「地区計画変更には大きな疑義」東洋大・大澤准教授 日テレ本社跡地再開発
日テレ通りと番町学園通りの交差点から二番町D地区地区計画地を望む
もっとも民主的な制度であるはずの地区計画の信頼性が揺らいでいる。東京都千代田区が日本テレビの提案を受け、都市計画で定めた日本テレビ本社跡地を含む二番町地区地区計画を変更し、日テレ跡地の建物の高さ制限を現行の60mから90mとする都市計画案に対する公聴会で、公述人の意見が真っ二つに分かれるなど、先行きが全く読めない展開を見せている。
二番町地区地区計画は平成20年(2008年)、区域面積約12.1haを対象に都市計画決定された。全体として住宅、商業・業務施設が共存した複合市街地の形成を図るとし、地区特性に応じA地区(約2.4ha)、B地区(約7.3ha)、C地区(約2.4ha)の建築物の用途規制、壁面後退、高さ制限、緑化率などを定めている。
区は、令和4年10月12日に日本テレビから二番町D地区地区計画の提案を受け、都市計画法第十五条―第二十八条の規定に基づき都市計画案を策定した。
計画案では、従来のB地区の0.8haとC地区の0.7haを切り離し、D地区(約1.5ha)とし、さらにD地区をD-1地区(1.0ha)とD-2地区(約0.5ha)に分け、建築物の高さ制限をD-1地区は90m、D-2地区は60mとしている。除外したD地区以外の変更はないとしている。
そして区は2023年1月26日、区としては初めての都市計画法第16条第1項に基づく公聴会を実施。公聴会では、区の案にもろ手を挙げて賛成する公述人が相次いだ。以下、主な意見を紹介する。
・60m以下のどこにでもあるような普通のオフィスビルよりも30m高くなりますけど、日本テレビさんの協力のもと、地下鉄のバリアフリー化や…エリアマネジメント、歩道の拡幅、バリアフリーの確保、これは非常に…重要な要素を含んでいると思います。これらを担保・実現するのであれば、建設物の高さ制限は全く問題ないと考えます
・(日本)テレビさんが作った「番町の庭」や「番町の森」が、子育てする地元住民にとっても大変ありがたい場所だと思います。保育園の子供たちや地元の小学生が毎日のように元気に走り回る姿はビルの立ち並ぶ都心ではなかなか見られない光景ですし、良いまちになったなと思います
・(日本)テレビさんを儲けさせるために高い建物をたてさせると批判される方もいらっしゃいますが、テレビさんはいままでも私たちと一緒に考えてくれていました。これからもずっと管理してくれるわけですので、本当は千代田区さんからも補助金を出してあげてもいいと思います
・私は、本当に100mでも120mでも150mでも、結果的にそれが地域に貢献できるんであれば、別に高さなんて気にすることはなかったと思います。でも、何が何でも60mという、その地区計画に則る形でやられて、お話がずっと頓挫していたことを考えると本当に残念です
一方、反対意見を述べた公述人は、建築物の高さをA地区は30m(総合設計の適用を受けた建築物は40m)、B地区は50m(同60m)、C地区は60mと定めた現行の地区計画を改め、日テレの計画地を切り離し、その計画地のD -1地区の建築物の高さを90mにしていることに強い拒否の姿勢を見せた。以下、主な意見。
・日本テレビさんが高さ90mの具体的なプランを初めて公開されたのは昨年の7月ですから、まだ7か月ほどしかたっていません。既存のルールを変更するという大きな決断をするには、まだコンセンサスが形成されていないように思われます
・確かにまちづくり協議会は12回開催されておりますが、この90m案が示されたのは、昨年9月26日の、最終の第12回会議で提案されたものです。このときの審議が最初で最後であって、その具体的中身については一切議論がなされないまま、二番町の日テレ敷地の不整形の土地に地区計画を変更しようとしているわけです
・昨年2月4日に、3,328名の署名が、千代田区長に提出されました。これは地区計画の現行高さ制限60mを遵守して欲しいという番町住民・通勤者・通学者による、署名でございます。この公聴会の後にいきなり都市計画法17条の手続きに移るのではなく…日テレと住民が忌憚のない話し合いをして、そのギャップを縮めていただくことを提案します
・突然、二番町12.1haのうち日テレが1社で支配する1.5haだけを切り出し、周囲を睥睨する地域唯一の超高層ビル建設を認めるという乱暴な地区計画変更案が区から出され、驚愕しています
日テレが整備した暫定利用の「番町の庭」(左)と「番町の森」
番町文人通り(右は総合設計制度によって整備された歩道空間と高さ60mの「日テレ番町スタジオ」。記者は異形の建物としか思えない)
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先日、2時間かけて件の番町エリアを歩いた。公述人が仰った地区計画の対象外エリアにある90mのオリコ本社ビルと都市センターホテル、60mの日本工営ビルを除けば、地区計画エリア内の建築物でもっとも高い建物は15階建てくらいで(1層を3~4mとすると60m)、日テレの「番町スタジオ」もまた約60mだ(それより高い既存不適格はないはずだ)。
記者は、建築物の絶対高さ規制より足元の公開空地・緑地を確保するほうが大事だと考えているのだが、私見を述べる前に、都市計画に詳しい専門家の声を聞こうと東洋大学理工学部建築学科准教授・大澤昭彦氏にお願いした。小生は14年前、当時東京工業大学大学院社会理工学研究科・財団法人土地総合研究所研究員だった大澤氏に「100尺規制」「建築物の高さ規制」について話を聞いており、いっぺんにファンになった。見識の深さもさることながら、その男前に惚れ込んだ。
今回も大澤氏は快く応じてくれた。大澤氏は「研究者として公平な立場でいるべきと考えていますし、その立場から見ても、二番町地区地区計画の変更については多くの問題をはらんでいます」と次のように問題点を指摘した。
1.都市計画マスタープランとの整合
・1998年に策定された都市計画マスタープランで当該地区を含む「番町地域」は、「中層・中高層の住居系の複合市街地」と位置付けられました。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/machizukuri/toshi/kekaku/masterplan/bancho.html
・ これを受けて、番町地域の大半のエリアで地区計画が策定され、最大でも60mに制限されています。
・ 建築基準法ではかつて60m超の建築物を「超高層建築物」と定義していましたので、番町地域では「超高層」は認められないことを意味します。
・ 都市計画マスタープランは2021年5月に改定されましたが、「中層・中高層の住居系の複合市街地」の文言は維持されました。つまり、番町では「超高層」を容認しない姿勢が改めて確認されたわけです。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/17862/toshimasu-4_2.pdf
・ それにもかかわらず、マスタープランと整合しない地区計画の改定が行われようとしていることに違和感があります。
・ 再開発等促進区を定める地区計画の策定にあたって、マスタープランと整合しない内容になることはあり得ます。ただし、それはマスタープランが古く、地域の実態や社会経済環境の変化に対応できていないケースに限られます。番町の場合は、マスタープランは改定されたばかりであって、状況は全く異なります。
2.地区計画の目標・建築物等の整備の方針との整合
・2008年に策定された二番町地区地区計画では、都市計画マスタープランの内容を受けて、中層・中高層の街並みの形成が謳われています。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/4355/32nibanchou.pdf
・ さらに「建築物等の整備の方針」の中には、次のように明記されました。「建築物の高さの制限に加えて建築基準法第59条の2第1項の適用に際しても、建築物の高さの最高限度を適用することにより、建築物の高さが整った良好な街並みの形成を目指す。」
・ すなわち、総合設計制度等の規制緩和手法を用いても60m超を認めない姿勢を明示したわけです。この意図はとりもなおさず、番町の「中層・中高層の街並み」を守るためです。
・ 今回の見直しは、こうした二番町地区地区計画の考え方に反するものです。
・ 根本的な方針転換を図るのであれば、その合理的な根拠を示すととともに、合意形成を図るべきと思われますが、そのどちらも十分なものといえません。
3.地区計画改定の根拠の問題
・ 千代田区は、規制緩和の根拠として、地域の課題であった地下鉄のバリアフリーや公園の不足をあげています。規制緩和の見返りに日テレが地下鉄駅へのエレベーターや広場を整備することになっているため、これを以って緩和が認められると判断したようです。
・ ここで問題になるのが、バリアフリーや広場の整備の代わりに、超高層ビルが建つことで住環境が変化する可能性についての説明がなされていない点です。
・ つまり、規制緩和のメリットの説明だけで、負の影響について明確に示されないために、住民が適切な判断ができない(不安が解消されない)状態にあります。
・ また、そもそも住民が広場を求めているのかについての疑問もあります。現在、敷地内に番町の森という仮設の広場が設けられており、賑わいをみせています。ただ、南側に超高層ビルが建てば日陰になり、夏場以外、快適な広場になるとは思えません。ビル風の問題も発生することが懸念されます。
4.合意形成の問題
・ 地区計画改定の前に「日本テレビ通り沿道まちづくり協議会」で開催されていましたが、ここでの議論が煮詰まらない状態で、地区計画改定の手続きに移行しました。
・ 都市計画法第16条第2項に基づいて地権者等の意見書の提出で、賛否が拮抗したことを見ても、合意形成が不十分であると思います。
【まとめ】
①都市計画マスタープラン(しかも改定されたばかり)に反する計画を区自らが認めることがそもそも問題。
②規制緩和手法を用いても60mを超えられないと規定している現行地区計画の考え方の抜本的な方向転換となるため、その合理的な根拠の明示と合意形成が必要だが、そのどちらも欠けている。強引に再開発を進めれば、都市計画に対する信頼が大きく損なわれることになる。何のための都市計画なのか? 誰のための都市計画なのか? と住民は疑問に思っても不思議ではない。
③今回の変更を認めれば、他の地区でも同様の規制緩和が進む(日テレは認めたのに、なぜうちでは認められないのかといった意見が出てくる)。結果的に、マスタープランで掲げる「中層・中高層の住居系の複合市街地」が、なし崩し的に損なわれるのではないか。
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みなさん、いかがか。記者はぐうの音も出ない。一つだけ疑問を呈せば「超高層建築物」とは何ぞやという問題だ。
記者は、2023年1月30日付記事「齊藤&浅見先生、誰に読ませたいのか?! 『タワーマンションは大丈夫か?!』」で次のように書いた。
「建基法第20条は『高さが60mを超える建築物 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること』と定めているが、これがタワーマンションであるとか超高層建築物であるとかは規定していない。
記者は昭和60年代の初め、『超高層マンション』の記事を書いた。東京都やUR都市機構、三井不動産などの『大川端リバーシティ21』の開発が開始され、従来の物差しでは計れないマンションが続々供給される気配を感じたからだ。定義を調べるために日本建築センターに取材したのだが、定義はなく18階以上だとか20階以上だとか聞いた覚えがある」
つまり、大澤氏も「かつて60m超の建築物を『超高層建築物』と定義していました」と「かつて」を付しているように、「超高層」の定義ははっきりしないということだ。
とはいえ、60mを一挙に90mに緩和する根拠はやはり希薄と言わざるを得ない。国土交通省の地区計画を策定するための「ルールづくりの進め方とポイント」でも「行政発意で始まった検討の場合でも、会議の進行は組織のリーダー等に委ねたり、住民主導の取り組みの重要性を繰り返し説明する等して、少しずつ住民主導による検討がなされるよう誘導していくことが重要である」「住民等が主体的にルールを策定するためには、意見対立が生じた場合にも、住民等で議論して自ら解決方法を見出すようにすることが望ましい」としている。
齊藤&浅見先生、誰に読ませたいのか?! 「タワーマンションは大丈夫か?!」(2023/1/30)
絶対高さ制限の背景にある100尺規制とは(2008/6/10)
全国に広がる建築物の「絶対高さ規制」「住民は知るべき 行政は伝えるべき」大澤昭彦研究員(2008/6/3)
あれから17年 国立マンション訴訟終結 支援者の「会」が上原氏への寄付募る(2017/1/8)
緑、樹木は増えるが問われるのは質 三井不動産など「神宮外苑」再開発 施行認可
「神宮外苑地区第一種市街地再開発事業」イメージパース
三井不動産、明治神宮、日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事は2月17日、「神宮外苑地区第一種市街地再開発事業」の施行認可の公告が出されたと発表した。
計画では、①神宮外苑地区のシンボルである4列のいちょう並木を始めとしたみどりの保存・継承と新たな樹林地の創造により、地区を南北に貫く「みどりの散策路」を整備②既存の老朽化したスポーツ施設を段階的に建て替え、次の100年に繋がる国際的な文化とスポーツの拠点として整備③広場や緑地などのオープンスペースを整備することにより地区内の歩行者の回遊性向上やイベントによるにぎわいを醸成する④青山通りやスタジアム通り沿道の複合・高度化を図り、複合市街地を整備⑤将来的なタウンマネジメントの役割を担う準備組織を設置し、市民参加型イベントなどの活動を計画-などが特徴。
今後は、2023年3月下旬にラグビー場棟の建設予定エリアである明治神宮第二球場の解体工事に着手し、2036年予定の全体完成に向けてエリアごとに順次整備を行っていく。
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神宮外苑の再開発にあたっては、当初、大量の樹木が伐採されることなどから反対の声もおおく寄せられていた。記者は約30年間、神宮絵画館前の軟式野球場で行われてきたRBA野球大会を取材してきたので、思い出がいっぱい詰まっている。
グラウンドは6面もあり、強打者などは隣り合うマウンドまで飛ばすのでしばし試合は中断された。故・水島新司さんが監督を務めていたチームとRBAの選抜チームが対決した試合も取材した。プロ野球団ヤクルトも練習場として使用しており、小生は平気で声を掛けた。選手会がストライキを行った2004年には、当時ヤクルトの選手だった稲葉篤紀氏にその是非を聞いたこともある。
グラウンド名にはヒマラヤ、大銀杏、コブシ、ケヤキなどの名が付けられているように樹齢100年くらいの巨木が何十本も植えられていた。再開発によってテニスコート場、広場などに代わるが、敷地内の巨木はほとんど伐採されるようだ。
計画では、計画地のオープンスペースは現行約21%から再開発後は44%へ、緑の割合は25%から30%へ、樹木は1,904本から1,998本に増えるとしている。その内訳は保存樹木889本、伐採樹木741本、移植樹木256本、移植検討樹木19本、新植樹木837本となっている。
当初計画では伐採樹木は1,000本とされていたので、減ったのは結構だと思うが、問題はその質だ。いま、千代田区の神田警察通りの街路樹である樹齢約60年のイチョウが約30本伐採され、かわりにサクラが植えられるようになっているが、樹木には失礼だが、イチョウとサクラはまるで格が違う。
再開発後の神宮外苑の緑と樹木の質はどうなるのかの論議が必要ではないか。
2018年10月の台風21号で倒木したヒマラヤスギ
歴史ある樹木・緑環境はどうなるのか 神宮外苑のまちづくり始動 三井不動産ら(2022/5/21)
六本木ヒルズに隣接 54階建てマンション500戸とホテル 野村不・ケンコーポ
「西麻布三丁目北東地区第一種市街地再開発事業」
野村不動産とケン・コーポレーションは2月15日、参加組合員として事業参画している「西麻布三丁目北東地区第一種市街地再開発事業」が同日に権利変換計画について認可を受けたと発表した。2023年度に工事着工し、2028年度に竣工する予定。
事業の施行地区は、東京メトロ日比谷線・都営大江戸線六本木駅から約300m、「六本木ヒルズ」に隣接する約1.6ha。計画では、地上54階地下4階建て制震構造延べ床面積約約97,010㎡の超高層棟に住宅約500戸のほか事務所、商業機能を導入するほか外資系ラグジュアリーホテルブランドを誘致する。また、地区内の3つの寺社を再整備し、約11~15mの寺社3棟延べ床面積約2,740㎡を建設する。2019年4月に都市計画決定、2020年9月に再開発組合が設立認可されていた。
基本設計は梓設計、実施設計は梓設計・大成建設、特定業務代行者は大成建設。
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先日記者発表があった東急不動産「Shibuya Sakura Stage」内に建設されるマンションは坪1,500~2,000万円と書いた。こちらは「六本木ヒルズ」に隣接だ。「Shibuya Sakura Stage」より高くなるのは間違いない。
プレス・リリースには、外資系ラグジュアリーホテルとしか記載されていないが、同じ建物内にホテルを併設するのは最近の流れでもある。
近いものでは、「横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ」が入居する相鉄不動産・東急「THE YOKOHAMA FRONT」のほか、「Four Seasons Hotel」が併設される東京建物「Brillia Tower 堂島」、「ヴィラフォンテーヌ」が入る住友不動産「梅田ガーデンレジデンス」があり、その走りでもある東急不動産他「ブランズ横濱馬車道レジデンシャル」を思い出す。
このほか、「The Apartment Bay YOKOHAMA」が入居する積水ハウス「ウェスティンホテル横浜」、ホテルなどとの複合開発では野村不動産「プラウド恵比寿ヒルサイドガーデン」、住友不動産「有明ガーデン」、三井不動産レジデンシャル他「横浜北仲ノット」、スターツ「クオン流山おおたかの森」、大和ハウス工業他「ONE 札幌ステーションタワー」、「ホテルコンドミニアム」と「ホテルレジデンス」が併設される東急不動産・サンケイビル「BLISSTIA(ブリスティア)箱根仙石原」などがある。
相鉄不・東急 横浜駅直結タワマン 第1期129戸完売 坪717万円(2022/1/26)
〝どう見ても美しい〟大阪の市場を変える 東京建物「堂島」は坪単価650万円(2021/11/25)
野村不動産の最高峰マンション 「プラウド六本木」最高のモデルルームの出来(2018/7/19)
野村不・ケンコーポ 六本木ヒルズに隣接の1.6ha再開発 住宅は500戸(2020/9/10)
「渋谷駅桜丘口」名称は「Shibuya Sakura Stage」/マンションは坪1,500万円超か
「Shibuya Sakura Stage」
ロゴ
東急不動産は2月9日、渋谷の新たなランドマークとなる「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」のメディア向け説明会を行い、施設名を「Shibuya Sakura Stage」に決定し、2023年11月30日に竣工、順次開業を進め、2024年夏にまちびらきイベントを実施すると発表した。約90名のメディアが参加した。
再開発は、100年に一度と言われる渋谷の再開発での渋谷駅中心地区の都市基盤整備を完成させるプロジェクト。計画地は、国道246号やJR線により東西方向、南北方向ともに分断されており、渋谷の街の特徴である谷地形の谷底から坂上に跨ぐ地形の高低差が大きい地区で、その難点を解消する駅の新改札口とつなぐ歩行者デッキや周辺地区と連携した縦軸動線「アーバン・コア」を整備し、後背地への接続を実現する。
施設名称には、多様な人々が自らのものがたりを発見・発信する舞台でありたいという想いが込められており、ロゴにはモダンでポップ、躍動感のあるピンクのカラーを採用。
施設のうち、SHIBUYAタワー、セントラルビル、SAKURAタワーの3棟に設けられるオフィスの基準階面積は約2,780㎡(約840坪)。大規模な企業からスタートアップ企業まで、様々な規模の企業の入居が可能。商業施設は約15,200㎡。最先端のトレンドやカルチャーを創出・情報発信を担う。
渋谷駅中心地区で唯一整備される住宅は、「ブランズ渋谷桜丘」155戸、専有面積は約12,800㎡(1戸平均82㎡)。屋上部分には太陽光パネルを設置するなど「環境先進マンション」を目指す。
このほか、外国人ビジネスパーソンに対応した約9,000㎡、全126室のサービスアパートメント「ハイアット ハウス 東京 渋谷」や子育て支援施設、国際医療施設、起業支援施設を併設する。
説明会で同社代表取締役社長・岡田正志氏は、「当社の創業の地である渋谷では100年に一度と言われる大規模再開発が進行中で、当プロジェクトは1998年10月に旧再開発準備組合が設立されてから約25年。約120名の地権者との会合はこれまでほぼ毎週開催され、計640回という膨大な時間を割いて思いを紡ぎ、当社のノウハウ、リソース注ぎ込み、地元の悲願であった街の分断を解消し、渋谷の特徴でもある谷地形を克服する大規模な基盤整備などを行ってきた。この再開発事業は他に類を見ない取り組みであると自負している。
渋谷の街の魅力は、後背地に住宅地を抱え、オフィスエリアと商業エリアが交じり合い、働く、住む、遊ぶ、憩いといったライフスタイルの全てが揃っており、それらがシームレスにつながっていることにある。今回の再開発では、これまで渋谷駅周辺にはなかった緑豊かな憩いの広場、賑わい広場も備えている。渋谷で培われた多様なカルチャーを承継し発展させ、より多様な人々を集め多様な文化を生み出すことを目指している」と語った。オフィスのリーシングについては約6割が契約済みで、竣工まで満床稼働すると自信を見せた。
同社執行役員都市事業ユニット渋谷開発本部長・黒川泰宏氏は、分譲マンション「ブランズ渋谷桜丘」について、「環境先進マンションとして、見たことがない暮らしを実現する」と語った。全155戸のうち50戸弱が同社の持ち分で、他は地権者住戸に充てられることを明らかにした。
施設は、施行面積約2.6ha。「SHIBUYAサイド(A街区)」「SAKURAサイド(B街区)」「日本基督教団 中渋谷教会(C街区)」から構成。事務所、店舗などの「SHIBUYAサイド」は39階建てと17階建て延床面積約184,700㎡、住宅、事務所、サービスアパートメントなどの「「SAKURAサイド」は30階建て延床面積約69,100㎡。「日本基督教団 中渋谷教会」は4階建て延床面積約820㎡。デザインアーキテクトは古谷誠章+NASCA+日建設計。基本設計・実施設計は日建設計のほか、ナスカ一級建築士事務所(SAKURAテラス)、日建ハウジングシステム(住宅部分)など。変更実施設計は鹿島・戸田建設共同企業体。
左から黒川氏、岡田氏、同社取締役常務執行役員都市事業ユニット長・榎戸明子氏
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会見には100名近いメディアが駆けつけた。プロジェクトの目玉の一つである分譲マンションについて、だれかが質問するかと思ったが、だれも質問しなかった。小生も、答えは返ってこないのを承知で手を挙げたが、指名はされなかった。なので、以下は記者の勝手な予想。
まず、渋谷のイメージ。女性の記者の方が「渋谷は若い人の街のイメージ」と質問した。これに対し、岡田社長らは「多様性の街」と答えた。記者もそう思う。100年に一度の再開発で渋谷は一変した。東京駅とはもちろん、新宿や池袋、品川などとは違う。品格にはやや欠けるような気がしないではないが、街の活性化に欠かせない〝若者〟〝よそ者〟〝バカ者〟がみんな揃っている。何だか訳が分からない混沌とした風情が漂う。何かをやってのけるのではないかという大きな不安の分だけ期待も持たせてくれるのが渋谷だ。
だから、〝イメージ〟などといったあいまいな既成概念で渋谷は語れない。後背地には青山、原宿、神宮前、代官山、恵比寿がある。
そんな立地条件を生かせば、坪単価は1,000万円どころか1,500万円でも売れるはずだ。富士山が眺望できる条件のいい住戸なら坪2,000万円でも安いと記者は思う。10坪で2億円、20坪で4億円、30坪で6億円。独り占めできる最上階は数十億円。楽勝ではないか。設計は日本設計と日建ハウジングシステム、施工は鹿島と戸田建設。役者は揃った。
渋谷駅圏の主なマンションについて記事を添付する。
住宅 イメージ図
サービスアパートメント イメージ図
一般分譲されない可能性高まる 旭化成不レジ「(仮称)宮益坂ビルディング建替計画」(2020/6/15)
三菱地所レジデンス 最高値更新の坪850万円「ザ・パークハウス渋谷南平台」(2018/10/4)
感動的ですらある鹿島建設「センチュリーフォレスト」(2012/1/25)
坪単価「400万円台の半ば」新日鉄都市開発「テラス渋谷美竹」(2012/1/13)
荒井首相秘書官のオフレコ会見 報じなかった約10名のメディアの釈明はないのか
荒井勝喜首相秘書官が3日夜のオフレコ会見で、LGBTQなど性的少数者に対する差別的発言を行ったことが問題となり、その翌日、更迭されたことが報じられた。「見るのも嫌だ。隣に住んでいるのも嫌だ」「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」などの発言は断じて許せない。更迭は当然だと思うが、同時にわれわれが考えないといといけないのは、そのような重大発言が飛び出すオフレコ記者会見が常態化しており、書くか書かないかは一部のメディアの判断に委ねられていることだ。これは危うい。
最初にこの問題を取り上げたのは、全国紙では毎日新聞のようだ。同紙は荒井氏の発言があった2月3日22:57にWEBで第一報を報じた。同紙によると、オフレコ会見に同席していたのは約10名の記者で、「現場にいた毎日新聞政治部の記者は、一連の発言を首相官邸キャップを通じて東京本社政治部に報告した。本社編集編成局で協議した結果、荒井氏の発言は同性婚制度の賛否にとどまらず、性的少数者を傷つける差別的な内容であり、岸田政権の中枢で政策立案に関わる首相秘書官がこうした人権意識を持っていることは重大な問題だと判断」(023/2/4 20:48)、オフレコを解除する旨を荒井氏に伝えたうえ記事化。4日付朝刊記事は遠慮がちの3段見出しだった。
そのほかの全国紙では、朝日新聞は、荒井氏がオンレコ会見で発言を撤回・謝罪したのを受け日付が変わった4日0時50分付WEBで記事化し、4日付朝刊で報じている。同紙記者はオフレコ会見には同席していなかったともしている。読売新聞は4日付夕刊トップ記事で、日経新聞は4日付夕刊で、産経新聞は5日付朝刊でそれぞれ報じた。
問題は、オフレコ会見にいなかった朝日新聞はともかく、毎日新聞が報じなかったら、同席していた約10名の記者はどうしたかということだ。同席していたメディアの釈明も知りたかった。私見を言わせていただければ、公人にオフレコなどありえない。それを許せば権力とメディアの癒着を生む。
かく言う小生もオフレコ取材は数えきれないほど経験している。その圧倒的多数は政治問題ではなく下半身、女性問題だった(男性問題はなかった)。情報源の秘匿は記者の生命線だし、小生だって脛に傷持つ。深入りはせず、口外したことはない。
「約束を反故。許せない」住民怒る 健全木のイチョウ 新たに4本伐採 千代田区
新たに伐採された伸び盛りのイチョウ(切り口はまさに芳紀十八、あっ、これは雄株か)
東京都千代田区は2月6日未明、「神田警察署通りⅡ期道路整備区域」にある街路樹であるイチョウ4本を伐採した。伐採に反対する「神田警察度通りの街路樹を守る会」(以下、「守る会」)は、「裁判で伐採の是非が問われているさ中のできごとで、昨年7月3日に区と取り交わした工事を再開する際は事前に連絡するという約束を反故にするもので、許せない」と怒りをあらわにした。
「守る会」によると、樋口高顕区長は抗議文を受け取らず「粛々と工事を進めていく」と語ったという。また、環境まちづくり部道路公園課長・谷田部継司氏、広報担当者、総務課長らの話を総合すると、この案件の実質的な責任者である坂田融朗副区長はこの日(6日)、午後1時45分からの副区長会に出席したのち2、3の会議に出席するとかで、区に戻らずそのまま退庁したという。
区が「工事をするときは必ず事前に連絡をします」と確約したことについては、環境まちづくり部長・印出井一美氏は「それは(昨年)7月当時の約束で、今は執行停止が出ていないから何ら法的に問題はない」と話したという。
「守る会」の区長などに宛てた抗議文は次の通り。
「2月6日未明 何の知らせもなく再び伐採の暴挙に怒りを通り越しています。 先般7月に工事をする時は事前に会に連絡する旨を約束していたにもかかわらず、ましてや裁判の最中であるにもかかわらず、このような事をするとは、人道上、信義に劣る事であり、断じて許せません。
私共区民をふみにじっているとしか思えません。区長、区議会、千代田区役所に厳重に抗議するものであります」
この問題については、区域内にある32本のうち樹齢60年超のほとんどが健全木のイチョウ30本を枯損木として伐採することが決まっている。樋口高顕区長は「現在の一致点が見出せない状況が長く続けば、意見の対立を深め地域に亀裂を生じさせることにもなりかねないと認識」「行政として苦渋の決定」として2022年4月25日、イチョウ2本を伐採した。残りの若木2本は移植するとしている。
現在、伐採に反対する住民が「精神的苦痛を受けた」として22万円の損害賠償を求めた訴訟と、伐採決定は区の区議会への虚偽答弁によって議決された決議は無効、違法であるとした住民訴訟が係争中。
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この街路樹問題については、最初に持ち上がった2016年から取材をしており、これまで40本以上の記事を書いてきた。住民の味方でも区の敵でもない街路樹の味方の小生は、〝伐採ありき〟の既定路線に沿って事業を強行してきた区側に非があると思う。住民間の分断を生んだのはひとえに区の説明不足にある。令和4年3月17日に行われた区議会企画総務委員会でも嶋崎秀彦委員長は「そうだね。それは、協議会の合意が必要だよね…そこのところの知恵出しというか、やり方というか…多少瑕疵があったのかもしれない…」と答えている。
「守る会」が話したことが事実であれば、「工事再開の際には事前に連絡する」約束を守らなかったことにについて「あれは7月のこと」としれっと言ってのける印出井氏はひどいの一語だ。夫婦間だって一方的に約束を破ったらひと悶着起きる。公人が吐く言葉ではない。
一番罪が深いのは樋口区長だ。「粛々と工事を進める」と語ったそうだが、「守る会」によると、6日には道路課の職員25名はほとんど出勤していなかったというではないか。
この件で、区側に事実かどうか確認した。「工事現場に派遣した人数は答えられない。振替休日を取った人数も答えられないが、適切に処理した」との回答があった。
なので、約5,000本の街路樹のたかが4本のイチョウを伐採するために全職員を出勤させ、当日に代休を取らせたかどうかは不明だ。とはいえ、夜陰に紛れて抜き打ち的に伐採工事を行うのは「粛々」ではないことは明らかだ。
「守る会」の皆さんへ。今回の工事再開に対抗するため、皆さんはまたまたイチョウ抱き着き作戦を取るようだが、それは人間でいえは思春期の雄株がほとんどのイチョウの本意ではないはずだ。女性の方に抱きつかれ、しがみつかれるのは体が火照るが、皆さんの中には年齢が80歳近い方もいるという。健康が心配だ。夜は酒か養命酒でも飲んで明日の英気を養ってほしい。
昨年5月に伐採されたイチョウ。今回は2度目の死刑判決(それでもしっかり生きていた)
これは事実か「枯損木記載は都の慣例に倣ったもの」千代田区の主張 住民訴訟(2023/1/17)
「苦汁」を飲まされたイチョウ 「苦渋の決定」には瑕疵 続「街路樹が泣いている」(2022/5/14)
なぜだ 千代田区の街路樹伐採強行 またまたさらにまた「街路樹が泣いている」(2022/5/10)
初台駅に近接の約4.6ha 住宅は約3,200戸 野村不など4社 再開発組合設立
再開発エリア(左側が「新国立劇場」)
野村不動産、住友商事、東京建物、首都圏不燃建築公社の4社は2月2日、参加組合員として事業参画している「西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業」の市街地再開発組合を2月1日に設立したと発表した。
プロジェクトは、JR新宿駅と京王新線初台駅の間に位置する事業面積約4.6ha。「新国立劇場」に近接。総戸数約3,200戸の大規模集合住宅を整備するほか、駅方面の歩行者デッキ、4,500㎡の広場などを整備する。2031年の竣工を目指す。
総数は前年比0.4%増 分譲住宅が16年ぶりに持家を上回る 令和4年住宅着工
国土交通省は1月31日、令和 4 年の新設住宅着工戸数をまとめ発表。総戸数は859,529戸となり、前年比0.4%増、2年連続の増加となった。床面積は69,010千㎡で、前年比2.3%減、昨年の増加から再び減少に転じた。
利用関係別では、持家は253,287戸(前年比11.3%減、昨年の増加から再び減少)、貸家は345,080戸(同7.4%増、2年連続の増加)、分譲住宅は255,487戸(同4.7%増、2年連続の増加)。分譲住宅の内訳はマンション108,198戸(同6.8%増, 3年ぶりの増加)、一戸建住宅145,992戸(同 3.5%増、2年連続の増加)となった。
首都圏マンションは52,379 戸(同4.8%増)で、都県別では埼玉県5,551戸(同39.6%増)、千葉県6,310戸(同76.0%増)、東京都29,579戸(同5.3%減)、神奈川県10,939戸(同2.2%減)となった。このほか近畿圏は22,999戸(同10.0%増)、中部圏9,145戸(同5.3%増)、その他23,675戸(同9.0%増)。
この結果、分譲住宅は2006年(平成18年)以来16年ぶりに持家を上回った。マンション着工戸数では、その他地方が近畿圏を上回るのは平成20年以降で同20年、同29年、令和3年に続き4度目となった。
「推し活・オタ活」は何だ 「タイパ」は異議あり アットホーム Z世代アンケート
アットホームは1月26日、現在賃貸物件で一人暮らしをしているZ世代(17~26歳)400名(男性126名、女性272名)を対象にライフスタイルや価値観、求める住まいに関する調査結果をまとめ発表した。
①価値観について5段階で聞いたところ、「タイムパフォーマンス(タイパ)や効率性は重要だ」「流行のものよりも自分がいいと思ったものを優先したい」「ものを買う時、コスパ(質に対する価格の安さ)を重視する」について約7割が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答。「環境に配慮した取り組みをしている企業やサービス、ブランドに好感を持つ」は49.8%、「口コミを重視する」は60.8%だった。
②情報を収集する際に利用するものについては、「GoogleやYahoo!などの検索サイト」(84.3%)が1位で、「Twitter」(66.5%)、「You Tube」(64.5%)、「Instagram」(63.8%)と続き、最も信頼するものは「GoogleやYahoo!などの検索サイト」(70.9%)が圧倒的多数で、「Instagram」は15.2%だった。
③家電などの機器については、「テレビ持っていない」(20.8%)、「掃除機持っていない」(26.3%)、「トースター持っていない」(54.0%)、「電気ケトル持っている」(68.8%)などと回答。
④休日の家での過ごし方については、「動画配信サービスで動画を見る」(72.3%)「SNSを見る・投稿する」(69.3%)が上位となり、以下、「テレビを観る」(47.3%)「音楽を聴く」(46.3%)「家事」(38.3%)「ゲーム」(34.8%)「寝だめ」(27.3%)「オンラインショッピング」(25.0%)「勉強する」(23.8%)「読書」(21.0%の順。
⑤「推し活・オタ活」については、「推し活・オタ活をしている」は49.8%で、そのうち約4割が部屋の中に「推し」に関するスペースを持っており、そのスペースは半数近くが4㎡以上と回答した。
⑥住まいの価値観については、「隣人とはできるだけ顔を合わせたくない」(81.3%)、「ライフステージに応じて違った場所に住みたい」(64.3%)、「浴槽は必要ない」(22.5%)、「インテリアは多少お金をかけてもこだわりたい」(44.5%)と回答した。
⑦重視する住まいの条件は、「通勤・通学に便利」が51.5%でトップとなり、以下、「間取り・広さ」(48.3%)、「スーパーマーケットが近い」(43.8%)「最寄駅から近い」(37.5%)「治安が良い」(35.8%)「セキュリティ」(33.8%)などと続き、「日当たり」は32.3%、「築年数」は29.3%となっている。
⑧重視する住まいの設備は、「独立洗面台」(37.5%)「モニタ付インターホン」(33.8%)「インターネット無料」(33.0%)「2口以上コンロ」(27.3%)「オートロック」(24.3%)「宅配ボックス」(21.8%)「温水洗浄便座」(19.3%)などと続く。
⑨不動産会社に求めることでは、知らない番号から電話がかかってきた場合、「すぐに出る」と答えた人はわずか1割で、半数以上は「すぐには出ずに番号を調べてからかけなおす」と回答した。
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以上は同社のプレス・リリースをコピペしたものだ。記者は普段、アンケート調査はみない。回答を誘導する質問項目が潜り込んでいたりするからだ。
しかし、アットホームは思いもよらぬアンケートを実施するので、テーマにもよるがチェックすることにしている。今回のZ世代のライフスタイル、価値観に関する調査は非常に面白い。懇個のマンションの商品企画や接遇、営業活動に参考になる。関係者はしっかり読むことをお勧めしたい。
Z世代の3~4倍も生きているスマホすら満足に扱えない記者にとっては、驚愕の回答だ。
「Twitter」「Instagram」は利用したことがないし、「You Tube」は仕事などで求められるときしか利用しない。「推し活・オタ活」は初めて聞く言葉だ。早速、Z世代が重視する「検索サイト」で調べた。それでもよく分からない。そのスペースが4㎡以上ということは1.2畳大以上だ。23区のマンション坪単価は350万円以上するから420万円以上だ。もう理解不能。
テレビや掃除機を持っていないというのにも驚いた。新聞も読まないのだろうか。小生は独身のころ新聞は数紙購読していた(西鉄の記事が読みたくて「西スポ」を3日遅れで読んでいた)。掃除機はなかったが、雑巾とバケツを持っていた。たまには掃除もした。
「浴槽はいらない」というのは同感だ。小生は風呂が嫌いだからだ。シャワー室があれば十分。これからの単身者向けマンションは浴槽なしでも売れるとみている。
〝時は金なり〟-「タイムパフォーマンス(タイパ)」(タイパも初めて聞く言葉)はとても重要だとは思うが、「Google」「Yahoo!」「Twitter」「You Tube」「Instagram」などに費やす時間は無駄で、害をもたらすこともある-といったら袋叩きにあうのだろう。先日も痛ましい事件があった。Z世代の皆さんには、とにかく本(世界の名作)をたくさん読んでほしい。美しい生き方を教えてくれるのは書籍だと思う。
住まいで重視することで、「日当たり」は32.3%というのは納得できる。小生は北向き3畳間に間借りしたことがあるが、隣の住宅の屋根に鏡を置いて、日照を取り込んだことがある。あと10年もすれば太陽光追尾システムが安価で利用できるようになり、北向き住戸は値付けの際のマイナス要因にならない時代がやってくるはずだ。
〝唯一無二 都内最大〟三井不・日鉄興和不「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」着工
「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」
三井不動産、日鉄興和不動産、ヤマト運輸は1月26日、都内最大級の物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」を着工したのに伴う記者説明会を開催し、三井不動産取締役専務執行役員ロジスティクス本部長・三木孝行氏、日鉄興和不動産代表取締役副社長・企業不動産開発本部長・吉澤恵一氏、ヤマト運輸常務執行役員(東京地域統括兼EC業統括)・阿部珠樹氏、板橋区長・坂本健氏が出席して、同日、板橋区と「災害時における防災施設整備等に関する4社基本合意書」を締結したと発表した。
施設は、日鉄興和不動産が2021年6月に日本製鉄の工場跡地を取得後、板橋区との行政協議を重ね、その後、三井不動産が参画、街づくり型物流施設として整備するもの。都営三田線西台駅から徒歩約10分、板橋区舟渡4丁目に位置する敷地面積約93,200㎡、地上6階建てS造延べ床面積約256,100㎡。設計は日鉄エンジニアリング、施工は日鉄エンジニアリング・佐藤工業。竣工予定は2024年9月末。
周辺5km圏内には約106万人が居住しており、雇用確保に有利な立地であるうえ、首都高速5号池袋線「中台」出入口までは約2.7㎞とアクセスに優れ、延床面積は都内最大。建物は免震構造、72時間対応の非常用発電機などのBCP対策、オフィスビル同等のセキュリティ対策、ドローンドローン事業者向け賃貸用R&D区画、ZEB認証など、業界トップレベルの施設スペックを整備する。
板橋区との「災害時等における防災施設整備等に関する4者基本合意書」では、河川氾濫時における水害に強い安心・安全な街づくりの実現を目指し、施設に隣接する「板橋区立・舟渡水辺公園」と一体となる約3万㎡の公開空地、水害時の緊急一時退避場所や避難路などを整備し、1,000人の緊急一時退避場所を確保する。テナントとして入居するヤマト運輸は、災害時の支援物資の保管・配送拠点として活用する。
説明会に出席した各氏は次のようにコメントした。
三井不動産・三木孝行氏 弊社は「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)」を旗艦ブランドとして物流施設を展開しており、昨年で10年の節目を迎えました。これまで、街づくり型物流施設として「MFLP 船橋」「MFIP(三井不動産インダストリアルパーク)羽田」などを開発してまいりました。本施設は次世代のフラッグシップとなる大型プロジェクトであり、関係各社とともに、ロジスティクスを通じて街づくりに貢献し、地域社会のより良い未来を切り開いてまいります。
日鉄興和不動産・吉澤恵一氏 弊社は、日本製鉄の工場周辺(東京都板橋区、大阪府堺市)における物流施設の開発を契機に、2018年より「LOGIFRONT」のブランド名で物流事業を展開し、これまで「LOGIFRONT 越谷」、「LOGIFRONT 尼崎」など首都圏、近畿圏を中心にテナント企業のニーズを踏まえた物流施設の開発を進めてきました。本計画では、板橋区さまの地域防災をはじめとしたニーズを踏まえた計画となっており、関係各社と連携のうえ実現に向けて取り組んでまいります。
ヤマト運輸・阿部珠樹氏 現在推進する中期経営計画「One ヤマト2023」では、成長を続けるEC市場や法人領域、保冷配送領域などのニーズに対応し続けるため「ネットワーク・オペレーション構造改革」に取り組んでいます。この構造改革の一環として、今回の「MFLP・LOGIFRONT 東京板橋」と、2022年7月に新設した都内の拠点を活用して、新たな保冷輸送ネットワークの構築を進めてまいります。
板橋区長・坂本健氏 区は「災害に強い首都『東京』形成ビジョン」のモデル地区に「舟渡・新河岸地区」を位置付け、水害に強いまちづくりに取り組んできました。本計画は、官民連携の取り組みにより、水害時に機能する施設をはじめとして、多くの地域貢献を実施する施設計画となっております。区の更なる安心・安全の実現に「板橋区立・舟渡水辺公園」との一体整備イメージ向けて、取り組んでまいります。
左から三木し、坂本氏、阿部氏、吉澤氏
ヘリポートを備えた公開空地
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三木専務の〝十八番〟がまたまた飛び出した。「一言でいうと唯一無二。都内最大級」「日本初、世界初」だと。
「唯一無二」は三木氏の専売特許ではないが、これまでも「当社は最早や後発ではない」「物流施設は嫌悪施設ではない」(2018年5月)などの名言を発している。
三木氏の発言を補強するかのように、報道陣の質問に答える形で吉澤氏は「街づくり型の施設にするには三井さんはベストパートナー」と、阿部氏は「『船橋』『羽田』を見学し、そのスペックの高さに感動した」とそれぞれ述べた。
記者は物流のことはよく分からないのだが、市場規模は不動産業の半分くらいの約24兆円と言われている。どうして〝後発〟の三井不・三木氏のような発言が飛び出すのか。同社が突出しているためなのか、それとも既存の物流業界が遅れているということなのか。不動産業も物流業も圧倒的に中小企業が多いことと関連はあるのか。
新河岸川から現地を望む(ここに施設と同等の基本性能・スペックを備えた〝パークホームズ〟を分譲したら飛ぶように売れるのではないか。坪270万円でどうか)
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板橋区の隣接区・北区は、漫画家・清野とおる氏を起用して「住めば、北区東京。」のポスターを発表して話題になったが、街づくりの取り組みでは記者は板橋区に軍配を上げる。2021年に策定した「板橋区住まいの未来ビジョン2025」では、「東京で一番住みたくなるまちとして評価されるまちを目指すため『ずっと住むなら、板橋区』を基本的な考え方」に街づくりを進めていくと宣言した。
坂本区長も出席されていたので、これは絶好のチャンスだと、話を聞いた。
坂本氏は、2022年4月から開始された国土交通省「マンション管理計画認定制度」で全国初の認定を受けた「高島平ハイツ」を早速取り上げ、「きちんと管理されているマンションが中古市場で適正に評価されるのが狙いで、『高島平』はそれまで1,700万円だったのが3,800万円に値上がりしている」と話し、令和3年4月1日に施行した「東京都板橋区都市づくり推進条例」については「従来は網にかからなかった大規模土地開発などを対象にし、緑環境など良好な景観を残すように取り組んでいく」と語った。
実は、記者は坂本区長とメールでやり取りしたことが一度ある。物件名などは明かせないが、あるマンションの敷地南側に区の所有地があり、そこに不法投棄された粗大ごみが集積・保管されていた。デベロッパーは区と話し合いを行っても解決できず、困り果てていた。ゴミ捨て場が目の前では売れないと。
そこで、記者は「調整区域でもあるまいし、街の真ん中にゴミ捨て場をつくるのはいかがなものか」と区長宛てにメールを送った。区長からは「善処します」との回答があった。その後どうなったか知らないが、デベロッパーから「改善されました」との報告を受けた。
このエピソードには続きがあって、ある住宅評論家は「マンションの敷地の前には公園がある」と書いていた。
「最早、後発でない」「嫌悪施設でもない」 三井不 ロジスティクス本部長・三木氏(2018/5/21)