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三菱地所は511日、20233月期決算を発表。売上高13,778億円(前期比2.1%増)、営業利益2,967億円(同6.4%増)、経常利益2,718億円(同7.1%増)、純利益1,653億円(同6.6%増)となった。海外のキャピタルゲインが利益を牽引し、売上高・営業利益・純利益は過去最高を更新した。

コマーシャル不動産事業は、売上高7,774億円(前期比167億円増)、営業利益は1,888億円(同10億円減)。オフィスビルは「常盤橋タワー(TOKYO TORCH 東京駅前常盤橋プロジェクトA棟)」の通期稼働による増収があった一方で、前期に計上した既存ビルなどの一時的な収入の反動減により減収。20233月末の空室率は3.73%(前期末3.29%)。商業施設やホテルは増収となった。

住宅事業は売上高3,464億円(前期比345億円減)、営業利益350億円(同48億円増)。国内分譲マンション事業は、一戸当たりの販売単価は前期6,971万円から7,076万円に上昇したものの、計上戸数は前期3,046戸から1,596戸へほぼ半減したことから売上高は1,129億円(前期は2,123億円)へ減少した。粗利益率は26.1%(前期比3.6ポイントアップ)、完成在庫は61戸(前期は62戸)、今期計上予定額の78.3%を契約済み。注文住宅の売上高は382億円(前期比1.7%減)となった。

海外事業は売上高1,761億円(同45.3%増)、営業利益は894億円(同335億円増)。アジアで減収となったが、米国、欧州が大幅増収となった。

20243月期は売上高14,690億円(前期比6.6%増)、営業利益2,640億円(同11.0%減)、経常利益2,320億円(同14.6%減)、純利益1,660億円(同0.4%増)を見込む。

配当は23/338円(前期比2円増配)、24/340円(同2円増配)と3期連続で過去最高を更新する見込み。

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 コスモスイニシアは5月11日、2023年3月期決算を発表。売上高は123,374百万円(前期比14.9%増)、営業利益は4,924百万円(同46.9%増)、経常利益は4,469百万円(同71.2%増)、純利益は3,524百万円(同106.9%増)となった。宿泊事業が大幅に改善した。

 レジデンシャル事業は、新築マンションの引渡戸数(427戸、前期比26戸減)が減少したことなどから売上高41,052百万円(前期比1.9%減)、セグメント利益17,062百万円(同3.3%減)となったが、売上総利益率は22.5%(同3.6ポイント上昇)へ改善した。未契約完成在庫は293戸(同39戸減)。リノベーションマンション販売は売上高16,467百万円(同4.4%増)、引渡戸数313戸。

 ソリューション事業は、売上高55,980百万円(前期比10.9%増)、セグメント利益5,386百万円(同3.5%減)。

 宿泊事業は、昨年10月以降の入国制限緩和や国内の旅行需要喚起策などにより、ホテルの稼働が改善し、施設販売が増収となったため売上高11,536百万円(前期比81.5%増)、セグメント損失909百万円(前期はセグメント損失2,061百万円)と大幅に改善した。

 また、同社の連結子会社Cosmos Australia Pty Ltdの清算に伴い、税金費用が大幅に減少したため、純利益35億24百万円(同106.9%増)を計上した。

 2024年3月期は、売上高125,000百万円(前期比1.3%増)、営業利益5,500百万円(同11.7%増)、経常利益4,600百万円(同2.9%増)、純利益3,300百万円(同6.4%減)を見込む。

 2023年3月期の年間配当は期初公表から5円増配の14円(前期比7円増)を予定し、2024年3月期は16円へ増配する見通し。

 

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 明和地所は5月11日、2023年3月期決算を発表。売上高62,319百万円(前期比8.9%増)、営業利益5,941百万円(同42.5%増)、経常利益4,989百万円(同57.9%増)、純利益4,415百万円(同70.0%増)となった。

 主力の不動産販売事業は、分譲マンション868戸(前期比5戸減)、中古マンションの買取再販114戸(同28戸増)の引渡しを行ったことなどから、売上高55,618百万円(同9.2%増)、セグメント利益は6,334百万円(同47.9%増)。2024年3月期に引渡しを予定している住戸の89%が契約済み。完成在庫は15戸。

 2024年3月期は売上高83,000百万円(前期比33.2%増)、営業利益6,300百万円(同6.0%増)、経常利益5,200百万円(同4.2%増)、純利益3,800百万円(同13.9%減)を見込む。

 今期末配当金は前期比10円増配の45円、2024年3月期は5円増配の50円を予定している。

 

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 三井不動産は5月10日、2023年3月期決算を発表。売上高は2兆2,691億円(前期比8.0増)、営業利益は3,054億円(同24.7%増)、経常利益は2,653億円(同18.0%増)、純利益は1,969億円(同11.3%増)となり、売上高、営業利益、経常利益、純利益とも過去最高を更新した。

 セグメント別では、賃貸は売上高7,543億円(前期比12.9%増)、営業利益1,491億円(同14.7%増)。「50ハドソンヤード(米国・オフィス)」の収益・利益の拡大、既存商業施設の回復、「ららぽーと福岡」「ららぽーと堺」の開業効果などにより売上高・営業利益とも過去最高。首都圏オフィス空室率(単体)は3.8%で、前期末から2.6ポイント改善した。

 分譲事業は、売上高6,406億円(同0.5%減)、営業利益は6,406億円(同5.3%増)。投資家向け・海外住宅分譲は減収減益となったが、国内分譲は2,705億円(同10.3%増)、営業利益は393億円(同63.8%増)で、営業利益は過去最高となった。完成在庫はマンションが55戸(前期末82戸)、戸建てがゼロ(同7戸)。今期の国内新築マンション計上予定戸数3,350戸に対する契約達成率は77.5%。

 プロパティマネジメントは、売上高4,459億円(同3.9%増)、営業利益633億円(同10.8%増)。リパーク(貸し駐車場)の稼働向上や費用削減、プロジェクトマネジメントフィーが増加したことなどから売上高・営業利益ともに過去最高を更新した。三井不動産リアルティのリハウス事業の取扱高は増加したが、取扱件数は39,106件(前期41,183件)減少したため微減益となった。

 ホテル・リゾートなどその他は売上高4,282億円(同19.1%増)、営業損失42億円(前期は296億円の営業損失)。RevPARが大幅に改善し、売上高は過去最高。東京ドームの売上高は731億円で、前期より137億円の増収。三井ホームの新築請負売上高は1,378億円で、前期比19億円の減収。

 2024年3月期は売上高2兆3,000億円(前期比1.4%増)、営業利益3,300億円(同8.1%増)、経常利益2,450億円(同7.7%減)、純利益2,100億円(同6.6%増)を見込む。

 また、期末配当は2円増配の32円(年62円)とし、次期配当も年68円に増配する予定。

◇      ◆     ◇

 分譲事業が絶好調だ。国内分譲住宅と投資家向け・海外住宅分譲を合わせた売上高は6,406億円(前期比31億円減)、営業利益は1,457億円(同73億円増)。内訳は国内分譲住宅の売上高は2,705億円(同253億円増)、計上戸数は3,616戸(同99戸減)、営業利益は393億円(同153億円増)、営業利益率は14.6%(同4.8ポイント増)。

 分譲住宅の内訳は、マンションの売上高2,356億円(同288億円増)、戸数3,196戸(同12戸減)、戸当たり単価7,373万円(同931万円増)で、戸建ての売上高348億円(同35億円減)、戸数420戸(同87戸減)、戸当たり単価8,308万円(同717万円増)。戸数減を戸当たり単価上昇でカバーした。完成在庫はマンションの55戸のみ。

 投資家向け・海外住宅分譲の売上高は3,701億円(同285億円減)、営業利益は1,063億円(同79億円減)、営業利益率は28.7%(同0.7ポイント減)。

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 東急不動産ホールディングスは5月10日、2023年3月期決算を発表。売上高は1兆58億円(前期比1.7%増)、営業利益は1,104億円(同31.7%増)、経常利益は995億円(同36.7%増)、純利益は482億円(同37.3%増)と増収増益。売上高が1兆円超となったのをはじめ営業利益、経常利益、純利益ともホールディングス体制への移行前も含めて過去最高となった。

 セグメント別では、都市開発事業の売上高は3,461億円(前期比6.2%増)、営業利益は586億円(同12.9%増)。渋谷を中心とするオフィス・商業施設の空室率は1.1%(前期末1.3%)と堅調に推移し、「九段会館テラス」の開業も業績向上に寄与した。住宅分譲は計上戸数減少により減収となったが、在庫整理が進み、マンションの今期売上予想1,218戸に対する契約済みは82%(同24ポイントアップ)と改善した。

 管理運営事業の売上高は3,371億円(同12.1%減)、営業利益は123億円(黒字転換)。「ハンズ」の株式譲渡により567億円の減収になったが、セグメント全体では減収増益となった。

 不動産流通事業の売上高は2,630億円(同12.1%増)、営業利益は337億円(同28.9%増)。売買仲介、不動産販売とも好調で増収増益となった。

 戦略投資事業の売上高は788億円(同17.6%%増)、営業利益は152億円(同3.4%増)。物流施設の売却や再生可能エネルギー事業の稼働施設の増加などが押し上げた。

 2024年3月期は売上高1兆1,200億円(前期比11.4%増)、営業利益1,120億円(同1.4%増)、経常利益1,005億円(同0.95増)、純利益620億円(同28.6%増)を見込む。

 また、純利益が直近予想の390億円から92億円増の482億円になったことから、期末配当は直近の配当予想から1株4円50銭増配し、14円50銭、年間配当金は23円50銭(前期実績17円00銭)とする予定と発表した。

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 売上高が初めて1兆円超となったのは、2000年以降は主たる収益源だった住宅事業からオフィス・商業施設など賃貸事業へシフトし、2014年には再生可能エネルギー事業に参入するなどポートフォリオの改善を進めてきた結果だ。

 しかし、同社の分譲事業を取材して記者にとっては、分譲戸建ての供給がほとんどなくなり、課題だったマンションの利益率改善もそれほど進んでいないのは残念でならない。

 同じような事業規模の東京建物(2022年12月期)と比較してみよう。マンションの計上戸数は東急が1,369戸、東建が859戸、売上高は東急が1,453億円、東建は859億円、営業利益は東急が111億円、東建が233億円、売上高営業利益率は東急が7.6%、東建が27.1%だ。完成在庫は東急が200戸、東建が175戸。営業利益は東建の約半分で、利益率は10ポイントもの差がある。他のデベロッパーと比較しても同様の結果となるはずだ。何かが欠けている。

 マンションの計上戸数が減少するのは「供給を抑えているためか」というメディアの質問に対して、同社執行役員・宇杉真一郎氏は「マンションの供給を抑えているというのは正確ではない。資材高騰などを価格に転化しづらい郊外から、利益率が高い都内・再開発物件にシフトしていくということだ。今期が底。来期以降は改善する」と説明した。この言葉を信じよう。とりあえず「ブランズ渋谷桜丘」155戸に期待しよう。

 

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「サンウッド浜田山」(物件ホームページから)

 サンウッドは5月9日、2023年3月期決算説明会を行い、同社代表取締役社長・森毅氏が決算概要、2023年3月期業績予想、新規取り組みなどについて説明した。

 2023年3月期決算は、売上高19,376百万円(前期比46.6%増)、営業利益1,959百万円(同256.7%増)、経常利益1,655百万円(同413.7%増)、純利益1,155百万円(同405.1%増)となり、営業利益、経常利益は創業来2番目、純利益は創業来最高益を達成した。

 坪単価650万円超の「サンウッド瀬田1丁目」(22戸)など分譲マンション2物件が早期完売し、一棟収益物件「WHARF(ワーフ)」シリーズ6物件を計上した不動産開発事業が13,606百万円(前期比93.5%増)となり、増収増益に寄与した。完成在庫はゼロ。不動産再生事業は前期の反動減で減収となった。

 2028年3月期の売上高300億円を目標とする中期経営計画を見据えた仕入れが順調に進んだ結果、棚卸資産は前期末18.7%増の22,972百万円となり、2026年3月期までの仕入れ目標をほぼクリアした。

 2024年3月期は売上高19,531百万円(前期比0.8%増)、営業利益1,298百万円(同33.8%減)、経常利益1,010百万円(同39.0%減)、純利益696百万円(同39.8%減)を見込む。森社長は「前期は想定を上回る数値。今期は通常の利益率に戻る」と説明した。引き渡し予定のマンション3物件の契約が順調に進み、「WHARF」も5物件のうち4物件を契約完了している。

 今期の新規取り組みとして、7月に合同モデルルーム「SUNWOOD LOUNGE新宿」を新宿アイランドに開業し、京王電鉄と初の共同事業マンション「サンウッド浜田山」(47戸)のモデルルームを設置する。また、高級賃貸マンションニーズの高まりを受け、都心5区を中心とする東京23区に特化した不動産ファンド事業を立ち上げる予定。森氏は「ファンド事業は中期経営計画に盛り込んでいないが、京王電鉄、グループの京王不動産、リビタとのシナジー効果を発揮し、マンション事業、WHARF事業に続く新しい事業の柱に育てていく」と語った。

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 2021年11月に新たに京王電鉄グループと資本提携(京王電鉄の持株比率は21.19%)した同社の今後に注目している。

 同社は1997年の創業から2012年まで森ビルと資本提携し、渋谷区や港区などで高額マンションを供給してきた。2012年に資本提携を解消し、2013年にタカラレーベンと資本提携したとき、都心部の高額マンションを得意とする同社と、郊外・地方が中心のタカラレーベンとの企業理念・社風は異なり、シナジー効果を発揮するのは容易ではないと記者は見ていた。

 一方、京王電鉄は京王不動産、リビタの不動産会社を擁するが、自社開発マンションはほとんど行っていない。2022年3月期の不動産事業売上高は472億円で、グループ全体売上高の15.8%を占めるが、他の首都圏電鉄会社7社と比較すると、売上高、売上比率は下位からそれぞれ3番目だ。沿線のポテンシャルの高さを考えると圧倒的に負けていると記者は考えている。

 そして今回、マンションなど不動産事業の強化が急務の京王電鉄と京王沿線での供給事例も多いサンウッドの提携は、双方に大きなメリットがあるはずで、決算説明会に出席したのも、森社長が何を話すか聞きたかったからだ。

 その成果はあった。京王との共同事業第一弾となる「サンウッド浜田山」の現地は見ていないが、おおよその見当はつく。立地条件は申し分ない。同社は「価格は未定」としているが、記者は坪600万円超もありうるとみている。森社長は「井の頭沿線のナンバーワンを目指す。飛躍的に高まった資金調達能力を生かし、今後も積極的に京王さんとの共同事業を進めていく」と語った。

 決算説明会で驚いたことがある。一つは、6月の株主総会で京王電鉄取締役常務執行役員開発事業本部長・南佳孝氏と、近鉄不動産元副社長で現顧問の田中孝昭氏が社外取締役にそれぞれ就任する予定であることだ。南氏は京王電鉄との関係強化が目的だから当然として、森社長は田中氏を「業界の重鎮。大手デベロッパーとの共同事業に欠かせない方」と紹介した。

 田中氏の名前をどこかで聞いたような気がしたので調べてみたら、近鉄不動産が主導した「王子飛鳥山ザ・ファーストタワー&レジデンス」と「BLUE HARBOR TOWER みなとみらい」の記事がヒットした。田中氏が関西弁でまくし立てたのを思い出す。記者は樋口武男氏、矢野龍氏、和田勇氏を関西弁の〝雄弁御三家〟と呼ぶが、お三方はそれぞれ第一線を退かれた。田中氏はその後継者だ。絶滅危惧にある関西弁を東京で復活させてくれることを期待したい。

 もう一つは、今後の物件サマリだ。分譲マンションは「浜田山W2」「信濃町W6」「西荻窪W5」「尾久W7」「吉祥寺W3」「東府中W6」「反町W8」「荻窪W7」「大森W4」「横浜・中華街W5」「六本木W5」「府中W6」「国立W5」とある。いずれも10~30億円の中規模だが、このままの市況が続けば、ほっといても売れるようなものばかりだ。

 「浜田山」のモデルルーム次第ではサンウッド旋風を巻き起こす可能性があると見た。参考までに2017年分譲の「サンウッド青山」の記事を添付する。

サンウッド 創業20周年の集大成 「青山」の全面ヘリンボーン床に驚愕(2017/12/8)

近鉄不・三井レジ 商・ホテル・住の複合「みなとみらい」 坪単価は400万円前後(2015/6/9)

近鉄不・京阪電鉄不・長谷工コーポ 実利を取る戦法か「王子飛鳥山」(2014/4/23)
 

 

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仲井氏

 積水ハウスは3月10日、前日に発表した第6次中期経営計画(2023~2025年度)説明会を開催した。

 同社代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、第5次中期経営計画(202~2022年度)を振り返り「営業利益を当初計画より421億円上回ったのは自信になった。戦略は間違っていなかったことを確認できた。初年度は新型コロナやウッドショックの影響などにより441億円利益を押し下げ、このうち100億円を価格に転嫁し、70億円は内部努力で取り戻したが、残りの270億円は吸収できなかった。しかし、最終的には270億円を回収し、なおかつ戸建住宅、賃貸事業が好調だったことにより205億円上方修正することができた」とし、第6次中期経営計画については、「この自信を背景に〝『わが家』を世界一幸せな場所にする〟30年グローバルビジョン実践するため、基本方針は『国内の〝安定成長〟と海外の〝積極的成長〟』とした」と語った。

 第6次中期経営計画では、「国内の“安定成長”と海外の“積極的成長”」を基本方針とし、「技術力」「施工力」「顧客基盤」と、商品・技術開発から、営業・設計・施工・アフターサービスまで、住まいづくりに関わるすべてのプロセスを独自のバリューチェーンを活かし、既存事業の深化と拡張を図る。

 請負型ビジネスでは、戸建住宅事業は価格レンジ別の3ブランド戦略を深化させ、CRM(Customer Relationship Management)戦略の推進を図り、新たなビジネスとして、地域ビルダーと連携して1stレンジの強化を図る。

 建築・土木事業では、鴻池組の強みである環境対応・技術力をドライバーに、土木分野での環境ソリューションを強化し、建築分野での受注チャネル拡大・深化を図る。

 開発型ビジネスでは、徹底したエリアマーケティングを実施、仲介・不動産事業では、資産価値の高い美しい分譲地を開発するとともに、緑化環境の整備や既存住宅の流通・活性化に取り組む。マンション事業、都市再開発事業では、四大都市圏において厳選したエリアへ資産価値の高い物件を供給するとともに、ZEHマンション・ZEBの開発を推進する。また、「Trip Base 道の駅プロジェクト」をはじめ、地方自治体等との連携による地方創生にも貢献していく。

 国際事業では、米国・豪州・英国での戸建住宅の年間供給戸数1万戸を目指す。

 2026年1月期の経営目標は売上高36,760億円(2024年1月期30,800億円)、営業利益3,180億円(同2,650億円)、経常利益3,110億円(同2,590億円)、純利益2,140億円(同1,930億円)、ROEは11%以上を安定的に創出し、配当は中期的な平均配当性向40%以上(110円を下限)とする。

 基本方針を「コアビジネスのさらなる深化と新規事業への挑戦」と位置づけた2022年度を最終年度とする第5次中期経営計画は、3か年合計の業績は当初収益計画を上回り、2022年度では過去最高の売上高・利益を達成した。

◇        ◆     ◇

 仲井社長は説明会で何度も「自信」を口にした。5~6回はあったはずだ。その理由を記者も考えた。

 2022年の持家の着工戸数は前年比11.3%減の25.3万戸となり、16年ぶりに分譲住宅に抜かれた。賃貸や分譲住宅が前年比で伸びているのに、どうして持家のみが大幅に減少しているのか。巷では物価高などを中心とする消費マインドの低下がその理由に挙げられているが、ならば分譲住宅だって影響を受けるはずだ。分譲戸建ては一昨年のような勢いはなくなったが、戸数は増加している。

 記者は、持家の減少は、消費マインドの低下だけではなく、いわゆるパワービルダーの分譲戸建てに市場を奪われているからではないかと考えている。2022年の分譲戸建て着工戸数約14.5万戸だが、うち全国区のパワービルダーの着工比率は50%を突破しているはずだ。

 その影響は、今後発表されるハウスメーカーなどの決算に表れるはずだ。その点、積水ハウスは健闘していると思う。戸建住宅事業は売上高3,524億円(前期比0.1%減)、営業利益は383億円(同9.8%減)となった。減益になったのは原価高の影響だろうか。1棟当たり単価は4,619万円、分譲戸建ての建物部分の1棟単価は3,885万円、マンションも1戸5,207万円と極めて高い数値を示している。

 飯田グループホールディングスの注文住宅単価は2,103万円、戸建て分譲単価は2,987万円(2023年3月期3Q)と比較すると、積水ハウスの住宅は似て非なるものがよくわかる。マンション単価で突出している三井不動産の2022年3月期の単価は6,442万円だ。同社と三井不のこの価格差は関西圏中心と首都圏中心の差だろう。

 これらから読み取ることができるのは、同社の顧客は景気変動に影響されない高所得層が中心で、ハード・ソフト・サービスの融合によりZ住宅など付加価値の高い住宅を供給し、徹底したエリアマーケティング戦略を取っているということだ。同社の顧客の自己資金比率は25.9%、戸建ての紹介比率は38.9%というデータが裏付けている。仲井社長の「自信」はそうした盤石な基盤が構築できているからではないか。疲弊するばかりの競争が激しい市場に人材を投入しないという意思の表れでもあると記者は理解している。

 10日の説明会で好調な分譲住宅について聞かれた仲井氏は「当社はCRMによって、フェースツーフェースによる顧客相談を年間30万件受けている。DXを駆使して土地なし顧客などに対応できているのが大きい」と語り、金利動向に対する質問に対しては「(1次取得層向けの)1stレンジは影響を受けるかもしれないが、主力の中高級路線の顧客への影響はそれほどでもないと見込んでいる」と話した。

 

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新ブランドロゴマーク

 株式会社アキュラホームは3月1日、同日付で商号(会社名)を「株式会社AQ Group」へ変更し、新たなコーポレートロゴマークを設定したと発表。注文住宅ブランド「AQURA HOME」を主軸に「住」に関する総合サービスを展開していく。

 社名変更は、1978年の創業以来、「手ごろな価格や中級価格帯の住宅から邸宅まで」「平屋から木造ビル、アパートまで」「住宅関連事業まで」と、“ホーム”に限定せず“グループ”として「住」に関するサービスを一貫し提供していく基盤が整ったためとしている。

 AQには「永代家守り」=永久に暮らしを守るという想いと、ADVANCE QUALITY. の頭文字をとり「匠の心」=品質を追求する誓いが込められている。

 新コーポレートメッセージは「常識を破壊し、真に豊かな暮らしを創造する。」

 

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中島氏(左)と吉田氏(同社会議室で)

 三菱地所は2月16日、社長交代と取締役会長の異動を発表。4月1日付で取締役兼代表執行役執行役社長に取締役兼代表執行役執行役専務・中島篤氏(59)が就任し、取締役兼代表執行役執行役社長・吉田淳一氏は取締役会長に、取締役会長・杉山博孝氏は取締役に就任する。杉山氏は6月下旬に開催予定の総会をもって取締役を退任、特別顧問に就任する予定。

 同日行った記者会見で吉田氏は「2017年4月に社長に就任してから6年が経過しました。この間、2020年4月に開始した『長期経営計画2030』を立案し3年が経過、一区切りがついたタイミングであり、今後は新しい社長のもとで『2030』を推進すべきだと判断し、社長交代を決断しました。

 新社長に中島を選んだのは、経営企画部門での経験、海外留学へのチャレンジ、不動産開発部門での経験、海外事業の中核企業でもあるロックフェラーグループ社のトップとしての役割などを通じ、その経営力、国際力、人間力、胆力を着実に成長させており、グローバルな視点から日本をみて新たな価値創造にチャレンジできること、加えて、私が大事にしているインテグリティを体現したような誠実、かつ実直な人間であるからです。その明瞭な知と心でもって未来をきりひらいてくれると思います」と激賞した。

 また、自らの6年間の社長時代を振り返り、「6年前の記者会見の席で心がけたいこととして3点をあげさせていただいた。一つ目は将来的な視点に立ったデベロッパーマインドによる挑戦、二つ目はグローバル対応力の強化、三つ目はインテグリティを深めることでした」と語り、新本社への移転に伴う新しいワークスタイルの提案と実践、長期営計画の発表、丸の内ネクストステージの推進、ロボット、AI、IOTの実装やDXの推進による新たな社会の基盤づくり、海外事業、投資マネジメント事業などそれぞれ成果を上げてきたことについて説明した。

 社長就任について中島氏は「身が引き締まる思い。『泉パークタウン』を見学して、その壮大な事業に感銘を受けて三菱地所に入社することに決めました。これまで企画担当として7年間の海外勤務や3度の中期計画を経験しました。藤和不動産との業務提携、リーマンショックの対応、黎明期の不動産証券化などにも携わってきました。そして、2011年からのロックフェラーグループでの経験が大きな財産となっています。これらの経験を通じて、何ごとも真剣、誠実に向き合うことを学びました」と語った。

 社長としての役割については「まず当社の本拠であり、DNAでもある大手町・丸の内・有楽町を圧倒的に魅力的な空間にしていくことです。グループの総力を結集してビジネスだけでなく居住、文化、エンターテイメントなどを取り込んで魅力ある空間にし、国際化にも寄与したと考えています。

 第二は、グローバル化。さらに海外事業、投資事業に力を入れ、成長させたい。価値観・文化もグローバル化にとって重要。多様性の社会の実現にも貢献したい。

 第三は、SDGs。サスティナブルは奥行きが深い分野であり、わたしも学んでいるところですが、会社としても脱炭素社会の実現に向け先駆的な役割を果たしていると自負しています。これからも社会から要請されていることは何かという視点を大切にし、対話、コミュニケーションを大切にしながら、よりよい社会を創造するその一翼を担っていきたい」と述べた。

 中島氏は、昭和38年8月9日生。昭和61年3月、東京大学法学部卒業。同年4月、三菱地所入社。平成3年6月、海外留学(人事部在籍)、同5年6月、経理部、同10年4月、都市開発企画部、同16年4月、経営企画部副長、同23年4月、休職(ロックフェラーグループインターナショナル社)、同28年4月、執行役員 欧米事業部長、令和2年4月、執行役常務、プロジェクト企画部、都市開発部、物流施設事業部、ホテル事業部担当、同4年6月、取締役 代表執行役 執行役専務、経営企画部、サステナビリティ推進部担当、現在に至る。

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中島氏

◇      ◆     ◇

 いつも馬鹿な質問をするからだろう。いくら手をあげても指名されないので、この日は質問をしないと決めていた。(手を挙げたすべての記者の方が指名された)

 実は、小生も1つだけ質問したかった。海外留学2年も含めて都合7年間の海外勤務を経験されている中島氏の苦労、語学力、コミュニケーション能力についてだった。

 ところが、小生は全く英語が話せない。英語が理解できない者に中島氏も説明するのは困難だろうと質問はあきらめた。中島氏はきっと、ボキャブラリーの問題ではなく、コミュニケーション能力の問題だと答えたに違いない。

 このコミュニケーション能力がわが国に決定的に欠けている。母語を大切にし、同時に外国語教育をしっかり行わないとグローバル化についていけなくなるだろう。小生は20年近く前、中国・北京大学付属小学校を訪ねたことがある。3~4年生の生徒は英語がペラペラだった。これは負けると思った。その後、10年も経たないうちにGDPは中国に抜かれた。

 小生の時代はどうだったか。昭和37年だ。中学1年の最初の英語の授業だった。担任の先生が、いきなり級長をしていた小生に向かって、まるで進駐軍みたいな命令口調で〝スタンド アップ〟と声を掛けた。カット頭に血が上り、知らんぷりを決め込んだ。先生は激怒した。政府が「もはや戦後ではない」と宣言したのは昭和31年(1956年)だが、三重の田舎町には当時、戦争の傷跡が色濃く残っていた。あの言葉で英語が嫌いになった(頭が悪いのだが)。

◇       ◆     ◇

 両氏の会見はとても分かりやすかった。分からなかったのはメディアの的外れの質問だった。〝三菱地所は保守的なイメージ〟〝欧米中心なのか〟などと仏壇の奥に眠っているカビが生えた経典を持ち出した。

 もちろん、両氏はこれを否定した。小生が説明するまでもないことだが、同社は丸ビルが竣工した20年前あたりから劇的に変わった。東京駅周辺の街も変わった。2011年に社長に就任した現取締役会長の杉山博孝氏はとても気さくな方で、広島カープファンであることを公言してはばからなかった(コーポレートカラーと一緒だからでもないはず)。同社のイメージチェンジに大きな役割を果たした。

 吉田氏も社長に就任した2017年の翌年、大手町パークビルが完成したとき、〝本丸〟の本社オフィスをメディアに公開した。こんなことをした会社は少なくともデベロッパーにはなかった。吉田氏はデベロッパーのオフィス・住宅の木質化にも先導的な役割を果たした。

 そして今、もっともワンダフル、ビューティフル、ハートフル、アートフル、ウォーカブル、チャレンジング(小生だってこれくらいの英語は分かる。スペルは書けないが)な活動を行っているデベロッパーこそ同社だ。コロナ禍でも見学会をきちんと行ったのは同社だけだ。

 とんちんかんな質問をした記者の方には〝ペン(スマホか)を捨てて街に出よ〟といいたい。大・丸・有を歩けば三菱地所がどのような街を目指しているか、そしてまた日本橋、新宿、渋谷、池袋などとどこが異なるかすぐわかる。丸の内仲通りにはバギー姿があふれ、道路に敷かれた本物の芝生の上に素足を投げ出し、子どもに食事を与える母親がいる光景を見てごらん。

 別の記者の方は中島氏が大・丸・有の開発に関わってこなかったことを質したが、中島氏が大・丸・有を知らないわけがないし、吉田氏がそんな人にバトンを渡すはずがないではないか。むしろ逆だ。中島氏は米国勤務時代、外からしっかりわが国の街づくりをそのよさと弱みを眺めていたに違いない。小生は中島氏の話を聞いていてカチンと響くものがあった。大・丸・有を含めた同社の街づくりは間違いなく変わると。

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カテゴリ: 2022年度

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深澤氏(左)と西川氏(オークラ東京で)

 東日本旅客鉄道(以下「JR東日本」)と東急不動産ホールディングス(以下「東急不HD」)は2月14日、包括的業務提携契約を締結したと発表した。両社グループが持つまちづくりに関わるアセット、ノウハウ、人材などを活用した高いシナジー効果を追求するためで、住宅事業と再生可能エネルギー事業を軸に、その他海外事業展開などを含めた事業を推進していくのが目的。提携期間は2033年2月までの10年間。

 環境共生・コミュニティ自助型の持続可能なまちづくりの柱の一つである住宅事業では、第1号案件として、JR東日本の所有する船橋市市場一丁目に位置する社宅跡地約4.5haにマンション800戸や商業施設、再エネ発電施設を整備する。完成時期は2026年度。

 再生可能エネルギー事業では、総定格容量約1,400MWの自社発電施設を有する東急不HDの再生可能エネルギー施設の開発・運営ノウハウや、JR東日本グループが保有する土地・建物資産などを活用し、太陽光発電施設などの開発を進め、概ね5年以内に5か所程度の再生可能エネルギー事業開発を推進する。また、東急不HDが所有する宮城県を中心とした既存の再生可能エネルギー施設2~3か所をシードアセットとし、来年度に100億円規模のファンドを組成する予定で、今後10年間で1,000億円規模を目指す。

 このほか、JR東日本がもつASEAN各国鉄道会社とのネットワーク、東急不HDのインドネシアを中心とする不動産開発の実績をベースに、環境共生・コミュニティ自助型の持続可能なまちづくり事業を展開していく。

 また、ニューノーマル時代の「新しいワークスタイル」として、モビリティや通勤顧客へのサービスを提供するJR東日本と、さまざまな形態のオフィス開発・運営、リゾート&ホテル事業を手掛ける東急不HDの強みを生かし、軽井沢などの東急ハーヴェストクラブ会員権に新幹線往復チケットを付けるなど利便性の高いワーケーション商品の開発を行う。

 さらにまた、JR東日本グループと東急不HDが保有する多様なアセットを活用し、新たな価値創造と事業収益の獲得を目指していく。

 記者会見でJR東日本代表取締役社長・深澤祐二氏は、「提携により2023年度から5年程度で1,000億円規模の売り上げを目指す。両社が連携しグローバルアジェンダの解決に果敢に挑戦していく。タッグを組むことで、これまでどちらか一方では実現できなかった心豊かで輝く未来を実現していく」と語った。提携の決め手については、「中期ビジョン、環境共生、ユニバーサルビジョンなどが一致するから」とし、「当社はこりまでモビリティが中心だったが、生活ソリューション事業を拡充し、将来的には事業比率を5:5にする目標を掲げている。その中で不動産事業は大きなウエイトを占めている。スピード感をもって進めていく」と話した。

 東急不動産ホールディングス代表取締役社長・西川弘典氏は、「当社グループの長期ビジョン『GROUP VISION 2030』では全社方針として環境経営を、事業方針の一つとしてパートナー共創を掲げ取り組んでいる。連携は非常に高いシナジー効果が期待できる。国内外の様々な課題解決をリードする存在になる。今回の提携を契機に幅広く連携し、新たなお客さま価値の創造と企業収益の拡大を目指す」と語り、連携の決め手については「不動産会社として成長していくため、重要な戦略として関与資産をいかに拡大していくかが課題となっている。そのためパート―ナー共創を掲げ、関与資産拡大の機会を探ってきた。両社の中長計画がほぼ同じであること、両社が持っている経営資源などのリソースは補完性が非常に高いと判断した」と述べた。

◇        ◆     ◇

 両社が包括的業務提携契約を締結すると案内があったとき、記者は仰天した。青天の霹靂、逆転満塁サヨナラホームランを浴びたような気がした。

 なぜか。デベロッパーとしたら、JR東日本が所有する駅舎などの土地は垂涎の的だ。土地代はただ同然で、容積など半分以上余しているはずだ。やろうとすれば、駅地下・駅中・駅上開発ができる。郊外では寝過ごし客相手の仮眠・宿泊施設を設けたら連日連夜満室だろう。シェアオフィス需要だって取り込める。三顧の礼、三跪九叩頭して提携をお願いしたい企業だ。日本郵政も同じだが、同社は2018年4月2日、デベロッパー日本郵政不動産を立ち上げた。社長は2代にわたって三井不動産グループ出身者だ。

 そんなこともあり、記者はJR東日本と〝婚約〟発表をするのは、最近いくつかの共同事業を行っているあるデベロッパーしかないと思っていた。相思相愛、ラブラブだと信じて疑わなかった。相手が東急不HDとは毫ほども考えていなかった。そのデベロッパーは振ったのか、振られたのか謎だ。

 そこで考えた。そのデベロッパーになく、東急不HDにあるもの・強みは何か。ホテル&リゾートだと結論づけた。双方の事業規模を調べる余裕はないが、同じくらいか。双方合わせれば100か所くらいになるのではないか。タッグを組めばドラスティックな改革も可能で、面白い展開ができると。

 ただ、他の住宅などの不動産開発は、土地は持っているが、その土地を生かすノウハウを持たないJR東日本はフリーハンドで好きなとき、好きなデベロッパーと手を組んだほうが優位に立てるはずで、業務提携によって手かせ足かせをはめるのは得策ではないから、その点を質そうと、質疑応答で最初から最後まで手を上げ続けた。いつも馬鹿な質問をするからだろう。今回も指名されることはなかった。質問を許されたのはいつものメンバーだった。(これはやめるべき。記者はその手口を小学生のとき知った。それを許すメディアにも責任がある。みんなが手をあげればMCもスタッフもパニックに陥る)

 少し横道にそれる。これまで鉄道事業会社の不動産開発をいくつか取材してきた。一言でいえば稚拙。ごく一部を除き、ゼネコンやデベロッパーに丸投げ、ぶら下がるだけ。〝揺りかごから墓場まで〟(福祉施設のことを言っているのではない)あらゆる事業で沿線住民にサービスを提供しているのに、収穫することを行ってこなかった。許認可権を握る国の責任でもあるが…。

 まあ、こんな繰り言をいってもしょうがない。仕方がないので、両社の担当者に直接聞いた。JR東日本には「自由恋愛と同じように、だれとでも手を組むほうがいいのではないか」と(こんな質問をするから嫌われる)。

 ところがどうだ。その担当者の方は「仰る通り。案件によっては他社と組むこともある」と。さすがJR東日本、強かな読みがある。

 東急不HDには、「JR東日本さんは自ら手を縛らないと言っています。好きなように他社と手を握られたら、東急さんだって面白くないのではないか」と(これまた失礼な質問)。すると、同社担当者の方は「企画力を向上させ、選ばれるようにする」と語った。不動産仲介の専属専任媒介ではない主旨のことも話されたので、一般仲介に近いのか。

 これで疑問は氷解した。他のデベロッパーにもつけ入るチャンスはあるということだ。深読みすれば、JR東日本は今回の提携により、デベロッパー間の競争を促し、より有利な開発を行おうとしているとも読める。

 ただ、東急不HDの強みはほかにもある。両社社長が強調したように、環境共生やユニバーサルデザインの取り組みを、東急不HDはどこよりも早く着手したのを思い出した。再生可能エネルギー事業もそうだ。街づくりといえば東急だった。西川社長は渋沢栄一の創業精神を紹介したようにそのDNAは健在であることを思い知らされた。両社が協業の話し合いを始めたのは昨秋というから、ほとんど即断即決なのだろう。善は急げか。

 もう一つ、どうしても確認したいことがあったので質問した。会見場はJR東日本のクラシックホテル「東京ステーションホテル」でも、東急グループのフラッグシップホテル「ザ・キャピタル東急」や「セルリアンタワー渋谷」でもない点だ。

 これについて、JR東日本担当者は「お互いの色が付いていないから」と話した。なるほど。

 そこでまた考えた。愛は惜しみなく奪うのか、限りなく尽くすのか。色に染まるのはどっちか。何? JR東日本も東急不HDもコーポレートカラーは青? ならばなおさらだ。記者はどっちの青にも染まず毅然として傍観者の「白鳥」の立場を貫くぞ!「白鳥は悲しからずや」と詠んだ牧水は自身が病んでいたらで、白鳥は健康そのものと高校のテストで答えたら×だった。今でも小生の答えが正解だと思っている。

カテゴリ: 2022年度
 

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