野村不動産 都市型商業施設「GEMS神田」開業 今後も続々13物件
「GEMS神田」
野村不動産は7月5日、都市型商業施設シリーズ第4弾となる「GEMS神田」をオープンする。神田駅から徒歩5分の8階建て全9店舗の飲食ビル。飲食店を縦に積み重ねたような形態が特徴で、周辺のオフィスワーカーや居住者が普段利用できるような店舗づくりがコンセプトで、同社は今後も年間6棟くらいのペースで拡大していく。1日、オープンを前に報道陣や関係者に公開された。
同社の都市開発事業本部商業施設事業部担当執行役員・横山英大氏は、「当社の向こう10年間の経営計画で商業施設の拡大を成長戦略の柱に掲げ、3,000億円の投資を行うことを発表しているが、この『GEMS』もその一つ。これまで稼働した3物件とも絶好地用で、すでに着手しているものも13物件にのぼっており、これから続々オープンする」と語った。
この日は、報道陣のほか地元の関係者・オフィスワーカーなど500名を呼び、大試食会を行った。
左から野村不動産都市開発事業本部商業施設事業部長・中野康光氏、山内氏、原田氏、横山氏
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「GEMS」は一見して、至るところにある狭小敷地の雑居ビルと変わらない。しかし、用地の仕入れから、設計施工-営業(リーシング)・運営まで同社と同社グループが綿密な計算の上で展開しているという点ではこれまでにないビジネスモデルだ。飛躍的に拡大している「PMO」と同様、事務所ビルや飲食ビルのありようを一挙にかえる可能性を秘めていると思う。
GEMSのスタッフは7人だそうだ。スタッフが自らの足で店舗を駆けずり回り、経営者を説得し提案し
開発(仕入れ)から設計施工-英儀容・運営まで一貫体制で展開しているのも大きな特徴だ。スタッフは7人だという。
スタッフの女性に聞いた。毎週5件くらいは飲食店を利用してサーチしているという。5×7×4×12=1,680件。つまりGEMSのスタッフは年間にしてこれだれの飲食店の情報を仕入れているということだ。
これはすごい。横山氏は「1週間に1物件くらい仕入れたい。プラウドを超えたい」と冗談交じりに話したが、この部署はすごいことをやるかもしれないと思った。単なる飲食の情報だけでなく、土地や経済、世の中の動きを最前線でキャッチしているからだ。
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発表会では、1階にオープンする「ワイン食堂八十郎 神田鍛冶町」を経営するジー・フィールド社長・原田智昭氏と紀行作家・山内史子氏のトークショーが行われたのだが、その前にあいさつした横山氏が「これは余談ですが」と、山内氏との小さいころのエピソードを暴露した。これが最高に面白かった。
横山氏はやおら「山内さんとは小さいころからの友だちで、風呂も一緒に入ったことがある」と話したのだ。
この話に記者は敏感に反応した。もちろん、記者も小さいころは、ルノワールの描く裸婦の農夫のような、あるいは縄文時代の土偶のようなムチムチの母親と一緒に風呂に入ったし、おばあちゃんと一緒に寝ていたので、干し葡萄のようなしなびた乳首を鼻の穴の中に入れ、フンと力を込めて水鉄砲のように鼻から吐き出す遊びをやっていた。祖母に「女性」を感じたことはなかったが、5~6歳のころには同年代の女性を異性として感じていた。フォークダンスで彼女と手を握れるのがとても嬉しかった。
なので、横山氏と山内氏が一緒に風呂に入るなど信じられなかった。会見後に改めて聞いたら、横山氏は「わたしの親戚が銭湯で、たまたま小学生の低学年の頃、彼女と一緒に風呂に入った。女? 全然意識しなかった。山内さんのお兄さんはわたしと一緒の野球部員で、彼女は双子の弟だと思っていた」と話した。これに対して山内さんは「野球部のマネージャーをやっていました。横山さん? 全然(男だと)意識などしなかった」と答えた。(双方とも意識しなかった割には、よく覚えている)
山内さんは「週に一斗ですから、一日一升は飲む」という酒豪だそうだ。
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記者はカキが大好きで、「カキ」と聞いただけでパブロフの犬のように条件反射し食べずにいられなくなるたちだ。財布が許せば10個くらいは平気で食べる。とはいえ、日本一おいしいカキはわが故郷・三重の世界ブランドの的矢のカキだと思っている。〝山椒は小粒でもぴりりと辛い〟のたとえそのものだ。そんじょそこらのカキと一緒にしてほしくない。
そしてこの日、6階に生カキが食べられる店があると聞いたので早速駆けつけた。6階の「GARDENS」で、三陸のカキだった。その店で勧められたのが〝東松島の日本一のカキ〟だった。記者の自尊心を刺激した。〝そんなバカな〟。恐る恐る1個食べてみた。これには降参した。最初はものすごくやさしい味だが、そのうちに深くてミルキーな味が口の中に広まった。もいえぬ、それでもお前は生きているのか、男なのか女なのかといった性、あるいは生の根源を問われるような味と香りだ。母親の母乳はきっとこんな味だったのではないかという気持ちにもさせられた。2個で950円だ。ほかのカキも2個食べて全部で5個食べた。安くはないが、これを食べたらほかのカキなどどうでもいい。白ワインも2杯飲んだが、南アフリカ産で酸味が利いてなかなかおいしい酒だった。
勘定を払おうと思ったら、何とただでいいという。プレス向けに無料で試食・試飲できるということだった。(ならばあと3個くらい食べておくべきだったか)
ただと聞いて安心はしたが、この日は記事を書くために来たのだから、もう帰ろうとしたら、この店のスタッフが「ライバルは2階」と話したので、そのライバル店にも寄って、福岡県の地元しか飲めないという日本酒「山の寿」と、前菜の三種盛を頂いた。この店のトウモロコシのムースは絶品。トウモロコシを一度焼いてからムースにしているのだそうだ。芋焼酎でも、焼き芋焼酎がおいしいのと一緒だ。この店もお勧めだ。ほかの店は見る余裕がなかった。
〝東松島の日本一のカキ〟
「GARDENS」
「ワイン食堂八十郎 神田鍛冶町」
大和ハウス 賃貸新商品 「市場は縮むが当社は伸びる。1兆円は近い」堀専務
「セジュールNewルピナ」完成予想図
大和ハウス工業は6月30日、賃貸住宅業界で初めてリチウムイオン蓄電池を標準装備した賃貸住宅商品「セジュールNewルピナ」を7月1日から発売すると発表した。
同社が2002年3月に発売した北欧風の外観を採用した2階建て商品「セジュールルピナ」のトラディショナルなデザインをペースとし、木目調外壁と白色の窓枠・破風のアクセントが際立つ7色のカラーバリエーションとすることで、北欧デザインを好む入居者ニーズに応える。
また、今後飛躍的に伸びると予測されている家庭用リチウムイオン蓄電池を業界に先駆けて導入することで、入居者の「安心・安全」に配慮する。
搭載するのは、エリーパワー社の2.5kWh家庭用リチウムイオン蓄電池で、幅32㎝、奥行き58.8㎝、高さ51.4㎝のコンパクトなため、収納やデッドスペースに設置でき、鉛蓄電池や水素蓄電池と比べ高効率で長寿命、事故も少ないのが特徴。
地震や落雷などの停電時に自動的に放電モードに切り替わり、非常時電源として家電製品などに電力を供給する。満充電の場合、連続8時間使用できる。
販売地域は全国で、販売本体価格は45万円/坪から(税別)。販売目標は年間500棟。
商品発表会に臨んだ同社取締役専務執行役員 集合住宅事業推進部長(東日本担当) 集合住宅事業担当・堀福次郎氏は、「従来商品と比べカラーバリエーションを増やし、2階建てから3階建てにも対応し、6~19人の小規模保育所やコンビニ、高齢者施設など非住宅を併設する提案を積極的に提案していく。中長期的には賃貸のマーケットは縮むが、入居者目線の商品づくりを進めていけば、現在、10%の当社のシェアは15%から20%には伸ばせる。前期売上高は8,800億円で今期は9,450億円だが、1兆円に迫るはずだ」などと、強気な姿勢を見せた。
堀専務
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堀専務の独演会を拝聴しながら、記者はずっと別のことを考えていた。断っておくが、新商品については細大漏らさずメモを取った。ほぼ完ぺきに取材できた。
堀専務の話は、本人か「地声が大きいので、マイクを使うとうるさいと怒られますので」と前置きし、マイクなしで話されたのだが、やはり声は大きく明瞭で要領を得ていたからだ。
一つだけ聞き漏らし、気になったのは冒頭の前置きの部分で、堀専務が「株主総会も無事に終わり、イギリスのEU離脱による株価の下落も止まり戻し基調なのと、2人目(と聞こえた)の…ため、今日は気分が浮き浮きしている」と話したことだ。
株価の下落が止まったのは記者も嬉しいが、堀専務の「2人目」の発言には、66歳の専務の子どもが生まれる訳はないし、孫の一人や二人生まれたからといって、そんなに気分が浮き立つものではなかろうとずっと考えていたのだ。
そこで、発表会後にその理由を聞いた。堀専務によると「直径が20㎝、わずか3日間しか咲かない大賀ハスが咲いたのです。もう15年前にお客さまにもらって大事に育てている」「えっ、専務の家には池があるんですか」「いや、大きな火鉢を3,000円で買ってきて、水を張って育てている。ところが、水を張ると蚊がわくので、女房が怒るんですよ。そこで、金魚を入れたら(大きな自分の腹を突き出して)こんなになっちゃった」と、これまた独演会の続きをやり始めた。
別の記者が「わたしにも仕事の話をさせてください」と遮らなければ、二人で延々とハスの話やらジャパネットたかたの名物会長・高田明氏のことなどに花を咲かせるところだった。
なぜ高田氏を持ち出したかというと、堀専務は声質と体形、それとタレント向きでない顔(写真参照)は高田氏と全く異なるけれども、分かりやすく人を引きつける語りがそっくりだからだ。
例えば、「8時間持ちます」「テレビも冷蔵庫も携帯の充電ももちろん大丈夫」「蓄電池の値段は90万円。でも賃料は上げません。そのエリアの最も高い相場に抑えます」「マーケットは縮みます。しかし、当社は伸びます」「高齢者施設や小規模保育所などの併設することをどんどん提案していきます」「賃貸住宅事業部の今期目標は9,450億円ですが、1兆円に迫ります」「当社の10%のシェアを15%まで伸ばすのは容易」…などだ。
このような立て板に水の話を聞きながら、記者は同社がCSテレビの枠を買い取って、堀専務が話せば営業マンにして100人分くらいの働きをするのではないか、空気だってその気になれば〝ダイワの水はおいしいですよ〟と売りかねないと考えた。
バカなことをずらずらと書いたが、堀専務の話の中で一番重要なのは「オーナー目線ではなく、お客さま目線」という言葉だ。
多くのハウスメーカーはこれを忘れているのではとずっと思ってきた。居住性能より利回りを最優先する商法がこの業界ではまかり通ってきたのではないか。記者は分譲が主な取材グラウンドだからそれがよけいにわかる。賃貸より持ち家重視の政策も後押ししているのだが、賃貸がプアだからみんな賃貸脱出を図ろうとし、分譲が売れるのだ。賃貸オーナーは建てたその日から空き室におびえる日々を過ごすことになる。
その流れをダイワハウスは変えようとしている。記者の身内からも「ダイワの賃貸マンションはいいわよ」という声を聞いている。堀専務は入居者の声に耳を傾けているはずだ。だからこそ、これまで6年間の実績が約2,100戸だった数字を1年間(500棟は戸数にすると約3,000戸)で軽くクリアすると話せるのだ。
来年の今頃はどのような話が飛び出すか。大賀ハスはまた咲くのだろうか。プレゼントしたお客さんも15年間も育ててくれた堀専務に感謝しているはずだ。顧客主義とはそのようなものに違いない。記者はもらったカサブランカを10年くらいで枯らしてしまった。
堀専務が咲かせた大賀ハスの大輪(堀専務提供)
「心に響いた『女性登用は経営トップの決意次第』」 輸入住宅協議会・岡田会長
岡田氏(左)とクレール・ドゥロンジエ女史
輸入住宅産業協会は6月28日、通常総会後に「女性が活躍するカナダ・ケベック州 その女性の働き方とライフスタイル」と題するカナダ・ケベック州政府在日事務所代表のクレール・ドゥロンジエ女史の特別講演会を行った。同女史が「労働市場への女性参加を進めるのは経営トップの信念・決意が必要」と何度も強調したのに対し、同協議会・岡田正人会長(スウェーデンハウス社長)は、「経営者の意思がもっとも重要という話が心に一番響いた。経営者の一人として反省もしている」と講演会後の懇親会で語った。
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同女史の言葉を待つまでもなく、わが国でも女性登用のカギは経営トップの意思にあるといわれる。その通りだと思う。ボトムアップでは「女性活躍」は実現しないと思う。スウェーデンハウスが率先して男女差のない労働環境を整えていただきたい。
同女史によると、カナダでは選出議員のうち26%が女性議員で、閣僚のうち30%の大臣が女性であり、ケベック州の公務員の上級管理職・幹部のうち44%が女性だという。
建設業界でも、アクションプログラムを策定して、2018年の全体目標として3%を女性にする目標を掲げ、すでに3%存在している断熱工、タイル工、左官、塗装工、測量工などは目標を10%に引き上げるという。
目標達成には、仕事と家庭の両立のための保育サービスなどのサポートサービスが重要で、職場復帰の可能な母親の育児休暇と父親の育児休暇が欠かせないとした。父親の育児休暇取得率は1995年にはわずか4%だったのが、2012年には78%の新米パパが平均4.4週間の育児休暇を取得したという。
同女史は最後に、ゴールドマンサックスのキャティ・マツイ氏の次の言葉を引用した。
「日本は現在のモデルで驚異的な成功を収めた。世界第3位の経済大国になったが、驚くべきことは人口の半分の活躍なしにそれを成し遂げたことだ。もし全人口が活躍していたら、日本は今日どんな姿になっていたか想像してみてほしい」(これは正確ではない。わが国伝統の家父長制が支えたのであり、糟糠の妻が企業戦士を送り出したのだ⇒記者注)
町田氏(左)とクレール・ドゥロンジエ女史
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記者は最近、このところの地価とマンション価格の上昇に頭を痛めている。これまでも何度も書いてきたが、4人家族の平均的なファミリーが理想的とする30坪のマンションを購入するとすれば、間違いなく価格は最低でも4,500万円から5,000万円、年収にして10倍はする。東京23区ではこの価格帯は絶望的だ。都心勤務だと1時間では無理ではないか。
仮にそれが取得できたとして、勤務時間が9時5時の会社では子どもを保育園に預けるのも大変だ。女性、あるいは夫は職場を変え、自宅近くの条件が悪いパート・アルバイトに転職するしか選択肢はなくなってくる。
かくして住宅難民は郊外居住を迫られ、仕事を優先すれば子どもが産めなくなる-そんな社会に限りなく突き進んでいるように思えてならない。
この話を同女史に伝えたら、ケベック州では「わたしが子ども二人を育てたときの保育園は朝の6時から夕方の6時までだった。今はもっと拡充されているはず。格差の拡大はケベック州でも同じ」と話した。
特別講演会(セルリアンタワー東急ホテルで)
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特別講演会で進行係を務めた同協議会・町田ひろ子副会長がスピーチの中で、「わたしは若いころ、美貌で勝負するか、男と一緒に戦えるかと言われたことがある。わたしは両方ともできなかった」と話し、会場を沸かせたが、記者はドキリとさせられた。基本的には、町田氏が若かったころと今とそんなに変わっていないのではないかと考えている。
町田氏は「この特別講演会を男性の色の強いこの業界の意識を変える機会にしましょう。住宅リフォーム市場が女性の活躍できる舞台となるよう、輸入住宅の枠を超えて新しい時代を切り開きましょう」と呼び掛けた。
「多摩NTに風が吹く」 女性の仕事・子育て・地域活動を考える 多摩NT学会が討論会(2016/6/13)
「中古住宅」呼称はどうなる 「既存住宅」か「既築住宅」か それとも妙案はあるか
輸入住宅産業協会の懇親会(セルリアンタワー東急ホテルで)
昨日(6月29日)行われた輸入住宅産業協会の総会後の懇親会で、国土交通省と経済産業省のそれぞれの来賓あいさつの中で「既存住宅」と「既築住宅」という文言が用いられた。いま「中古住宅」の呼称変更を求める声があり、国交省も「いい呼び名を考えて」と呼称変更に前向きなだけに、なかなか興味深い挨拶だった。
まず、「既存住宅」という表現をしたのは、国土交通省住宅局住宅生産課 木造住宅振興室長・澁谷浩一氏だった。
続いて登壇した経済産業省製造産業局住宅産業室課長補佐・志村典彦氏は「既築住宅」を用いた。
記者は普段から「既存住宅」という言葉には慣れているが、「既築」は「鬼畜米英」を連想させるので好きな言葉ではないので、早速、志村氏にどうしてそのような表現になったのか聞いた。
志村氏は「特別の意図があるわけではない。新築に対して既築と言ったまで」と話した。同省では少なくとも2008年から「既築」という文言を用いて様々な補助事業を行っている。
傍にいた澁谷氏にも同じ質問をしたら、澁谷氏は、「あまり文言にこだわらないほうがいい」と語った。
国土交通省では現在、「既存住宅」と「中古住宅」が混在して用いられている。民間の不動産流通経営協会(FRK)では、「中古住宅」は平成18年度から「既存住宅」に改められている。
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「中古住宅はイメージが悪い。なにかいい表現はないか」と、呼称変更の声を真っ先にあげたのは、積水ハウス会長兼CEOで住宅生産団体連合会(住団連)の和田勇会長だ。和田会長はさまざまな会合で呼称変更を呼び掛けている。
これは冗談だろうと記者は思っていたが、国交省住宅局長・由木文彦氏も乗り気のようで、「省内では27年度から中古住宅を既存住宅にするようにしたが、もっといいネーミングは民間で考えていただきたい」と発言している。
いったい「中古住宅」はどうなるのか。個人的な意見では、やはり「既築」はやめていただきたい。しかし「既存」だって「毀損(きそん)」といういやなイメージにつながる。「既存」とするならば「既存(きぞん)」と「そ」に濁点をつけていただきたい。
消費増税問題より、株価の下落に懸念示す 2×4協会 市川俊英会長ら
左から細田氏、市川氏、加藤氏(都市センターホテルで)
日本ツーバイフォー建築協会の市川俊英会長(三井ホーム社長)が6月16日行われた総会後の記者会見で、このところの株価の下落に懸念を示した。
消費増税の延期に対する記者団の質問に答えたもので、「消費税は年明けから上がらないのではという声もあり、駆け込みとその反動についての対策も打ってきたが、マーケットにはそれほど影響は出ていない。それより消費者は低金利に関心が高く、ゴールデンウィークはかなり動いた。この傾向は当分続くと思うが、この1週間の株価の下落がどう影響するか注視したい」と述べた。
また、加藤博文副会長(三菱地所ホーム社長)も、「年明けからの住宅展示場への来場者数は前年比で2~3割増の月もあるが、消費増税というより低金利の影響。増税が先送りになったことで、受注が平準化されるのでよかった」と語り、細田正典副会長(東急ホームズ社長)は、「住宅展示場への来場は好調だが、受注増にはそれほどつながっていない。消費者は急いでいない。それより株価の下落など経済の不透明感が広がっていることがマイナスに働かないか懸念している」と話した。
同協会の今年度の重点施策について、市川会長は①ツーバイフォー工法の耐震性、耐火性・省エネ性の一層の向上・普及を図る②拡大する中高層・大規模建築について短い工期、低コストなどツーバイフォーの利点を生かし積極的に対応していく③国策になっている地域材の活用など地球温暖化防止に貢献していく-など3つのテーマを掲げた。「協会設立40周年を迎え、住宅着工に占める位置は着実に定着しつつあり、今後も飛躍を期す」と語った。
「多摩NTに風が吹く」 女性の仕事・子育て・地域活動を考える 多摩NT学会が討論会
「多摩ニュータウンと女性―仕事、子育て、地域活動」(首都大学東京で)
多摩ニュータウン学会が6月4日、「多摩ニュータウンと女性―仕事、子育て、地域活動」と題する討論会を行った。「都心回帰」が進む一方で、職場から遠い郊外は仕事と子育ての両立が難しく、離職につながったり既婚女性は非正規雇用を選択せざるを得なくなったりする研究データをもとに、多摩ニュータウンで活動するNPOや保育園長、都市環境研究者などが問題提起を行い、参加者とともに考えるのが趣旨。
同学会の理事で東洋大学社会学部准教授・荒又美陽氏が司会進行役を務め、「たまこ部」永山氏と秋好氏、せいがの森保育園園長・倉掛秀人氏、NPO法人シーズネットワーク理事長・岡本光子氏、首都大学東京都市環境学部教授・松本真澄氏がそれぞれの立場から問題提起を行った。
荒又氏
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討論会後の懇親会で参加者の方が「風が吹いている」と話した。記者もその通りだと思う。後述するように、一般的な子育てファミリーの居住環境は悪化の一途をたどっているが、地域に住む子育て女性はお互い手を取り合い、緩やかではあるがさわやかな「風」を多摩ニュータウンにもたらしていると感じた。
永山氏と秋好氏は、「たまこ部は我が家のマンションの資産価値が下がらないように」という動機から発足した若いママさんたちの団体で、多摩センター周辺のグルメ、子育て、街づくりなどの情報を発信し、たまり場ともいうべき「親子カフェ」を設け活動していることなどを紹介。「保育園拡充で多摩市生きよ!」と結んだ。「積極的、ポジティブに考えるようにしている」という若者らしい言葉が印象的だった。
秋好氏(左)と永山氏
倉掛氏は「本当は3時間くらい話したい」と前置きしながら、「赤ちゃんが生まれる前後からサポートする環境が大事」「すべての子どもが育てられる共生の街づくりが欠かせない」「人類は親だけで育ったことはない」「保育園はコミュニティの一翼を担うべき」「子育てなど集中的にお金を使うデザインが必要」などの問題を提起。「保育所は朝の7時から夜の7時までオープンしているが、7時番の保育士のことも考えて」と訴えた。
倉掛氏
岡本氏は、原稿を用意し、一字一句わかりやすく語りかけた。これまで10年間のNPOによる一時保育、人材育成、アンテナショップの受託など様々な子育てやコミュニティ支援の活動を紹介。「子育てしながら社会とつながっていたい」という主婦の声を代弁した。
岡本氏
松本氏は、この50年間の間に個人の生活がドラスティックに変化し、核家族が固定化した社会・経済環境の下では「価値観の変化に対応する時間と空間をシェアする生き方が求められる」とし、一方で、「今の社会は〝下りエスカレータ〟であることを覚悟しなければならない」と学生にいつも言っているそうだが、「危うさを感じる」と話した。
松本氏
多摩ニュータウンの開発に携わった参加者からは「子ども・子育ての視点から街づくりを行わなかった反省はある」との声が聞かれた。
首都大学東京キャンパスは野草の宝庫
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埼玉大学准教授・谷謙二氏が「大都市圏郊外における居住と就業」と題する興味深い論文を最新刊の「多摩ニュータウン研究 №18」へ寄稿されている。
谷氏は戦後の東京圏の人口動態や移動、就業・雇用データを駆使して大都市圏の郊外居住が抱える問題点を指摘、1990年代の後半あたりから都心部への通勤が減少し、非正規雇用の比率が増大していることを明らかにした。以下、その一部を引用する。
「(多摩市から)都区部への通勤者数は1990年の2万6千人をピークとしてその後は減少し、2010年では1万8千人となっている。その就業者数に占める比率も低下し、1980年には46%もあったものが、2010年には26%まで低下している」
「1990年代前半までは、ファミリー向けの住宅供給が郊外に偏っており、結婚後は郊外に転出せざるを得なかった。しかしバブル崩壊後、都心周辺部の…手頃な価格のファミリー向け分譲マンションが供給されるようになった…郊外に転出する必要がなくなった」
「90年代後半以降、それまで正規雇用が一般的だった若年者においても、派遣やアルバイトなど非正規雇用が拡大した」
「都区部の常用雇用者に占める正社員の比率は69.6%なのに対し、郊外は56.1%と低い。この傾向は特に女性従業者で顕著で、女性の場合は都区部の正社員比率53.8%に対し、郊外は36.8%と、17ポイントもの開きがある。郊外で女性の正規雇用の割合が低いのは、結婚・出産でいったん退職した後に再就職する際、時間を調整しやすい非正規雇用につくという傾向が強いという労働力の供給側の理由もある」
「90年代後半以降の人口移動動向の変化により、郊外への人口移動は減少し、また郊外から都区部への通勤者は減少し、非正規雇用が増大する中で職住近接が進みつつある。少子化・高齢化の進展により、単身世帯、DINKS世帯も増加して、人々のライフスタイルは多様化している」
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「ライフスタイルの多様化」とはよく言われる。確かに「地域」より「家族」、「家族」より「個」が重視される社会にあって、個々が多様な生き方ができるように見える。
しかし、記者はアッパーミドルや富裕層はともかく、普通の中堅所得層は自らの意志で様々な暮らし方を選択する自由はほとんどないと思っている。
生活の基盤である住宅にそれは象徴的に表れている。新築か中古か、マンションか一戸建てか、分譲か賃貸か選択肢はたくさんあるように映るが、それぞれに一長一短があり選択は容易でない。
東京のマンション事情について概観すればそれはよくわかる。谷氏が言うように「バブル崩壊後、都心周辺部の…手頃な価格のファミリー向け分譲マンションが供給されるようになった…郊外に転出する必要がなくなった」のも事実だ。しかし、これは長くは続かなかった。平成7、8年ころからの数年間とリーマン・ショック後の数年間くらいしかない。この間、子育てファミリーは市場の波に翻弄された。
そして現在、都心部のマンション価格は暴騰し、もはやサラリーマンの手が届く範囲をはるかに超えてしまった。都心3区のマンション坪単価は最低でも500万円を超え、20坪で億ションとなる。
そればかりか、都内23区でも交通利便性の高いエリアは坪300万円を突破し、ほとんどの地域で坪250万円以上となっている。ファミリー向けの20数坪で6,000万円というのが相場だ。ローン金利が低いとはいえ、多額の借金を抱えるリスクが付いて回る。
都心部が絶望的で、23区内でも取得が難しくなったいま、「都心回帰」の選択肢があるのは一部の恵まれた層だけだ。一般的な子育てファミリーは「都心回避」する道しか残されていない。
耳障りのいい「職住近接」も、職業選択と居住の「自由」を享受できる層は限られている。お金のない人が職を確保することを重視すれば、「より広い」郊外型を断念し、「より狭い」住宅へ移り住むしか選択肢はない。
「都心回帰」の自由も「職住近接」の選択肢も奪われた子育てファミリーは、谷氏が指摘するように「時間を調整しやすい非正規雇用」という「労働力の供給側の理由」によって郊外居住を選ばざるを得なくなる。
生きるために子どもを育てるために居住性も職を犠牲にせざるを得ない現状は悲劇だ。「保育園落ちた日本死ね」という悲痛な叫びはわれわれの胸にぐさりと突き刺さる。
これは、ネオリベラリズムの社会の隅々への浸透の結果というべきか。
会員の都市計画工房代表・成瀬恵宏氏(懇親会で。成瀬氏とは10年くらい前か、ひょんなことからご一緒に多摩ニュータウンのすし屋で歓談したことがある。最近はイラクだかアフガンだか、インド、パプアニューギニアなどの街づくりに参画している。赤に近い派手なオレンジのシャツなどは岡本太郎でも着なかったのではないか。このデザイン感覚が信じられない。会場には奥さんもいらっしゃった)
「多摩NTにおける人的不良在庫」 吉川徹・首都大教授が軽妙発言
「既存住宅市場活性化元年の年に」 FRK・田中理事長
田中理事長
不動産流通経営協会(FRK)・田中俊和理事長(住友不動産販売社長)は6月9日、同協会定時総会後の懇親会で、「当協会は平成10年に『バリューアッププラン』と称し、独自にインスペクションを実施したことがあるが、残念ながら、ほとんど利用されなかった。今回は国をあげて位置づけて頂いたので、施行まで2年あるが、今年を『既存住宅市場活性化元年』と位置づけ、インスペクションの本格スタートの年にしたい」と語った。
また、今年4月にスタートした新・住生活基本計画に掲げてある「市場規模倍増に向け、私共も官民一体となって目標達成したい」と述べた。
不動産流通市場については、「この1年間の不動産流通市場は成約件数、平均価格とも前年を上回り、『好調」と言える1年だった。既存住宅の需要は底堅く、新年度に入ってもレインズの数字は好調を維持している」と話した。さらに、また、「囲い込み問題の懸念に終止符を打てるものと確信している」と問題解決に意欲を示した。
さらに、「業界の課題は営業手法、法律、ITと多岐にわたるとともにスピードが求められ、既存の委員会などでは追いつかない状況と判断し、私の諮問機関として、協会内部に『これからの不動産流通を検討する会』(通称これ検)を立ち上げた」と発表した。
総会後の懇親会(ホテルオークラ別館で)
RBA不動産流通カップ(野球大会)で優勝した住友不動産販売の岩井重人会長(FRK顧問=右)と準優勝した野村不動産アーバンネットの宮島青史会長(同理事)
「多摩NTにおける人的不良在庫」 吉川徹・首都大教授が軽妙発言
吉川氏
首都大学東京教授で多摩ニュータウン学会の理事を務める吉川徹氏が「多摩ニュータウンにおける人的不良在庫」という、極めて刺激的で機知に富みかつ本質をついた、ひょっとすると今年の流行語大賞にノミネートされそうな言葉を発した。6月4日に行われた学会が主催する「多摩ニュータウンと女性」と題する討論会場での質問に答えたもの。
「人的不良在庫」発言のきっかけはこうだ。
討論会では、「たまこ部」の永山菜見子氏・秋好宏子氏、せいがの森保育園園長・倉掛秀人氏、NPO法人シーズネットワークの岡本光子氏、首都大学東京助教・松本真澄氏がそれぞれの立場から問題を提起した。
記者は、問題提起者が楽観的、ポジティブに多摩ニュータウンについて語ったのに対し、「多様なライフスタイルといわれるが、普通のサラリーマンにとって多様な選択肢などない。都心のマンションは20坪で億ションになり、23区でも子育てファミリーマンションは6,000万円くらいする。時間と空間をシェアするなどとてもできない。絶望的な世の中にしたのはわれわれ団塊の世代の責任だろうが希望もある。学会と多摩ニュータウンを再生・活性化させるためには、吉川先生が仰ったマンションなどのハードとしての『在庫』と、老人力といっては失礼だが、この方々のソフトとも言うべき『知見』を結び付けるべきではないか」と質問した。
この質問に対して、20歳代と思われる永山氏が「そのようなおじさん、どこにいるんですか」と鋭く切り返してきた。
ドキッとした記者はとっさに「西浦先生に聞いてください」と振ったら、西浦氏は自らの論文の締め切りが迫っているのかパソコンに熱中されており、「ダメ」の目線を送られたので、「吉川先生、お願いします」と下駄を預けた。
すると吉川先生は「『年度』ごとに同じメンバーだけで凝り固まるのが悪い。学会もそう。年度ごとに(会員が)いなくなる。リノベして戻ってくるような、豪胆な人的在庫の組み換え、たな卸し(棚ざらしとは仰らなかったはず)をしないと人的不良在庫化する。世代間の交流がなく、若い人に知見が受け継がれていないのも問題。(高齢者を)おだてて引っ張り出してはどうか」と話した。(「年度」というモノサシに注文をつけられたのに大賛成。高齢者の時間はゆったり流れる。どうしてテニスと同じ時間でものごとを測ろうとするのか、世の中が間違っている)
吉川氏は最近発行された「多摩ニュータウン研究 №18」で、吉川氏が「大好きな」ショスタコーヴィチが他の作曲家の旧作から頻繁に「引用」「転用」したことを紹介し、「優れた建築物や基盤施設の『在庫』に満ちた多摩ニュータウン」の「在庫」を「引用」「転用」してはどうかと結んでいる。
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記者も学会の末席を汚しているのだが、ここで学会の紹介。
何よりいいのは年会費3,000円で学者先生の論文が読めることだ。学会誌は横文字で、表記が句読点ではなくカンマ・ピリオドのため、老眼のため区別がつかない年寄りには全然親切ではないのが残念だが、会費が会費だから文句は言わない。
それより素晴らしいのは、新潟県出身の学会会長・西浦定継氏(明星大教授)が会合のあとの懇親会などにショスタコーヴィチ級の1杯で3,000円の価値がありそうな特上の日本酒をプレゼントしてくれることだ。この日も、獺祭と同レベルという山口県の「雁木」と佐渡島の「風和(かぜやわらか)」に、赤と白のワインまで大判振舞をされた。
もうひとつは、総会などの会場となる首都大学東京や明星大学のキャンパスの自然と触れ合うことができ、大学の先生はもとより若い学生さんなどとも交流できることだ。知的な刺激は間違いなくボケ防止につながる。
つまり、①年間3,000円で論文が読める②1杯3,000円の酒がタダで飲める(この日は予定参加費2,000円が消費増税も延期されたためか1,000円にプライスダウンされたのがうれしいやら悲しいやら)③若者・(記者のような)馬鹿者・よそ者と交流できる-こんな素晴らしい会はない。「不良在庫化」しないためにも高齢者にお勧めだ。わが国の社会・経済状況を映す鏡のように予算も決算もどんどんシュリンクする学会を活性化させていただきたい。学会のリンクを貼り付ける。
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これはおまけだが、吉川先生は相当な「ショスタ」ファンだ。ここに音楽をこよなく愛した作家・辻邦夫のエッセー「わが音楽遍歴の風景」の一部を紹介する。「小説」の代わりにあらゆる仕事が当てはまるのではないかと思うからだ。
「現在、世界が危機に晒され、人々が頽廃と混迷の中に喘いでいるにもかかわらず、私が、廻転するコマの中心にも似た不動の一点に身を置いたような感じで世界を見られるのも、この<美なるもの>が私の運命の始まりであり、終わりであると思えるからだ。官能の陶酔に根ざしながら、官能を超えて精神の全オクターブを激しく燃え立たせ、その一瞬に『すべてよし』と叫ばせるような、そうした高揚した甘美な恍惚と充実と解脱感を、私は<美なるもの>の根源的特徴と考えているが、音楽の形でそれを受け取り、小説の形でそれを吐き出すことが、私の唯一の在り方なのだ。私はそれ以外のどんなものも欲しくない。そのかわり音楽を聴くことと小説を書くことだけは何としても与えてほしい。それだけは、大地に跪いても、懇願しつづけるつもりである」
西浦会長と理事の荒又美陽氏(東洋大准教授) 荒又氏はこの日(6月4日)が誕生日とかで、総会・討論会後の懇親会でケーキをプレゼントされていた(首都大学東京で)
アットホーム 今度は恐ろしくぞっとしない「転勤」の実態アンケート
不動産情報サービスのアットホームが再び三度四度また旅面白いというか、今度は恐ろしくぞっとしないアンケート結果をまとめ発表した。住宅購入をした後に転勤を命じられた既婚サラリーマン男性(現在転勤先で生活中)598名を対象に、購入した住宅をどうしているか、後悔はしていないか、夫婦仲はよくなったか、単身赴任者が自宅に帰る頻度などについて聞いたという。
それによると、「購入後に転勤で引越ししたけれど住宅購入して良かった」と答えたのは全体で77.8%にのぼり、後悔していないことがうかがわれる。ただ、単身者(全体で259名)と非単身者(全体で339名)とでは、その数字は88.8%、69.3%とやや差があり、非単身者の約3割は「良かった」とは思っていないようだ。
非単身者に購入した自宅をどうしたかについて聞いたところ、「売却」が37.5%、「賃貸」が26.8%、「家族や親族が住んでいる」が23.3%だった。
夫婦仲についての質問には、「単身赴任をして良くなった」が34.0%、「家族一緒に赴任して良くなった」が46.4%となった。「どちらでもない」は単身者が51.0%、非単身者が41.8%。「いいえ」は単身者が15.1%、非単身者が11.8%だった。
単身赴任者に自宅に帰る頻度を聞いたところ、もっとも多いのは「月1回」で30.9%、次いで「2週間に1回」が19.3%、「週に1度」が17.0%。「全く帰っていない」の4.6%を含めた「2カ月に1回」以上の人は30.0%に達した。
また、非単身者が「一緒に来てくれてうれしい」と答えたのは77.6%で、「実は単身赴任してみたい」という人も19.8%あった。
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記者は転勤の経験が全くないのでよくわからないが、妻が出産で実家に帰っていたときは毎晩のように飲み歩いていた。どこかの議員さんのような「浮気」では絶対ないが、いかがわしい店も利用したことがある。やはり単身居住は耐えられない。
なのに、回答者の30%が2カ月に1回以上で、「全く帰っていない」という人が4.6%もいるのにショックを受けた。回答者の年齢は50歳代が43.5%、40歳代が33.3%、60歳代が10.5%で、平均年齢は49.8歳だ。
この前、矢野龍氏(76)が木住協の会長職を退任するときのあいさつで「安田善次郎は『50、60は洟垂れ小僧、70は働き盛り、80、90は男盛り』と言った。その伝で言えばわたしは青春を謳歌する年齢。80、90で男盛りになれるかどうかは嫁さんとよく話し合う」と爆笑を誘ったが、洟垂れ小僧にも満たない血気盛んなサラリーマンがどうして一人で暮らせるのか。これはひどい。完全な家庭の破壊ではないか。企業にも問題がある。家に帰る費用くらい会社負担にすべきだ(そうしている会社は少ないはずだ)。
「孤閨」「鰥夫(やもめ)」が死語となり、男も女も〝おひとりさま〟が日常化、当たり前のぞっとしない時代になったようだ。こんな現状が続くなら「一億総活躍」は永遠に訪れない。
「実は単身赴任してみたい」という非単身者が19.8%あったというが、その気持ちはわからないではない。羽を伸ばそう、羽目を外そうというのは誰しも考えることだ。しかし、やってごらんなさい。どんなみじめな経験をさせられるか、やった人に聞くといい。
「消費増税先送りはプラスに働く」 プレ協・樋口武男会長
樋口会長
プレハブ建築協会・樋口武男会長(大和ハウス工業会長兼CEO)が消費増税問題について、「足元の住宅市場は集合住宅は大変好調に推移しているが、一戸建ては伸び悩んでいる。消費増税が実施されれば戸建てに影響するのを懸念している。増税の先送りは住宅業界だけでなく全体の景気にとってプラスに働くことを期待したい。財政出動も必要ではないかと考えている」と、安倍総理大臣が増税の先送りを指示したことに理解を示した。5月31日に行われた同協会の定時総会後の記者会見で語った。
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増税の先送りについては、住宅生産団体連合会(住団連)・和田勇会長(積水ハウス会長兼CEO)が5月26日の木住協の懇親会で「いつも駆け込みやその反動で苦い思いをさせられる。今回はどうやら延期になりそうな雲行きで、拍手喝さいしている」と述べた。
一方、不動産協会の木村惠司理事長(三菱地所会長)は5月12日に行われた同協会の総会後に「早めに決めていただき、軽減措置など対応もきちんとしていただきたい。先送りしても5年、10年にはまた問題が浮上する」と、消費増税を実施すべきとの考えを示した。また、岩沙弘道会長(三井不動産会長)も「景気対策を立てたうえで実行すべき。財政が厳しいのは論を待たない。政府が国際公約として掲げているプライマリーバランスの黒字化は喫緊の課題」と語っている。
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このように、住宅業界とデベロッパーのトップの考えが真っ向から対立している。どちらが正解か記者も分からないが、肩透かしを食らったような気分だ。
安倍総理は再三「リーマンショックのような事態が起きない限り実施する」と語ってきた。景気判断は海外動向も重視すべきなのは当然だろうが、海外リスクはいつも伴う。世界を揺るがすような災害・内紛・戦争の火種は山ほどある。それこそ天が降ってくるという杞憂が現実のものになるのではないかという危機感が充満している。
しかし、そんな心配ごとを選挙の道具にしていいのか、釈然としない。「景気の気は気持ちの気」というではないか。賃金は上がっていないが、企業業績も雇用も上向きだ。せっかく2020年のオリンピック・パラリンピックに向け景気の回復に期待が掛かる中、増税の先送りは消費マインドを冷え込ませないか心配だ。肝心の「三本の矢」の矢を放つ寸前で待ったをかけられたような失望感を感じる。8合目あたりの梯子を外されたような気分だ。今日の樋口会長もだれかに遠慮しているのか、歯切れが悪かった。いつもの樋口節が聞かれなかった。
私見だが、増税が先送りになっても一戸建てが劇的に上向くとはとても思えない。むしろ逆ではないか。様子見を決め込むユーザーが増えるような気がしてならない。