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故・田中氏の遺影(帝国ホテルで)

 ケン・コーポレーションは3月5日、昨年12月25日に74歳で亡くなった同社の創業者で代表取締役会長・田中健介氏の「田中健介お別れの会」を行なった。関係者ら約2,100人が参加した。

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 参加者の数に驚いた。田中さんの人柄と人脈の広さをこの数が示している。昭和47年に外国人向け仲介会社を興し、その後40余年にわたり「信用」「信頼」を愚直に掲げ、不動産業界に大きな地歩を築いてきた。いかにも田中さんらしい人懐っこい笑顔の遺影の前にしばしたたずんだ。

 同社佐藤繁社長は参列者に配布された「ごあいさつ」の中で、「故人にとって、満足な人生ではなかったかと思えてなりません」と記しているが、その通りだと思う。記者にとっては3年前だったか、囲碁について取材することになっていたのが、直前になってキャンセルとなったのが唯一の心残りだ。田中さんから最後に聞いた言葉は、平成23年11月19日に行われた第23回RBA野球大会 日曜ブロック決勝戦で優勝したときの「補強? よきに計らえだよ」だ。

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献花会場

ケン・コーポレーション田中健介会長が死去(2014/1/7)

ケンコーポが3年ぶり9度目の優勝 小笠原 ノーヒット1失点の好投(2011/11/19)

 

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「これからの『林業政策』を問う-林業基本法制定50年を振り返って-」(港区:石垣記念ホールで)

林家の平均年収は29万円 100haの大規模林家でも36万円

 大日本山林会は3月3日、「これからの『林業政策』を問う-林業基本法制定50年を振り返って-」と題するシンポジウムを行った。約120人が参加した。

 シンポジウムでは、東大大学院教授・永田信氏が基調講演を行ったほか、筑波大教授・志賀和人氏をコーディネーターに林野庁森林整備部長・本郷浩二氏、速水林業代表・速水亨氏、全国森林組合連合会代表理事専務・肘黒直次氏、九州大教授・佐藤宣子氏、筑波大准教授・立花敏氏、森林総合研究所関西支所チーム長・山本伸幸氏がパネリストとなってパネルディスカッションを行った。

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 「公益社団法人大日本山林会」の存在をある人を介して初めて知った。同会の案内書によると、設立は明治15年(1882年)。初代会頭・伏見宮貞愛親王殿下から現総裁・桂宮宜仁親王殿下に至るまで歴代総裁は皇族ばかりで、創立以来130年、わが国でもっとも長い歴史を持つ森林・林業団体だという。民間森林・林業の振興に寄与するのが目的だ。

 記者は他の取材と重なったため、途中からの参加だったが、会場の石垣記念ホールは満席だった。途中休憩はあったのだろうが、11:00から17:00まで6時間もぶっ続けで森林・林業の過去・現在・未来を関係者が論じ合ったのにびっくりした。

 シンポジウムも、コーディネーターとパネリストが語り合うというより参加者の質問に答える形で進められた。参加者は一家言を持つ人ばかりのようで、阿吽の呼吸という形容がぴったりのシンポジウムだった。

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志賀氏

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 森林・林業の現実については、これまで論じられているように高度成長期の木材需要が拡大する一方で、エネルギー革命、円高の進行による輸入材の増加と自給率の低下を招き、国産材価格の下落、林業就業者の減少と高齢化、伐採期に育っているのに赤字になるから伐れない、所有の空洞化などの危機的状況が浮き彫りされた。

 いかに深刻か。速水氏の報告から以下に引用しよう。

 「2002年から為替と自給率、木材価格が関係なく動いている」「『円さえ弱くなれば、世界の木材価格はゆっくりだが上昇しているのだから、国産材の下落も止まる』という期待が出来なくなった」

 「林業での生産拡大は今の時代は、思いの外レスポンスが良い。それに対して需要拡大は時間が掛かる。この時間的ギャップが林業経営をほとんど採算の合わない産業に変えた」

 「林家収入の下落は、いかんともしがたい。1990年までは面積が100~500ha層で5,934千円あり、高額ではないが専業でなければ、この収入は魅力的であるが、その後の下がり方はあっという間に100万円を切り、2005年には361千円である。これでは若者の月給である。2008年になると100~500haの林業所得は259千円で500ha以上でも217万1千円である。これらのことは全ての林業問題を包含した結果である」

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 森林・林業問題は、この前書いた「空き家」問題と根っこは同じだ。間違いなくこの20年間で何かが壊れた。記者が普及することを期待している「CLT」も強度は十分だが、接合部を強化しないと建基法を満たさないようで、実用化するにはまだ3年かかるという。速水氏のいう「時間的ギャップ」は埋まるのだろうか。

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左から本郷氏、速水氏、肘黒氏

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左から佐藤氏、立花氏、山本氏

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「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」

 国土交通省は2月28日、第5回目の「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」を開き、「報告書(案)」を取りまとめた。

 「検討会」は、全国の空き家が約760万戸(平成20年)に及び、そのうち個人住宅が約270万戸を占め、防犯・防災・衛生・景観など環境面でも地域の大きな問題となっていることから、質の高い既存の住宅ストックを活用した賃貸流通や住み替えの促進を図るため、所有者、利用者、関係事業者、行政などの当事者に向けて、先進的な取り組み事業や契約の枠組み(ガイドライン)を整備する方策を検討するもの。

 「報告書(案)」では、一定水準の賃料を得られる都市型と、賃料水準の低い所有者が修繕などの負担を追わずに、貸主が自費で模様替えなどができるDIY型の3パターンが示された。

 また、当然のことながら、「単に住宅の視点のみならず、子育てや雇用、福祉等の公共サービスを含め、総合的な地域経営の観点から、地域の活性化に取り組むことが求められる」ともしている。

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 住宅数が世帯数を上回ったと発表されたのは昭和48年だ。その後、空き家は一貫して増え続け、平成10年には10%を超えた。記者は賃貸経営は疎いが、空き家率が10%を超え、その後も増え続けるとすればやがて経営は成り立たなくなり破たんするのは目に見えている。平成20年の賃貸住宅の空き家率は18.8%というから危機的な状況にあるのだろう。

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 「検討会」では、不動産業界の代表側から「物件が出てこない」という声が聞かれた。記者はわが耳を疑った。全国に760万戸も空き家があるのに、どうして民間の不動産業者に物件が出てこない=流通しないのか。そんなはずはない。

 「物件が出てこない」のではなく、不動産業者に空き家を流通させる能力、ノウハウがないのだと思う。外国人居住を増やそうというのが国策である現在、いまだに戦前の商行為「礼金」を、「KARAOKE」「TENPURA」「TSUNAMI」のようにそのまま「REIKIN」として通用するとでも考えているのだろうか。まず、このような「前近代的」な姿勢を改めないと、不動産賃貸業の将来はないのではないか。

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 記者は一昨年の夏、限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地を取材した。昭和37年から同44年にかけて東京の開発業者によって開発された2団地合計の開発面積が約17万㎡で、総戸数1740戸。1区画あたりの平均面積は約20坪から約27坪というものだった。

 訪れたのは30年ぶりだったが、限界集落になっているという確信があった。最初は実名をあげるつもりで書いたが、直前になって匿名にすることにした。反響が怖かったからだ。

 しかし、この団地の例は極端ではあるが、どこの郊外団地でもやがて直面する問題だろうと考えている。空き家問題というよりは、もっと深刻なコミュニティ・街の崩壊の問題だろうと思う。

 そうした難問に「検討会」はどのような解決策を打ち出すのだろうと期待していたのだが、「検討会」の主旨はそうではなかった。冒頭の通り、空き家の賃貸借契約のガイドラインを示すことに主眼が置かれていた。

 国交省住宅局住宅総合整備課長・里見晋氏が「空き家対策については法制化が検討されており、市町村計画で調査を進めているところもあるが、この検討会は定住促進のために行っているわけではなく、空き家を活用して流通の仕組みを整備することにある。この問題はゼロサム(ゲーム)と一緒だ。市場性のない劣悪なものはシュリンクしていく。一方で、いいものもある。それを発掘し、資金面などで問題を抱えている子育て世代などを支援することで流通するようにしたい。完成形として世に問いたい」と話した通りだ。

 空き家問題は喫緊の課題だが、小手先の対策では解決はしない。街を再生するビジョンが必要だ。

限りなく限界集落に近い首都圏の郊外団地 人口4割減 55歳以上の人口比率は48.7%(2012/2/27)

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 積水ハウスは2月27日、建築研究開発コンソーシアム(CBRD)主催の「第11回 建築・住宅技術アイデアコンペ」で同社が提案した「子どもの安全配慮に関する研究」が最優秀賞に選ばれたと発表した。

 研究をまとめたのは同社技術部の藤井瑛美氏で、ユニバーサルデザインの視点から、住宅内の子どもの事故防止のためのプラン提案、部材・設備などの提案を行ったのが評価された。

 受賞について同社は、「女性ならではの視点も評価されたのでは。2月より『ダイバーシティ推進室』を設け、女性を中心に多様な社員の活躍を目指す中での受賞」とコメントしている。このテーマについて約1年間、社会に還元できる具体的成果を目指して合同研究を行うという。

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 同社のユニバーサルデザインの取り組みは業界では抜きんでており全産業を通じてもトップクラスだろうと思う。しかし、藤井氏も指摘しているように、小さなこどもの事故防止については盲点となっているのも確かだろう。記者も風呂場での溺死が相当あるのに驚いた。研究成果の発表を待ちたい。

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 同社は2月に「ダイバーシティ推進室」を設置したようだが、記者もこれから「ジェンダー」について勉強しようと思う。

 2月15日に行われる予定だった日本学術会議のセミナー「法の世界とジェンダー 司法と立法を変えることはできるのか? 」を楽しみにしていたのだが、大雪で急きょ中止になり参加できなかった。32ページにもわたる資料だけは頂いた。

 そこには、報告を行うことになっていたお茶の水大学名誉教授・戒能民江氏の「立法は政治的意思の欠落を隠蔽する。政治的意思の欠落と結合した弱い法律は、法の効果そのものを蝕む」(国連女性に対する暴力特別報告書クマラスワミ)「新しい理論形態は『顔面を殴るこぶしという現実に関与する』」(マッキノン2005)などの鋭い文言・語句が満たされていた。

 記者が一番注目したのは、ある大学の履修科目「ジェンダーと法」の最終回授業(15回目)では「男らしさと女らしさ」を論じるとあったことだ。男を自覚するようになって60年、記者はこのテーマの解答が分からない。

 それを知りたくて、上野千鶴子氏と角田由紀子氏のそれぞれの近著を買った。同世代の作家、小池真理子氏は「私には両性具有の眼がある」と語ったが、やはり小池氏は素敵な女性だと思う。ミミズやカタツムリを研究するほうが手っ取り早いか。

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「帰宅困難者」受付風景

 三井不動産は2月27日、今後予想される首都圏直下型東京湾北部地震(M7.3)を想定した帰宅困難者受け入れ訓練をテナントなどとともに日本橋「江戸桜通り地下歩道」で行った。

 訓練は昨年4月に施行された帰宅困難者対策条例に基づき中央区の要請により、江戸桜通りの地下歩道での帰宅困難者の受け入れを決定し、ゾーニングから受け入れ態勢の整備、非常用備品の配布など一連の流れを実施した。

 中央区のモデル事業としても実施されたもので、参加者は三井不動産の社員、テナント企業、中央区など。スタッフ20名を含む180名が参加した。

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訓練開始時の三井不動産スタッフによる説明

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 この種の訓練を見学するのは初めてだった。地下歩道は三井不動産など事業者が整備し、管理は区が行うもので、広さは約3,000㎡。帰宅困難者約1,800人を収容可能。非常食やトイレを整備、災害時には約450人が3日間利用可能な水槽を設置している。非常用の自家発電も完備しており、停電時でも3日間電源が確保されている。

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 帰宅困難者に扮した若い女性に声をかけたら、「自家発電? 知ってますよ。3日間大丈夫と聞いています」と答えが返ってきた。びっくりしたが、「三井さんの社員でしょ」と聞いたらその通りだった。

 帰宅困難者には1人分約1畳分のシート、四角い座布団のような断熱クッション、金銀のアルミシートが配布された。アルミシートはサイズ約210×130で、金色は吸熱、銀色は断熱効果がある。「MADE IN CHINA」だった。

 避難場所は禁煙だが、酒については、お巡りさんが「本人の判断に任す」と話した。もちろん参加者は勤務中。酒など飲む人はいなかった。

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金銀のアルミシートで体をくるむ参加者「結構あったかいですよ」

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災害情報も刻々と伝えられた

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「江戸桜通り」の地下歩道

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 建築工事費の上昇、職人不足は深刻の度を増しているが、その影響はマンションの広告にも表れている。施工会社が決まらず、物件概要に「未定」とするものが散見されるようになってきた。そのような「広告」を見るにつけ、デベロッパーの苦悩が伝わってくる。

 広告の開始時期の制限を定めた宅地建物取引業法第33条には、「宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第29条第1項又は第2項の許可、建築基準法第6条第1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない」とあるが、この規定には施工会社を明記しなければならないとはなっていない。

 つまり、施工会社が決まらなくても広告は打てる。不動産広告の自主規制団体、不動産公正取引協議会では「好ましくはないが違反ではない。施工会社が決まっていないマンションを消費者がどう判断するか」(首都圏)「厳密に言えば違反だが、諸事情があり『予告広告』の段階では未定でも認めている。本広告の段階ではきちんと明記するよう指導している」(近畿地区)としている。

 記者はマンションの施工会社も設計・監理会社も極めて重要な選択肢の一つだと思うが、やはり一番重要なのはデベロッパーの姿勢だ。施工がどこであっても、「これが当社のマンション」と自負できるようなブランドを目指すべきだ。

 とはいえ、施工会社が分からない(そもそも設計会社も監理会社も管理会社も広告で表示する義務はない)マンションの購入を検討する人はどれくらいいるだろうか。施工や設計、監理、管理がどこであるかも重視されるのが本来の姿であると思う。

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新地町のホームページ トップ

 北は宮城県山元町に、東は太平洋に接す福島県の最北端の町、相馬郡新地町は人口約8,000人。町のプロフィールには「西部の阿武隈山系からのびる丘陵の間の平地に、市街地や田畑、果樹園が広がり、海は遠浅で澄んだ水と美しい砂浜が続いています」とある。

 この「遠浅で澄んだ水と美しい砂浜が続く」町を東日本大震災が襲った。「沿岸部は壊滅的な打撃を受けた」(第一次新地町復興計画)。津波は標高10m 未満の多くの土地に浸水し、浸水面積は町の全面積の5分の1約904haに達し、500 戸を超える住宅が全半壊、JR 常磐線新地駅も全壊した。死者・行方不明者は118人にのぼっている。

 町は2012年4月、①命と暮らし最優先のまち②人の絆を育むまち③自然と共生する海のあるまち-の3つを骨子とする復興計画をまとめた。復興計画「『やっぱり新地がいいね』~環境と暮らしの未来(希望)が見えるまち~」は、柏市、横浜市、北九州市などとともに国の「環境未来都市」にも選ばれた。

 「環境未来都市」構想は、21世紀の人類共通の課題である環境や超高齢化対応などについて世界に類のない成功事例を創出し、国内外に普及展開することでわが国の持続可能な経済社会を実現するプロジェクトだ。

 新地町の計画書では、2050年の将来像を次のように高らかに謳っている。

 「木質バイオマスや太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーによる『エネルギーの地産地消』を達成してきました」「地域の基幹産業である農業や水産業などの一次産業は、豊富な再生可能エネルギーを背景に、最先端の生産・貯蔵技術などを活用し新鮮な食品を供給することで、市場の高い評価と信頼を獲得し、今では国内外に通用するブランドを確立するに至っています」「地域の高齢者には、もはや『リタイア』という言葉はありません」「多様なインフラを介して、多様なコミュニティビジネスが生まれ…人の絆が強くなり、生活の利便性においても、大都市圏に劣らないほど充実しています」

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 記者は2050年の新地町が「エネルギーの地産地消」を達成し、一次産業が国内外に通用するブランドを確立し、「リタイア」の言葉は死滅し、「大都市に劣らない」利便性を確保し、そしてこの「成功事例」が全国に波及することを願いたい。

 それにしても、この楽観主義はどこから来るのだろう。千葉県柏市の「環境未来都市」計画も未来をバラ色に描いて見せる。「長寿・高齢化社会は手放しで喜ばしいことと歓迎される」(柏市)社会は到来するのか。新地町のように「リタイア」の言葉は本当に死滅するのだろうか。

最近ではベストセラーになった「里山資本主義日本経済は『安心の原理』で動く」(角川oneテーマ21) もそうだ。わが国の「里山」は危機に瀕しているというのに、「マネー資本主義」を補完するサブシステムとして十分機能するという。「国家」もそのうちに死滅するのかと思ってしまう。

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 しかし、現実は厳しい。新地村の平成21年度決算報告によると、一般会計の歳入は44億円、歳出は40億円。歳入のうち町税が21億円(48.5%)で、その他の収入などを含めた自主財源額は28億円(65.4%)だ。歳出で多いのは総務費7億円(19.3%)、民生費8億円(20.4%)、土木費5億円(12.6%)、農林水産費4億円(10.6%)などだ。

 地方都市では自主財源比率が1割~3割しかないのが常識であることからすれば、当時の新地町の財政は極めて健全といえなくもない。

 これが震災によって一変する。平成24年度の歳入は279億円、歳出は263億円。歳入のうち町税は18億円(6.6%)で、繰入金が35億円(12.8%)となっている。国庫支出金は165億円に達した。

 21年度と比較すると予算規模は6.3倍に膨れ上がったが、自主財源比率は65.4%から一挙に22.7%までに低下。震災の影響か、人口は震災前より430人、5.1%減少し、町税も実に14%、3億円も減少した。

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 この新地町の復興事業の目玉となるのが「新地駅周辺被災市街地復興土地区画整理事業」だ。施行面積は約23.6ha。施行後は道路、公園などの公共用地が約8.2ha(34.4%)で、宅地は約12.5ha(52.9%)、保留地は約3.0ha(12.6%)。減歩率は25.4%。事業期間は平成25年から30年度末まで。総事業費約66億円のうち保留地処分金約4億円を除く61億円はほとんど公費で賄う。

 被災前の地区内の人口は約190人で、人口密度は8.0人/ha。地価の平均額は7,700円/㎡だ。区画整理後の人口は約370人、人口密度は16人/haとしている。整理後の地価は11,900円/㎡。

 平たく言えば、9.6億円(坪25,000円)の土地を15億円(坪39,000円)の宅地にするために61億円を投じ、人口を約150人増やす計画だ。安心・安全の復興まちづくりは途方もないお金がかかるということだ。これが強くしなやかな「国土強靭化」政策なのか。

 同じような土地区画整理事業は被災地の50カ所以上で計画・進行している。

これでいいのか 被災地復興土地区画整理事業(2014/2/13)

3.11からもうすぐ3年 人口は震災前より2.0%、6万人減少(2014/2/6)

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「シェアリーフ西船橋グレイスノート」

 日本土地建物は2月19日、入居募集を開始した大型シェアハウス「シェアリーフ西船橋グレイスノート」を報道陣向けに公開した。築27年の同社の研修施設をコンバージョンしたもので、バブル仕様を生かした豪華・ハイグレードの共用部分と、入居者同士の豊かなコミュニティの創造を目指した完全防音仕様の音楽スタジオ3室を設置したのが最大の売りだ。

 物件は、JR総武本線、武蔵野線、東京メトロ東西線西船橋駅から徒歩12 分、船橋市本郷町に位置する地下1階地上5階建て延べ床面積3,727.27㎡。総戸数は85戸。1戸当たり専用面積は12.80~25.60㎡、賃料は51,000~83,000円(別途共益費18,000円)。保証金50,000円(退去時に3万円償却)。契約形態は1年間の定期建物賃貸借契約。施工は増岡組。

 従前建物は1986年に完成。日土地の宿泊施設付きの研修所として利用されていた。

 見学会に臨んだ同社執行役員都市開発部長・阿部徹氏は、「当社のシェアハウスは2年前の『千歳烏山』に次ぐ第2弾。その経験と従前の建物の特徴を生かし、業界最高レベルの質を追求した。ハイグレードな共用施設を配し、音楽をコミュニケーションツールとして仕掛けたのが特徴」と話した。

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地下の音楽室(従前は機械室)

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 音楽はまったく分からない記者でも、音楽好きにはたまらない施設だろうということは容易に想像できる。3室のうちもっとも大きいスタジオは本格的なバンド練習ができるよう50万円もするトラムゼットが置かれており、壁には音楽を聴くのに最適な環境をつくる有孔ボードが貼られていた。同様の楽器類を備えた時間貸し施設を利用する場合、1時間2,000円くらいするそうだ。

 共用部分・施設が充実しているのもよく分かる。階段室の廊下幅は約1.4m、内廊下の幅は約1.65mと広く、エントランスホールは壁にアートパネルを施した高さ約7mの2層吹き抜け空間となっており、自然採光のトップライト付きだ。74畳大のリビング・ダイニング、49畳大のキッチン、53畳大の多目的室なども桁違いの広さだ。2階ラウンジには、自分の好きなアーティストのCDや、自己制作したCD等を展示できるキャラクターボードを設置。入居者同士でシェアすることもできるという。

 デザイン意匠にも工夫を凝らしている。階段のステップはコンクリートのままなのがいい。外付けのネットやテレビの配線もパンチングされたアルミを使用してデザイン処理されていた。

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エントランスホール(左)とリビング・ダイニング

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 驚いたのはキッチンだった。独身寮のように賄いの人がいて食べさせてもらえ、後片付けもしてもらえるのかと思ったが、そうではなかった(だから独身寮ではなくてシェアハウスなのだが)。それぞれが自前で作って食べるのだという。最大3合炊ける炊飯器も、炊いた後はご飯を出して、内釜は洗って返すのがルールだという。

 つまり、すべて自分でやらないといけないことになっていた。調理に自信がある人はともかく、調理などしたことのない若い女性が衆目監視の中で一人調理する勇気はあるのだろうか。記者も若い独身だったら、若い女性がたくさんいる前でラーメンだって恥ずかしくて作れなかっただろう。米は鍋に蓋をしないと炊けないのを覚えたのは確か24歳のころだ。

 しかし、キッチンには素晴らしいカウンターもついていた。コミュニケーションの場となる仕掛けだ。いっそのこと、入居者同士で調理人を雇い、酒を飲みながら談笑できるようにはならないのだろうか。はるかに食費や飲み代が安くなるのではないか。

 入居者の平均居住年数は約2年で、退去する理由は結婚とか転勤だそうだ。入居条件に年齢制限はないが、見学者の最年長は40歳代だという。

 居室には浴室もトイレもないが、家賃を節約し、その一方で豪華な共用施設を利用したり、入居者同士のコミュニケーションが図ったりできるのがシェアハウスの魅力なのだろうが、居住年数が2年というのは意外だった。

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居室(左)と階段室

日土地 〝業界最高水準〟の共用部を備えたシェアハウス第2弾「船橋」(2013/9/17)

 

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「高田」の市街地完成予想図

陸前高田は2カ所で302ha 事業費は桁違いの1200億円

 東日本大震災による被災地の復興の有効な手段として防災集団移転促進事業(防集事業)とともに震災復興土地区画整理事業が各地で進められている。復興庁のデータによると、計画されているのは51地区で、このうち48地区で事業化、33地区で造成工事に着手した。

 一般的な土地区画整理事業と異なり、①施行地区については市街化調整区域を含むことが可能②宅地と農地を一体的に整備することも可能③市街地のかさ上げ費用を国費で賄う④施行面積や人口密度計画の緩和⑤事業費は復興交付金事業として実施されるため、地方の財政負担は生じない-などが特徴だ。

 一つ一つの事業について調べる余裕はないが、事業計画がまとまった陸前高田市について紹介する。

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 陸前高田市では、「高田地区」189.8haと「今泉地区」113.0haの合計302.8haが被災市街地復興土地区画整理事業として認可された。道路、公園を整備したうえ、津波被害あったエリアを盛土によって10m前後かさ上げし、公共施設、商業施設、宅地などを配置する。盛土は、山林などを切り崩して宅地にした部分の残土を充てる計画だ。双方で住宅は2,120戸、人口は5,900人を想定している。平成30年度までに工事を終える予定だ。事業費は双方で約1,200億円。ほとんどを国や県の公費で賄う。

 これがいかにとてつもない計画であるかを紹介しよう。まず規模。記者が知る限りでは全国の土地区画整理事業で千葉県市原市の組合施行による「国分寺台」約380haが過去最大だ。「国分寺台」は昭和50~60年代にかけて保留地が分譲され、バブルを背景に年間数百戸の建売住宅が飛ぶように売れた。しかし、バブル崩壊の影響は大きく、組合を解散したのは事業認可から30年が経過した平成13年だった。

 陸前高田の事業規模は「国分寺台」には及ばないが、双方合わせれば間違いなくトップ10に入るはずだ。その事業費もケタ違いだ。時代が異なるとはいえ「国分寺台」は396億円だし、昭和62年施行の香川県高松市の「太田第2」は約360haで、事業費は640億円だ。陸前高田の「高田」「今泉」はその2倍近くに上る。高台の山を切り崩し、低地をかさ上げするのが費用増の大きな要因のひとつと思われる。

 保留地による収入も極めて少ないのも大きな特徴だ。「高田」で3.9億円(0.6%)、「今泉」で3.1億円(5.6%)と合計で7億円だ。一般的に民間(組合)の土地区画整理事業は地価上昇を前提にした事業で、従前の地権者から一定の土地を提供してもらい道路や公園、保留地に当て、保留地を売却することで事業費をねん出する。地権者が土地を提供することを「減歩」といい、土地の価値が高ければ高いほど減歩は少なくて済む。

 ところが、被災地はもともと宅地需要が小さい地方都市で地価も安く、震災によって土地の価値が大幅に下落した。100%減歩しても事業費をねん出できるかどうかだろう。広島県福山市郊外の「佐賀田土地区画整理事業(あしな台)」(19.5ha、342区画)団地では減歩率は97%に達した。つまり、元にはほとんど残らないという悲惨な例もある。民間ではとても成り立たない事業だ。被災地復興の土地区画整理の事業費をほとんど国費で賄うのはそのためだ。

 ちなみに「高田」の減歩率は36.3%で、事業前単価は59,070円/坪、事業後の想定単価は93,060円/坪、「今泉」の減歩率は57.9%、事業前単価は2,211円/坪、事業後の想定単価は53,130円/坪となっている。「今泉」の減歩率が高いのは想定単価が低いためだが、減歩率が高いと地権者の理解が得られない問題もある。

 事業費や事業後の想定単価などから計算すると、1,200億円の費用をかけても宅地・農地の価格は従前の約21億円が約32億円にしかならない。

 人口約2万人の陸前高田市の平成24年度の予算規模は、800億円近くの国費が投入されたため前年度比倍増の約1,111億円に膨れ上がった。地方税は約12億円と100分の1くらいしかない。

 人口約23万人の東京都港区の平成25年度一般会計予算は1,158億円。特別区民税は549億円。予算の47%を区民税で賄う。

 東北の被災地と日本一財政が豊かな港区を比較するのは適当ではないかもしれないが、これでいいのかの疑問はぬぐえない。「復興」の名のもとに是非もなく検証もされずに暴走しているような気がしてならない。土地区画整理事業は民間の事業と異なり走り出したら止まらない。

被災復興区画整理事業、全体で多摩NTしのぐ数千ha 問題も山積(2013/3/25)

 

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「CITY ECOX」モデル

 積水ハウスは1月13日、先に行われた「エネマネハウス2014」で提案した東京大学との共同事業「ゼロエネルギー化を目指した都市型低層集合住宅のプロトタイプの設計とその実証事業『CITY ECOX』」が最優秀賞を受賞したと発表した。2030年の居住者のライフスタイルに柔軟に対応できる集合住宅というコンセプトが明確な点などが評価された。

 「エネマネハウス2014」は、経済産業省資源エネルギー庁事業の一環として実施された事業で、主催はエネマネハウス2014実行委員会(委員長:村上周三建築環境・省エネルギー機構理事長)。

 大学が主体となり企業とチームを構成し、「エネルギー」「ライフ」「アジア」をコンセプトに、2030年の家に求められる先進的なZEH技術や、新たな住まい方を取り込んだモデルハウスを建築・展示し、エネルギー・居住環境の測定成果を競い合うコンペティション。事前審査を通過した5大学(慶應義塾大学、芝浦工業大学、千葉大学、東京大学、早稲田大学)が成果を競い合った。

 政府は日本のエネルギー事情を反映し、全消費電力の31%を占める家庭部門で、住宅のゼロエネルギー化を推進しており、2020年までに一次エネルギー消費賞が正味(ネット)で概ねゼロとなる「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)を標準的な新築住宅とすることなどを掲げている。

「エネマネハウス2014」最優秀賞は東大 ファン投票1位は芝浦工大(2014/2/1)

「エネマネハウス2014」 記者の評価ナンバーワンは東大 早大は? (2014/1/30)

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