千代田区「説明不足だった」 「豊洲」と同じ様相 神田警察通りのイチョウ伐採問題
先に紹介したように、千代田区の神田警察通りのイチョウ並木を伐採する問題で、千代田区議会は10月3日、企画総務委員会を開き、伐採中止を求める陳情書について審査した。
委員会の各委員は「(自転車通行環境整備工事「神田警察通り」請負契約について)明確な説明がなかった」「執行機関として議会に説明しなかったことを反省すべき」「イチョウが伐採されるという認識がなかった。些末なことなのか」「誰が、いつ、どこで意思決定したのか、きちんと時系列的に説明すべき」「平成25年の(神田警察通り沿道賑わいガイドラインには(イチョウなど)街路樹の保全・育成が記載されているではないか」「(神田警察通り沿道整備推進)協議会も議会も区民も置き去りにされた」などと区側に迫った。
これに対し、区側は「全般の説明はしたが、(イチョウ伐採などについての具体的な)説明不足だった」(まちづくり課長)と謝罪したが、事案を担当する道路公園課長の説明が分かりづらいことから「語尾をはっきり言え」「イエスかノーで応えてください」と言葉を荒げる場面もあった。
区の都市計画マスタープランや緑の基本計画に逆行するのではないかという委員の質問に対しては、まちづくり担当部長・坂田融朗氏が「緑の基本計画の考え方は今後も変わらない。ただ、道幅が狭い地域では歩行空間を確保しながら更新せざるを得ない街路樹もある。緑を維持創出し、次の生命を育てていく」と答えた。樹木医の診断の結果、「枯損木」の恐れのあるイチョウは5本であることが区側から報告された。
午後1時15分から始まった委員会は再三休憩を繰り返しながら、結局、結論が出ず4時過ぎに散会。17日に再び論議されることになった。この問題はテレビでも報じられるなど、「豊洲問題」の千代田区版の様相を呈してきた。
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最初にも書いたが、区側の説明が不十分ではあるかもしれないが、区の決定に瑕疵はないように思う。議会は街路樹を伐採することを「知らなかった」というが、知らなかったでは済まされない。日常不断に行政をチェックするのが議員の務めではないのか。この問題について議会でもほとんど質問がされていない。
昨年12月25日に開かれた企画総務委員会で道路公園課長が説明した「今回、整備を予定しております第I期、共立学園の前付近でございます。そちらの歩道の部分というところでは全体を合わせてあわせて3.5mになりますが、その中に植樹ですとか街路灯等が、道路附属物も混在し、また自転車と歩行者の区分も不明確になっておると。その中で歩道側が1.2mほどであるというような表記でございまして、こちら、きちっと整理をすることで、かつまた4.5mに拡幅することで、歩行者、自転車ともに走行しやすい安全な空間を創出したいと考えております」を了解したのではないか。
道路公園課長が「植樹ですとか街路灯等が、道路附属物も混在」といみじくも言ったように〝街路樹は道路の付属物〟という認識しかないということだし、議員の皆さんも〝些末〟なこととしか考えてこなかったのではないか。
これまで区の街路樹について議会はどのような論議をしてきたのか検索してみたら、次のような発言がヒットした。
「国立市の学園通りの見事な緑の景観が一事業者によって壊されてしまったのは、まだ記憶に新しいところです。…道路の緑地帯には211本の桜と117本のイチョウが、どれも大木に生長し、沿道にはおしゃれなブティックや喫茶店が並ぶという、市民自慢の通りでした。そのような美しい緑の景観が、なぜそうなってしまったのか。また、今後このようなことが、多くの貴重な景観を持つ千代田区で起きることがないよう、水と緑の景観を守り、形成するための具体的な仕組みがぜひとも必要です」(2004年6月10日第2回定例会)
「神田警察通りの街路樹は人生の一部」 桂由美氏らが伐採中止求める陳情書(2016/10/3)
世界初 全自動衣類折りたたみ機 来年3月に予約販売 セブンドリーマーズ
技術集団のセブンドリーマーズは10月4日、毎日の衣類を「運ぶ」「畳む」「収納する」手間から人々を解放する、世界初全自動衣類折りたたみ機「/ laundroid 1(ランドロイドワン)」が製品化の最終ステージに入り、来年3月に予約販売を開始すると発表した。
「ランドロイド」は、2005年からセブンドリーマーズが独自で開発してきた衣類折りたたみ技術に加えて、今年からセブンドリーマーズ(出資比率80%)、パナソニック(同10%)、大和ハウス工業(同10%)の三社で合弁会社セブン・ドリーマーズ・ランドロイドを設立し、開発を進めてきた。
「画像解析」「人工知能AI」「ロボティクス」の3つの技術の融合で成り立っている。現段階で識別できるのはタオル、パンツ、Tシャツ、子供服だが、製品はどんどん進化させていくとしている。
販売価格は未定だが、先着100名限定の様々な特典がついているプロジェクトメンバー(会員権)向けのプロトタイプは約250万円。
イメージ before
イメージ after
三菱地所ホーム リフォーム強化 最上級とマンション定額制メニュー発売
「シェアハウス」before(上)とafter
三菱地所ホームが10月4日、リフォーム事業を強化するため最上級グレードのメニュー「Re Gran(リグラン)」とマンション向けの定額制メニュー「Re Dia(リディア)」、小岩井農場産の樹齢100年のヒノキ材を土台に採用した注文住宅を20棟限定で発売すると発表した。
「Re Gran(リグラン)」は、注文住宅やオーダーメイドリフォームで培われた提案力や設計力、デザインなどを提案するもので、本物志向のエグゼクティブのニーズに応えるもので、最高級・最高品質の仕様と設備機器を用意した。
「Re Dia(リディア)」は、水回り部分と表装部分が対象で、三菱地所レジデンスが開発した「EYE’S PLUS(アイズプラス)」をベースにインテリアコーディネーターと相談しながらプランを作り上げていく商品。専有面積70㎡で498万円(税別)という「専有面積に応じた定額制」を導入することで、価格・商品の優位性をアピールしていく。
小岩井農場産「樹齢100年材」使用の注文住宅は限定20棟。2016年12月26日までに契約、2017年5月以降に着工、同年12月25日までに引き渡しが可能な住宅が対象。価格は45坪相当で約25万円の増額となる。
小岩井農場は1891年(明治24年)に三菱地所2代目社長の岩崎彌之助らが出資して設立された岩手県雫石町にある農場(本社は東京)で、農場総面積3,000haの3分の2に当たる2,000haが山林。1899年(同32年)から植林を本格的に開始し、木を植えてから伐採するまでの期間を100年と定め、様々な木材需要に応えている。
ヒノキの植林は北限とされており、大径木にはならず年輪の間隔が狭いのが特徴で、土台などには最適な希少材とされている。
小岩井農場のヒノキ
ヒノキの土台
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記者発表会の会場となったのは大手町の大手門タワー・JX ビル1階にある「3×3 Lab Future サロン」だ。この施設も立派なのだが、会見の中身がまた盛りだくさんで、築60年の戸建て(下宿)をインテリアリフォームして「シェアハウス」に再生した事例や、2016年グッドデザイン賞を受賞した「ORDER GRAN(オーダーグラン)」も紹介された。一つひとつ紹介するとこの倍くらいのスペースが必要なくらいだ。
これは前回、駒沢公園ハウジングギャラリー・ステージ2の記者見学会でも書いたのであまり触れないが、これほどの提案力、デザイン力がありながらどうして同社はハスウメーカー下位に低迷しているのか。売上高は三菱地所グループ全体の2.7%だし、三井ホームの10分の1くらいしかない。縁が浅からぬスウェーデンハウスにも、大手デベロッパー系の東急ホームズにも負ける(売上高がすべてでないのはよく承知しているが)。〝三菱地所〟のブランド力をもってすれば少なくともこの倍くらいあっていい。
なぜこんなことを毎度書くのか。三菱地所の図体(売上高)が大きいから小回りが利かないということではない。むしろその逆だ。
同社のブランドメッセージには「三菱地所ホームの家づくりのこだわり」には「すべてはお客さまの想いをカタチにするために。私たちに妥協はありません」とある。同社営業マンは「ミリ単位」でお客さんの要望を聞くという。そういう会社が伸びないのが不思議だからだ。
小岩井農場産ヒノキ
三菱地所ホーム富裕層向け注文・3階建て・戸建てリフォーム同時発売(2016/4/14)
「神田警察通りの街路樹は人生の一部」 桂由美氏らが伐採中止求める陳情書
議会で議決されたにも関わらず、住民や来街者の反対により工事が中断になったままの街路樹伐採問題について千代田区議会は10月3日、企画総務委員会を開き街路樹の伐採中止・保存を求める3つの陳情について一括で審査した。議会側は住民らが反対運動を起こすまで神田警察通りのイチョウの大木32本などが伐採されることを認識しておらず、行政側は「説明不足」を認めたものの「了解が得られた」を繰り返した。審査は3時間以上に及んだが、結局、「誰が、いつ、どこで」伐採を決めたかの事実関係は明らかにされなかった。17日に再び論議される。
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「誰が、いつ、どこで」の文言をここでも聞くとは思いもよらなかったが、陳情書の一つに共立女子学園出身のブライダルファッションデザイナー・桂由美氏を代表とする共立女子中学高等学校 卒業生有志の「神田警察通りの街路樹の保存保護を求める陳情書」が含まれており、問題になっている共立女子学園キャンパスに隣接する「街路樹は…人生の一部です」と述べられているのには心底驚いた。桂氏らは次のように述べている。
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「本陳情は、歴史ある街路樹をこれ以上一切伐採せず、街路樹を伝統的景観の一部として愛護し、未来まで健康に育成することを求めるものです」
「千代田区一ツ橋は近代日本の高等教育の揺籃の地です…日本学校史上特筆すべき場所です」
「わたしたち陳情者は、共立女子学園で中学高校大学時代を街路樹とともに過ごしました」
「ここで学ぶ者は樹齢の長い大木を見るたび、この地が如何に長く歴史的教育の場であったかを感じ、誇りを覚えます」
「街路樹は近代史の一部であり、学校の一部であり、学生生活の一部であり、人生の一部です。千代田区で得た学風と分かちがたく結びつき記憶しています。したがって街路樹は全体として学校史を具現化する風景を形成しており、これ以上1本たりとも傷つけるべきではありません」
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行政担当者や区議が、桂氏ら陳情者が街路樹に対して抱いている感情を少しでも理解しようという創造力を持ち合わせていれば、このような事態には絶対にならないはずだ。
いま「豊洲問題」が大きな関心事になっているが、誤解を恐れずに言えば、豊洲問題は単なる技術の問題だろうと思う。食の安心・安全の根本的な問題にまでは波及しないのではないかと考えている。そこまで関係者は堕落していないと信じたい。
しかし、今回の街路樹の問題は単なる技術的な問題で済まされない。桂氏らが「人生の一部」といみじくも言ったように、人々の心のありようを問う問題だと思う。
豊洲は問題があれば修復は可能だ。しかし、樹齢80年のイチョウを伐採してしまえば、桂氏らは心のよりどころを何に求めることができるのか。
今回の問題は「イチョウは年を取りすぎてヒトとクルマに悪さをする恐れがあるので安楽死(担当者は「更新」「整理」という文言を使ったが)させます」ということではないのか。「角を矯めて牛を殺す」といえば言い過ぎか。
※この日の委員会の模様については後日改めて記事にします。
またまた「街路樹が泣いている」 千代田区、街路樹伐採で賛否両論(2016/9/8)
日本橋に「福徳の森」完成 「遊びに来てください」 蒼井優さん/三井不動産
全体像
左から菰田社長、蒼井さん、岩沙会長
三井不動産が開発を進めてきた日本橋の「福徳神社」や「コレド室町」に隣接する情報発信・コミュニティの核となる「福徳の森」が9 月28 日(水)完成した。
当日は同社の菰田正信社長、岩沙弘道会長をはじめ矢田美英・中央区長などが参加した開設セレモニーが行われ、同社のイメージキャラクターを務める女優の蒼井優さんがミニトークを交え「当代 熈代勝覧」「未来 熈代勝覧」などを披露した。
セレモニーで挨拶した菰田社長は、「日本橋は江戸時代、日本最大の賑わいを誇る街で、当地は三井グループの原点であり、唯一無二の地でもある。わたしどもは『残しながら、蘇らせながら、創っていく』をテーマに『日本橋再生計画』を進めているが、1,000㎡超の『福徳の森』が新たなコミュニティの核となることを確信している。ここから日本再生にもつなげたい」などと語った。
「福徳の森」は、「福徳神社」や「コレド室町」などに隣接する1,000 ㎡超の広場空間として開発されたもので、地域コミュニティを新たに創出していく拠点となる。設計は日本設計、施工は清水建設。地元住民や団体、企業などにひらかれたイベントスペースとして運営されることになっている。
10 月9 日(日)までの期間、「福徳の森」の誕生を記念し、日本橋老舗や地元企業など地域コミュニティの人々が受け継ぐ“技”や“伝統”を披露する秋祭り「日本橋 熈代祭(きだいまつり)」が開催される。
夜景
照明計画
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黄緑、浅黄色、萌黄色とでもいうのか、日本伝統の色の和服姿で蒼井さんは登場した。〝どこかで聞いたことがある〟と思ったが、蒼井さんが三井不動産のイメージキャラクターであることをすっかり忘れていた。三井不動産といえば、森繁久彌さんや松本幸四郎さん、吉永小百合さん(三井ホーム)や宮沢りえさん(三井不動産リアルティ)くらいしか思い浮かばない。数十年前から完全に思考停止しているようだ。
蒼井さんは、「(帯に)蝶や花が咲いていて、日本橋にぴったりかなと思って」と和服を選んだ理由を語り、「公園でぼっとするのが好き。こんな公園が近所にあったら通っちゃう。ワクワクしちゃう」「日本橋大好き。江戸の文化、思いが絶えることなく引き継がれている街で、この森ができて、憩いの場が生まれたのはうれしい。みなさん、遊びに来てください」と呼び掛けた。
このあと、蒼井さんを中心に菰田社長と岩沙会長のフォトセッションも行われ、さながらオールキャストの〝日本橋決起集会〟の様相を呈した-「地域の方々が開設を待望していた、素晴らしい森が完成した」と矢田区長も上機嫌だった。
蒼井さん
野村不動産アーバンネット 「野村の仲介+」 大泉学園に店舗開設
野村不動産アーバンネットは10月2日(日)、住宅流通店舗「大泉学園センター」を開設する。
西武池袋線「大泉学園」駅北口から徒歩3分、駅前通りに面した新築ビルの1階2階部分で、同社は大泉学園駅周辺エリアを重点エリアとして位置付けており、新規出店によりさらに地域に密着した営業を強化し、取引拡大を図っていく。
今回の店舗開設により「野村の仲介+」の部店数は首都圏66部店・関西圏6部店の計72部店となる。
東京都港区 平成28年度 課税標準額1,000万円超が約2万人 過去最多を更新
東京都港区の特別区民税課税標準額1,000万円超の層が最多更新-東京都港区がまとめた平成28年度の特別区民税課税標準額段階別納税義務者数等のデータによると、総所得から様々な控除額を除いた課税標準額1,000万円以上の層は19,783人で、全納税者に占める割合は14.7%となった。前年度と比べると人数は780人、構成比は0.5ポイントそれぞれ増加した。
課税標準額1,000万円超の層の総所得金額は9,332億円で前年度より15.0%増加、所得割額は452億円で前年度より9.2%、構成比で1.2ポイントそれぞれ増加した。
課税標準額1,000万円の納税義務者数は過去最多だった前年度の19,003人をさらに上回り、この10年間で45.2%も増加している。総所得金額もこの10年間で最多だった平成26年度の1兆776億円にあと1,444億円に迫った。
東急リバブル 首都圏4店舗、関西圏1店舗 10月1日に開設
東急リバブルは9月26日、売買仲介店舗「代々木上原センター」(東京都渋谷区)、「田無センター」(東京都西東京市)、「本八幡センター」(千葉県市川市)、「幕張ベイタウンセンター」(千葉県千葉市)、「阿倍野センター」(大阪府大阪市)の5店舗を10月1日(土)に開設すると発表した。
今回の出店により、今年度の売買仲介店舗の新規出店数は12店舗となり、売買仲介と賃貸仲介をあわせた全国のリバブルネットワークは172カ所となる。
積水ハウスグループ 横浜市有跡地で公民連携のサ高住・コミュニティ施設竣工
「グランドマスト横浜浅間町」
積水ハウスグループは9月25日、横浜市の「公民連携による課題解決型公募」で選定されたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「グランドマスト横浜浅間町」が竣工したのに伴い関係者に公開した。居住面積を最低でも約45㎡確保し〝自立型〟高齢者のニーズに応えるとともに、地域コミュニティ・多世代交流施設を併設しているのが特徴だ。
物件は、相鉄線天王町駅から徒歩9分、横浜市西区浅間町5丁目に位置する10階建て全76戸。専用面積は45.15~77.29㎡、月額賃料は147,000~244,000円。管理費は20,000円。生活支援サービス費は1名につき30,000円(2人以上は15,000円)。設計・施工は積水ハウス。貸主は積和グランドマスト。
現地は、古くから地域住民に利用されてきた「横浜市総合福祉センター」の跡地。市は平成25年、高齢者向け住宅を含む施設とすることや、交流スペース、コミュニティハウス、地域防災・地球温暖化対策に供することなどを条件に「公民連携による課題解決型公募」を実施。応募8社グループの中から交流スペース(約484㎡)、コミュニティハウス(約306㎡)の提案が特に優れていた積和不動産が選定された。売却価格は約3億6,000万円(約27万円/坪、容積率400%)。
サ高住は、45.15㎡の1LDK~77.29㎡の2LDKまで6タイプ。各住戸に床暖房、人感センサー、緊急通報ボタンなどが標準装備。もっとも人気があるタイプは48㎡のBタイプで9戸すべてが予約済みだという。
1階の交流スペースには入居者も地域住民も利用できるコミュニティカフェやアクティブスペース、2階のコミュニティハウス内には蔵書約2.8万冊の図書館が併設される。
記者説明見学会で積和グランドマスト・小山健社長は「今後5年間に東京、大阪、名古屋圏で5,000戸を目指す」と積極展開していくことを明らかにした。
コミュニティカフェ
エレベータホール(エレベータは15人乗り2基)
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これまで記者が見学してきたサ高住は、いかにも高齢者を隔離する〝施設〟のようなものも少なくなかったが、今回は間違いなくレベルが高い。居住面積だけでなく、共用廊下・エレベータホールが広く、災害時には地域住民が避難できるよう防災倉庫やかまどベンチも設置されていた。地域の交流センターや図書室が利用できるのもいい。
PPPの手法がもっともよく効果的に発揮された好例だろう。各自治体は、今回のようなコミュニティ施設などを併設したものについては容積の割り増しなどインセンティブを与えるなどの優遇策を取り、質の高いサ高住やマンションを誘導してほしい。
とはいえ、サ高住が普通の高齢者が無理なく利用できるようにするためには課題も多い。分譲マンションもそうだが、賃貸マンションの家賃は総体的に高すぎるような気がしてならない。東京圏では郊外でも5坪で5万円くらいする。年金生活者にとってこの額の負担は大きい。
また、対象が60歳以上で、居住面積が原則25㎡以上(共用の食堂、浴室などがある場合は18㎡以上)、バリアフリーであること、専門家が常駐し入居者の安否確認をすることなどの条件は厳しいようで曖昧であることから、〝玉石混交〟の市場が形成されている。わかりやすい格付けも必要かもしれない。
2階のコミュニティハウス
図書館
積水ハウス・阿部社長 表参道「ベレオプラス」を絶賛 土地の魅力引き出す提案力光る
店舗・自宅併用賃貸マンション「ベレオプラス」
積水ハウス・阿部俊則社長兼COOが先の決算説明会で絶賛した渋谷区神宮前の店舗・自宅併用賃貸マンション「ベレオプラス」を見学した。表参道駅から徒歩1分、大通りから1歩入った低中層住宅・店舗などが混在する地域に建つ、敷地面積約177坪の重量鉄骨造3階建て延べ床面積約923㎡だ。表参道の一等地にふさわしい、土地の魅力を最大限に引き出す企画力が光る。阿部社長が絶賛したのもうなずける。
まずランドプラン。敷地は四角い整形地だが、建物をコの字型に配して、その凹んだ部分に中庭を設け、1階店舗へ誘導するアプローチの役割を果たすのと同時に、住宅部分の採光・通風にも配慮しているのが特徴だ。
建物外壁には彫の深いシェルテック・コンクリートのほかに大判のタイルを貼りアクセントを持たせている。全体的に陰影の深いシンボリックな外観に仕上げている。
外構には同社の「5本の樹」計画を盛り込んで環境・景観に配慮。外周は石積みとし、ふんだんに植栽を施している。玄関までのアプローチにも工夫を凝らしている。舗道は緩やかなカーブを描かせ「間」を持たせ、玄関には風除室を設置。エレベータホールも広い。同社が「ホテルライクスタイル」と呼ぶのも納得だ。
賃貸住宅は1LDK3戸。エネルギーコストをゼロにすることを目標とする「グリーンファースト ゼロ賃貸」の一つで、IHのアイランドキッチン、太陽光発電システム、HEMSを採用。高家賃であるにも関わらず、建物完成前に全戸契約済みになったそうだ。
阿部社長兼COOは、鉄骨造の課題の一つに「表情」(が乏しいという意味)を挙げたが、この「ベレオプラス」はそれを解消している。
エントランスアプローチ
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同社は先に平成29年1月期第2四半期決算を発表。ほとんどの事業セグメントの利益率の改善が継続していることから、通期の連結業績予想を当初計画から平成28年3月10日に発表した通気予想を売上高2兆円(前期比7.6%増)、営業利益1,750億円(前期比16.9%増)、経常利益1,780億円(前期比10.8%増)、当期純利益1,130億円(前期比34.0%増)にそれぞれ修正、4期連続での過去最高益予想をさらに上乗せした。
阿部社長兼COOが「ベレオプラス」を絶賛したのは、業績好調の背景には同社の企画提案力があることをメディアにアピールしたかったからだろう。今度は木造「シャーウッド」で3・4階建てに挑戦してほしい。
エントランス