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 三井不動産は10月24日、オフィスビル事業で女性の活躍を応援する新しいプロジェクト「Work-Life Bridge(ワークライフ・ブリッジ)」を本格始動すると発表した。

 「Work-Life Bridge」プロジェクトは、「女性の視点」に新しい働き方やライフスタイルのヒントがあるという考えのもと、オフィスを単に働く場としてだけではなくOff Timeも充実させる場となるような施策を企画することで“Work”と“Life”の架け橋となることを目指し、女性の活躍を応援するもの。

 プロジェクト第一弾は、「手軽&豊かな食卓を通じ“働く”を応援します」をテーマに、有機・特別栽培野菜などのインターネット販売を行うオイシックス株式会社とのコラボレーション企画として、20 分で主菜・副菜が作れるレシピと食材のセット「Kit Oisix(きっとおいしっくす)」を販売するイベントを「日本橋一丁目三井ビル」(コレド日本橋地下1階、10/24~10/28 17:00~19:00)と「霞が関ビル」(地下1階、10/31~11/4 17:00~19:00)で行う。通常1セット2人前1,180~1490円の商品を1,000円で販売する。「KitOisix」の定期会員数は3万人を越えるという。

 同社は女性活躍推進のリーディングカンパニーを目指し、女性管理職の人数について2020年までに2015年度の3倍を超えることを定量目標に掲げている。

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 先ほど、「202030は可能か」の記事を書いたばかりだ。タイミングよく、同社が女性活躍を応援するプロジェクトを始動するニュースをリリースした。

 記者も主夫をやったことがあるのでわかるが、20分で主菜・副菜をつくれるのはいい。

 記者が子ども二人によく作ったのは「親子丼」「カツ丼」(カツは市販のもの)「ホイコーロー」などで、これだと30分はかからない。材料費も安い。カレーライスは圧力鍋を使って時間を短縮したが、ねぎを炒めるのに時間がかかるので1時間近くかかった。休みの日の定番は「チャーハン」と「ラーメン」だが、ラーメンはもやしの根を切り出すと30分はかかった。自分の食事は子どもが食べ終わってから作った(酒さえあればよかったのだが)。

 それにしても「Kit Oisix」の定期会員が3万人とは。ただ同じ食材で、同じレシピで、同じ味のおかずで食事をする「Kit」はブロイラーのようで何だか味気ない。それだけ働く女性が追い詰められているのだろうが、「愛」のかけらもない。「Motto」はどうか。

「202030は可能か」 日本学術会議 ジェンダー研究分科会セミナーに参加して(2016/10/25)

カテゴリ: 2016年度

 日本学術会議社会学委員会ジェンダー研究分科会が「202030は可能か-『女性活躍推進法』の実効性を問う-」と題する公開シンポジウムを10月23日、日本学術会議で開いたので議論を聞いてきた。

 「202030」とは、平成15年6月、内閣府・男女共同参画推進本部が決定した「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的位置に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標」をわかりやすく言い表したものだ。2010年段階でこの数値をクリアしているのは薬剤師(67.0%)、国の審議会など委員(33.8%)くらいしかなく、衆議院議員(10.9%)、100人以上の民間企業の課長相当職以上(6.5%)など、圧倒的に低い現状値を引き上げようというもので、2015年8月には、女性管理職の割合に数値目標を義務づける「女性活躍推進法」が参院本会議で可決、成立した。

 シンポジウムは、この数値目標を達成するのは可能か、さらにまた「女性活躍推進法」の問題と可能性を論じるのが目的だ。

 記者は、「女性活躍」なる言葉は何だか胡散臭く好きではないが、「女性活躍」=「男性の働き方改革」でもあると考えているので、女性の学者先生がどのようなことを話すか興味があったので聴きに行ったのだ。

 シンポジウムに参加して感じたのは、これほどの大きなテーマであり、コメンテーターに立命館大学特別招聘教授・上野千鶴子氏、東京大学教授・大沢真理氏が登壇し、その他多くの専門の立場の方々6人が報告するにも関わらず、聴衆は100人どころか数十人しかいなかったことだ。この日が土曜日で、家事や子育てに忙しいからだろうか。ならば保育付きならもっと集まったのではないかと率直に感じた。(家事や子育ては女性だけの仕事でないと怒られそうだが)

 もう一つは、どうしてジェンダー論者は女性ばかりなのか。この分科会には、女性は連携会員を含め18人もいるのに、男性委員は京都大学大学院文学研究科教授・伊藤公雄氏一人だ。上野氏らと真っ向勝負する男性の学者はいないのか。これまた男性にとっても女性にとっても不幸なことではないのか。

 とはいえ、女性の方々が何を考えているのかよくわかったし、何よりも声が美しく、「えー」「あのー」などの機能語をほとんど使わなかったのに感心もし、10分間の休憩をはさんで5時間も真剣に論議する〝粘り強さ〟には「男性は絶対かなわない」と感服した。

 (女性の)参加者や報告者の胸をぐさりと衝いたのは、大沢氏が「女性が(管理職などに就いて)何が変わるのか明らかにすべき」と語り、上野氏が「202030って何? これはゴールなのか手段なのか、達成した先には何があるのか、均等法によって(女性は)『白鳥』になれたのか、同床異夢ではないのか、女が軍隊への女性の参加は究極のジェンダーフリーなのか、大隅さんのノーベル賞受賞報道で、同じ研究者の奥さんの『内助の功』が強調されるのはなぜ」などと語ったことではないかと思う。

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 わが住宅・不動産業界の「202030」はどうか。記者の知る限り、上場会社の女性役員はコスモスイニシア、サンケイビル、フージャースコーポレーション、ヒューリックくらいしかない。管理職比率も全体では10%もないはずだ。

 しかし、マンションなどの商品企画は「女性の視点」抜きではありえない。三井不動産レジデンシャルは20年前に「MOC」を立ち上げ(実際はそれ以前から取り組んでいたが)、業界をリードしてきたし、大京、東京建物などの女性だけの商品企画グループは多くの成果を上げてきた。コスモスイニシアにはそもそも男女の差がない企業風土がある。

 ダイバーシティの取り組みも動きは緩やかではあるが、先進企業が見られるようになってきた。積水ハウス、大和ハウス工業、NTT都市開発は経産省・東証の「なでしこ銘柄」に選定されたし(株価が反応しないのは残念だが)、野村不動産とヒューリックは女性活躍推進法に基づく認定マーク「えるぼし」の最高評価の認定を受けた。

 また、東急リバブルはかなりハードルが高いとされる厚労省「均等・両立推進企業表彰」を、さらに厚労省「子育てサポート企業」には業界から10社以上がそれぞれ認定を受けている。

 均等法が(醜いアヒルの子を)「白鳥」にしたのか、それとも『カモ』にしたのかは分からないが、「女性活躍」=「男性の働き方改革」=ダイバーシティの取り組みは待ったなしだ。202030の実現に向けてわが業界が先進的な役割を果たすことを期待したい。

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 「白鳥」について記者は異論がある。多くの人は「白鳥(ハクチョウ)」からチャイコフスキー「白鳥の湖」、サン・サーンス 「白鳥」を連想するのだろうが、「白鳥(シラトリ)」と読めば、若山牧水の「白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 」を思い浮かべる。

 若山牧水が自らの寂しい孤独な心境をうたったのだろうが、記者に言わせればそれこそ〝白鳥の勝手〟だ。空の青や海の青に染まず漂う姿は、人間に例えれば右にも左にもぶれず、自らの信念、孤高を貫く気品に満ちた実に美しい姿勢ではないか。

 そんなに「白鳥(ハクチョウ)」になりたいのか、醜いアヒルのどこが悪いのか。何とも滑稽な無防備な〝カモ〟もまたかわいいではないか。

 会社の女性スタッフに「女性活躍をどう思うか」と聞いたら、「活躍したからといって(アベノミクスの)手柄にしてほしくない」と手厳しい答えが返ってきた。

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「ヘーベルビルズシステム」イメージ

 旭化成ホームズは10月24日、8階建てまでの賃貸住宅、店舗・事務所など多様なニーズに対応した中高層用ビルディングシステム「ヘーベルビルズシステム」を開発し、11月より一部エリア(東京および周辺部)で先行販売を開始すると発表した。

 「ヘーベルビルズシステム」は多様な商業用途が想定される4~6階建てをメインターゲットとして開発したもので、同社がこれまで販売してきた「ヘーベルハウスフレックス」の技術や生産・施工方法を継承しながら、各階の階高を2.8~3.5mの範囲で設定可能とするなど、品質と精度を確保しながら飛躍的に自由度を高めて8階建てまでの建築を可能とした。

 ヘーベルハウス同様、外壁のALCコンクリート「ヘーベル」の取り付けには、地震時の変形に対する追従性の高い独自のロッキング工法を用い、振動抑制装置や制震装置も用意した。更に、基礎工事も工業化するなど現場工程を極力単純化し、工業化が進んでいない中高層建築市場において高品質で高効率な施工を実現した。

 現在、4階建ての賃貸併用住宅などでは同社を筆頭に着工戸数に占めるハウスメーカー施工比率が高いのに対し、5階建て以上は現場施工のRCや鉄骨造が多く、「メインプレーヤーが不在」(同社)の市場を形成しているという。

 発表会に臨んだ同社取締役兼専務執行役員・川畑文俊氏は「やっと中高層の幅広い用途に対応した技術を開発することができた。長年展開してきた『ロングライフ経営』の礎が完成した。自社で内省化できる強みを発揮し『中高層建築№1』の達成を目指す。2020年度には4階建て以上の受注全体で500億円が目標」などと話した。

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 同社の工業化製品「へーベルハウス」の技術を継承・発展させて、在来工法が中心のメインプレーヤー不在の中高層ビル建設に市場参入するという非常にわかりやすい、いいことずくめの新技術に違いない。

 しかし、天邪鬼の記者は別のことを考えた。①都市部の狭小敷地は工業化製品では対応が難しい不整形の敷地のほうが多いのではないか②アール状のデザインを採用するなど特徴を持たせ、間取り・設計の自由度が高く、間口の広い空間を確保できるのはRCではないか③遮音性能もRCのほうが高いのではないか-と。

 そこで、そのまま同社の技術担当者にこの疑問をぶつけた。担当者は、「へーベルハウスは不整形の土地でも柔軟に対応できるようになってきている。外観デザインや間口など良しあしがあるものについて当社は数値競争しない。遮音性能は壁や床の仕様の問題」と語った

 -なるほど、そういうことだ。同社が建設した1~5階まで賃貸住宅で、延べ床面積270坪の試作棟は坪単価95万円とのことだった。確かにRCでは絶対このような単価では建設できないし、工期短縮、施工の安定性、職人不足のことも考慮すると競争力があるということか。

 

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パネルディスカッション(三井倶楽部で)

 三井デザインテックが10月19日、昨年に引き続く第2回目のプレスセミナー&懇親会を三井倶楽部で行った。5mはありそうな天井には豪華なシャンデリアが輝き、壁も床も無垢材が採用されている会場にうっとりしながらも、同社デザインラボラトリー所長・見月伸一氏の報告や、伊藤忠ファッションシステム取締役ifs未来研究所・川島蓉子氏と見月氏などとのパネルディスカッションに夢中で聞き入った。

 「コト」「空間エクスペリエンス」などの魅惑的な言葉の意味を必死で考え、デザインが新しい空間価値を創造し、働き方、住まい方、生き方を変え、さらには日本を変える力になると確信した。ライスは食べなかったが、ビーフカレーは特別だった。ワインもおいしかった。

 セミナーでもっとも心に響いたのは、川島氏が「経営者もデザイナーもいつも未来を見つめている。両者がタッグを組めば素晴らしい未来が開ける」という趣旨のことを話された「コト」だった。

 記者もその「コト」を強く感じる。職場環境が社員同士のコミュニケーションをスムーズにし、生産性を上げることはこれまでもたくさん紹介されている。

 しかし、その動きはあまりにも小さく遅い。なぜか。企業・経営者は労働環境を変えることに後ろむきで、デザイナーもまた真剣にタッグを組もうとしていないのではないかと考えている。

 一例を示す。電通の女性新入社員が過労で自殺したのに衝撃を受けた。〝事件〟が報じられたその日(10月7日)、厚労省は過労死等防止対策推進法が施行されたのを受けて「過労死等防止対策白書」を初めて公表した。

 全体として労働時間(パート含む)は年々短くなっているが、長時間労働はまだまだ高い水準にあり、年次有給休暇の取得率は5割を割る水準で推移したままで、仕事の量や質にストレスを抱える労働者が多く、精神障害に係る労災申請が増加していることなどが報告されている。

 記者が驚いたのは、厚労省が労働時間、労働条件などについて企業1万社と労働者2万人にそれぞれアンケートを行ったのだが、回答は企業が1,743件で、労働者は19,583件だったことだ。回答が件数になっているので単純比較はできないが、仮に回答をそれぞれ社、人とすれば企業は17.4%で、労働者は97.9%となる。法律が施行され、安倍内閣が働き方を改革しようと必死になっているのにこれはどういうことか。

 川島氏が「経営者とデザイナーがタッグを組んだら…」と話したのはこのことだろう。デザイナーは毎日、労働・職場環境を見ており、未来も思考しているはずだ。その知見を生かし、企業・経営者に提案していくことが求められている。劣悪な環境を劇的に変えられるはずだ。

 もう一つ、デザイナーに期待したいのは、戸建てやマンションなどの住宅に対する提案力のアップだ。

 セミナーではユーザーの本物志向、素材へのこだわりが強まっていると報告された。その通りだ。しかし、このところの価格上昇で、設備仕様はケミカル製品だらけになってきた。専有圧縮も甚だしい。この悪い流れを変えてほしい。デザイナーの仕事は単なる意匠デザインだけでないはずだ。商品力を高めるのもデザイナーの役割だ。

 これは余談だが、参考になりそうなマンションのプランについて。三井不動産レジデンシャルが先日、「パークコート青山ザ タワー」のモデルルームをメディアに公開した。巨匠と呼ばれるブルーノ・モワナー氏がデザインを担当している115㎡のプランは、何と玄関がなくリビングインタイプだった。

 記者は欧米のマンションのプランがどうなっているか知らないが、リビングインタイプは少なくないそうだ。わが国で受け入れられるか疑問だが、提案してみる価値はありそうだ。これもまたマンションの間取りを劇的に変えるかもしれない。

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 ついでに三井倶楽部で発見した「コト」を一つ。三井倶楽部には「内外美術の粋を集め、とりわけロダンの彫塑、ターナー、サー・ト一マス・ローレンス、ドービニー、ニコラス・マースの油絵等の逸品があり、各室に配備の家具、什器、その他の調度品等もそれぞれ他に比類を見ない豪華なものです」(三井倶楽部ホームページ)とある。

 昨年は見過ごしたのか気が付かなかったが、はっとする絵を帰るとき見つけた。クロークの前に飾られた年代も画家名も不詳の50号はありそうな大作だ。裸婦がベッドに横たわっていた。絵の傷み方、陶器のような肌から判断して、描かれたのはルネサンス時代だろうと見当をつけた。

 しかし、その絵は単に裸婦が横たわっているだけではなく、丸裸の女性の前に黒い衣服を着た男が不義をなじるのか、これから犯そうとするかのような形相で見つめているではないか。

 これに似たような絵は、ルーベンス「レウキッポスの娘たちの略奪」を筆頭にいくつか見たし、レンブラント「ダナエ」、マネ「オランピア」、アングル「トルコ風呂」、マネ「草上昼餐」、ジャン・レオン・ジェロームの一連の「奴隷市場」などスキャンダラスな絵もたくさんある。(女性はどう見るかわからないが)率直に美しいと思う。

 ところが、三井倶楽部に飾られている絵には何とその背後のカーテン越しにその場面を覗く、明らかに男と思われる黒い影が描かれている。これには酔いがいっぺんに醒めた(と思っただけかも)。

 この黒い影は画家そのものであり、画家にそのような絵を描かせた王侯貴族だと理解した。年代も画家名も不詳なのは、名前が明らかになればそれこそ袋叩きにあうのを恐れたためだ。王侯貴族は卑猥な絵を描かせ私蔵した。

 この絵も、描いたのは世に伏せなければならないほど著名な画家であり、描かせたのも著名な貴族だったに違いない。鑑定に出せばとてつもない値段がつくかもしれない。そんな絵がさりげなくクロークの前に飾られている。

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懇親会

コンドルが設計した「綱町三井倶楽部」を観た 三井デザインテックがセミナー(2015/10/22)

 

 

 

 

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「伊里前福幸商店街」完成予想図(隈研吾建築都市設計事務所提供) 

ナイスは10月19日、建築家の隈研吾氏が設計を担当した新たな復興のシンボルとなる宮城県南三陸町の「伊里前福幸商店街」の移転新築工事を着工したと発表した。

 「伊里前福幸商店街」の移転新築工事は、南三陸町の市街地再生の中核を担う株式会社南三陸まちづくり未来が進める事業で、同社は「ナイス・志津川・山庄特定建設共同企業体」の代表として参画するもの。全体設計は、新国立競技場のデザインを手掛けた建築家の隈研吾氏が担当している。

 建物は木造・平屋建て延べ床面積672.79 ㎡(202.04 坪)。完成予定は2017年4月末。建物の内外装には南三陸産のスギが用いられる予定。

 事業は、復興庁が認定している「南三陸町まちなか再生計画」の一環として計画されており、地域の生活を支える商材やサービスの提供をはじめとして地域コミュニティーの中核的機能を担い、また、国道沿いの高いアクセス性を生かして観光客も立ち寄りやすい市街地とすることを目指す。

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千代田区議会 企画総務委員会

 千代田区が計画している街路樹の伐採の中止・保存を求める5件の請願書の取り扱いを千代田区議会から付託された企画総務委員会は10月17日、請願書を採択することを決定、計画の変更、樹木医による街路樹の診断、位置づけを明確にすることなどを議会に報告する。区側もイチョウの伐採を議会や区民に説明してこなかったことに対して「説明不足」「認識不足」であることを認めており、計画が変更されるのが確実となった。

 請願書の取り扱いについての審査は10月3日に次ぐもので、この日は各委員から「基本的な大事なことを議案に盛り込まなかった」「自然が豊かでないと人間も豊かになれない。民主的な手続きがなされなかった。事前に住民に説明すべきだった」「街路樹に込められている地域の思いを軽視した」「区の上位計画で街路樹の保存をうたっている」などとし、保存を求める声が相次いだ。

 これに対して区側は、「安心・安全の道路管理を行わないと管理責任が問われる」(道路管理課長)としながらも、「街路樹が果たす役割、区民の思いに対する認識が不足していた。今後は様々な先進例に学びながらきちんと位置づけしていく」(まちづくり部長)などと答えた。

 最終取りまとめを行った林則行・企画総務委員会委員長は、①神田警察通りの1期工事についてはイチョウの並木を保存するために整備内容を見直しすること②区道の街路樹については安心・安全を基本に樹木医の診断を行い、維持管理に取り組むこと③区道の整備については、専門的見地をふまえ、5,023本ある街路樹のあり方を含め指針等を策定すること④東京都に対し区の方針を反映できるよう要請すること-などを骨子とする議会への報告書をまとめると語った。

 この問題については、今年3月議決された区の自転車通行環境整備第一期工事として業者が共立女子大学と一橋大学施設の間のイチヨウ32本とプラタナス5本を伐採するための枝落としを7月に始めたところ、「切らないで」「かわいそう」「何の説明もなく伐採するのは問題」という声が上がったため工事が中断したままになっている。

 その後、街路樹の伐採の中止・保存を求める5件1,375名の陳情書が区議会に提出されている。共立女子学園出身のブライダルファッションデザイナー・桂由美氏らは〝街路樹は人生の一部〟と陳情書で語っている。

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 審査は前回と今回を合わせ約9時間に及んだ。結局は住民の請願書がほぼ全面的に認められた格好になった。非常に結構なことだ。〝話せばわかる〟機能は生きていた。

 しかし、考えなければならないことも明らかになった。街路樹をそれぞれの立場の人の都合にあわせ考えることの愚を教えてくれた。

 審査の段階で行政は街路樹を道路施設の付属物という認識しかなく、伐採についてきちんと説明しなかったことが明確になった。議会(議員)の行政チェック機能も問われるべきだし、問題をこじらせたのは住民の関心の薄さにも原因がありそうだ。

 千代田区は2002年に策定した「第三次長期総合計画」で、「街路樹は、根や枝葉の成長に必要な日照などの生育条件が成約された環境にある」「街路樹や緑地の樹木が、生き生きと生育するため、適正に管理していく必要がある」とし、また「風格ある都心景観の形成を推進するためには、歴史的な景観を維持・継承し、あるいはこれを強化・発展させるなど、面的な景観誘導、歴史的資産の保全などを積極的に進めていく必要がある」としている。

 今回の問題を契機に、千代田区が先進的な街路樹の取り組みを行うことを期待したい。

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枝落としされた神田警察通りのイチョウ(右の建物が共立女子大の建物。9月撮影)

千代田区「説明不足だった」 「豊洲」と同じ様相 神田警察通りのイチョウ伐採問題(2016/10/8)

神田警察通りの街路樹は人生の一部」 桂由美氏らが伐採中止求める陳情書(2016/10/3)

またまた「街路樹が泣いている」 千代田区 街路樹伐採で賛否両論(2016/9/8)

 

 

 

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 野村不動産アーバンネット10月14日、不動産情報サイト「ノムコム」にホームステージング物件特集サイトを設置するとともに、対象物件を拡大し、サービスを恒久化したと発表した。

 ホームステージングとは、売却物件の室内にインテリアコーディネートを施してモデルルームのように演出することで、中古住宅を早期に売却できるようにする手法の一つ。アメリカではかなり普及しているといわれる。

 同社は2014年11月、20階以上のタワーマンションで専有面積60㎡以上を対象に導入、780を超える物件にホームステージングを行ってきた。ホームステージング実施物件は、未実施の物件に比べて、売買契約の成約率が約1.5倍、販売活動開始から売買契約までの期間が約2割短縮された。

 成果があったためにホームステージングサービスを恒久化し、対象物件を拡大することにしたもので、首都圏・関西圏の営業エリアの2000年(平成12年)1月以降竣工のマンション・戸建て(マンションは50㎡以上、戸建ては80㎡以上)を対象に、「野村の仲介+(PLUS)店舗」と専属専任・専任媒介契約を締結した個人・法人(宅建業者を除く)の顧客などを条件としてサービスを実施する。家具などの設置期間は最長3カ月。

日本ホームステージング協会、今秋に世界規模のイベント開催(2016/2/25)

 

 

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「祝・飛龍不二法門」

 積水ハウスは10月13日、梅田スカイビル内に新しい芸術文化発信拠点となる「絹谷幸二 天空美術館」を2016年12月23日(金・祝)に開館すると発表した。

 梅田スカイビルは1993年3月に竣工した40階建て二棟連結の斬新なデザインのオフィスと商業施設からなる複合施設。2008年、英国TIMES社の「世界の建築物20選」に選ばれている。最上部の「空中庭園」には2015年度は過去最高の121万人(うち海外より72万人)が来場した。

 絹谷幸二氏はわが国のアフレスコ画の第一人者で、日本芸術院会員、東京芸術大学名誉教授、日本芸術家連盟理事。2001年、「蒼穹夢譚」で日本芸術院賞受賞。

 「絹谷幸二 天空美術館」は、大阪湾に臨む街を見渡せる眺望の開けた「梅田スカイビル タワーウエスト27階」に開館。象徴的なプロローグ展示と、3D映像による絵画の世界を空間として体験できる「シンボルゾーン」、絹谷幸二氏の絵画のイメージに合せた青や赤の「展示ゾーン」、制作過程の絵画も見ることができる「アトリエ」、子どもの絵画教室などを開催する「ワークショップスペース」などで構成される。

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エントランス イメージ図

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 絹谷氏は記者がもっとも好きな画家のひとり。絹谷氏が有名になる前に絵の購入を考えたことがある。結局買わなかった(買えない値段ではなかった)のだが、NHKの日曜美術館は必ず観ていた。有名になってから絹谷氏がデザインしたネクタイを買い、擦り切れるまで身に着けていた。

 渋谷・セルリアンタワー、松戸競輪場、みなとみらい線横浜駅、京都ブライトンホテルなどで作品を見ることができる。

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「千葉市における『近居』に関する記者説明会」(幕張テクノガーデンで)

 親子「近居」支援に都市再生機構(UR都市機構)と千葉市が連携-UR都市機構と千葉市は10月12日、千葉市における「近居」に関する記者説明会を開き、UR都市機構が賃貸住宅「近居割ワイド」拡充策を、千葉市が「三世代同居等支援事業」をそれぞれ説明、連携して推進していくと発表した。

 UR都市機構は平成25年、同一のUR賃貸住宅で近居、あるいは半径2㎞以内のUR賃貸住宅間で近居する場合、新しくUR賃貸住宅に入居する世帯の家賃を5年間5%ないし20%減額(20%減額は世帯所得合計が月25.9万円以下)し、2世帯が同時にUR賃貸住宅に入居した場合、両世帯を減額する「近居割」を開始。現在、全国約1,100団地で利用が可能になっている。

 また、平成27年9月からは、UR賃貸住宅以外の住宅と、UR賃貸住宅とで近居を始める場合、新しくUR賃貸住宅に入居する世帯の家賃を5年間5%ないし20%減額する「近居割ワイド」を導入。全国454団地を含む95エリアで可能にした。

 千葉市内では今年9月、千葉市との連携によって市内5区の大半の団地(24団地)に「近居割ワイド」を拡充した。

 この結果、「近居割」は開始初年度の平成25年度は平均月6件の利用だったのが26年度は平均月8件に増加。「近居割ワイド」は開始初年度の平成27年度は平均月3件だったのが、今年度は平均月11件に増加。4~7月の4カ月間の契約件数は64件で、前年同期比1.7倍に増加した。

 一方、「千葉市三世代同居等支援事業」は平成24年に開始した事業で、高齢者の孤立防止と家族の絆の再生を目的に、「親と子と孫」が市内に同居または近居(直線で1㎞)に居住する場合、税金を滞納していないことや公的住宅扶助を受けていないことなど一定の条件を満たせば、住宅の新築、改築、購入、賃借に要する費用を3年間にわたって助成するもの。

 最初の1年目は要した費用のうち最高50万円の助成をし、2年目、3年目は15万円を限度に持家の場合は固定資産税・都市計画税相当額を、借家の場合は年間家賃相当額を助成する。持家の場合、市内業者と契約して施工を行った場合は、助成限度額を100万円に増額する。

 平成24年度の実績は55件で、25年度が57件、26年度が69件、27年度が63件。27年度の内訳は新築が15件、購入が9件、改築が12件、増築が2件、賃貸が8件、転居が17件。

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 UR都市機構の取材は10数年ぶりだ。九段に本社機能があったころはしょっちゅう取材し、広報担当者などとの懇親会(飲み会)にも必ず顔を出した。当時、学生にもっとも人気がある就職先の一つだった。「民業圧迫」を理由に分譲事業から撤退することが決まった平成9年前後、記者は「撤退反対」の論陣を張った。その後の行政改革の中で市街地整備や賃貸の管理中心の独立行政法人となった。2兆円を超える事業規模と優秀な人材を抱えていたUR都市機構を乱暴な手法-ありていに言えば、もっとも大変な開墾・種まき・水やり・施肥をやらせ、もっともおいしい果実を引きはがす-しかも官僚体質だけは温存させながら〝解体〟するのでなく、民営化していたら日本一のデベロッパーになっていたはずだ。

 そんなことはともかく、「近居」を千葉市と連携して推進していくのは結構なことだ。〝千葉市に住もう〟というキャンペーンを張りたいくらいだ。

 しかし、いくらURと千葉市が頑張っても飛躍的に伸びる事業とは思えない。UR都市機構が示した「近居割ワイド」が対象となる約3万戸の団地は「幕張ベイタウン」など一部を除いて管理開始が昭和40年代や50年代の郊外賃貸団地ばかりだ。耐震診断は行っているようだが、間取りや設備機器の陳腐化が進み、それなりに家賃は安いが、民間との競争力に欠ける。

 一例をあげる。昭和41年に管理開始した西千葉駅からバス12分の全2,094戸の「千草台」の家賃は29,600円~51,600円で、専用面積は27~52㎡だ。1坪当たり賃料は約3,300円~3,600円だ。賃貸住宅の相場はよく知らないが、東京の民間賃貸の3分の1くらいではないか。

 これほど安ければ立地、間取り・設備機器が劣っていようと入居する人がいるのではないかと思い、募集状況を検索してみた。4.5畳二間と6畳一間の3K(45~48㎡)で46件がヒットした。家賃は3万円台だ。驚いたというより当然だと思うが、この46件の「空き家」のうち2階が1戸で、3階が14個、そのほかは全て4階、5階だ。UR都市機構が管理開始した昭和40年代、50年代の賃貸住宅の多くは5階建てまででエレベータは設置されていない。

 この「千草台」のようにエレベータなしの団地では4、5階の住宅に大量の「空き家」が発生しているのはよういに想像がつく。市内3万戸のうち2万戸くらいがエレベータのない3~5階に該当するのではないかと思う。

 それでは、エレベータを設置してバリアフリー化を図り、間取りも一新すればいいではないかという声もあるが、UR都市機構は慈善団体ではない。独立行政法人として「自立」が求められている。大幅な改修に伴うリスクは取れない。

 何の解決策も見いだせない現状を考えると暗澹たる気持ちになるのだが、UR賃貸には「U35割」制度もある。契約者が35歳以下の学生、または35歳以下の親族と同居する場合、3年間の定期借家契約により割引料金で入居できるというものだ。これらを利用すれば、住居費を安く抑えられるのではないか。

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 千葉市の「三世代同居」を支援する制度もいい。新築や分譲に対する支援策は多くの自治体が実施しているが、賃貸に対しても助成するのは大歓迎だ。

 しかし、これもまた問題がないわけではない。助成資格要件に、すでに同居または近隣(直線で1㎞)に居住している場合は対象外とある。これまで苦労して親、または子、孫の世話をしてきた人が対象外というのは明らかに不公平だ。

 また、市内業者による施工・分譲については100万円に増額するというのは分かりやすいようで分かりづらい。ユーザーの立場からすれば、施工・分譲業者がどこであろうと関係ない。地場の業者を支援するのはほかの方法だってあるはずだ。

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 UR都市機構と千葉市の担当者の話を聞きながら、〝千葉市に住もう〟という記事を書こうと考えたのだが、関係者は千葉市に移り住みたくなるような街づくり・政策を進めるのが先決ではないかとも思う。

 卑近な例だが、人口が100万人近い政令都市の千葉市は、他の市と比較してマンションの相場は圧倒的な差をつけられている。東京23区はともかく、横浜市では横浜駅の中心市街地なら坪400万円を超える。川崎市も川崎駅周辺の1等地なら坪400万円近くになるはずだし、埼玉県さいたま市の浦和駅、大宮駅は坪300万円をはるかに突破する。

 千葉駅はどうか。近々分譲されるマンションがあるが、坪250万円くらいではないか。なぜこんなに差があるのか。一言でいえばそれだけ民力が低いからだ。市の財政事情も悪く、市民一人当たりの所得も同じ千葉県の船橋市や柏市などより上回るが、浦安市、市川市、習志野市、流山市などに負ける。

 その理由として管理開始が昭和40年代、50年代のUR都市機構の賃貸が多いのもその一因だと記者は推測するのだが、どうだろう。

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 この日、UR都市機構が配布した報道用基礎資料「UR賃貸住宅が提唱する『近居』というライフスタイル~近居割を軸としたUR賃貸住宅の取り組み~」は非常によくできている。17ページにわたるもので、民間の大和ハウス工業、三井不動産レジデンシャル、野村不動産アーバンネット、住友商事・住商建物の取り組みも紹介されている。

 その割に出席した記者は10数人しかいなかった。会場が遠いからか、呼び掛けたURや千葉市に問題があるのか、「近居」に反応する記者がいないためなのか…。

カテゴリ: 2016年度

 先に紹介したように、千代田区の神田警察通りのイチョウ並木を伐採する問題で、千代田区議会は10月3日、企画総務委員会を開き、伐採中止を求める陳情書について審査した。

 委員会の各委員は「(自転車通行環境整備工事「神田警察通り」請負契約について)明確な説明がなかった」「執行機関として議会に説明しなかったことを反省すべき」「イチョウが伐採されるという認識がなかった。些末なことなのか」「誰が、いつ、どこで意思決定したのか、きちんと時系列的に説明すべき」「平成25年の(神田警察通り沿道賑わいガイドラインには(イチョウなど)街路樹の保全・育成が記載されているではないか」「(神田警察通り沿道整備推進)協議会も議会も区民も置き去りにされた」などと区側に迫った。

 これに対し、区側は「全般の説明はしたが、(イチョウ伐採などについての具体的な)説明不足だった」(まちづくり課長)と謝罪したが、事案を担当する道路公園課長の説明が分かりづらいことから「語尾をはっきり言え」「イエスかノーで応えてください」と言葉を荒げる場面もあった。

 区の都市計画マスタープランや緑の基本計画に逆行するのではないかという委員の質問に対しては、まちづくり担当部長・坂田融朗氏が「緑の基本計画の考え方は今後も変わらない。ただ、道幅が狭い地域では歩行空間を確保しながら更新せざるを得ない街路樹もある。緑を維持創出し、次の生命を育てていく」と答えた。樹木医の診断の結果、「枯損木」の恐れのあるイチョウは5本であることが区側から報告された。

 午後1時15分から始まった委員会は再三休憩を繰り返しながら、結局、結論が出ず4時過ぎに散会。17日に再び論議されることになった。この問題はテレビでも報じられるなど、「豊洲問題」の千代田区版の様相を呈してきた。

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 最初にも書いたが、区側の説明が不十分ではあるかもしれないが、区の決定に瑕疵はないように思う。議会は街路樹を伐採することを「知らなかった」というが、知らなかったでは済まされない。日常不断に行政をチェックするのが議員の務めではないのか。この問題について議会でもほとんど質問がされていない。

 昨年12月25日に開かれた企画総務委員会で道路公園課長が説明した「今回、整備を予定しております第I期、共立学園の前付近でございます。そちらの歩道の部分というところでは全体を合わせてあわせて3.5mになりますが、その中に植樹ですとか街路灯等が、道路附属物も混在し、また自転車と歩行者の区分も不明確になっておると。その中で歩道側が1.2mほどであるというような表記でございまして、こちら、きちっと整理をすることで、かつまた4.5mに拡幅することで、歩行者、自転車ともに走行しやすい安全な空間を創出したいと考えております」を了解したのではないか。

 道路公園課長が「植樹ですとか街路灯等が、道路附属物も混在」といみじくも言ったように〝街路樹は道路の付属物〟という認識しかないということだし、議員の皆さんも〝些末〟なこととしか考えてこなかったのではないか。

 これまで区の街路樹について議会はどのような論議をしてきたのか検索してみたら、次のような発言がヒットした。

 「国立市の学園通りの見事な緑の景観が一事業者によって壊されてしまったのは、まだ記憶に新しいところです。…道路の緑地帯には211本の桜と117本のイチョウが、どれも大木に生長し、沿道にはおしゃれなブティックや喫茶店が並ぶという、市民自慢の通りでした。そのような美しい緑の景観が、なぜそうなってしまったのか。また、今後このようなことが、多くの貴重な景観を持つ千代田区で起きることがないよう、水と緑の景観を守り、形成するための具体的な仕組みがぜひとも必要です」(2004年6月10日第2回定例会)

「神田警察通りの街路樹は人生の一部」 桂由美氏らが伐採中止求める陳情書(2016/10/3)

 

 

 

 

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