価格調整進む 値引き販売がどう影響するか 今年のマンション市場
多くの媒体が書き、専門家の方が話しているように「今年のマンション市場展望」に挑戦しようと思う。
しかし、最初に断っておく。外的要因である市場を取り巻くあれやこれらの経済指標を借用したところで消費者には〝それがどうした〟と言われそうだし、内的要因であるデベロッパーの供給姿勢については年間100件くらいしか見ていない記者は分からないというほかない。
なので、歯切れの悪い文章になってしまうのを許していただきたい。物件選好の役に立つかどうかも分からない。〝当たるも八卦、当たらぬも八卦〟というくらいの気持ちで読んでいただきたい。
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長谷工総研は先に「2016年の首都圏全体の分譲単価は前年比1.8%アップの79.3千円/㎡、平均面積は69.22㎡で同比2.2%縮小し、平均価格は5,490万円と、同比0.5%ダウンとなった。分譲単価の上昇幅(前年9.6%アップ)が縮小したことに加え、平均面積の縮小もあって、平均価格は前年を下回った」と発表した。平均専有面積が70㎡を割るのは1996年の69.45㎡以来20年振りだ。
「アップ」「縮小」「上昇」「ダウン」の単語が交互に出てくると目が回る。分かりやすく書き改めると、「2016年の首都圏マンションの平均像は価格が5,490万円(昨年比0.5%減)で、面積は69.22㎡(同2.2%減)、1㎡当たり単価は79.3千円(同1.8%増)だった」となる。
これでも理解しづらいかもしれない。もっとわかりやすく言えば、建築費の上昇分を分譲価格にオンすれば売れないので、面積を狭くして、さらに基本性能、設備仕様レベルを下げて価格が上がっていないように〝見せかけた〟のが昨年の首都圏マンション市場だ。
単価の上昇幅が縮小した理由について、長谷工総研は「山手エリアでの供給が低調であった」「その一方で、都内23区以外の地域の分譲単価は前年比6.5%アップ」「分譲単価・平均価格の上昇傾向は継続している」としている。
これはこれでその通りだろうが、記者は実際の建築費はもっと上昇していると見ている。つまり、基本性能、設備仕様レベルを落としているからこの程度の上昇幅に収まっていると考えている。
具体的にいえば、建築費、設備仕様を落とす手段として、間口を狭め同じパターンのプランにする、二重床を直床にする、キッチン、洗面の天板の質を落とす、階高(天井高)を下げる、逆梁は順梁にする、食洗機、バックカウンター・吊戸棚はオプションにする、床暖房をやめる、スロップシンクやミストサウナはつけない、建具・面材・クロスの質を落とす…あらゆることが行われているのが現実だ。都心であろうと郊外であろうと例外はない。
ただ、過度の基本性能、設備仕様レベルダウンは逆効果になるので、市場動向や近隣物件の商品企画と天秤にかけながら各社は値付けに苦労しているのだ。
このように、単に価格や面積だけで市場を測ることはできない。契約率も同様だ。例えば、専有面積66㎡の8,000万円(坪単価400万円)と専有面積75㎡の3,000万円(坪単価132万円)のマンションが分譲されたとする。平均価格は5,500万円、平均専有面積は70.5㎡、平均坪単266万円となる。一方が売れ、他方が売れないと仮定すると、平均契約率は50%となる。平均値は昨年の市場とほぼ同じだ。
では、この平均契約率は市場を正確に反映しているかと問われれば、ほとんどの人はノーと答えるはずだ。母数字が大きければ大きいほど平均値は全体像を反映するという人がいるかもしれないが、現在のマンション市場はよく言われる二極化現象が顕著で、すべての供給物件を足してその数で割ったところで全体像は把握できない。
売れ行きの格差は大手・中小、デベロッパー間でも顕著で、いくらマクロデータをいじくってみても市場を把握するのは難しい。
ましてや、一国の大統領が発するツイッターに世界の政治家や経営者が右往左往、右顧左眄し、株価が乱高下する世の中だ。この先どうなるのか全く読めない。
多少の景気変動など問題にしない富裕層や、比較的元気な単身者、DINKS層向けは堅調に推移しそうなことくらいは読める。価格調整が進むのも間違いない。(こんなことはユーザーのほうがよく知っていることだ)
しかし、需要層の中心である子育てファミリー向けは不確定要素が多すぎる。雇用の改善は進んでいるが、実質賃金は底這いが続いている。これから3月末に向けて完成在庫の値引き販売が始まる。各社が堰を切ったように実施すれば、相場は崩れ、新規供給物件の価格下げ圧力はさらに強まる…などの不安要素はぬぐい切れない。
一つだけ確かなのは、マンションは金融商品ではなく、購入者は買わざるを得ない切実な事情があるから買うということだ。
その中心層は、分譲と比べ圧倒的に質が劣り、その割に賃料が高い賃貸居住者だ。これからも利回り優先の賃貸市場が変わらない限り、分譲マンションの優位性は保持される。市場規模が縮小するのは当たり前だ。いつの時代もデベロッパーの基本は商品企画だ。
生鮮食品に例えるのは適当ではないかもしれないが、最近、家の者が〝ちくわの穴が大きくなった。その分キュウリがたくさん詰まる〟としゃべった。マンションも基本的には同じだ。景気は家庭の主婦に聞くのが一番いいかも。
坪単価は「王子」より安い240万円台前半 三菱地所レジ他「国分寺」 反響がすごい
「ザ・ パークハウス 国分寺四季の森」紅葉の小路(完成予想図)
同業他社の近隣物件へ価格下げ圧力をかけるかもしれないが、三菱地所レジデンス他「ザ・ パークハウス 国分寺四季の森」(494戸)が低迷市場に活を入れる。
坪単価は中央線沿線では信じられないような240~245万円。昨年圧倒的な人気を呼んだ北区王子の三井不動産レジデンシャル・三菱地所レジデンス他「ザ・ガーデンズ東京王子」(864戸)よりも20万円くらい安い。
1月だけで来場者は300組に上り、同社城西事業部販売グループリーダー・佐久間亮氏は「西武線沿線では苦戦物件も多いが、うちは中央線の徒歩圏で、大きな森に隣接。再開発が進む国分寺駅まで4分で結ぶシャトルバスも好評。設備仕様は高くないが、共用部分やランドスケープには力を入れた。どこにも負けない」と自信満々に語った。
3月の第1期分譲では約150戸を供給する勢いにある。
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物件概要は、同社がニュースリリースしたとき記事にしているのでそちらを参照していただきたい。事業比率は同社が85%、東京建物が10%、大栄不動産が5%。南向き住戸の総延長が250mで、南向き住戸が75%あり、〝森〟が眼前に広がる住戸も多数ある。
40年近く記者をやっている。正攻法で攻めていいか、からめ手か下手がいいかぐらいは瞬時に判断できる。佐久間氏には単刀直入「いくらですか」と聞いた。佐久間氏は質問に躊躇するタイプではないと読んだからだ。
すかさず佐久間氏は自信満々の顔(顔は少しあのAKB48の生みの親、秋元康氏に似ている)「240万円の前半。高くても245万円くらい。人気が出たからといって引き上げることはしない」と明言した。別荘のような日立の森に面している「南向き住戸は70㎡台で5,500万円台から6,000万円台中心。95㎡の東南角住戸は7,000万円台中盤前後。東向きの森に面したD棟で71㎡台4,000万円台後半から5,000万円台半ば中心。森に面さない住棟は70㎡くらいが中心で、4,200万円台から5,000万円くらいまでにしてグロスを抑える。設備仕様はさほど高くはないが、デザイン監修に三菱地所設計を起用して、共用部分などはしっかり造り込みをした」と舌滑らかに話した。
リーダーたるものこうでなくてはならない。少しでも不安をのぞかせればスタッフに影響するし、お客さんにも伝わってしまう。「設備仕様は高くはない」というのも正直でいい。目が肥えたお客さんに「設備仕様は高いですよ」などと言ったら、間違いなくそっぽを向かれる。
森に隣接する特性は、住友不動産「シティテラス小金井公園」(922戸)と激突するのではないかと思ったが、「競合はまったくありません」ときっぱり答えた。佐久間氏には他の物件は眼中にないようだ。
「このように好調なのは最近聞いていないが」と水を向けたら、「当社と三井さんの『王子』が人気ですが、西側ではここ。沿線では見ていただいたうちの『中野タワー』が沿線では一番人気。9割まで進捗している。コンパクトの『ザ・パークハウス アーバンス 中野中央』もあと1割」と語った。
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一つ、このマンションの大きな特徴でもある学童保育所の併設について。保育園は現地のすぐ北側に新設されるなど不足しないため、同社は絶対的に足りない学童保育所を設置することで、国分寺市の条例により15mの高さ規制を20mまで緩和措置を受け、容積の割り増しも受けている。
確かに、保育所も必要だが学童保育所も子育て世帯にとっては欠かせない施設だ。
サクラ・ガーデン
三菱地所グループ マンション用全館空調「新エアロテック」の実証実験開始
実証実験住戸
三菱地所レジデンス、メックecoライフ、三菱地所ホームは2月2日、快適・健康・省エネルギー性に配慮したマンション用全館空調システム「新マンションエアロテック」の開発に向けた実証実験を文京区のマンションで3月下旬に開始すると発表。その現場を報道陣に公開した。
三菱地所ホームは24時間365日、家中を換気しながら快適な温度を保つ全館空調システム「エアロテック」を1995年に開発、これまで約6,000棟の新築住宅、100棟超の戸建てリフォームに搭載してきた。また、三菱地所グループが分譲するマンションでも2006年以降で6棟132戸に採用している。
「エアロテック」は、花粉やPM2.5などをカットし、室内のホコリや化学物質などを屋外に排除する。1度単位で各居室の室温を設定できるのが他社にない特徴。同社の試算によると、年間の冷暖房費は約63,600円に抑えられる。壁やドアなどで空間を仕切る必要もないことから、空間デザインの制約も軽減できるメリットがある。
設備機器の保証期間は10年だが、無償の定期点検を年1回実施しており、10年を超えても壊れたという声はなく、20年を過ぎても機器の交換を行わなくて済んでいる住宅も多いという。
「新マンションエアロテック」は、従来のシステムを実現しながら、天井のダクト空間を使う代わりに二重床の床下空間を利用することでダクト工事が削減し、導入コストの低減を実現したという。
メックecoライフ取締役・子安誠氏は、「真冬でも春や秋と一緒」とどこでもほぼ23度の室温が保たれている室内を紹介したうえ、「従来はダクトを確保するためにマンションでは階高が3.2m必要だったが、新システムは床下のふところ厚23㎝で可能にした。将来的には18㎝にする。イニシャルコストも200万円を150万円くらいまでに抑えるようにしたい。新規マンションでも三菱地所レジデンスの共同事業物件などに提案していく」と話した。
無人の実験はすでに昨夏から行っており、これから自宅の建て替えやリフォームのために仮住まいを必要としている顧客に相場より安い賃料で貸し出し、今秋をめどにリノベーションマンションとして売却する予定。
グッドデザイン賞を受賞した今回の取り組み概念図
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「エアロテック」を三菱地所ホームが開発したとき、爆発的にヒットするのではないかと思った。このシステムを搭載したあるデベロッパーの建売住宅も圧倒的な人気を呼んだのを記憶している。
そして今、戸建ての実績が約6,000棟、マンションでも最近竣工した「南青山」を含め7棟だという。
これが多いのか少ないのか、記者は判断材料がないが、やはり物足りない数字だ。コストがかかるうえ、まだまだ省エネや健康に対する認識・意識が薄いからかもしれないし、その快適性を享受し、効果の大きさを体感している人が少ないからだろう。
しかし、2016年グッドデザイン賞の評価委員はこの取り組みに対して「分譲マンションの商品開発に風穴を開ける可能性がある」と言った。年間の冷暖房費が大幅に削減できるのはもちろんだが、花粉、ダニ、ホコリなどからも完全ではないが解放される。そのストレスを金額に換算したらいったいいくらになるのか。桁違いの額になる。これを訴えきれれば大ヒットする可能性を秘めている。三菱地所グループの総力を結集して取り組んでほしい。
床下の模型(ふところ厚は23センチ)
床の吹出口(320×200ミリ)
各居室の温度計(23度以上となっているのは記者団の人いきれのためか)
「カスタムプラン144+」秀逸 単価も割安 伊藤忠都市開発「クレヴィア浅草」
「クレヴィア浅草」完成予想図
伊藤忠都市開発が2月上旬に分譲開始する「クレヴィア浅草」のモデルルームを見学した。1フロア3戸の専有面積は圧縮気味だが、ワイドスパンのプランがよく坪単価も270万円に抑えられている。間違いなく早期完売する。
物件は、つくばエクスプレス浅草駅から徒歩9分、東京メトロ銀座線浅草駅から徒歩13分、台東区浅草五丁目に位置する13階建て全35戸。専有面積は50.61~75.76㎡、第1期(25戸)の予定価格は3,800万~7,490万円、坪単価は270万円。設計・監理は三輪設計。施工は佐藤秀。竣工予定は2018年2月下旬。販売代理は伊藤忠ハウジング。
現地は、浅草寺からほぼ真北方向に柳通りを進み、商業・住宅エリアを抜け住宅エリアに入った一角。用途地域は商業地域。
建物は、基本1フロア3戸構成で、間口は東向きAタイプ(64㎡)が7650ミリ、西向きBタイプ(62㎡)が7600ミリ、西向きCタイプ(50㎡)か8050ミリ。二重床・二重天井。
住戸プランはライフスタイルや好みにより144通り以上の間取り、収納、色・デザインの組み合わせが可能な「カスタムプラン144+」を導入。キッチンには分譲マンション業界のモデルルームとして初めて、壁やデスクに置くだけで世界の美しい風景が広がるデジタルウィンドウ「AtmophWindow」(アトモフウィンドウ)を設置。収納はレールに様々なパーツを自由に組み合わせられるYQラックを採用している。食洗機が標準。
販売担当者は、「反響は約200件。もう少し集まると思いましたが、周辺はみんな坪単価300万円以上。瞬く間に売ります」と意気込んでいた。
アイランドキッチン
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同社はほとんどそうしているのだが、10日前、ニュースリリースとしてこの物件の特徴などをメディアに告知している。今回の特徴は「カスタムプラン144+」と「AtmophWindow」だ。
他のメディアがどう伝えたかはしらない。おそらくコピー&ペーストして、つまり〝コピーライター〟として伝えたのではないかと思う。
記者はそれをやらないことに決めている(先日、ある会社の広報マンから「牧田さん、最近コピペの記事多くありません」と指摘されて心臓が飛び出すほどびっくりしたのだが)。なのでリリースはよく読まなかった。「AtmophWindow」なるものがどんなものか見忘れた。これについては書きようがない。
しかし、モデルルームはしっかり見学した。価格を聞いてプランを見てほとんど瞬時に「これは売れる」と判断した。
まず価格。坪単価は300万円をはるかに突破すると読んでいた(価格が未定の商品などあり得ないのだが、総合地所以外の各社のニュースリリースにはまず価格・単価が書かれていない。同社も同じだ。だから想像するしかない)。
大幅に外れた。最近の市況を考慮してこのような値付けにしたのだろう。かといって、設備仕様レベルを落としているわけではない。坪270万円のレベルには十分あると思う。
プランはどうか。前述したように1フロア3戸のワイドスパンがいい。専有面積を圧縮しているので居室は狭いが、これは「カスタムプラン144+」で解消できる。ニュースリリースの意図がよく理解できる。
それがもっともよく表現されているのは、64㎡のモデルルームのアイランドキッチンタイプだ。他のタイプも含め無償でセレクトできる。玄関の大理石と上下セパレートの下足入れ・収納(これはオプションだが)の提案もなかなかいい。
歩留まりについて。販売担当者は反響を気にしていたが、確かに約200件では即日完売は微妙だ。最近は来場者に占める申込者の割合(歩留まり)は10~15%くらいではないか。20%という物件はほとんど聞いたことがない。
しかし、かつて1983年竣工の日本ランディック「パークハイツ鶴見」は50%近くあった。時代が変わったといえばそれまでだが、当時はどこも需要を喚起するのに必死だった。
この物件はプランがよく練られている。反響が200件もあれば十分ではないか。あのグッドデザイン賞を受賞した「クレヴィア小竹向原」の再現があると見た。
アイランドキッチン
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受付に〝居た〟コミュニケーションロボットについても一言。販売事務所に入ったら挨拶された。真正面から向き合って「こんにちは」と返し話しかけたが、記者より頭がよく回転が速いためなのか、それともお客さんがよからぬことを吹き込んだのか、はたまた記者の醜悪な顔に驚いたのか、訳の分からぬことをしゃべった。確か〝カイジュウ〟なる単語が飛び出した。これは〝怪獣〟なのか〝晦渋〟か〝懐柔〟か。意味深だ。
そんなに頭がいいのなら、周囲の物件の概要・特性を調べ上げ、しっかり学習すれば「ココヲカワナイデドコヲカウノ」くらいは喋れるようになるのではないか。営業スタッフがしゃべるより効果がありそうだ。そんなことをしたら公取から叱られるか。
「クレヴィア豊洲」でもロボットに会ったが、しっかり〝仕事〟しているのか。このマンションもよくできている。
記者の顔が怪獣に見えたのか、懐柔されまいと考えたのか、言葉を理解するのに晦渋したのか
三井不レジ「流山セントラルパーク」 〝郊外苦戦〟撥ね返し大健闘
「パークホームズ流山セントラルパーク」完成予想図
三井不動産レジデンシャルが分譲中の「パークホームズ流山セントラルパーク」を見学した。昨年7月に第1期1次110戸を分譲開始してから昨年末までに供給した155戸をすべて完売するなど、苦戦する物件が多い千葉県内では数少ない好調物件の一つだ。
物件は、つくばエクスプレス流山セントラルパーク駅から徒歩4分、流山市野々下1丁目に位置する14階建て全341戸。2月4日から登録を受け付ける第3期1次(15戸)の専有面積は60.60~90.39㎡、価格は2,828万~4,618万円(最多価格帯3,600万円台)、坪単価は155万円。竣工予定は平成30年1月下旬。施工は長谷工コーポレーション。
現地は、土地区画整理事業地の一角で、敷地東側は道路を隔てて流山市民総合運動公園・キッコーマンアリーナ(総合体育館)に隣接。流山おおたかの森S・Cへは自転車で約8分。
建物はL字型で、住戸プランは南向きと東向き。間取りは70㎡台と75㎡台が中心。ゲストルーム、コミュニティサロン、ランドリールームなどのほか保育園が併設される。
販売を担当する同社千葉支店営業室「パークホームズ流山セントラルパーク」所長・田畑等氏は、「引き渡しは来年の2月。この時期、竣工までに完売のめどが立つマンションは少ないはず。極めて順調に推移している」と話した。
購入者は流山市、柏市、松戸市居住者で50%、その他千葉県内が10%、都内が20%。「地縁のない人も少なくない」(田畑氏)という。
モデルルーム
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好調な売れ行きに安堵した。隣駅の流山おおたかの森と比べ流山セントラルパーク駅は生活利便施設が乏しく、それが売れ行きにどう影響するか心配だった。それでも、駅に近く森のような公園が隣接地に広がり、しかもマンション内に市の条例により保育園が併設されるので売れるだろうと予測していた。
予想を上回る売れ行きではあるが、驚いたのは単価の安さだった。一昨年、同社がここでマンションを分譲することを知ったが、その時点の単価予想は坪160~170万円だった。まさか155万円まで抑えるとは夢にも思わなかった。
考えてみればこの沿線はマンションの供給が多く、価格下げ圧力が高まっている。三郷中央あたりでも坪単価は160万円を切り、柏たなか駅では坪130万円くらいで分譲されている。駅から少し遠いと敬遠される。
東京駅へ30分圏内の郊外マンションの坪単価がこれほど安く、しかもローン金利はただ同然であるのに、駅から少し離れると見向きもされない今の市場はどこかおかしい。もう価格の問題ではない。デベロッパーの努力ではいかんともしがたい政治の問題だ。働き方、雇用を含め若年層が将来に希望を持てる社会にしないと益々市場はシュリンクする。長谷工総研の調査によると、首都圏マンションの平均専有面積は昨年69.22㎡となり、1996年の69.45㎡以来20年ぶりに70㎡を割った。時代は逆戻りしつつある。
隅田川を渡れば徒歩3分で中央区アドレス 野村不「プラウド清澄白河リバーサイド」
「プラウド清澄白河リバーサイド」完成予想図
野村不動産が3月中旬に分譲する「プラウド清澄白河リバーサイド」を紹介する。「オウチーノ」の「2015年 人気の駅ランキング」調査で第3位に浮上した「清澄白河駅」が最寄り駅で、隅田川がすぐ目の前。清洲橋を渡れば徒歩3分で中央区アドレスとなる江東区のリバーサイドマンションだ。
物件は、都営大江戸線清澄白河駅から徒歩7分、江東区清澄1丁目に位置する15階建て全111戸。専有面積は64.20~103.73㎡、価格は未定だが坪単価は300万円台の前半の予定。施工は佐藤工業。竣工予定は平成29年11月中旬。
現地は、物件名にもあるように隅田川リバーサイド。準工地域だが、明らかに嫌悪施設に思えるような工場はバスの中からは見えなかった。敷地のすぐ近くにある清洲橋を渡れば徒歩3分で中央区アドレス。
建物は全戸南西向きで、多くの住戸から隅田川とその先の都心部が見渡せるはずだ。オーダーメイド対応で、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナなどが標準装備。1フロア8戸構成で、2基のエレベータに隣り合う28戸は両面バルコニータイプ。
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販売事務所の壁に、「日本最大級の住宅・不動産専門サイト」「オウチーノ(オウチーノ総研)」が発表した「2015年 人気の高かった駅ランキング(中古マンション)」のベスト10が張り出されていた。
何と「清澄白河駅」が堂々の3位に入っているではないか。「人気」は、同社のサイトに対するアクセス数をもとに集計したもので、必ずしも「買いたい」「住みたい」とイコールではない。
参考までに清澄白河駅以外のベスト10を紹介すると、1位・恵比寿駅、2位・北千住駅、4位・二子玉川駅、5位・吉祥寺駅、6位・大崎駅、7位・葛西駅、8位・自由が丘駅、9位・光が丘駅、10位・用賀駅。2016年の人気駅ランキングは集計中だそうだ。
それにしても、他の駅と比べて知名度がいま一つの「清澄白河駅」がどうして3位に浮上したのか。
同社ホームページには「2月に日本初上陸の『ブルーボトルコーヒー』がオープンし、カフェの街として注目を集めました。女性誌やガイドブックへの露出が多く、今後さらに人気が高まることが期待できます」と紹介されている。
つまり、ブルーボトルコーヒーの初出店が清澄白河だったことが、ベストテン圏外から急浮上した要因のようだ。
さて、その人気ランキング3位の清澄白河駅が最寄り駅の「プラウド清澄白河」はどうか。
現地は準工だが、敷地南側にある新聞社の印刷工場とは45m離れており、日影の影響はそれほど受けない。敷地西側はすぐ隅田川。川にかかる清洲橋を渡れば3分で中央区アドレスとなり、水天宮駅へ徒歩9分、人形町駅へは徒歩15分。
ここがこのマンションのポイントだ。モデルルームを清澄白河でなく、都営新宿線浜町駅の近くに設置しているように、いま大激戦の人形町-浜町-馬喰町界隈のマンション検討者を根こそぎ引き込もうとする戦略が見て取れる。
中央区アドレスの物件は軒並み坪400万円を突破している。ここは300万円台前半。20坪で2,000万円の差がある。これなら十二分に戦えると読んでいるのではないか。
南西角住戸の87.91㎡は9,000万円台になりそうだが、モデルルームのペニンシュラ型キッチンの提案がいい。
面白い共用施設もある。道路を挟んだ川沿いに車6台分の〝飛び地〟がある。そこを時間貸しのタイムズに運用してもらうことで、その賃貸料金を管理組合の収入にするという。いくらの収入になるかわからないが、駐車料金の相場は3万円だそうだ。3×6=18万円/月くらいになるのではないか。
資料請求は1,600~1,700件。反響も上々のようだ。
ラウンジ
真価を世に問う畢生の高級マンション モリモト「ディアナガーデン西麻布」
「ディアナガーデン西麻布」エントランス(完成予想図)
三大証券の創業社長の邸宅跡地マンション、モリモトの「ディアナガーデン西麻布」を見学した。江戸時代には「笄(こうがい)町」と呼ばれ、多くの大名が住み、近代には三井本家や大手企業の創業者らの豪邸が建っていたエリアの一角で、同社のフラッグシップ〝ディアナガーデン〟の真価を世に問う記念碑的物件だ。
物件は、東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩9分、港区西麻布4丁目に位置する敷地面積1,000㎡、地下2階地上9階建て全41戸(会員向け住戸10戸含む)。専有面積は47.87~124.73㎡、価格は未定(坪単価は後述)。竣工予定は平成30年5月下旬。設計・監理は安宅設計。デザイン監修はE.A.S.T.建築都市計画事務所。施工はイチケン。販売開始は3月中旬。
現地は、かつて「笄町」と呼ばれた邸宅街の一角。敷地は三大証券の1社の創業社長が住んでいた邸宅跡地。隣接地は三井不動産レジデンシャルの「パークマンション西麻布」。近くには「広尾ガーデンヒルズ」「広尾ガーデンフォレスト」「麻布霞町パークマンション」「パークハウス麻布霞町」などわが国を代表する高級マンションがある。施工不良で話題になった三菱地所レジデンス「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」もすぐ近く。
敷地はL字型で、幅7m以上の北側道路に接している(東側の日赤通りにも一部接道)。建物デザイン監修に東京ミッドタウン、名古屋駅ターミナルビルを手掛け、板倉建築研究所の代表を務めた後独立してE.A.S.T.建築都市計画事務所を設立した東泰規氏。外観、エントランス部分にはタペストリーガラス、4連のアクアウォール、テラコッタルーバー、ライムストーンなどを配し、都市的なデザインを演出している。
このほか、タペストリーデザインにペニンシュラ東京を手掛けた多摩美大名誉教授・橋本京子氏、ストーンデザインに竹田亜矢子氏、フラワー・アートデザインに華道家・木村貴史氏を起用。ここにもデザインにこだわる同社の意気込みが込められている。
住戸タイプは22タイプあり、設備仕様は同社マンションの特徴でもある自然石、天然木を惜しげもなく使用しているのが特徴。ジャクソンの浴槽、ビレロイ&ボッホの2ボウルの洗面、ハンスグローエの水栓、バーザイメープルの突板などを採用している。
現地周辺(左は「広尾ガーデンヒルズ」)
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遠回りするが、麻布界隈の高級マンションについて触れたい。「ディアナガーデン西麻布」の評価とも密接につながっているからだ。
広尾駅が最寄り駅の高級マンションといえば、億ションの最高峰といえる「広尾ガーデンヒルズ」のほか、「広尾ガーデンフォレスト」「麻布霞町パークマンション」「パークハウス麻布霞町」「ザ・ハウス南麻布」「プラウド南麻布」「ウェリス有栖川」などがある。
「広尾ガーデンヒルズ」はバブル期に瞬間的だが坪2,500万円の値を付けた。今でも坪600万円はくだらないはずだ。「広尾ガーデンフォレスト」は定借マンションだが、設備仕様が抜群。「麻布霞町パークマンション」は、三井本家跡地に建つ92戸の億ションで、三井不動産レジデンシャルの〝パークマンション〟シリーズはもちろん、ヴィンテージマンション№1だ。「パークハウス麻布霞町」は、三菱地所レジデンスの最高峰の億ションだ。「ザ・ハウス南麻布」は野村不動産とニチメンが分譲した故堤康次郎氏の屋敷「米荘閣」跡地マンション。「プラウド南麻布」は野村不動産と三井物産が共同して分譲したフランス大使館旧館跡地の定借マンション。「ウェリス有栖川」はNTT都市開発の傑作。
「ディアナガーデン西麻布」は、立地条件、規模などから評価してこれらの物件にはかなわないが、いま都心部で分譲されている坪400~600万円クラスの物件にはまず負けない。ジャクソンの浴槽、ビレロイ&ボッホの2ボウルの洗面、ハンスグローエの水栓、バーザイメープル、ななつ星in九州に使用されている面材と同じ銘木突板などは間違いなく億ション仕様だ。
そして下した総合評価は坪単価は650万円だ(近くには坪800万江くらいで検討しているある会社があるが)。しかし、同社はそんな高値を付けない。ヒントは、不動産協会の今年の新年賀詞交歓会で同社・森本浩義社長が次のように語った言葉にある。
「今年は新しいステージの年。今まで坪単価500万円以上のマンションは分譲したことがないが、年初から分譲する『西麻布』をはじめチャレンジする」
もう一つ。物件説明をした代官山ギャラリーチーフ・平井匠氏によると、森本社長は社内向けに「社運をかける。みんなに買ってもらえるようなものにしよう」という考えを示したという。
この二つの言葉から判断して、業界に波紋を呼ぶのはもちろんだが、購入者も十分利益を確保できるような値を付けるような気がしてならない。
つまり、今の市場価格を反映した、とことん高値を追求した物件にはしないということだ。なので、ひょっとすると坪500万円台後半もありうると見た。
坪500万円台でも一般の人には手が届かないし、「西麻布」アドレスに気おくれする人も多いかもしれないが、臆することはない。「広尾ガーデンヒルズ」も分譲開始時は坪300万円台のコンパクトも少なくなかった。チャレンジする価値はある。申し込みが殺到する可能性が高いと見た。
モデルルーム
森本社長(今年の不動産協会 新年賀詞交歓会で)
三菱地所レジデンス他「ザ・ パークハウス 国分寺四季の森」モデルルームオープン
「ザ・ パークハウス 国分寺四季の森」完成予想図
三菱地所レジデンス・東京建物・大栄不動産の3社は1月26日、中央線沿線の徒歩10分圏としては最大級の494戸の大規模マンション「ザ・ パークハウス 国分寺四季の森」のモデルルームを2月11 日(土)オープンし、3月下旬から販売開始すると発表した。
物件は、JR中央線・武蔵野線西国分寺駅から徒歩10分、国分寺市東恋ヶ窪1丁目に位置する7階建て2棟からなる全494戸。専有面積は68.55~97.49㎡。価格は南向き3LDK・4,200万円台~。施工は長谷工コーポレーション。全体竣工は2018年8月中旬。
国分寺駅北口では約2万㎡の広大な敷地で再開発事業が進行中で、物件敷地の南側と東側には、敷地面積約20.7万㎡のうち約45%が緑地の日立製作所中央研究所に隣接。
各分野のプロフェッショナルと提携し、「illy」のコーヒーを提供するカフェや、紀伊國屋書店が選定した書籍を楽しめるライブラリーラウンジなどを設置。 居住者専用シャトルバスの運行も行う。
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この物件については昨年1月、三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス国分寺緑邸」を取材したとき話を聞いている。リリースでは「南向き3LDK・4,200万円台~」となっているが、きちんと取材してレポートしたい。
文明開化の香りがする中央区明石町 野村不動産「プラウド銀座東」
「プラウド銀座東」完成予想図
野村不動産が近く分譲する「プラウド銀座東」を見学した。聖路加国際病院に近接し、周辺物件にはない広めの80㎡以上を多くするなど差別化を図っている。
物件は、東京メトロ日比谷線築地駅から徒歩9分、中央区明石町に位置する13階建て全32戸。専有面積は55.60~114.63㎡、価格は未定だが坪単価は400万~600万円。施工は東洋建設。
現地は、それぞれ道路を挟んだ北西側と南東側に公園があり、聖路加国際病院に徒歩2分の立地。明石町は、文明開化時に外国人居留地が置かれたこともあり、慶応大学、立教大学、明治学院大学など多くの大学の発祥の地、芥川龍之介の生誕の地として知られる。
建物は、1フロア2戸、両面バルコニー、10階~13階は100㎡以上、天井高2,700ミリ確保することで公園と隅田川を望む眺望を〝売り〟にしている。インテリアデザインはHBAを起用。洋室は突板のヘリンボーン仕上げ。全戸オーダーメイド対応。
資料請求は約2,000件、モデルルーム来場者は約200件。第1期分譲は16戸程度を予定している。
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お金があればという条件付きだが、中央区に住むなら文明開化の香りがするここ明石町だ。聖路加ガーデン-聖路加国際病院-聖路加国際大学に続く舗道のメタセコイア、ユリノキ、シナノキ、スズカケ、クスノキなどの街路樹が美しい。芥川龍之介の生誕の碑や、ガス街灯柱、アメリカ公使館跡など歴史をしのばせる石碑も随所にある。
坪単価は階層などでかなり差が出そうだが、平均では500万円くらいか。三井不動産レジデンシャルが分譲している坪単価440万円の「パークシティ中央湊」よりは立地条件がいいのでこの単価差は納得だ。
もう一つ、富裕層にとっては魅力的なサービスがこのマンションでは受けられる。聖路加国際病院付属クリニック「聖路加メディローカス」と提携し、人間ドック、運動サポート、医療サポートを柱とした「会員制健康サポート」が受けられることだ。会費は月額4万円。普通の人はそんなお金があったら酒やその他飲食に消費し、結局は身体を壊すことになりそうだが、健康のためなら月4万円の支出を惜しまない人はどれくらいいるのだろうか。
同社は、このマンションを早期に完売し、同じ明石町エリアで予定している別のマンション販売に注力するそうだ。
隣接の公園
「高尾」の再現なるか 湘南の流れ呼ぶか 大和ハウス「(仮称)プレミスト湘南辻堂」
「(仮称)プレミスト湘南辻堂」完成予想図
大和ハウス工業は1月25日、IoT技術とAI(人工頭脳)を活用したスマートウェルネスをテーマにした湘南エリア最大級の大規模マンション「(仮称)プレミスト湘南辻堂」(914戸)を着工し、今夏にモデルルームをオープンすると発表した。これまでにない商品企画で挑むことで、同社は「湘南に流れを作り、『高尾』の再現を目指す。3年間で売り切る」と自信を見せた。
物件は、JR東海道本線辻堂駅から徒歩9分、藤沢市羽鳥一丁目に位置するA敷地の14階建て404戸と、B敷地の13階建て510戸の全914戸。先行して着工するA敷地の専有面積は68.91~93.18㎡、価格は未定だが、最多価格帯は5,000万円台。坪単価は220万円台に収まる模様。設計・監理・施工は長谷工コーポレーション。竣工予定は2018年12月。売主は同社と長谷工コーポ。管理は長谷工コミュニティ。
現地は、A敷地とB敷地を合わせ約3.5haのNTT社宅跡地。再開発によって街並みが一変した「湘南C-X(シークロス)」内の「テラスモール湘南」へ徒歩6分。
詳細なプランは未定だが、「湘南の自然と文化に包まれて、大人が自由に、豊かに、健康に暮らせる街づくり」をコンセプトに敷地南側を「湘南の海ゾーン」、敷地北側を「湘南の森ゾーン」とし、「湘南の海ソーン」には「フィットネスジム」のほか、「カフェラウンジ」「ライブラリー」「アトリエ」を設置する。「湘南の森ゾーン」には「アリーナ」や「BBQテラス」を配置、「茶室」、「山小屋」、「隠れ家」をモチーフとしたゲストルームを3戸用意する。
大きな特徴であるスマートウェルネスでは、ウェアラブルデバイス(衣服状リストバンド型で、身に着けて持ち歩くことができる)などを用いたIoT技術やAIと、同社グループのスポーツクラブNASが監修する運動メニュー提案などのソフトサービスを融合したヘルスプロモーションサービスを採用。同社グループが昨年8月オープンした「スポーツクラブNAS藤沢店」とも連携する。
このほか、余暇活動やコミュニティ形成などの支援サービスとして、入居者専用の会員組織を設立し、辻堂駅とマンション間でシャトルバスを運行する予定。
記者発表会に臨んだ同社東京本店マンション事業部事業部長・松岡康成氏や同事業第四課係長・二改隆広氏らは「「『プレミスト高尾』のように後背地の戸建て居住者の買い替え、買い増しが期待できるし、そのためにシャトルバスの運行も決めた。湘南に流れを引き込み、『高尾』のような連続即日完売を狙い、3年間で売り切りたい」と語った。
スマートウェルネス概念図
アリーナ
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最初に戸数を聞いたとき、正気の沙汰ではないと思った。いま関電不動産開発が分譲している全352戸の「シエリア湘南辻堂」は半年で約200戸を成約するなど極めて好調な売れ行きを見せてはいるが、その3倍近い。
しかし、ニュースリリースを読み、松岡氏らの話を聞くうちに〝ひょっとしたらいけるかもしれない〟と思うように変わった。それだけインパクトの大きいマンションになりそうだ。
その条件が揃った。立地条件が申し分ないことはいうまでもない。ここ数年、辻堂駅圏で分譲されたマンションも戸建ても極めてよく売れた。「テラスモール湘南」の効果は計り知れない。
ヘルスプロモーションサービスも大きな関心を呼ぶはずだ。詳細は未定だが、同社のロボット事業「ヒューマン・ケア事業」は業界でも最先端をいく。このマンションと連動するかどうかは分からないが、その知見は生かされるはずだ。
もう一つ、辻堂は、全416戸をわずか16カ月で完売した「プレミスト高尾サクラシティ」とよく似た特性を持つことだ。「高尾」の購入者の約4割がシニア層だったが、これは後背地の戸建て居住者の買い替え・買い増し需要を取り込んだためだ。「辻堂」も同じことがいえる。戸建て居住者の属性は「高尾」とほぼ同じと見た。収入・資産などに恵まれた人たちだろう。シャトルバスの運行も大正解。
価格が心配だったが、松岡氏は「関電さんと同じくらい」と話した。つまり坪単価は220万円台、高くても230万円台に抑制するようだ。これほどの商品企画なら子育て層の需要ももちろん期待できる。
記者団からは「郊外マンションが不振」などの質問が飛んだが、確かにこの1年間のマンション市場は変調をきたし、先行き不安もぬぐい切れない。
しかし、記者はしっかり造り込みをすれば郊外だって売れると見ている。販売力・ブランド力のあるデベロッパーはみんな腰が引けており、郊外を回避しているが、同社がその悪い流れを断ち切り、本来の流れに引き戻す可能性はあると見た。
ただ、いくら何でも3年間で完売までもっていくのは難しいような気がする。もし3年間で完売したら逆立ちはできないし頭も剃らないが、同社こそがマンションの雄と称賛したい。一つ提案だ。温泉はどうだろうか。売上げ4兆円を目指す企業だ。それくらいの負担はなんてことないはずだ。「辻堂ダイワロイヤル温泉」とでもすれば大ヒット間違いなしだ。
アトリエ
ゲストルーム(茶室)