約2,300万kwh/年の発電量を確保するメガソーラー事業用地取得 三井不
三井不動産は3月8日、約2,300万kwh/年の発電量を確保するメガソーラー事業用地を取得したと発表した。
同事業は、北海道苫東地域や関東2県、山口県の計7か所で、いずれもメガワット級の大規模太陽光発電施設となる。遠隔地に太陽光発電設備を建設・運用し、送配電気事業者の送電網を利用し、首都圏や北海道地方、中国地方の同社保有物件に送電する。
同社は、2050年度のGHG排出量ネットゼロ達成を目指しており、2030年度までに約3.8億kwh/年(首都圏における自用電力相当)のメガソーラー開発を進めている。
六本木・日比谷・八重洲に続く4か所目の東京ミッドタウンは「日本橋」か
菰田社長(東京ミッドタウン八重洲で)
三井不動産は3月7日、「六本木」「日比谷」に続き3か所目の〝東京ミッドタウン〟となる「東京ミッドタウン八重洲」が3月10日にグランドオープンするのに先駆け社長記者会見・プレス内覧会を行った。メディアの取材申し込みは300名に達し、同社も含めたデベロッパーのコロナ以降では最多となった。
会見に臨んだ同社代表取締役社長・菰田正信氏は記者団の質問に対し、「2012年社長に就任したとき、8つのプロジェクトが進行中と話したが、『日比谷』に続き3つ目の『東京ミッドタウン八重洲』が完成し、しかもオフィスは満床稼働するのは、平板な言い方だが感無量」と語った。
また、次のミッドタウンについては、「地権者次第だが、4つ目、5つ目を進め、さらに進化させたい」と意欲を見せた。
日本橋・八重洲を中心とする東京に足りないもの・課題については「外国人の子供向けの教育と暮らしを支える医療、それとレジデンスは十分でない」と語った。
菰田氏はまた、日本橋・八重洲エリアを「東京のゲートウエイ」と話した。
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菰田社長が今後の日本橋・八重洲の開発について「レジデンスは十分でない」と語ったのは注目される。これまで、日本橋・八重洲の外周部の銀座、築地、茅場町、人形町などではマンションが供給されてきたが、日本橋・八重洲アドレスでは少なく、同社が2014年に建設した全54室の賃貸「パークアクシスプレミア日本橋室町」があるくらいだ。
また、三菱地所の大丸有エリアでもマンションはほとんどなく、4月1日付で三菱地所の社長に就任する取締役兼代表執行役執行役専務・中島篤氏は2月16日の会見で、大丸有エリアについて「グループの総力を結集してビジネスだけでなく居住、文化、エンターテイメントなどを取り込んで魅力ある空間にし、国際化にも寄与したと考えている」と語っており、これまでにない住宅開発を行うことを匂わせている。
この二人の発言からして、日本橋・八重洲、大丸有エリアに分譲・賃貸マンションが建設されるのは間違いなさそうだ。どちらが先にどこで供給するか。記者は分譲なら坪単価3,500~5,000万円、賃貸なら月額賃料200~300万円になるとみている。
菰田社長は4つ目、5つ目の〝東京ミッドタウン〟の開発に意欲を見せたことから、次の東京ミッドタウンは同社の発祥の地・日本橋になると記者は予想する。これはほぼ間違いないはずだ。
三井不動産 ビルも賃貸も億ション並み「和」盛り込んだ「日本橋再生」(2014/1/29)
東急不動産HD 「東急プラザ銀座」開業後7年で売却 特別損失211億円
東急不動産ホールディングスは3月3日、「東急プラザ銀座」(敷地面積2,072㎡、簿価118,598 百万円、坪18,889万円)を三井住友トラスト・パナソニックファイナンスに売却し、2023年3月期決算で特別損失として211億円を計上すると発表した。運営は継続する。
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「東急プラザ銀座」は、同社が旧東芝銀座ビルを2007年に取得し、2016年3月に開業。周辺には大丸、高島屋、三越、松屋、GINZA SIX(旧松屋)などの名だたるデパートが群雄割拠し、「東急プラザ」は駐車場が少ないことなどから苦戦が伝えられていた。記者は、開業時の記者見学会を含めて数えるほどしか訪れていないが、最高のデパートだと思っている。
今回の決定は、よく言われる選択と集中の経営判断か。ホテルと同様、所有と運営を分離するのは時代の流れなのか。
東急不 「東急プラザ銀座」3月31日開業 ターゲットは玄人の「大人」(2016/3/28)
子どもが勉強する空間は「子ども部屋」22% LDは77% 積水ハウス調査
積水ハウス3月3日、小学生の長子をもつ全国の20~60代の既婚男女を対象に「小学生の子どもとの暮らしに関する調査」をまとめ発表した。以下、主経ったものを紹介する。
①子どもが小学校に入学してからどのように生活時間が変化したかを聞いたところ、女性は起床時間、就寝時間、夕食開始時間の全ての項目で4割以上の人が変化。起床時間は「早くなった」と回答した人は46.1%、就寝時間は「早くなった」が20.8%、「遅くなった」が22.5%、夕食開始時間は「早くなった」が14.5%、「遅くなった」が26.8%。男性は、全ての項目において変化した人の割合が約2割
②平日の生活時間の変化では、フルタイム勤務とパート・アルバイト・内職勤務(以下、パートタイム勤務)や専業主婦/ 主夫で差が見られた。フルタイム勤務では、「家事を行う時間が増えた」人が29.8%、「子どもと一緒に過ごす時間が増えた」人が25.1%。約3人に1人は「自分の自由時間が減った」と回答。パートタイム勤務や専業主婦/ 主夫では、約半数の人が「子どもと一緒に過ごす時間が減った」と回答。また、パートタイム勤務や専業主婦/主夫で「家事を行う時間が増えた」は24.8%、「睡眠時間が減った」人がフルタイム勤務では18.5%、パートタイム勤務や専業主婦/主夫では30.6%
③「宿題や勉強を見るようになった」が54.0%、「学校からのプリント確認の時間が増えた」が45.6%、「習い事の送迎が増えた」が35.7%。家事関連では「洗濯物が増えた」人が44.0%。さらに「家にある”もの”が増えた」が46.5%、収納が足りなくなった」が28.3%
④子ども部屋の保有率は、小学校1-2年生男子では37.0%、女子は45.7%。小学校5-6年生では、男子は58.3%、女子は73.2%
⑤勉強する空間では、「子ども部屋」と回答した人は22.2%、76.5%の人は「リビング・ダイニング」と回答
⑥コロナ禍で広がった在宅勤務をリビング・ダイニングで行っている男性は44.8%、女性は81.8%と回答。同じ空間にいることで親子両方が安心感を得られている半面、デメリットとして「在宅勤務中に子どもが同じ空間にいると集中ができない」32.4%、「Web会議や電話会議などに子どもの声が入ってしまうことがある」23.5%などが挙がっている
⑧子ども部屋や子どもの空間に関する悩みでは、3人に2人以上が「ある」と回答。「”もの“が増えて収納が足りなくなった」39.1%、「子ども部屋を片付け・整理してくれない」が25.8%
これらの結果を踏まえ、同社執行役員住生活研究所・河﨑由美子氏は「調査では、子ども部屋を与えてもリビング・ダイニングで勉強したり遊んだりしている子どもが多いことがわかりました。親側にも「目が届くから安心」「宿題を見てあげられる」などのメリットがあります。リビング・ダイニング内に照明やテーブルの高さを工夫した勉強スペースや、居心地よく遊べるいどころをつくれるとよいですね。
でも、子どものころに初めて自分の部屋をもらったときの嬉しい気持ちを憶えていますか? リビングで過ごす時間が長くても、成長に合わせて子ども部屋も用意してあげたいものなのです。子ども部屋を用意したら、子どももインテリア・コーディネートに参加させてみませんか」とメッセージを寄せている。
また、住まいの入学準備の4つの「幸せTips」として①リビングに子どものいどころを②リビングに勉強スペースを確保③ランドセルの居場所をつくる④片づけ力UPにつながるインテリアを挙げている。
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小生も2人の子どもを育てた経験があるので、どれもがよく分かる。肝心なのは「哀」だ(どうしてわがパソコンはこんな字に変換するのか。恨みでもあるのか。もちろん「愛」)
自らの小学生時代を振り返ると、やはり囲炉裏の存在が大きい。おばあちゃんの膝の上に座り、毎日の新聞のニュース、昔話などを聞き、父親が火箸で灰に書く字の読み方、書き順、算数の計算の仕方を覚えた。消しては書けるのでノートはいらない。隣近所の人たちが集まる定期的な集まりで世の中の動きを教わった。成長してから分かったことだが、猥談などもみんな平気でしゃべっていた。とてつもなく大きい金持ちと貧乏人、都市と田舎の〝格差〟を学んだのもこのころだ。
子ども部屋は方丈の間(四畳半)で十分だと思う。減らした分を家族のスペースや夫婦の部屋にしたほうがいいとずっと考えているが、そんな提案を行うデベロッパーはほとんどいない。囲炉裏(風)の提案をかつて三井不動産レジデンシャルが「新浦安」のマンションで行ったのを覚えている。
宅配ドライバーの負担軽減へ Amazon&三井レジリース 「置き配」で協業
中村氏(左)とシング氏(日本橋高島屋三井ビルで)
Amazonと三井不動産レジデンシャルリース(三井レジリース)は3月2日、マンションの「置き配」促進の協業に関する発表会を行い、三井レジリースが運営管理する賃貸マンンションに対し、Amazonの「Key for Business」(KfB)を導入することで、オートロック付きマンションでの荷物の受け取りを便利にし、宅配ドライバーの再配達の負荷を軽減するとともに、CO2削減など社会課題の解決に貢献していくと発表した。
KfBは、オーナー、管理会社の許可を受け、マンションのドアを制御するシステムに専用機器を設置することで、ドライバーがオートロックを解除し入館し、指定された場所に商品を届けるようにしたもの。工事の所要時間は60分程度で済み、初期費用・月額利用料は無料。年間最大1,000円の電気代はオーナー、管理会社負担。
2021年3月に日本で初採用してから2023年2月末時点で19都道府県5,000棟以上のマンションに設置済み。今後2,500棟/年の設置目標を掲げている。
三井レジリースは、現在サブリースしている大半がオートロックシステム付きの賃貸マンション約7.6万戸に順次KfBを採用していく。当面は10棟約400戸に採用する。
記者発表会に臨んだAmazonロジスティクス事業本部本部長・Awanish Narain Singh(アヴァニシュ・ナライン・シング)氏は「KfBを導入したマンションでは80%以上の再配達削減を実現した。日本政府が掲げる再配達削減キャンペーンに貢献するとともに、物流業界の2024年問題解決にも寄与する。今回の協業は、宅配サービスのスタンダードとなる転機にしたい」と語った。
三井レジリース経営企画部長・中村誠氏は、「検証の結果、安全性を確保しながら多様な受け取り方を可能にする結果が得られた。利便性の向上はもちろんCO2の削減など社会課題の解決への一助としたい」と話した。
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置き配とは、受け取り側があらかじめ指定した場所、例えば玄関前・宅配BOX・メーターボックスなどに荷物を届けてもらうサービスだ。宅配サービスのあり方が社会問題化した2017年、大京がフルタイムシステムと共同開発した専用宅配ボックス「ライオンズマイボックス」のメディア向けお披露目内を開いたときは、業界紙だけでなく、一般紙やテレビ局など約40名の報道陣が集まった。
その後、各社が競うように宅配ボックスの設置を進め、国土交通省も宅配ボックスの容積不算入を決めた。三井不動産レジデンシャルは、スマートロックとセキュリティカメラを連携させた、不在時でも食品や日用品を玄関内に配達するサービス「ナカ配サービス」を2020年に開始している(初採用の「月島」マンションの取材を申し込んだが実現しなかった)。
最近はコンビニや駅に備えられている宅配ロッカーでも受け取れるようになっているようで、記事にするほどでもないと取材を見送ることに決めた。
しかし、時間もあるし、何といっても三井レジリースの協業先はGAFAの一角であるAmazonだ。世の中がひっくり返るような新サービスを開始するのではないかと、その取材機会を自ら捨てたら悔いが残ると、取材を申し込んだ。
発表会場の日本橋髙島屋三井ビルに集まったメディアは30媒体。記者と同じ考えの方が多いということか、それともさすがAmazonと言うべきか。三井不産レジの最高レベルのマンション見学会だってこれほど集まらない。
そのサービス内容は上段の通り。確かに利便性は飛躍的に高まり、宅配ドライバーの負担を軽減する効果は大きく、わが国の喫緊の課題でもある働き方改革、CO2削減の社会課題解決に貢献することなどは言うまでもないが、世の中がひっくり返るようなサービスでもないようだ。Amazonのこのシステムがスタンダードになったら、宅配業界はパニックに陥るだろうが…。
記者が疑問に感じたのは、大京の発表会から5年経過しているにも関わらず、再配達問題は全然進んでいないのかということだ。再配達をなくすには、送り手が送り先にいつ何時に届けますと連絡すれば解決できることであり、連絡先は固定電話でなく携帯、あるいはEメールにすれば再配達は劇的に減少するはずだ。それができないのが不思議だ。物流業界と同様、宅配サービス業界もアナログの世界なのか。汎用性のある開錠システムの開発はできないのかとも思った。
これは、読者の方もメディアの方もご存じないだろうから紹介する。同社はこの4月1日で創業37年を迎えると中村氏は話した。この種の記者発表会を行うのは創業来初めてで、Amazonと協業することは凄いことだと思うが、もう一つ、凄いことがある。
野球の話だ。同社はRBA野球大会(日曜ブロック)に平成18年の第18回大会から出場しており、途中1回不参加だったが、第29回大会までの通算成績は33試合9勝24敗、通算勝率.273。参加24チームのうち下から4番目。打てず守れず、まぐれで勝っても1シーズン2勝どまり。3勝すれば決勝トーナメント(ベスト10チームくらい)に進出できるのだが、一度も予選突破はできなかった。
ところが、平成の終わり、令和の幕開けの記念すべき第30回大会では、彗星のように現れた左腕・渡辺の投打にわたる活躍と、愛知県の名門・東邦高校出身のスラッガー山際、ザルというよりタガが外れた桶同然の野手に足を引っ張られても、エースとして孤軍奮〝投〟してきた佐藤投手らの奮起で、あれよあれよという間に勝ち進み、決勝戦でも渡辺-佐藤の継投で、三菱地所リアルエステートサービスに4-0と完封勝ち。初優勝を飾った。
三井グループでは優勝3回の三井不動産、1回の三井不動産レジデンシャルに次いで3チーム目の優勝チームとなった。三井不動産レジデンシャルサービスと三井不動産リアルティはそれぞれ準優勝1回。
RBA野球大会はコロナの影響で第31回大会から第33大会まで中止を余儀なくされている。渡辺、山際は健在か、佐藤はアメリカ勤務から戻ってきたのか。
同社野球部藤城監督のコメントを取ることができた。佐藤はAmazonとの交渉のため渡米したのではなく、今はアメリカから帰ってきて新宿本社で元気に勤務しているとのことだ。渡辺など他の選手も変わりはないということだった。ただ、コロナの影響で練習・トレーニングなどは各自任せとのことで、戦力が維持できているかどうかは不明。
「置き配」デモ
第30回RBA野球大会 日曜ブロック 三井レジリース初優勝 渡辺が投打に活躍(2019/4/28)
〝再配達ゼロ〟宅配ボックス発表会に記者殺到 大京・フルタイムシステムが新商品(2017/4/10)
みなかみ町でネイチャーポジティブの活動連携 三菱地所・自然保護協会・同町
左から中島氏、阿部氏、志村氏
三菱地所、群馬県みなかみ町、日本自然保護協会の3者は3月1日、2023年2月27日に10年間の連携協定を締結し、企業版ふるさと納税を活用した国内初の大規模なネイチャーポジティブを目指した新たな活動を群馬県みなかみ町で始動させると発表した。 三菱地所は、企業版ふるさと納税制度を活用し協定期間内に6億円の寄付を予定している。
①生物多様性が劣化した人工林を自然林へ転換する活動(約80ha)②里地里山の保全と再生活動③ニホンジカの低密度管理の実現を通じ、④Nbs(Nature-based Solutions)の実践を目指すとともに、⑤生物多様性保全や自然の有する多面的機能の定量的評価への挑戦と活用を行っていく。
各者のコメントは次の通り。
・みなかみ町長 阿部賢一氏 SDGs未来都市計画で中心的な取り組みとして「森林資源循環プロジェクト」を掲げ、主に自伐型林業という、採算性と環境保全を高い次元で両立する林業経営を推進しています。今回、目標に掲げている「人工林から天然林への転換」が、この森林資源循環プロジェクトの一段の推進に繋がると期待しております。水については、大水上山から最初の一滴が生み出される利根川が、首都圏3000万人の生活を支えています。近年、鹿による下草等の食害が、水源涵養に影響を及ぼす事例もあることから、町としても深刻な課題に感じています。今回の協定は、まさに町の課題を解決に導くこととなり得ると確信しています。
・日本自然保護協会執行理事、事務局長 志村智子氏 みなかみ町との関係が始まったのは約30年前。雪山の上に広がる大空をつがいで飛ぶイヌワシと出会ったことからでした。絶滅が危惧されるイヌワシの営巣・子育ての場になっている可能性があり、生物多様性上の重要な意味を持ちます。イヌワシと同じ高い視座で地域を捉えることで、従来の自然保護活動よりも大きな取り組みに発展し、試行錯誤しながら、自然保護の最先端の取り組みを重ねてきました。今回の協定は、これをさらに大きくステップアップするものです。
・三菱地所執行役専務 中島篤氏 特に不動産開発事業においては自然環境の改変を伴うことがあるため、自然資本に今まで以上に関心を持ち、回復に貢献すること、そのことを世の中に説明することは非常に大事だと考えています。一方で、我々の知見だけではできないこともあるため、積極的な行政、また知見・経験のある学識者やNGO等とのパートーナシップで取り組むことが重要だと考えていました。
◇ ◆ ◇
デベロッパーのこのような活動が最高にうれしい。このリリースを読んで、2017年2月25日に三菱地所一号館広場で行われた「丸の内プレミアムフライデー」を思い出した。社長交代が発表された直後で、当時常務だった吉田淳一と杉山博孝社長が満面に笑みを浮かべて歓談していた場面を写真に収めた。
また、同社グループがNPOえがおつなげて(曽根原久司代表)と連携して山梨県北杜市増富地区で取り組んでいる耕作放棄地・荒廃森林の再生を目指す「空と土プロジェクト酒米づくりツアー」を2度取材したことがある。あれほど楽しい取材はなかった。吉田常務も参加されていたときはバスの中で、お互い小さいころ、田んぼの肥溜めに落ちたことを話し合って爆笑したのも思い出す。
3者はイベントを行うはずで、声が掛かったら必ず取材しよう。シカなどの害獣は営農意欲をなくすほどときく。皆さんは食べたことがないだろうが(いまは禁止されているはず)、シカの刺身はヘルシーで、美味しさは馬肉の比ではない。
2017年2月25日の「丸の内プレミアムフライデー」イベント
2023年2月16日の社長交代記者発表会場
中島新社長の経営力、国際力、人間力、胆力を激賞 三菱地所・吉田社長(2023/2/18)
酒とさくらに染まる 日本橋 見事なバトンタッチに乾杯 丸の内 プレミアムフライデー(2017/2/25)
〝ケロ、ケロ、ケロ〟カエルも歓迎 三菱地所・空土プロジェクト田植えツアー(2015/6/3)
三菱地所グループ「空と土プロジェクト」体験ツアーに同行取材(2012/1/10/19)
持家の減少続く 首都圏マンション2年4か月ぶりの6,000戸超 住宅着工
国土交通省は2月28日、2023年1月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は前年同月比6.6%増の63,604戸となり、4か月ぶりの増加となった。利用関係別では、持家は16,627戸(前年同月比8.3%減、14か月連続の減少)、貸家は 24,041戸(同4.2%増、23か月連続の増加)、分譲住宅は22,698戸(同25.0%増、2か月連続の増加)。分譲住宅の内訳はマンション11,990戸(同69.6%増、2か月連続の増加)、一戸建住宅10,576戸(同3.9%減、3か月連続の減少)。マンションの分譲住宅に占める割合が戸建てを上回ったのは令和4年4月の50.3%以来9か月ぶり。首都圏と関西圏のマンションが大幅に増加したため。
首都圏マンションは6,642戸(同124.6%増)で、6カ月連続の増加。6,000戸を超えたのは令和2年9月の7,721戸以来2年4か月ぶり。都県別では東京都4,093戸(同211.3%増)、神奈川県1,384戸(同41.1%増、埼玉県736戸(同308.9%増)、千葉県429(同10.8%減)。
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持家の減少が止まらない理由がよく分からない。令和4年累計の戸数は16年ぶりに分譲住宅に抜かれた。このままだと令和4年度累計でも分譲に抜かれる可能性が大きい。消費マインドが冷え込んでおり、建築費もじりじり上昇を続けているが、それならば分譲住宅も影響を受けるはずだ。
持家志向に変化が生じたとは思えないのだが、いまの20~30代の世代は分譲と賃貸、新築と中古にこだわらない層が増えているのは間違いなさそうで、あるいは賃貸居住者の住み替え志向はマンションや分譲戸建て、さらには賃貸へと向かっているからかもしれない。
首都圏マンションの着工戸数が増加しているのはよく分かる。ここ数年、適地の不足、建築費の高騰などから漸減傾向にあったが、コロナ禍でも売れ行きは堅調だったことからデベロッパーが仕入れを強化し、攻勢に転じたと思われる。ただ、価格は一部のアッパーミドル、富裕層向けを除けば、購入検討者の取得限界にあり、市場がさらに好転するかどうかは不透明だ。今後の金利動向、消費者マインドに注視する必要がありそうだ。
マンション市況の過去のターニングポイントは年明け、年度明け、夏休み明けに集中しており、今年1月の同社の調査によると、供給量は前年同月比37.1%減の710戸で、初月契約率は54.6%と低調だったのは気になる材料だ。
もう一つ注視しなければならないのは、着工戸数は必ずしも実需向けでなく投資向けもかなりあるということだ。不動産経済研究所の2022年の首都圏マンション供給戸数は29,569戸だが、着工戸数は52,379戸だ。供給と着工で戸数は異なるのは当然だが、かりに不動研の戸数を捕捉率とすれば56.5%にしか過ぎない。
残りはどうなったかだが、1つは、不動研の調査は専有面積が30㎡未満は調査対象外であるということだ。同社の投資用マンション市場動向調査では供給量は年間6,000~7,000戸台となっていることからもよく分かる。もう一つは、最近増加している再開発マンションなどの地権者住戸、さらにまた一般分譲せず縁故販売で市場には出回らない物件もあること、分譲せずリートなどへ一括で売却するケースも少なくないことがその理由として考えられる。
記者は、最近の着工増は専有面積が30㎡未満の投資用分譲マンションの着工増が主な要因だと考えているのだが、どうだろう。ファミリー向けと比べて価格(単価)は信じられないくらい高いが、それでも売れているということは投資利回りが高いということだろうか。
この投資用マンション市場の今後を考えるうえで興味深いリリースがオリックス銀行から2月27日に発表された。
アーバネットコーポレーションがZEH-M Oriented仕様の投資用マンションの設計・開発を、メイクスが個人投資家への販売を担い、同行はアーバネットコーポ向けの開発資金および個人投資家向けの物件購入資金に対して、貸付金利を優遇した融資(総額4億1,700万円、金利優遇0.1%)を行った「メイクス氷川台アジールコート」37戸が2022年12月19日から販売開始し、全住戸が竣工までに完売したというものだ。
メディア向け内覧会も同日行われたようで、不動産流通研究所のWEB「R.E.port」が28日に報じている。坪単価は400万円を割っている模様だ。記者は見ていないが、価格は安いと思う。
都市マス、地区計画に背馳していいのか 問われる公平性と企業倫理
日テレの計画地にある「番町の森」から(右は、確かに空の青には染まず屹立する「日テレスタジオ」)
前回の続き。建築物の高さ規制より、足元の公開空地・緑地の確保のほうが大事という持論を展開しようと考えていたのだが、取りやめることにした。持論は正しいと思ってはいるが、大澤氏の主張は完璧で、番町エリアは「中層・中高層の住居系の複合市街地」と定めた都市マスタープランと、建築物の高さ規制を60m以下とすることで美しいスカイラインを形成し、歴史と文化を感じさせる街を未来につなげようと住民自らが決めた地区計画は尊重すべきという結論に達したからだ。エリア内のマンションをたくさん取材してきて、お金持ちだけの街になっていいのかという疑問はあるが、地域住民の考えを最優先すべきだと考える。
なので、以下は記者の持論というよりは、論点を整理し、都市マスタープラン(都市マス)や地区計画、住民合意、区の公平性、日テレの企業市民としての倫理性などについて書くことにする。
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日テレの提案は、都市計画提案制度(都市計画法第21条の2)の提案要件(土地所有者等の三分の二以上の同意と区域面積0.5ha以上)を満たしていることから区は提案を受理した。そして、区は「計画提案が行われたときは、遅滞なく、計画提案を踏まえた都市計画の決定又は変更をする必要があるかどうかを判断し」(同法第21条の3の前段)「当該都市計画の決定又は変更をする必要があると認めるときは、その案を作成しなければならない」(同後段)法の定めによって、地区計画の変更を決断したということだ。
問題はこの後段にある。大澤氏が指摘した「都市計画マスタープラン(都市マス)は2021年5月に改定されましたが、『中層・中高層の住居系の複合市街地』の文言は維持されました。つまり、番町では『超高層』を容認しない姿勢が改めて確認された」-この肝心要の部分について区はスルーしており、令和4年12月8日に行われた千代田区都市計画審議会議でも都市マスとの整合性や、地区計画についてほとんど論議されていない。「我々が去年の3月まで皆で苦労してつくった都市計画マスタープランの精神に合致しているのかどうか、私はもう一度審議会の皆様に問いたいと思っています」という委員の発言があるのみだ。都計審とは激論などを交わす場ではないということなのか。
あろうことか、「90mという提案が出たのは、かなり事業性の部分は抑えて、地域貢献や公共性に考え方を振ってきたのではないかと思います」と言い放った委員もある。
日テレ担当者の発言も気になった。計画では敷地面積約12,500㎡(建ぺい率50%、容積率700%)、建築面積約6,400㎡、容積対象面積約87,500㎡となっていることについて、「1,000坪近い土地を区の公共の場所に供する。かつ、その運営も含めて日本テレビが未来永劫これを引き受けていくというのが今回の提案にございますので、単純にビルの収益が幾ら、それからそれに対する容積をどれぐらいアップということで計算したものではないことだけは、まずご理解を頂きたいと。再三、今日冒頭からお話ししましたように、一つの指針として、社内として、我々は700%の容積であれば、今後何とかその運営を含めて事業としても成り立つ」と語っている。
先の公聴会でも公述人は、この日テレの姿勢は「言語道断」「傲慢さに呆れました」と述べたが、記者もそう思う。議事録を読んで、これでは札束で頬を張るのと一緒ではないかと。なんともやるせない気持ちになった。アンチ巨人だからいうのではない。念のため。
日テレも企業市民として平成20年に策定された地区計画に同意したのではないのか。それから15年が経過するが、エリア一帯が劇的に変化したとは思えない。地区計画は開発を促進したり、あるいは抑制したりする諸刃の剣の側面を持つ。私権を制限することもある。しかし、その基本は住民合意、つまりみんなで民主的に決めるのが建前だ。区も地域の人たちも建物の高さを60m以下に揃えることで美しいスカイラインが描け、住環境が担保されていると考えている。それを覆すにはそれなりの説明が必要だ。
開発にあたって駅とのバリアフリー化を図るとか、公共広場を整備する、エリアマネジメントを導入することなどは当たり前だ。どこのデベロッパーも行っている。憲法ともいうべき都市マスで将来的に中高層の街並みを形成しようと決めた矢先に、再開発等促進区に指定する必要性はどこにあるのか、記者はさっぱりわからない。区の公平性、日テレの企業倫理が問われている。
日テレにはさらに言いたい。平成29年8月、「日本テレビ通りまちづくり方針(案)」をとりまとめ区に提出した「日テレ通りまちづくり委員会」なる組織についてだ。日テレの別動隊ではないのか。構成員は二番町町会、四番町町会、五番町町会、六番町町会、麹町三丁目町会、麹町四丁目町会、日本テレビ通り振興会とあるが、曖昧模糊、杳として知れない存在だ。この組織はその後発足した「日本テレビ通り沿道まちづくり協議会」の主要メンバーとして主導権を握り、150mプランを提示して二項対立を演出した。
まだある。「日本テレビ番町スタジオ」だ。建物は2021年度のCFT構造賞と第23回日本免震構造協会賞作品賞を受賞した。高さ60m、窓などほとんどない、牧水の「白鳥」でもない、白亜の塔などとも呼べない、治外法権のただの箱、例えていえば福島原発の建屋そのものだ。どこが美しいのか。建物の前には警備員らしき人が、ねずみ一匹たりとも通さないぞという視線で小生を監視する。足がすくんだ。隣接する女子学院と真逆だ。「異形の建物」と書いたが失礼か。
都計審での発言を少し紹介する。
・私、このままでは一気に多数決で日テレ案のイエスかノーかということだけに終わってしまうという気がしてならないのです。一体この日テレ案の今言っている5mの階高で700%(容積率)で90m(高さ)というこの三つの数字が、それとの対案で出ているもの(「番町の町並みを守る会」は階高4.6m、容積率633%、高さ60m対案を示している)の比較において、どのようにその合理性を妥協できるのかという議論がなぜなされないのかと私は不思議でなりません
・(地権者への)説明会をやった意見書を頂いて、賛成が47、反対が49だったということですけれども、地権者の総数がそもそも何人いらっしゃるのか、それを教えてもらいたいと思います。それと、もう一つが、区分所有で僅かな不動産しか持っていない人と、二番町にかなりの面積の不動産を持っている人とを同じ土俵で評価するのは少しおかしいと思いますので、この賛成の方と反対の方のそれぞれの面積。合計したもの、それが何㎡ずつか。それと、その比率を教えていただきたいと思います
・(これに対して)麹町地域まちづくり担当課長 地権者の数で、今回、登記簿ベースで二番町の全ての地権者様に説明会のご案内をしております。で、数といたしましては1,112名となっております。続きまして、意見書でございますが、数につきましては、先ほどご説明したとおりでございます。参考に、面積についても、合算を出してはいます。賛成が1万2,509㎡、反対のご意見が1,844㎡と、見取りとしてはそういった形になってございます
・(この答えに対して)先の委員 地権者が1,112名…今、計算しますと、賛成の方の面積が1万2,509㎡、反対が1,844㎡だとすると、賛成の方の面積の比率は87%、つまり、85%以上の人が賛成と考えてよろしいでしょうか
・(これに対して)担当課長 区といたしましては、この結果をもって、そういった形でという判断はしておりません(当然だ。賛成する人と反対する人のそれぞれ面積比率でもって賛否は測れない。みんな平等だ)
・未来永劫これからこのまちでお互いに、推進もちょっと待ってという方たちも住んでいくわけでありますから、そこのところの一番肝腎なところは、まちを二分にしない。遺恨を残さない(禍根を残さないの誤り。遺恨試合に発展しないことを祈るのみ)。これが、僕は一番大事だと思うのです
・二番町の地権者が1,112名だと区役所の方がおっしゃっていましたけれども、私はそれを前から知っていました。実際には二番町の地権者は大体1,000人ぐらいです。残り110名というのが多分抵当権者、銀行とかを含めてだと思うのです。それで、1,000名の地権者の中で、不動産を所有していて住んでいる人、これが何人いるかですが、僅か180軒です。だから、残り約800軒は不在地主です。持っている人は不在地主、住んでいる人は賃借人です。ですから、先生方が住民の意見とかとよく言われますけれども、賃借人は地権者ではないのです。今回のことで反対している人は二番町でもいます。どういう人が反対しているかというと、高い建物の上のほうに住んでいる人、これは反対しています。低層階に住んでいる人は、もう、千代田区の場合、日照権とかがありませんので、天空率なのです。要するに空が見えればいいと。そういう条件の中で住んでいる人が大多数なわけです。そういう人は、高い建物が出来ても、自分たちの窓から見えないから賛成なのです。駅から直結のエレベーターやエスカレータができて、便利になる。スーパーマーケットができて、便利になる。広場ができて、子どもを遊ばせることができるということで賛成します。そういう状況です。ですから、公聴会をやっても意味がないと思います。同じことの繰り返しです。反対する人は高層階に住んでいる人たちです。また、その人たちを応援する人もいます。信じられない話ですが
(暴論だと思うので長々と紹介した。二番町の地権者1,112人の権利関係をこの委員の方はどうしで事前に把握していたか。とてつもない時間と費用がかかるはずだ。まあ、この問題はさておくとして、許せないのは、賃借人は〝日照はどうでもいい、空が見えればいい〟と蔑み、「公聴会をやっても意味がない」と語ったことであり、そのような不規則発言に対し異議を唱え、取り消しを求める人がいない都計審とは何かということだ。政治家や首長だったら即首が飛ぶはずだ。しかし、都計審では発言者の名前は公表されない。SNSのフェイクニュースとどこが違うのか)
区は今回、区としては都市計画法第16条第1項に基づく初めての公聴会を開催した。公述申し込みは73件あり、賛成、反対それぞれ5名、合計10名が公述人として意見を述べた。WEB傍聴は163名だった。このほか賛成、反対それぞれ50名、合計100名の意見と区の見解が示されているように、とても盛況だったようだ。
◇ ◆ ◇
計画されている日テレのビルそのものは最高レベルになりそうだ。現時点でわが国最高峰の60階建て三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス西新宿タワー60」は高さ200m(単純計算で1フロア約3.3m)だ。もっとも高い階高のマンションは三井不動産レジデンシャルの27階建て「パークコート六本木ヒルトップ」だと記者は思っているのだが、1フロアの平均階高は3.5mくらいのはずだ。
都心のオフィスでは、皇居に面した三菱地所「大手町パークビル」は29階建て150m(1フロア約5.2m)、三井不動産「Otemachi One タワー」は40階建て200m(同約5.0m)、森ビル「虎ノ門ヒルズ森タワー」は52階建て247m(同約4.8m)、千代田区内では東急不動産・鹿島建設「九段会館テラス」は17階建て75m(同約4.4m)。2027年度竣工予定の三菱地所「TOKYO TORCH」は63階建て390m(同6.2m)だ。
「九段会館」は見学したとき、天井高は高くないと思ったが、これは歴史的建造物の建て替えで、外観、その他のデザインは最高に素晴らしかった。是非はともかく、日テレの再開発タワービルの階高は約5mとされているので、これらのビルと引けを取らないレベルとなりそうだ。
この計画が都市計画決定されれば、高さ規制緩和に道を開くことになる。とするならば、せめて都市マスの文言を「中層・中高超高層…」か「中層・中高層など」に改めるべきだ。区は上位計画である「神田警察通り沿道賑わいガイドライン」に盛り込まれていた「豊かに育った既存の街路樹を活用する(白山通りのプラタナス・共立女子前のイチョウなど)」の文言から「など」を軽微な変更事項として課長権限で削除し、神田警察通りの街路樹伐採を容易にした前例もある。「超」「など」を潜り込ませ異議を唱えられたら「軽微な変更事項」として居直ったほうがまだ分かりやすい。
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二番町地区地区計画(面積:12.1ha)の目標である「中層・中高層の市街地を形成」することと関連するので、総合設計制度について触れてみたい。
東京都のデータによると、総合設計制度の適用を受けた建築物はこれまで771件あり、もっとも多いのが港区の185件、以下、千代田区の107件、中央区の97件、品川区の51件、渋谷区の45件、江東区の33件、豊島区の24件、台東区の21件。区域面積を考えれば千代田区は極めて総合設計建築物が多いことが分かる。23区で少ないのは葛飾区の7件、足立区、中野区、荒川区の各6件、杉並区の5件など。
これだけで街の良否は測れないが、都市マスと地区計画によって住環境が担保されていることも、番町エリアのマンションの価格が高い要因の一つであるのは間違いない。番町エリアのマンションの坪単価は1,000万円を超えつつある。記者の目視した限りでは、日テレの計画地周辺には高さが60m以上の建物は見当たらず、大澤氏も番町エリアには高さが60m以上の建物はないとどこかで書いておられた。
※千代田区番町のマンションに興味をお持ちの方はWEB「牧田記者のこだわり記事」https://www.rbayakyu.jp/rbay-menu-kodawari「千代田区 番町」で検索していただくと2013年以降22件の記事がヒットするはずです。
「地区計画変更には大きな疑義」東洋大・大澤准教授 日テレ本社跡地再開発(2023/2/23)
隈研吾氏デザイン〝番町に負けない〟東急不 フラッグシップ「千代田富士見」(2023/1/11)
旧九段会館を保存・復原 最新鋭のオフィスとの融合 東急不・鹿島「九段会館テラス」(2022/9/9)
深謀遠慮の計算 三方良しオフィス・店舗賃貸保証サービス業 サンフロ「TRI-WINS」
左から中村氏、齋藤氏、増山氏
サンフロンティア不動産は2月24日、同社グループのSFビルサポートの新しいオフィス・店舗賃貸保証サービス「TRI-WINS(トライ ウインズ)」を同日立ち上げ、サービスを開始したと発表した。
コロナ禍による東京都の人口流出、企業倒産の増加、オフィス空室率の上昇、賃料の下落傾向に対応すると同時に「新しい資本主義の成長戦略」を見据えた戦略として、ビル経営者・入居者・社会課題に対応する〝三方良し〟の「Win-Win-Win(TRIPLE WINS)」の実現を目指すもの。
ビル経営者が抱える収益悪化、滞納トラブルのリスク、ビル価値の下落の不安を解消し、入居者へは初期費用の負担軽減、入居審査の壁の低減を図り、同時に社会課題の解決へ貢献する。トラブルが絶えない代理店方式を採用せず、これまで5万件を超える信用調査を行ってきたノウハウを武器にする。
記者発表会に臨んだサンフロンティア不動産代表取締役社長・齋藤清一氏は、近年の東京都の人口動態、企業倒産、オフィス賃料・空室率などの動向を紹介しながら、同社が強みとする既存オフィスの「バリューアップ」を武器に、環境保護、人材育成、地域創生に取り組み、持続可能で豊かな社会の実現を目指すと語った。
また、SFビルサポート代表取締役社長・中村泉氏は「昨年、政府はイノベーションの鍵となるスタートアップ創出元年を宣言しました。新ブランド『TRI-WINS』を活用していただくことで、ビル経営者様には稼働率アップなど安定的なビル経営を、入居者様には有効な資金活用を実現し、合わせて社会課題解決に取り組む」とコメントした。
当面、取り扱う対象物件は首都圏で、保証内容は賃料・共益費・その他固定費の滞納分で、保証委託料は賃料換算で2年間分。
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中小企業庁の2022年版「中小企業白書・小規模企業白書」によると、2021年は新型コロナウイルスの流行や原油・原材料価格の高騰、部材調達難、人材不足といった問題が中小企業を直撃し、引き続き厳しい環境下にあるとしている。
2021年の倒産件数は資金繰り支援策などの効果もあり、6,030件と57年ぶりの低水準となった。しかし、休廃業・解散件数は、前年の49,698件から46,724件へ減少したものの、民間調査が開始された2000年以降で過去3番目の高水準となっている。中小企業向け持続化給付金は終了し、金融機関の貸出残高が増加し、各業種において借入金の返済余力が低下しているとしている。
同社が得意とする中小型の既存オフィスビルを高付加価値化させるバリューアップ事業も決して楽観視できる環境下ではないはずだ。リリースにもあるように、同社の個人事業主と新規設立3年未満の入居者の合計は全体の約30%を占めるという。一方で、スタートアップ企業の3年生存率(倒産率)は50%という厳しいデータもある。
どうして、このような厳しい環境下で新ブランドを立ち上げたのか。代位弁済・債権回収リスクを敢えて冒してまで競争が激しいと言われるオフィス・店舗の賃貸保証サービス業に参入するのか。いま一つ分からない。
だが、しかし〝ピンチはチャンス〟。だからこその参入なのだろう。SFビルサポート保証事業課次長・増山暁泰氏は「信用調査は2005年から5万件の実績があり、草分け的な存在」と語り、中村社長も「17年間の累計の取り扱い件数は8,000件、うち保証件数は4,000件弱。毎年1、2割ずつ積みあがっている。十分グループの事業に貢献できる」と自信を見せた。
さらにまた、スタートアップへの年間投資額を現在の約8,000億円から2027年度に10兆円規模に引き上げる目標を掲げた政府の「スタートアップ育成5か年計画」も視野に入れているのだろう。
齋藤社長は創業の理念である「利他」も強調した。「三方良し」&「利他」-考えてみればあらゆるビジネスに通じることだ。これなくして企業は存続できない時代であるのは確かだ。深謀遠慮の計算があっての決断だろうと理解した。
中村社長は、わが故郷・三重県の英虞湾の突端志摩町出身だと聞いた。「近江泥棒、伊勢乞食」、つまり三方良しを編み出した近江(滋賀県)とその対極の商法で対決した伊勢商人(三重県)については明言を避けたが、ともに共通する「利他」の精神は小さいころから身についているのだろうと思った。
「地区計画変更には大きな疑義」東洋大・大澤准教授 日テレ本社跡地再開発
日テレ通りと番町学園通りの交差点から二番町D地区地区計画地を望む
もっとも民主的な制度であるはずの地区計画の信頼性が揺らいでいる。東京都千代田区が日本テレビの提案を受け、都市計画で定めた日本テレビ本社跡地を含む二番町地区地区計画を変更し、日テレ跡地の建物の高さ制限を現行の60mから90mとする都市計画案に対する公聴会で、公述人の意見が真っ二つに分かれるなど、先行きが全く読めない展開を見せている。
二番町地区地区計画は平成20年(2008年)、区域面積約12.1haを対象に都市計画決定された。全体として住宅、商業・業務施設が共存した複合市街地の形成を図るとし、地区特性に応じA地区(約2.4ha)、B地区(約7.3ha)、C地区(約2.4ha)の建築物の用途規制、壁面後退、高さ制限、緑化率などを定めている。
区は、令和4年10月12日に日本テレビから二番町D地区地区計画の提案を受け、都市計画法第十五条―第二十八条の規定に基づき都市計画案を策定した。
計画案では、従来のB地区の0.8haとC地区の0.7haを切り離し、D地区(約1.5ha)とし、さらにD地区をD-1地区(1.0ha)とD-2地区(約0.5ha)に分け、建築物の高さ制限をD-1地区は90m、D-2地区は60mとしている。除外したD地区以外の変更はないとしている。
そして区は2023年1月26日、区としては初めての都市計画法第16条第1項に基づく公聴会を実施。公聴会では、区の案にもろ手を挙げて賛成する公述人が相次いだ。以下、主な意見を紹介する。
・60m以下のどこにでもあるような普通のオフィスビルよりも30m高くなりますけど、日本テレビさんの協力のもと、地下鉄のバリアフリー化や…エリアマネジメント、歩道の拡幅、バリアフリーの確保、これは非常に…重要な要素を含んでいると思います。これらを担保・実現するのであれば、建設物の高さ制限は全く問題ないと考えます
・(日本)テレビさんが作った「番町の庭」や「番町の森」が、子育てする地元住民にとっても大変ありがたい場所だと思います。保育園の子供たちや地元の小学生が毎日のように元気に走り回る姿はビルの立ち並ぶ都心ではなかなか見られない光景ですし、良いまちになったなと思います
・(日本)テレビさんを儲けさせるために高い建物をたてさせると批判される方もいらっしゃいますが、テレビさんはいままでも私たちと一緒に考えてくれていました。これからもずっと管理してくれるわけですので、本当は千代田区さんからも補助金を出してあげてもいいと思います
・私は、本当に100mでも120mでも150mでも、結果的にそれが地域に貢献できるんであれば、別に高さなんて気にすることはなかったと思います。でも、何が何でも60mという、その地区計画に則る形でやられて、お話がずっと頓挫していたことを考えると本当に残念です
一方、反対意見を述べた公述人は、建築物の高さをA地区は30m(総合設計の適用を受けた建築物は40m)、B地区は50m(同60m)、C地区は60mと定めた現行の地区計画を改め、日テレの計画地を切り離し、その計画地のD -1地区の建築物の高さを90mにしていることに強い拒否の姿勢を見せた。以下、主な意見。
・日本テレビさんが高さ90mの具体的なプランを初めて公開されたのは昨年の7月ですから、まだ7か月ほどしかたっていません。既存のルールを変更するという大きな決断をするには、まだコンセンサスが形成されていないように思われます
・確かにまちづくり協議会は12回開催されておりますが、この90m案が示されたのは、昨年9月26日の、最終の第12回会議で提案されたものです。このときの審議が最初で最後であって、その具体的中身については一切議論がなされないまま、二番町の日テレ敷地の不整形の土地に地区計画を変更しようとしているわけです
・昨年2月4日に、3,328名の署名が、千代田区長に提出されました。これは地区計画の現行高さ制限60mを遵守して欲しいという番町住民・通勤者・通学者による、署名でございます。この公聴会の後にいきなり都市計画法17条の手続きに移るのではなく…日テレと住民が忌憚のない話し合いをして、そのギャップを縮めていただくことを提案します
・突然、二番町12.1haのうち日テレが1社で支配する1.5haだけを切り出し、周囲を睥睨する地域唯一の超高層ビル建設を認めるという乱暴な地区計画変更案が区から出され、驚愕しています
日テレが整備した暫定利用の「番町の庭」(左)と「番町の森」
番町文人通り(右は総合設計制度によって整備された歩道空間と高さ60mの「日テレ番町スタジオ」。記者は異形の建物としか思えない)
◇ ◆ ◇
先日、2時間かけて件の番町エリアを歩いた。公述人が仰った地区計画の対象外エリアにある90mのオリコ本社ビルと都市センターホテル、60mの日本工営ビルを除けば、地区計画エリア内の建築物でもっとも高い建物は15階建てくらいで(1層を3~4mとすると60m)、日テレの「番町スタジオ」もまた約60mだ(それより高い既存不適格はないはずだ)。
記者は、建築物の絶対高さ規制より足元の公開空地・緑地を確保するほうが大事だと考えているのだが、私見を述べる前に、都市計画に詳しい専門家の声を聞こうと東洋大学理工学部建築学科准教授・大澤昭彦氏にお願いした。小生は14年前、当時東京工業大学大学院社会理工学研究科・財団法人土地総合研究所研究員だった大澤氏に「100尺規制」「建築物の高さ規制」について話を聞いており、いっぺんにファンになった。見識の深さもさることながら、その男前に惚れ込んだ。
今回も大澤氏は快く応じてくれた。大澤氏は「研究者として公平な立場でいるべきと考えていますし、その立場から見ても、二番町地区地区計画の変更については多くの問題をはらんでいます」と次のように問題点を指摘した。
1.都市計画マスタープランとの整合
・1998年に策定された都市計画マスタープランで当該地区を含む「番町地域」は、「中層・中高層の住居系の複合市街地」と位置付けられました。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/machizukuri/toshi/kekaku/masterplan/bancho.html
・ これを受けて、番町地域の大半のエリアで地区計画が策定され、最大でも60mに制限されています。
・ 建築基準法ではかつて60m超の建築物を「超高層建築物」と定義していましたので、番町地域では「超高層」は認められないことを意味します。
・ 都市計画マスタープランは2021年5月に改定されましたが、「中層・中高層の住居系の複合市街地」の文言は維持されました。つまり、番町では「超高層」を容認しない姿勢が改めて確認されたわけです。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/17862/toshimasu-4_2.pdf
・ それにもかかわらず、マスタープランと整合しない地区計画の改定が行われようとしていることに違和感があります。
・ 再開発等促進区を定める地区計画の策定にあたって、マスタープランと整合しない内容になることはあり得ます。ただし、それはマスタープランが古く、地域の実態や社会経済環境の変化に対応できていないケースに限られます。番町の場合は、マスタープランは改定されたばかりであって、状況は全く異なります。
2.地区計画の目標・建築物等の整備の方針との整合
・2008年に策定された二番町地区地区計画では、都市計画マスタープランの内容を受けて、中層・中高層の街並みの形成が謳われています。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/4355/32nibanchou.pdf
・ さらに「建築物等の整備の方針」の中には、次のように明記されました。「建築物の高さの制限に加えて建築基準法第59条の2第1項の適用に際しても、建築物の高さの最高限度を適用することにより、建築物の高さが整った良好な街並みの形成を目指す。」
・ すなわち、総合設計制度等の規制緩和手法を用いても60m超を認めない姿勢を明示したわけです。この意図はとりもなおさず、番町の「中層・中高層の街並み」を守るためです。
・ 今回の見直しは、こうした二番町地区地区計画の考え方に反するものです。
・ 根本的な方針転換を図るのであれば、その合理的な根拠を示すととともに、合意形成を図るべきと思われますが、そのどちらも十分なものといえません。
3.地区計画改定の根拠の問題
・ 千代田区は、規制緩和の根拠として、地域の課題であった地下鉄のバリアフリーや公園の不足をあげています。規制緩和の見返りに日テレが地下鉄駅へのエレベーターや広場を整備することになっているため、これを以って緩和が認められると判断したようです。
・ ここで問題になるのが、バリアフリーや広場の整備の代わりに、超高層ビルが建つことで住環境が変化する可能性についての説明がなされていない点です。
・ つまり、規制緩和のメリットの説明だけで、負の影響について明確に示されないために、住民が適切な判断ができない(不安が解消されない)状態にあります。
・ また、そもそも住民が広場を求めているのかについての疑問もあります。現在、敷地内に番町の森という仮設の広場が設けられており、賑わいをみせています。ただ、南側に超高層ビルが建てば日陰になり、夏場以外、快適な広場になるとは思えません。ビル風の問題も発生することが懸念されます。
4.合意形成の問題
・ 地区計画改定の前に「日本テレビ通り沿道まちづくり協議会」で開催されていましたが、ここでの議論が煮詰まらない状態で、地区計画改定の手続きに移行しました。
・ 都市計画法第16条第2項に基づいて地権者等の意見書の提出で、賛否が拮抗したことを見ても、合意形成が不十分であると思います。
【まとめ】
①都市計画マスタープラン(しかも改定されたばかり)に反する計画を区自らが認めることがそもそも問題。
②規制緩和手法を用いても60mを超えられないと規定している現行地区計画の考え方の抜本的な方向転換となるため、その合理的な根拠の明示と合意形成が必要だが、そのどちらも欠けている。強引に再開発を進めれば、都市計画に対する信頼が大きく損なわれることになる。何のための都市計画なのか? 誰のための都市計画なのか? と住民は疑問に思っても不思議ではない。
③今回の変更を認めれば、他の地区でも同様の規制緩和が進む(日テレは認めたのに、なぜうちでは認められないのかといった意見が出てくる)。結果的に、マスタープランで掲げる「中層・中高層の住居系の複合市街地」が、なし崩し的に損なわれるのではないか。
◇ ◆ ◇
みなさん、いかがか。記者はぐうの音も出ない。一つだけ疑問を呈せば「超高層建築物」とは何ぞやという問題だ。
記者は、2023年1月30日付記事「齊藤&浅見先生、誰に読ませたいのか?! 『タワーマンションは大丈夫か?!』」で次のように書いた。
「建基法第20条は『高さが60mを超える建築物 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること』と定めているが、これがタワーマンションであるとか超高層建築物であるとかは規定していない。
記者は昭和60年代の初め、『超高層マンション』の記事を書いた。東京都やUR都市機構、三井不動産などの『大川端リバーシティ21』の開発が開始され、従来の物差しでは計れないマンションが続々供給される気配を感じたからだ。定義を調べるために日本建築センターに取材したのだが、定義はなく18階以上だとか20階以上だとか聞いた覚えがある」
つまり、大澤氏も「かつて60m超の建築物を『超高層建築物』と定義していました」と「かつて」を付しているように、「超高層」の定義ははっきりしないということだ。
とはいえ、60mを一挙に90mに緩和する根拠はやはり希薄と言わざるを得ない。国土交通省の地区計画を策定するための「ルールづくりの進め方とポイント」でも「行政発意で始まった検討の場合でも、会議の進行は組織のリーダー等に委ねたり、住民主導の取り組みの重要性を繰り返し説明する等して、少しずつ住民主導による検討がなされるよう誘導していくことが重要である」「住民等が主体的にルールを策定するためには、意見対立が生じた場合にも、住民等で議論して自ら解決方法を見出すようにすることが望ましい」としている。
齊藤&浅見先生、誰に読ませたいのか?! 「タワーマンションは大丈夫か?!」(2023/1/30)
絶対高さ制限の背景にある100尺規制とは(2008/6/10)
全国に広がる建築物の「絶対高さ規制」「住民は知るべき 行政は伝えるべき」大澤昭彦研究員(2008/6/3)
あれから17年 国立マンション訴訟終結 支援者の「会」が上原氏への寄付募る(2017/1/8)