これは事実か「枯損木記載は都の慣例に倣ったもの」千代田区の主張 住民訴訟
東京都千代田区が進めている「神田警察通り」の街路樹であるイチョウ並木の伐採工事の是非を問う住民訴訟の第2回口頭弁論が1月17日、東京地裁であり、大きな争点となっている「枯損木」の判断について、区側弁護士は「『枯損木』として処分を決定したのは、慣例となっている東京都積算基準(道路編)の施工単価表に基づき、施工単価名称(枯損木伐採工)を引用したもの」と従来からの主張を繰り返した。次回の審理は3月16日に行われる予定。
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記者は開廷時間に間に合わず傍聴できなかった。上段は住民側代理人弁護士・大城聡氏の説明によるものだ。区は、健全なイチョウ並木を「枯損木」として「神田警察通り沿道整備推進協議会」に説明し、工事契約書にも「枯損木」と記載したのは「慣例」によるものであって、違法ではないと主張したようだ。
「慣例」とは、古くからしきたりとして行われてきたことを指し、「社会規範」の一つとして適法であるとされている。
本当にそうなのか。記者は、健全な街路樹を「枯損木」として殺処分することはあるのかについて東京都とつくば市の担当者に聞いたことがあるが、双方とも否定した。
どちらかが嘘を言っていることになる。調べればすぐわかることだ。区側が嘘をついていることになれば、慣例ではなく異例であるから、これは完全に住民側が勝訴する。
仮に、都側が嘘をついていることになれば、樹木診断制度は根底から崩れる。樹木医は国家資格ではないが、それに準じるものとして自治体が街路樹の再生・伐採の際などに診断を仰ぐのが通例となっている。その結果いかんにかかわらず、伐採を決行する単なる手続き、口実として利用されているとなれば、樹木医を管轄する日本緑化センターはもちろん、全国の樹木医2,910名(令和3年12月1日現在)を愚弄するものだし、公費の浪費だ。住民側に理がある。
もう一つ、住民の監査請求に対して監査結果で、工事契約書に「枯損木」と記載したことを区側は認めながら、「同じ契約書に添付された図面には『枯損木』とではなく『高木』と記載されており、本件街路樹が『枯損木』ではないという点については、本件工事契約の発注者である区と請負者である大林道路とが共通認識に立っていたものであって、本件工事契約に錯誤による瑕疵があったとはいえない」と住民側の主張を退けたことについて。
皆さんも、監査結果は変だと思わないか。「高木」とは「低木」「中木」と同じように街路樹が大きいか小さいかを示す文言であるにすぎない。人間にあてはめたら背が高いか低いかだけで、健康なのか不健康なのか判断できないように、その街路樹が健全なのか枯損木なのか分からないではないか。「本件街路樹が『枯損木』ではない」と監査委員が断定した根拠は全くない。区側の主張を忖度した結果としか考えられない。
小生は街路樹の味方で、住民側にも区側にも与しないが、これほど区側に不利な〝事実〟が明らかになると…結審も見えてくる。
健全な街路樹を「枯損木」として処分 問われる住民自治 千代田区の住民訴訟(2022/11/12)
ヤマト運輸 クロネコ見守りサービス 3か月無料キャンペーン
ヤマト運輸は1月16日、クロネコ見守りサービス「ハローライト訪問プラン」の新規申し込み3か月無料キャンペーンを実施すると発表した。同日から3月31日までに同サービスを新規に申し込んだ人は、月額料金1,078円(税込み)が3か月間無料となる。
同サービスは、利用を希望する設置先の自宅内にIoT電球「ハローライト」を設置、ハローライトの点灯/消灯の動きを24時間(前日朝9時00分~当日朝8時59分)監視し、動きがない場合、事前に指定された通知先とネコサポサービスセンターに異常検知のお知らせメールを自動配信するもの。2022年12月末で約3,000件の申し込みがあるという。
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いいサービスだ。同様の見守りサービスは有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)では当たり前になっており、ホームセキュリティ会社などの参入も相次いでいる。今後の人口構成を考えたら、飛躍的に伸びる事業の一つだろう。
記者が注目しているのは、電気、ガス会社と各自治体との連携による共同検針によるスマートメーター通信ネットワークの整備だ。すでにその研究は行われており、開発費用は莫大になるが、2025年から導入が開始される模様だ。
そうなれば、検針に要するコストが大幅に削減され、高齢者世帯などの見守りもできるようになる。
もう一つ期待したいのは火災の予防だ。連日のように住宅火災が報じられ、高齢者を中心とする死亡者も伝えられている。火災が発生しそうになったら、大声で危険を知らせ、蛇口にホースをつないで消火活動をするロボットの開発はできないのか。
内閣府の高齢社会白書によると、令和3年10月1日現在、75歳以上の人口は1,867万人(男性733万人、女性1,134万人)で、総人口に占める割合は14.9%に達している。「団塊世代」が75歳以上となる令和7年に3,677万人にのぼり、令和47年には実に25.5%、約3.9人に1人が75歳以上になると推計されている。
定義もなく、統計データはないようだが、「孤独死」は全国で年間30,000~40,000人と推測されている。「自死」を思いとどまらせるロボットの開発も急がれる。
「持続可能な社会へ 先導的役割果たす」堀内会長 プレ協 創立60周年記念式典
プレハブ建築協会「創立60周年記念式典」(アルカディア市ヶ谷で)
プレハブ建築協会は1月13日、今年で同協会創立60周年を迎えることから「創立60周年記念式典」を開催。同協会会長・堀内容介氏(積水ハウス代表取締役副会長執行役員)が式辞を述べたほか、来賓代表として斉藤鉄夫国交相、山下隆一・経済産業省 製造産業局長がそれぞれ祝辞を述べた。式典では、同協会の活動に貢献した歴代会長、学識経験者に感謝状が贈呈され、功労者としてPC建築部会、住宅部会、規格住宅部会などの関係者が表彰された。
堀内氏
堀内氏は冒頭、次のように式辞を述べた。
「昭和38年に設立された当協会は1月31日に満60周年を迎える。この60年間、住宅供給不足解消のためだけでなく、高品質な住宅供給を通じた安全・安心な暮らしの実現のため、工場生産によるプレハブ住宅の普及・発展に向け、官民一体、会員企業一丸となって活動を推進してきた。
式典の中で前回の設立50周年以降の10年間に当協会の活動やプレハブ建築の発展に貢献された歴代会長や学識経験者、会員の皆さんへそれぞれ感謝状、表彰状の贈呈を行った。皆さまには心より御礼と受賞のお祝いを申し上げ、今後もさらにご活躍され、協会活動を支えていただきたい。
この60年間で経済環境、社会環境は急激に大きく変化した。人口減少、少子高齢化、気候変動など解決すべき社会課題が顕在化し変革が求められている。住宅産業を取り巻く環境は激変した。果たすべき責任が一層大きくなり、役割も多様化してきた。
住宅政策は住生活基本法や長期優良住宅法など量から質へと転換。業界全体でのエネルギー問題が深刻さを増す中で、住宅建築分野のカーボンニュートラルへの対策は待ったなしの状況を迎えている。
当協会としても新築住宅に加え、リフォーム・リノベーションを通じて省エネ性能や耐震性能を始めとする住宅の性能、品質向上を一層推進し、それらが市場で評価され、流通が活性化されるように取り組みを進め、より良質な住宅ストックの形成と良好な住環境の整備を図っていく。
また、安心・安全な建物づくりに寄与するPC建築の需要拡大のため、PC部材の品質の向上・管理・設計・製造・施工技術の進化と、後世に継承していく人材の育成を図っている。
さらに、協会の大きな使命の一つとし、応急仮設住宅の迅速な供給を始めとする災害時の復旧対策がある。近年、豪雨災害が激甚化し、各地で甚大な被害が発生している。日本は地震国でもあり、首都直下型地震や南海トラフ地震も想定されている。協会は平時から全国の自治体と連携強化を図り、応急仮設住宅の建設や住宅の復旧・復興を迅速かつ的確に行える体制の整備に取り組んでいる。
これから先、豊かで暮らしやすい安全で持続可能な社会を作っていくために住宅産業の果たす役割はさらに広く大きくなっていくと考えている。
当協会は今回改定した行動憲章にもとづき、社会の動きにスピード感を持って対応し、活発的な協会活動を展開し、先導的役割を果たしていく。
また、60周年の節目に当たり『プレハブ建築協会60年史』を編集・発刊した。今後の協会活動の発展につなげる資料としてお役だていただきたい」
斉藤氏
次に登壇した斉藤氏は次のように祝辞を述べた。
「貴協会は昭和38年の創立以来、プレハブ建築の研究開発と普及を通じて、わが国の建築生産の近代化、合理化を主導されるとともに、品質性能の高い住宅の安定的な供給を促すことにより、国民の豊かな住生活の実現に多大な貢献をされた。
また、プレパブ建設の特性を生かして、短期間でかつ多くの仮設住宅を整備する貴協会の活躍はいまや災害対応に欠かすことのできない大きな存在。改めて敬意を表するとともに、深く感謝申し上げる。
さて、将来世代に承継するふさわしい良質な住宅ストックの形成を着実に進めるためには、質の高い住宅の新築・建て替え、リフォームによる性能向上、空き家対策-この3本柱でそれぞれの取り組みを強化しなければなりません。
とりわけ、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、ZEHなどの省エネ性能の高い住宅の普及や既存住宅の省エネ対策を加速するとともに、長期優良住宅のさらなる普及促進に取り組むことが重要。
これらの諸課題の解決に向けては、貴協会を中心とする関係協会の皆様の力が必要。貴協会がこの60年間蓄積された知識・技術やノウハウを課題解決と社会の発展のために大いに活用され、今後とも国民の住生活向上のために取り組みを進めていただくことを期待する」
また、山下氏は、同協会のこれまでの活動を讃えるとともに、「住宅建築物の省エネ、脱炭素化対策の取り組みは待ったなし」とし、「経産省も今年度の第二次補正予算では国土交通省、環境省との3省連携による住宅の断熱性能向上や高効率の給湯器の導入など住宅省エネ化を支援する新たな制度を創設した。引き続き、環境に配慮した住生活の更なる向上に向け、皆様のご理解とご協力を賜りながら意義ある政策を実行していく。
60周年という節目を新たな出発点として、貴協会が一層の飛躍を果たされ、多くの人々の生活の基盤となる魅力的、かつ先進的な住宅を供給されることを期待している」と語った。
三井不の岩沙氏・菰田氏・植田氏、野村不HDの沓掛氏の今年に託す漢字
左から岩沙氏、植田氏、菰田氏(ホテルオークラで)
三井不動産の代表取締役会長・岩沙弘道氏、代表取締役社長・菰田正信氏、取締役専務執行役員・植田俊氏、野村不動産ホールディングス・沓掛英二社長は1月6日、それぞれ今年1年間を次のような漢字に託した。
岩沙弘道氏 志
菰田正信氏 躍
植田俊氏 妄想
沓掛英二氏 挑
沓掛氏
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記者は不動産協会とFRKの新年賀詞交換会が開かれる前日、参加者に今年1年間の夢を漢字一文字に託してもらおうと決めた。30枚くらいは集まるのではないかと。サイン帳と筆ペンも用意しようと。
しかし、翌日起きてすぐやめることにした。いきなり眼の前にサイン帳を突き付けて「今年1年間を漢字一文字で託してください」などと話しても、とっさに答えられる人などいないだろうし、漢字力はワープロ・パソコンのお陰で小学生並みに退行している小生と同じような人がおり、書こうと思っても書けなかったら恥をかかせることになるのではないかと考えたからだ。
そこで、菰田理事長などのあいさつが終わったら、早々に退散することに決めた。
と、そこに威風堂々、どこからでもすぐ誰かが分かる野村不動産ホールディングスの代表取締役社長・沓掛英二氏が現れ、声を掛けられた。早速、「社長交代は以前から決めていたのですか」と尋ねたら、沓掛氏は即座に「そう。社長に就任して8年。末広がりで区切りがいいと。サクセッション考えないと。向こう10年先を志向したら新しい発想も必要だと」と答えた。
同社は昨年末、沓掛社長は今年4月1日付で取締役会長に、新しい社長には副社長の新井聡氏がそれぞれ就任すると発表した。
ものは試しだ。「沓掛社長、今年1年間を漢字一文字に託すとどうなりますかね」と聞いてみた。沓掛氏は間髪を入れず「挑戦の『挑』だよ」と答えた。
これには驚いた。経営者は頭の回転が違うと。小生も「挑」は書けた。「ちょうは、億、兆の兆に手偏ですよね。しんにょう(逃)じゃありませんよね」とつぶやいたのだが、沓掛氏には聞こえなかったようで反応はなかった。(沓掛氏に自筆を頼めばよかった)
ならば、ひょっとしたら三井不動産の菰田社長、岩沙会長も漢字一文字で夢を語ってくれるのではないかと、退散することを改め聞いてみることにした。
菰田社長もさすがだ。沓掛氏と同じくらいの速さで「飛躍の『躍』」と記者が差し出したノートに記したのだが、記者はそのサインに目が釘付けになった。
「素晴らしい文字ですね」
「いや、わたしの字は女文字なんだよ。かみさんは男文字」
皆さんもとくとご覧あれ。バランスがとてもよく美しい。(いつか機会があったら、奥さんの字を見せてもらおう。まさか書道家じゃあるまい)
次に岩沙会長。「うーん、いま日本に一番欠けているのは…」と「志」と記した。なるほど。
これで完成!お二人を写真に収め、帰ろうとしたら、菰田社長は「次の社長も」と近くにいた植田氏を呼び寄せた。〆た。
「植田さん今年の漢字を」
「もうそうでもいいですか」
「もちろん」
字余りだが、「妄想」と認めた。これこそ植田氏の真骨頂だ。
同社もまた昨年12月9日、今年4月1日付で取締役専務執行役員・植田俊(うえだ たかし)氏が代表取締役社長 社長執行役員に、代表取締役社長 社長執行役員・菰田正信氏が代表取締役会長に、代表取締役会長・岩沙弘道氏が取締役にそれぞれ就任し、岩沙氏は6月開催予定の株主総会で取締役を退任し、同社相談役に就任する予定と発表したばかりだ。
みなさん、「妄想」にはどのような意味が込められているか。是非とも添付した記事を読んでいただきたい。
小生の今年の漢字一文字は「愛」。「哀」にならないように。
「経済・社会の発展に貢献」不動産協会・FRK新年賀詞交歓会 菰田正信理事長(2023/1/7)
「産業デベロッパー目指し、日々妄想」植田俊・三井不動産次期社長(2022/12/11)
三井不動産 植田俊(たかし)専務が社長に 菰田社長は会長へ 岩沙会長は相談役へ(2022/12/9)
野村不動産HD 新社長に副社長の新井聡氏、沓掛英二社長は会長へ(2022/12/14)
「経済・社会の発展に貢献」不動協・菰田理事長/日本を「菅」変える 新年賀詞交歓会
菰田理事長
不動産協会と不動産流通経営協会(FRK)は2023年1月6日、合同新年賀詞交歓会を開催。不動産協会・菰田正信理事長(三井不動産社長)は次のように挨拶した。
皆様、明けましておめでとうございます。不動産協会理事長の菰田でございます。
本日は不動産協会、不動産流通経営協会合同の新年賀詞交歓会に、斉藤国土交通大臣をはじめ、日頃よりご指導いただいております国会議員の先生方、関係諸官庁・友好団体や報道関係の皆様など、多数ご出席いただき、まことにありがとうございます。主催者を代表いたしまして、ひとこと年頭のご挨拶を申し上げます。
新年賀詞交歓会は3年ぶりに開催することができました。コロナ対策をしっかりと講じながら、進めていきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
まず、昨年を振り返ってみますと、コロナ禍は想定以上に長引いているものの、ワクチンと治療薬の普及とウイルスの弱毒化によりコロナと共生できる環境になりつつあり、次第に経済活動の正常化が図られてきました。
コロナに代わって最大の脅威となったのがロシアのウクライナ侵攻であります。世界平和を守る秩序が真っ向から否定された形となり、未だに解決の糸口が見出せない状況です。
経済面でもコロナからの回復による需要急増とロシア・ウクライナ紛争などによる供給制約で世界の各国でインフレが急速に進行し、それを抑えるために金融の引き締めが行われました。国内では金融緩和を継続したこともあって、為替が大きく円安に振れました。今後も海外経済の下ぶれが懸念されるなど、先行きについては非常に不透明な状況にあります。
今年の展望ですが、ロシア・ウクライナの紛争は長期化を覚悟せざるを得ない状況ですし、経済についても物価・金利・為替など非常にボラティリティの高い状態が続く見通しです。
ただ、コロナ禍については、コロナ後の世界がある程度見通せる状況になって来ましたので、今年はコロナがもたらした価値観や社会構造の不可逆的な変化を的確に捉えて、コロナ後の世界で持続的な成長を果たすための新たな飛躍の年にしなければなりません。
コロナの拡大は、DXの進展や価値観の多様化等、コロナ以前から進んでいた構造的な変化を大きく加速させ、それに伴って不動産業を取り巻く環境や求められる役割も大きく変わってきております。リモートワークが浸透する一方、リアル空間でのコミュニケーションの重要性も再認識され、リアルとデジタルの組み合わせの最適化が重要になってきています。また、国を挙げてGXが推進される中、まちづくりや住まいの環境整備を通じて、2050年カーボンニュートラルの実現に貢献することが求められます。
当協会では、そうした観点から、税制および政策について、要望活動を積極的に進めております。先日決定された令和5年度与党税制改正大綱では、最重点要望であった「長期保有土地に係る事業用資産の買換え特例」と「都市再生促進税制」の延長が認められたのをはじめ、当協会の主要な要望は概ね認めていただいています。経済の力強い成長に寄与する措置として大いに歓迎したいと思います。ご尽力いただいた先生方、関係の皆様方に、厚く御礼申し上げます。
さて、今後の協会の活動として、環境政策につきましては、「GXの先導的対応」と「豊かなまちづくり」を同時達成する実効性の高い脱炭素施策推進を支援することが必要です。
そうした中で、建物・都市の脱炭素化を目指し、省エネ政策強化への能動的対応を行うとともに、再エネ導入・利活用の促進を図っていきます。
また、木造化促進への基盤整備を行うとともに、省エネ性能の劣る数多くの既存ストックに対する脱炭素政策を強化することも極めて重要と考えます。
都市政策につきましては、都市構造の変化に対応し、ストック利活用を有効に進めるため、土地利用・建築規制の一層の柔軟化に取り組みます。また、国際競争力強化のため、世界からヒト・モノ・カネ・情報が集まるような、時代をリードする都市開発の進展が必要であり、再開発等諸課題ヘの対応に取り組みます。
住宅政策につきましては、良質な住宅ストックの形成・循環に向け、ZEH等環境性能の高い住宅の供給支援に取り組みます。併せて、建替えの促進、長期優良住宅の普及促進に必要な取組みを行います。また、防災性能の向上に向けた対応を行うほか、子育て世帯等への支援措置の充実を図るとともに、新しい働き方への対応に関する支援拡充に向けた働きかけを行います。
その他、国際化への対応を進めるほか、事業環境の整備について、物流不動産やリゾートの開発なども対象として、幅広く取り組んでまいります。
当協会としては、国民の暮らしを豊かにするまちづくりや住環境の整備を通じ、我が国の経済・社会の発展に向けて、貢献していきたいと考えておりますので、引き続きご理解、ご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
結びにあたりまして、皆様の一層のご活躍とご健勝をお祈りし、また今年一年が皆様や国民にとって明るく良い年となることを祈念申し上げて、私の挨拶とさせていただきます。
不動産協会・不動産流通経営協会(FRK) 合同新年賀詞交歓会(ホテルオークラで)
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来賓として挨拶した国土交通大臣・斉藤鉄夫氏は「不動産業はわが国の豊かな国民生活や経済成長を支える重要な基幹産業であり、国土交通省も皆さんと連携しながら様々な施策を推進している。令和5年度の税制改正では、事業用資産の買換え特例の延長など主要な税制の拡充・延長が認められた。こうした施策を通じ、経済の好循環を支え、不動産市場の活性化を図っていく。また、政府全体で取り組んでいるデジタル田園都市国家構想の実現に向けた建築・都市のDXの推進や2050年カーボンニュートラルの実現に向け、必要な施策の推進に努めていく。国民の住まいの場や働く場を提供する不動産事業にはこれまで以上の大きな期待が寄せられている」と述べた。
斉藤氏
ピンチをチャンスに 明るい日本へ「菅」変える
続いて登壇した前総理・菅義偉氏は、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに為替が1ドル150円の円安に振れたことについて触れ、「あまりにも円安のデメリットだけが強調されていると思えてならない。メリットも多くある。円安のメリットを最大限に活用した対策を講じることが大事。そてし、それはインバウンドであり、農産物の輸出であり、国内の投資だ。インバウンドは、安倍内閣のもと7年間で840万人から3200万人に増え、消費額も約1兆円から5兆円であります。地方の地価も27年ぶりに上昇した。2020年の目標4000万人はコロナのためにストップしたが、2030年目標の6000万人は達成可能。ピンチをチャンスとして捉え、日本を明るい国にすげかえる(「菅」変えると記者は聞こえた)よう取り組んでいかなければならない」と語った。(菅氏が立派なのか、参加者が行儀よいのか、あの時のように会場は水を打ったように静まり返った)
菅氏
また、前自民党税制調査会会長で衆院議員・甘利明氏は「夢を形にするのが皆さんの仕事、障害を取っ払っていくのが我々の仕事であります。いま日本で一番足りないのは、明日は今日よりきっといい、高度成長期に全国民が共有したわくわくする思い、教育が出来ていないことだが、DXの普及によって、今までできなかったことが、夢を形にすることができるようになってくる。来年が待ち遠しい、わくわくする街づくりのために今年も健闘されることをお祈りします」とエールを送った。
甘利氏
乾杯の音頭をとったFRK理事長・竹村信昭氏は、「令和5年度の税制改正で、長寿命化に資する大規模改修を行なったマンションに固定資産税を減額するという税制が盛り込まれたのは画期的であり、事業用資産の買換え特例の延長や空き家に係る譲渡所得控除の延長と共に既存住宅流通市場の裾野を広げる非常にありがたい税制と評価」し、不動産流通市場については「東日本レインズのデータが示す通り、首都圏の2022年の首都圏の既存マンションの成約価格は前年比プラスを維持するなど総じて底堅く推移した。今年はウィズコロナでの経済活動の正常化、不動産市場の安定が期待されているが、これに応えるため業界としてしっかり取り組んでいく。中でも、ライフスタイルの変化に合わせて一生のうちに何度でも住み替えを可能とする長期ビジョン『住宅循環システム』の構築について、税制を始めとする政策面での支援を頂き、他団体とも連携しながら、必ずやその実現を目指し注力していく」と語った。
竹村氏
「こだわり記事」本数はコロナ前から半減…でも〝記事はラブレター〟貫く
「静物」(油彩、F6号)
本日(12月28日)のこの記事が、今年最後のRBAタイムズWeb版「こだわり記事」です。独断と偏見に満ちた、時には〝毒〟を含むこのWebサイト「こだわり記事」にお付き合い頂いている皆さまに感謝申し上げます。皆さまは神様です。
さて、今年の「こだわり記事」発信本数は約440本。本数はコロナ前から半減しました。RBA野球大会が3年連続中止になり、さらにわたしの守備範囲である分譲マンション・分譲戸建ての現場取材も例年の半分に激減したことがその主な理由です。
しかし〝記事はラブレター〟。減った分だけ中身を濃くし、各社から発表されるプレス・リリースをそのままコピペするようなことは極力避け、わたしなりの論評を加えたつもりです。
取材不足は否めませんが、新築分譲住宅市場はマンション、戸建てとも用地難・建築費上昇が続き、平均的な住宅購入検討者の取得限界を超えているものの、低金利を背景に新しい生活様式などの浸透もあり、選択肢も増えたことなどから堅調に推移したと実感しております。
中古市場は成約件数の減少が続いている一方で成約単価、在庫単価の上昇が継続しており、先高観を反映していると思われます。中長期的に見て市場が拡大するのは間違いないはずです。
今後の見通しは、日銀が先に大規模金融緩和策を見直し、これまでプラスマイナス0.25%としていた長期金利の変動幅をプラスマイナス0.5%程度に拡大すると発表したことから、住宅ローン金利は上昇基調に転じ、住宅価格下げ圧力も強まると思われますが、この利上げ幅ならば直ちに住宅市場に大きな影響を及ぼすことはないのではないかと考えております。
とはいえ、自然災害と同様、先が全く読めない地政学的なリスク、物価高による消費動向がどう変わるか不確定要素が多く、先行き不透明感は増しています。皆さまの創意と工夫によりこの難局を乗り切り、課題を解決されることを期待しております。
皆さまにとって、来年が輝かしい年であることを祈念いたします。わたしも年々弱っている腕力を筆の力に置き換え、書ける限りの力を振り絞って、少しでも住宅・不動産業界の役に立てるよう記事を発信していくことをお約束いたします。
ブラボー!
今年のマンション №1は「THE YOKOHAMA FRONT TOWER」1年を振り返る(2022/12/26)
暦年の分譲住宅 持家をリード 16年ぶり上回るか 国土交通省 11月の住宅着工
国土交通省は12月27日、令和4年11月の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は72,372戸(前年同月比1.4%減)で2か月連続の減少。内訳は、持家は 21,511戸(同15.1%減)で12か月連続減少、貸家は29,873戸(同11.4%増)で21か月連続の増加、分譲住宅は20,642戸(同0.8%減)で4か月ぶりの減少となった。分譲住宅の内訳は、マンション8,092戸(同1.8%減)で4か月ぶりの減少、一戸建住宅12,370戸(同1.1%減)で19か月ぶりの減少。
首都圏マンションは4,456戸(同46.5%増)で、都県別では東京都2,868戸(同77.0%増)、神奈川県866戸(同-6.7%減)、埼玉県500戸(同53.4%増)、千葉県222戸(同32.9%増)。
1~11月では総数47,580戸(前年同期比3.0%増)で、都県別では東京都27,031戸(同4.7%減)、神奈川県10,340戸(同3.0%減)、埼玉県5,273戸(同41.0%増)、千葉県4,936戸(同44.8%増)となっており、相対的に価格が高い東京都と神奈川県が減少、埼玉、千葉の着工増が目立っている。
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令和4年1月~11月では持家233,519戸(前年同期比11.2%減)で、分譲住宅235,287戸(同5.0%増)となっており、その差1,768戸。残り1か月。分譲住宅が持家を上回れば2006年(平成18年)以来16年ぶりとなるが、僅差だけに果たしてどうなるか。
また、1~11月のマンションでは、近畿圏が21,776戸(同11.6%増)なのに対し、その他地方は22,175戸(同9.5%増)。こちらもデッドヒートを展開している。
東京都の新型コロナ感染に関する記事 12月27日をもって終了
東京都はこの日(27日)、新型コロナによる死亡者は21人確認されたと発表した。都の発表資料には、亡くなった人のデータは番号、年代、性別、居住地(都内)、診断日、死亡日しか記載されていないが、ほとんどは70歳以上の人で、診断日から数日後に亡くなられている人が圧倒的に多いのが特徴だ。
病院に運び込まれたときはすでに手遅れなのか。90代の男性は診断日が12月21日、死亡したのは当日、100歳以上の女性の診断日は12月23日、死亡日は翌日の24日とある。
死亡者に高齢者の方が多いのは、それだれ自然治癒力、抵抗力が弱まっているからだろうが、高齢者だけとは限らない。この日も一人、30代女性の人が亡くなっている。診断日は12月15日、死亡が確認されたのは3日後の25日だ。新型コロナの恐ろしさがここにある。ご本人やご家族、友人、知人など関係者の心中を慮るといたたまれなくなる。
27日現在の累計感染者は都民の人口約138万人(令和4年1月現在)の約28.3%に当たる3,923,593人、累計死亡者は6,685人となった。
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2020年2月26日に丸の内北口ビル地階の喫煙室に掲出された文書
記者が東京都の新型コロナに関する記事を最初に発信したのは、2019年2月26日付の「こだわり記事」だった。見出しは「二・二六事件の日に 社会的弱者=喫煙者に対する全面攻撃「喫煙室」閉鎖!」と打った。当時勤務していた東京・丸の内北口ビル地階の喫煙室に「当分の間閉鎖する」と張り紙が貼られたのを報じたものだ。
その後、4月に入ってからほぼ毎日、東京都のオープンデータから感染者の年齢、男女別、経路不明比率、職業などをチェックし記事として発信してきた。〝記事はラブレター〟-住宅・不動産業界で働く方々に少しでも役に立ちたいと思ったからだ。
あれから2年8か月。当否はともかくそれなりの反響があった。2020年5月11日に記事にした「新型コロナ 感染経路不明者が減らない理由 〝闇社会〟〝二重就業〟も一因」には約7.1万件(本日現在)のアクセスがあるなど、トータルでは20万件くらいにのぼるのではないか。少しは感染拡大防止に注意喚起できたのではないか。
最近は更新するのは2日に1回くらいになった。小生が毎日発信しなくともテレビや新聞が報じているし、書く意味もなんだか分からなくなってきたからだ。なので、本日をもって、とりあえず都の新型コロナ感染に関する記事掲載を終了する。
亡くなられた方々には衷心からご冥福を祈り、ご家族、友人知人など関係者の皆さんには心からお悔やみ申し上げます。
新型コロナは「死に至る病」でなく〝絶望〟とも無縁 若い人の感染者が多い理由(2020/6/24)
新型コロナ直撃 訪日外国人 2月は前年同月比58%減 中国88%、韓国80%減(2020/3/19)
二・二六事件の日に 社会的弱者=喫煙者に対する全面攻撃「喫煙室」閉鎖!(2019/2/26)
リッチモンド&CCC 地域と街に開かれたホテル「押上」 リニューアルオープン
「リッチモンドホテルプレミア東京スコーレ」
ロイヤルホールディングスのホテル事業を展開するアールエヌティーホテルズは12月27日、「リッチモンドホテルプレミア東京押上」を「リッチモンドホテルプレミア東京スコーレ」に名称変更し、CCCグループがデザインした「SHARE LOUNGE」や「コンセプトフロア」のほかサウナルームなどを備えた同社初の体験型ホテルとしてリニューアルオープンする。オープンに先立つ12月22日、リニューアルした施設をメディアに公開した。今後のホテル展開に一石を投じる画期的な施設になるのではないか。
CCCがデザインした「SHARE LOUNGE 押上」は5階フロアにあり、延床面積は約113坪。102席と約1,300冊の書籍を備え、「シェアオフィス」の利便性と「ラウンジ」の居心地の良さを演出している。
13階の「コンセプトフロア」は、「Club “Culture”」をコンセプトに、廊下にはアートもディレクションするなど、フロア全体で “体験し、楽しむ”ホテルステイを提案。各部屋は、テーマをそれぞれ「BOOK」「映像」「ゲーム」「JAPAN」に設定。
6階の「サウナルーム」は、かつて隅田川沿いには宿場が軒を連ねていたことに発想を得て、“湯屋”をコンセプトに「Saunaルーム」や「Spaルーム」など4つの部屋タイプを用意している。
メディア説明内覧会に臨んだロイヤルホールディングス執行役員 ホテル事業担当 アールエヌティーホテルズ代表取締役・本山浩平氏は、「リッチモンドホテルの客室稼働率は今年3月以降7か月連続して80%を超えており、8月以降から潮目が変わったと実感している。今後の事業展開は、当社にしかできない『人』と『食』の共通プラットホームを根底に、宿泊特化型からインバウンド、レジャー、高効率型など付加価値型を目指す」と語った。
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)首都圏カンパニー社長・安田秀敏氏は「『SHARE LOUNGE』は2019年開業の『渋谷』を始めこれまで6エリア21店舗に拡大しており、ホテルに設置するのは今回が初めて。当社ならではの書籍、インテリア、意匠、機器、雑貨などを用いて多層的に演出し、交流型ホテルのトレンドでもある街の歴史や文化、地域との交流が生まれるようにデザインした」と語った。
リッチモンドホテルズグループは、「人を付加価値とする」をコンセプトに全国43ホテルを展開。「スコーレ」は余暇を自分らしく過ごすことを意味するギリシャ語。ホテル名称には、趣味に没頭する、サウナでくつろぐ、心ゆくまでカルチャーを楽しんでほしいという想いが込められている。
「リッチモンドホテルプレミア東京スコーレ」は、東京メトロ押上駅から徒歩1分、墨田区押上1丁目に位置する13階建て延床面積約11,432㎡。客室数は152室(従前は260室)。
本山氏(左)と安田氏
「SHARE LOUNGE」
「SHARE LOUNGE」
◇ ◆ ◇
CCCの「SHARE LOUNGE」を取材・利用するのは今回で5度目。最高に素晴らしい。1時間2,000円前後で飲み放題・食べ放題というこの種の店舗など他にはないはずだ。記者はキーボードとマウスがないとパソコンを操れないので、貸し出しも可能にしてほしい。
13階の「コンセプトフロア」もいい。担当者から墨田区は葛飾北斎が生まれて育った地だったことを聞いた。北斎は「冨嶽三十六景」で知られるが、渓斎英泉、歌川国芳、鈴木春信、歌川国貞などとともに美しくて卑猥な春画もたくさん描いている。一昨年見学した積水ハウスの民泊運用型セカンドハウス「YANAKA SOW」の「愛とエロス」の客室には、これらの絵師が描いた「Shunga」本が置かれていた。リッチモンドも備えたら、真っ先に予約が入ること請け合いだ。
従前は2室だったのを1室にして70㎡を確保した4人利用可能のモダンジャパニーズスタイルのルームチャージは4.2万円~というから、一人当たり1万円だ。
6階の「サウナルーム」も「コンセプトフロア」と甲乙つけがたい出来栄えだ。本物のヒノキがふんだんに用いられており、風呂好きにはたまらないのではないか。71㎡のサウナ+Spaタイプでもルームチャージは30,000円~だ。
記者は、宿泊特化型は言うまでもなく、ラグジュアリーホテルもまた街や地域に背を向けているのが難点だと思っている。店舗付きオフィスビルにも言えることだが、どこかよそ者を受け付けない雰囲気が漂っている。
今回の同社とcccの提案は、そのような難点を解消するものだ。日常づかいでホテルが利用できる。少し気になったのは、6階も13階も豪華すぎて、街に出るよりずっと客室にとじ籠ることになりはしないかということだ。客室に100冊以上の本が置かれていたら、全部読むのに数日かかるではないか。
Spaプレミアツインベッドルーム
Spaプレミアツインベッドルーム
13階「コンセプトフロア」共用部
ザ プレミア ブック ルーム
モダン ジャパニーズ スタイル
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住宅取得環境の厳しさ反映 アルヒ「本当に住みやすい街大賞」
アルヒ 本当に住みやすい街大賞 | ||||||
順位 | 2023年 | 2022年 | 2021年 | 2020年 | 2019年 | 2017年 |
1 | 西八王子 | 辻堂 | 川口 | 川口 | 赤羽 | 南阿佐ヶ谷 |
2 | 流山おおたかの森 | 川口 | 大泉学園 | 赤羽 | 南阿佐ヶ谷 | 勝どき |
3 | 新小岩 | 多摩境 | 辻堂 | たまプラーザ | 日暮里 | 赤羽 |
4 | 保谷 | 大泉学園 | 有明テニスの森 | 柏の葉キャンパス | 川口 | 三郷中央 |
5 | 辻堂 | 海浜幕張 | 大井町 | 入谷 | 柏の葉キャンパス | 戸塚 |
6 | 柏 | たまプラーザ | たまプラーザ | 王子 | 勝どき | 南千住 |
7 | 新川崎 | 花小金井 | 小岩 | 武蔵小金井 | 南千住 | 大泉学園 |
8 | 川越 | 月島 | 花小金井 | 小岩 | 千葉NT中央 | 千葉NT中央 |
9 | 東村山 | 船堀 | 千葉NT中央 | ひばりヶ丘 | 小岩 | 小岩 |
10 | 鶴ケ峰 | 新秋津 | 浦和美園 | 東雲 | 矢向 | 浮間舟渡 |
アルヒ 本当に住みやすい街大賞 シニアランキング | ||||||
1 | 浜町 | ひばりヶ丘 | 武蔵小山 | 木場 | 大泉学園 | |
2 | 西白井 | 稲毛海岸 | 南大沢 | 大泉学園 | 神田 | |
3 | 大泉学園 | 相模大野 | 平塚 | 平塚 | 印西牧の原 |
年末に発表される「流行語大賞」や「今年の漢字」と張り合う意図もあるのか、今年もARUHI(アルヒ)の「本当に住みやすい街大賞2022」(大賞)が先日発表された。ほぼ毎日チェックする不動産流通研究所「R.E.port」は触れず、週刊住宅と住宅新報が報じたばっかりに知ることになった。善と悪も正と邪も、白と黒も右も左も区別がつかなくなった世の中だ。ほっとけばいいのに、頭の片隅にかすかに残っている正義感が頭をもたげたので書くことにする。今回で3度目だ。来年は書かなくて済むようになってほしい。
さて、その大賞。始まったのは2017年だ。アルヒは「理想ではなく、実際にその地域で〝生活する〟という視点から、ARUHIのサービスをご利用のお客さまの膨大なデータを基に、本当に住みやすい街を選定することで、人々の住まい選びの参考になることを目的」とし、「これらのデータを基に、住環境、交通の利便性、教育・文化環境、コストパフォーマンス、発展性の5つの基準を設定し、住宅や不動産の専門家が参画する選定委員会による公平な審査」のもと選定したと発表した。
そのリストをみて記者は驚いた。上位にランクされた「南阿佐ヶ谷」「勝どき」「赤羽」は〝いい街〟だとは思ったが、当時、マンションの売れ行きが最悪だった「三郷中央」が4位に入っており、ほとんど供給がない「浮間舟渡」がベスト10入りしていたからだ。その他ベスト10入りした街のレベルならほかにも数えきれないほどあると思った。
馬鹿馬鹿しくて無視を決め込んだのだが、その後も大賞はお笑いタレントなどを起用して大々的に宣伝され、それを無批判に報じる業界紙の無神経さにいささか腹を立て、一昨年と昨年、批判的な記事を書いた。それぞれ約3,000件のアクセスがあったので、読まれた読者もいるのだろう。ご存じない読者の方もいるだろうから、過去6年間の大賞のベスト10を別表に紹介する。
今年は「西八王子」がトップだ。記者は完全に虚を突かれた。「西八王子」は14年前見学した野村不動産「プラウド西八王子」以後、一回も訪れていない。再開発で街が一変でもしたのだろうかと、選定理由を読んだら、八王子IC付近に次世代型複合商業施設が予定されており、JR八王子駅は生活圏で、3LDKのマンションが4,000万円台で、新築戸建てが3,000万円台で購入可能とあった。
なるほど。その論法が成り立つなら、価格上昇が著しい主要駅の隣駅が〝本当に住みやすい〟駅・街になるということだ。わが京王線でいえば、「調布」の先の「西調布」「京王多摩川」、「聖蹟桜ヶ丘」の先の「百草園」、「京王多摩センター」の先の「京王堀之内」、「南大沢」の先の「多摩境」(この多摩境は昨年ベスト10入りしている)ということか。
これはこれで分かりいい。毎年ベスト10入りする駅は乱高下どころか、月光仮面やスーパーマンのように突如現れ、たちまち消える理由の説明がつく。
今年2位に浮上した「流山おおたかの森」もその一つなのだろうが、小生は異論はない。〝母になるなら〟〝父になるなら〟でヒットした井崎市政のお陰だと思う。ただ、この駅・街はもう10年以上前から人気になっている。いまさらという観は否めない。
このほかの駅・街には触れないが、不思議なのは、「大賞」と「シニアランキング」のいずれかに唯一6年連続ランクインしている「大泉学園」だ。記者もいい街だとは思うが、この程度(失礼)の街は首都圏に100か所も200か所もあると思う。アルヒや選考委員、あるいはその関係者が住んでいるのではないかと勘繰りたくなる。
不思議といえば、西武線は「大泉学園」を含め「ひばりヶ丘」「保谷」「新秋津(秋津)」「東村山」「花小金井」の6駅がランクインしていることだ。これは先に書いたように「石神井公園」や「所沢」の前後の駅で、狭小戸建ての〝メッカ〟の一つであるからだろう。
この伝でいえば、街のポテンシャルは西武線に負けない京王線は過去6年間で「多摩境」「南大沢」2駅しかなく、小田急線も「相模大野」のみというのも納得できる。
大賞の審査委員長を務める住宅ジャーナリスト・櫻井幸雄氏も週刊住宅12月19日号のコラム記事で「ブーイングもあるがインパクトも大」とし、「無名とも言える街が多く選ばれたり、昨年大賞の辻堂が今年5位に下がったりするのが、『本当に住みやすい街大賞』の特徴」とし、「なぜ、そのようなことが起きるかというと、『直近1年間で、フラット35の利用者が多かった街』を選考対象としているから。フラット35だから、利用者は年収500万円前後が多くなる。平均的な方々だ。『普通の人』がマイホームを買いやすい街から、諸条件を勘案して、ベストな街を選ぶ」「ために、マイナーな駅でも再開発によって、一気に大賞に輝くことがある。大賞となったものの、その後人気上昇で価格も上がれば、順位が落ちる」と述べている。
櫻井氏が「ブーイングもあるが」としているのは、小生以外も批判的にみている業界関係者も多いということだろうが、「大賞となったものの、その後人気上昇で価格も上がれば、順位が落ちる」としているのは自己撞着だ。自らマイナーな駅を〝住みやすい〟と持ち上げながら、価格が上昇し〝普通の人〟が買えなくなったらお役御免と切り捨てる。
これはあまりにも消費者を馬鹿にしていないか。フラット35の利用者は〝普通の人〟が多いのは記者もよく分かるが、取得能力からして〝理想の住宅〟購入をあきらめざるを得ず、次善の選択肢として、いくつかの選好要因を捨てることでマイホームを手にするという、普通の人の厳しい住宅取得環境を大賞は浮き彫りにしている。それを笑いの種にする。その神経が分からない。マッチポンプといったら失礼か。
そもそも、同社は調査対象となった物件の数を公表していないし、年間20兆円を超える住宅ローン貸出総額に占める同社のフラット35利用者は微々たるものでしかない。大賞を選考した根拠となる利用者の母数、属性などを公表すべきだ。
だが、しかし、アルヒを通じて住宅を購入された方に罪はない。〝住めば都〟〝痘痕もえくぼ〟だ。どんなマイナーな駅でもいいところはあるものだし、美しいところだけを見るようにすれば、多少の難点など全然気にならなくなる。
普通の人に住宅を勧める業界関係者の方々も同様だ。十全のマンションも戸建てもほとんど存在しない。難点をカバーする企画でもって良質で安価な住宅を供給していただきたい。
◇ ◆ ◇
アルヒの本業は、このところの住宅価格と長期金利の上昇により苦境に立たされているようだ。
住宅金融支援機構のデータによると、2021年度のフラット35の申請戸数は94,705戸(前年度比86.3%)、実績戸数71,788戸(同86.0%)、実績金額22,127億円(同86.4%)となっている。2021年度の住宅ローン新規貸出額は約21兆円で、6年連続20兆円を超えているが、フラット35の利用者は漸減傾向にある。
一方、フラット35の融資実行件数シェアは27%を超え、12年連続シェアNo.1のアルヒの2022年3月期決算の売上高は251億円(前期比6.1%減)、営業利益61億円(同20.6%減)、経常利益42億円(同18.1減)となっており、融資実行業務は121億円(同14.5%減)と大幅に落ち込んだ。融資実行件数は4,691件(同27.1%減)、融資実行金額(累計)は6,580億円(同15.7%減)。
2022年10月27日には通期予想を下方修正し、売上高245億円(期初予想比11.6%減)、営業利益45億円(同28.6%減)、当期利益31億円(同27.96%減)を見込んでいる。期末配当予想も30円から25円に減配する予定。
この業績について、代表取締役社長CEO兼COO・勝屋敏彦氏は「フラット市場は非常に厳しい環境にある。物価高、建築費の上昇を要因とする住宅価格の上昇のほか、長期金利の上昇によって固定金利より変動金利を選択される人が増加したのが要因。今後はSBIグループのTOBにより連結子会社になったが、変動金利にも対応できるよう守備範囲を広げ、シナジー効果の創出に期待している」などと決算説明会で話している。
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