三菱地所レジ「ザ・パークハウス晴海」 モデルルーム分譲3戸に申し込み24件
「ザ・パークハウス晴海タワーズクロノレジデンス」
三菱地所レジデンスと鹿島建設は3月10日、「ザ・パークハウス晴海タワーズクロノレジデンス」で建物内モデルルームとして使用していた3戸が3月8日に抽選分譲した結果、最高倍率14倍、平均倍率8倍で即日完売したと発表した。3戸の価格は6,688万~7,998万円。専有面積は74.39~81.61㎡。
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モデルルームは先日行なわれた記者見学会でも公開された。抽選になるとは思ったが、3戸に対して申し込みが24件。2020年のオリンピック開催が決まったとはいえ、この倍率はすごい。同社は引き続いて分譲する隣接の「ティアロレジデンス」の単価については公表していないが、この調子だと坪300万円近くになるかもしれない。
記者は、このマンションが分譲する前は坪単価320万円とはじき出した。それぐらい価値のあるマンションだと当時は思った(戸数が多いので300万円前後だろうとは予想したが)し、先日、完成した建物を見学してその評価は間違っていないと思う。約50平方メートルある高級ホテル並み仕様のゲストルームの宿泊費(リネン代)が3,500円というのも破格の値段だ。
今回の即日完売にほくそ笑んでいるのは住友不動産かもしれない。「ドゥ・トゥール」は320万円くらいになるか。三菱地所レジデンスの隣接地でタワーマンションを分譲する三井不動産レジデンシャルはどういう戦略に出るか。豊洲の「ららポート」と結ぶ渡し舟は中央区や江東区、地域住民の後押しがあればひょっとしたら実現するか。都は反対する理由がない。
「エコボイド」「ソラテラス」が圧巻 三井不動産レジ「パークタワー東雲」完成
「パークタワー東雲」完成予想図
三井不動産レジデンシャルは3月7日、江東区東雲の大規模タワーマンション「パークタワー東雲」が竣工したのに伴い、報道陣向けに竣工見学会を行った。タワーマンションではほとんど前例がないと思われる躯体に「エコボイド」「ソラテラス」を設置し、上昇気流によって心地よい空気の流れを生み出す工夫を施した物件で、その良さを目の当たりにした。
詳細は、別掲の記事を参照していただきたいが、震災後の逆風をもろともせず早期完売したマンションだ。第1期の販売開始は2012年9月。それから第4期の2013年10月までわずか1年2か月で全585戸を完売した。価格は2,978万~6,960万円(最多価格帯4,500万円)、坪単価は224万円。
東雲エリアでは、第一弾の三菱地所レジデンス「Wコンフォート」が超割安単価だったことも手伝って記録的な売れ行きを見せたが、その他の物件は完成後も残っていたのではないか。近接するマンションなどは完成後1年以上経過しているが完売になっていない。「豊洲」より単価は安いが、生活利便施設やアクセスの差が売れ行きに出ている。
このマンションも、先行する野村不動産の後で、震災による逆風も吹き荒れていたときに分譲開始された。普通だったら苦戦はまぬかれないところだが、商品企画が図抜けていた。「エコボイド」「ソラテラス」は業界の常識を破るものだった。隣接する「キャナルコート」には山本理顕氏、隈研吾氏、伊東豊雄氏など錚々たるメンバーが企画に参画した「ボイド」付きの賃貸があるが、タワーマンションでは初の試みだろうと思う。
実際にこの「エコボイド」も「ソラテラス」も体験したが、キャッチボール、バスケットボール、駆けっこ、体操、ドッグレース(ラン)が建物内のオープンスペースでできるなんて信じられない。(管理規約でスポーツは禁止されるようだが)
免震工法を採用したのは最初からそのようにしていたもので、震災によって変更したのではない。長期優良住宅認定、都の「マンション環境性能評価」制度で満点の星15個も獲得しており、最高レベルのマンションを体験した。1階の茶室は、女性記者から「ここに和服を着て入る勇気がない」という声も聞かれた。なるほど衆人〝監視〟ではそうかもしれない。ただ、同社はなかなか考えている。ボイドに面した廊下手すりの高さは一般的な1110ミリではなく、1350ミリにして眺めるときの恐怖感を軽減しているという。つまり、上からは誰が茶室に入ったかは、背の高い人しか見えないということだ。
もう一つ、なるほどと思ったのはボイドに面した壁面はセラミックコーティングを施しており、反射によって下層階も明るくなる工夫を行っている。
茶室
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取材の帰り際に「シガーバー(喫煙所)」が1階エントランス部分にあることに気が付き利用した。大規模だから設置したのだろうが、喫煙者にはうれしいスペースだ。関係者にそのことを話したら、このシガーバーの設置を提案したのは、見学会で商品企画について説明した同社都市開発部開発室・永田愛理氏だった。
記者は女性だから男性だからと差別する気は全然ないが(知らず知らずのうちに色眼鏡で見ているのだろうが)、おそらく同社も男性優位の社会が形成されているはずだ。嫌煙ムードが蔓延・充満する中で、永田氏が堂々と提案できるのは、いかに顧客満足に応えるかを最優先しているからだろうと思った。本来、商品企画に女も男もない。家事労働について疎い男性に問題があるのだ。
永田氏としばし歓談して気分よく帰ったが、そのあとの積水ハウスの決算発表会で今年2月に設置されたばかりの「ダイバーシティ推進室」室長・伊藤みどり氏とも話ができた。とてもハイな気分になった。
ソラプラザヘルス(左)とソラプラザギャラリー
ソラプラザヒーリング(左)とソラプラザビュー
東急不動産 省CO2推進プロジェクト第一弾「ブランズシティ品川勝島」
「ブランズシティ品川勝島」完成予想図
東急不動産は3月7日、国土交通省「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択された「東急グループで取り組む省CO2推進プロジェクト」第一号マンション「ブランズシティ品川勝島」のモデルルームを3月下旬にオープンすると発表した。同日、記者発表会を行った。
物件は、京浜急行本線鮫洲駅から徒歩11分、品川区勝島一丁目に位置する18階建て前356戸(分譲は335戸)。専有面積は71.01~90.23㎡、予定価格は4,400万円台~6,900万円台(最多価格帯5,200万円台)、坪単価は230万円。設計は日建ハウジングシステム。施工は大豊建設。竣工予定は2015年7月下旬。
世界初のマンション向けエネファームを導入するほか、エネルギー、モビリティ、勝島の森、パッシブデザイン、防災、コミュニティの6つを“シェア”することで、省エネ・省CO2の暮らしを実現する「BRANZ SHARE DESIGN」をコンセプトとして採用しているのが特徴。東京都の「マンション環境性能評価」では満点の星15個に1つ欠ける14個を獲得している。
発表会に臨んだ同社広報・CSR推進部長・熊沢基好氏は、「昨年からリブランディングに取り組んでおり、当社のマンションブランド〝ブランズ〟の認知度は高まってきた。今回の物件は、住環境を創造し、トータルで生活をシェアする提案を盛り込んだフラッグシップ物件として位置づけている。CSR活動としても先進的な取り組みができた」と挨拶した。
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単価については、先ごろ行なわれた同社ループの記者懇親会で、担当役員の大滝岩男常務に「230万円ぐらいでしょ」と話したら常務は「いい線だね」と答えた。東京競馬場へは歩いて行ける。競馬場は嫌悪施設では全然ない。厩舎の匂いは風向きもあるだろうが、ここまでくれば匂わないのではないか。
省CO2の取り組みでは、居住者の使用エネルギーやライフスタイルなどの情報を東急住生活研究所と東京都市大学が産学共同で分析・検証し、今後の商品企画などに生かしていく。また、省CO2行動を促進するため東急ストアの買い物優待を行なうほか、国が運営する排出権取引スキーム「J-クレジット」に登録・売却することで年間100万円の収入を見込む。
シェアガーデン
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意欲的な取り組みは理解できるが、記者は「世界初のマンション向けエネファームを全戸に導入」と前面に謳っているのはいかがなものかと正直思う。
今回のエネファームは東京ガスとパナソニックが共同開発したものだが、他のガス会社やメーカーも戸建て向けに取り組んでいる。「世界初」というのはあくまでも「マンション向け」であり、総合地所も同じタイプのものを採用するので。正確には「同時世界初」ではないか。また、この種の機器は日進月歩のはずで、同業他社がもっと優れたものを開発すれば「世界初」の価値は薄れていく。1基200万円とコストもかかるし、約2㎡のスペースを小さくするのも課題だ。
「世界初」を強調すればするほど、他の取り組みの良さ、訴求力が薄れてくるような気がしてならない。
エネファーム
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もう一つ。細かなことだが、モデルルーム提案について。いまマンション業界は、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、住友不動産、野村不動産の4強がトップ争いを演じている。
記者は判官贔屓だから、この4強のうちどこが抜け出すか脱落するかを注目している。各社とも必至だろう。競えあえばあうほど商品企画はよくなるだろうから、ユーザーにとっては歓迎すべきことだ。一方で、2番手グループの同社や東京建物、大京、新日鉄興和不動産、NTT都市開発などには頑張ってほしい。戸数では勝てなくていい。供給量など何の価値もない。それよりも商品企画であり、それぞれ特徴を打ち出すべきだ。
なぜ、今回のモデルルームの提案を持ち出したかというと、造花の壁掛けが設置されていたのだが、どうして本物の観葉植物にしなかったかだ。同社はどこよりも早く壁面緑化提案(本郷、川口など)を行なっている。同社の本社の玄関や受付などには同社とグループ会社の石勝エクステリアが共同開発した素晴らしい壁面緑化のアートが掲げられている。前日(6日)の三井不動産レジデンシャルの「武蔵小杉」の各エレベータホールには「ミドリエ」が掛かっていた。ユーザーはこうした何でもないようなことに感動するのだ。
さらに言えば環境・ユニバーサルデザインの取り組みだ。記者は、同社こそがもっとも早く環境共生やユニバーサルデザインに取り組んできたデベロッパーだと思う。パッシブの取り組みでも他を圧していた。熊沢氏も言った。「当社にはそのDNAが受け継がれている」と。「世界初のエネファーム」より、こちらのほうがはるかに価値がある。ランドスケープデザインは石勝ではないのか。リリースには載っていないが、建物の設計は日建ハウジングシステムだ。
販売事務所に設けられたシェアガーデン(本物の草木は無理だろうが、もっと工夫できたはず)
三井不動産レジデンシャル 「パークシティ武蔵小杉」3棟目が完成
「パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー」
三井不動産レジデンシャルは3月6日、東急東横線・目黒線「武蔵小杉」駅前の商住一体開発のマンション「パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー」(506戸)が竣工したのに伴い記者見学会を行なった。
このマンションの特徴は、第一に「武蔵野の森の再生」をテーマに、完成済みの2つのタワーマンションとデザインを統一。既存樹を残したり新たに植樹するなどして緑のネットワークを整備した。第二は、駅前の広場と商業施設の一体開発により、屋根付きの専用デッキで駅と直結したこと。商業施設には「ららテラス武蔵小杉」が近くオープンする。第三は、東日本大震災の教訓から、2013年度グッドデザイン賞を受賞した防災プログラムを盛り込んでいること。
見学会に臨んだ同社横浜支店副支店長・各務徹氏は、「3つの特徴のうち防災にはもっとも力を入れた。このエリアには5,000戸を超えるマンションが完成したが、人気エリアの象徴的な存在のマンション」と自負した。
マンションは506戸が販売開始の2012年4月から20133月までの1年間に完売。価格は3,300万円~1億280万円(専有面積39.77~112.46㎡)、坪単価291万円。
左から2008年竣工の「ステーションフォレストタワー」(643戸、単価238万円)、2009年竣工の「ミッドスカイタワー」(794戸、単価260万円)、2014年竣工の「ザ グランドウイングタワー」(506戸、単価291万円)
左は2層吹き抜けのエントランスホール(壁は堀木エリ子氏の手すき和紙アート)、右は5階スカイゲートブリッジ
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このマンションについては2度見学会が行われており、その都度記事にしているが、完成した物件を見学して改めてレベルの高いマンションであることを認識した。防災システムはとくに素晴らしかった。防災システムの構築に参画したNPO法人プラス・アーツ理事長・永田宏和が「画期的」と話したように、今後のタワーマンションのモデルになるのではないか。
非常時には72時間使用可能の非常用発電機を設置しているほか、1世帯当たり1,000リットルの水を確保。各フロアには防災備蓄倉庫や災害時非常水栓も設置している。トイレ対策としては約3日間、自宅のトイレで使用できる汚水槽を備えている。
記者が注目したのはトイレ対策だ。震災時にはトイレが使用できないのは深刻な問題になるのは新浦安で経験した。男性は庭先や空き地に用を足すこともできるが、若い女性などはなかなかできないそうで、寒くて暗い中、液状化でガタガタになっている道を10分以上も駅まで歩いたという話を何人にも聞いた。
このマンションには、水の要らない「ラップポン」が各フロアに設置されている。ボタンを押すと排泄物がビニール袋に完全に密封されるもので、そのままゴミとして捨てられ、匂いがしないという。値段は約10万円。管理組合に備蓄するのに最適だと思った。
このほか、光井純氏の計算し尽くされた3つの棟のデザイン・ティアラにはただたが感心した。光井氏は少なくとも10年前には現在のデザインが描かれていたのだろう。
われわれ記者(記者だけかもしれないが)は坪単価でしかマンションの価値を計れない習性が見に染み付いている。このようなタワーマンションや大規模マンションの価値は、また別の評価方法を考えないといけない。共用施設や環境・省エネ・防災システム、コミュニティづくりなどを定量的に計算できないものだろうか。記者は分譲開始時に「ホテルなら5つ星」と見出しをつけたが、これは間違っていなかった。
屋上スカイデッキ(左)と各階 床下防災倉庫
水の要らない簡易トイレ「ラップポン」
各エレベータホールの壁に設置されている壁面緑化 サントリー「ミドリエ」(ここまでやるのはおそらく業界初)
田園都市線の最高峰マンション誕生 野村不動産「プラウド美しが丘」
「プラウド美しが丘」完成予想図
野村不動産が3月下旬に分譲する「プラウド美しが丘」を見学した。価格は現段階で未公表だが、バブル崩壊後の田園都市線沿線のマンションで最高単価になる模様だ。デザイン性に優れたマンションだ。
物件は、田園都市線たまプラーザ駅から徒歩8分、横浜市青葉区美しが丘2丁目の第一種中高層住居専用地域に位置する5階建て全69戸の規模。専有面積は75.01~101.66㎡、価格は未定だが坪単価は300万円を突破する模様。竣工予定は平成27年1月下旬。施工は東急建設。
現地は、緩やかな坂を上った高台で、周辺は中層マンションが建ち並ぶ閑静な住宅街の一角。敷地は中日本高速道路の社宅跡地。デザイン監修はプランテック総合計画事務所。
建物外観、専有部のデザインに力を入れているのが特徴。建物は3方道路の敷地を生かし、リングシャッターゲート付き地下駐車場を設置。外観正面にはプロフィリットガラスのルーバーを配置。共用廊下側には木調のルーバーを配し、外壁は細かいレイヤーを重ねることで重厚で繊細な表情に仕上げている。
専有部では、同社の「ラクモア」をフル装備。玄関・廊下は折上げ天井とし、天井部分に竹をイメージしたデザインとしている。システムキッチン、洗面所のカウンタートップは天然御影石。三面鏡はスライドできるものを採用。
企画・販売を担当する同社平野拓也氏は、「容積が150%、高さ規制が15mという厳しいエリアですが、専有面積は平均で80㎡確保したように、プランはめちゃくちゃいいものにしました。単価はまだ公表できませんが、300万円を突破する予定で、手ごたえも十分」と語った。
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平野氏が自信満々に語ったように、「美しが丘」の住所に恥じない美しいマンションだ。この20年間の田園都市線沿線で供給されたマンションの最高峰になるのは間違いない。それだけの中身のあるマンションだ。「プラウド」の真骨頂を見た。
芸が細かい。例えば共用廊下側のルーバー。等間隔にルーバーを配するのではなく、外からの目線を遮る部分は間隔を狭め、そうでない足元や上部は広めている。
玄関・廊下の折上げ天井もそうだ。玄関・ホールを折上げ天井としているものはたくさんあるが、リビングドアまで長さにして7mくらいもあった。デザイン処理も施されていた。竹をイメージした文様のクロスを採用し、ダウンライトも設けることで、廊下の床に映りこむ仕掛けも施している。このようなものは初めて見た。
モデルルームもいい。モデルルームはただ〝魅せる〟だけのものが多いが、ここでは書斎といい、姿見付きのドレッシングスペースといいそのまま採用できるものが提案されていた。
玄関・廊下の折上げ天井(左)とドレッシングスペース提案
三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」完成
「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」
三菱地所レジデンスは3月3日、中央区晴海の大規模タワーマンション「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」が竣工したのに伴い竣工見学会を報道陣向けに行なった。全883戸のうちモデルルームとして使用していた3戸を除く880戸が完売しており、これからは隣接する「ザ・パークハウス晴海タワーズ ティアロレジデンス」(861戸)を本格的に分譲する。
物件概要などについてはこれまで何回も書いてきたのでそちらを参照していただきたいが、予想していた通りレベルの高いマンションだ。
記者がもっとも注目していた世界的な建築家リチャード・マイヤー氏による外構は、まだ完成したばかりだったので完成形にはほど遠かったが、エントランス部分の池などはさすがだ。
プロの料理人の総合監修によるキッチン&パーティースタジオやキッズルーム、フィットネスルーム& ゴルフレンジ、ゲストルームなどの共用部分も充実している。約50㎡のゲストルーム(スイート)は1泊3,500円だが、「宿泊料」として徴収すると旅館業法に抵触するので、リネン料金として徴収するのだという(これまで取材してきたマンションはすべて宿泊料ではなかったか)。防災備蓄倉庫は50㎡くらいある広さで、自転車、リヤカーなども備えられていた。各フロアに防災倉庫も併設されている。
モデルルーム住戸は南向き74㎡で6,688万円(坪単価299万円)。最上階の特別仕様の81㎡が7,998万円(坪単価326万円)。全体の平均坪単価は275万円。
「ティアロレジデンス」は120戸が成約済み。今後分譲する価格については明らかにされなかった。
マンションエントランス部分の外構(左)と隣接する建設中のマンション(その奥が豊洲)
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このマンションが分譲される前、記者は坪単価は300万円をはるかに突破すると見ていたが、2016年のオリンピック招致に失敗、物件のナビゲーターに起用されたプロゴルファー石川遼選手がその直後から勝てなくなり、そして東日本大震災に見舞われたことなどが重なり、単価は結局275万円に落ち着いた。
2020年のオリンピック誘致が決まったことで人気を取り戻すのは必至だが、いったいいくらになるか。同じ晴海地区の大規模ツインタワーマンション住友不動産「ドゥ・トゥールキャナル&スパ」も現段階では価格は公表されていない。
エントランスホール
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三菱地所レジデンスのマンションの隣接地では三井不動産レジデンシャルが大規模マンションを予定しているが、こちらは詳細が決まっていない。対岸の「ららぽーと豊洲」まで直線で500mくらいだそうで、関係者からは「三井さんは橋を造るのではないか」という冗談が飛び交った。
橋はともかく、往復する船の運航はあり得ない話ではないと思う。住民はもちろん、都もそれこそ「渡りに船」ではないか。実現したらマンションの単価を大幅に引き上げる要因になる。
防災備蓄倉庫
住友不動産 晴海のツインタワー「ドゥ・トゥール」来春分譲へ(2013/11/22)
オリンピック招致決定 三菱地所レジデンス「晴海」に予約殺到(2013/9/9)
日本綜合地所「ヴェレーナ大宮大門町」全住戸8m以上のワイドスパン
「ヴェレーナ大宮大門町」完成予想図
日本綜合地所が3月に分譲開始する「ヴェレーナ大宮大門町」を見学した。大宮駅から徒歩5分と近く、スーパーマーケットチェーンの㈱マルエツとの共同事業マンションで、単価もリーズナブルだ。
現地は2017年竣工予定の「大門町2丁目中地区再開発エリア」に近接しているのが最大の特徴。再開発計画の詳細は未定だが、ショッピングモール、公共公益施設、大小のホールなどが予定されている。
最寄り駅となる大宮駅は14路線が乗り入れをするビッグターミナル。マンションが立地するエリアは大宮駅前から広がる商業地域だが、現地から先は氷川神社の参道に向けて住宅が増えていく地域。建物は14階建て、1、2階は24時間営業を予定しているマルエツとなり、住居部分は3階以上の全48戸(非分譲4戸含む)。全住戸が間口8m以上のワイドスパンとなる。
物件は、さいたま市大宮区大門町三丁目に位置し、専有面積は65.00~70.15㎡、第1期の価格は3,990万円台からで坪単価は220万円前後になる模様。竣工予定は2015年1月下旬。施工は風越建設。
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同社の「ヴェレーナシティ千葉ニュータウン中央」を見学したとき、この物件のおおよその概要を聞いて坪単価220万円を予想した。
大宮駅から徒歩5分、中規模物件、商業地域の住環境、このエリアでの同社の知名度などを総合的に判断して予想したが、モデルルーム、現地周辺を見て坪単価250万でもいいのではと思うほど割安感があると思った。
大宮駅東口は駅前から商店街が広がっていて駅から徒歩5分圏内のマンションは希少性がある。
敷地形状は南北軸に長く配棟は東向きとなっていて、中層階以上からは氷川神社の参道も眺められる。商業地域の立地だが、住宅地エリアに向いていることもあり日照も確保されている。専有面積は最大でも約70㎡だが、全住戸8m以上のワイドスパンで廊下面積を圧縮し居住性を高めているのも評価できる。
大宮区を中心に告知を行っているようだが、竣工は1年先であり、現在は同エリアでの競合物件も少なく早期の完売が期待できる。
モデルルーム
「ティアラ」にふさわしい外観デザイン 住友不動産「スカイティアラ」
「スカイティアラ」完成予想図
住友不動産は2月27日、記者見学会を行い、板橋区・志村坂上の大規模マンション「スカイティアラ」のモデルルームを3月1日にオープンすると発表した。ガラスをふんだんに採用し、白と黒のデザインが美しいマンションだ。
物件は、都営三田線志村坂上駅から徒歩8分、板橋区小豆沢一丁目な位置する敷地面積約16,000㎡の19階建てウエスト棟(456戸)と13階建てイースト棟(165戸)合わせ全621戸の規模。専有面積は57.20~88.40㎡(平均74㎡)、価格は未定だが坪単価は230万円の予定。完成予定は平成27年4月中旬。設計・施工は大林組。敷地はアステラス製薬の工場跡地。
総合設計制度の適用を受け、広大な敷地内に提供公園を含めた4つの公園を配し、約1,000本の樹木を植樹。
外観はモノトーンのタイルとガラス手すりのバルコニー、ガラスカーテンウォールで構成。黒や白のマリオン、サッシ枠を巧みに取り入れることでデザイン意匠に工夫を凝らしているのも大きな特徴。最上階は「ティアラ」にふさわしくガラス貼りとしている。
共用廊下には同社独自のメーターや室外機を外廊下側に設けたシャフトに格納する「S-マルチコア」を採用。天井高は標準階で2,550ミリ。好みの間取りやインテリアカラーが無償で選べるカスタムオーダー対応とする。
昨年11月から告知を開始しており、これまで広域から約2,000件の問い合わせがあるという。
最上階の住戸部分
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物件名に「TIARA」を冠し、〝光景(シーン)となる象徴(シンボル)〟をうたい文句にしているように外観のデザイン意匠に力を入れている物件だ。特に北側の表情が美しい。
記者の知る限りこれまで物件名に「ティアラ」を付けたマンションは、大成有楽不動産・平和不動産「ティアラシティ」(松戸市、2000年竣工)とタカラレーベン「ティアラの丘」(八王子市、2009年竣工)がある。「ティアラ」が美しいのは何と言ってもオリックス不動産「ダ・タワーズ台場」(港区、2006年竣工)だ。
「ティアラシティ」はオードリー・ヘップバーンをイメージ・キャラクターに採用した最初のマンションで、マンションに「ティアラ」があったわけではなく、「ローマの休日」のティアラ姿が広告の前面に押し出されたものだった。外観はベージュ・アールを多用していた。
今回のマンションは今までの「ティアラ」を冠したマンションと比べてもひけはとらない。むしろ「白と黒」のデザインに記者は惚れ込んだぐらいだ。後姿がとくにいい。シアターでは、商品企画を担当した同社製品企画室シニアエンジニア・山田武仁氏が数分間にわたって物件に込めた「想い」を語っていたのが印象的だった。
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坪単価は予想していた通りだった。坪250万円を超えてくると準都心部でも販売は苦しくなる。これくらいの単価設定が楽ではないがサラリーマンに手が届く価格帯だ。
山田氏のシアターでのトーク・出演料を単価に置き換えると1万円/坪の価値はあると思うがどうだろう。ご本人は安すぎるというだろうか。山田氏は間違いなく同社の名物男だし、これ以上ない宣伝マンだ。
販売事務所に設けられている模型
施工会社が決まらなくてもマンション広告は打てるか
建築工事費の上昇、職人不足は深刻の度を増しているが、その影響はマンションの広告にも表れている。施工会社が決まらず、物件概要に「未定」とするものが散見されるようになってきた。そのような「広告」を見るにつけ、デベロッパーの苦悩が伝わってくる。
広告の開始時期の制限を定めた宅地建物取引業法第33条には、「宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第29条第1項又は第2項の許可、建築基準法第6条第1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない」とあるが、この規定には施工会社を明記しなければならないとはなっていない。
つまり、施工会社が決まらなくても広告は打てる。不動産広告の自主規制団体、不動産公正取引協議会では「好ましくはないが違反ではない。施工会社が決まっていないマンションを消費者がどう判断するか」(首都圏)「厳密に言えば違反だが、諸事情があり『予告広告』の段階では未定でも認めている。本広告の段階ではきちんと明記するよう指導している」(近畿地区)としている。
記者はマンションの施工会社も設計・監理会社も極めて重要な選択肢の一つだと思うが、やはり一番重要なのはデベロッパーの姿勢だ。施工がどこであっても、「これが当社のマンション」と自負できるようなブランドを目指すべきだ。
とはいえ、施工会社が分からない(そもそも設計会社も監理会社も管理会社も広告で表示する義務はない)マンションの購入を検討する人はどれくらいいるだろうか。施工や設計、監理、管理がどこであるかも重視されるのが本来の姿であると思う。
東建他「Brillia City横浜磯子」竣工 料理の鉄人「中村孝明 貴賓館」も併設
左から東建・田代氏、中村氏
東京建物は2月25日、東京急行電鉄、オリックス不動産、日本土地建物販売、伊藤忠都市開発とともに開発を進めている横浜市磯子区のプリンスホテル跡地の大規模マンション「Brillia City横浜磯子」(全1,230戸)が完成し、敷地内の歴史的建造物「旧東伏見邦英伯爵邸」(通称:貴賓館)に出店する創作和食レストラン「中村孝明貴賓館」が2 月28 日にオープンすると発表した。同日、報道陣向けに中村氏も出席して試食会も兼ねた内覧会を行った。
物件は、JR京浜東北線・根岸線磯子駅から徒歩4 分(敷地入口/グランドゲートまで)、横浜市磯子区磯子3 丁目に位置する敷地面積約10.2ha、3~10 階・地下1~2 階、住宅棟13 棟、商業棟1 棟からなる全1,230戸の規模。専有面積は61.27~140.13㎡。坪単価は約190万円。設計・施工は大成建設・長谷工コーポレーション。入居開始はⅠ工区が平成25 年8 月22 日、Ⅱ工区が26 年2 月27 日。
タイをさばく中村氏
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さすが〝料理の鉄人〟中村孝明氏だ。内覧会のメーンはマンションが竣工したのでランドプランや共用施設の見学が中心かと思ったが、そうではなかった。メーンは中村氏だった。報道陣もいつもの記者とは異なる人のほうが多いように感じた。
中村氏の料理は「有明」で食べたことはあるが、ご本人にお会いするのはもちろん初めてだ。中村氏は、「このようなところで開店するのは夢だった。天ぷらはなだ万時代から20年来の友人。1階はカジュアル、2階は懐石。調理人だけでなく接客、洗い場が一緒に力を合わせるから最高の『お・も・て・な・し』となる。地域の方々との交流も行っていきたい」と語った。
試食会で「これを陳建一がばくった」と中村氏が話したフォアグラのムースのようなものはえも言われぬおいしさだった。
「貴賓館」は鉄筋造の3階建て。延べ床面積は約1100㎡。マンションの管理組合が所有するが、建物の価値、賃料などは公表されなかった。都心なら何万円/坪もするはずだ。
貴賓館と正面に新設された滝
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マンションそのものは素晴らしい出来だった。特徴は、①「貴賓館」に和食レストラン「中村孝明貴賓館」がオープン②横浜プリンスホテル跡地約10haを開発③スーパーマーケットやクリニックモールなどの商業施設を併設④駅から徒歩4分の場所に高低差約60mを解消する高速エレベーターを設置⑤地域のコミュニティ活動を広げるタウンマネジメント倶楽部の発足⑥CASBEE横浜でSランクの評価――などで、記者も最高レベルの「S」評価だ。こんなマンションは他にはない。
唯一納得できないのが売れ行きだ。記者は分譲開始時に見学し、圧倒的な人気を呼ぶと思った。駅につなぐエレベーターを設置し、988台の駐車場の多くを地下化し、大型スーパーに内科・小児科、歯科・耳鼻咽喉科、薬局、認可保育園、美容院、コンビニなどを備えたマンションなどまずないからだ。(分譲開始時は中村氏のレストラン計画はなかったはずだ)
全13棟もあり駅から遠い住棟は10分以上もかかるが、平均で200万円をはるかに突破しても売れると読んでいた。190万円という単価はいまでも信じられない。これほど予想を外した物件はそうない。
冷静に振り返ると、眺望の良さと共用施設の充実ぶりを過大評価し、「坂」のマイナスを過小評価したのかもしれない。ホテルがあったとき一度だけ歩いたことがあるが、息が切れた。生活者の視点が欠けていたのだ。
販売状況については、内覧会に出席した同社プロジェクト開発部部長・田代雅美氏は、「一昨年の初めからこれまで930戸を供給しているがほぼ完売。順調に売れている。お客さまのニーズにあったたくさんの〝売り〟があるマンションだと自負している」と語った。街が完成したことで、販売スピードは加速度的にアップするのではないか。
貴賓館と客室からの眺め
竣工した建物
磯子駅前で咲いていた早咲きの桜