〝便立地、好立地〟三井レジ・三菱地所レジ「天王洲」分譲開始
「パークタワー品川天王洲」
三井不動産レジデンシャルと三菱地所レジデンスは7月18日、「パークタワー品川天王洲」(275戸)の第1期(79戸)の販売を7月19日(土)から開始すると発表した。これまで7,700組超の問い合わせがあり、モデルルーム来場者は670組超。
建物は、総合設計制度の適用を受け、免震構造を採用し、ZEH-M Orientedを取得。外観デザインは、周辺の水辺との調和をテーマとした「航跡波(こうせきは) 」をイメージしたグラデーションを描くデザインとし、天王洲の街の新たなランドマークを目指す。
エントランスホールは天井高約9mの吹き抜け空間とし、屋内でも自然を感じられるインナーグリーンを植栽。共用施設のフィットネスルームやランドリーラウンジ、スタディコーナー、パーティールーム、キッズルームは運河沿いに配置。
設計では、住戸のプロポーションを横長にすることで全ての居室にバルコニーに面した窓を設置している。専有部の天井高は最大約2.6m(プレミアムフロアは約2.8m)を確保。
物件は、東京臨海高速鉄道りんかい線・東京モノレール羽田空港線天王洲アイル駅から徒歩4分、品川区東品川2丁目の商業地域に位置する34階建て全275戸。第1期(79戸)の専有面積は65.49~107.01㎡、価格は1億4,110万~3億9,980万円。竣工予定は2027年8月下旬。施工は長谷工コーポレーション。建物デザインは日建設計。
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天王洲アイルといえば、「シーフォートスクエア」を思い出す。三菱商事、第一ホテルエンタープライズ、第一ホテル、宇部興産によるホテル、マンション、オフィス、商業施設からなる複合開発だ。マンション(139戸)の分譲開始はバブルの頃で、価格(坪単価)は思い出せないのだが、一般分譲されたのは一部の住戸で、2~3億円、坪1,000万円を超えていたのではないか。飛ぶように売れた。ホテルも最高に素晴らしかった(現在は「ANAホリデイ・イン東京ベイ」)。
その後、天王洲アイルのマンションは数物件取材したが、価格の上昇には唖然とするほかない。今回のマンションは〝便立地、好立地〟だと思う。坪単価は不明だが、1,000万円には届かないのではないか。
全254戸がキャナルビュー住友不動産「シティテラス品川イースト」(2015/2/9)
マンション再生メニュー 2つ⇒7つへ 旭化成ホームズ 区分所有法改正セミナー
左から大木氏、戎氏、鎌野氏、重水氏(神保町三井ビルディング4階ファミリーホール)
旭化成ホームズ・マンション建替え研究所は7月18日、「11回 高経年マンション再生問題 メディア懇談会」を開催。同研究所特任研究員・大木祐悟氏がモデレーターとなり、早稲田大学名誉教授・鎌野邦樹氏、弁護士・戎正晴氏、同研究所長・重水丈人氏による「区分所有法改正で、マンション再生はどうなるのか? 」をテーマにしたパネルディスカッションを行った。
区分所有法の改正は、建物の老朽化と居住者の高齢化という「2つの老い」の社会課題を解決するためのもので、2025年5月23日の国会で成立した。改正法では、区分所有法で定められている議決要因「全員の同意」「5分の4以上の賛成」などが緩和され、集会(総会)に出席しない・意思表示しない区分所有者や「所在等不明区分所有者」を分母から省いて決議してもいいことになり、再生メニューは、従来の建て替え決議とマンション敷地売却決議の2つに加え、建物の取り壊し敷地売却決議、取り壊し決議、再建決議、敷地売却決議、建物の更新決議の5つが加わるのがポイント。一部を除き2026年4月1日に施行される。3氏のコメントは以下の通り。
鎌野邦樹氏 今回の区分所有法改正に当たっては、法務委員会で16回、国土交通省の検討会でも同じくらいの回数にわたって論議され、大きな改正がなされた。従来は、法務省管轄の法制審議会、国会の法務委員会で論議がなされてきたが、今回は国交省所管の国土交通委員会でなされた。これは国民にとってマンションはもっとも重要な財産だという共通認識が背景にある。私は結果的によかったと思う。課題は、建て替えなど費用などお金の問題。法改正によって様々な再生メニューが示されたが、それに乗らない管理不全マンションがあちこちにできると、経済的にも地域にとっても非常な損失となる。それを未然に防ぐことが重要。
戎正晴氏 今回の法改正は、建て替えの意味が変わってきたということ。国の文章にもあるように、マンションは区分所有者の責任と費用で解体されなければならないのだが、マンションは解体責任を全然認識していない、解体までの費用が担保されていない現状がある。解体責任を果たすために、区分所有者にとってもっとも有利なのは建て替えで、今までの資産が新しい資産になり、終の棲家にもなる。これからは、解体積立金か解体保険になるか分からないが、解体費の確保を重視するマンション施策が中心に位置付けられるようになる。出口戦略を本気で考えなければならない時代になったということ。
重水丈人氏 この法改正の議論が始まったのは2022年の10月から。それ以降、当社のマンション建替え研究所ホームページへの問い合わせ件数は大幅に増加している(資料では、2022年度以前の3年間の問い合わせは240件前後だったのが、2023年度は324件、2024年度は335件に増加)。関心が高まっているということがはっきりしている。当研究所も、関心を持っていただいた方々へよりわかりやすくする情報を発信していくことに注力していく。マンションの合意形成で一番苦しいのは、反対されることではなくて、関心を持ってもらえないこと。たとえ違う意見でもちゃんと意見を戦え合わせれば前には進める。それが我々の役割。世に広めていきたい。
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今回のパネルディスカッションは、マンションの建て替えを中心とする再生(戎氏は「終活」と語った)がテーマなので、全体的な改正法については、国土交通省が7月8日に行った「令和7年度 改正マンション関連法に関する説明会」の記事を参照していただきたい。
改正マンション関連法に関する説明会に約480人 国土交通省&法務省(2025/7/8)
「住宅省エネルギー性能証明書」取得率30%の意味 3割打者と同じ価値があるのか
昨日(7月16日)、コスモスイニシアが今年度着工するリノベマンションの30%を「住宅省エネルギー性能証明書」付きにすると発表した記事を書いたのだが、記者はこの「30%」の意味が全然分からなかった。以下は、野球好きの記者が「30%」「3割」の意味を考えて書く記事だ。外れたら謝るほかないのだが、リノベーション業界全体が取り組むべきだと思うので書くことにした。
まず、プロ野球の「3割バッター」について。3割バッターとは、打者が打席に立ち、そのうち四死球、犠打・犠飛を除く打数に対して3割以上の安打を放った選手に贈られる〝称号〟だ。91年の歴史を誇るNPBの中で通算打率.300以上の成績を残した選手は在籍者約1万人の中でわずか26人しかいない。長嶋茂雄さんの通算打率は3割ちょうど。3割を切りたくなかったから、〝永遠〟名セリフを残して引退したのだと思う。ちなみに、2024年の規定打席(試合数×3.1)以上打席に立った選手の個人打撃成績で、打率3割以上の成績を残した選手はセ・リーグが2人、パ・リーグが1人しかいない。
例外はイチロー選手だ。NPB通算打率は.353、米国・MLBの通算打率は.311、日米通算打率は.322だ。これを抜く選手はまず現れない。
これだけ書けば、「3割」がすごい数字だとわかっていただけるか。
「3割」といえば、「3割自治」という言葉がある。地方公共団体の歳入に占める自主財源である地方税の割合が3割程度しかないことを表す言葉で、3割以上の自治体は3~4割程度と言われている。もっとも自主財源比率が高い都道府県は東京都の90.6%(令和5年10月東京都財務局)。
「3割」は他にもある。医療費の自己負担比率だ。小生などの後期高齢者は原則「1割負担」だが、70最以下の人は原則「3割負担」だ。
本題に戻す。「住宅省エネルギー性能証明書」に関する公的データはない。証明書を発行している各機関・企業も年間どれくらい証明書を作成しているか公表しているところはないはずだ。ZEH水準の工事を施した物件がどれだけあるか、杳として知れない。
そうなると、限られた公表データから推測するほかない。国土交通省・総務省のデータによると、令和5年の住宅着工戸数は82.6万戸、既存住宅取引件数は15.9万戸、流通市場シェアは16.2%だ。住宅ストック約5,400万戸の断熱性能を満たす住宅(H11年基準)はストック全体の約18%(令和4年推計)。わが国のマンションストック総数は約704.3万戸(2023年末時点)。東日本レインズのデータによる2024年の首都圏中古マンション成約件数は37,222件、新規登録件数は190,880件。「2022年の中古住宅買取再販市場規模(中古戸建及び中古マンションの買取再販戸数の合計)は成約戸数ベースで前年比5.1%増の41,000戸と推計した」(矢野経済研究所)…などだ。
これらの数値から、記者はZEH水準の既存マンション流通量は2~3千戸くらいではないかと考えるのだが…だとすれば、コスモスイニシアの「住宅省エネルギー性能証明書」取得率30%は極めて高い水準のような気がする。
だが、しかし、分譲マンションも分譲戸建てもZEH水準が当たり前になりつつある。既存住宅もZEH水準が当たり前になるようすべきだと思う…リノベマンションの3割がZEH水準になり、それが当たり前になったら、3割バッターとの比較はどうなるのか…この記事は全然整合性が取れていないではないか。
「住宅省エネルギー性能証明書」取得率30%へ コスモスイニシア リノベマンション
「コスモポリス品川」の3住戸で「住宅省エネルギー性能証明書(ZEH水準または省エネ基準)」取得
コスモスイニシアは7月16日、リノベーションマンション事業「INITIA & Renovation」について、今年度着工する既存マンションから「住宅省エネルギー性能証明書(ZEH水準※1・省エネ基準※2)」取得率30%を目標値とすることに決定したと発表した。証明書を取得するとローン控除の優遇措置や補助金申請が受けられる。
住宅の省エネルギー化の推進にあたり、YKK AP、u.company、エヌ・シー・エヌの3 社と協業体制を構築しており、これらの企業と連携しながら、設計や仕様検討の段階から、各物件に応じたZEH水準・省エネ基準到達に必要な条件の提示、申請業務のサポートなど、技術面・制度面において実務的な支援を受けながら省エネルギー化を進めているとしている。
※1 ZEH水準:建築物の断熱性能及び設備に関する基準を満たした住宅で、断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上の性能を有する住宅
※2 省エネ基準:建築物の断熱性能及び設備に関する基準を満たした住宅で、断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上の性能を有する住宅
14年も前から断熱窓の提案に驚愕インテリックス「青山リノベーションスタジオ」(2025/7/4)
リスト 最高価格72.5億円のアジア初のポルシェブランドマンション タイで分譲開始
リストグループのリストインターナショナルリアルティ(LIR)とリストインターナショナルリアルティタイランド(LIRタイオフィス)は7月15日、アジアで初となる高級スポーツカーのポルシェをモチーフとしたブランデッドレジデンス「Porsche Design Tower Bangkok(ポルシェ デザイン タワー バンコク)」22戸を9月末日から共同で販売開始すると発表した。最高価格は72.5億円(坪単価2,108万円)となる予定。
LIRタイオフィスは、2018 年に高級不動産仲介ブランド「サザビーズ インターナショナル リアルティ®」 のタイ国内独占営業権を取得。これまでのタイ国内での高級不動産の販売実績が評価され、今回の物件の販売権利を取得。LIR東京オフィスと共同で、日本国内で初めて同物件を先行案内するイベントを6月25日にポルシェ銀座スタジオで開催した。
価格は約20億6,480万円から約72億5,000万円(専有面積約525~約1,135㎡)を予定している。
1戸25億円の分譲戸建て「元麻布」リストが分譲、契約済み(2025/7/10)
中古マンション市場も二極化 都心と郊外は雲泥の差 東日本レインズデータから
既報の通り、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)による令和6年6月の首都圏中古マンションの成約件数は4,299件(前年同月比31.9%増)、坪単価は275万円(同6.9%増)、成約価格は5,209万円(同5.1%増)、専有面積は62.50㎡(同1.7%減)、築年数は26.96年(前年同期は24.36年)となったのだが、もう少し詳しくデータを見ることにした。都心と郊外は雲泥の差であることが分かる。マクロデータのみに頼っていては、市場を見誤ることになりかねないということだ。
都県別成約状況では、東京都の成約件数は4,299件(前年同月比31.9%増)、坪単価は386万円(同13.2%増)、価格は6,791万円(同5.1%増)、専有面積は58.04㎡(同2.5%減)、築年数は25.87年(同2.60年増)。
神奈川県の成約件数は1,003件(同40.5%増)、坪単価は186万円(同5.2%減)、価格は3,751万円(同6.6%減)、専有面積は66.66㎡(同1.5%減)、築年数は27.62年(同3.08年増)。
埼玉県の成約件数は509件(同47.1%増)、坪単価は143万円(同2.8%増)、価格は2,906万円(同1.9%増)、専有面積は67.09㎡(同0.8%減)、築年数は27.49年(同0.91年増)。
千葉県の成約件数は427件(同12.1%増)、坪単価は121万円(同9.8%減)、価格は2,629万円(同9.3%減)、専有面積は71.89㎡(同0.5%増)、築年数は30.85年(同3.69年増)。
これらの数値を見比べると、東京都の成約件数は首都圏全体の54.9%を占め、坪単価は首都圏平均の1.4倍、価格は首都圏平均の1.3倍になっており、一方、他県の坪単価は横ばいか下落しており、価格は東京都の半値で推移していることが分かる。また、専有面積は各都県とも一貫して縮小しており、築年数は千葉県が30年超となっているのが目立つ。
記者がもっとも興味があるのは、いま自宅マンションを売却する人は買値を上回っているのか下回っているのかだ。世間では分譲と賃貸都ではどちらが得かが俎上に上る。記者は住宅を損得で考えるべきではなく、ライフスタイルによって自由に選択できる市場になることを願っている。
ここではこの問題に深入りすることをしないで、単純に考えることにする。築年数26.96年といえば、今から約27年前の1998年(平成10年)だ。デベロッパーはバブル崩壊の痛手から立ち直っていたころで(退場を余儀なくされたデベロッパーはたくさんあったが)、マンション市場は活況を呈していた。不動産経済研究所のデータによると、1998年の首都圏マンション供給量は約6.6万戸で、坪単価は193万円、平均価格は4,168万円、平均専有面積は71.01㎡だ。その後、2008年のリーマン・ショック後の一時期を除けば価格、単価は右肩上がりで推移している。2024年の平均価格は7,820万円、坪単価は388万円だ。
中古マンションはどうかというと、1998年の成約件数は22,356件、坪単価は115万円、価格は2,192万円、専有面積は62.87㎡、築年数は15.20年だ。現在の中古マンションの成約状況を当時と比べると、坪単価と成約価格は約2.4倍へと大幅に上昇している。当時、マンションを買った人は損切りしないで売却できているという計算が成り立つ。これが現在の活況を呈している中古マンション市場の大きな要因の一つだろう。
問題を指摘するとすれば、専有面積の圧縮だ。現在の新築マンションの平均専有面積は66.95㎡で、1998年比で4.06㎡(1.23坪)縮小している。中古マンションの専有面積は1998年の62.87㎡よりも狭い62.50㎡だ。〝便立地、好立地〟(資産性)のために住宅の基本的な質である居住面積を犠牲にしていることが分かる。
30年経過しても、住宅の質はそれほど向上していないとも受け取れるが、この〝便立地、好立地〟(資産性)が重視されるのは分からないわけではない。〝時は金なり〟だ。移動に伴う時間を金額に換算したらいくらになるか。これは人それぞれだろうが、仮に1時間2,000円としたら(オフィスワーカーの賃金を時間給にしたらもっと高いはずだが)、駅から徒歩10分なら往復で666円、月に約2万円、年間で約24万円だ。夫婦ならこの2倍。〝コスパ〟を重視する若い人にとっては無視できない額だ。
では、居住面積を金額に換算したらいくらになるか。首都圏賃貸住宅の相場を坪1万円とすると、年間で12万円だ。夫婦で共有すれば1人当たり6万円となる。
この数値から、時間か居住性かを問われれば、やはり時間を重視する人が多数を占めるだろう。〝便立地、好立地〟が住宅市場で優位にあることの説明がつく(絶対ではないので、郊外の価格が安くて居住性に優れた住宅が一定の支持を受けているのもよくわかる)。
成約状況をさらに詳しく見ると、面白いことが分かる。2025年4月から6月の成約件数12,090件の1,000万円ごとの価格帯別分布でもっとも多いのは6,000~7,000万円の1,904件(全体の15.7%)だが、10,000万円以上は1,189件(8.8%)で昨年同期の715件(7.6%)から大幅に増加している。10,000万円以上を都県別にみると、東京都が1,104件(前年同期は663件)を占め、他の3県合計は85件だ(前年同期は52件)。ちなみに、他県の1,000万円ごとの最多価格帯はいずれも1,000~2,000万円で、神奈川県500件(17.8%)、埼玉県325件(23.1%)、千葉県289件(23.4%)、3県合計で1,114件だ。東京都の億ション成約件数のほうが多い。
この数値からは、東京都の高額住戸が市場を左右していることが浮き彫りになり、中でも都心3区(千代田区・中央区・港区)の数値が突出している。東京都全体の6月の成約状況は先に見たが、都心3区の成約件数は都全体の7.1%の306件(前年同月比29.1%増)で、坪単価は766万円(同26.8%増)、価格は13,502万円(同33.7%増)、専有面積は58.16㎡(同5.5%増)、築年数は20.45年(前年同期は20.05年)となっている。
坪単価、価格とも大幅に上昇しているが、興味深いのは築年数だ。他の地域では城東地区24.08年、城南地区28.22年、城西地区27.11年、城北地区26.89年、多摩地区27.97年となっており、かなりの差がある。
なぜそうなのかは詳細な分析が必要だが、先に見たように築年数が浅いほど中古市場での評価が高く、ここ数年の新築価格の暴騰の恩恵を高額マンション居住者が受けていることをうかがわせる。一部では投機的需要も発生しており、中古価格が新築価格を上回る逆転現象もみられる。
月並みな言葉だが、首都圏中古マンション市場も二極化が広がっているということか。
6月の中古マンション・戸建て 成約件数は大幅増加 東日本レインズ(2025/7/10)
6月の中古マンション・戸建て 成約件数は大幅増加 東日本レインズ
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は7月10日、令和6年6月の首都圏流通市場動向をまとめ発表。中古マンションの成約件数は4,299件(前年同月比31.9%増)で8か月連続の増加、坪単価は275万円(同6.9%増)で20年5月から62か月連続で上昇、成約価格は5,209万円(同5.1%増)で8か月連続で上昇、専有面積は62.50㎡(同1.7%減)で7か月連続の縮小となった。
中古戸建ての成約件数は1,943件(同49.2%増)で8か月連続の増加、成約価格は3,937万円(同1.9%減)で2か月ぶりに下落、土地面積は144.36㎡(同1.7%減)で3か月ぶりに縮小、建物面積は103.59㎡(同0.7%減)で2か月ぶりに縮小した。
改正マンション関連法に関する説明会に約480人 国土交通省&法務省
「令和7年度 改正マンション関連法に関する説明会」(ビジョンセンター東京八重洲で)
国土交通省と法務省民事局は7月8日、「令和7年度 改正マンション関連法に関する説明会」を開催した。午前の部と午後の部あわせて約480人が参加し、関心の高さをうかがわせた。
関連法は一部を除き令和8年4月1日付で施行が予定されていることから、国交省は全国での説明会、専門家による検討会、パブコメの実施などを経てマンション標準管理規約は今年9月下旬を、管理業者管理者方式に関する委託契約書は今年11月1日をめどにそれぞれ公表することにしている。以下、配布資料をもとに要点を紹介する。
マンションの管理・再生の円滑化のための法改正
資料は法改正の背景・必要性について、現在のマンションストック総数は約704万戸(2023年末)で、令和2年の国勢調査による1世帯当たり平均人員2.2人をかけると約1,500万人になり、国民の1割超が居住していることになり、現在137万戸の築40年以上のマンションストック数は20年後には464万戸に増加し、令和5年度のマンション総合調査によると、世帯主が70歳以上の住戸の割合は築40年以上のマンションでは55%に達しているなど「2つの老い」が進行していることを指摘。
また、長期修繕計画を定めて修繕積立金を積み立てているマンションのうち「現在の修繕積立額の残高が、長期修繕計画の予定積立残高に対して不足していない」マンションは約40%に留まっている現状があるとしている。
一方、マンションの建て替え実績は2023年度末で累計297件(約24,000戸)で、建て替えに伴う余剰容積率が縮小傾向にあり、2020年代では保留床は40%を割っており、区分所有者の平均負担額は2012~2016年の約1,106万円から2017~2021年は約1,941万円へ激増している。
こうした背景・課題の解決を図るため、改正法では①適正な管理を促す仕組みの充実、集会出席者の多数決議決による管理の円滑化②建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物の取り壊しなどを多数決で可能とする再生の円滑化③地方自治体の取り組みの強化-による三本柱で取り組むとこととしている。
区分所有法・被災区分所有法の改正内容
区分所有法・被災区分所有法の改正内容では、集会の議決の円滑化のため、現行では普通決議は区分所有者の多数決(欠席者もカウントする)が必要なのを、出席者の多数決でいいことに変更され、所在等不明の区分所有者はすべての議決の母数から除外する制度が設けられたのが大きなポイント。
また、区分所有者が専有・共用部分を管理せず、他の区分所有者の権利を侵害するのを防ぐため裁判所が管理人を選定して管理させる財産管理制度や、区分所有者が国内に住所を有しない場合は、国内管理人を選任できる制度が創設される。
さらに、共用部分の変更決議の多数決要件(3/4)を、権利侵害の恐れがある場合は2/3に引き下げられる。
建て替え決議の要件緩和では、現行多数決要件(4/5)を、一定の要件を満たせば3/4に引き下げることが可能になり、建物・敷地の一部売却、建物の取り壊し、一棟リノベーション工事なども建て替えと同等の多数決議決を可能とする制度が創設される。
一括建て替え決議の要件緩和では、現行は各棟ごとの2/3以上、団地全体の4/5以上の賛成が必要なのを、改正後はいずれかの棟で反対者が1/3を超えない場合は団地全体で3/4に引き下げ、一部建て替えも現行の団地全体の3/4から団地全体の2/3に引き下げる。団地内の建物・敷地の一括売却要件も、現行では区分所有者全員の同意が必要だったのを多数決議決で可能にする制度を創設する。
マンション管理法・再生法等の改正内容
マンション管理法・再生法等の改正内容では、令和2年改正時に創設された管理計画認定制度は現在2,379件の実績があるが、制度の拡充を図るため、現行では既存マンションが対象になっているのを新築時に分譲事業者(デベロッパー)が管理計画を作成し、管理組合に引き継ぐ仕組みを導入し、認定に係る表示制度を創設する。
管理組合役員の担い手不足の課題解消のため期待されている管理業者管理者方式の改正では、管理業者と管理者の利益相反を防止するため、管理者受託契約に係る重要事項を区分所有者に説明し、書面を交付すること、自社または関連会社との取引を行う場合は、取引の前に区分所有者に説明することを義務化する。
区分所有法の改正により創設された新たな再生手法(一棟リノベ、建物・敷地の一括売却、建物の取り壊しなど)について、新たな決議に対応した事業手法(組合設立、権利変換計画、分配金取得計画など)を整備するため、マンション再生法の合意要件を緩和、引き下げを行う。また、マンション再生に関するガイドラインやマニュアルを整備し、独立行政法人住宅金融支援機構法(JHF法)の改正により、マンション再生の取り組みを金融面でサポートする。
隣接地の所有権や借地権、底地権を建て替え・再建後のマンションの区分所有権に権利変換できるようにし、特定行政庁の許可による容積率特例制度に高さ規制要件を緩和する特例を追加する。
地方公共団体の取り組みの充実を図るため、地方公共団体がマンションの管理に関して助言・指導・韓国でできるよう権限を強化するため、地方公共団体の内部情報の収集や、財産管理制度の申し立てなどが行えるようにする。また、NPO法人など民間団体をマンション管理適正化法人として登録する制度を創設する。
14年も前から断熱窓の提案に驚愕 インテリックス「青山リノベーションスタジオ」
「青山リノベーションスタジオ」
インテリックスグループのインテリックス空間設計の個人向けショールーム「青山リノベーションスタジオ」を7月3日見学した。14年も前から断熱窓(二重サッシ)の提案を行っているのに驚愕した。
リニューアルでは、「生活課題の解決」と「多様化する高品質ニーズへの対応」をコンセプトに、最新設備を展示するだけではなく「どんな暮らしが実現できるのか」を提案できるショールームとなっている。
スタジオでは、断熱窓(Low-E樹脂サッシ)の施工例や、飛騨高山の家具を採用し、床は突板仕上げのヘリンボーン、電動シャッター、キッチン動線、限られた収納スペースを有効に活用する提案などが体験できるようになっている。
同社リノベーションデザイン部部長・阿部貴氏は、「コロナ以降、資材の高騰、職人工賃の上昇が続いており、フルリノベの単価は21万円/㎡。2~3割はアップしている。今後も工事単価は上昇すると思われ、なるべく早めに決断されるのをお勧めしたい」とアドバイスしている。
同社は1998年2月設立。年間販売1000件を超えるインテリックスの「リノヴェックスマンション」の設計・施工のほか、同業他社のリノベ請負、個人向けリノベ施工を三本柱として事業展開しており、同スタジオは個人向けショールームで2015年に開設している。
「青山リノベーションスタジオ」リビング
洗面
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同社のリノベマンションを初めて見学したのは20数年前だ。物件そのものは〝好立地〟のいいマンションだったが、共用部分のサッシは手付かずだったのを思い出す。その後、同社が中心となって自主規制団体・リノベーション協議会(理事長:インテリックス会長・山本卓也氏、設立時はリノベーション住宅推進協議会で山本氏は同社社長)が平成21年5月20日に設立された。現在の会員数は736者にも及ぶ。〝リノベ〟は〝リフォーム〟に取って変わった。
しかし、記者はこのリノベにいい印象を持っていない。玉石混交の世界だ。ほんの200~300万円の工事を施しただけで、数百万円から1,000万円くらい価格にオンして暴利をむさぼる業者が続出した。
この日、「青山リノベーションスタジオ」を見学して、同業他社も一般の方も同社の「品質にこだわるまじめな『施工力』」(同社パンフレット「RENOVATION STYLE BOOK」)に学ぶべきだと思った。
その典型例が省エネ提案だ。写真のように、PLASTとトステム2社の二重樹脂サッシ(内窓)の提案を行っている。窓下は断熱壁にしている。これは、2011年3月11日、つまり東日本大震災が起きたその日から行っているそうだ。なぜその日だったかは、同社広報担当のTさんは「山本(当時社長の卓也氏)が提案することを決めた、その翌日に震災が起きたのでよく覚えています」と話した。
今から14年前だ。今でこそLow-Eガラスは当たり前になっているが、当時、二重サッシを採用するのは防音対策としてで、断熱性能を高めるものなどなかった。
マンション標準管理規約で、窓ガラスなどの防犯、防音、断熱性能の向上について管理組合がその責任と負担において実施すべき(実施できない場合は区分所有者の責任と負担)と定めたのはそれから5年後のことだ。それより前に、同社が既存マンションの断熱化に取り組んでいたのを聞いてびっくりした。今でもリノベマンションの窓の断熱工事を行っているのは少数ではないか。
断熱窓(二重サッシ)の提案(左がPLAST、右がトステム)
へリーンボーンの床
元町仲通りの中心地販売好調インテリックス「リシャール横濱元町」(2016/2/8)
成田駅徒歩圏で12年ぶり イオンタウンに隣接 総合地所「ルネ成田サングランデ」
「ルネ成田サングランデ」(合成写真)
総合地所は7月3日、JR・京成成田駅徒歩圏で12年ぶりのマンション供給という「ルネ成田サングランデ」のメディア向け見学会を行った。道路を挟んだ対面に大規模商業施設「イオンタウン成田富里」が隣接しているのが特徴。
物件は、京成本線京成成田駅から徒歩10分、JR成田線成田駅から徒歩12分、成田市東町の第一種住居地域・準工業地域に位置する10階建て全119戸。専有面積は専有面積は60.50~85.03㎡、価格は未定で、3LDKで5,000万円台、2LDKで4,000万円台中心を予定。竣工予定は2027年1月末。売主は同社のほか京成電鉄。設計・施工は長谷工コーポレーション。販売は長谷工アーベスト、京成不動産。販売開始は9月の予定。
敷地の従前はバッティングセンター・ゲームセンター。用地は2023年9月に取得。道路・京成本線鉄道線を挟んだ敷地南側の大規模商業施設「イオンタウン成田富里」に隣接。建物はT字型で、標準階の南東向きは11戸、南西向きは4戸。全31タイプで平均面積は71㎡。全住戸の約90%に可動収納「ウゴクロ」を採用。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M oriented、低炭素認定、直床、リビング天井高2500ミリ、食洗機、フィオレストーンキッチン天板(オプション)など。京成線に面した妻側住戸の5階以上は二重サッシを採用。コンセプトは、バイオフィリックデザイン。
今年3月から物件ホームページを公開しており、これまでの反響は370件。うち地元居住者は約6割。7月12日にオープンするモデルルーム見学申し込みは80件。
同社は、駅前の中古マンションは坪単価200万円台の中盤に上昇しており、反響も良好なことから竣工までの完売を目指す。
左側がイオン
外観
フレタスキッチン
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いつもは、微に入り細を穿つ、見学会はかくありきの説明会を開き、分譲単価を公表する同社だが、この日は分譲開始が9月とまだ先だからか、同社販売担当者は「3LDKで5,000万円台の前半から後半、2LDKで4,000万円台を予定」と含みを持たせた。
記者は見学前に、駅前の「日高屋」(駅前に日高屋とドトール、マクドナルドがあるかどうかは街のポテンシャルを測る重要ポイント)でビールと半ラーメンを食べた。税込み630円で、半ラーメンは240円。マンション単価はこれと同じ240(万)円だったらいいのになあと考えたが、甘かった。そんなに安くはならないようだ。仕方ない。
マンション購入検討者は、どんな郊外でも坪単価250万円以下はほとんどありえないことを覚悟すべきだ(日高屋は銀座の一等地でも半ラーメンは240円だか)。ただ、単価が安いか高いかは、みんな都心を中心に考える。これは改めたほうがいい。成田駅圏には大量の戸建て住宅街がある。〝都心回帰〟を志向するこれら戸建て居住者の需要を取り込むか、そういう需要は枯渇したか。
模型(わかりづらいが、左側に突き出ているのが横断歩道、マンションとイオンを直接つなげはほんの数秒。横断歩道を付け替えることはしないだろう)
現地(クレーンが建っているのが建設現場)
約1000区画の「成田はなのき台」細田工分譲開始8年で約9割完売(2014/4/21)