら…日本トイレ協会「特別奨」受賞 「ダイヤゲート池袋」 トイレ考Ⅲ-2(2021/4/1)

多様化する利用目的 少ない車いす対応 マンホールトイレ 畢生のトイレ考Ⅲ-1(2021/3/31)

トイレ紙1日使用量 男性3.5m 女性12.5m 年間排泄量15t 畢生のトイレ考Ⅱ(2021/3/30)

櫂 糞尿譚 陰翳礼讃 水琴窟 シカの糞…虚々実々 記者畢生のトイレ考(第1回)(2021/3/29)

安否確認イベントに過去最多65%参加 三菱地所レジ・コミュニティ 津田沼「奏の杜」(2021/3/14)

「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団PJ(2020/9/15)

素晴らしい槇文彦氏、田村奈穂氏、片山正通氏 日本財団 渋谷公園トイレPJ(2020/9/21)

〝駅なのか街なのか〟JR東日本最大規模の「グランスタ東京」8/3開業 トイレに注目!(2020/7/30)

マンション・戸建て トイレはTOTO、LIXIL、パナソニックがデッドヒート(2020/3/24)

デベロッパーも取り組んでほしい 「TOTO商品はすべてがユニバーサルデザイン」(2020/2/3)

女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート(2017/1/21)

労働環境改善活動にエール 全国低住協「じゅうたく小町部会」に参加して(2016/11/26)

「トイレは経営の問題」哲学の一端を垣間見た「ラスカ平塚」 トイレ考Ⅲ-4(2021/4/19)

「使われ活きる公園」 逆読みは〝使われず危機に瀕する公園〟 国交省「公園検討会」(2022/11/1)

 

カテゴリ: 2022年度

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「裏参道公衆トイレ」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団、クレジットなしは記者撮影)

 前回、全17か所の日本財団の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトのうち、田村奈穂氏の「東三丁目公衆トイレ」と、小林純子氏「笹塚緑道公衆トイレ」は立地条件にハンディがあると書いたが、もう一つあった。マーク・ニューソン氏の「裏参道公衆トイレ」だ。

 場所は、JR代々木駅からと徒歩11分、首都高速4号線の高架下。広さは10坪あるかどうかだ。「裏参道」の名前の通り人通りも少ない傾斜地で、誰が利用するのだろうと考え込んでしまった。

 しかし、その傾斜地を利用した石積みの擁壁、銅製の四角い屋根に郷愁を誘われ、いとおしくなった。

 同財団の資料によると、ニューソン氏はオーストラリアのシドニーで生まれ、1986年にシドニー大学を卒業。同世代で最も影響力のあるデザイナーのひとりと評されており、クライアントにはLouis Vuitton、Montblanc、Hermès、Nike、Dom Pérignon、Jaeger-LeCoultre、Ferrariなどとある。

コメント 私にとって、このトイレは内からも外からも信頼でき、誠実さが感じられるデザインであることが重要です。明るい内装は、私の好きな色であるグリーンの単色でシームレスかつ衛生的に仕上げられています。このトイレのデザインでは機能性、シンプルさ、そして心地よく永続的な空間であることに重点を置いています。渋谷にたくさん存在する隠れた名所のように、このトイレが魅力的でとても便利な存在になることを願っています。

コンセプト 私のデザインは、銅製の「蓑甲(みのこ)屋根」をはじめとする日本の伝統的な建築の引用が中心となっています。トイレが賑やかで超近代的な場所にあっても、神社仏閣や茶室、農村部などによく見られるこの屋根の形が、潜在的に心地よさや安らぎを感じさせるものにしたいと思いました。銅のピラミッド型屋根の緑青は、時とともにこの建築物を街に溶け込ませ、東京を織りなす構造の一部となることでしょう。

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「裏参道公衆トイレ」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団)

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「幡ヶ谷」「笹塚」の強烈なメッセージ 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2023/3/29)

日本財団「THE TOKYO TOILET」13か所目 後智仁氏のトイレは植栽にも注目(2022/7/23)

日本初の手をつかわないトイレ「Hi Toilet」誕生 佐藤カズー氏デザイン 日本財団PJ(2021/8/12)

森に溶け込む淡い7色きのこ 伊東豊雄氏担当の日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/7/16)

誰もが使いやすいトイレ「LIXIL PARK」 フジテレビ広場で公開LIXIL 7/21~9/5(2021/7/20)

佐藤可士和氏担当の恵比寿駅西口は「白」の箱 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/7/15)

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マスク越しに強烈な匂い 平塚駅前公衆トイレ 利用者はほとんど男性 トイレ考Ⅲ-3(2021/4/3)

富士を観ながら…日本トイレ協会「特別奨」受賞 「ダイヤゲート池袋」 トイレ考Ⅲ-2(2021/4/1)

多様化する利用目的 少ない車いす対応 マンホールトイレ 畢生のトイレ考Ⅲ-1(2021/3/31)

トイレ紙1日使用量 男性3.5m 女性12.5m 年間排泄量15t 畢生のトイレ考Ⅱ(2021/3/30)

櫂 糞尿譚 陰翳礼讃 水琴窟 シカの糞…虚々実々 記者畢生のトイレ考(第1回)(2021/3/29)

安否確認イベントに過去最多65%参加 三菱地所レジ・コミュニティ 津田沼「奏の杜」(2021/3/14)

「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団PJ(2020/9/15)

素晴らしい槇文彦氏、田村奈穂氏、片山正通氏 日本財団 渋谷公園トイレPJ(2020/9/21)

〝駅なのか街なのか〟JR東日本最大規模の「グランスタ東京」8/3開業 トイレに注目!(2020/7/30)

マンション・戸建て トイレはTOTO、LIXIL、パナソニックがデッドヒート(2020/3/24)

デベロッパーも取り組んでほしい 「TOTO商品はすべてがユニバーサルデザイン」(2020/2/3)

女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート(2017/1/21)

労働環境改善活動にエール 全国低住協「じゅうたく小町部会」に参加して(2016/11/26)

「トイレは経営の問題」哲学の一端を垣間見た「ラスカ平塚」 トイレ考Ⅲ-4(2021/4/19)

「使われ活きる公園」 逆読みは〝使われず危機に瀕する公園〟 国交省「公園検討会」(2022/11/1)



 

 

 

 

 


 

 

カテゴリ: 2022年度

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千代田区都市計画審議会(千代田区庁舎で)

 東京都千代田区は3月30日、都市計画審議会を開催し、二番町地区地区計画の変更について審議し、予定の2時間を30分以上オーバーしても意見はまとまらず、岸井隆幸・審議会会長(計量計画研究所代表理事)の「採決を取るか取らないかを採決しましょう」という発意によって採決した結果、議決に加わらない岸井氏を除く出席16名(定員20名、欠席1名、行政機関の麹町警察署長、麹町消防署長は棄権)のうち「採決すべき」6名、「採決すべきでない」10名となり、結論は先送りとなった。

 この結果、都市計画法第19条が定める「市町村は、市町村都市計画審議会(略)の議を経て、都市計画を決定するものとする」ことは持ち越しとなった。今後のスケジュールは未定。

◇      ◆     ◇

 こういうのを大岡裁きというのか。都計審の終了予定時間より30分以上経過したあたりだった。「徹底して論議すべき」「採決していただきたい」という声を受け、(それまでほとんど意見を言わなかったはずの)岸井氏は「採決すべきか、すべきでないかを採決してはどうでしょうか」という旨の声を発した。

 この意図を各委員は理解したのかそうでないのか(小生は高校のとき、このような採決の仕方を経験しているが)、しばし沈黙のあと、岸井氏の提案を受け入れ採決となった。

 結果は上段に書いた通りだ。誰が採決に賛成したか反対したか、その数は問題ではない。都計審の審議が民主的に行われているかどうかが問われている。その意味で、区の都計審はきちんと機能していると思った。(前回の都計審では「公聴会など開く意味がない」と民主主義を否定した委員もいたので心配していたのだが)

◇      ◆     ◇

 区は審議の冒頭、区の地区計画変更案の実現手法・提案の妥当性について29ページにわたる資料を提出し、約20分にわたって説明した。総合設計制度を適用した場合の容積率約540%と、区の計画案である容積率約700%を採用した場合、どれほどの差異(主に経済的効果)があるかを示したものだった。

 例えば、広場の整備。現状2,000㎡の広場を総合設計の場合は900㎡、計画案では2,500㎡とし、現状、総合設計制度ともゼロの緑地を計画案通り整備すれば約150㎡確保できるとして運用基準に基づく評価容積として約95%の効果があるとしている。このほか、同様の手法を用いて駅前プラザは約34%、地域交通広場は約27%、歩道上空地は約64%、地下鉄通路拡幅は約695…などだ。トータルで約778%の効果があるとしている。

 記者は一通り読んで、これは却って墓穴を掘るのではないかと思った。資料は、日テレの提案をそのまま区の提案として発表したに過ぎず、その妥当性について科学的な検証を経ていないと判断したからだ。ある委員も「日テレの案をA案、区の案をB案とすれば、両方とも同じ。裁判になったら支えきれない」と語った。

 容積率を総合設計の容積率540%から計画案の700%(約30%)にしたら、建設コストもその分かかるが、建物の経済的価値が高まることなど素人でも分かる。その価値を積み上げたら総合設計よりはるかに価値が高まるのは当然だ。

 問題なのは比較した総合設計(案)は、わざわざ( )付きにしているように、地域交通広場、駅前プラザ、緑地、地下通路の整備などを考慮していないことだ。総合設計制度を用いてこれらを整備することは不可能なのか示すべきだ。

 まだある。区はエリアマネジメント拠点施設の評価を1%としているが、どうして約250㎡(坪1,000万円として約7.6億円)もある施設の効果は1%なのか。エリアマネジメント関係者が知ったら激怒するはずだ。 

 そして、決定的に問題なのは、地区計画変更案によって建物の高さが「-30m高くなる」と赤字で示しながら、「圧迫感の低減等景観配慮」として「具体的設計を進める中で高さ抑制、デザイン的配慮」と記載しているのみだ。これは意味不明。そのマイナスの価値を測っていないのはなぜか。経済的価値と社会的価値を両立させようという視点が欠落している。

 地区計画変更に反対している区民のその最大の理由は高さ規制緩和だ。60mを90mにしても問題がないことを区は示すべきだ。(小生が区の担当者ならスカイツリー、東京タワー、富士山、牛久大仏、ゴジラ、ウルトラマン…を引き合いにして反対者を黙らせる…これらは「故郷」と一緒。遠くから眺めるから美しいのだが…)

 また、委員の中には、景観か(反対派)V.S.バリアフリーか(賛成派)の二項対立の構図を描こうとしているが、そうではない。双方とも大切なことだ。今回の問題は、区は上位計画である都市マスタープランを無視し、みんなで決めた地区計画の構成員であり、その代表者でもある日テレが札束で頬を張るような挙に出たことにある。区の公平性、企業市民の倫理が問われているのである。 

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傍聴席

番町地区計画 町会のガバナンス問う画期的な訴訟 山梨学院大・日高昭夫特任教授(2023/3/24)

全国初 町会の民主的運営を問う裁判提起 二番町(日テレ通り)再開発の是非(2023/3/16)

異常事態に発展 二番町と外神田再開発、街路樹伐採 反対する区民ら共同声明(2023/3/14)

都市マス、地区計画に背馳していいのか 問われる公平性と企業倫理(2023/2/27)

「地区計画変更には大きな疑義」東洋大・大澤准教授 日テレ本社跡地再開発(2023/2/23)

「約束を反故。許せない」住民怒る 健全木のイチョウ 新たに4本伐採 千代田区(2023/2/7)

 


 

 

カテゴリ: 2022年度

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「幡ケ谷公衆トイレ」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団、クレジットなしは記者撮影)

 全17か所の日本財団の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトのうち「幡ケ谷公衆トイレ」と「笹塚緑道公衆トイレ」を3月28日見学した。今回もまた建築家・デザイナーの意図を探ろうと矯めつ眇めつしたのだが、結局はよく分からなかった。

 プロジェクトは、暗い、汚い、臭い、怖いなどのイメージが強い公共トイレを、誰もが快適に利用できるものにしようというと同財団が企画、世界で活躍する建築家・デザイナー16氏がデザインを担当、渋谷区内の17か所に約17億円の費用を掛けて公共トイレを整備、整備後は財団が一定期間運営に関わり、その後区に寄付するもの。2020年から開始され、2023年3月で全てが完成した。トイレの設計施工は大和ハウス工業、設置機器・レイアウトはTOTOが担当している。

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「幡ケ谷公衆トイレ」

◇        ◆     ◇

 まず、マイルス・ペニントン(Miles Pennington)&東京大学DLX デザインラボの「幡ケ谷公衆トイレ」。場所は京王線笹塚駅から徒歩13分、中野通りと水道道路が交差している四叉路の角地。

 現地を見学して考え込んでしまった。四角い建屋はトイレには全く見えない。ピクトサインがなければガレージそのものだ。同財団の資料で、その企画意図を理解することができた。次のようにある。

 コンセプト...With Toilet 公共トイレが地域コミュニティの中心であろうとしたことが今まであったでしょうか。しばしば公共トイレは使われなくなり、地域にとっての価値を失い、次第に忘れさられてしまいます。そうさせないために私たちは「...With Toilet」をつくりました。公共トイレに別の機能をもつ空間を組み合わせた建築で、その第二の空間は、年齢や性別にかかわらず全ての人達がさまざまな用途に活用できます。展示スペース、ポップアップストア、情報センター、待合所など、地域コミュニティの中心として役立てられることを期待しています。

 コメント 私たちDLXデザインラボの理念は「協同」「共有」「探索」です。ですから、この素晴らしいプロジェクトに参加する機会をいただいたとき、学生たちがデザイナーや建築家や専門家と協同して、地域のコンテクストに基づいたアイデアを探索し、公衆トイレのあり方を考え直す、この上ないチャンスだと思ったのです。ここはコミュニティスペースです。トイレはたまたまそれに付属しているにすぎません。地域ギャラリーとして、集会所として、あるいは他の用途として、笹塚・幡ヶ谷の人たちに使い倒していただきたいです。

 なるほど。コンセプト、コメントは素晴らしい。今回の17のトイレの中でもっとも意欲的な作品かもしれない。問題は担い手、誰が魂を吹き込むかだ。区には期待しないほうがいい。

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「笹塚緑道公衆トイレ」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団)

 次に、設計事務所ゴンドラ所長・日本トイレ協会会長でもある小林純子氏が担当した「笹塚緑道公衆トイレ」について。

 場所は京王線笹塚駅から徒歩1~2分の高架下。これまたうなってしまった。正面に錆びた煙筒が3本並んでいる光景は、まるで廃墟の街の遺物だ。あちこちに穿たれた小さな窓にはウサギの絵、その建屋の上には赤い太陽でも青白い月でもない黄色い楕円形の大庇…。裏に回ると、四角い橋脚にその部分だけえぐり取られている。

 しばし考えた。同じような〝劣悪〟な立地条件のトイレはもう一つある。田村氏が担当したトイレだ。そこは線路の壁と、左右の非常倉庫と電車の電源分配ボックス、交通量の多い車道に挟まれた、三角形の「隙間」だった。ほかはみんな公園内か人通りの多い歩道に面している。

 なぜ女性二人だけかと考えないわけではないが、だからこそなのか、双方ともハンディを跳ね返す力があるという結論に達した。

 以下のコンセプト、コメントを読むと、その熱意が伝わってくる。

 コンセプト まちあかりのトイレ 高さの異なる円筒形のトイレに、黄色い楕円形の大庇を浮かし、外壁についた丸窓からはうさぎがのぞいています。敷地の特殊事情から軽量化が求められ、耐候性鋼板パネル構造にし、また、京王線高架下の閉鎖感をなくそうと大庇を浮かせて第2の空を造りました。耐候性鋼板パネルは、鉄板を一旦錆びさせているためいつまでも強度と風合いが保てます。まちの頑固おやじのように、存在感がありまちの人々を明るく見守ってくれると同時に、楽しさも感じるトイレにしたいと思いました。開口部は広くとり、重厚ながらオープンで、中は明るく清潔感あふれ、安全性も感じるトイレにしました。
 コメント 今回のTHE TOKYO TOILETのプロジェクトに参加した理由は、今回の企画が過去ずっと抱いていた課題に対する解決への挑戦があり、社会的にも大きな意味を持つと考えたからです。我が国での初めての公共トイレは1879年横浜で現れた洋風な公衆トイレでした。その時は世の人を驚かせたようでしたが、それから約140年余を経て、公衆トイレの今は、利用者の無自覚ないたずらや汚損、それに追随しない(対応できない=記者注)メンテナンスの脆弱さの中で、4K(臭い、暗い、怖い、汚い)の代名詞になっています。女性にヒアリングすると、近寄りたくないとさえ言われるくらいです。私どもはこの37年間、250か所以上の公共のトイレの設計に携わってきましたが、公衆トイレは一番難しく、かつ意味のあるトイレではないかと考えています。今プロジェクトは、「公衆トイレは、市民みんなの財産であること」をもう1度考え直すきっかけを造ろうとされています。こんな企画はわが国でも初めてです。これを機に様々な公衆トイレの議論ができることを期待します。

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「笹塚緑道公衆トイレ」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団)

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「笹塚緑道公衆トイレ」(撮影:永禮賢氏、提供:日本財団)

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 全17か所のうち15か所を見学して、課題も見つかった。それぞれのトイレには建築家・デザイナーの強烈なメッセージが込められている。

 利用していないときは外から丸見え、利用中は中からは見えるが外からは覗かれないという意表をついた坂茂氏のシースルー「代々木深町小公園トイレ」「はるのおがわコミュニティパークトイレ」は話題になった。えも言われぬ白の波打つ外観が美しい槇文彦氏の「恵比寿東公園トイレ」に記者は惚れ込んだ。安藤忠雄氏の「神宮通公園トイレ」は対照的で、威厳に満ちた黒光りするお堂に見える。隈研吾氏の「鍋島松濤公園トイレ」は〝負ける建築〟そのもの、時を経るごとに周囲の景観にすんなりと馴染むのではないか。

 このほか、コンクリに木調デザインを施した片山正通氏の「恵比寿公園トイレ」、鮮やかな赤に圧倒された田村奈穂氏の「東三丁目公衆トイレ」、ピクトサインも控えめで全然トイレに見えない佐藤可士和氏の「恵比寿駅西口公衆トイレ」、童話・近未来の世界を描いているような伊東豊雄氏の「代々木八幡公衆トイレ」、NIGO®「神宮前公衆トイレ」、佐藤カズー氏の「七号通り公園トイレ」、公園トイレはかくあるべしという見本のような坂倉竹之助氏の「西原一丁目公園トイレ」、周りの植栽計画も見事な後智仁氏の「広尾東公園トイレ」などみんな素晴らしいものばかりだ。

 だが、しかし、〝誰も利用しない公園〟は渋谷区でも例外ではないはずで、「使われ活きる公園」にしないと、プロジェクトの目的は達成されないのではないか。

 そして何よりも、著名な建築家・デザイナーの〝作品〟であることを同財団も渋谷区も伝えていないことが気になる。小さな銘板はあるのだが、探さないと分からない。

 今からでも遅くない。入口かブース内にプロジェクトの目的、担当した建築家・デザイナーのメッセージを掲出すべきだ。バーコードでもいい。そうすれば、みんなトイレをきれいに使うはずだ。

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「幡ケ谷公衆トイレ」

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「幡ケ谷公衆トイレ」

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「笹塚緑道公衆トイレ」

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「笹塚緑道公衆トイレ」

日本財団「THE TOKYO TOILET」13か所目 後智仁氏のトイレは植栽にも注目(2022/7/23)

日本初の手をつかわないトイレ「Hi Toilet」誕生 佐藤カズー氏デザイン 日本財団PJ(2021/8/12)

森に溶け込む淡い7色きのこ 伊東豊雄氏担当の日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/7/16)

誰もが使いやすいトイレ「LIXIL PARK」 フジテレビ広場で公開LIXIL 7/21~9/5(2021/7/20)

佐藤可士和氏担当の恵比寿駅西口は「白」の箱 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/7/15)

隈研吾氏の〝十八番〟外観は吉野杉のルーバー 日本財団「THE TOKYO TOILET」PJ(2021/6/25)

マスク越しに強烈な匂い 平塚駅前公衆トイレ 利用者はほとんど男性 トイレ考Ⅲ-3(2021/4/3)

富士を観ながら…日本トイレ協会「特別奨」受賞 「ダイヤゲート池袋」 トイレ考Ⅲ-2(2021/4/1)

多様化する利用目的 少ない車いす対応 マンホールトイレ 畢生のトイレ考Ⅲ-1(2021/3/31)

トイレ紙1日使用量 男性3.5m 女性12.5m 年間排泄量15t 畢生のトイレ考Ⅱ(2021/3/30)

櫂 糞尿譚 陰翳礼讃 水琴窟 シカの糞…虚々実々 記者畢生のトイレ考(第1回)(2021/3/29)

安否確認イベントに過去最多65%参加 三菱地所レジ・コミュニティ 津田沼「奏の杜」(2021/3/14)

「美しい公衆トイレ発信できた」安藤忠雄氏/世界からオファー 日本財団PJ(2020/9/15)

素晴らしい槇文彦氏、田村奈穂氏、片山正通氏 日本財団 渋谷公園トイレPJ(2020/9/21)

〝駅なのか街なのか〟JR東日本最大規模の「グランスタ東京」8/3開業 トイレに注目!(2020/7/30)

マンション・戸建て トイレはTOTO、LIXIL、パナソニックがデッドヒート(2020/3/24)

デベロッパーも取り組んでほしい 「TOTO商品はすべてがユニバーサルデザイン」(2020/2/3)

女性輝けないトイレ 「利用しない」公園90%、駅38%、職場30% 国交省アンケート(2017/1/21)

労働環境改善活動にエール 全国低住協「じゅうたく小町部会」に参加して(2016/11/26)

「トイレは経営の問題」哲学の一端を垣間見た「ラスカ平塚」 トイレ考Ⅲ-4(2021/4/19)

「使われ活きる公園」 逆読みは〝使われず危機に瀕する公園〟 国交省「公園検討会」(2022/11/1)

 

カテゴリ: 2022年度

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紅葉も許されず手足をもぎ取られたケヤキ(「BRIGE LIFE Platform南栗橋」の街路樹)

 プレハブ建築協会住宅部会は324日、リアル&オンラインの住宅部会活動報告会を開催し、飲食を伴う記者懇親会を4年ぶりに行った。

 2021年度のプラン推進委員会報告では、成果指標に掲げる12項目のうちオーナー満足度は72.7%(2025年度目標は75%)、戸建てZEH比率は66.9%(同80%)、新築戸建ての居住段階における1次エネルギー消費削減率は74.9%(同100%)、低層集合住宅ZEHM供給率は4.3%(同25%)、新築集合住宅の居住段階における1次エネルギー消費削減率は31.89%(同50%)、2013年度比の工場生産CO2排出量は51.3%減(同40%減)工場における再エネ電気の利用率は740.2%(同30%)などとなった。

        ◆     ◇

プレ協会員会社の戸建てのZHE化は着実に前進しているようだ。しかし、課題も多いことが分かる。

同協会のデータによると、2021年度のプレハブ住宅の総数は123,470戸で、全新設住宅着工戸数に占める割合は14.3%だ。一方で戸建て全体のZEH化は2割強であることを併せ考えると、市場の圧倒的多数を占める賃貸などの集合住宅、建売住宅などのZEH化は遅々として進んでいないことを浮き彫りにしている。国は、2030年までに建売戸建や集合住宅を含む新築住宅のZEHを実現することを目標に掲げているが、このままでは前途が危ぶまれる。

もう一つ、同協会や他の業界団体、デベロッパーに注文したいことがある。戸建て・集合住宅の緑化についてだ。

都市の緑化は、ヒートアイランド対策だけでなく良好な景観形成、健康寿命の増進、ストレス軽減、生物多様性空間の形成など都市環境の改善に大きな役割を果たしている。

世田谷区は平成22101日、都市緑地法に基づく緑化地域制度を導入し、同様の制度を定めている自治体はいくつかある。また、総合設計制度、地区計画などで植栽・緑化基準を定めている事例は少なくない。

しかし、いずれも規制は一定基準以上なので、一般的な住宅地の緑化は事業者、建築主の判断に任されているのが現状だ。欧米などでは費用対効果を定量的に計る指標が開発されているのに対して、わが国にはそのようなモノサシは定着していないのも都市での緑化が進まない要因の一つと思われる。

記者は、プレ協の活動報告会でも質問したのだが、トヨタホーム、東武鉄道、久喜市、イオン、早稲田大学の5者連携による先進的なスマートタウン「BRIGE LIFE Platform南栗橋」を見学した際、その目と鼻の先の信じられない光景に出合わせた。記事にも書いたので以下に紹介する。

「(BRIGE LIFE Platform南栗橋)のメインストリートの道路の街路樹は手足をもぎ取られ、葉っぱを付けることも紅葉することも許されず、墓標のような無残な姿をさらけ出していた。

さらにまた、現地手前の分譲戸建ての敷地はコンクリで固められ、樹木は1本も植えられておらず、緑といえば人工芝のみ。建物も出隅入隅などほとんどない総二階のデザイン性に乏しいものだった。畜舎だってもっとましではないかと思ったほどだ」

世界のトヨタとわが国を代表する鉄道会社、行政、大学が連携して素晴らしい街を整備している一方で、このようなことが平然として行われている-このあまりにも大きな落差をどう理解していいのか。分譲戸建てというのは、調整区域での開発であるため最低敷地面積は100坪と定められているのだが、緑化基準などはないのでこのような建売住宅が供給されているわけだ。このような事例は日常茶飯だ。

行政は、開発行為に関して最低敷地面積だけでなく緑化基準を定めるべきだし、ハスウメーカーもデベロッパーも自主的に緑化基準を設けるべきで、消費者もまた価格の安さに目を奪われず、物件の良否を見極める目を養わなければならない。

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敷地は100坪もあるのに地面はコンクリで固められている建売住宅

敷地100坪 建物30坪の平屋 ミラースHDの戸建て「南栗橋」企画ヒット(2022/11/13

ZEH供給比率70%達成へ プレハブ建築協会 住宅部会 2020年度活動報告(2021/3/23

カテゴリ: 2022年度

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伊勢神宮外宮(2016年写す)

 わが多摩センターからホテルが消え、四季折々の美しい草花をパルテノン大通りに咲かせてくれている恵泉女学院大学の閉学が決まったことにショックを受けているのに、今度はわが故郷・三重県伊勢市の住宅地の地価公示は10年前と比較して24.7%下落しており、人口10万人以上の全国259市の中で最大(ワースト)の下落率であることが分かった。Unbelievable!なぜだ!

 別表を見ていただきたい。 10万人以上地価公示変動率.)、変動率上位50市.)、 変動率ワースト50市)。人口10万人以上の全国市259(東京特別区は除く)のうち10年前の2013年比で住宅地の地価公示がプラスなのは156市で、下落しているのは100市(変動率ゼロは3市)。平均の変動率は9.9%上昇となっている。

 変動率トップは76.2%上昇の札幌市で、以下、大野城市、福岡市、江別市、仙台市、春日市、宜野湾市、筑紫野市、那覇市、浦添市がトップテン。ほぼ50%以上上昇している。

 大野城市、春日市、筑紫野市は福岡市に隣接しており、この4市と札幌市、そして3市の沖縄県がトップテンに入っているのは注目される。マンションの価格上昇も著しい。

 隈研吾氏が設計したことで話題になった札幌市の高級住宅街の低層マンション「プロスタイル札幌 宮の森」は坪単価700万円でも、首都圏中心の富裕層に人気と聞いている。札幌駅周辺の再開発マンションも坪単価は400万円を突破している。東京23区並みだ。

 福岡市の大和ハウス工業「プレミスト大濠二丁目」も坪単価520万円ながら残りはわずか。再開発が進んでいる「天神」エリアでは坪400万円くらいになっているという。

 早期完売したサンフロンティア不動産の分譲ホテル「HIYORIオーシャンリゾート沖縄」(203室)は坪単価350万円くらいだと思われる。

 このほか上昇が目立つのは仙台市、広島市、名古屋市、さいたま市などの中核都市のほか首都圏・首都圏近郊ではいわき市、木更津市、武蔵野市、つくば市、習志野市、浦安市、三鷹市、川口市などの上昇も目立っている。今年の変動率で上位を独占した東広島市は49番目(10年くらい前から上昇していたということか)。

 一方、24.7%下落の三重県伊勢市が変動率ワーストで、以下、桐生市、焼津市、足利市、栃木市、霧島市、那須塩原市、上越市、松阪市、尾道市がワースト10。三重県が2市、栃木県が3市入っている。

 このほか、県庁所在地では甲府市、水戸市、鳥取市、青森市、首都圏では横須賀市、秦野市、取手市、小田原市、野田市、平塚市など都心へのアクセスに難のある市がワースト50に入っている。

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伊勢神宮内宮(同)

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河崎町(同)

◇        ◆     ◇

 伊勢市と言えば、年間800万人以上が訪れ、毎年、総理大臣も正月にお参りする皇祖神の女神・天照大神(あまてらすおおみかみ)が鎮座する伊勢神宮があり、お伊勢さんマラソンとしても知られているので、数少ない全国区の市のはずだ。

 その伊勢市が、全国で259ある人口10万人以上の市の中で下落率が最大(ワースト)とはどういうことか。(全国唯一の再生再建団体である人口6,734人の北海道夕張市の下落率38.2%と比べれば上位だが)

 早速、伊勢市駅近くの不動産会社に電話で聞いた。予想したとはいえ、絶望的な返事が返ってきた。「地価公示はわれわれがはじいた数字ではありませんが、やむを得ないですね。市にはおかげ横丁しかありませんから。人口流出も松阪市や津市のほか、福祉サービスで勝る隣接の玉城町、明和町に移る人も少なくありません。全国区の大企業は1社(横浜ゴム)しかありませんし…。活性化? 難しいですね」

 市の公表データからも明るい展望は見えてこない。令和2年3月版の伊勢市人口ビジョンによると、2060年の将来人口は、平成25年基準推計によると約66,000人で、現在の約12.3万人からほぼ半減すると推測している。空き家総数は2013年の8,640戸から2018年の8,990戸に増加(現在は、住宅戸数のほぼ2割と記者はみている)。

 高校生・大学生に対するアンケート結果も深刻だ。高校生・大学生とも伊勢市への愛着は約7~8割と高いにも関わらず、「就職先が豊富である」と回答した高校生は2.3%、大学生は何と0.0%だ。

 市は不動産会社にもヒアリングを行っているが、これまた、手厳しい指摘がほとんどだ。「生産年齢人口の減少に伴って、住宅需要が減少しているように感じる。人口がより多い県内の他市に比べると、物件の見学客数そのものが少ない。事業用物件のニーズも少ない」「仕事を探す目的で伊勢に住むニーズはあるが、安定した仕事が見つかりにくいという理由で転出するケースも少なくないと感じる。定住人口の増加に向けては、雇用対策が急務である」「伊勢神宮中心の観光振興では定住人口を増やす効果には限界がある。神宮に頼ってばかりではなく新しい経済対策が必要で、若者やよそ者の発想を受け入れる体質づくりが必要である」

 就業構造にも問題があるようだ。もっとも就業者数の多い製造業では、市外に通勤している人のほうが、市外から通勤している人より多い。つまり、市内の製造業での働き口が少ないということだ。

 このような事情から、平成28年度の(雇用者報酬+財産所得+企業所得)÷人口=1人あたり市町民所得額は282.7万円で、三重県平均の315.5万円を下回っている。

 同ビジョンでは、「全国と比較した稼ぐ力(地域の特色)をみると、ゴム製品製造業や宗教、水運業…などは独自性が高い産業であり、市外からお金を稼ぐ産業として成長を支援するとともに地域外への移転を防ぐ必要性が高い」としている。

 市の最大の観光資源である伊勢神宮だが、その観光客の圧倒的多数は市内に宿泊せず、素通りして鳥羽・賢島方面に流れていることも見逃せない。市の観光統計によると、令和4年の宿泊客は72.2万人で、ここ数年間は漸増しているが、コロナ前の170~180万人の鳥羽市、約150万人の志摩市と比べると半分以下だ。

◇        ◆     ◇

 記者は三重県が誇れるものは伊勢神宮、赤福、的矢の牡蠣だと思っているのだが、もう一つ女性の美しさも追加したい。心が美しいという意味で、容姿とか外貌のことを言っているのではない。気候が温暖で、争いを好まず伊勢を中心に京都の文化を受け継いでいるからではないかというのがその理由だ。〝近江泥棒、伊勢乞食〟というのは県民性をよく表していると思う。

 記者だけでなく、三重県の女性がトップという調査結果があることを初めて知った。女性の体型を表す指標「PI(プロポーションインデックス)」をもとにダイアナが発表している「都道府県別・女性体型メリハリ度調査」だ。これによると三重県の女性は2016年と2017年でトップになっている(2020年は5位)。「健全な精神は健全な肉体に宿る」ということか。

 にもかかわらず、データは逆だ。先の市のビジョンによると、女性未婚者の20代以下の7割弱、30代の5割に結婚願望があると答えているが、未婚率は35.6%と県平均より高く、20代の約8割、30代の約3割が独身で、その主要因は「出会いがない」「理想の相手に出会えていない」とある…男性も頑張れ。

 長谷工不動産は、市内のかつての一等地・伊勢市駅前の「伊勢市駅前C地区第一種市街地再開発事業」(102戸)の権利変換計画認可を受けたと発表した。竣工予定は令和7年度。記者は坪単価150万円くらいに見ているが…。

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伊勢市民も食べないかいづ(記者は、味はともかくこれほど美しい夫婦和合の図はないと思う)

隈研吾氏が設計 坪700万円超でも好調スタート プロポライフ「札幌 宮の森」(2022/9/23)

坪単価520万円でも人気 最終分譲へ 大和ハウス「プレミスト大濠2丁目」(2022/11/1)

サンフロンティア ホテルコンド「沖縄」開業 販売も順調(2021/2/23)

国政の喫緊の課題――地方の再生 観光都市・伊勢の再生はあるか③(2008/1/17)

国政の喫緊の課題――地方の再生 観光都市・伊勢の再生はあるか②(2008/1/16)

国政の喫緊の課題――地方の再生 観光都市・伊勢の再生はあるか①(2008/1/15)

 

 

 

 


 

  10万人以上地価公示変動率 (回復済み).xlsx上位50市.pdf

カテゴリ: 2022年度

 わが国の町内会組織など自主団体研究の第一人者である山梨学院大学法学部特任教授・日高昭夫氏は、詳細な情報を持ち合わせていないと断ったうえで、千代田区番町の地区計画変更に関して次のようなコメントを寄せた。

◇        ◆     ◇

 ポイントは、①地区計画決定過程で必要な「地区住民等の意見」にいう「地区住民等」が町会長等の意見で代表できるのか②その町会長の意見がそもそも町会を代表する正当性を有しているのか、といった点かと理解しました。

 このうち、①については、かつて山梨県の旧明野村の産業廃棄物処理場建設問題で、区長(自治会長)の意見を地区住民の意見として建設を進めた山梨県の行政対応が、その後深刻な行政対住民の対立と住民間の分断を生み、長期にわたって混乱と大きな行政コストをもたらしたことを思い出しました。

 千代田区の場合も、地区計画の趣旨に沿って、丁寧な地区住民の意見を聞く最初の手続きを誤れば、同様の結末にならないか懸念されます。

 私個人の見解ですが、行政が地区住民の代表として町会長の意見を日常的に聞くなどの仕組みや慣例そのものは、一概に批判されるものではないと思っていますが、それはあくまで日常的あるいは(暗黙にであれ)広く合意されている事項に限定されると思います。非日常的で合意が形成されていない事項についてまで、町会長に白紙委任されていると考えるべきではないと考えます。

 そこで、②についてですが、地区住民間で十分な合意が形成されていない事案で、しかも地区計画の本質的変更につながるような重要事項について町会長が公式に対外的に意見を表明する場合には、少なくとも町会としての明確な合意形成が前提条件ではないかと思います。

 その意味で、町会のガバナンスを問う今回の訴訟は画期的で、大変興味深いものだと思います。

 ただ、訴状の詳細も分かりませんし、私的自治がどう評価されるか、町会規約がどのようになっているか、メンバーシップや総会の規定など細かい点は不明ですので、どのような展開になるかはなんともいえません。

全国初 町会の民主的運営を問う裁判提起 二番町(日テレ通り)再開発の是非(2023/3/16)

管理協 地域共生セミナー 「管理組合と自治会は車の両輪」(2011/9/20)

 

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