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 明和地所の国立マンション建設をめぐる訴訟で、国立市が同社に支払った損害賠償金約3,120万円は当時市長だった上原公子氏が賠償すべきとした裁判(東京地裁平成26年9月25日判決言渡し)で、最高裁判所は12月13日、上原元市長の上告を棄却。この結果、上原元市長に約3,120万円の損害賠償を命じた東京高裁判決(2015年12月22日)が確定した。

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 この問題は、明和地所がマンション建設計画を明らかにした1999年から同社へはもちろん、国立市役所や当時の上原市長へのインタビュー、住民集会への参加、裁判の傍聴などずっと関わってきた。ある意味では記者の人生を変えた事案でもある。あれから17年、感慨深いものがある。節目節目で記事を書いてきたのでそちらを参照していただきたい。

 一連の裁判で当初から主張してきたことがほぼ認められてうれしいのだが、次の2点だけはもう一度しっかり指摘しておく。

 一つは、地区計画の決定について。

 明和のマンション敷地を含む「中三丁目地区地区計画」の施行面積は約13.5ha。このうち、同社のマンション敷地は約2.7haで、同社の敷地に隣接する北側の桐朋学園の敷地は約9.2ha。地区計画ではともに高さ規制は20mとなっている。そして、桐朋の敷地の東側にある低層住宅地約1.1haと同社の敷地の西側にある第一種低層住居専用地域約0.5haは高さ規制をそれぞれ10mとした。

 全体施行面積のうち明和の敷地は約20%だが、桐朋の敷地とその隣接の低層住宅地を除くと、同社の敷地割合は約84%に達する。地区計画が決定される前の明和の敷地は高さ規制がない建蔽率60%、容積率200%の地域だった。

 このことからも、マンション建設反対運動を主導した桐朋の関係者などと上原氏が結託して、まさに同社を狙い撃ちにした地区計画であることがわかる。地区計画は法的な強制力を持つため、その決定には関係権利者の合意を得て民主的に進めるべきなのに、上原氏と当時の議会はその手続きを無視した。暴挙と言わざるを得ない。

 一連の判決は、この地区計画の決定に至る手続きに瑕疵はないとしているが、これは今でも納得できない。

 もう一つ。記者は問題に〝火〟が付いたとき、不動産協会や日住協(現全住協)に「対岸の火事視してはいけない。このような暴挙を許せば、絶対高さ規制を行おうとする動きは燎原の火のごとく全国に広がる。業界全体として動くべき」と持ち掛けたが、どこも取り合ってくれなかった。当時、同社は飛ぶ鳥を落とす勢いにあり、同業他社はやっかみもあったのか、等閑視した。同社の故・原田利勝氏にも「泣く子と地頭には勝てない。和解を」と勧めたが、原田氏は首を縦に振ることはなかった。

 その後、事態は憂慮した通りになった。建築物の絶対高さ規制は良好な街づくりに絶対つながらない。むしろ逆だ。擁壁のように街と遮断し、日照・通風・居住性の劣るマンション建設を増やすだけだ。用途規制、日影規制なども含めた都市計画のあり方についてしっかり再検討すべきだと思う。

 上原氏は敗訴を受けて記者会見し、「市民自治を無視するもの。歴史に汚点を残す決定だ」(東京新聞)と怒ったそうだが、何人も法の下では平等ということをお忘れか。首長は権限が大きいからこそ、権力行使には公平・公正を期さなければならない。上原氏の暴走はその後の「景観保護」運動に大きな影響を与えた。功罪はあまりにも大きい。

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 裁判の確定を受けて、上原氏を支援してきた「くにたち大学通り景観市民の会」は2016年12月30日付で以下のような「ご報告とお願い」をネットで公開した。

 「(前略)この結果は、国立の大学通りの景観保護をめぐって努力してきた国立市民と国立市、当時の上原市長の「オール国立」ともいえる住民自治の営みを消し去ろうとする承服しがたい決定であると言わざるを得ません。

 (中略)上原公子さんがいま、国立市から請求されている賠償額は、約4400万円と巨額です(金利含め)。

 私たちは、この間のすべての経過を鑑みて、この額は、上原元市長ひとりで1円たりとも負担すべきものでないとの決意で向き合うことといたしました。

 これまで多大なご支援をいただいてきたことに加えて恐縮ですが、この度、募金を募る(ママ)ことを決めました。どうか、私たち決意をお受け止めいただきたく心より訴えさせていただきます」

 この「会」が中心になって進めたマンション建設反対署名には石原慎太郎氏など数万名が賛同したはずだ。

 政治理念の実現のためには「権限を濫用」し「信義則に反する」「不法行為」を堂々と行う人に対する支援であることを承知の上でなら、当時賛同した方々は寄付をしたほうがいい。一人当たり1,000円の寄付でお釣りが出るくらいの募金は集まるはずだ。

 寄付が集まらず、上原氏が金策に回らなければならないようでは、わが国の景観を守ろうとする勢力の鼎の軽重が問われる。

「国立裁判」明和地所〝圧勝〟に思う(2004/11/8)

「国立裁判」全て終結 明和地所が全面勝訴したが…(2008/3/13)

「求償権の放棄」は問題 国立市は上原元市長に賠償請求すべき(2014/10/1)

上原・元国立市長への求償は当然 議会「決議」の法的効力は? (2015/1/31)

国立 市議会勢力図が逆転 どうなる上原氏への損害賠償請求(求償権)(2015/5/1)

国立市議会 上原元市長に対する求償権行使を求める決議(2015/5/20)

国立求償裁判 国立市が逆転勝訴 東京高裁、第一審判決を破棄(2015/12/22)

 

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木村・不動産協会理事長(左)と田中・FRK理事長 

 不動産協会と不動産流通経営協会(FRK)は1月6日、恒例の合同による「新年賀詞交歓会」を行った。冒頭、不動産協会・木村惠司理事長(三菱地所会長)が「日本の豊かな社会、安心・安全の街づくりを進めていく」とあいさつし、FRK・田中俊和理事長(住友不動産販売社長)は「昨年は不動産流通取引件数が過去最高を更新した。今年も市場規模の倍増に向け業界が一丸となって取り組む」と抱負を述べた。

 参加者は昨年の約1,150名を上回る約1,200名に達し過去最高を記録。来賓として石井 啓一・国土交通大臣、山本幸三・内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)、高市早苗・総務大臣、野田毅・自民党税制調査会最高顧問、北側一雄・公明党副代表(元国交大臣)、井上義久・公明党幹事長なども挨拶し、菅義偉・内閣官房長官も駆けつけるなど、会場は立錐の余地がないほど賑わった。

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不動協とFRKの2017年賀詞交歓会(会場のホテルオークラ アスコットホールの定員は800名)

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 最初に登壇した不動産協会・木村理事長は、「私事で恐縮ですけれども、私、いま鎌倉に住んでおりまして、この正月3ケ日は快晴の日が続きました。紺碧の空と海と、そして江の島と湘南海岸の間に富士山が白い雪を頂いている姿を観て、改めて日本の豊かな社会、安心・安全の街をつくっていく決意を新たにしました」と語り始め、国内外の社会・経済状況には「中国の動向などリスク要因もあり、多少不透明感が続く」としながらも、昨年末の税制改正大綱では「事業用資産の買換え特例の延長・拡充、登録免許税の特例の延長などが決まり、わたしどもが要望した税制がほぼ100%実現した」と評価、「内需産業の中核としてこれからの日本経済の成長に寄与したい」と述べた。

 具体的な課題としては、地方創生とともに大都市の問題について触れ、「世界的な都市間競争が激化する中でのわが国の大都市の魅力を発信するために、ハード的には国家戦略特区の活用をスピーディに行うこと、ソフト的には街づくりエリアマネジメント手法などを駆使することが必要」と強調した。

 住宅分野については、「約6,000万戸あるストックのうち3,000万戸は耐震、耐火、省エネなどで問題がある」とし、建て替えやリフォーム、リノベーションを進め中古と新築の両方が良質なストックを形成し、「新しいライフサイクルにあったニーズ、ウォンツに応えていくことが大事」と話した。

 働き方改革についても触れ、「取り組みは業界でもまだまだ緒についたばかり。不動産特有の問題も潜んでいるかもしれないので研究していきたい」と語った。

 「街づくり都市づくりを通じて、なおかつ良質な住宅を供給することで希望が持てる社会の実現のために努力していく」と結んだ。

 来賓の挨拶のあと、乾杯の音頭を取った不動産流通経営協会理事長・田中俊和氏(住友不動産販売社長)は、「昨年の不動産流通市場は取引件数が過去最高を更新するなど、堅調に推移しました。足元も既存住宅の底堅い需要を実感しており、今年も住宅税制・金融支援策もあり、高水準な取引が続くと期待している。

 日本にはモノを大切にする文化がある。よいものは残し、次の人に活用してもらう、このリレーをお手伝いするのが私たちの仕事。既存住宅における消費者の不安解消にわれわれは取り組んでおり、建物状況調査(インスペクション)はその一助になる。年末にその運用方法がまとめられた。我々はそれがスムーズな導入に向け、業界で取り組んでいく。

 また、多様化する時代を迎え、新たな技術の活用を加えることにより消費者に地域の魅力、既存住宅の魅力を発信していく役割を担っていきたい。そして、『新住生活基本計画』の目標である市場規模の倍増に向け業界一丸となって取り組んでいく」と述べた。

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左から不動産協会会長・岩沙弘道氏(三井不動産会長)、木村氏、田中氏

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 三井不動産リアルティは12月26日、売買仲介機能と賃貸仲介機能を併せ持った「三井のリハウス 勝どきセンター」を2017年1月5日(木)に開設すると発表した。2016年12月に竣工する都営大江戸線勝どき駅から徒歩6分の大規模タワーマンション「勝どき・ザ・タワー」の1階の立地に出店する。

 これまで勝どきエリアは「月島センター」が主にカバーしていたが、当エリアのマーケット拡大に伴い出店するもの。

 勝どきエリアは、2000年に都営大江戸線が開通して以降、再開発による大規模タワーマンションや商業施設の建設が相次ぎ、隣接する晴海には2020年東京オリンピック・パラリンピック選手村も建設されるなど一層の賑わいが予想されている。同業他社では住友不動産販売、野村不動産アーバンネットがすでに出店している。

 今回の出店により、同社グループは全国281店舗となる。

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 別掲のように昨日(12月22日)、埼玉県住まいづくり協議会が主催する「第4回埼玉県環境住宅賞」表彰式が行われた。審査委員長の三井所清典氏(日本建築士会連合会会長)は、20周年を迎えた同協議会の活動を称え、受賞作品も絶賛した。

 記者もそう思う。しかし、素晴らしい活動をやっているからこそ、支援したいからこそ言わざるを得ないことがある。同協議会の組織運営についてである。

 石の上にも3年だ。部外者が言うべきことではないのを承知で、組織に水を浴びせることを書く。誰かが悪者にならなければ治らない。記者はそうなってもいい。

 この日の表彰式、満席になれば優に100名は超えると思われる会場に集まったのは30~40名。空席が目立った。

 式次第に沿って、主催者の同協議会会長・風間健氏(高砂建設社長)の挨拶から賞状授与が粛々と行われた。

 賞状を受け取るため登壇した人は25名。一人ひとりに賞状が手渡され、降壇するたびに司会者が「受賞者にもう一度大きな拍手を」の呼びかけに応える拍手が大きく響き渡ったが、それ以外はしわぶき一つ聞こえない。お通夜と間違えそうな静かさだ。〝さくら〟もいなければ一般人の参加は皆無だったはずだ。

 その後、プレゼン、総評に移ったが、登壇者の声が小さく最後列に用意された報道席には届かないのもあった。

 この光景こそ、同協議会の現状を如実に物語っているのではないか。これ以上は書かないが、式の演出に問題があるのだ。関係者みんなが受賞者を称える雰囲気づくりに決定的に欠ける。三井所氏ら審査員が「素晴らしい」などと絶賛する言葉がむなしく聞こえるのは記者だけでないはずだ。

 プレゼンの登壇者もそうだ。4人のプレゼン時間を測った。3分、8分、15分、19分だった。決められた時間きっかり行うのがプレゼンのイロハだ。

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 もう一つ。今回の応募は92作品。多いか少ないかの判断は難しいが、応募者の構成を見ると、アキュラホームから50作、県下の3高校から13作、小林建設が4作、東京ガスが4作。この6社・校で全体の77%を占める。

 この構成は考えなければならない。盛り上がり、広がりに欠けると言わざるを得ない。

 その原因として、「レギュレーションがくるくる変わる」という関係者の声も聞かれるが、三井所氏は「応募部門は5つあるから、関心を持てば県民全てに(応募の)チャンスがある」と話した。部門によってはハードルを高くし、また「学生部門」のような市民がどんどん応募できるような部門を設けていいではないか。受賞者に対するユニークな賞品提供もあっていい。

 協議会メンバー、中でもハウスメーカーは優れているのが当たり前だから、個人応募はともかく企業としての応募資格から除外してもいい。若い人にチャンスを与えるべきだ。

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 埼玉県は最近、「先導的ヒートアイランド対策住宅街モデル事業」を立ち上げ、さいたま市も「スマートシティさいたまモデル」を国内外に発信・展開する「美園タウンマネジメント協会」を設立した。地球環境問題に真剣に取り組む姿勢を明らかにしている。

 同協議会はその旗振り役であるはずだし、そのメンバーが建築中の「浦和美園」の戸建ては、東京都の「「むさしのiタウン」や横浜市の「脱温暖化モデル住宅」などと比較しても、はるかに進んでいる。

 記者はこの〝落差〟が許せないのである。このままでは尻すぼみになるのが目に見えている。「埼玉で、がんばる! 埼玉を、創る!」のスローガンが泣くではないか。

 上田清司・埼玉県知事は先のRBA交流会で「埼玉県が一番元気」とアピールしたが、元気なのは知事だけでないのか。

 同協議会を応援しようという気持ちがなえてくる。記者だって暇じゃない。このままでは来年は取材するかどうか考える。(こんな記事を書いたらお呼びじゃないだろうが)

 20周年を記念にもう一度、原点に立ち返って協議会のあり方を問い直すべきだ。

 

埼玉県知事賞に小林建設 高校生の作品も入賞「第4回埼玉県環境住宅賞」(2016/12/23)

 

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「第4回埼玉県環境住宅賞」表彰式

 埼玉県住まいづくり協議会は12月22日、埼玉県が後援する「第4回埼玉県環境住宅賞」表彰式を行い、応募92作品の中から今回初めて創設された埼玉県知事賞に「ツクル時もツカウ時も環境に負荷を与えないイエ」(小林建設)を選んだほか、優秀賞4点、20周年記念賞2点、入選10点、奨励賞8点を選んだ。   

 知事賞を受賞した作品は、埼玉県長瀞町に今年6月に竣工した124㎡のロフト付き平屋建て住宅で、「環境に負荷を与えたくない、自分の山の木を使いたい、地産地消したい、一生に一度の家づくりだから記念になるものを」すべて盛り込んだのが特徴。薪ストーブも設置されている。

 小林建設の担当者は「環境意識が高い施主だったから実現した」と受賞の喜びを語った。同社は昨年の最優秀賞に続き、2年連続の最高賞の受賞。

 審査委員長の三井所清典氏(日本建築士会連合会会長)は、「埼玉県住まいづくり協議会は今年で20周年を迎えるが、継続して素晴らしい活動を行ってきた」と称え、「賞の部門は5つあり、建築専門でなくても、関心を持てば埼玉県の人すべてが(受賞の)チャンスがある。今回はパッシブデザインなど健全な提案が多かった」と総評した。

 受賞作品は公共団体などで展示される。

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知事賞を受賞した小林建設

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三井所氏

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 三井所氏が高く評価したように、受賞した作品はみんな力作ぞろいだ。ただ、配布された資料はA4の1枚に1作品が紹介されているもので、記者には字が小さすぎて読みづらいのが難点だ。

 一つひとつ詳しく紹介できないが、昨年に新設された学生部門の作品を紹介する。

 優秀賞に選ばれたのは、「光と風の家」をテーマにした埼玉県立春日部工業高校の池田茜さんの作品。三井所氏も絶賛した。

 1階の約20坪の平面図は東西に2分されており、中央部分は南北方向に幅約2mの「土間」が配置されている。土間は家族だけでなく、地域住民にもコミュニティの場として開放される空間だという。

 このほか、入選・奨励賞を受賞した県立大宮工業高校の大西実恵さんの「北側にある快適な家」、同校・長谷川愛さんの「竹の大切さを忘れない」、同校・井島祐紀さんの「家族でつくる木炭の家」、県立川越工業高校の赤岩春紀さんの「振動で発電する家」、県立春日部工業高校の大島優衣さんの「窓の位置から見直す住宅」も発想が面白い。

 「格子」「土間」「木炭(樫)」「竹」などをデザイン・素材に扱うところなど隈研吾氏そっくりだ。日の当たらない家に太陽光を取り入れるとか、鉄道や道路の振動を電気に変えるというのもひょっとしたら実現するかもしれない。(太陽光採光住宅は商品化されている)

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春日部工業高校の大島さん(左)と池田さん

 

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 野村不動産アーバンネットは12月21日、不動産情報サイト「ノムコム」の新コンテンツとして、人工知能(AI)によるチャット型Q&A サービス「住まいのAI ANSWER」をスタートしたと発表した。

 心理的にハードルが高いとされる不動産会社へのアクセスを個人情報を明かさずに可能にし、住まいの購入、売却についてAIが24時間対応するチャット型Q&Aサービス。物件紹介・査定受付も行う。

 寄せられたさまざまな質問を蓄積することでAIを更に学習させ、より的確な回答を目指す。

 

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「(仮称)井の頭ビルリファイニング工事」(シートがかかっている建物、北側から写す)

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青木氏

 青木茂建築工房は12月21日、事業主のレーサムの協力により、三鷹市にある築44年の寄宿舎をリファイニング手法によって賃貸住宅に用途変更する「(仮称)井の頭ビルリファイニング工事」の現場解体見学会を行った。100名を超える見学者が集まった。

 建物は、JR三鷹駅から徒歩15分、三鷹市下連雀2丁目の紫橋通りに面した近隣商業地域(建蔽率80%、容積率200%)と第一種低層住居専用地域(建蔽率40%、容積率80%)にまたがる敷地面積約459㎡、建築面積約296㎡、延床面積約2,478㎡の鉄骨鉄筋コンクリート造9階建て。確認申請は昭和47年。設計監理は青木茂建築工房。施工は日本建設。建築主はレーサム。

 建物は検査済証がないため、国土交通省のガイドラインに基づいて既存不適格建築物の証明を得て、さらに現行法の高さ規制(25m)、日影規制、容積率などの集団規定、構造耐力や階段などの単体規定の法規には適合しないが、建設当時の法規は満足していることの証明を行い、特定行政庁との協議を重ねて実現したもので、現行法による新たな確認済証を取得する。

 具体的には、既存階段を撤去し、新たに特別避難階段を設置。寄宿舎部分を共同住宅に用途変更し、耐震補強も行い、耐震評定所を取得する。

 また、一連の工事と合わせ内外装、設備の一新し、現在の市場にマッチした共同住宅にプラン更新する。

 見学会で挨拶した同工房・青木茂代表は「リファイニングを知ってもらうには工事途中の現場を見てもらうのが一番。不適格部分を残しながら、商品性を高めたのが特徴」と述べた。

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南西側から写す(建物の東側は第一種低層住居専用地域)

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 建築のプロの方なら、前段の記事を読まれてよく理解できるかもしれないが、そうでない方はまったく何のことだかわからないのではないか。

 かく言う記者も解体工事を見ても何もわからない。むき出しのコンクリを見るだけだ。なので、早々に退却した。

 しかし、このリファイニング工事がどのようなものであるかは容易に想像がつく。つまり、この敷地を更地にして、用途が何であれ建物を建てたら、建蔽率、容積率、高さ規制、日影規制などから判断して現在の建物の半分も建たないのではないか。

 また、現在の建物の高層階の平面図を見ると、1フロアは25㎡くらいの10室と2室分相当の待合室、洗面室、便所、浴室を備えた共用部分があるが、現在では社員寮としても使用にたえないものであることがわかる。

 それをリファイニング手法によってエレベータを付け替え、1室分を特別避難階段にする一方で、居室は1フロア11室を確保。各部屋(25㎡くらいか)にはバス・トイレ・洗面・キッチンを設置する。

 どうだろう。従前はまったく商品価値のない建物だ。〝たこ部屋〟(記者はしらないがおそらくこんなものだろう)同然だったものを、市場性のあるものに一新する。仮に分譲マンションにすれば、最低でも坪単価は250万円で、グロスでは2,000万円を突破する。賃貸でも利回りは4%くらい確保できるはずだ。

 それにしても、この日はそんなに寒くはなかったが、暮れの忙しい日に完成お披露目ではなく解体工事に100人も見学者を集めるとは。〝建築の魔術師〟青木氏の人気度をまざまざと見せつけた。

 これまで書いた青木茂氏の記事は、「千駄ヶ谷」「笹塚」「竹本邸」「再生建築学」などの語句と「RBA」で検索していただくと5つ6つはヒットするはずだ。

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見学者でごった返す工事現場

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東松島市立宮野森小学校

 住友林業が施工した東松島市立宮野森小学校が12月20日に竣工する。同社が手がけた初の木造小学校校舎で、施工を担当した中大規模木造建築物の中でも最大規模の施設。構造材にはヒノキ、スギの無垢材を使用。地元東北材を活用し、全面的に木の現しとすることで木質感あふれる空間にした。

 校舎は、東日本大震災により移転地として高台に造成された新しい街区の里山と寄り添う敷地に立地、木造平屋建て(一部2階建て)、延床面積は約4,000㎡。施工費は約18 億円(電気・設備工事含む)。 約5,000本の無垢材を使用。校舎・屋内運動場がともに木造の小学校は宮城県初。

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教室

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屋内運動場

 

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「Good Morning Building(グッド・モーニング・ビルディング)」

 フージャースコーポレーションは12月19日、東京都渋谷区のコンバージョンシェアオフィス「Good Morning Building(グッド・モーニング・ビルディング)」をオープン、報道陣向けに公開した。「創業期のスタートアップの朝を応援する」をコンセプトに、築44年のビルをシェアオフィスとしてコンバージョンしたもの。

 1階にコーヒースタンド「ampere」、共用施設としてラウンジ・ミーティングルームを設置し、入居者同士の交流が生まれやすい設計とした。2階~5階がオフィスフロアで、全12区画のうち11区画がスタートアップ企業などで契約済み。今後も、最寄り駅から徒歩7分以内、築20年以上などを条件に5億円から30億円(首都圏)などの投資事業を強化していく。

 物件は、渋谷駅から徒歩10分、渋谷区渋谷2丁目に位置する6階建て。延べ床面積632㎡。事業企画は数多くのシェアオフィスの企画・運営実績を持つツクルバが担当した。

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エントランス(左がコーヒーショップ、右が共用ラウンジ)

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 同社はまた、先に分譲を開始した、JR飯田橋駅から徒歩8分のコンパクトマンション「デュオヴェール飯田橋」(28戸)の約8割が契約済みであることを明らかにした。坪単価は335万円で、期間50年の定期借地権付き。

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「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議 街づくり分科会(第5回)」(海運ビルで)

 「ユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議 街づくり分科会(第5回)」が12月19日、開催された。同会議は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、ユニバーサルデザイン化・心のバリアフリーを推進し、大会以降のレガシーとして残していくための施策を実行するために設置されたもの。今年2月から「街づくり分科会」と「心のバリアフリー分科会」に分かれて論議されてきた。「街づくり分科会」は今回が最終会合となり、近く行われる「心のバリアフリー分科会」の最終会合ののち、最終とりまとめとして発表される予定。

 この日、参加したのは座長を務める秋山哲男・中央大学研究開発機構教授をはじめとする有識者、障がい者団体、関係事業者、関係府省、オブザーバーなど56名(他に欠席者7名)にのぼった。関係府省は平田竹男・内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局長のほか、内閣府、警察庁、総務省、スポーツ庁、経済産業省、文部科学省、国土交通省などに及んでいる。

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 会議は、「街づくり分科会」と「心のバリアフリー分科会」に分かれているように、「文化・言語・国籍の違い、老若男女といった差異、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計(デザイン)をいう」(ウィキペディア)本来の意味のユニバーサルデザイン(UD)とは若干趣旨が異なる。

 これは、平田氏が説明したように「広い範囲で論議するより、今回はピンポイントを『障がい者』に絞り、クリアカットで方向性を示そうという官房長官の意向」が働いているようだ。

 これに異論はない。記者はユニバーサルデザイン(UD)という言葉が一般に知られる前から取材を行ってきており、「オリンピック・パラリンピック」が動機・契機というのは情けないと思うが、あらゆる府省、関係団体が一堂に会してUDを普及させようという取り組みは大歓迎だ。画期的なことではないか。配布された資料は、工程表も含めA4で75ページにも上る。確実な実行を望みたい。

 一つだけ気になる、というか承服しかねるのが「街づくり分科会」と「心のバリアフリー分科会」の両者で予定されている「共生社会の実現に向けた行動に関する共同宣言(案)」の「差別」についての現状認識だ。

 宣言(案)の書き出しは次のようにある。

 「過去において、障害のある人が受けてきた差別、虐待、隔離、暴力、特別視などは、わたしたちの社会において、決して受け入れられない。そして、今もそれらが存在するとすれば、断じて許されない」

 みなさんは、この文章を読んでどう思われるか。記者はわざわざ「過去において」と断っているのが理解できない。障がい者に対する差別などは過去も今も行われているのは歴然とした事実だ。「わたしたちの社会は」というのも何だか変だ。これは「他の社会」では差別が行われているというほのめかしの意味で用いられているのだろうか。さらにまた、「(差別などが)存在するとすれば」という仮定形の意味も不明だ。

 全体として、野蛮な国はともかくとして、日本には障がい者に対する「差別」など存在しないと言っているようにも聞こえる。

 差別を行ってきたのが歴然であるからこそ、障害者権利条約にわが国は批准(2007年)したのではないか。そして、今も差別が行われているからこそ、なくそうとしているのではないか。

 宣言(案)の文中に出てくる「人の命の重さに思いを馳せ」「障害者権利条約の理念を思い出し」というのも何だか変だ。人の命の重さは思い馳せるものではなく、自覚・認識するものだと考えるがどうだろう。

 この宣言そのものについては、全国重症心身障害児(者)を守る会副会長・髙木正三氏が「どこかから引用して作り上げたような文章。しっかりしたものにしていただきたい」と発言した。「理念を思い出し」については、髙橋儀平・東洋大教授が「理念を踏まえか、理念を基本にか、というように改めるべき」と発言して、了承が得られた。

 考えてみれば、「心のバリアフリー」も何だかわかるようで分からない言葉だ。障がい者に対する差別意識は、歴史的社会的、後天的に植え付けられたのではないか。人間は生来、そのような差別意識を持っているのだろうか。

 

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