記者が選んだ「2016年 ベスト3マンション」
三井不動産レジデンシャル「パークコート青山 ザ タワー」
京阪電鉄不動産「ファインシティ東松戸」他2物件
モリモト「ディアナガーデン自由が丘」他4物件
「パークコート青山 ザ タワー」モデルルーム
今年(2016年)のベスト3マンションは、①三井不動産レジデンシャル「パークコート青山 ザ タワー」②京阪電鉄不動産の「ファインシティ」シリーズ3物件③モリモトの各物件-毎年、見学取材した物件の中から話題性、売れ行き、商品企画などを総合的に判断して選んでいるもので、今年は92物件が対象だった。
「パークコート青山 ザ タワー」(163戸)は文句なしの選定。業界関係者に今年のマンション3物件はどれかを問えば間違いなくこの物件がその一つに選ばれるはずだ。立地条件とユニークな商品企画は他を圧した。売れ行きも絶好調。都心人気を象徴した。
ほかの2物件は難航した。業界関係者でも10人中10人が異なる物件を選ぶのではないか。記者も同じで、〝これを選べばあれも〟と目移りする物件が多く、絞り切れなかった。
そこで、価格の高騰により売れ行きが鈍化する郊外物件の中にあって孤軍奮闘、〝価格破壊〟にチャレンジし、第一次取得層にターゲットを絞り込んだ京阪電鉄不動産の3物件「ファインシティ東松戸」(382戸)「ファインシティ王子神谷」(319戸)「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)」(338戸)をひとくくりにして選んだ。
もう一つは、意匠デザインを含めた商品企画が際立ったモリモトの「ディアナガーデン自由が丘」(14戸)「ディアナコート浜田山」(32戸)「ディアナコート日本橋浜町」(44戸)「ピアース千代田淡路町」(71戸)など一連の物件をまとめて一つとして選んだ。
この3社の供給物件は、超都心の人気、コンパクトの激増と二極化、郊外不振など今年のマンション市場をくっきりと浮かび上がらせた。
「パークコート青山 ザ タワー」インフィニティ プール
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「パークコート青山 ザ タワー」は、分譲前からいくらで分譲されるのか、どのような商品企画になるか注目されていた。
記者は、前年もベスト3マンションに選んだ坪単価1,000万円の「パークコート赤坂檜町ザ タワー」の例もあるので、「青山」も単価はそれくらいになると読んでいたが、その通りになった。坪950万円と聞いても全然驚かなかった。
驚いたのはモデルルームだった。記事の見出しに「非日常の極み」と付けたように、曲線デザインをふんだんに盛り込んだ内装に目が眩み、あきれ返って隅々まで見学するのを忘れてしまったほどだ。
他のメディアも同じ反応を見せた。たくさん書かれているので、記者の拙い記事よりそちらを読んでいただきたい。
売れ行きも絶好調。一般販売住戸110戸のうち80戸に申し込みが入っている模様だ。事業協力者販売住戸53を含めるとすでに8割以上が売れていることになる。全322戸の「赤坂檜町」と比べると戸数規模は約半分だが、それでも都心部の高額物件では同業他社を圧倒した。
本当は同社の別の究極の億ションを選びたかったのだが、同社は「未分譲」としているので選外としたことを付け加えておく。
非日常の極み 「パークコート青山 ザ タワー」は坪単価950万円(2016/10/18)
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「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)」収納
ここ数年、電鉄会社(系不動産)のマンション攻勢がすさまじい。神奈川県が地盤だったはずの相模鉄道(相鉄不動産)と京浜急行(京急不動産)は都内だけでなく埼玉、千葉方面にも攻め込んできている。
もともとマンションの供給が少ない京王、西武、東武、京成の各社はすっかり影が薄くなり、東急電鉄や小田急電鉄(小田急不動産)も霞むほどだ。とはいえ、電鉄各社はビル事業や再開発、その他の事業にも積極的に参入しており、デベロッパーを脅かしている。
ここに、関西の近鉄不動産、阪急不動産、京阪電鉄不動産、東海の名鉄不動産、三交不動産、さらに最近は西鉄不動産も参戦し、首都圏での事業展開を加速させている。これら電鉄(系)会社の首都圏マンション供給シェアは10%をはるかに突破するのではないか。
電鉄各社が首都圏マンションを主戦場とするのは、多角化の一環で、それぞれの地盤ではマーケットが小さいからだろうが、みんなの〝足〟である移動手段を独占している各社が手を組んだら(例えば契約者専用車両とか専用シート)、マンション4強(三井、三菱、住友、野村)に迫る。今のところその気配はないので、デベロッパーも一安心だろう。(かつて東武は自社マンション見学会のため新松戸に特急を停車させた)
前置きが長くなってしまったが、JRや私鉄各社と小さなマーケットで争っている京阪電鉄不動産はさすがというべきか。第一次取得層の取得限界を3,500万円と読み、徹底した差別化戦略で他を圧倒、存在感を示している。
今年分譲開始した「東松戸」「王子神谷」「横浜江ヶ崎」の3物件の販売戸数は合計1,039戸(JV含む)にのぼる。野村不動産の〝オハナ〟のお株を奪う勢いだ。
4月の販売開始の「東松戸」は現在まで250戸を契約している。驚異的な売れ行きだ。竣工まであと1年あるので、竣工完売は間違いない。
「王子神谷」「イマジンテラス」は現在までそれぞれ約170戸を成約済み。販売ペースは落ちてきているようだが、順調に進捗している。こういう会社を応援したい。
「ファインシティ東松戸」リンクガーデン
〝三方一両損〟で3,500万円の3LDKを死守 京阪電鉄不「東松戸」が大健闘(2016/8/26)
〝郊外不振〟跳ね返す 京阪電鉄不動産他「イマジンテラス」(2016/9/21)
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今年に始まったわけではないが、モリモトが相変わらず元気だ。今年見学したのは「ディアナコート浜田山」(32戸)「ピアース千代田淡路町」(71戸)「ピアース下北沢」(37戸)「ディアナコート日本橋浜町」(44戸)だが、このほか「ディアナガーデン自由が丘」(14戸)の記事を書いた。
圧巻は、坪550万円の億ションの「自由が丘」だ。モデルルームを設置せず、図面だけですでに11戸を契約済み。モデルルームなしで億ションを売る力のあるのは、他では三井不動産レジデンシャルくらいではないか。残り3戸は来春に一般分譲される。
「浜田山」も素晴らしい物件だ。設備仕様レベルは、都心の単価が600万円くらいの億ションに負けない。
坪単価420万円の「千代田淡路町」と坪単価440~450万円の「下北沢」はいずれもコンパクトで、瞬く間に売れた。こんな芸当をやってのけられるのはやはり他では三井くらいしかいない。
競合も多い「日本橋浜町」の一般分譲は来春だが、すでに友の会会員だけで15戸が販売済み。このマンションも商品企画が抜群だ。
なぜ同社のマンションがよく売れるのか、ヒントらしきことを同社関係者から聞いた。契約後の解約や内覧会での「イメージが異なる」などといったクレームはほとんどないそうだ。エレベータや共用部の掲示板にいたるまで神経を行き届かせているのが高く評価されているともいう。
「モリモトのデザインコード」が今年のグッドデザイン賞を受賞したのも納得だ。来年早々には、完成後の建物を見学して共用部分の細部についてレポートしたい。同社のすごさがまた見えてくるかもしれない。
「ディアナガーデン自由が丘」
「ディアナコート浜田山」
モリモトの億ション「ディアナガーデン自由が丘」 モデルなし 会員だけで残り3/14戸(2016/12/8)
モリモト「ピアース下北沢」 坪440~450万円でもコンパクトが人気(2016/9/30)
デザイン・プラン・仕様レベル高い モリモト「ディアナコート日本橋浜町」(2016/10/11)
〝ヴェレーナグラン〟の名に恥じない商品企画 大和地所レジデンス「浦和仲町」
「ヴェレーナグラン浦和仲町」完成予想図
今年のマンション取材の締めは大和地所レジデンスの「ヴェレーナグラン浦和仲町」になった。GRAND =「偉大なる」の意味を込め、外観、空間、マテリアル、仕様の細部にこだわり、住まいとしての価値を求めたシリーズ〝ヴェレーナグラン〟の名に恥じない好物件だ。
物件は、JR京浜東北線・湘南新宿ライン・上野東京ライン浦和駅から徒歩13分、埼玉県さいたま市浦和区仲町三丁目に位置する11階建て全30戸。専有面積は62.63~71.08㎡、価格は未定。竣工予定は平成30年1月下旬。施工は東京美装興業。販売予定は平成29年1月下旬。
現地は、埼玉県庁、知事公館、さいたま市役所など行政機関や商業ビル、マンションなどが建ち並ぶ一角。
建物は南向きで、エントランス部分にさび石を配するなど重厚感を演出。住戸プランは、1フロア3戸のワイドスパンが特徴。玄関、廊下、キッチン・洗面カウンターに御影石を採用。
廊下スペースを極力小さくして、居室やその他のスペースに充てるなどの工夫を凝らしている。居室ドアはほとんど引き戸だ。
70㎡のプラン
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他の取材が現地販売事務所から徒歩2~3分であり、そのついでといっては失礼だが、どのようなプランのどのような設備仕様のマンションになるのか興味があったので、取材を申し込んだ。正直に言えば「たいしたことはないだろう」と高をくくっていた。
しかし、モデルルームを見学してそのレベルの高さに驚いた。浦和駅圏のマンションはここ数年で6~7物件は見ているが、設備仕様は間違いなくトップクラスだ。例えばキッチン。寸法は幅2550ミリ×奥行き1000ミリ×高さ850ミリだが、袖壁も御影石仕上げ。
プランもいい。グロスを抑えるために全体的に専有面積を圧縮しているが、間口を約7.85~8.30m取り、廊下はメーターモジュールとする一方で極力少なくしている。ホールは折り上げ天井。居室ドアは引き戸。奥行き2メートルのオープンエアデッキは照明、スロップシンク付き。
さて、肝心の価格はどうか。記者は2年前、このマンションと目と鼻の先で分譲され、瞬く間に売れた大成有楽不動産「オーベル浦和レジデンス」を見学している。坪単価は230万円だった。価格を抑えすぎと当時でも思ったほど割安感があった。
今回の物件は、それより高くなるのは間違いなく、記者は275万円とはじいたが、ひょっとしたらもっと高くなるかもしれない。
もう少し駅寄り、駅から徒歩8分には野村不動産の「プラウド浦和高砂マークス」(108戸、非分譲13戸含む)がある。こちらは果たしていくらになるか。坪単価300万円はないと思うがどうだろう。
エントランス
大和地所レジ マンション新ブランド「ヴェレーナグラン」 「鎌倉」と「浦和仲町」で
「ヴェレーナグラン鎌倉大船 瑞景」完成予想図
大和地所レジデンスは12月20日、マンションの新ブランド「ヴェレーナグラン」を立ち上げ、その第一弾の「ヴェレーナグラン鎌倉大船 瑞景」と「ヴェレーナグラン浦和仲町」のモデルルームをオープンしたと発表した。
「ヴェレーナグラン」は、GRAND =「偉大なる」の意味を込め、外観、空間、マテリアル、仕様の細部にこだわり、住まいとしての価値を求めたシリーズ。
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「ヴェレーナグラン浦和仲町」を明日(22日)取材するので、詳細は23日以降に紹介する。
三井不レジ コンパクト「白金高輪」「渋谷西原」 投資需要も取り込み絶好調
「パークリュクス渋谷西原」完成予想図
三井不動産レジデンシャルが分譲中のコンパクトマンション「パークリュクス白金高輪」と「パークリュクス渋谷西原」のモデルルームを見学した。ともに売れ行き好調。実需がメインの分譲仕様で、投資家需要も吸収しているのが人気の秘密だ。
「白金高輪」は、〝パークリュクス〟シリーズ最大規模。東京メトロ南北線・都営三田線白金高輪駅から徒歩5分、港区三田5丁目に位置する19階建て全160戸(事業協力者住戸8戸含む)の規模。専有面積は23.56~56.53㎡、現在分譲中の住戸2戸の価格は4,068万円(25.50㎡)と8,388万円(56.53㎡)。全体の坪単価は450万円。竣工予定は平成29年3月下旬。施工は五洋建設。
ゴールデンウィークに契約を開始し、現在残りは3戸。23㎡、25㎡、26㎡の1Kタイプが100戸超で全体の約7割を占める。1Kの購入者は約6割が投資需要で、全体としては実需と投資が半々。
「渋谷西原」は、京王新線幡ヶ谷駅から徒歩1分、渋谷区西原1丁目に位置する7階建て全69戸。専有面積は28.41~67.86㎡、現在分譲中の3戸の価格は3,598万円(28.41㎡)・5,698万円(43.30㎡)・7,098万円(55.63㎡)。全体の坪単価は400万円。竣工予定は平成29年6月下旬。施工は京王建設。事業主は同社のほか大栄不動産。
今秋から分譲開始されており、約8割が契約済み。45戸が28~32㎡の1DKタイプで、こちらは投資需要も呼び込んでいるという。
「パークリュクス白金高輪」完成予想図
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「渋谷西原」の立地は駅には近いが、一等地ではない。噂では〝売れている〟と聞いていたが、単価が単価だから完売まではかなり時間がかかるのではないかと見ていた。好調な売れ行きにびっくりした。
なぜ、こんなに売れるのか。まずプランがいい。添付したGタイプ(36㎡)を見ていただきたい。この住戸は2階と3階のみで、開口部は南東と南西の2カ所。前建もあるので日照は分からないが採光・通風には問題ない。廊下スペースはないが、トイレは別で浴室は1216。リビングダイニングは床暖房付で11畳大確保されており、洋室は5畳大。
もう一つ、モデルルームタイプ(28㎡)は、北向きだがここも洋室は4.3畳大確保されており、ダイニングとつなぐドアは採光が取れるようにガラリ付き。5畳大のダイニングの壁は大型のフレキシブルクローゼットが標準装備。洗濯機置き場にはカウンターが付いている。洗面ボウルはおしゃれなスクエア陶器製で、水栓はグローエ。
このほか、2DKタイプ以上は食洗機、床暖房が標準装備。キッチン天板はラフィネストーンとあるので、フィオレストーンと同じような製品か。
「パークリュクス渋谷西原」の36㎡のGタイプ(この住戸は未分譲)
「白金高輪」は、上層階では坪単価は600万円近いというが、全体では450万円という単価の安さにまたびっくり。設備仕様は「渋谷西原」とほぼ同様。35㎡以上は床暖房付。
同社都市開発三部事業室目黒サロン副所長・田中勇祐氏によると、「コンパクトはここ3~4年、供給が少なかったが、『銀座』をきっかけに用地取得も順調に進んでおり、これから供給を増やす。単価が上昇してくると、投資家向けは利回りが低くなるのでどうなるか。そうなると、利回りが確保できるレベルの高い中古に向かうかもしれない」と話していた。
全体的には同社の〝パークホームズ〟仕様だと思う。これまでの〝パークリュクス〟シリーズはほとんどが二重床だ。
「銀座」については昨年取材し記事にもしているので、そちらを参照していただきたい。隣接地で予定されていたマンションは1棟で投資家に売却したという。
コンパクトマンション市場は、三菱地所レジデンスが参入するなど大手中小が入り乱れて販売合戦が激化している。都心の3区では坪単価はほとんど400万円を突破しつつある。
各社は実需向けには設備仕様レベルを落とし、専有面積を圧縮してグロスを抑えようとしている。他方、そうすることで利回り重視の投資需要も取り込もうと必死だ。しかし、過度の専有圧縮、ダウングレードはエンドユーザーの支持が得られなくなる。〝お客さん〟とは投資家かエンドユーザーか、悩ましい選択が迫られている。
「パークリュクス白金高輪」モデルルーム
バブルだ!中古が新築を上回る 三井レジ「パークリュクス銀座mono」(2015/2/23)
三井不動産レジデンシャル「パークリュクス本郷」納得の価格・商品企画(2008/6/20)
三菱地所レジデンス 資産形成用コンパクトマンション「ザ・パークワンズ」分譲へ
「ザ・パークワンズ千代田佐久間町」(左)と「ザ・パークワンズ品川戸越」完成予想図
三菱地所レジデンスは12月15日、資産形成用コンパクトマンション事業のブランド名を「ザ・パークワンズ」に決定し、本格展開を開始すると発表。千代田区丸の内に開設した常設販売ギャラリー「ザ・パークワンズ丸の内サロン」を報道陣に公開した。
同事業は、東京都への人口流入、単身世帯の増加、低金利の社会情勢を背景とした多様なニーズに応えるため、マンションへの投資・運用によるストック資金の有益活用や自己居住・セカンドハウス需要を取り込むのが狙い。
分譲マンション「ザ・パークハウス」や、賃貸マンション「パーク・ハビオ」シリーズで培ってきた入居者視線のノウハウを注ぎ込む。〝エリア№1の品質の賃貸レジデンス〟を目指す。
事業参入に伴い、物件情報の提供や優先販売を行う会員組織「ザ・パークワンズクラブ」を立ち上げ、今年6月に会員募集を開始しており、これまで約1,300名の会員登録がある。
第一弾の「ザ・パークワンズ千代田佐久間町」「ザ・パークワンズ品川戸越」の一般集客を2017年1月より開始する。エントランス部分に自然石を配するほか、内廊下方式を採用。全室にエアコン、複層ガラス、ピクチャーレールなどを標準装備し、一般的な賃貸仕様よりワンランク高い仕様とする。
今後は渋谷、港区などで供給するほか、都内近郊で年間200~300戸程度の供給を予定している。
「千代田佐久間町」は、東京メトロ日比谷線秋葉原駅から徒歩5分、千代田区神田佐久間町四丁目に位置する11階建て全27戸(事業協力者住戸7戸含む)。専有面積は25.10~50.22㎡。価格は未定だが、中心は25㎡より広いタイプで3,000万円台の半ばになる模様。施工は三菱地所ホーム。竣工予定は2017年12月中旬。
「品川戸越」は、都営地下鉄浅草線戸越駅から徒歩6分、東京急行電鉄池上線戸越銀座駅から徒歩6分、品川区平塚二丁目に位置する13階建て全84戸(事業協力者住戸17戸含む)。専有面積は25.01~40.77㎡、予定価格は25㎡で2,700万円台から。施工は木内建設。竣工予定は2017年9月上旬。
「ザ・パークワンズ」 丸の内サロン」エントランス(左)と商談ルーム
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ニュースリリースのトップに「資産形成コンパクトマンション」とあるように、どちらかといえば自己居住・セカンドハウス向けというよりは、賃貸投資向けに軸足を置いた事業だ。約1,300名の会員のうち約7割の人が投資向けを考えていることでもそのことがうかがえる。このため専有面積は25㎡台が中心で、設備仕様レベルも分譲よりは劣る。
ずっと単身者やDINKS向けのコンパクトマンションを取材してきた記者にとってやはり物足りないプランだった。単身者やDINKSの〝自ら居住〟のニーズに応えるのは「ザ・パークハウス」かもしれないが、「ザ・パークワンズ」も立地、環境などによっては分譲仕様としてもいいのではないか。自ら手を縛ることはないはずだ。
第一弾の価格はリーズナブルなものだと思う。「千代田佐久間町」も「品川戸越」も坪単価は400万円を超えないと見た。分譲仕様でも坪400万円を突破してくるようだと厳しいエリアだ。
参考までに。報道陣から「御社初のコンパクトか」という質問が飛んだが、添付したように旧藤和不動産は2008年に京浜急行本線戸部駅から徒歩3分で全199戸のコンパクトマンション「BELISTA横浜」を分譲している。これは自ら居住が主なターゲットだった。
モデルルーム キッチン
旭化成不動産レジデンス 品川区中延で密集法に基づくマンション195戸建設へ
「中延二丁目旧同潤会地区防災街区整備事業」完成予想図
旭化成不動産レジデンスは12月12日、関東大震災の復興住宅が数多く残る老朽木造住宅密集地域の「中延二丁目旧同潤会地区防災街区整備事業」の権利変換計画の認可を取得したと発表した。
首都圏不燃建築公社とともに中延二丁目旧同潤会地区防災街区整備事業組合の参加組合員として事業参画するもので、同地区は13階建て195戸のマンションに生まれ変わる。
該当地区は、関東大震災後の復興のために同潤会が建設した木造低層住宅地のうち戦争で焼け残った場所を含む老朽木造住宅密集地域で、入り組んだ路地に面する老朽家屋が多数存在するなど、現状では個別の建て替えが困難となっており、震災時の家屋倒壊や延焼火災などの恐れがあるため早急な不燃化対策が求められていた。
その一方で、該当地区が容積率200%の第一種住居地域に位置し、容積率・高さ規制などの制約が厳しいことに加え、関係権利者数140名に及ぶ規模であることなどから事業化が困難とされてきた。
しかし、同地区が東京都の「木密地域不燃化10年プロジェクト」の不燃化特区の1つ「東中延一・二丁目、中延二・三丁目地区」の中にあり、不燃化特区のコア事業の1つに位置付けられており、防災街区整備事業として進められたことなどから、都市計画決定から約1年半の短い期間で権利変換計画を受けることができた。都内の防災街区整備事業(密集法による法定事業)として6件目の権利変換計画認可となる。
再開発後のマンションは、歩道状の空地を確保するとともに、北側に隣接する小学校側に避難広場や集会施設などを設ける。
建物は13階建て全195戸。施設計画コンサルタントは日建ハウジングシステム。竣工予定は2019年3月。
住友不動産 中央区晴海の「ドゥ・トゥール キャナル&スパ」SOHO分譲開始
「ドゥ・トゥール キャナル&スパ」
住友不動産は12月9日、中央区晴海の超高層免震ツインタワーマンション「ドゥ・トゥール キャナル&スパ」(52階建て、住宅1,450戸、SOHO216戸)のSOHOの契約を開始したと発表した。
物件は、都営大江戸線勝どき駅から徒歩9分、中央区晴海三丁目に位置する52階建て2棟全1,450戸(住宅)とSOHO216区画。SOHOの専有面積は32.34~57.05㎡、最多価格帯は6,000万円台。建物は竣工済み。
第一期(25戸)は、EAST棟50~52階部分。サウナ付きスパやビューラウンジ&バーなどの施設が利用できる。
購入者の属性・動機は、①ドゥ・トゥールの住宅を保有しており、自宅とは別に株式投資の部屋(トレードルーム)として購入②地方在住の医療法人代表者が東京の拠点として購入③地方在住の弁護士が東京進出の拠点として購入④不動産鑑定士が住居を兼ねた事務所として購入⑤不動産を多数保有する人が投資と実用の両方の観点で購入-など。
来場者260組の属性は、中央区居住者29%を筆頭に23区内が69%、年齢は40歳代が44%、50歳代が25%、30歳代が18%、職業は経営者が43%、会社員が31%、会社役員が8%など。
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2020東京オリンピック開催が決まった2013年9月8日から2か月後の11月、同社がこのマンションを分譲すると発表した時点で、SOHOを盛り込むのは大正解だと思った。間違いなくSOHO需要はあると読んだ。
ニュースリリースではいま一つ分譲単価は分からないが、どうやら450万円くらいのようだ。単純比較は難しいが、最近の都心部のコンパクトマンションの分譲単価は軒並み400万円を突破してきている。売れ行きも堅調に推移している。銀座当たりの中古マンションの相場も450万円くらいではないか。リリースには「飲食店舗や不特定多数の人が出入りする業種などに制限があります」とある。
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住友不動産 晴海のツインタワー「ドゥ・トゥール」来春分譲へ(2013/11/22)
理解できない超高層マンションの価値割合による課税変更
政府与党による平成29年度の税制改正大綱がまとまった。マンションの固定資産税、都市計画税、不動産取得税はこれまで取得する階数に関係なく専有面積割合で課税されていたのを、高さ60m以上の超高層マンションについては階数が高くなるほど課税額を増や「価値割合」を盛り込むことが決まった。税制大綱の具体的な内容に沿って記者の考えを紹介する。
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高さを60m超としたことについて。この数値については合理的な理由はそれほどない。建築基準法では高さが60m以上の建物については構造計算上、政令による技術基準を満たすことが求められており、これに準じたものと思われる。1層を約3~3.2mとした場合、階数は18~20階建てとなる。
「価値割合」手法を採用するのであれば、超高層だけでなく低層、中層にも適用してもよかったのではないか。
その「価値割合」による専有部の評価額だが、各住戸の価格は階数だけで決まるものではない。一般的に階数が高くなるほど高く設定はされるが、過去の事例では、低・中層マンションでも1層当たり坪単価で数百万円の差があったものもあるし、その逆に武蔵小杉の超高層では階数によってほとんど差異がなかった事例もある。
なぜか。マンションの価格形成の大きな要因は眺望・日照・通風であり、その時々の市況も大きく影響する。低層マンションでも階数が異なれば眺望・日照条件が激変するケースは多く、その逆に、前面に高い建物が建てられないエリアでは眺望が担保されていることから、階層によって価格差を設ける意味がなくなるからだと思われる。
なので、今回のように「1階を100とし、階が一を増すごとに10を39で除した数を加えた」補正率は合理的な説得力を欠くと記者は考える。1層の補正率が10/39=0.26%という数値の理由も全然わからない。富裕層にとって20階建てで5%、40階建てで10%の増税など痛くもかゆくもないのではないか。そうでない層は税金が安い低層階を選好するようになり、上層階が売れないと困るデベロッパーは上層階の価格を下げる逆転現象が起きることはないのか。
もう一つ、価格を形成する大きな要因は専有部の広さであり、設備仕様、デザインなどだ。これを固定資産税評価額に反映させるのは至難の業だと思う。免震や制振構造をどう強化するのかも注目したい。
例えば天井高。具体的な事例を示すと、三井不動産レジデンシャルが2011年に分譲した「パークコート六本木ヒルトップ」では、標準階のリビング天井高は3,400~3,450ミリあり、廊下、キッチンでも2,350ミリ確保されていた。
一般的なマンションのリビング天井高は約2,500ミリであり、廊下、キッチンなどは約2,200ミリだ。この差を評価額に換算すれはいくらになるのか。記者は分からないが、とてつもなく高い評価点になるのではないか。
それでも当時の分譲坪単価は500万円だった。今なら坪800万円以上だろう。価格を形成する要因は、地価や建築費もあるが、その時の市況が大きく左右するという典型的な事例だ。
また、超高層のベントハウスなどの価格は通常階の単価の2~3倍するものが少なくないが、これは前述した眺望の価値に加え、虚栄心を満たす豪華な設備機器を設置し〝唯一無二〟の〝非日常〟を演出する企画を盛り込むからだ。デベロッパーの企画担当者はこの商品企画に力を注ぐ。
せっかく「価値割合」を採用するのなら、このデベロッパーの苦労もきちんと評価すべきだ。
これは失礼だが、固定資産評価額をはじき出す担当者は広さ、設備機器を定量的に測ることはできるかもしれないが、トータルなデザインを評価する目利き力は兼ね備えていないのではないか。
と、ここまで書いて大きな疑問が出てきた。いったい建物の評価は何を基準にするのかという問題だ。先に上げた「パークコート六本木ヒルトップ」は突出したレベルにあると思うが、仮にこのマンションの「質」を100とすれば、今売られている億ションのレベルはせいぜい70しかないと思う。全体の建物評価の整合性はどのようにして担保するのだろうか。
税制大綱では、「区分所有者全員による申出があった場合には、当該申し出た割合により当該居住用超高層建築物に係る固定資産税額をあん分することも可能とする」とあるが、多数決ではなく区分所有者全員というのはかなりハードルが高い。
個人的には、「価値割合」も結構だが、街の景観に配慮した総合設計制度の適用を受けた物件とかCASBEEで高い評価を得た物件などは固定資産税、都市計画税の思い切った減免措置を取るべきだとス考えている。さらに言えば、戸建ても含めて良質な住宅が市場できちんと評価される仕組みを構築してほしい。
モリモトの億ション「ディアナガーデン自由が丘」 モデルなし 会員だけで残り3/14戸
「ディアナガーデン自由が丘」完成予想図
モリモトの自由が丘駅圏の億ション「ディアナガーデン自由が丘」が会員優先分譲だけで、しかもモデルルームなしで全14戸のうち11戸が成約となった。
物件は、東急東横線・東急大井町線自由が丘駅から徒歩6分、目黒区自由が丘2丁目の第一種低層住居専用地域(建蔽率60%、容積率150%)に位置する地下1階地上3階建て全14戸。
全14戸のうち11戸は9月から開始した会員優先で分譲済みとなっており、残りは3戸の第一期(戸数未定)の専有面積は107.15~213.04㎡、価格は未定だが坪単価は550万円。販売予定は平成29年1月中旬。竣工予定は平成29年2月中旬。設計・監理はナチュラル設計企画。デザイン監修はアーキサイトメビウス。施工は東亜建設工業。
〝ディアナガーデン〟は同社の最高級ブランドで、バブル崩壊後の1996年(平成8年)竣工の第1弾「ディアナガーデン麻布」(29戸)、1997年(同9年)竣工の第2弾「ディアナガーデン恵比寿」(73戸)から2006年(同18年)竣工の「ディアナガーデン広尾」(108戸)まで5棟が供給されており、今回が6棟目。
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同社に見学をお願いしたら、「モデルルームはありません。9月から会員の中から約100人の方にお勧めしており、これまで11戸が成約済み」という答えが返ってきた。
だから、現地ももちろん観ていない。物件ホームページの今井敦氏の考えを紹介するほかない。
「『DIANA GARDEN』として、これからの邸宅の姿を指し示す提案性をもたすこと。緻密な設計、重厚な造形、素材のディテールなど、邸宅を形成するすべてにこだわりを尽くし、風格を放ちながらも、次代の邸宅像を予感させるモダンさとシャープさを持つ建築美を実現する」とある。
そしてインテリアデザインが南部昌亮氏だ。坪単価550万円は決して安くはないが、最強のコンビが揃って自由が丘の〝ディアナガーデン〟ならさもありなんと思ってしまう。
〝ディアナガーデン〟の第2弾「恵比寿」は、バブル崩壊の影響から中堅デベロッパーがばたばたと倒れる一方で、同社はいち早く〝デザイナーズマンション〟に特化して急回復-というよりバブル崩壊前の同社は数多くある中堅の1社にしか過ぎなかったのだが-しているころで、坪単価は400万円しなかったのではないか。森本浩義社長が自画自賛したのを覚えている。その3年前に竣工した「恵比寿ガーデンプレイス」は坪単価700万円だったが、設備仕様はそれほどでもなかった。
以下は今井氏の最近の作品の一つ
伊藤忠都市開発 「クレヴィア御茶ノ水」販売開始 好調スタート
、「クレヴィア御茶ノ水」完成予想図
伊藤忠都市開発は12月3日、「クレヴィア御茶ノ水」の第1期販売を開始した。第1期1次23戸、第1期2次2戸はともに登録完売し、好調なスタートを切った。
物件は、東京メトロ丸ノ内線御茶ノ水駅から徒歩7分、文京区湯島二丁目に位置する13階建て全53戸(事業協力者住戸4戸含む)。専有面積は36.41~72.56㎡、坪単価は400万円を切る模様。設計・監理はIAO竹田設計、デザイン監修はインテンショナリーズ。施工は南海辰村建設。竣工予定は平成30年2月下旬。
渋谷ヒカリエ「Sky Lobby」のフロアデザインを手がけた「インテンショナリーズ」による設計デザイン監修で、角住戸率約86%、内廊下設計などが特徴。
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所在地が千代田区ではなくて文京区湯島だったので、坪単価は400万円を突破するようだと完売まで時間がかかると思ったが、そこまでいかないようだ。第1期25戸が完売したのも納得だ。千代田区内では軒並み400万円を突破してきており、30坪でほぼ億ションとなる。