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「首都大学東京リーディングプロジェクト最終成果報告会」(都庁で)

 首都大学東京と東京都は3月17日、大都市東京の課題解決に向けた取り組み「首都大学東京リーディングプロジェクト最終成果報告会」を行い、同大学都市環境学部特任教授・山本康友氏が「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト研究」について、同大学都市環境学部特任教授・青木茂氏が「リファイニング研究開発プロジェクト研究」について、同大学理事・上野淳氏が「郊外型都市賦活更新プロジェクト研究」についてそれぞれ報告した。

 山本氏は、今年1月に竣工した都有施設の事例を紹介。IT技術の採用はもちろん、再生可能エネルギーの導入、地中熱利用ヒートポンプ、木材の利用、壁面緑化など現状で最高水準の省エネと省エネ仕様で整備したと話した。今後、計測データを蓄積して検証するとしている。

 青木氏は、これまで手掛けてきたリファイニング建築事例を紹介。リファイニングを行う際は、既存建物が建てられてから現在までの約30年を一区切りに、今後2度の再リファイニングを想定しトータルで120年使用できるよう考えるべきで、構造的には耐震性はもちろんだが、コンクリートや鉄筋の劣化を十分調査すべきと強調した。意匠も外観は30年ごとに見直し、内観は5~10年ごとに手を入れるべきとした。さらに用途についても時代の変化に沿うよう変更を加えることが建築物の長寿命化につながると語った。

 今後の課題として、技術の伝承、雇用の促進、耐震診断のデータベース化、現行法との矛盾の解消、教育の重視などをあげた。

 上野氏は、多摩ニュータウンの賦活について、「世界的に稀有な事例」である公園・緑地をペディストリアンで結ぶ緑のネットワークや歩車分離の街づくりをどう継承していくかが鍵だと語った。また、高齢化やバリアの解消などの課題はあるが、多様な主体が主役になる街づくりを行なえば未来都市・多摩ニュータウンには大きな可能性があると力説した。

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 最近は、マンションだけでなく他の分野の取材も増やしているが、それぞれ一つひとつがみんなつながっていることが見えてくる。こんがらかったタコ糸をほぐしたように、知恵の輪を解いたときのように、あるいは「カチリ」と音がして玉手箱の鍵か開いたときの、極上の酒が五臓六腑にしみわたる快感だ。これが取材の楽しさだ。

 例えば、今回の取材で言えば青木氏の「30×4=120年ターム」説。これは単に建築だけでなく、サステイナブル社会の構築と結びつく。上野氏が力説した街全体をペディストリアンで結ぶ緑のネットワークの価値は、もう一度再認識する必要がありそうだ。

 山本氏が紹介した「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト」はまだオープンになっていない施設で、都は一般公開も含めて検討するとしている。

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 上野氏が「書いてもいい」と仰ったから書く。昨日記事にもした「サードプレイス」の「福祉亭」は上野氏もよく利用されているようで、「私は福祉亭に焼酎のボトルをキープしている。どなたでも寺田さん(理事)に言って飲んでもらっても結構」「福祉亭にはお世話になってきたから、(恩返しの意味か)施設のスタッフになるか、調理人として雇ってもらうかしたい」と話した。

 上野氏の調理人としての腕前がどんなものかは不明だが、先生の話がただで聞けるとなれば「福祉亭」の価値は倍化する。学生さんなどの若者も大挙して押しかけるのではないか。

 

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港区「芝の家」

 日本建築学会の建築計画委員会に属する「ライフスタイル小委員会」が3月13日に行なった公開研究会「もうひとつの居場所(サードプレイス)をどこに持つ? 」を取材した。

 同委員会は、少子高齢社会における家族と住まいの現状と課題を共有し、これからのライフスタイルに対応した住宅・地域の在り方を検討することを目的に設けられているもので、この日は港区の「芝の家」を見学し、多摩ニュータウンの「福祉亭」、墨田区の「コレクティブハウスかんかん森」の事例が紹介され、「自宅」や「職場」などの居場所以外の「もう一つの居場所」の今後の可能性などが話しあわれた。

 研究会では、同委員会主査の湘北短期大学准教授・大橋寿美子氏が、「家族機能が弱体化した少子高齢社会では、人と人のつながりが希薄になっている。もう一つの居場所としてのサードプレイスは3.11以降、より一層重要性が増している。孤独や孤立からの開放、生きがいにつながる可能性を探るのが、この研究会の目的」と、概要について説明した。

 「芝の家」は2008年、港区と慶應大学とが連携して設けられた芝3丁目のコミュニティ拠点。民間のオフィスを賃借しているもので、大人から子どもまで年間1万近くの利用者がある。事業費は年間950万円。

 慶應大学特任講師・坂倉杏介氏は、「緩やかなつながりを求める人が多い。単体ではなく、いろいろな組織と連携して自主的で多様な取り組みがインフォーマルな『共』をつくり出す」と語った。

 「福祉亭」は、多摩ニュータウンのUR賃貸空き店舗を利用してNPO法人福祉亭が2003年から運営している施設で、飲食提供のほか、高齢者支援事業、街づくり事業などを行なっている。これまで100近いテレビ、新聞、雑誌などに取り上げられており、認知度は全国区になった。

 福祉亭の理事・寺田美恵子氏は、「セーフティネットの網を広げているつもりだが、漏れることもある。初期投資、立ち上げ支援、運営補助の仕組みが大切。近隣には株式会社方式も含めて、同じような施設が4カ所でき、激戦地になってきた。売上げは年間約800万円。トータルで約900万円。補助金は60万円しかない」と笑った。

 「かんかん森」は2003年、わが国初のコレクティブハウスとして誕生。人員構成は0歳~88歳まで48名。子どもが13名、大人が35名。夫婦7組、単身女性16名、単身男性5名という構成だ。

 居住者でコレクティブハウスの社長・坂元良江氏は、「誕生してから10年以上が経過したが、毎年子どもが生まれ居住者の自主管理、自主運営は発展している。コモンスペースは時には居酒屋状態になることもあるが、週に2~3回のコモンミール(食事当番)は作る人のレベルも上がってきており、レベルの高い食事が提供できている」と話した。

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「芝の家」

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 「サードプレイス」は、アメリカの都市社会学者Ray Oldenburg氏の著作「The Great Good Place」(1997年)の邦訳で、「ファーストプレイス」である自宅、「セカンドプレイス」である職場などとは別の居酒屋、カフェ、本屋、図書館など情報・意見交換の場、地域活動の拠点として機能する概念のことだ。
 
 このようなサードプレイスは、普通の人にとってはごく当たり前の施設だ。ことさら「サードプレイス」として注目されるのは、家庭も職場も自分の拠りどころではなくなっていることの証左なのだろう。無縁社会、格差社会、パワハラ、ワーキングプア、パラサイト・シングル、ネットカフェ難民…およそ20年前にはそんな言葉すらなかった深刻な問題が生起し、日常茶飯となっている。

 ならば「サードプレイス」はこれらの問題を解決してくれる万能薬になるか問えば、答えは「ノー」だろう。万病に効く処方箋はないし、「サードプレイス」に過大な期待をかけるのは酷だ。性急に成果を求めない緩やかで多様なつながりを辛抱強く続けることしかないのではないか。

 次は、数年前からナイスが取り組んでいる「住まいるCafé」を紹介する。住宅の売買・仲介店舗を地域の居住者に開放したCSR活動だ。

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大橋氏

 「サードプレイス」を取材しながら、これは社会的弱者にとってこそ必要な施設ではないかとずっと考えていた。

 そうした社会的弱者に対して、社会学者の上野千鶴子氏が近著「女たちのサバイバル作戦」(文春新書)で心強いメッセージを送っている。少し長いが、以下に紹介する。

 「日本の女のこれからを思うと、サステイナブルよりサバイバル、の方が切実だとわたしは思えます。たとえ日本が『沈没』して難民になっても、亡命してでも、どこででも生き延びていけるスキルを身につけてほしい、と思うようになりました」「自分のことは自分で。他人とは関係ない。集団で活動するのはうざいし、ださい――こういうメンタリティがネオリベ的感性です。ネオリベは強者と弱者を生みますが、問題は、弱者も強者と同じメンタリティを共有していることです。強者はつるむ必要がありません。ですが弱者は弱者だからこそ、つるむ理由があります」「制度も政治も変えられないかもしれないけれど、自分の周囲を気持ちよく変えることは自分と仲間の力でできるかもしれない」

 「たとえ目の前の問題がただちに解決できなくとも、たった今の苦しみを共有してくれるひとたちがいることで、困難にへこたれないでいられる、問題に立ち向かう元気がもらえる――そうやって女たちは生き延びてきた…傷の舐めあい――と揶揄する人がいました。それでけっこう。傷ついた者たちは、傷を舐めあう必要がありました。女性はその必要があったからこそ、つながりをつくってきました」

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左から坂倉氏、寺田氏、坂元氏

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「コレド室町3」エントランス(乃村工藝社・小坂竜氏によるアート。ツガやスギ、ヒノキなどと石、タイルなどを組み合わせた壁、床は芸術品)

 三井不動産は3月20日、日本橋再生計画の第二弾「コレド室町2」「コレド室町3」を開業する。開業に先立つ17日、開業記者会見・内覧会を行い、数百人の報道陣が詰めかけた。

 「日本橋再生計画」は、伝統ある老舗など街の文化を残し、水と緑の賑わいを甦らせ、新たな街の魅力を創っていく、「残しながら、蘇らせながら、創っていく」をコンセプトに再開発を進めているもの。

 「コレド室町2」「コレド室町3」は、再開発の第一弾ともいうべき「コレド日本橋」(2004年竣工)、「日本橋三井タワー」(2005年竣工)、「コレド室町」(2010年竣工)に次ぐもの。今後も「室町三丁目」「室町一丁目」「日本橋一丁目」「日本橋二丁目」「八重洲二丁目北街区」「八重洲二丁目中地区」など再開発計画が目白押しで、面的な再開発が進められる。

 新しく開業する「コレド室町2」「コレド室町3」には、外国人コンシェルジュによるインフォメーション・ガイドツアー(日本橋案内所)を開始するほか、和のおもてなしレンタルスペース「橋楽亭/囲庵(COREDO 室町)」を設置。外国人が無料でインターネットを利用できるWi-Fiを整備する。

 記者会見に臨んだ同社飯沼喜章副社長は、「今回のコレド室町2とコレド室町3の開業と日本橋三井タワーのリニューアルオープンは、江戸の往時の賑わいを取り戻す再生プロジェクトの一環であり、今後も日本橋の新たな魅力を発信し続けていく」と話した。

 年間の来街者は1,700万人、売上高は110億円を見込む。

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「コレド室町2」(スーパーポテト代表・杉本貴志氏のアート。石器質タイルの組み合わせが妙)

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 マンションブランドなら100も200も価値判断ができるが、飲食・ファッションなどの商業施設はさっぱり分からない。しかし、三菱地所が進める「丸の内再構築」と同社の「日本橋再生」は明らかに街づくりのコンセプトが異なるぐらいは素人目にも分かる。

 三菱地所は「世界でもっともインタラクションが活発な街」を掲げ、アジアの国際拠点都市としてグローバル化に取り組んでいる。仲通りにはティファニー、エルメス、バカラ、プラダなど世界的ブランドと流行を発信する国内のセレクトショップが軒を連ねる。20年前は土曜、日曜日となるとほとんど人通りが途絶えた「過疎」はいまでは日本一の賑わいのある街変わった。

 一方の「日本橋」は前面に「お江戸日本橋」を打ちだしている。桜、祭り、着物、茶道などのイベント積極的に行い、店舗も榮太樓、にんべん、木屋、小津和紙、鶴屋吉信、千疋屋などわれら団塊世代にもなじみのある店が多い。

 両社が狭いエリアで競り合ってどうなるのかという心配もあるが、おそらくこのコンセプトの違いで住み分けができ、相乗効果となってより賑わいを増すのだろう。両社のこれからの投資額はそれぞれ数千億円、双方では1兆円を間違いなく突破する。

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「コレド室町2」(杉本氏のタイル文様をふんだんに用いた店舗デザイン)  

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「これど室町3」(小坂氏のツガを用いた壁)

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「橋楽亭/囲庵(COREDO 室町3)」と日本橋 芳町の売れっ子芸妓さん「おもちゃ」さん

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小坂氏のアートな壁(石とツガ、ヒノキ、スギの組み合わせ)

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左は「牡蠣場 北海道厚岸」(生カキは1ピース290円から。記者が食べたのは590円。1年を通じて生カキが食べられるのは厚岸のみとか)。右は本物の出汁を販売する「茅乃舎」

三井不動産 ビルも賃貸も億ション並み「和」盛り込んだ「日本橋再生」(2014/1/29)

 

 

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「蔵のある街づくりプロジェクト」 曳家工事中の蔵

 ポラスグループの戸建分譲住宅事業を展開する中央住宅は3月14日、江戸時代に建築されたといわれる商家の蔵を保存・改修し、蔵を核とした住まい手、地域住民、企業が一体となってライフスタイルを提案するコーポラティブ方式の「蔵のある街づくりプロジェクト」を行なうと発表した。曳家作業を報道陣に公開した。

 現地の用途地域は近隣商業地域だが、一戸建てや中層の建築物が中心の住宅街。蔵は油屋を営んでいた商家の4棟あったものの一つ。御影石の土台にそのまま石・木材・土・漆喰塗りの家を載せたもので、重さは、現在の一般的な木造住宅の3倍以上の約90~100トン。「ボンコ」(意味は不明)と呼ばれていたもので、宝蔵として使用されていた。

 記者発表会に臨んだ同社・品川典久社長は、「用地取得したのは昨年の9月。当初は更地にしてすべて分譲戸建てにしようと考えたが、歴史的建造物の蔵を壊すのはあまりにも無神経。地域の方々と協議を重ね、蔵や古材、灯籠なども残してプロジェクトに賛同していただける人に分譲することに決めた。コーポラティブでの分譲は初めてだが、当社の理念である〝より豊かで、楽しく、幸せ〟な住宅づくりに合致するもの」と語った。

 「蔵」の推定築年数は約150年。屋根は瓦葺き、外壁は漆喰塗りの木造2階建て延べ床面積48.96㎡(14.8坪)。

 「蔵のある街づくりプロジェクト」は、東武スカイツリーライン越谷駅から徒歩5分、越谷市越ヶ谷三丁目の近隣商業地域(建ぺい率80%、容積率200%)に位置する敷地面積644.51㎡。販売予定価格は1億9,800万円(蔵の改修費、曳家工事費含む)。5月末までに購入希望者がない場合は建売住宅にする予定。

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扉の部分(左)と「うだつ」のあった部分(縦長のやや白く見える部分)

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 記者はこの日の前日(13日)、日本建築学会の公開研究会「もうひとつの居場所(サードプレイス)をどこに持つ? 」を取材した。「サードプレイス」とは、「ファーストプレイス」の自宅、「セカンドプレイス」の職場などの居場所のほかに、緩やかなコミュニティを形成する居場所のことで、同学会がその現状や可能性を探る研究を行なっている。

 研究会では、「コレクティブハウスかんかんの森」の居住者で、企画・運営しているコレクティブハウスの代表取締役・坂元良江氏から話も聞いた。

 コレクティブハウスとコーポラティブハウスは異なるが、居住者が良好なコミュニティを形成する意味では同じだ。連日にわたってこの取り組みを取材できたのはラッキーだった。

 蔵そのものは、田舎の実家にも残っているし、古い街にはまだまだたくさんあるはずだ。しかし、江戸時代に建てられたものとなるとそうないはずだ。曳家工事を担当している創業100年近くの野口組の4代目社長から説明を聞き、当時の建築技術の高さや、火災に備える工夫、豪商の暮らしぶりを学ぶことができた。

 例えば「うだつ(梲)」。われわれは「うだつがあがらない」という諺しか知らないが、「うだつ」とは防火壁のことで、この蔵には高さ5m、幅2mの巨大な「うだつ」があったという。蔵の重さにも驚愕した。野口社長によると、構造はRC造に匹敵するという。土と石(御影石、大谷石など)と木材(スギ、ケヤキがほとんどだそうだ)でRC造と同じ強度の建築物を江戸の職人・大工が造ったというのが嬉しいではないか。土台と柱の間には柱がずれないように、イチョウ形のなまりが使用されていたのにも驚いた。補強材には金具が使われていた。壁の厚さは腰壁部分で45cmもあるという。

 いったい、どうしてこのような頑丈な蔵を建てる必要があったのか。この蔵は、野口社長によると「ボンコ」(意味不明)と呼ばれ、母屋と繋がっていたことや、「宝蔵」として使用されていたことなどから推測すると、きっと売り上げ台帳、金銭などの貸借契約書、衣服などが収納されていたのではないか。

 このほか「米蔵」が2棟、「味噌蔵」が1棟あったというから、かなりの豪商だったのだろう。火災のときは、壁に味噌を塗ったとも言われる。火災に遭っても守るべきものをしっかり守った江戸時代の建築技術と知恵がここにある。

 このプロジェクトにどのような人が参加するのか、蔵はどのように利用するのかを考えるとワクワクする。ポラスはクリーンヒットを放った。このプロジェクトがどのようになっていくのかを見届けたい。

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敷地内にあった石など(左)と蔵に用いられていた金具

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「この鉛が使われていたんです」と説明する野口社長(左)と記者団の質問に答える品川社長(右端)

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蔵の中

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 昨日(3月12日)、日本リージャスから京都の貸事務所オープンのニュースリリースが送られてきた。「モバイル・ワーク」は間違いなく増加するとは考えてはいるが、よく分からない部分もあるので、リリースをほとんど「コピー&ペースト」で紹介する。

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 「多様化する働き方を支援する先進的なワークプレイス・ソリューションプロバイダーの世界最大手企業、リージャス(本社:ルクセンブルク)は、アジア太平洋地域で300番目の節目となるビジネスセンターを、日本の大都市のひとつであり、歴史と観光で全世界的に有名な『京都』の中心部『河原町御池』に開設します」

 「日本におけるリージャスは1998年に、東京に2つのビジネスセンターを開設後、現在では北は札幌から南は福岡まで50拠点以上を運営」「日本の50拠点、世界の100ヵ国1800拠点を超えるネットワークを活用することにより…アジア太平洋地域さらには世界中にビジネス拠点を拡大することが容易に可能」

 「リージャスのグローバル調査では、日本の経営者や経営幹部の68%は、フレキシブル・ワーキングは生産性を大きく向上させると考えています。さらに、調査会社IDCによると、モバイル・ワーキングを実践するビジネスマンは、2015年までに日本の労働人口の65%の総計3,860万人に及ぶと推定され、日本を除くアジア太平洋地域では8億3,800万人に上ると推定されています」

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 記者はずいぶん前、六本木ヒルズにある同社の貸事務所「リージャス六本木」で働く人を取材したことがある。昨年は東急不動産の会員制サテライトオフィス「Business-Airport(ビジネスエアポート)」も見学した。素晴らしい施設だと思った。

 「モバイル・ワーク」は間違いなく増えると思う。ジェンダー研究の第一人者、上野千鶴子氏によれば「フレックスレイバー(柔軟な労働)」は世界的な潮流だというし、上野の近著「女たちのサバイバル作戦」(文春新書)では次のように書かれている。興味深いので紹介する。

 「問題は誰にとって『フレックスか』? にあります。日本では使用者側が、自分たちのつごうにとって『フレックス』、すなわち使い捨て自由の労働力として、フレックス化を推進してきました。

 他方、労働者にとって『フレックス』であれば、フレックス労働は歓迎されてもよい働き方です。そもそも九時から五時までの『定型的労働』とは、誰が決めたのでしょうか。少子化対策先進国では、定型的労働と子育てとは両立しない、という経験則があります。事実、フレックス労働を採用した社会は、どこも出生率があがっています」

 続けて上野氏は、フレックス労働が不利な働き方にならないよう、「同一労働・同一賃金」や差別的な日本型雇用慣行やルールを改めるべきと主張。目指すべきはユニバーサルデザインと同様、「男女を問わずどんな状態や属性の人にとっても働きやすい『ユニバーサル就労』」だという。

 「モバイル・ワーク」「フレックスレイバー」は、子育て世代にもっとも適した働き方ではないか。これらが定着すれば、もっとマンションは売れる。

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「エネマネハウス2014」成果報告会(建築会館ホール)

 経済産業省資源エネルギー庁の事業の一環として行われた、大学と企業の連携により“2030年の家”をテーマに先進的な技術や新たな住まい方を提案するモデルハウス「エネマネハウス2014」の成果報告会が先日行われた。記者は他の取材があり、ほとんど終了の場面しか取材できなかったが、以下、各大学担当者が語った今後の課題などについての声を紹介する。

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慶応大学教授・池田靖史氏 心情的には継続してやってほしい。今年は集合住宅、来年は建売り部門とか。チャンスもっとあっていい

芝浦工業大学教授・秋元孝之氏 みんな面白そうにやっていた。民間とのコンソーシアムは商品化、新しいビジネスモデルの開発につながる

千葉大学教授・川瀬貴晴氏 面白いアイデア提案示せた。継続してほしい。参加大学を増やすためにも資金援助が生まれる仕組みを構築すべき。準備する期間が短すぎる

東京大学准教授・前真之氏 (今回の提案は)パッシブ手法だけで、アクティブ手法を盛り込んでいないのが課題。日射がなくても可能性のあるアクティブを開発したい。ドイツとは違う日本ならではの提案できる

早稲田大学教授・田辺新一氏 20年前にハウスジャパンとして、ヘムス、ヘルシーハウスなどの提案をおこなったことがある。今はそのようなプロジェクトがなくなった。日本の住宅の冬は後進国並み。一気に抜くチャンス。電器部門と住建部門の融合がヒント。ネタはたくさんあるが明かせない(笑)

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左から池田氏、秋元氏、川瀬氏

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左から前氏、田辺氏

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 「エネマネハウス2014」は関係者ではすごく盛り上がったイベントだったのだろう。成果報告会の会場となった建築会館ホールはほぼ満席の200人以上が集まった。展示会場の「東雲」の臨時駐車場には数千人の参加者があった模様だ。

 しかし、参加者のほとんどは関係者だろう。せっかく15年も先の未来住宅を提案するのだから一般の方も参加しやすい環境を整えるべきだったと思う。壊すのももったいない。審査委員の住環境計画研究所会長・中上英俊氏が「国交省ももっと力を入れていい」と総括したように、国交省と経産省が共同で実施してもよかったのではないか。

 もう一つは「アジア」のコンセプトがよく分からないことだ。これも中上氏が「漠としすぎ」と語ったように、記者には何のことか分からなかった。アジア向けに住宅を輸出する考えからだろうが、「アジアは一つ」かもしれないが、アジアには寒冷地から赤道直下、砂漠地もある。気候風土、文化も異なる。一括りになどできないはずだ。

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 記者が「『Nobi-Nobi HOUSE』は、外観がパープルに近いピンク。地区計画や建築協定がなくても物議を醸す住宅だ。地域との親和性が全く考慮されていない“喧嘩を売る”住宅」と書いた早稲田大学の学生さんの反論も紹介する。

 企画した学生さんによると、「コンセプト(コアの設備ゾーンを居住ゾーンが囲み、さらにその外をNobi-Nobiゾーンが取り囲む三重構造)を大事にしたもので、衣服のように脱いだり重ね着したりできるようにした。外壁もファッションとして考え、黄色とかグリーンなどと検討した結果、暖色系のピンクになった」とのことだった。

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 記者がいいと思ったCLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)を採用した慶大の提案については、記事にもした大日本山林会のシンポ会場で林野庁森林整備部長・本郷浩二氏も速水林業代表・速水亨氏も「CLTは実用化まで3年かかる」と話したので、池田教授に質問をぶつけてみた。

 池田教授は、「コンピュータ解析によって検証することはできるが、お金がかかる。ヨーロッパの技術をそのまま導入することはできない。実験も繰り返さないといけないので、一般の方が採用できるようになるまでには2~3年かかるというのは事実」と語った。

「エネマネハウス2014」 最優秀賞は東大、ファン投票1位は芝浦工大(2014/2/1)

「エネマネハウス2014」 記者の評価ナンバーワンは東大 早大は? (2014/1/30)

 

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 三井不動産リアルティは3月11日、「三井のリハウス赤坂店」を4 月1 日(火)に開設すると発表した。

 東京メトロ銀座線・丸ノ内線赤坂見附駅から徒歩1 分、青山通りに面した赤坂見附KITAYAMA ビルの9 階。周辺既存店舗の「麻布店」「青山店」との連携強化、周辺リアルプランセンターとの補完体制強化による相乗効果を高めるのが狙い。

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「青豆ハウス」(手前は区民農園)

 ブルースタジオが設計・監理を担当している賃貸住宅「青豆ハウス」を見学した。木造3階建てのトリブレット住宅で、入居者が共に育む住環境というコンセプトがヒットし、完成前に全8戸の入居者が決まった。

 物件は、東京メトロ有楽町線平和台駅から徒歩10分、練馬区田柄1丁目に位置する木造3階建て全8戸。専用面積は57.60~63.36㎡。月額賃料は159,000円〜174,000円。設計・監理はブルースタジオ。ランドスケープデザインはチームネット・エーピーデザイン。施工はコラム。事業主はメゾン青樹。

 特徴のひとつ、3層トリブレットは機能的ではないので、賃貸であろうと分譲であろうと記者は好きではないが、若い層には人気なのだろう。小さな一粒の豆が大地から芽を出し、空に向かってらせん状に成長していくイメージを具現化したようだ。完成前に全戸契約済みという。

 もう一つの特徴は、国産材や自然石を多用した優しいデザインだ。庭にはピザ窯が設置される予定で、大谷石が敷き詰められていた。建物の外壁は下地に不燃処理を施したうえ、表面にレッドシダー(スギの一種)を貼っているのが印象的だ。外階段や共用部はヒノキの国産材間伐材を多用。室内の床もヒノキ材。キッチン天板などはラワン材。

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階段室

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 階段やエントランスなどの共用部にヒノキの節だらけの岡山産の間伐材が使用されていたのには驚いた。建物ばかりか参拝用の舗道にも節ひとつないヒノキ材を使用している伊勢神宮を見慣れている記者にとってはむしろ感動的だった。

 室内の床はほとんど節目がないヒノキだった。幅が均一ではなかったような気がしたが、これもまたいい。ラワンを面材にしたキッチンもなかなかいい。昔のイメージと異なり、ラワンは高級材だそうだ。

 このような造り手の思想が伝わってくる住宅を見るのはとても楽しい。このような賃貸をデザイナーズ賃貸と呼ぶのだろう。

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2階部分

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「はらくっつい東北」お披露目会(丸ビルで)

 三菱地所グループは3月6日、食の復興支援活動「Rebirth東北フードプロジェクト」第6弾のオリジナル缶詰「はらくっつい東北」2品が完成し、同日から販売すると、丸ビルで行なわれたお披露目会で発表した。

 販売開始された缶詰は「とろとろさんまとフカヒレと大島ゆずの味噌煮(気仙沼)」と「山椒香る金華さばとムール貝とたっぷり野菜のお椀(石巻)」の2品。宮城県の方言で「お腹いっぱい」を意味する「はらくっつい東北」シリーズとして販売する。

 商品化にあたっては、丸の内エリアに店舗を構えるレストランのシェフなどが食に関する提案・発信を行なうプロジェクト「丸の内シェフズクラブ」のメンバー、丸ビル「ミクニマルノウチ」のオーナー・三國清三氏や新丸ビル「恵比寿笹岡」の笹岡隆次氏も企画段階から参画。地元シェフや加工会社などと開発した。

 値段は各450円(税抜き)。丸ビルに出展する店でも販売するほか、三菱地所が運営するオフィスビル入居企業に防災備蓄品として紹介したり、三菱地所レジデンスが分譲するマンションの居住者用サイトで販売したりする。

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「Rebirth東北フードプロジェクト」

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 この日、丸ビル1階で行なわれた「丸の内東北応援フェアオープニング」には主催者として三菱地所・杉山博孝社長と河北新報社・一力雅彦社長が挨拶。

 杉山氏は「当社は仙台でも事業を行なっており、何とかお手伝いできないかと丸の内で食育に取り組んでいることから食に注目し、3年前からスタートさせた。年を経るごとに3.11が忘れられることのないように思いを新たにしていただければ幸い」と語った。一力氏は、「被災地ではまだ26万人を越える人が仮設住宅住まいを余儀なくされている。東北は震災の風化と原発による風評被害という二つの風に悩まされている。このフェアが少しでもこの風を払拭できればと願っている」と話した。

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杉山氏(左)と一力氏

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 酒もそうだが、毎日のようにトマトを食べている記者はフェアでトマトを買って食べた。甘くてとてもおいしかった。あまりにもおいしかったので、次の取材先の主催者や記者の方におすそ分けした。

 フェアは3月16日まで丸ビル1階「マルキューブ」で行なわれる。オリジナル缶詰が販売されるほか、丸の内シェフズクラブの6人のシェフが考案したおひたしのセットメニュー販売や地酒が販売される。

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フェア会場

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「3階建てプラン」(左)と「賃貸併用タイプ」

 三菱地所ホームは3月5日、昨年1月に発表した木造制震賃貸住宅ブランド「M-asset(エム・アセット)」の第二弾として「3階建てタイプ」と「賃貸併用タイプ」の販売を開始すると発表した。

 「3階建てタイプ」は、敷地を最大限に活用して賃貸戸数を増やすことで収益性を高めているのが特徴で、「賃貸併用タイプ」は、賃料収入による家計負担の軽減と相続税や固定資産税の節税効果が期待できるプラン。

 建物には、地震による揺れを最大で50%低減する制震システム「エムレックス」を標準装備。高いメンテナンス性を備え、オプションで上下階の音の問題を軽減する「高遮音床仕様」にもできる。オーナー住戸は冷暖房費ゼロを実現する「エアロテック」を装備。また、三菱地所ハウスネットによる最長30年間の長期一括借り上げも可能。

 構造は木造2×4工法。本体参考価格は「3階建てタイプ」が6,500万円(87.79坪、税別、賃貸9戸、60分準耐火構造)。「賃貸併用タイプ」が6,850万円(87.42坪、税別、自宅+賃貸6戸、45分準耐火構造)。発売日は2014年3月6日(木)。初年度販売目標は80棟。同社の今年度の賃貸の受注は50棟の見込み。

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「渋谷ホームギャラリー」

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 記者発表には三菱地所・清沢光司常務、三菱地所ホーム・西貝昇社長、三菱地所ハウスネット・小幡義樹社長などが勢ぞろい。1時間くらいにわたって三菱地所グループの住宅事業バリューチェーン、賃貸住宅の性能、賃貸市場などについて説明を聞いた。

 記者の関心事はほかにもあった。会場になった「渋谷ホームギャラリー」を見学することだった。各氏の話を聞きながら、会場の面材に使用されているどこかで見たような高級材が気になってしようがなかった。あとで確認したら「シャムガキ」だった。一昨年、新日鉄興和不動産が「渋谷」のマンションのモデルルームに採用していたのを初めて見たのだが、その後、モリモトも採用した。

 しかし、「渋谷ホームギャラリー」のシャムガキは量で他をはるかに凌駕していた。これには驚いた。さらに、白を基調にした美しい洗面室、広くて機能的なキッチンも圧巻だ。1階の天井高は3m。階段のステップは19段もあった。サッシは木製。

 ラッキーだったのは、キッチンについて説明してもらった三菱地所ホーム開発設計部課長代理・原祥子さんが何とこの「渋谷ホームギャラリー」を設計した本人だった。了解も得たので紹介する。記者は「美しいもののみが機能的」と語った丹下健三を思い出した。

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キッチンに立つ原さん(背景はシャムガキ)

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 同社に注文も一つ。記者発表会で同社・中津川常務は「19年前に発表した全館空調の『エアロテック』は当社の大ヒット作品」と紹介した。記者も発売当初、同業他社の建売住宅に採用されていたのを見学し、その良さを体感した。また、同社の注文住宅はミリ単位でお客さんの満足に応えるという。

 しかし、それほど素晴らしいのにデベロッパーの戸建てでは三井不動産、野村不動産、住友不動産などに大きく水を開けられている。これは情けない。住宅事業でのバリューチェーンを標榜するのであれば、追撃態勢を早急に取るべきだ。

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「エアロテックは顧客満足度が極めて高い」と話す中津川氏

 

カテゴリ: 2014年度
 

 

 

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