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鈴木氏(埼玉県住まいづくり協議会セミナー会場で)

 埼玉県住まいづくり協議会が先月14日に行ったセミナー会場で、同協議会の副会長を務めるリブランの取締役会長・鈴木靜雄氏に久々に会った。

 鈴木氏は、「会社には年に1回、正月に幹部らと話をするくらいで、経営には関わっていない」としながらも、現在の中堅デベロッパーに次のような手厳しい注文・檄を発した。

 「われわれが30代、40代の頃は大手と戦ってきた。ヒューマンランド、タケツー、興和物産などもそうだった。いまの中堅デベロッパーは戦っていない。今こそ住居とは、コミュニティ、子育て、健康とは何か、これら数値ができない、業界が関わろうとしないところに価値がある。ここに焦点を当て深く掘り下げれば、数値化できない、見えない価値が見えてくる。マーケットは無限だ。決断するかどうかだ。われわれが提唱している倫理経営、居住福祉産業へチェンジすればマーケットは無限に広がる」と。

 激しい口調に〝昔と全然変わっていない〟と思いながら、お歳を伺ったら74歳とのことだった。鈴木氏が60歳を迎えたとき、業界関係者らと還暦祝いの飲み会を行い、赤いちゃんちゃんこを羽織って「引退」をほのめかされたのを思い出した。あれから14年が経過したことになる。

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 鈴木氏は第一線を退くまでは同社の社長として、「環境共生」を前面に掲げたマンション・戸建てブランド〝エコヴィレッジ〟を幅広く展開し、中堅デベロッパーをリードしたばかりでなく、業界全体にも大きな影響を与えた。大手と互角に戦った〝中堅の星〟的な存在だった。

 今では常識となっている「パッシブデザイン」を真っ先に導入したのもリブランだったし、〝リビングイン〟を提唱したのも同社だった。ビオトープを備えた戸建て「川越ハートフルタウン霞の郷」は現時点でも最高傑作のひとつといえる物件だ。防音機能を備えたミュージシャン向けの賃貸マンションなども手掛けて話題を呼んだ。

 また、コミュニティ支援にも力を入れ、地域のバレーボール大会を後援するなどCSRでも業界の先駆的役割を果たした。

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 鈴木氏が第一線を退かれた以後は同社への取材も足が遠くなり、また全国住宅産業協会(前日本住宅建設産業協会)とも訳あって〝絶縁〟したこともあり、中堅デベロッパーの動静には疎くなっているのだが、鈴木氏が現在の住宅・不動産業界に〝シフトチェンジ〟を求める主張は説得力がある。

 記者が見る限り、全住協会員会社が分譲するマンションは完全に大手との競争力を失っていると思う。リーマン・ショック後、金融機関の貸出態度が厳格化したために〝戦えなくなった〟事情は考慮しなければならないが、〝戦っていない〟という鈴木氏の指摘は的を射ている。「倫理経営」「居住福祉」の原点に立ち戻れば、前途に光明を見いだすことも可能かもしれない。

 鈴木氏が実業家の滝口長太郎氏と出会い、「倫理経営」に傾倒し、神戸大学名誉教授・早川和男氏らが提唱する「居住福祉」を盛んに口にしたころと、同社の業態が劇的に変わり、業績も上昇の一途をたどった昭和60年代の前半と一致するからだ。鈴木氏は「倫理経営」「居住福祉」を間違いなく実践した。

 鈴木氏が「(私たち不動産・住宅業界は)住宅と人間、社会との関係性に本質的思想が欠如されたまま突き進み続けました。その結果、住宅産業は景気産業に変容してしまい、様々な社会問題が勃発して、日本社会は現在、末期的様相を呈しています」(2011年11月8日号「住宅新報」)という認識は的を外してはいない。日々生起する問題が住居と深くかかわりあっていることは自明のことだ。

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 この日、鈴木氏に同行していたリブランのミュージション事業部部長代理・田代聡夫氏が「会長は社内のだれよりも精力的に活動している」と話したが、鈴木氏は今年6月に韓国で行われた「第11回平和と繁栄のための済州フォーラム」に日本セッションの実行委員長として参加、「倫理資本主義で世界を救おう」と呼び掛けた。日本居住福祉学会でもデベロッパーとしては唯一理事として活動されている。

 〝引退〟とは、「人間と居住の本質から見れば『廃拠』に等しい」従来型の不動産業からの決別であり、「居住福祉産業」へ突き進む第一歩だったのだろう。

カテゴリ: 2016年度

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第4回「JEG DESIGN CONTEST 2016」プレゼンテーション大会(四谷区民ホールで)

 住宅メーカー8社が共同運営・活動する住宅エクステリアガーデン研究会(JEG)は11月14日、第4回「JEG DESIGN CONTEST 2016」プレゼンテーション大会を開き、グランプリ賞に積和建設九州の尾崎孝也氏と安部美和子氏の「晴好雨奇」を選んだ。

 応募総数は1,400作品で、二次審査を通過した5部門18作品が優秀賞として発表された。5部門とも積水ハウスグループが最優秀賞を受賞した。グランプリ賞は昨年も積水ハウスだった。

 今回新たに設けられた「新人賞」は、下久保美咲氏(ナテックス)の「時間・空間・こころにゆとりの国立くらし」が選ばれた。

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 記者は、樹齢80年のイチョウの伐採をめぐり問題となっている千代田区の取材が急きょ入ったため、JEGの会場に駆け付けたときは、プラントハンター そら植物園代表・西畠清順氏の基調講演が終わる間際だった。西畠氏は樹齢1000年のスペインのオリーブを小豆島に移植して成功させた話をされたようだ。

 小豆島のオリーブの話は千代田区のイチョウと通じるものがあると思う。国立科学博物館名誉研究員・近田文弘氏によると「イチョウは1000年以上生きる。千代田区の街路樹はまだ若木。伐る必要など全然ない」と話した。

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西畠氏の〝作品〟の一つ(三井不動産レジデンシャル「パークシティ大崎」で2015年撮影)

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 優秀賞に選ばれたエクステリア大型、エクステリアベーシック、ガーデン、街づくり・集合住宅、リフォーム5部門の最優秀賞はいずれも積水ハウスと積和建設の社員の作品だった。主催者だったか受賞者だったか「この研究会の認知度が低い」と語ったが、それにしてもハウスメーカー8社も揃って、積水に総取りされるとは情けない。審査員の一人でE&Gアカデミー青山校校長・古橋宣昌氏は「今回は積水ハウスが総取り。来年は各社の気合が入るのでは」と話したが、他社の奮起に期待しよう。

 古橋氏はまた、「皆さんのノウハウを若い人に伝え、働きやすい環境を整え、美しい日本の街並みを伝えていく業界にしましょう」と呼び掛けた。

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 記者は聞いていないのだからその理由は知る由もないのだが、グランプリ賞に輝いた積和建設九州の尾崎孝也氏と安部美和子氏の受賞シーンが〝泣かせた〟。

 受賞の感想を求められた尾崎氏は、関わった関係者にお礼の言葉を述べたあと「凸凹コンビの夫婦ですので、プレゼンの練習ではテレもあったり、微妙な空気も流れたりもした。受賞には言葉もない」と話し、奥さんの安部氏は「ありがとうございます」と涙ぐんだ。

 これにはまだ続きがあり、審査委員のJAG会長・正木覚氏が「(審査で)初めて涙した。自分でも止められない内容を含んでいた」と語った。さらにまた、JEG審査委員長・粟井琢美氏(三井ホーム)も「ウルルっとした」と、二人の〝幸せガーデン〟提案を褒めた。

 記者は、二人が侃々諤々、自らの意見を譲らず、またプレゼンの練習で相手に難癖をつけるうちに疲れ果て、やがて怪しい空気が流れ、2匹のフカのように深い海底に沈んだと理解する。デザイン提案に至る過程が〝泣かせる〟のであって、提案そのものが〝泣かせる〟のではないはずだ。

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プレゼン用写真(月見台) 敷地は市街地が望める高台で、樹木はカエデ類が中心だそうだ

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尾崎氏(左)と安部氏

ハウスメーカー8社のJEG 第3回プレゼン大会に450名(2015/11/17)

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イチョウ並木を観察する近田氏(神田警察通りで)

 皇居や吹上御所の植物相研究などで知られる国立科学博物館名誉研究員・近田文弘氏(75)が11月14日、樹木医による診断で「枯損木の恐れあり」と判定された千代田区神田警察通りの5本のイチョウを視察し、「わたしは樹木医ではないが」と前置きしたうえで「見た限り全然問題ない。気温低下と湿度維持の働きを持つ街路樹を切り倒すのは間違い。街路樹と人が共存できるように視点を変えるべき」などと語った。

 近田氏は区議会企画総務委員会委員や住民らとイチョウ並木を見て回り、「イチョウは1000年以上生き、直径10メートルに成長する。見た限りダメな木は1本もない。みんな若木だ。切らなくても数十年は大丈夫。倒木や枝の落下を心配する声があるが、まず大丈夫。しっかり木を見ることが大事。根上りはして当然。木をいじめるのでなく、根が伸びられるように舗装方法を改善すべき」と話した。

 区は近く正式に樹木医の診断を受けるそうだ。

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神田警察通りのイチョウ並木

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 記者はこれまで、「根上り」は〝音を上げる〟と同じ、樹木が高齢化し、死期に近いことを知らせるシグナルかと思っていたが、そうではないようだ。重い幹を支えるのに太い根を張る必要があるという近田氏の説明は明快だ。根上がりがしても大丈夫なよう舗装方法を改善せよという近田氏の指摘は検討に値しそうだ。

 そして、近田氏の次の言葉がぐさりと胸に突き刺さった。

 「樹木医? 木の病気を診断するのだろうが、私は木全体を見ているし、森も見ている。そして何より人間を見ている」

 何の学問もそうだろう。すべては人間のためであり、人間もまた自然に生かされているという視点が大事なことを改めて教わった。「ダメな木は1本もない」というのは「ダメな人間は一人もいない」に通じるのだろう。

 近田氏は記者より8歳も年上だが、スニーカーを履いた足取りも軽く、みんなを先導した。来年には天山山脈の西にあるカザフスタンを旅するのだそうだ。

 近田氏に「千代田区の森と街路樹が東京を潤す」と題した6ページの小論文を頂いた。葉の形・大きさ・働きについて書かれた部分を紹介する。

 「カシワの葉は大きな鋸葉と短い葉柄があり、長さ10~30㎝と大型で、風を受けて鋸葉と葉柄が動いて空気の波を作り葉の周辺の太陽熱を逃がす。…街路樹ではこの働きが扇風機の役をして空気が涼しくなる」

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街路樹の伐採中止・保存求める陳情書を採択 千代田区議会 企画総務委員会(2016/10/17)

 

 

 

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 大京グループの大京穴吹不動産と大京リフォーム・デザインは11月8日、「ホームステージング」事業を開始すると発表した。

 同事業を開始するのは、政府の住宅政策が新築供給からストックへの有効活用へと転換しようと図っている背景があり、大京グループは10 月26 日に発表した中期経営計画「Make NEW VALUE 2021~不動産ソリューションによる新・価値創造~」でも、売買仲介及びリノベーション事業のシェアを拡大し、市場成長率を上回る水準で成長させることを打ち出している。

 大京穴吹不動産は年間約7,000 件の仲介実績と業界トップクラスのリノベーションマンション販売戸数の実績を持ち、大京リフォーム・デザインはマンションリフォーム売上で業界3 位(リフォーム産業新聞調べ)、年間約7,000 件以上のリフォーム実績があり、新築から中古までマンションに精通している強みを生かすとしている。

 ホームステージングは片付けや掃除、インテリアを含めたトータルコーディネートで、空き家を含む中古住宅を魅力的に演出し、不動産売買を円滑にするためのサービスで、米国では30 年以上前から一般的に行われている。わが国では2013年8月、日本ホームステージング協会が設立されたほか、野村不動産アーバンネットも独自のサービスを行っている。

 大京グループ2社は、日本ホームステージング協会の企業会員となり社員約40 名が同協会のホームステージャーの認定資格を取得した。

日本ホームステージング協会 今秋に世界規模のイベント開催(2016/2/25)

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「北仲通北再開発等促進地区地区計画」

 三井不動産レジデンシャルと丸紅は11月1日、横浜市中区の大規模開発事業「北仲通北再開発等促進地区地区計画」(約7.5ha)の中心に位置する超高層ミクストユースタワーの建設に着手したと発表した。

 同計画は、東急東横線直通横浜高速鉄道みなとみらい線馬車道駅に直結する新たなランドマークとなり、横浜市最高層・最大規模となる総戸数1,100戸超の分譲住宅と宿泊施設、商業施設、文化施設等を一体的に開発するもの。設計・施工は鹿島建設。竣工は2020年2月の予定。2020年6月末に移転する予定の新市庁舎に近接することになり、新たなランドマークが誕生する。

 建物は地上58階建て・約200m延べ床面積約168,000㎡の超高層ミクストユースタワー。5階から58階(46~51階を除く)は総戸数1,100戸超の分譲マンションとなる。ロサンゼルスに本社を置き、北米、アジア、ヨーロッパに約25,000室以上のサービス付き長期・短期滞在型宿泊施設を運営している「オークウッド」のロビーが46階に設けられ、51階までの各フロアに客室(計175室)が設けられる。低層階の1、2階には、延床面積約6,000㎡の商業・文化ゾーンとなる。

 また、横浜市認定の歴史的建造物を文化創造の核として保全・復元するため、建物基壇部には、日本の産業黎明期の生糸輸出拠点となった倉庫群の復元を行い、横浜市認定の歴史的建造物である「旧横浜生糸検査所付属生糸絹物専用B号倉庫およびC号倉庫(倉庫棟)」の保全を行う。

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完成予想図

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 昨日(10月31日)、「分譲戸建てから『勝手口』が消える…」記事を書いたその日、いつもユニークなアンケート調査をするアットホームが「戸建て・マンションの“ご近所付き合いの違い”調査」をまとめ発表した。

 首都圏の30~60歳代の「持ち家」に住み始めて2 年以上経っている既婚女性624名(一戸建て312 名、マンション312 名)を対象にネット調査したもので、①近所との現在の付き合いは「親しい」一戸建て50.0%、マンション34.3%②理想の付き合い方 マンションでも半数以上は「立ち止まって会話交わす」くらいが理想③近所付き合いが「苦痛」と思うことがある 一戸建て34.3%、マンション28.5%④「嫌いなご近所さんがいる」一戸建て42.3%、マンション36.5%⑤近所に苦情を言ったことがある 一戸建て13.1%、マンション25.6%⑥近所に言った苦情1 位 一戸建て「車や自転車の駐車」マンション「子供が走る音」-などの結果が出た。

 近所との“仲良し度”では一戸建てが平均60.2点、マンションが平均53.8点、近所付き合いの“満足度”では一戸建てが平均64.9点、マンションが平均63.6点となった。近所付き合いは「必要」という人は一戸建てが79.8%、マンションが72.4%だった。

 また、お隣のことが「好き」は一戸建てが42.9%、マンションが29.5%、お隣のことが「嫌い」は一戸建てが21.2%、マンションが12.8%だった。

 近所付き合いが「苦痛と思うことがある」は一戸建てが34.3%、マンションが28.5%だった。

 近所に「苦情」を言ったことがあるのは、一戸建てが13.1%、マンションが25.6%で、その1位は、一戸建てが「車や自転車の駐車」で、マンションは「子どもが走る音」だった。このほか、「ゴミやものが飛んでくる」「たばこの煙」(マンションに多い)「ペットの鳴き声」(一戸建てに多い)「子どもの叫び声(泣き声)」「歩く音」(マンションのみ)、「喧嘩の声」(一戸建てに多い)などで、「その他」も一戸建てが12.2%、マンションが22.5%だった。

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 〝あばたもえくぼ〟〝愛と憎しみは紙一重〟というくらい夫婦関係だって難しいのに、近所付き合いが容易でないことが浮き彫りになった調査だが、戸建てもマンションもそんなに悪い結果でなくてほっとした。女性だけでなく、男性にも聞けばまた違った答えが出たかもしれない。今度は男性のみにアンケートを取ってほしい。記者は近所の女性を「嫌い」と思ったことなど一度もない。その逆で、「好き」な部類に入る人が圧倒的に多い。

 「苦情」の原因は様々だが、「子どもが走る音」「歩く音」はその人が悪いのではなく、分譲した業者、施工した業者が悪いのだし、子どもやペット(鳴かないものもあるが)は泣(鳴)かないほうが心配だ。「喧嘩の声」に苦情=仲裁だと思いたいが=を持ち込む人は立派だ。

 個人的には、マンションで「タバコの煙や臭い」を嫌いな人が22件(有効回答350名)あるのは予想できるとはいえショックだ。マッカーサー、チャーチル、吉田茂、ドストエフスキー、夏目漱石、松本清張、キセルを持つ浮世絵の美人画、ゴッホ…はみんなタバコ好きだった。淡路恵子さんは「タバコは私の6本目の指」という名言を残した。タバコを禁止したのはヒットラーであり「イスラム国」だ。タバコは文化であり、嫌煙運動は間違いなく文化の破壊、優性思想につながる。

分譲戸建てから「勝手口」が消える わが国の文化の崩壊ここにも(2016/10/31)

 

 

 

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第19回「木の家・こんな家に住みたい」作文コンクール記念写真(住宅金融支援機構すまい・るホールで)

 日本木造住宅産業協会(木住協)は10月29日、第19回「木の家・こんな家に住みたい」作文コンクールの審査発表・表彰式を行った。

 作文コンクールは、「木の家」「木の建築物」「その材料としての木」のテーマに沿って語ってもらうもので、国土交通省、文部科学省、農林水産省、環境省、住宅金融支援機構などが後援。全国と海外5カ国の小学校から1,599校22,536の応募があった。

 冒頭挨拶した木住協・市川晃会長(住友林業社長)は、「皆さんからいただいた作品を、ここにお揃いの先生方に審査していただきましたが、先生方からは『今年は今まで以上にびっくりするくらい素晴らしい作品が多かった』と伺いました。

 私も皆さんの作品を全て読ませていただきましたが、木の家を通して、ぬくもり、優しさ、頑丈さ、そして、そこから生まれる将来の夢、お年寄りを思う優しい心、さらに、自然災害、バリアフリー、環境との調和など、世の中の関心事を敏感に感じ取り、それらが小学生らしい純粋な視点で書かれていて、とても心を打たれました。

 本当に甲乙つけがたい素晴らしい作品ばかりで、審査をしていただいた先生方も、さぞ苦労されたことと思います。

 私はこの作文コンクールが、皆さんにとって新しい発見や新しい感動を覚えるきっかけとなり、大地にしっかり根を張る大木のように、感性豊かな立派な大人に育っていってくれることを期待しています。

 この作文コンクールのテーマを支えている“木”は、未来につながる日本にとっても大切な資源です。少し難しい言葉ですが『サスティナブル、持続可能な資源』と言います。

 木は、1300年以上も前に建てられた法隆寺のようなお寺から、皆さんの家やその中の家具、ノートや鉛筆など様々な材料に使われています。そして今では、木を使った発電もできるようになりました。

 私たち日本木造住宅産業協会は、これからも木を大切にして、人や環境に優しく、ぬくもりのある、頑丈で、安全安心な木の家を、そして皆さんに感動を与えるような家をこれからも一生懸命に造っていきたいと思います」などと語った。

 また、来賓として登壇した国交省・住宅局住宅生産課長・真鍋純氏は、「作文は香りとか手触り感が生き生きと語られており、行政担当者として原点を知らされた」と祝辞を述べた。

 この日は、各大臣賞、木住協会長賞など28作品と佳作21作品、最優秀団体賞1校、優秀団体賞3校が発表され、各大臣賞についてはそれぞれ低学年と高学年の受賞者6名から作品朗読も行われた。

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市川会長

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 朗読された作文は、主催者の意向を忖度した親や学校の先生の指導・アドバイスを受けた結果、大人顔負けのこましゃくれた〝大人〟の匂いが鼻につく作文もあったが、全体としては世の中の関心事を敏感に感じ取り、それらが小学生らしい純粋な視点」で書かれおり、会場の参加者を感動させた。

 その中でも、記者の一押しは、農水大臣賞(高学年の部)を受賞した新潟県長岡市立青葉台小学校4年生・宮下月希さんの「わいど木のファンに」と題する作品だ。「わいど」とは「わたしたち」という意味の青森方言で、「わいど木」は転じて「青森ヒバ」の意味だそうだ。

 お父さんの実家のトイレは青森ヒバが使われており、その香りに驚き、貴重な木であることを突き止めていく展開がいいし、トイレが「私のひそかな観光場所」と結んでいるのが全体をきりりと締めている。以下、本人とお母さんの了解を得たので全文を紹介する。

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宮下月希さん

わいど木のファンに

新潟県長岡市立青葉台小学校4年 宮下月希

 いつも必ずおじいちゃんの家へ夏休みに帰省すると、行く場所があります。青森のむつ湾が一望出来るとても景色の良い場所です。同じ日本に住んでいながら、私の住む県では、絶対に見ることの出来ない、気持ちがリラックスできて、心が開けるそうかい感に、ひたれる最高の思い出の地です。その景色を見るために、いつも行ってもらうのですが、そこに、トイレがあります。とてもきれいなトイレでびっくりする位新しく感じます。トイレを好きだと言うと、おかしいかも知れませんが、私はこのトイレに入るのが、とても楽しみの一つになっています。

 他の人からしたら、何気ないふつうのトイレ。でも私は、そのトイレに入ると、ほっとします。トイレの入り口のドアを開けると、とても良い香りの木のにおいが、一気に私の鼻の中に入ってきます。木の香りは、とてもリラックスします。トイレが、良い香りと言うのも、変ですが、私は、そのトイレの木の香りが、毎年行く度に忘れられません。

 初めは、そのトイレがヒノキの香りだと思いました。ヒノキの木のにおいは、とてもいやされます。それと同じ木の香り。このトイレは、ヒノキの木のトイレではなく、青森県の有名な、青森ヒバというヒバの木を使って建てたトイレでした。

 ヒバの木、調べたらヒノキ科だと言うことがわかり、同じヒノキ科だから、香りも似ていることがわかりました。ヒバは、臭いや湿気をとる力が、ばつぐんに良いそうで、その機能を最大限にいかせるのが、家であり、そしてトイレではないかと思いました。トイレの臭いをヒバが、きゅうしゅうしてくれているのです。だからいつ行ってもヒバの良い香。消臭がばつぐんなんだと思います。

 私は、このトイレが、はずかしいけれど気に入っています。このトイレに入ると、気持ちが安らぐまほうのような木のトイレなのです。ヒバの木で、建てられた家に住めたら、どんなに幸せだろうと私は、いつも、ヒバトイレに行くと考えてしまいます。いつか私が大人になって、自分の家を建てられたら、絶対にヒバの木で、建てたいと思います。青森ヒバは、直径が70センチになるのにおよそ杉の木の三倍もかかり、およそ三百年もの年月がかかるそうで、とてもきちょうな木です。日本三大美林といわれているほど、きちょうな木だそうです。そんな木で建てた家は、何よりのぜいたくなお家です。トイレに使われているのは、もっとぜいたくな気がします。そんな、きちょうな木で作ったトイレと出会えて、何だか、とてもきちょうな所に自分は、いるのではないかと思えてきました。

 青森で毎年いろいろ連れてってもらうけれど、来年もまた、ヒバトイレに、行ってもらおうと思います。私のひそかなかん光場所です。

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左から三交不動産専務取締役・三木亨氏、同取締役・若山文則氏

 三木氏と若山氏には、表彰式が終わってから喫煙室でお会いした。一言二言、話したら、木の香りではなかったがわが故郷の三重県の方言の香りがしたので「どちらの方ですか」と声を掛けたら三交不動産だった。2年前は、同社の小井氏とばったりお会いし、その後、場所を変えてたくさん酒を飲ませていただいた。何のお返しもできないが、今度、三郷中央でマンションを分譲するので見学して記事にしたい。

 読者の皆さんはご存じないかもしれないが、三重県はわが国有数の山林県で、かつて〝山林王〟と呼ばれた諸戸財閥発祥の地だ。三交不動産も首都圏のデベロッパーに負けない素晴らしい戸建て団地を開発している。

 主催者と審査員の皆さん、審査に手心を加えよとは言いませんが、エールを送る意味で一つくらい表彰していただきたい。三重の小学生の皆さんもがんばれ。どこにも負けない山と木がある。

木住協「木の家・こんな家に住みたい」作文コンクール 最多応募2万4000作(2014/10/26)

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「ホシノタニ団地」

 ブルースタジオが企画・設計監修を手がけた小田急電鉄のリノベーション賃貸住宅「ホシノタニ団地」が、日本デザイン振興会が主催する「2016年度グッドデザイン賞」金賞(経済産業大臣賞)を受賞した。

 「ホシノタニ団地」は、小田急線座間駅前に所在する昭和40年代築の小田急電鉄の社宅(4棟)を賃貸住宅と市営住宅のほか、公益に資する複合施設として再生したもの。1階部分(一部の棟)には、市営の子育て支援施設と民間企業の運営によるカフェを誘致し、敷地内には、貸し菜園、ドッグランなどを設け地域に開放している。

 審査員からは、「かつての駅前の社宅の建物をそのまま利用し、新たに賃貸住宅と公営・民営のコミュニティ施設とに再生した事例。築後40年程を経て老朽化していた建物と敷地を、まちに開かれた全く新しい生活の場に編集し直した先端的な試み」として評価された。

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ブルースタジオ 小田急電鉄の社宅再生リノベ「ホシノタニ団地」完成(2015/6/26)

 

 

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 積水ハウスグループの積和不動産関西は10月26日、大阪市中央区の真宗大谷派難波別院にある「御堂会館」の建て替え事業に着手したと発表した。事業スキームは、真宗大谷派難波別院の境内地の一部に60 年間の定期借地権を設定、真宗大谷派難波別院が賃貸人、積和不動産関西が賃借人となる。建て替え後は、東急ホテルズが運営する寺院山門と一体となったホテル「エクセルホテル東急」を中心とする複合施設となる。施工は竹中工務店で、2019年に開業する予定。

 大阪のメインストリートである御堂筋の名前の由来ともなっている「南御堂」難波別院は、親鸞聖人がひらいた浄土真宗の教えを400年にわたり伝えてきている。

 「御堂会館」は1961年に難波別院の山門を兼ねて建設されたが、施設の老朽化が進み、2016年1月に閉館された。難波別院は将来にわたって浄土真宗の教えを発信していくために「御堂会館」が必要であると考え、建て替えを模索してきた。

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 「エコ・ファースト企業」39社で構成するエコ・ファースト推進協議会は10月24日、全国の小中学生を対象にした創作ことわざ第7回「エコとわざ」の受賞作品を発表。953点の応募作品の中から次の各賞を選んだ。各加盟企業賞(27点)の合計30作品を表彰する。

  ・環境大臣賞(東大阪市立玉川中学校2年・森田友梨さん) ちりも積もれば山となる エコが積もれば地球が輝く

・エコ・ファースト推進協議会優秀賞(東村山市立八坂小学校3年・本橋隼人さん) 木を植えて 次の世代へ 緑のたすき

・日本ことわざ文化学会賞(高砂市立米田西小学校6年・杉原杏由子さん)種ひとつ わたしの瞳に 森林(もり)映る

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 各賞はいかにも「冠」にふさわしいものだろうが、記者は以下の3点が子どもらしくて分かりやすいいい作品だと思う。

 ・一条工務店賞(大垣市立興文小学校4年・村上顕光さん) エコのため なくすものは ぼくのエゴ

 ・リクルートホールディングス賞(大田区立嶺町小学校4年・永井詩乃さん) 持物は、ハンカチ・ティッシュ・エコバッグ

 ・積水ハウス賞(沼津市立第三小学校1年・三善優花さん) あおいほし くろやはいいろ まぜちゃだめ

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