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 わが国の町内会組織など自主団体研究の第一人者である山梨学院大学法学部特任教授・日高昭夫氏は、詳細な情報を持ち合わせていないと断ったうえで、千代田区番町の地区計画変更に関して次のようなコメントを寄せた。

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 ポイントは、①地区計画決定過程で必要な「地区住民等の意見」にいう「地区住民等」が町会長等の意見で代表できるのか②その町会長の意見がそもそも町会を代表する正当性を有しているのか、といった点かと理解しました。

 このうち、①については、かつて山梨県の旧明野村の産業廃棄物処理場建設問題で、区長(自治会長)の意見を地区住民の意見として建設を進めた山梨県の行政対応が、その後深刻な行政対住民の対立と住民間の分断を生み、長期にわたって混乱と大きな行政コストをもたらしたことを思い出しました。

 千代田区の場合も、地区計画の趣旨に沿って、丁寧な地区住民の意見を聞く最初の手続きを誤れば、同様の結末にならないか懸念されます。

 私個人の見解ですが、行政が地区住民の代表として町会長の意見を日常的に聞くなどの仕組みや慣例そのものは、一概に批判されるものではないと思っていますが、それはあくまで日常的あるいは(暗黙にであれ)広く合意されている事項に限定されると思います。非日常的で合意が形成されていない事項についてまで、町会長に白紙委任されていると考えるべきではないと考えます。

 そこで、②についてですが、地区住民間で十分な合意が形成されていない事案で、しかも地区計画の本質的変更につながるような重要事項について町会長が公式に対外的に意見を表明する場合には、少なくとも町会としての明確な合意形成が前提条件ではないかと思います。

 その意味で、町会のガバナンスを問う今回の訴訟は画期的で、大変興味深いものだと思います。

 ただ、訴状の詳細も分かりませんし、私的自治がどう評価されるか、町会規約がどのようになっているか、メンバーシップや総会の規定など細かい点は不明ですので、どのような展開になるかはなんともいえません。

全国初 町会の民主的運営を問う裁判提起 二番町(日テレ通り)再開発の是非(2023/3/16)

管理協 地域共生セミナー 「管理組合と自治会は車の両輪」(2011/9/20)

 

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多摩市立グリーンライブセンター

 東京都多摩市にある「恵泉女学園大学」の閉学が3月22日決まった。同日、学校法人恵泉女学園理事長・学園長・学長の3氏は連名で「学校法人恵泉女学園は、2024年度以降の恵泉女学園大学・大学院の学生募集停止を、2023年3月20日開催の理事会において決定した」と発表した。近年の東京都内の4年制大学の閉学は、平成29年の東京女学館大学に次いで2件目。

 同大学は「重要なお知らせ」として、「1988年の開学以来、神と人とに仕え、自然を慈しみ、世界に心を開き、平和の実現のために貢献できる女性を育成する最高学府として、多くの卒業生を輩出してまいりました。しかしながら、18歳人口の減少、とくに近年は共学志向など社会情勢の変化の中で、入学者数の定員割れが続き、大学部門の金融資産を確保・維持することが厳しくなりました。これまで大学存続のためにあらゆる可能性を模索し、将来のありかたについて慎重に検討を重ねてまいりましたが、このたび閉学を前提とした募集停止という苦渋の決断に至りました」と綴っている。

 また、学長・大日向雅美氏は同日の「学長の部屋」で、「自然に恵まれた美しいキャンパスの中、小規模大学の特性を生かした丁寧な教育のもと、学生一人ひとりが自分の大切さに気づき、他者を尊重する心を育みながらしなやかに成長していく姿を間近に見ることができることは、これに勝る喜びはありません」「卒業生にとっていずれ母校がなくなる日が迫っていることを思うとき、言葉もありません」「近年の国内外の情勢をみるとき、河井先生が目指された"『聖書』『国際』『園芸』の学びを礎として世界平和の構築に尽くす自立した女性"を育成する使命は、今、改めて求められているところと考えます」と述べている。

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 多摩市民の記者は、「京王プラザホテル多摩」が今年1月で営業停止となったのにもショックを受けたが、今回の恵泉女学園の閉学決定に同じような衝撃を受けた。

 キャンパスは、多摩センター駅からバスで約10分の多摩市南野2丁目に位置し、一本杉公園に近接。同大学はアダプト制度によるパルテノン通り沿いの植栽枡内の花壇の管理を行っており、年間4万人以上の利用者がいる多摩市立グリーンライブセンターの運営にも関わっている。

 同大学には用もないから数えるほどしか訪れたことはないが、わが国を含め全世界がファシズムへの道をまっしぐらに突き進んでいた1929年、女性キリスト者・河井道によって創立された同学園の建学の精神「神を畏れ 人を愛し いのちを育む」には胸を打たれる。

 バブル崩壊でデパート(そごう-三越)が消え、そして今年、開業33年にしてホテルが営業中止となり、今回の同大学の閉学決定だ。いま分譲されている三菱地所レジデンスなど錚々たるデベロッパーが名を連ねる「THE GRAND CROSS多摩センター(ザ・グランクロス多摩センター)」の坪単価252万円は、埼玉や千葉の郊外でやっと供給できるレベルの安さだ。単価は「橋本」に瞬く間に追いつかれ、坪100~150万円近く引き離されそうだ。多摩センターは地盤沈下する一方だ。

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グリーンライブセンターのボレロ

みどりの価値再認識すべき 三菱地所レジなど6社JV「多摩センター」は坪252万円(2023/3/21)

多摩グリーンボランティア森木会 10周年&「緑の都市賞」受賞記念講演会(2011/11/29)

カテゴリ: 2022年度

 国土交通省は3月22日、令和5年1月1日時点の令和5年地価公示を発表。新型コロナの影響で弱含んでいた地価は、景気が緩やかに持ち直している中、地域や用途などにより差があるものの、2年連続で上昇。都市部を中心に上昇が継続するとともに、地方部においても上昇範囲が広がるなど、コロナ前への回復傾向が顕著となった。

 全国平均では、全用途平均で1.6%(前年は0.6%)、住宅地で1.4%(同0.5%)、商業地で1.8%(同0.4%)といずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。

 三大都市圏では、全用途平均で2.1%(同0.7%)、住宅地で1.7%(同0.5%)、商業地で2.9%(同0.7%)上昇。東京圏は全用途で2.4%(同0.8%)、住宅地で2.1%(同0.6%)、商業地で3.0%(同0.7%)上昇となり、大阪圏、名古屋圏も全用途で2年連続上昇し、上昇率が拡大した。

 地方圏では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大。地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも10年連続で上昇し、上昇率が拡大した。

 その他の地域では、全用途平均・商業地は3年ぶり、住宅地は28年ぶりに上昇に転じた。

 都道府県別では、変動率がプラスの住宅地は前年の20から24に増え、変動率がマイナスの都道府県は前年の27から22へ減少。商業地は変動率がプラスの都道府県は15から23に増加、変動率がマイナスの都道府県は29から23へ減少した。

 変動率トップ10では、住宅地は北海道北広島市共栄町1丁目の59,800円/㎡(変動率30.0%)を筆頭に全て北海道。商業地も北広島市栄町1丁目の86,000円/㎡(同38.4%)以下全て北海道。

 三大都市圏の最高価格は、住宅地は東京圏は港区赤坂1丁目の5,120,000円/㎡(変動率2.4%)、大阪圏は大阪市福島区福島3丁目の1,160,000円/㎡(同7.4%)、名古屋圏は名古屋市中区栄2丁目の1,700,000円/㎡(同8.3%)。商業地は東京圏は中央区銀座4丁目(山野楽器本店)の53,800,000円/㎡(変動率1.5%)、大阪圏は大阪市北区大深町(グランフロント大阪)の22,400,000円/㎡(同1.4%)、名古屋圏は名古屋市中村区名駅4丁目(ミッドランドスクエア)の19,000,000円/㎡(同2.7%)。

購入者の4割が道外 日本エスコン 日ハム新球場に隣接マンション118戸完売(2022/9/21)

 

 

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お客様心理の変化に敏感に対応

野村不動産代表取締役社長・松尾大作氏

 今回の地価公示は、コロナ前への回復傾向が顕著となり、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも、2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。住宅地については3 大都市圏・地方圏のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大、商業地については大阪圏が3年ぶりに上昇に転じたことで、三大都市圏・地方圏いずれにおいても上昇し、上昇率が拡大した。

 住宅市場に関しては、用地案件の減少などにより供給が限られるなかで需要は引き続き堅調であり、売れ行き好調な状況が続いている。共働き世帯の増加やテレワークの浸透等により、住まいで過ごす時間を豊かにしたいという新たな需要が生まれたことなどを背景に、中古を含めて需要は底堅く、また富裕層の動きも活発である。今後は、多様化するニーズを捉えた商品企画や、CO2排出量実質ゼロ住宅、駐車場へのEV 充電設備設置、国産木材の活用など脱炭素に寄与するサステナブルな商品・サービスがさらに求められる。

 開発手法の面では、通常の土地取得に加え法定再開発や公有地利活用、その他多様な手法を用いるとともに、地方中核都市におけるコンパクトシティ化へのニーズへ対応した中心市街地の再開発への参画など、継続的かつ中長期的な取組みが大切だと考える。
 なお、注視している建築費の上昇や住宅ローン金利の動向などに加えて、昨今のエネルギーコストの高騰やインフレによる家計への影響など、お客様心理の変化についてこれまで以上に敏感になってゆく必要がある。

 オフィス市場に関しては、賃料は緩やかな下落傾向にあり、空室率は一進一退の状況が続く。一方でオフィスへの回帰や、好調な企業業績を背景にオフィスの拡張移転を行う事例も増えている。リアルなコミュニケーションの再評価や採用拡大など、オフィスの意義や価値を重視し、センターオフィスの機能を充実させる動きもみられるようになった。働き方のニーズはさらに多様化しており、当社ではこうした変化に対応すべく、大規模オフィスに加え、中規模ハイグレードオフィスのPMOシリーズ、サービス付き小規模オフィスのH1O、時間貸しシェアオフィスのH1T などを組み合わせた「オフィスポートフォリオ戦略」を提案することにより、企業のフレキシブルな働き方を支援してゆきたい。また、オフィス空間の提供にとどまらず、入居企業をサービス面から支援する取組みもさらに進化させる必要がある。

 商業市場に関しては、コロナ前の状態に完全に戻ることは難しいと考えるが、食料品などの生活必需品を扱う地域密着型施設を中心に着実に回復に向かっており、独自性のある施設運営により差別化を図っていく。
 ホテル市場に関してはコロナの影響から回復しつつある。すでに国内の利用客増により稼働率は上昇しており、今後のインバウンド需要の戻りによる本格的な需要回復に備える。

 物流市場に関しては、eコマースニーズの拡大を背景に旺盛な需要があり、用地取得競争は過熱しているものの、多様な開発手法を用いて順調に用地取得が進んでいる。当社の開発ノウハウを活かすとともにテナント支援の取組み等をさらに進め、引き続き積極投資を行う。

 当社は、社会環境の変化や人々の価値観の多様化を念頭に置きつつ、これまで同様、お客様一人ひとりの生活や時間に寄り添い新たな価値を生み出す新規事業に取り組むなど、まだ見ぬ価値創造に向け挑戦をし続ける。

 地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。

コロナ前への回復傾向が顕著

三菱地所執行役社長・吉田淳一氏

 令和5年地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2 年連続上昇し、上昇率が拡大した。地域や用途などにより差があるものの、ウィズコロナの下、景気が緩やかに持ち直している中、都市部を中心に上昇が継続するとともに、地方部においても上昇範囲が広がるなど、コロナ前への回復傾向が顕著となったと見られる。

 住宅は、都心の高額物件の需要が引き続き旺盛であり、直近では「ザ・パークハウス広尾」が早期に完売、また最高水準のグレードを目指したザ・パークハウスのフラッグシップシリーズ「ザ・パークハウス グラン 三番町26」の販売も好調に推移している。政府による水際対策緩和に伴い、インバウンドニーズが徐々に顕在化しており、「ザ・パークハウス京都河原町」ではその引き合いを実感している。

 アウトレットでは、国内需要は引き続き好調に推移し、コロナ前と同水準を維持している。昨年10月には当社グループとして約10年ぶりに「ふかや花園プレミアム・アウトレット」が開業し、単なる買い物の場だけでなく、地元地域と共生し、情報発信・観光拠点の場となっている。

 ホテルは、国内需要が底堅く推移しており、昨年10月の入国制限の緩和を受けインバウンド需要が徐々に回復傾向だ。昨年11月には「ザ ロイヤルパークキャンバス 銀座コリドー」を開業した。お酒や音楽などナイトライフをより充実させるコンテンツを提供し、国内外の観光需要をうまく取り込みながら好調なスタートを切った。

 オフィスは、コロナの収束に伴い、業容が拡大している企業を中心に移転検討が活発化しており、リーシングにおいては、都市中心部への需要の底堅さを実感している。本年2月に竣工した「3rd MINAMI AOYAMA」は、次世代のワークスペースとして、各執務フロアにインナー/アウターバルコニーを整備する等、多様な働き方を可能にするオフィス空間を実現し、順調にリーシングが進んでいる。

足元の国際経済情勢などマクロ要因注視

東急不動産代表取締役社長・岡田正志氏 

 今回の地価公示では全国の全用途平均は2年連続で上昇した。昨年までは新型コロナウイルスの影響で地価は弱含んでいたが、アフターコロナをにらんだ人流の回復やテレワークから出社への移行、そしてインバウンドの回復基調などが影響している。ただ、ロシア・ウクライナ情勢による世界情勢の不安定化や世界経済の先行き不安、物価高騰による国内景気への悪影響などの不安定要素もあり、当面は地価の動向を注視していく必要があるとみている。

 地価の上昇地点をみると北海道、特に札幌市近郊の好調さが目立つ。2030年の北海道新幹線の札幌駅への延伸を見据え、札幌駅周辺を中心に市内で開発が進んでいるほか、グループの東急コミュニティーが管理する北広島市の新しい野球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」の周辺でも地価上昇が続くなど、札幌市近郊部の住宅地、商業地にも地価上昇の流れが波及している。札幌市とその近郊に人口集積が進んでいることも影響している。当社も札幌の中心部「すすきの」の玄関口であるススキノラフィラ跡地で、ホテルや商業施設のほかシネマコンプレックスなどが入る2023 年秋開業予定の大型再開発「(仮称)札幌すすきの駅前複合開発計画」(地上18 階建て)を手掛けているほか、環境先進型の分譲マンション「(仮称)ブランズ新札幌」を開発するなど、注目度が高まる札幌市内でも積極的に開発事業を進めている。

 当社は「環境先進企業」を目指して、環境に配慮した事業展開を全国で進めているが、特に北海道では小樽市や松前町、釧路市などで風力発電や太陽光発電所を開発・運営しているほか、石狩市では再生可能エネルギー100%のデータセンターの開発を計画するなど、北海道を重点地域の1つとして事業を推進している。また、インバウンド需要が回復した国際リゾートのニセコでも「ホテルニセコアルペン」のホテルコンドミニアムへの建て替えを含む大規模開発計画「Value up NISEKO 2030」を進めている。

 全国の住宅地をみると都市中心部の希少性の高い立地や、交通利便性等に優れた周辺地域では地価上昇が継続するなど根強い需要がある。低金利環境の継続など政策面でも需要を下支えしている効果がある。また、商業地では都心部を中心に店舗の需要のほか、オフィス需要なども堅調で、地価上昇につながっている。インバウンド需要で地価が過熱気味だった都心部の地価がコロナ禍による需要喪失で下落する場面もあったが、一時的な現象と捉えており、「アフターコロナ」によるインバウンドの復活などで、都市中心部の地価回復は当面続くとみている。

 当社では今年11月に竣工する「Shibuya Sakura Stage」をはじめとする「広域渋谷圏」の100年に一度ともいわれる再開発を、東急グループで連携して進めている。再開発ビルの開発で渋谷のオフィス床面積の拡大や渋谷駅周辺のバリアフリー化を進め、渋谷の街の魅力向上に努めている。都心5 区ではオフィス賃料の下落、空室率の上昇などがみられる地域もあるが、当社の本拠地である渋谷はITやコンテンツ産業を中心にオフィス需要が旺盛で賃料水準も安定し、空室率も低い状態が続いている。

 中長期的な不動産市場については、足元では国際経済情勢などのマクロ要因などを注視する必要があるが、不動産市況は回復基調が続くだろう。中長期的には少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化等、不動産市場を取り巻く環境の変化が続くが、国内外で環境への意識が高まるなか、今後の不動産市場では「環境」が大きなテーマになるとみている。

 当社では2月末時点で開発中も含め全国に86事業、発電能力を示す定格容量で1,405メガワット(一般家庭の年間電力使用量ではさいたま市とほぼ同程度の約67.6万世帯分)の再生可能エネルギー発電所を全国に有しており、この再エネ電気を活用して昨年末、保有する全244施設の再エネ化を完了した。すでにオフィス市場では外資系を中心に「再生可能エネルギーではないビルには入居できない」という企業も出てくるなど、世界的な環境意識の高まりが不動産市況にも影響を与えている。当社はハードだけでなく当社グループの持つ幅広い事業領域を生かしたソフトサービスという付加価値を組み合わせて事業展開を進めていくとともに、再生可能エネルギーの活用のほか、ZEBやZEHなど環境に配慮したオフィスビルやマンションの開発を進めるなど、今後も積極的に環境対応を進めていく方針だ。

 

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左から旭化成ホームズくらしノベーション研究所所長・河合慎一郎氏、同社取締役兼常務執行役員・大和久裕二氏、大渕氏、同社執行役員兼シニア・中高層事業本部長・田辺弘之氏、同社シニアライフ研究所所長・伊藤香織氏

 旭化成ホームズは3月20日、自立~フレイル期シニア向け賃貸住宅「へーベルVillage」入居者への追跡調査を実施した結果、新サービス「安心・安全・健康長寿応援メソッド」が入居者の健康寿命延伸に効果を発揮していることを確認したと発表した。

 調査は2022年8月~2023年1月、自立~フレイル期の「へーベルVillage」入居者112名を対象に実施。対象者の性別は男性27.7%、女性68.8%、年代は70代20%、80代45%、90代以上22%(平均83.8歳)、世帯構成は単身57%、夫婦35%など。調査の結果、健康寿命延伸につながる健康行動(活動量・食事・交流)を維持・向上した入居者割合は97%に達し、フレイル該当者数が約5%減少したことが分かった。

 行動していなかった状態から行動に移せた入居者の割合では、食事が25%と最も多い結果となったほか、活動量では外出頻度が毎日1回以上と答えた割合が15%増加し58%、食事では調理頻度が毎日2回以上と答えた割合が15%増加65%となっている。

 新サービス「安心・安全・健康長寿応援メソッド」は、東京都健康長寿医療センター研究所の介護予防研究テーマ・高齢者健康増進事業支援室研究部長・大渕修一氏と連携し、2022年4月から導入を開始。設計(安全な暮らしと活動・交流を促す住環境)×相談員(定期的に入居者を見守りイキイキとした暮らしを後押しする人)×しかけ(設備による見守りと交流のきっかけ)の3つで入居者の暮らしを後押しし、入居者自らが健康長寿の3条件(活動量・食事・交流)の行動を増やし、健康長寿を実現することを目指している。

 大渕氏は、「このプロジェクトでヘーベルVillage は新しい行動を育む場所になったと考えています。今回の私たちのプロジェクトでは、支援ツールを使いながら生活相談員がプロチャツカとデクレメンテにより開発された行動変容理論に敏感になることを業務としました」とコメントした。

 「へーベルVillage」は、「へーベルハウス」(自立期)⇒「へーベルVillage」(自立~フレイル期)へとシームレスなサービスを提供するのを目的に2005年から提供を開始。介護スタッフなどが常駐せず食堂を不要とした事業形態。入居者の平均年齢は79歳で、75歳以上の後期高齢者が8割弱を占め、介護保険認定を受けていない人の割合は82%。2023年2月末時点で東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県で136棟1,746戸を運営。2030年度までに5,000戸に拡大する。

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 このような結果をもたらしたのは、ある程度は想定できた。2018年に「ヘーベルVillage杉並井草」を見学したとき、介護を必要としない自立派が約8割と圧倒的に多く、入居前の「持家戸建て・マンション」が約7割に達し、約4割の人が自宅を売却して入居を決めていることなどを聞いていたからだ。

 それにしても、平均年齢が83.8歳でも健康行動を維持・向上した入居者割合が97%に達し、フレイル該当者数が約5%減少したというのは凄い。2030年度までに5,000戸という目標にはずみがつくのではないか。

ニッチからコアへ 旭化成ホームズ シニア向け賃貸「ヘーベルVillage」受注加速(2018/8/24)

 


 

 

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大城氏(左)と堀氏(司法記者クラブで)

 グロービス経営大学院学長でもあるグロービス代表取締役・堀義人氏と大城聡氏(原告訴訟代理人)は3月16日、記者会見を行い、千代田区二番町(日テレ通り)の地区計画変更は適切な手続きが行われておらず、原告・堀氏の町会理事への立候補を妨害したしたのは不法行為として、二番町町会と諸亨町会長個人を被告として損害賠償訴訟を提起したと発表した。

 訴訟に至った経緯として、二番町を含む番町地区には、建築物の高さを最高60mに制限する地区計画が定められているにもかかわらず、千代田区は、同地区内の日本テレビだけに対し特別に90mの超高層ビル建設を許すために地区計画を変更しようとしており、その前提となる住民合意が得られていないと主張。

 提訴に踏み切った理由として、堀氏は2019年5月の二番町町会の総会前に二番町町会の理事に同社社員が立候補する意向を諸享町会長に伝えたにもかかわらず、「知らない人なので受けられない」「町会規約に詳しい規定がない」との理由で拒否されたとし、その後も立候補の意思を伝え、再三にわたって町内会のガバナンス問題について訴えているにもかかわらず、改善が見られないことから提訴に至ったとしている。

 請求の趣旨の第1として、二番町町会理事への立候補を妨害したことは不法行為でありとし、第2として、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に関する法律の規定が権利能力なき社団にも類推適用され、町会全員の同意の意思表示が必要であるにもかかわらず、町会員全員の同意を得ずに開催した書面総会は無効であり、前年度及び今年度の定期総会における各決議は不存在(同法265条1項類推適用)であるとしている。

 会見に臨んだ堀氏は「全ての方法が途絶えてしまったので、最後の手段、苦汁の決断として公の場で問うことにした。このような問題は全国で起きているのではないか。住民の声がきちんと町会に反映されることを願う」と語った。

 大城氏は「住民がみんなで話し合い、自分たちで街のことを考える意味で町会は大事な存在。しかし、(二番町会)は一部の人たちで運営されており、異なる意見を持つ人が排除されている実態がある。今回の町会のガバナンスを問うことは、民主主義の基盤をきちんと問い直すことに繋がる」「この種の町会のガバナンス問題に関する訴訟は前例がない」と話した。

 訴訟に合わせ、樋口高顕千代田区長及び都市計画審議会の岸井隆幸座長に対して同町会の意思決定過程に重大な問題があるため、問題の当事者である同町会長を二番町地区計画変更に関する都市計画審議会の審議に参加させないことを求める書面を提出した。

 今回の提訴について諸氏は区役所担当者を通じ「訴状を受け取っていないので何も言えない」とコメントし、(実名報道については)「ご判断に任せます」とのことだった。(本人の意向によっては実名を伏せることを考えていたが、すでにプレス・リリースで報道されており、諸氏は都計審の委員でもあり、公人に準ずると判断し実名とした)

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 堀氏が、区民の声を届ける手段・方法が途絶えたとし、苦渋の決断として今回の訴訟に訴えたのはよく分かる。全国に波及するのではないか。

 自治会・町内会への強制加入の勧誘は違法であり、マンション管理組合が町内会費を代理徴収するのも違法という判決が出されている。つまり、自治会・町内会は任意団体であり、加入も離脱も本人の自由意志が尊重されるということだ。

 この判決に倣うなら、町会理事への立候補を拒否し、その後も堀氏の提案を無視し続けてきた町会・町会長の言動・行動は極めて重大と言わざるを得ない。また、権利能力なき社団に「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」の規定が類推適用されるとすれば、民法第675条の「(1)組合の債権者は、組合財産についてその権利を行使することができる。(2)組合の債権者は、各組合員に対して等しい割合でその権利を行使することができる」が準用されるはすだ。

 だが、しかし、住民側にも問題がないわけではない。憲法でいう「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」(第12条)ことを考えないといけない。

 今回の二番町もそうだが、神田警察通り道路整備計画問題の取材を通じで、町会は住民代表というよりは、区の上意下達の下請け機関になり下がっているとしか思えない。区もまた都合のいいときは町会(長)を住民の声として利用し、時には町会(長)は住民代表ではなく、つまり、ただ声を聞く置く機関とみなしている。戦前の隣組組織とほとんど変わらないではないか。

 町会だけではない。区民も同様だ。今回の二番町の問題でいえば、日テレの別動隊そのものの「日テレ通りまちづくり委員会」のアドバルーン150m提案に区民は浮足立った。いとも簡単に日テレの情報操作にはまった。神田警察通りの道路整備計画でも、住民らは〝寝耳に水〟〝知らなかった〟というが、行政にはそれは通用しない。先日、石丸俊之社長が話した「由らしむべし知らしむべからず」そのものだ。

 記者は、多摩市のマンション居住者(管理組合員、理事)として活動したことがあるが、町内会の役員、管理組合の理事、PTA役員、交番などの関係者はみんな平等で、自由に意見を言い合い、合意の上でなにごとも決めた。町会長の独断専行などありえない。それを許した千代田区民は反省しなければならない。

異常事態に発展 二番町と外神田再開発、街路樹伐採 反対する区民ら共同声明(2023/3/14)

都市マス、地区計画に背馳していいのか 問われる公平性と企業倫理(2023/2/27)

「地区計画変更には大きな疑義」東洋大・大澤准教授 日テレ本社跡地再開発(2023/2/23)

「約束を反故。許せない」住民怒る 健全木のイチョウ 新たに4本伐採 千代田区(2023/2/7)



 

 

 

 

 

 


 

 

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安否確認

 三菱地所レジデンスと三菱地所コミュニティは3月14日、エリアマネジメント組織「奏の杜パートナーズ」と共同で千葉県習志野市「津田沼奏の杜(かなでのもり)」エリアで3月12日にリアルでは4年ぶりとなる防災訓練を実施したと発表した。コロナ禍ではオンラインでの実施を余儀なされていた。

 参加者は2.2haある谷津奏の杜公園に集合し、家族の安否確認方法・ケガ人を助ける「布担架」・水を運ぶ方法を学んだほか、被災生活で重要となる「情報」の入手・共有・発信の仕方、仮設トイレ・防災井戸・かまどベンチなどの使い方を学んだ。

 防災訓練は2015年3月、「ザ・パークハウス 津田沼奏の杜」(721戸)で始まり、その後、同エリアの三菱地所レジデンス分譲マンションにひろがり、エリアマネジメント組織「奏の杜パートナーズ」の協力を経て、周辺の戸建や他社分譲マンションに広がり、現在は約2,300世帯が対象エリアとなっている。

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習志野市「奏の杜」防災訓練に過去最多1,000名 三菱地所グループ&管理組合(2018/3/11)

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長崎県五島市・鬼岳

 三井不動産レジデンシャルは3月14日、多様なライフスタイルをサポートする多拠点居住サービス 「n’estate(ネステート)」の第二弾として、未就学児の子育て世帯に向けた保育サービス付プラン「n’estate with kids」を3月14日から募集開始、5月13日から利用開始すると発表した。

 「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」(山形県鶴岡市)と「カラリト五島列島」(長崎県五島市)の2つの施設運営会社(ヤマガタデザイン/カラリト)と「まちづくり包括連携協定書」を締結。さらに鶴岡市、酒田市、五島市と連携し、両施設で滞在中に未就学の子どもを近隣の保育園に通わせることができるよう一時預かり保育を活用する。利用料金は一時預かり保育料を含めて8日間で約12万円~、16日間で約24万円~。

 鶴岡市はサイエンスパークを拠点に産学官が連携した地方創生のモデルとして注目されている。酒田市は短期移住プログラムや移住者と市民とが交流するオープンスペースを設けるなど移住定住施策に取り組んでいる。五島市は2017 年からの5年間で1,000人以上が移住し、うち7割を30代以下が占めるなど、若者世代に人気の移住先として注目さている。

 「n’estate(ネステート)」は、「住の自由化」をコンセプトに、都心や地方都市を中心に展開する同社賃貸マンションや三井不動産グループ企業、パートナー企業の施設を活用し、生活拠点を組み合わせることでライフステージの変化やそのときの気分に合わせて生活の拠点と体験を最適に設計、自分自身に合ったくらし方を生成できるサービス。2022年9月29日から都市型拠点8施設、郊外型拠点2施設でトライアルを開始。開始1か月で全拠点に申し込みがあったという。

「多拠点居住」の難点解消 〝こころ〟解き放つ 三井不レジ「n’estate」(2022/10/3)

 


 

 

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 千代田区二番町(日テレ通り)の地区計画変更の撤回、外神田(秋葉原)の再開発計画の見直し、神田警察通りの街路樹伐採中止を求める区民・住民団体は3者は3月13日、強引な街づくりを進める千代田区の姿勢を改めるよう共同声明を発表し、同日、記者会見を行った。区民らは非民主的な区の対応に批判を強めており、区は異常な事態に発展しつつある。

 専門家として記者会見に臨んだ明治大学特任教授・東京大学名誉教授・大方潤一郎氏は「地区計画はきめ細かい質の高い街をつくるのが制度。その計画は大多数の賛同が得られているのが前提。今回の番町地区の地区計画の案は過半の人が反対しており、外神田は3分の2以上の地権者の賛同が得られていない。区は住民合意が得られていないことを知りながら都計審に報告し、二者択一を迫り、強引に都市計画決定を行おうとしている。暴挙と言わざるを得ない。区は提案を取り下げ、住民の80%の賛同が得られるようもう一度時間をかけて協議会などで話し合うべき」と話した。

 弁護士の大城聡氏は、「同じ区で、同じ時期に、同じような問題で3者がこのような会見を開かざるを得ないことが異常事態。問題はとてもシンプル。地区計画のルール内で日テレさんが自社の土地にどのような建物を建てようとそれは自由。そうではなくて、自社の利益のためにルールを変更し、区がバックアップしようといているのが問題。今後、法的手段も含めても3者が連携していく」と語った。

 二番町地区地区計画では、建物の高さが60m以下と定められているが、日テレが所有する土地を計画区域から切り離し、90mまで認める地区計画案が区から提示され、都市計画変更の手続きが行われている。これに対し、地域住民らは上位計画である都市マスタープランや現行の地区計画が定める「中層・中高層の住居系の複合市街地」に反すると反発している。

 この日の記者会見で、グロービス経営大学院学長・堀義人氏は、「公式アンケートでも地区計画変更に反対する声が賛成を上回っているにも関わらず、強引に計画を進めようとする区に問題がある。町会のガバナンスも民主的な手続きを踏んでいない」と語った。

 外神田は、外神田一丁目地内の約1.9haの「外神田一丁目南部地区地区計画」で、親水広場など公共施設、オフィス、店舗、宿泊施設などを整備する計画。住民らは、計画で示されている建物の高さ170mは秋葉原になじまず、地区計画の策定要件である地権者の3分の2の同意が得られていないと反対している。

 神田警察通りの道路整備については、街路樹の伐採を決めた議会決定は、区の虚偽答弁によって議決されたものであり違法として、住民らが行政訴訟を提起し、係争中。

◇        ◆     ◇

 記者は、石丸アセットマネジメント・石丸俊之社長の次の発言が本質をついていると思う。

 「わたしはほぼ毎回、区の環境まちづくり特別委員会を傍聴していますが、区は本来、レフリーとして両方から意見を聞き、ではどうですかと案を出すべきなのに、強引かつ実に不透明の説明しかしない。言葉に詰まるとその場限りで済ましてしまう。要するに区のマネジメントは、論語で学んだ『由らしむべし知らしむべからず』そのものです。わたしは商人ですからいろいろな人の声を聞きますが(三方良しという意味か)、区はその逆」

 石丸氏はまた、「(メディアの)皆さん、是非1回、どれほど区が傲慢な議事運営を行っているか、出席していただきたい」と呼び掛けた。

都市マス、地区計画に背馳していいのか 問われる公平性と企業倫理(2023/2/27)

「地区計画変更には大きな疑義」東洋大・大澤准教授 日テレ本社跡地再開発(2023/2/23)

「約束を反故。許せない」住民怒る 健全木のイチョウ 新たに4本伐採 千代田区(2023/2/7)

 

 

 


 

 

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 東日本大震災から今日3月11日は12年目を迎えた。震災被害を受けた太平洋岸39市町村の2023年2月1日現在の人口は、前年比16,595人減少の245万1,341人となり、減少幅は前年の0.5%から0.7%へ0.2ポイント上昇した。

 前年より人口が増加したのは仙台市、多賀城市、名取市の3市(前年は10市町村)にとどまった。仙台市の上昇幅は前年の0.4%増から0.2%増へ縮小した。

 県別の人口増減は、岩手県は1.4%減(前年1.4%減)と変わらなかったが、宮城県は0.5%減(同0.2%減)、福島県は1.3%減(同0.8%減)、茨城県は0.8%減(同0.1%減)と減少幅が拡大した。

 

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