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VRゴーグルを用いた様子

 大京グループの大京穴吹不動産は9月15日、同社のスマートフォンサイトでの売買・賃貸物件紹介にVR(仮想現実)技術を用いた疑似体験システム「ぐるっとネットdeオープンルームVR」の提供を開始したと発表した。

 VRゴーグルと呼ばれる箱型の装置にスマートフォンをセットし、上下左右に動かすことで室内全体を見ることが可能となる。現在約880物件(売買物件約700件、賃貸物件約180件)がVRゴーグルを用いた見学に対応している。全国の営業拠点70店舗で利用できる。

 同社は今年5月からホームページ(http://www.daikyo-anabuki.co.jp/)で売買・賃貸物件を360度のパノラマ画像で閲覧できるサービス「ぐるっとネットde オープンルーム」を始めたが、より利便性を高めるためVR(仮想現実)技術を用いたバーチャル見学システムを今回導入したもの。

カテゴリ: 2016年度

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「グレイプス辻堂西海岸」

 東京建物と東京建物シニアライフサポートは10月20日、神奈川県内最大規模となる総戸数158戸のサービス付き高齢者向け住宅「グレイプス辻堂西海岸」を開業する。1964年に完成した総戸数1,311戸の「辻堂団地」再生事業の一環として開発されたもので、地域包括ケアの拠点を目指す。同社グループが目指すCCRCのモデルケースとして位置付けられている物件でもある。開業に先立つ9月12日、メディアに公開された。

 物件は、JR東海道線辻堂駅から徒歩20分(バス7分「辻堂団地」徒歩2分)、藤沢市辻堂西海岸二丁目に位置する5階建て全158戸(ほかに(訪問介護事業所・通所介護事業所)。専用面積18.80~67.59㎡、月額賃料36,000円~325,000円、月額管理費15,000円(浴室あり)・20,000円(浴室なし)、基本サービス(税込)37,800円(1人入居)・64,800円(2人入居)、食材費(税込)は3食30日分で27,540円。共用施設はラウンジ、食堂、共同浴室、健康相談室、多目的ルーム、シアタールーム、屋上テラスなど。東京建物が事業主となり、東京建物シニアライフサポートが貸主となり、ツクイが運営を受託する。設計・施工は大末建設。

 現地はUR都市機構(当時日本住宅公団)が1964年に完成させた全1,311戸の「辻堂団地」の一角にあり、URと東京建物が期間50年の定期借地契約を締結し、高齢化率が約40%まで進んでいる団地の再生事業の一環として開発するもの。

 同社グループのサ高住のブランド〝グレイプス〟のコンセプトでもある「自分らしく生きる」生活をサポートすることに重点が置かれており、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所、医療機関と連携するほか、辻堂団地からの移り住み、隣接する保育園との多世代交流、近接する松下政経塾とのイベント開催、商店街「なぎさモール辻堂」との連携、東京建物が分譲を予定している隣接マンション(詳細未定)との連携も予定している。

 住戸プランは、一人入居から二人入居までが可能なワンルームから2LDKまでの全37タイプ。ワンルーム(19㎡)と1DK(36㎡)を続き部屋として利用できるも用意する。

 これまで70歳代後半の女性が中心に約150組の来場があり、第1期として76戸の募集を行い、30件の入居申し込みがあったという。

 見学会に出席した東京建物シニアライフサポート・加藤久利社長は、「当社グループのサ高住は本件で10棟目。これまで医療機関や地域連携など様々な取り組み・仕掛けをしてきたが、認知症の方が保育園児と会話され、笑顔を見せたりする姿を拝見すると多世代交流の効果があることを実感できる。今後もCCRCを加速させる」と話した。来年度は新宿区大京町で初の有料老人ホーム53戸と、全124戸の「用賀3丁目」などサ高住4棟374戸を供給することも明らかにした。

 同社グループが目指すCCRC(Continuing Care Retirement Community)とは、①健康でアクティブな高齢者が居住できる②介護が必要になっても生活を継続することができる③地域(多世代)との交流・地域機関(医療)との連携体制がある④新たな仕掛けを作るだけではなく、既存コミュニティを活用し無理なく継続するコミュニティを形成する-など。

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エントランス

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食堂・カフェ・バーラウンジ

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食堂テラス

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隣接する保育園(右側の建物)とは扉一つでつながっている

◇       ◆     ◇

 同社グループのサ高住を見学するのは6棟目か。これまでのものより今回は規模が倍くらいあるので共用施設の充実ぶりが目立った。アプローチ・エントランスも立派だし、3人が一緒に入れる共同浴室、シアタールームまであった。住戸プランも夫婦が住める50㎡以上が22戸も用意されている。屋上テラスからは江の島、富士山が展望できる。

 注目したいのがコネクティングルームプランだ。どのような使い方がされるかわからないが、介護度が異なる、あるいは仲が悪い夫婦、兄妹、姉弟などが想定されているようだ。

 もう一つ、取材で驚いたことがある。他の記者が運営受託するツクイに入居者の「徘徊」について質問したところ、同社サービス付き高齢者向け住宅事業第二本部本部長・中村こずえ氏は「私どもには『徘徊』という認識はありません」と答えた。「(特養などの)施設とは異なり、サ高住はあくまでも住宅。入居者の方と1対1で向き合うことが大事」と語った。

 なるほどと思った。記者は特養も有料老人ホーム(なんて差別的な法律用語か)も体験宿泊したことがあるが、夜中に「徘徊」する人や「奇声」(失礼)をあげる人がいて一睡もできず、家に帰って半日寝込んだ。「私どもには『徘徊』という認識はありません」-何と重い言葉か。

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共同浴室

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ヒノキ風呂の共同浴室(左)とフィットネスルーム

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モデルルーム

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新規に大臣認定を取得した「FRウッド」

 鹿島建設、住友林業、ティー・イー・コンサルティング、三井住商建材の4社は9月9日、鹿島の純木質耐火集成材「FRウッド」の部材仕様を合理化し、約4割のコストダウンを実現した純木質耐火集成材の新規大臣認定を取得、9月から販売を開始したと発表した。

 「FRウッド」は東京農工大学、国立研究開発法人 森林総合研究所、ティー・イー・コンサルティングと鹿島が共同で開発し、2012年3月に鹿島が大臣認定を取得。東京都内の飲食店舗「野菜倶楽部oto no ha Café」に実適用している。①国産スギ材を多用②木材を被覆せずに「あらわし」とし、かつ「構造部材」として利用可能③荷重支持部の周囲に難燃薬剤を注入し1時間の耐火性能を確保④鉄骨造より36%、鉄筋コンクリート造より47%の環境負荷低減が可能-などが特徴。

 今回新たに取得した大臣認定は、①薬剤注入方法の改良により燃え止まり層の厚さを60mmまたは75mmから「50mm」にスリム化②インサイジング処理を1600孔/㎡から「800孔/㎡」に半減③梁の荷重支持部(無処理層)をスギから構造性能が優れた「カラマツ」へ変更-など仕様合理化によって約4割のコストダウンを実現した。

 4社は今後、公共施設や教育施設、福祉施設など様々な建築用途を対象に、小規模から大規模な建物まで幅広く展開していくとし、混合構造の提案も行っていく。さらに、2時間耐火仕様についても、すでに加熱実験により耐火性能を確認しており、新たに大臣認定を取得し、実用化する。

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従前(左)と新認定

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従前(左)と新認定

 

鹿島建設・住友林業 スギ耐火集成材を初採用「oto no ha Cafe」(2013/5/15)

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伐採されることになっている「白山通り」のイチョウ(ごみもなくなるのか)

 先日、記者が以前書いた記事「街路樹が泣いている」を読まれたという千代田区の方から次のようなメールが届いた。

 「今の千代田区では『自転車道整備・歩道整備』の名目で、『神田警察通り』の共立学園横の樹齢80年以上のイチョウの木を全て伐採する計画が持ち上がっております。『街路樹は道路の付属物』の実例です。
 街路樹が泣いている状態です。またこの様な貴重な樹木を伐採するという重要な行政行為が区民には伝えられないのです。
 区議会への説明でも『歩道を整理!』と課長が議員に説明して、予算は通りました。しかし実施の段階で区民・在勤者の知るところになり、今は休止の状態です。区民からの『樹木を保存して、活用する』陳情も出たばかりです。今都内ではオリンピック関連で同じような、街路樹の伐採が多く行われております。
 オリンピックを目途に緑を増やすことが重要なのに、逆行している状態です」

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伐採される「神田警察通り」のイチョウ(共立女子大前で)

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確かに異形であるイチョウ

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「神田警察通り」

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 早速、取材することにした。この方が指摘する「神田警察通り」の伐採計画は、神田錦町から神田駅までの4車線一方通行道を3車線にし、歩道空間を現行の2.7~3.5mを4mに拡幅し、自転車走行空間を整備するものだ。

 平成23年から計画が進められており、第1期工事については昨年から地元と協議を始めており、今年3月の議会で議決されている。計画では共立女子大学と一橋大学施設の間のイチヨウ32本とプラタナス5本を伐採することになっている。

 伐採のために今年7月、イチヨウの枝落としを行ったところ、「切らないで」「かわいそう」「何の説明もなく伐採するのは問題」という声が上がったため工事は中断したままになっている。区は引き続き住民にしっかり説明していくと言っている。

◇       ◆     ◇

 現地を歩いた。計画の主旨はよくわかる。近接する神田神保町界隈は再開発による大規模な店舗・事務所・マンションなどが整備され、また〝食の街〟として人気になるなど、大学の街・古本屋の街が一変したのに対し、神田警察通りは駅から少し離れており、沿道には共立大学、学術総合センター、神田警察署、神田税務署、正則学園、錦城学園、博報堂など外部の人にはなじみがない施設やビルが建ち並び、賑わいの点で大きく差をつけられている。その危機感が背景にあるのだろう。

 イチョウの大木は確かに見事だ。真冬ならともかく、緑の葉が真っ盛りの7月に枝落としすれば「かわいそう」という声が上がるのも当然だ。行政サイドに配慮が欠けていたというほかない。しかし、「全然知らなかった」という住民側にも問題がある。計画は5年も前から始まっている。〝街を自分たちでつくっていく〟主体者意識が欠如していると言わざるを得ない。

 区内にはこのほかにも2カ所で街路樹の伐採計画がある。一つは、御茶ノ水駅から駿河台下までの区道「明大通り」の歩道空間を整備する目的で実施されているものだ。その第1期工事分としてプラタナスなど34本が伐採されることになっている。もう一つは、水道橋駅から神保町交差点までの都の「無電柱化電線共同溝工事」により全体の約4割50本のイチョウが伐採される計画だ。

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「神田警察通り」に面した安田不動産「テラススクエア」の公開空地

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総合設計制度により確保された公開空地の池には鯉や金魚が泳いでいた

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 「明大通り」のプラタナスの伐採については、今年6月15日に行われた区の企画総務委員会の議事録には次のようなやり取りがある。一部を紹介する。区民の代表である区議の街路樹に対する認識がよくわかる。

 道路公園課長 現状のプラタナスが大変樹高が高くなりまして、落ち葉ですとか、あるいは毛虫といった、そういうものが沿道で、実際、非常に困るという問題がございまして、そういう意味では、高くならず、葉張りが余り広がらないということでございまして、そういう特徴があって、今回設定したマグノリアというところは、高さは8メートルほどで抑えられて、なおかつ、木の形、樹形が比較的横に広がらないという特徴、さらに花が咲くという特徴もございまして、選定にふさわしいというところで、地域にご提案したところでございます。

 A委員 …このプラタナスはもう寿命なんですか。年期が来ているの。それとも、生きている木を取っちゃうんですか。…こういう街路樹に関する思想的なというか、物の考え方とか、美観、ゆとり、潤い、品格、そして防火・防災、そういったことも含めた未来をどう描いていくかということについては、詰めが我々が甘かったと思う…何というか、詰めの甘いというか、熟度の甘いというか、そういうところで、やってしまえば簡単なんですけれども、木が高いんですよ、落ち葉が、毛虫がというふうに言われると、全くどうなのかなということは残るので。…このマグノリアで契約しているんでしょうから…まちの人たちは全く知らないわけですし、明治大学だって、あそこ、何ですか、カルチェラタンにしようと言っているわけですし。だったらば、その通りのイメージとして、定着したプラタナスを維持したほうがいいのか、切ったほうがいいのか、あるいは新しく植えたほうがいいのかということについては、やっぱり地元を挙げて協議して確認をすべき事項だと思うんですよね。…

 委員長 議案第31号、歩道拡幅工事「明大通りI期」請負契約について賛成の方の挙手を求めます。〔賛成者挙手〕

 委員長 賛成全員です。よって、議案第31号は可決すべきものと決定いたしました。

 都道「白山通り」の無電柱化については、平成26年6月4日の企画総務委員会でも論議されているが、担当課長は「『白山通り』につきましては、東京都が管理する都道でございます。現在、図の水道橋駅から神保町交差点までの間の約700メートル区間、オリンピックのマラソンコースに指定されておりまして、コースの中で唯一、無電柱化されていない状況にございます。そこで、オリンピック開催に向けまして、ここにつきましては都市計画道路の拡幅整備の予定が入っておりますが、それに先行して無電柱化を行うというものです。……地域もおおむねそれで了解を得ているということでございます」と答えており、イチョウの伐採についてはまったく論議されていない。

 これらのやり取りから判断して、明大通りや白山通りの街路樹の伐採については区議からはほとんど異論が出ていない。「このプラタナスはもう寿命なんですか」という質問が飛んでいるが、この委員の方は現地を見ていないのでは。樹幹を見れば寿命でないことは一目瞭然だ。せいぜい数十年だ。人間なら妙齢にも達していない。プラタナスについての知識がないからこのようなチンプンカンな質問しかできないのだ。

 われわれは都市計画は100年の計と学んだ。その物差しもかなぐり捨てて、100年、200年のスパンで成長する樹木のことも全然考えずに、目先の利便性だけを最優先してマグノリア(これはこれで美しいが)に変更するのは理解できないが、みんなが決めたことだろうからそれはそれでいいのだろう。明大カルチェラタンの歩道に敷かれていたレンガをはがしたのは誰だっけ。

 落ち葉や毛虫について。落ち葉は断じてゴミではない。肥料になるしやがて土にかえる。たき火の材料にして焼き芋を焼くのもよいではないか。毛虫が湧くのはまだ健全ということだ。むしろ毛虫を食べる小鳥が住めなくなってきたことを憂慮すべきだ。

 「白山通り」の街路樹について。水道橋駅から神保町交差点までは古本屋も多いが飲食店も多く、植栽枡・緑地帯にはバイクや自転車が置かれ、ゴミも散乱している。やはり醜い。町内会や商店主などで論議し、きれいにすべきだ。

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「明大通り」のプラタナス

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明大キャンパスから駿河台下に向かう通りのプラタナス

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 東京都は平成17年度「街路樹充実」事業で、当時の都内における街路樹本数48 万本(国道2万本、都道約16万本、区市町村道30万本の合計)を100万本に倍増していくことを打ち出した。計画は順調に進んでおり、平成23年度末には中木を含めて79万本に増加。都道の街路樹本数は39万本に達し、「魅せる街路樹」を目標に掲げる。

 「幹周90cm以上の大径木の街路樹は、都市に『うるおい』や『やすらぎ』を与えるだけでなく、ヒートアイランド現象の緩和や大気浄化機能にも大きな役割を果たしている」としながらも、「数々の役割を担っている街路樹は多くの課題も併せて抱えているのが現状」とし、「2020年の東京~大震災を乗り越え、日本の再生を牽引する~(平成23年12月)」で「大径木再生大作戦」事業を打ち出し、大径木を『元気で生き生きとした街路樹』に再生していくこととしている。

 さらに、「平成26年度 大径木再生指針」には次のような記述がある。

 「街路樹の中には、東京の顔、地域の顔として親しまれているものも多い。また、東京都が街路樹管理を担う前から存在する樹木については、地域住民の関心の深いことが多い。こうした街路樹については地元住民等の意見に十分留意する必要がある。街路樹についての住民の意見は一つとは限らず、例えば直近の住民は落葉などの問題とも関係して伐採や更新に理解を示す一方、やや離れた場所の住民や一般通行者は伐採や更新に反対するといった場合も少なくない。このような傾向は景観的、歴史的価値の高い街路樹を抱える地区や、近隣住民の街路樹への関心や思い入れの強い地区ではいっそう強くなることが多い。

 このような地区における街路樹の管理については、個別・地域的な事情に充分配慮しながら計画的に行うことが必要不可欠であり、『街路樹防災診断』の結果からそのまま措置方法を決めるのでは不十分である。個別・地域的な背景にも留意して措置方法を検討する必要がある」

 また伐採や剪定がスムーズに行われている例として、住民協議会、杉並区、東京都の三者による「中杉通りケヤキ並木連絡会」をあげ、「丁寧な事前説明、意見聴取や管理の試行を行って地元住民の理解を得ることにより、安全等の観点から必要な伐採や剪定がスムーズに行われている」としている。

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よく管理されている「白山通り」の街路樹と植栽枡

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水道橋駅に近い「白山通り」

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伐採されるイチョウ

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都のお知らせ看板

樹齢30年以上 戸建てより低く〝伐採〟された「白岡ニュータウン」のケヤキの街路樹(2016/4/27)

続々「街路樹が泣いている」 押上・異形のスカイツリーに怒れるスズカケ(2015/3/20)

街路樹が泣いている(8) 奇形ばかり海浜幕張・電柱そのもの府中街道の街路樹(2012/6/5)

 

 

 

 

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「&Renovation渋谷青山営業所」

 コスモスイニシアは9月10日、マンションリノベーション特化型の店舗「&Renovation渋谷青山営業所」を青山・表参道の一等地にオープンする。「あなたの〝好き〟や〝憧れ〟をもっと身近に」がコンセプトで、従来の仲介店舗とは全く異なるショールームのような体感型とすることで新たな需要を掘り起こす。

 提供するのは①イニシアパッケージ②ホームデコレーション③リノベーション済マンションの3つ。

 イニシアパッケージは、同社の新築マンションブランド「INITIA(イニシア)」仕様をパッケージ化することで、従来のリフォーム会社、リノベーション専門業者、デベロッパー系などと一線を画すデザイン・感性にこだわった商品を提供する。

 ホームデコレーションは、イニシアパッケージの6つのデコレーションから好みのものを選択できるようにすることで、設計料を無料にするなどコストダウンを図る。

 リノベーション済マンションは、同社の新築マンションと同様の設備仕様にするほか、シニア向けやトランジットジェネラルオフィスとコラボしたデザイナーズホテルのような商品も供給する。住宅設備は最大10年保証とし、工事費は65㎡で約1,000万円を実現する。

 同社は1970年に創業して以来40年を超え、新築マンションを約10万戸、一戸建てを約1,000戸供給している。供給量はデベロッパートップクラスで、最近はデザインにこだわった商品企画が評価されている。

 同社はリノベーション事業を新築に次ぐ事業の柱として位置づけており、今年度引き渡し予定戸数275戸を2年後の2018年度には400~450戸を目指す。青山の一等地に店舗を構えたのは、今後、新築でも都心部で供給していくことから双方のニーズを商品に反映させていくのが狙い。

 店舗は、東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅から徒歩3分、渋谷区神宮前5-52-2、青山オーバルビル地下1階。店舗面積は約50坪。営業時間は10:00~18:30。連絡先は0120-1248-61。

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エッジ スタイル

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 同社の新築マンションについてはここ数年、木質感にこだわったりアンティークな建具・家具を採用したりしてデザインを一新したのは実感しているが、今回の店舗もその延長線上にある。

 どこも真似ができないというのはいかにも同社らしいのだが、今回の店舗は一般的な不動産仲介店舗とはまったく異なるし、大手デベロッパーが力を入れ出したワンストップ型店舗とも趣が異なる。どちらかと言えばインテリア・家具メーカーのショールームやサロンに近い。

 ここまで徹底し、しかも表参道の一等地に設けたところに、同社のリノベーション事業にかける意気込みが伝わってくる。

 ただ、どこにもない店舗だけにどう認知させていくのか、どう集客するのかという課題もありそうだ。様々なイベントを仕掛ければ大ヒットするかもしれない。

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ホームデコレーション

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 優良ストック住宅推進協議会(会長:和田勇積水ハウス会長兼CEO)は8月29日、記者会見を開き、活動状況を報告した。

 冒頭、和田会長は「会が発足して9年目を迎えるが、最近ようやく活動が浸透してきた。しかし、まだまだ啓蒙が不足していると考え、この1年間はスムストック販売士を増やそうと試験を年2回から3回に増やし、年間で約1,200人、今年6月末で4,230人に増やした。スムストックをより有効に活用していただくよう専用のローンも三井住友信託銀行さんに作ってもらった。2~3年後には何とか成約件数を1万戸に引き上げたい。現在の既存住宅は20年で資産価値がゼロになり、投資累計では約500兆円が消滅している。一方で、スムストックはきちんと定期点検しており、50年後でも約500万円の建物価値がある。きちんと再生して若者に買ってもらえる環境を整えたい」などと語った。

 また、「中古住宅」の呼称変更については、「横文字でなく何とか日本語で適切な表現がないか国土交通省にも働きかけ、『既存住宅』にしてもらった」と話した。

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 和田会長が力説されるのはよくわかる。値段が高くても将来にわたって安心して住める住宅が評価されるようになってほしい。

 しかし、悪貨は良貨を駆逐するとはよく言ったものだ。現実はどんどん逆方向に進んでいる。

 これは建売住宅市場のことだが、世間を席巻しているのは圧倒的な価格の安さを売りにしているメーカーだ。どこのエリアでも出隅入隅はない積み木のような外観で、間取りはほとんど同じ、外構もなし。価格は3,000万円くらいだから大手などより1,000万円も安い。こうした住宅の市場占有率は30%を超える-これが現実だ。

 〝売れるものがいい商品だ〟-これに反論できる人はどれだけいるだろうか。

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 「中古住宅」「既存住宅」「既築住宅」…呼称は様々でどれがいいのか記者もよくわからない。昔から使われてきた、今も主流になっている「中古住宅」を変更するのはかなり難しいような気がする。

 「既存住宅」についてだが、記者は「きぞん」と発音してきたが、世間的にはそうなっていないようで「きそん」と発音するようだ。NHKでも昭和16年に定めてから「きそん」となっている。NHK「放送研究と調査MARCH 2014」では「『既存』については,これまで『〜ゾン』を認めたことがない。国語辞典では『キゾン』の読みを参考として入れる場合もあるようだが,今回は調査も実施しておらず,現行どおり(『キソン』)とする」となっている。和田会長も「きそん」と発音されたように聞こえた。

 「きそん」か「きぞん」かは、国立国語研究所などにも問い合わせたが、結局はよくわからなかった。用例として「既存」は明治時代にも使われていたようだが、「きそん」なのか「きぞん」なのかはわからない。「名誉毀損」の「毀損」は「きそん」とふり仮名がつけられていたようだ。「既存」は「きそん」と読んでも「きぞん」と読んでもコンフリクト(衝突)が起こらないのでどちらでもいいと解釈できそうだ。「存」は「そん」も「ぞん」も読み方がある。

 しかし、「きそん」は「毀損」を連想させる。ここは「きぞん」と発音しようではないか。国土交通省でも「きぞん」だし、「既存不適格」も「きぞん…」と読んでいる。

 「既築」は経産省の「既築住宅・ 建築物における高性能建材導入促進事業」などの制度があるが、記者などはすぐ「鬼畜米英」を連想する。これも改めてほしいが、国の機関でもそれぞれ異なるのだから難しい問題だ。

 いっそ、一般に公募して決めたらどうか。いい呼び名が浮かぶかもしれない。

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「キッズデザイン賞」表彰式(アカデミーヒルズ49で)

 キッズデザイン協議会(会長:和田勇・積水ハウス会長兼CEO)は8月29日、「第10回キッズデザイン賞」全受賞作品297点の中から34点の優秀作品を選び発表した。

 内閣総理大臣賞を受賞したのは東京内野学園 東京ゆりかご幼稚園・渡辺治建築都市設計事務所・リズムデザイン=モヴ・三高設計による「東京ゆりかご幼稚園+里山教育」。東京・八王子市のJR八王子みなみ野駅からバス10分の敷地面積約2.5haの高台に約100mの長さの2階建て木造教育棟と子育て支援施設、延長保育室などがある棟がハの字に配置され、背後の森約40haを里山教育につなげていく活動が評価された。

 新設の東京都知事賞はアボードの硬質フェルトのキッズチェア「RK-Chair」が受賞した。

 住宅・不動産業界からは、積水ハウスの「安全配慮引手」が審査委員長特別賞を、富士住建の「たかが洗濯・されど洗濯~新家事空間『スマートランドリー』~」がキッズデザイン協議会会長賞奨励賞をそれぞれ受賞した。

 冒頭、挨拶した和田会長は、「発表させていただく作品は、キッズデザインの理念、考え方をあらわす指標ともいえるすばらしい作品であります。これらの受賞作品を広く社会に浸透させてゆくことで協議会の目指す『子どもたちの安全・安心の向上と、健やかな成長発達に役立つ、ものづくり・ことづくり』、即ち『キッズデザイン』に満ち溢れた社会の実現に少しでもつながることを期待しております」と語った。

 また、審査委員長のインダストリアルデザイナー・益田文和氏(オープンハウス代表取締役)は、「10年目を迎え、やっと賞の意義が伝わるようになってきた。この国は子どもを地域、社会、国が責任をもって育てるようにできているはずだが、子どもを大切にしていると思えないこともある。もっと世間に発信していきたい」と述べた。

 安倍晋三内閣総理大臣も「安倍政権は、未来を担う子どもたちへの投資を拡大し、すべての子どもが夢に向かって頑張ることができる社会を目指します」とのメッセージを寄せた。

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 「東京ゆりかご幼稚園」はすごい施設だ。敷地約2.5haに子どもの定員は約160人。長さ約100mの2階建て教育棟は木造だが、庇の跳ねだしが3.6mもある。

 設計を担当した渡辺治氏は設計事務所の紹介冊子で次のように指摘しているので紹介する。

 「(待機児は)社会の犠牲になるこどもを生じさせるシステムが変わらない限り歯止めがない」

 「待機児がいるから増設するというのは根本的な解決にならない」「時として、国や自治体は『公共の福祉』を『経済の活性化』に置き換えて政策をつくる。 

 私たちの事務所の地元で、廃校になったら福祉施設にするはずだった学校跡地に学校や病院、福祉施設などのあらゆる公共施設と、住宅も禁止するという都市計画が市によって描かれた。建てられるのは、商業・業務と一部の風俗だけだった。

 こんなことをしていたら、日本は本当にだめになってしまうと思い、私たちは地元の商店会、自治会とともに…解体しようとする行政に対して、校門前にまる2年間座り込んで抗議を行うしかなかった。事務所の所員一同、早朝から夕方まで、休日も、雪の日も雨の日も、台風の日も…」

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積水ハウスが受賞した「安全配慮引手」

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「三井ガーデンホテル京橋」

 三井不動産グループが4年後の2020年度までに現在の19ホテル約5,000室を倍増の10,000室に拡大する。8月25日行われた「三井ガーデンホテル京橋」の記者発表会で明らかにした。同ホテルは2016年9月1日(木)に開業する。

 同ホテルは、JR東京駅から徒歩5分、中央区京橋1丁目に位置する敷地面積733.35㎡、15階建て233室。客室面積は18.0~58.8㎡(最多客室は18.0㎡コンフォートで103室)、全て2人以上の宿泊が可能で、ルームチャージは32,000円~100,000円。敷地・建物所有者は柏原ビルで、三井不動産が一括賃借し、三井不動産ホテルマネジメントに転貸、三井不動産ホテルマネジメントが運営する。

 2階にロビーとレストランが一体となったラウンジを設置。ビジネスユースから観光、レジャー需要にも対応する。デザインコンセプトは、“江戸の粋”を現代に昇華させる「京橋モダン」。“判じ絵”など、遊び心を効かせた江戸庶民の文化を取り入れているのが特徴。ホテルの外観・エントランスのアートウォールなどを歌川広重の浮世絵「京橋竹がし」からイメージし、現代的に表現している。

 記者発表会で三井不動産ホテル・リゾート本部ホテル事業部長・鴉田隆司氏は、「現在のホテルマーケットは大変好調。稼働率、客室単価も上昇しており、当社はホテル事業を重要な成長分野として、大手町の再開発『OH-1計画』ではフォーシーズンズの誘致を決定するなど新ブランド、ラグジュアリーブランドを立ち上げ、一気に事業拡大を図る。現在の約5,000室を2020年度までに約10,000室に増やす」と話した。

 三井不動産ホテルマネジメントによると、東京エリアの拠点ホテルの観光・レジャー目的客は2010年度が14.2%だったのが2015年度は48.2%に、外国人宿泊客は2010年度が13.8%だったのが2015年度には48.8%に増加しており、稼働率は90%を超えている。

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ラウンジ

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 ホテル業界のことはよくわからないが、最近の外国人観光客増と2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、需要を満たすにはまだ10,000室くらい不足しているという。同社はその需要を吸収すべく一挙に倍増計画を打ち出した。

 素人ながら、そんなに増やして大丈夫か、反動はないのか心配になってくるが、鴉田氏は「過去のオリンピック開催地のデータを見る限り、稼働率は落ちていない。需給バランスは崩れないのではないか」と語った。

 18㎡で32,000円のルームチャージは〝高い〟という印象を受けたが、関係者によると18,000円くらいになるそうだ。一人当たりだと9,000円だから、東京のど真ん中という立地を考えればこんなものかと思う。

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コンフォート客室

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“判じ絵”デザイン 左から「四亀(良き)」⇒「足袋(旅)」⇒「尾(を)」と読ませる

 

カテゴリ: 2016年度

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 旭化成ホームズは8月6日、同社の賃貸住宅「ヘーベルメゾン」の入居者に多い「共働き夫婦二人」の賃貸ニーズを反映した新商品「ヘーベルメゾンfufu(フフ)」を全国で発売する。

  今回強化するのは、「ヘーベルメゾン」の約7割を占める1LDK・2LDKの住空間。同社の「共働き家族研究所」による調査結果を踏まえ、「同じ空間にいながらも夫婦それぞれの居場所をつくるデスクとソファの位置関係」や、妻だけではなくそれぞれが衣類を個別管理できる「夫婦別々のクローゼット」などを提案している。

 同社の「へーベルメゾン」は6年連続して10%超の伸びを見せており、2015年度は売上高1,024億円で、竣工戸数は9,000戸を突破した。2005年は1R~1DKの比率が80%を占めていたのが、2016年は30%を割り込み、その逆に10%強だった1LDK~2DKは50%近くに伸びている。

 「fufu」の投入により、賃貸市場での差別化を図る。年間販売目標は100棟。

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 同社が示したプロトタイプは約46㎡(14.1坪)。大きなソファが置けるリビングにし、デスクコーナー、夫婦それぞれのウォークインクローゼットの設置、キッチンファニチャー、室内物干し、シューズクロークなどを提案しており、限られたスペースを有効に使えるようにしているのがいい。

 納得はしたのだが、記者は関係者の説明を聞きながらまったく別のことも考えていた。貧しい賃貸マーケットに暗澹たる気持ちになると同時に、健気に生きる賃貸居住者に声援を送りたくなったのだ。

 夫婦二人が居住する面積として46㎡が適当かどうかの判断基準は持ち合わせていないが、決して十分でないはずだ。

 それというのも、同社が2日前に行った別の記者発表会で示された「二世帯」タイプは181.39㎡(54.8坪)、「近居」タイプは119.99㎡(36.2坪)、「遠居」タイプは121.24㎡(36.6坪)だった。

 戸建てと賃貸住宅、子どもがいるかいないか、コンセプトもターゲットも違いがあるとはいえ、「共働き夫婦」というのは同じだ。なのにどうしてこんなにも居住面積に差があるのか。「賃貸」は仮の住まいで、いずれは分譲マンションや一戸建ての取得が可能になるのならそれはそれでいい。

 しかし、このところの地価やマンションの価格上昇で、一般的な第一次取得層の取得環境は極めて厳しい。都心部や準都心部では絶望的になっている。

 同社が発表会で例示した「fufu」第一弾の賃貸マンションと、最近同駅圏で分譲されたマンションを比較してみよう。

 「fufu」第一弾は、根岸線石川町駅から徒歩12分家賃は10.7万円だ。一方、あるデベロッパーが同駅から徒歩7分の元町の一等地で分譲し、ほぼ即日完売したマンションの坪単価は330万円だ。46㎡だと価格は4,600万円だ。

 同じように都内23区などでは軒並み分譲マンションの坪単価は300万円を超えてきており、これを利回り5%で賃料設定すれば46㎡で家賃は約17万円にもなる。世帯年収が500万円くらいではとても住めない。

 例えは適当でないかもしれないが、仮設住宅並みの30㎡でも家賃は10万円になる。暗澹たる気持ちになったのはこのためだ。

 少子化が加速化するいま、そろそろ利回り最優先の賃貸経営の考えを改めるべきだろうし、〝持ち家偏重政策〟も根本的に問い直す時期に来ているように思う。

 このように賃貸マーケットは極めて貧しいが、同社が行った調査結果は、実に健気な夫婦像を浮き彫りにした。

 同社が1都3県、大阪市、名古屋市の賃貸住宅に暮らす20~49歳の男女1,293名を対象にインターネット調査したところ、二人の休日が合わないのは、実に54%に上った。二人の平日の朝食時間が別々であるのは52%にも達している。就寝時間は「同じくらい」が52%だ(専業主婦は32%だが、これは惰眠をむさぼるのではなく子どもと一緒に寝るということだと理解したい)。

 しかし、それでも夫の帰りを待って一緒に食事をする妻は64%(専業主婦は37%)もあり、二人の意識は「夫婦だけで過ごす時間を大切にしている」のは91%、「配偶者は自分にとって心の支えと思っている」のは91%、「友達のような対等な夫婦がいいと思っている」のは87%に達している。実に健気な夫婦像が浮かび上がってくる(とはいえ、「お互い収入(財布)は各自で管理している」というのが54%もあるのは全く解せない。普通の家庭は妻が財布を握っているのではないか)。

 ともあれ、前回と今回の発表会は、ワークライフバランスや親子、夫婦関係を考える機会を与えてくれた。「共働き家族研究所」と「二世帯住宅研究所」にはこれからも居住者、生活者の視点で情報を発信することを期待したい。

旭化成ホームズ 二世帯ノウハウ生かし新たな「近居」「遠居」プラン提案(2016/8/2)

 

 

 

 

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特定建築予定者が提示したイメージ図

 当欄でも紹介したように、東京都は「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の選手村の整備と大会後のレガシーとなるまちづくり「晴海五丁目西地区第一種市街 地再開発事業」の特定建築予定者に三井不動産レジデンシャルを代表とする11社を選定したと発表した。総敷地面積は約13.4ヘクタールで、敷地処分価格は12,960百万円だ。

 発表まで気が付かなかったのだが、いつもの癖でこの処分価格約130億円を総敷地面積約13.4haで割って坪単価を算出した。約32万円となった。あまりにもの安さにあ然とした。

 何かの間違いだと思った。それほど立地条件がいいとは言えないが、中央区晴海5丁目の土地が坪32万円などあり得ない。晴海3丁目(商業地)の今年の地価公示は約436万円だ。当該エリアはこの地価公示の10分の1以下だ。坪32万円の土地はもちろん23区にはあるはずもなく、八王子当たりの都下までいかないとない。

 しかも、ここのエリアの容積率は300%、400%、500%に分かれており、平均を400%とすると、容積率100%当たりの1種の坪単価は32万円÷4=8万円だ。マンションの坪単価にすると、20坪で土地代はわずか160万円にしかならない。

 何かの間違いではないかと思い、都の都市整備局に聞いたが「不動産鑑定法に基づき適正に鑑定評価した額」ということだった。

 こうなるともう一歩も先に進めない。自分で調べるしかない。なので、以下は記者が不動産鑑定に関する国土交通省の「不動産鑑定評価基準」や実務書を四苦八苦して読んで導き出した解だ。当否は自分でもわからないことを断っておく。

 国交省「不動産鑑定評価基準」には次のような原則が示されている。

 「不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(以下「最有効使用」という。)を前提として把握される価格を標準として形成される。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。

 なお、ある不動産についての現実の使用方法は、必ずしも最有効使用に基づいているものではなく、不合理な又は個人的な事情による使用方法のために、当該不動産が十分な効用を発揮していない場合があることに留意すべきである」とある。

 つまり、投機、売り急ぎ、買い進みなど特殊な動機によらない「正常価格」をはじき出すことに心がけた。そして、価格形成に影響を及ぼす自然・社会・経済的な一般要因、地域要因、個別要因などを考えた。

 もっとも重視したのは、地価公示の10分の1しか評価されないのだから、とにかく減価要因を徹底して洗い出すことだった。

 真っ先に考えたのは有効宅地率だ。売却する土地は13haもあるが、道路・公園、その他の公共・公益施設用地の比率は面積が大きくなればなるほど高くなる。当該地は最低でも30%はあると見た。これは明らかに大きな減価要因だ。

 次は市場性と様々な制約、投下資本に対する収益リスクなどだ。分譲、賃借されるのはオリンピックが終了してからだから、今から5年も先だ。5年先の需要と供給の市場性はまったくわからない。不動産鑑定士にもわからないはずだ。このリスクは明らかに減価要因になる。

 立地やオリンピック選手村に利用されることもマイナス要因だ。アクセシリビティについてはいろいろ考えられているが、現況は勝どき駅から徒歩で15分から20分もある。陸の孤島だ。そんな土地に賃貸を合わせ5,650戸の住宅を建設することなど普通のデベロッパーはまず考えない。年間1,000戸を売るとしても6年近くかかる。

 このところの用地・建築費高で晴海エリアのマンションの分譲坪単価は300万円を超えてきている。20坪でも6,000万円だ。完全に第一次取得層の取得限界を超えている。これも大きな減価要因になる。需要と供給の市場原理を考えれば、競争入札になったら手を挙げるデベロッパーは相当の安値でしか入札しない。

 しかも、選手村として機能するように造らなければならない制約も多い。ワンルームなどコンパクトも設けなければならないし、アスリートが利用するのだから天井高は高くしなければならないし、1.8mのサッシ高はまず不可だ。土足で入ることも想定しなければならない。日本人向けに分譲するなら和室の提案が考えられるが、選手村でははたしてどうか。キッチンも選手村なら最低限でいいはずだが、分譲を考慮したらそれなりのスペースは確保しなければならないし、1418の浴室は大きな選手には不評を買うかもしれない…などを考えると、改修費用は相当額にのぼるはずで、これも減価要因になる。

 嫌悪施設も近接している。ばい煙を垂れ流してはいないが、清掃工場がある。津波・液状化の懸念もある。これは防岸工事・液状化対策などで防げるかもしれないが、そのコストは減価要因になる。

 そんなこんなの減価要因は10以上ある。それぞれをマイナス5ポイントとして足し算すると鑑定価格は「正常価格」の半値以下になるし、それぞれマイナスポイントを大きくし掛け算で減点していくと、バブル後の株価のよう「半値8掛け2割引き」のように10分の1以下も妥当な価格に思えてくる。

 とここまで書いてきたのだが、不動産鑑定では価値増分も盛り込むことになっている。これもまた書き出したらきりがない。

 何しろオリンピック・パラリンピックのレガシーにすると謳っているのだから、デベロッパーもゼネコンも威信をかけて最高のものを造るはずだ。土地代がただ同然となればなおさらだ。世界の模範となるような人と環境にやさしいワールドワイドなユニバーサルデザインの街ができるのは間違いない。デベロッパーが提示した完成予想図には翼を広げたようなトライスター型の超高層があるが、これを施工するゼネコンも見えてくる。

 これは記者の提案だが、オリンピック・パラリンピックに出場する選手の手形、足形、サインなどを「〇〇選手が利用した住戸」などと銘板にして玄関に貼れば、爆発的な申し込みが期待できる。世界的な著名な金メダリストのものならオークションにかければ、世界から購入申し込みが殺到する。

 このあたりでよすが、都の売却額がこれほど安くなれば、分譲価格は間違いなく〝格安〟になる。5年後の市場価格は分からないが、この「東京2020オリンピック・パラリンピック レガシー」マンションは坪300万円を超えることはないと読んだ。アッパーで坪250万円くらいではないか。あの最高378倍、平均17.65倍で即日完売した都の定期借地権付きマンション住友不動産「シティタワー品川」の再現もありそうだ。「5年転売禁止」の特約もつきそうだ。

2020東京オリンピック・パラリンピックの特定建築予定者に三井不レジなど11社(2016/7/30)

住友不動産「シティタワー品川」最高378倍、平均17.65倍で即日完売(2008/9/8)

 

 

 

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