サステナブルセットアップオフィス完成 東京建物「東京スクエアガーデン」
「サステナブルセットアップオフィス」(黒い部分のカーペットは従前のものを再利用)
東京建物は9月29日、退去テナントが残した内装や什器備品を生かし、新たなテナントに提供する「サステナブルセットアップオフィス」が2022年9月20日に完成したと発表。同社が保有・管理するオフィスビル「東京スクエアガーデン」12階に整備したもので、入退去時の手間を削減し、より柔軟なオフィス選びを可能にするのが目的。同様のオフィスは新宿センタービル、J-6ビルでも提供している。メディア向け内覧会を行った。
オフィスは、2013年3月に竣工した東京メトロ京橋駅直結の中央区京橋三丁目に位置する敷地面積約8,130㎡、24階建て延べ床面積約約117,000㎡の12階部分の525㎡。従前の間仕切り壁の約2割、カーペットの約6割を再利用し、什器備品35点をクリーニングしたうえで再配備した。
また、社員間のコミュニケーションがとれる空間づくりの一つとしてキッチンを設け、マイボトルやマイカップ、マイ箸などの洗浄、保管を容易にし、サーモス製の真空断熱ケータイマグ(ボトル)を提供することなどで、使い捨て容器の削減を目指す。
設計・内装デザインは、東京スクエアガーデンと同じく東京都中央区京橋に事務所を構えるディー・サインが担当。植栽は日比谷花壇が施工し、グリーンを多く設けることで緑視率を高めている。
これによりテナントの退去時の原状回復工事や入居工事の負担を減らすとともに、環境に配慮したオフィスづくりを行っている。
オフィス内
キッチン
入居者に提供されるマイボトル
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いい取り組みだ。記者は全然知らなかったのだが、2台の「WEB会議BOX」がとてもいい。広さは一人で利用できるくらいしかないが、BOX内は音がほぼ完ぺきに遮断できる。音も漏れることがないので、大声で話しても外に漏れることがない。かなり高価なようで1台100万円くらいするそうだ。
一つ、いかがなものかと思ったのは日比谷花壇によるフェイクによるグリーン(植栽)だ。緑視率を高めることで癒し効果があるとのことだが、フェイクは逆効果という報告事例もある。記者は、同社が2018年に分譲し、人気になった「Brillia 一番町」で、本物の生け花がいけられていたのを見学取材している。
最近では、パソナ・パナソニック ビジネスサービス(PBS)のファシリティマネジメント事業の一つ「COMORE BIZ(コモレビズ)」を実装した三菱地所レジデンスのワークプレース「ザ・パークレックス天王洲[the DOCK]」を取材して感動した。コストをかけるだけの価値=生産性の向上が図れると思う。
「WEB会議BOX」
オフィス内(天井からぶら下がっているのはフェイクグリーン。1台100万円もする「WEB会議BOX」を2台も設けているのに…)
「東京スクエアガーデン」
調整区域・1号店舗の適用受けた「なないろこまち」キッズデザイン賞 最優秀賞
「なないろこまち」(右の調整区域内の農地、左の住宅地に挟まれたエリア)
キッズデザイン協議会は9月28日、「第16回キッズデザイン賞」表彰式・シンポジウムを開催。最優秀賞の「なないろこまち」(黒田潤三アトリエ / なないろレディースクリニック)をはじめとする全優秀賞に賞状を授与するとともに、シンポジウムでは最優秀賞・優秀賞9作品の関係者によるプレゼンテーション、益田文和・審査委員長と赤池学・副審査委員長によるコメントが発表された。
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同賞には、住宅・不動産業界からは、中央住宅の「育てることで育む『農』のある暮らし ハナミズキ春日部・藤塚」と、積水ハウス「エルミタージュクール」がそれぞれ奨励賞を受賞したことは紹介したので省略する。記事を参照していただきたい。記者は、表彰式のみ取材して帰ったので、リアルのシンポジウムは参加しなかったが、黒田氏に話を聞き、シンポジウムもアーカイブで視聴した。
なにが素晴らしかったかといえば、最優秀賞の内閣総理大臣賞を受賞した「なないろこまち」(黒田潤三アトリエ / なないろレディースクリニック)の作品だった。
作品は、つくばエクスプレス線つくば駅から車で20分のつくば市西大沼の調整区域の農地を転用したもので、敷地面積約9,972㎡、RC造+木造平屋建て(一部2階)延べ床面積約4,432㎡の施設だ。
子どもが生まれる前に受診する「外来棟」と産んでから静養する「入院棟」からなる産婦人科を中心に小児科棟、ホール、カフェ、託児などの機能を持つコミュニティ棟から構成されている。
入院棟は、耐火構造にしなくてもよかったが、耐火・耐震性など総合的に判断してRC造としているとのことだ。他は平屋の木造としているのが大きな特徴で、外壁には焼杉を張り、内装材も木調を基本にしている。
なぜ、1万㎡近くもある敷地にこのようなゆったりした配棟の施設にできたのかといえば、都市計画法市第34条第1号(1号店舗)の適用を受けているからではないかと記者は考えた。市内の地価公示からして、隣接する松代町の住宅地は坪30万円くらいするはずだが、調整区域は10分の1くらいだろう。住宅地であれは土地代だけで約9億円だが、調整区域は1億円以下だ。1号店舗の条項を活用したからこそ実現した施設ということができる。中央住宅「ハナミズキ春日部・藤塚」も調整区域内の開発だった。
ネーミングがまたいいではないか。「なないろ」は施設と地域を結ぶ虹の架け橋であり、新生児の未来を指し示す希望の光だ。「こまち」は、「子」であり、女の子であれば「小町娘」であり、英語であれば共同、繋ぐ意味を持つ「co」である。
黒田氏のプレゼンテーションもよかった。「最初に道をつくり、街をつくった」と語った。記者はこの「最初に道をつくった」というフレーズに感動を覚えた。わが国の街並み設計に大きな影響を与えた建築家・宮脇檀の建築・街並み設計手法と同じだったからだ。
宮脇氏が亡くなったのは24年も昔だ。黒田氏が宮脇氏の設計思想に影響を受けたかどうかは分からないが、赤池氏はシンポジウムで何度も「温故知新」を語った。偶然の一致ということか。
中央が黒田氏
益田氏
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以下は付録だ。同協議会への注文をひとくさり。
この日(28日)、表彰式の会場となった六本木ヒルズ49階「アカデミーヒルズ49」には主催者、受賞者、メディアなど200名以上集まっていた。10時から主催者の同協議会・坂井和則会長のあいさつに始まり、来賓の経産省、内閣府(少子化対策、男女共同参画担当)、内閣府(消費者担当)、東京都の祝辞・挨拶、同賞審査委員長・益田文和氏の総評、受賞36作品の賞状授与、iFデザインアワード日本オフィスの来賓あいさつが終わるまでの約1時間半、みんな身じろぎもせず聴き入り、しわぶき一つ聞こえなかった。その都度、拍手も湧いた。落ち着きなく左右に揺れていたのは小生一人くらいだったろう(小生は、小中学生のときは45分間の授業時間に我慢がならず、紙飛行機を飛ばしたり、前に座る女の子の髪と椅子をセロテープでくっつけたりしていたずらばかりしていたので、先生に怒られ、いつも廊下に立たされていた)。前日の国葬もそうだったが、なんてわが国の人々は行儀がいいのだろうと感服した。
しかし、挨拶はみんな、記事にできるような気の利いたフレーズなど一つもなく、意味は分からなくとも美しい祝詞でもなく、枕詞の連呼ばかりだった。いったい総理大臣、経産大臣…などの冠に何の価値があるのか、小生はさっぱり分からない。
もう一つ。赤池氏はシンポジウムで黒田氏に対し、自らも益田氏も審査委員を務めるウッドデザイン賞への応募を勧め「高い点数が付くはず」と呼び掛けた。記者はこれまでも書いてきたが、キッズデザインとウッドデザインとは極めて親和性が強く、グッドデザイン賞も含めて、世界に通用するユニバーサルデザイン賞(UD)と統合してはどうかと考えている。外国には「キッズデザイン」という概念はないようで、だからこそiFデザインアワードと連携することになったのだろが、日本発の「キッズデザイン」は世界に通用するのか。
中央住宅と積水ハウスが奨励賞受賞 第16回キッズデザイン賞36点発表(2022/9/22)
「一般社団法人 日本ウッドデザイン協会」設立 会長に隈研吾氏(2021/12/9)
積水、旭化成、ケイアイスターが受賞/記者にも見る機会を 第15回キッズデザイン賞(2021/9/30)
三菱地所の国際ビルと東宝・出光美術館の帝劇ビル 一体的建て替え
国際ビル(左)帝劇ビル
三菱地所、東宝、出光美術館は9月27日、皇居外苑のお濠と丸の内仲通り双方に面した千代田区丸の内3丁目に位置する三菱地所の「国際ビル」、東宝と出光美術館の「帝劇ビル」を一体的に建て替えると発表した。建て替え後は帝国劇場・出光美術館の再開を予定している。建て替えスケジュールは未定。
帝劇ビルにある帝国劇場は、1911年に開設されたのち、1966年に建替え竣工した2代目。出光美術館は、出光興産の創業者である出光佐三が70余年の歳月をかけて蒐集した美術品を展示・公開するため開館され、現在、国宝2件・重要文化財57件を含む約1万件のコレクションを有する美術館。
国際ビルは1966年9月竣工の敷地面積約5,623㎡、9階建て延床面積約76,918㎡。
帝劇ビルは、1966年9月竣工の敷地面積約3,825㎡、9階建て延床面積約39,419㎡。
ハードル高い建売住宅のZEH化 快適性の見える化必要 大和ハウス 勉強会に参加して
小山氏(左)と秋元氏
大和ハウス工業は9月26日、リアルとオンラインによる「業界動向勉強会(環境篇)」を開催。芝浦工業大学建築学部長教授・秋元孝之氏が「脱炭素社会を担う次世代の建築・住宅」と題する講演を行い、同社技術統括本部環境部長・小山勝弘氏が「大和ハウスグループの脱炭素社会への取り組み」について説明した。
秋元氏は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すためのZEB、ZEHなどの取り組みの現状や課題なとについて語り、「人類の活動によって生じる温室効果ガスの増加による気候変動が、世界に深刻な災害を引き起こしている現在、地球環境への負荷低減が喫緊の課題となっている。日本政府が掲げた2030年度までにCO2を46%削減(2013年度比)するという宣言の中で、家庭部門は66%の削減を求められている。あと8年。個人が現実に喫緊の課題として受け止めているか? 無責任な目標を掲げるのではなく、国民が不利益を被らないよう配慮した取組を進めて行くためにはまだまだ議論すべきことが多い。産官学全てのプレーヤーが将来の日本に責任を持って議論に参画していくことが重要ではないか」と締めくくった。
小山氏は、同社の脱炭素社会への取り組みについて説明。自社施設のZEB化+自社発電でRE100を中心とする再エネ100%のモノづくりと、ZEH・ZEB+全棟太陽光を中心とする再エネ100%のまちづくりを掛け合わせてカーボンニュートラルへ貢献すると話した。「2030年までに、やれることはすべてやる」と強調した。
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同社住宅事業本部事業統括部分譲住宅グループ部長・本間生志氏が「今期計上する約1,600戸の分譲戸建てのうち8割はZEH対応。5年後には100%にする」と9月15日に話したばかりだ。
それから、間、髪をいれず今回の勉強会だった。テーマは時宜を得たもので、両氏の話はとても分かりやすかった。秋元氏が脱炭素社会の実現は喫緊の課題と語り、小山氏は「やれることはすべてやる」と意気込みを示した。
小生も、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指すSDGsに賛同し、実践するためにもらったバッジをいつも胸に付け、17項目の目標の一つである「つくる責任 つかう責任」を「書く責任」に置き換えて記事を書いているつもりだ。
今回のテーマである建築・住宅分野でのカーボンニュートラルの取り組みは、速度は遅いかもしれないが確実に前進していると思う。中でも注文住宅の分野では、大手ハウスメーカーが先頭を切ってZEH化を進めており、2020年度目標である半数以上を上回る56.3%を達成している。全体では24.0%にとどまっているものの、これから加速することに期待したい。
分譲マンションを中心とするZEH-M の取り組みも進んでいる。2021年9月現在、ZEH-Mデベロッパー登録は44社(D登録)、建築請負会社登録も33社(C登録)に達している。主要なプレーヤーがほとんど名乗りを開けていると理解できる。2025年くらいには分譲マンションの30~40%はZEH化が実現するのではないか。
しかし、賃貸住宅もそうだが、建売住宅のZEH化は遅々として進んでおらず、この先も過大な期待は持てそうにないのが現状だ。2020年度の建売ZEHは2,886戸にとどまっており、着工戸数129,351戸の2.2%に過ぎない。建売住宅ZEHビルダー登録はわずか20件だ。
積水ハウス、大和ハウス工業など大手ハスウメーカーなどは100%近いZEH率を達成しているが、全体市場に占めるハスウメーカーのシェアは10%にも満たないと思われる。
一方で、記者が〝建売御三家〟と呼ぶ年間販売戸数が約4万戸の飯田グループホールディングス、約5.5千戸のオープンハウスグループ、約4.8千戸のケイアイスター不動産3社の合計販売棟数は約5万戸だ。この3社グループのうちZEH化を進めているのは飯田グループの東栄住宅1社しかない。
この3社グループがZEH化を進めれば建売住宅のZEH化は一挙に進むが、いまのところその気配はない。ハードルが高いからだ。
例えば飯田グループ。同社の2022年3月期の建売住宅の1戸当たり平均価格は2,866万円(前期比146万円増)だ。価格が上昇したのは、用地費、建築費上昇を価格に転嫁したからで、利益率は減少している。これに、ZEH化に伴う価格上昇を仮に300万円とし、価格に転化すれば平均価格は一挙に10%以上アップの約3,200万円になる。ZEH化の課題とされる「顧客の予算」「顧客の理解を引き出すことができない」「初期投資費用が高い」「投資回収年数が長い」壁が立ちはだかる。
では、この「顧客の予算」「顧客の理解を引き出すことができない」壁をどのように突破するかだが、一つは105万円の補助金制度の活用だ。あとの200万円上昇分をどこで相殺するかだが、光熱費などのランニングコスト減だけでは20年も30年もかかる。経済的効果だけでは顧客を納得させるのは難しいと記者は考える。
そこで、欠かせないのは快適性の〝見える化〟〝見せる化〟だ。これが決定的に欠けている。記者は、建売ZEHやZEH-Mの取材も30件以上取材しており、外断熱マンションやZEH仕様の戸建てに体験宿泊しているので、ZEHの威力を体感しているが、住宅購入検討者のうちZEHを体感している人は10人に1人もいないはずだ。取材現場で感じたことだが、Low-Eガラスや樹脂サッシの効果を理解できていない営業担当者もかなりいた。
説明する本人がZEHを体験していなければその良さを顧客に伝えることなどまずできない。営業担当者はもちろん、顧客にもZEHを体験させる機会を設けることが欠かせない。
一番適しているのはモデルハウスだろうが、住宅展示場は火気厳禁で、宿泊も不可だ。これを早急に改めるべきだ(一部のハウスメーカーはそのような規制を受けない単独の展示場を設けて効果をあげている)。建売住宅のZEH仕様のモデルハウスは極めて少ない。
体験できるようにすれば、真冬でもエアコン1台で床暖房は使わなくても、トイレも浴室も廊下も室温が一定であることが分かるはずで、顧客の理解度を飛躍的に向上させることができるのだが…。妙案はないのか。
最後に記者の提案。虫眼鏡で帽子に穴をあけるのと同じ原理で、レーザー砲が実用化される時代が来てはほしくないのだが、記者は学生時代、民家の2階の北向き3畳間に間借りしたことがある。何とか光を取り込もうと隣家の屋根に鏡を置き、反射させて成功させた。押し入れの中まで光が入った。
いまある太陽光採光システムも原理は同じだ。コストがとてつもなくかかるようだが、技術革新によって光が届く時間を遅らせるか、光を貯めることはできないのか。
「今期分譲戸建て1,600戸の8割はZEH仕様」本間部長 大和ハウス 記者レクチャー(2022/9/18)
大和ハウス工業「平和台」 同社初の「ZEH-M Ready」 申し込み殺到 早期完売へ(2020/9/15)
日常と非日常演出 従来の「スイート」とは異なる「ミマルスイート 東京・日本橋」
「ミマルスイート 東京・日本橋」
コスモスイニシアとコスモスホテルマネジメントは9月29日、アパートメントホテル「ミマル(MIMARU)」の新シリーズで、全室2ベッドルーム以上のスイートタイプで構成する「ミマルスイート(MIMARU SUITES)」の第2弾「ミマルスイート 東京・日本橋」を開業する。開業に先立つ26日、メディアに公開した。
物件は、東京メトロ日比谷線・都営浅草線人形町駅から徒歩2分、中央区日本橋堀留町2丁目に位置する11階建て延床面積約3,035㎡の全36室。1フロア4室で、客室は58~60㎡。2階に一般の人も利用できるカフェラウンジを併設する。開業は9月29日。
「ミマル(MIMARU)」は、2018年2月開業の第一弾「MIMARU 東京 上野NORTH」を皮切りにこれまで東京で13か所、京都で7か所、大阪で3か所、合計23か所で運営しており、約40㎡以上の広い客室に食器、調理器具付きキッチンやリビング・ダイニング、洗濯機を備えているのが特徴。2ベッドルームを備えた「MIMARU SUITES」の第一弾は2021年開業の「MIMARU SUITES 京都四条」。
同社は今後、「東京日本橋」に続き、2022年12月には「MIMARU SUITES東京浅草」を、さらに池袋と大阪・心斎橋に2つ、合わせて5つのホテルを年内にオープンする予定。
宿泊料金は1室1泊約36,000円〜。6名で宿泊の場合は1泊・1名当たり約6,000円の料金設定になっている。
運営を担当するコスモスホテルマネジメント広報担当者によると、現時点の予約者の半数が7泊以上を希望し、このところ予約は倍増しているともいう。
リビング
バスルーム
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意表を突いたホテルだ。記者は、「スイート」というからには、内装はさぞかし豪華な建具・家具が備えられ、設備仕様レベルも高いのだろうと想像していたのだが、そうではなかった。広さは「スイート」にふさわしいものだが、2人宿泊を想定しているものではなく、国内外の親子、兄弟姉妹、三世代、親戚同士、友人などとのグループ旅行など多様なニーズにも対応できるものだった。(旅館タイプは多人数で宿泊できるものが多いが、いびき・歯ぎしりなどを気にし出すと眠れなくなり、朝早くから風呂に入る人もいるので、ほとんど一睡もできなかったこともしばしばあった)
何がいいかといえば、メインのトイレ、浴室のほかに、もう一つのベッドルームにはトイレ・洗面・シャワー室が備えられていることだった。双方の浴室・シャワー室にはタオル掛けも2か所についていた。非日常を演出しながら、日常のシーンも想定し、冷え切った関係を修復し、それぞれのコミュニケーションを劇的に向上させる可能性を秘めた企画がいい。6名利用したら1人6,000円というから、並みの20㎡前後のツインとは比較にならないほど〝豪華〟といえば豪華だ。
そして、2階のロビー、ラウンジ、カフェコーナーがまたいい。広さは、記者が見学したこれまでの「MIMARU」より広く、備えられている器やアート、約300冊の書籍などを客室に持ち込むことが可能で、食器類や小物などは購入できるようになっていた。それらは決して高額な商品ではなく、小生の家庭でも使っているような日常的に使えるものばかりだった。
書籍は、外国人利用も想定してか、わが国の浮世絵や伝統的な文化や歴史に関する写真付きのものが多い。そして、嬉しいことに、人形町界隈の酒屋から取り寄せた日本酒を無料(飲み放題ではないが)で試飲できるというではないか。
書籍といえば、昨年4月に見学した積水ハウスの民泊運用型セカンドハウス「YANAKA SOW」を思い出した。「愛とエロス」と名付けられた客室があり、客室に備えられていた背表紙に「Shunga」と書かれた書籍には北斎、英泉、国貞、歌麿らによるくんずほぐれつの、知らない人は卒倒しそうな春画が描かれていた。「MIMARU」はそんな本は置けないのはよく分かる…。
ロビー
額装されたアート
ロビー
ロビー
〝骨太ニッチ〟アパートメントホテルで独走 コスモスイニシア第一弾「上野」開業(2018/2/2)
静音空間&睡眠解析サービス提供開始 カプセルホテル「ナインアワーズ大手町」
「ナインアワーズ大手町」(Nine Hours Otemachi - Imperial Palace)
コスモスイニシアは9月26日、同社が保有するカプセルホテル「ナインアワーズ大手町」(Nine Hours Otemachi - Imperial Palace)に遮音性の高い新型静音カプセル「9h sleep dock」を初導入し、睡眠解析サービス「9h sleep fitscan」の提供を開始する。運用・サービス提供を前にした9月21日、プレス内覧会を実施した。
新型カプセル「9h sleep dock」(計8床)は、ヤマハ発動機と共同開発したもので、従来はロールカーテンで仕切られていたカプセルの入り口を遮音性に優れたハッチ型にすることで、いびき音や廊下を歩く音などを聞こえづらくする「静音空間」のほか「個別温湿度管理」「クリーン換気」機能を持つ。
睡眠解析サービス「9h sleep fitscan」は、2021年12月から導入を開始したもので、宿泊客に了解の上で、睡眠データを赤外線カメラ、集音マイク、体動センサーで収集・解析し、後日、心拍数やいびき、無呼吸になった回数・時間などをレポート形式で提供する。サービス利用者は現在1万人を超え、約7%の睡眠時無呼吸症候群が検出されている。
今後、同社が運営する19店舗、年間利用者100万人に近い利用者へサービスを拡大することで、数年以内には数百万人~1千万人規模の睡眠データベースの構築を見据えている。
この種の「睡眠ビッグデータ」は世界に類がなく、睡眠障害は統合失調症、うつ病、パーキンソン病、認知症などの疾患と関連があることから、データが疾病メカニズムの解明や治療に貢献すると期待されているという。
施設は、東京メトロ東西線竹橋駅から徒歩3分・神保町駅から徒歩4分、千代田区神田錦町3丁目に位置する敷地面積約166㎡、8階建て延べ床面積約829㎡、客室数129室(男性76室/女性53室)。チェックイン・アウトは14:00~10:00、宿泊料金は変動制でこの日(21日)は約3,000円(「9h sleep dock」は+1,000円)。
東京駅や大手町、皇居に近いため出張や旅行の際のトランジットサービスとして、宿泊や仮眠などさまざまな需要に応えるカプセルホテルで、皇居ランナーなどにはシューズロッカーの提供やランニングウェア、ランニングシューズのレンタルサービスも行っている。
10月には、コワーキングスペースとして電源・Wi-Fi完備のデスク・ラウンジが使える当日/月額プランの販売を開始する予定。
新型カプセル「9h sleep dock」
ピクトサイン
洗面室
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カプセルホテルは苦い経験しかない。大成有楽不動産が一昨年開業した「BAYHOTEL東京浜松町」を取材したときも書いたが、終電に間に合わず家に帰るよりはるかに安く済むので同僚などと何回か利用したことがある。ゴムひも付きのカギを手首にはめさせられ、囚人服のようなパジャマを着せられ、2段ベッドに押し込められるのには閉口した。浜に打ち寄せられたトドの死骸のよう格好の湯上り姿のサラリーマン(さすがにそんな女性はいなかった)を見ると、情けないやら悲しいやら、酔いがぶり返した。その都度〝絶対、お前らとは飲まないぞ〟と誓ったが、酒の誘惑には勝てなかった。
今回のカプセルは、昔利用したものとは異なっていた。テレビはなかった。スマホがあればいいのだそうだ。酔っぱらいなどはあまり利用しないことも初めて知った。
白を基調にした内装デザイン、廣村デザイン事務所によるピクトサインは美しく、シャワー室のシャワーヘッドは立派なものだったのが印象に残った。ただ、人間洗濯機のようなカプセルはどうしても馴染めなかった。
睡眠解析サービスについてはよく分からないが、無呼吸、いびき・歯ぎしりは重大な疾患と関係があることは身内、知人を通じてよく知っている。カプセルだけでなく、同社の「MIMARU」に導入してもいいのではないか。
コワーキングスペース
外観
大成有楽不 ホテル&カプセル 「BAYHOTEL東京浜松町」4月24日開業(2020/3/18)
中央住宅と積水ハウスが奨励賞受賞 第16回キッズデザイン賞36点発表
キッズデザイン賞 受賞36作品
キッズデザイン協議会は9月21日、第16回「キッズデザイン賞」受賞作品214点の中から優秀作品へノミネートされた最優秀賞、優秀賞、奨励賞、特別賞など36点を発表した。9月28日に表彰式、シンポジウムが開催される。
最優秀賞の内閣総理大臣賞には茨城県の黒田潤三アトリエ/なないろレディースクリニック「なないろこまち」が選ばれた。受賞理由は「カフェのような待合室、別荘のような病室など、クリニックの枠を超えて、小さな町をそのまま実現し、リアルな触れ合いを大切にした良質な取組」であること。
住宅・不動産業界からは、奨励賞(キッズデザイン協議会会長賞)に中央住宅「育てることで育む『農』のある暮らし ハナミズキ春日部・藤塚」と、積水ハウス「エルミタージュクール」がそれぞれ選ばれた。
中央住宅の受賞作は「住まいながら農に関わり、自らの食の成り立ちや消費を学べる、社会提案性の高い取組であり、建築はベーシックな機能と意匠を押さえており、すっきりとしたデザインで評価できる」点が、積水ハウスの受賞作は「子育て世帯ならではのニーズ、例えば見守りをしながら家事のしやすい動線、外遊びを自由にさせられるような中庭、一時預かりに使えるような空間や遊び場などを備えた、『子育て』に特化した思い切った空間提案」が評価された。
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両社の受賞作のうち「ハナミズキ春日部・藤塚」は見学取材している。記者は調整区域で開発したことに価値があり、だからこそ農園付きで土地面積が広く、価格もリーズナブルな商品にしたのが肝だと思う。受賞理由にある、子どもが「住まいながら農に関わり、自らの食の成り立ちや消費を学べる」かどうかは親次第だ。
積水ハウスの受賞作は機会があったら見学したい。
中央住宅「育てることで育む『農』のある暮らし ハナミズキ春日部・藤塚」
積水ハウス「エルミタージュクール」
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今回から受賞作品発表・表彰式の方法が変わった。従来は受賞作発表と表彰式は同時だったのが、今回は受賞作発表と表彰式まで1週間の期間が設けられた。メディアがこの間に各受賞作を見学取材できるよう配慮したと小生は受け止めた。結構なことだと思う。小生は前回の第15回表彰式の記事でも「記者が見る機会を与えてほしい」旨の記事を書いた。
しかし、28日までは3連休を挟んでいるので、休祝日を取材に充てられないことはないが、実質3日間しかない。しかも、多くのメディア関係者はすでに日程を組んでいるはずで、自分の目で確認できる機会は限られる。もう少し期間を開けていただきたい。
さらに言えば、キッズデザイン賞に限ったことではないが、応募・審査の方法を改め、直接消費者が参加できるようにしてはどうかということだ。
建築物などは竣工から1~2年が経過しているものが多いはずだ。応募する側としては、実態・実績がないと応募しづらい事情もあるのだろうが、中央住宅の受賞作は2年前、積水ハウスの賃貸住宅は3年前の竣工だ。今回、総理大臣賞を受賞した「なないろこまち」も1年以上前だ。これだけ間延びすると、受賞の有難みも薄れるというものだ。
いまの若い人は新聞もテレビも観ないと聞く。スマホ一つであらゆる情報を収集するのだそうだ。ならば、SNSを利用して、消費者から推奨してもらえるようにすれば賞の〝格〟は飛躍的に高まるはずだ。前回の第15回のときの菅義偉総理も今回の岸田文雄総理も人気がないようだ。そんなお墨付きをもらって嬉しい子どもなどいるのだろうか。ネットで調べたら、世の中には内閣総理大臣賞・杯は競馬、競輪をはじめ院展、パソコン入力など60以上あった(岸田総理はいくつご存じか)。いい加減、このような事大主義から脱却すべきだ。権威に縋りつこうとする国民性にも問題がある。それより赤胴鈴之助とか月光仮面、ドラえもん、クレヨンしんちゃん、アンパンマン…はどうか。
厳しくなる調整区域の宅地開発/ポラス・春日部の記事 メディアはなぜ触れない(2020/7/10)
調整区域の市民農園付き200㎡邸宅 ポラス「ハナミズキ春日部・藤塚」企画秀逸(2021/7/3)
積水、旭化成、ケイアイスターが受賞/記者にも見る機会を 第15回キッズデザイン賞(2021/9/30)
並のマンションはるかにしのぐ 三井不 フラッグシップ「MFLP海老名Ⅰ」満床稼働
「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)海老名I」
三井不動産は9月20日、同社のロジスティクス事業のフラッグシップとなる「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)海老名I」が竣工、満床稼働すると発表した。免震構造、太陽光発電、地中熱活用、屋上緑化、グリーンインフラ、間伐材利用、天井高3.5mのスケルトン天井ワークプレイス、雨水貯留池などを整備して同社初の最高ランク「ZEB」認証を取得しているのが特徴。同日、メディア向け内覧会を行った。
施設は、圏央道「海老名」ICと海老名運動公園に隣接する海老名市中新田の工業・準工業地域に位置する敷地面積約54,847㎡、鉄骨造・免震構造6階建て延べ床面積約122,180 ㎡。設計・施工は日鉄エンジニアリング。着工は2021年5月、竣工は2022年9月20日。
施設は、従前採石場として利用されていたところで、建物デザインはオーストラリアのデザイン事務所JACKSON TEECEを起用。圏央道からよく見える3階以上は見る角度によって表情が変わる木調ルーバー(ある女性記者は「木琴のよう」と形容した)を採用。
最大の特徴は、同社初の「ZEB」(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証を取得したことで、太陽光発電、Low-Eガラス、地中熱ヒートポンプ、デシカント空調、屋上緑化などを整備することで、全体のCO2排出量を実質ゼロにする「グリーンエネルギー倉庫」を実現した。
このほか、環境配慮では「海老名の森・グリーンインフラ」をコンセプトに、桜並木をはじめ約1,500本の高中木、約15,000本の低木類などを植樹。最大貯水量2,100m³の雨水貯水池を整備し、樹木の水遣りなどに活用する。また、三井不動産グループの約5,000haの社有林から生じる間伐材をエントランスやラウンジの仕上げ材に多用している。
さらに、地域との親和性を重視し、施設の使用開始(10月1日)前の9月25日(日)に、近隣の子どもや住民に開放し、マルシェ、ランニング教室、ヨガ教室、間伐材工作プログラム、スノーピークビジネスソリューションズ監修によるテント設営体験会や焚火体験などのイベントを行う。この種の取り組みは継続して行っていく予定。
快適なワークプレイスを提供するため、共用部にはスケルトン天井(約6m)の開放感あるワークプレイス(天井高3.5m)や、WEB会議にも対応した個人ブースを設置するほか、事務所に面したバルコニーやスカイデッキには緑化を施し、最上階には相模川越しに丹沢連峰や富士山を一望できるラウンジを配している。BCP対応は72時間稼働の非常用発電機や免震装置など。
同社ロジスティクス本部ロジスティクス事業部事業グループ統括・田中耕一郎氏は「フラッグシップと位置づけた施設で、インターチェンジに隣接する恵まれた立地を生かし、当社初のZEB認定などの環境配慮、デザイン、地域連携などで他社との差別化を図っている。テナントからもお褒めの言葉を頂いている」と話した。
表情が変わる木調ルーバー
エントランス
スケルトン天井の事務所スペース
スカイデッキの横の屋上緑化(草はセダン)
◇ ◆ ◇
免震にZEB認証、天井高3.5m(倉庫部分は5.5m)、Low-Eガラス、スカイラウンジ・スカイデッキ、間伐材利用のラウンジ仕上げ、木調ルーバーの外観デザイン…素晴らしい施設だ。同社がメディア向け内覧会を実施した理由がよく分かる。
マンションに例えたら、同社の〝パークホームズ〟に負けないどころか、はるかに勝るレベルだと思った。厚木駅前では坪単価200万円のマンション「ファーストリンクレジデンス」(193戸のうち170戸超が成約済みとか)が建設中で人気にもなっているが、ここなら坪単価250万円でも売れるのではないかと思ったほどだ。
実際は圏央道の騒音が凄いのでマンションは無理だが、これほど高いレベルであれば共同住宅などとの複合開発(同社の「羽田」は梓設計の本社が入居している)の可能性もあるのではと田中氏に聞いた。田中氏も「機会があれば商業、オフィス、住宅などの複合開発をやってみたい」とまんざらでもなさそうだった。バブル期は倉庫がディスコなどで賑わったではないか。
もう一つ。田中氏が「倉庫は車の出入りが多いことなどで『嫌悪施設』と言われるが、そうでないことを地域の方々にも理解してもらえるよう9月25日には施設を開放し、マルシェや子供のかけっこ、ヨガ教室気などを行う」と語った「嫌悪施設」について。
記者は2018年の記者会見で、当時、常務執行役員ロジスティクス本部長だった三木孝行氏(現取締役専務執行役員)が「もはや、後発ではない。嫌悪施設ではない」と語ったのを鮮明に覚えている。昨年には、「嫌悪施設」とは何かの記事も書いた。「嫌悪施設」は不動産流通促進センターが例示したのを業界がそのまま受け入れ運用しているもので、概念などない。「嫌悪施設」は、風俗も含めていわゆるエッセンシャルワーカーが働いている施設も多い。職業差別にもなりかねない。見直す必要があるのではないか。「駅近」がいいと決めたのは誰だ。
さらにもう一つ。今回の施設は最高に素晴らしいのだが、画竜点睛、だからこそ欠けているものが一つだけある。オフィス内のフェイクの観葉植物だ。本物の緑を配置すれば就労環境は劇的に向上し、「倉庫」のイメージは一変する。用途規制も見直されることになるかもしれない。やらない、やります、やる、やるとき、やれば、やろう…号令を下せるのは三木さんしかいない。
スカイラウンジ
間伐材を活用したラウンジ
非常用発電機
スカイラウンジと分散配置となるサブラウンジ
「心理的瑕疵」「嫌悪施設」とは何か 釈然としない国交省「死の告知ガイドライン」(2021/10/10)
梓設計が本社機能 三井不 街づくり型「インダストリアルパーク羽田」満床稼働(2019/7/5)
「最早、後発でない」「嫌悪施設でもない」 三井不 ロジスティクス本部長・三木氏(2018/5/21)
平均74㎡、競合物件意識した商品企画 マリモ・小田急不の駅前再開発「厚木」(2021/11/3)
「今期分譲戸建て1,600戸の8割はZEH仕様」本間部長 大和ハウス 記者レクチャー
大和ハウス工業は9月15日、9月下旬に発表される基準地価を前に、記事を書くのに参考となる「記者レクチャー会〈2022年基準地価〉」を開催した。記者は別の取材のため録画で視聴した。
分譲マンションについては同社マンション事業本部事業統括部部長・角田卓也氏が、分譲戸建てについては同社住宅事業本部事業統括部分譲住宅グループ部長・本間生志氏が、物流事業についてはDプロジェクト推進室上席主任・藤田渉氏が、オフィス・ホテルについては流通店舗事業本部事業統括部開発事業部開発グループグループ長・和田康紀氏がそれぞれ約10分間、事業環境などについて説明した。
角田氏は、首都圏マンションは引き続き好調に推移し、DINKSやDEWKS、富裕層の資産性を重視する旺盛な需要を背景に、販売価格も引き続き上昇しているとした。近畿圏や地方都市でも首都圏ほどではないが、再開発・複合開発などに対する需要の高まりがみられると説明した。
このような需給関係から、仕入れ競争も激化し、マンション用だけではなく賃貸用として取得するデベロッパーとの競合もあり、良好な適地には各社が群がり入札になると話した。
本間氏は、今年度上半期は在庫減少が要因で低調に推移したが、下半期はZEH仕様比率を大幅に高め、人気の家事シェアタウンなどを積極的に分譲すると話した。在庫(販売物件)が減少(最小期2,800区画⇒現在は3,400区画)したことから、今年設けた82名の用地企画マネージャーを通じて仕入れを強化し、3月末には年間在庫数(販売数)4,000区画に戻すという。
今後の地価動向については「全く読めない。いつ下落してもおかしくない」と警戒感も強めている。
物流市場について藤田氏は、EC・通信販売の継続進展、コロナ禍によるEC利用の定着・決済環境の充実などからBtoC、EC市場規模は順調に拡大し2026年度は29兆円を超えると話した。また、消費形態の変化と冷凍技術の進化に伴う冷蔵冷凍倉庫需要の増加などから物流適地が不足しており、好立地の物流用地は高値で取引されていると説明した。
オフィス・ホテルマーケットについて和田氏は、東京・大阪・名古屋圏のオフィスはテレワークやサテライトオフィスなど働き方の多様化により、乱立する都心のオフィスビルは波乱含みとした。
ホテルはコロナ禍で固定賃料の大幅減額や固定賃料が負担となり撤退を余儀なくされるホテルも見受けられ、本格回復は2024年と読み、これからは、売上に応じた変動賃料やホテル運営委託が主流になってくるとした。ホテルオペレーターの質(運営力 ・組織力・サービス・財源)が求められる時代になったと語った。
◇ ◆ ◇
これまでもそうだが、同社の記者レクチャーは非常に面白い。今回も4氏の説明は40分くらいで、残りの約50分間を質疑応答に割いた。そのため、メディアの質問が相次いだのだが、ハウスメーカー担当記者の関心事でもあるのだろうか、分譲戸建てに関する質問が多かった。
意図したことかどうかは分からないが、本間氏が質問を誘発するような本音の話をしたからでもある。本間氏は冒頭、各地区別の分譲戸建ての表データを示し「これは未公表資料ですので、転載は控えていただきたい」と前置きしながら、「赤字が目立ちかっこ悪いのだが、これが実態。今年度上半期の分譲戸建ては低調に推移した。分譲は〇%、土地は〇%減少した(戸数のことか)。大幅な在庫減が要因…価格は建売住宅が〇万円、戸建ては〇万円上昇した。要因は建売住宅はZEHを推進しており、土地は一等地戦略を取っているから(金額的には小幅減少にとどまったということか)…下期にはZEH比率を飛躍的に高める」などと具体的な数字を交えながら話したからだ。
(本間さん、ご安心ください。わたしのパソコンは表の映りが鮮明ではなく、ほとんど読めませんでした。転載のしようがありません。ただ、上記に書いたように、本間さんが話されたことのうち数字は〇にしましたが…これは書いてよろしいのでしょうか)
当然のように、この件にメディアは反応した(本間氏の計算通りか)。本間氏は具体的な数値を示し丁寧に対応した。小生もそこまで赤裸々に〝内幕〟を話したのには驚いたのだが、それは同社だけでなく戸建て業界全体の実態を話したのに過ぎない。この件についてはこれ以上触れない。
本間氏はポータルサイトによる反響が大幅に減少していることにも言及したので(検討者の知りたいのはセカンドオピニオンだ。ポータルサイトにはこれが全然ないのが課題だと記者は思う)、〝一強〟サイトの東京都の新築戸建てを検索した。約11,000件がヒットした。東京都の令和3年の分譲住宅の着工戸数は48,610戸だ(マンション31,221戸、戸建て17,389戸)。全着工戸数に占めるこのポータルサイトの捕捉率がどれくらいか分からないが、年間着工戸数の63%が分譲中というのはあり得ない数字だと思うが…。
そして「ZEH」で検索しようと思ったら、その項目はない。仕方なく「長期優良住宅」で検索したら503件だった。
「ZEH」でヒットしないのは、分譲戸建てのZEH比率は微々たるものであるからだろう。国土交通省のデータによると、2019年度の分譲戸建ての着工戸数146,154戸のうちZEH住宅は1,901戸、わずか1.3%しかない。年間400~500戸をコンスタントに供給している三井不動産レジデンシャルはZEHに取り組み始めたばかりで、2025年度までに50%という目標を公開している。野村不動産もこれからではないか。
なので、同社がZEHを標準仕様にするのは大賛成だ。本間氏は「時代に沿って先頭を走ろうと舵を切った。今期計上する約1,600戸の分譲戸建てのうち8割はZEH対応。5年後には100%にする」と話した。先頭を走るから価値がある。後ろからついていくのは誰だってできる。依拠すべきは良質住宅を求める顧客だ。価格が多少上昇しても、ZEHの魅力を丁寧に説明できれば購入検討者はみんな買いあがる。同業の積水ハウスは分譲戸建てもZEHが標準仕様と聞いている。
首都圏マンションはどうかというと、23区内は軒並み坪300万円以上で、駅近(どれほどの価値があるか分からないが)は400万円、500万円以上だ。20坪で1億円の相場となりつつある。神奈川、埼玉、千葉だって主要都市は坪250万円以上で、300万円を突破してきている。ZEHマンションは相場より坪単価(総額ではない)は1、2割高くてもみんなよく売れている。分譲戸建てをZEH化することで分譲価格が上昇しても、マンションにしたら1坪くらいではないか。
参考までに、年間4万戸以上販売する飯田グループホールディングスの2023年度第1四半期決算を紹介すると、分譲住宅の販売棟数は9,266戸(前年同期比9.5%減)で、平均価格は3,007万円(前年同期比5.0%、143万円増)に上昇。建物原価、土地原価上昇分を販売価格に反映しきれずに、1棟当たりの売上総利益額は35万円減少した。2年前の1棟単価は2,656万円だったので、この2年間で351万円上昇している。同社グループでZEH住宅を分譲しているのは東栄住宅のみで、同社は今後すべてZEH化すると打ち出した。
三井不「東京ミッドタウン八重洲」来春3月10日開業 「都心生活者」取り込む戦略
「東京ミッドタウン八重洲」
三井不動産は9月15日、八重洲二丁目北地区市街地再開発組合の一員として事業参画しているミッドタウンブランド3施設目の「東京ミッドタウン八重洲」を2023年3月10日(金)にオープンすると発表。同日、施設が竣工したのに伴う記者会見を行い、9月17日に先行オープンする地下1階の13店舗、オフィスゾーン、地下4階のエネルギーセンターの内覧会を実施した。
東京駅八重洲駅前で進行中の隣接する「八重洲一丁目地区」(51階建て延べ床面積約225,200㎡、2025年度竣工予定)と「八重洲二丁目中地区」(43階建て延べ床面積約388,300㎡、2028年度竣工予定)の先陣を切るプロジェクトで、施設コンセプトに「ジャパン・プレゼンテーション・フィールド ~日本の夢が集う街。世界の夢に育つ街~」を掲げ、世界中・日本中から人や情報、モノ・コトが集まり、交わり、新しい価値を生み出し、世界に向けて発信していく街づくりを目指す。
施設は、ミクストユース型の多様な機能を備えているのが特徴で、セントラルタワーの地下1~2階の「バスターミナル東京八重洲」と地下1階の13店舗からなる商業施設を9月17日に先行オープンしたほか、地下4階に八重洲エネルギーセンター、地下1~3階に商業ゾーン、1~4階に中央区立城東小学校、4~5階にビジネス交流施設「イノベーションフィールド八重洲」、5階に屋上テラス、7階にワークスタイリング、24階にテナント向け会員制施設・サービス「mot.三井のオフィスfor Tomorrow」を備える。オフィスフロアは7~38階。40~45階には日本初の「ブルガリ ホテル東京」が2023年4月に開業する。セントラルスクエア2~3階には「認定こども園」が開設される。
「日本橋」「豊洲」に次ぐ第三弾となる「八重洲エネルギーセンター」も今秋から稼働する。
施設概要は、JR東京駅地下直結(八重洲地下街経由)、中央区八重洲二丁目地内の区域面積約1.5haに位置する地下4階・地上45階建て延べ床面積約約283,900㎡の「八重洲セントラルタワー」と、地下2階・地上7階建て延べ床面積約5,850㎡の「八重洲セントラルスクエア」で構成。基本設計・実施設計・監理は日本設計、実施設計・施工は竹中工務店、マスターアーキテクトはPickard Chilton。建物は2022年8月31日に竣工。
オフィスロビー
24階オフィス
「八重洲エネルギーセンター」のコージェネレーションシステム(CGS)
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他の取材もあり途中で退席したので、地下1階の商業施設は見学できなかったのだが、記者会見・内覧会で同社ビルディング本部ビルディング事業三部長・藤井卓也氏と同社商業施設本部アーバン事業部長・牛河孝之氏が「類を見ない再開発」「周辺エリアを包含する再開発」「行きたくなるオフィス」「国内最大級のZEB Ready認証」「ワーカー・ツーリスト・ファミリーなど、全ての人の好奇心をくすぐる」「東京の新名所の多彩な店舗」「SC初」などと強調したように、コロナ以後を見据えた新しい働き方の提案や、オフィスワーカーはもちろんバスタ利用者、観光客のほか「都心生活者」も大きなターゲットの一つにしているのに注目した。
記者は、コロナ前までは三菱地所の「丸の内北口ビル(丸の内オアゾ)」が勤務地で、オフィスにいるときは必死でキーワードを叩き、取材で外出するときは街路樹と建物ばかり眺めていたので、街行く人には関心を払わなかったので確証は得られないのだが、コロナ禍の三井不動産「コレド室町」「COREDO室町テラス」「MIYASHITA PARK」、三菱地所の仲通りをはじめとする「大丸有」エリアの街は、コロナ前とは様相が一変したように感じる。目立って増えたのは小さな子ども連れた女性グループだ。これだけでオフィスワーカーでないことが一目瞭然だし、着ている衣服も労働者のそれではないし、昼間から平気でワインなどを飲んでいる。
どこから湧き出てくるのだろうと考えるのだが、おそらく人口が爆発的に増えている中央区を始めとする千代田、港区、渋谷区居住のアッパーミドル・富裕層だろう。
この仮説が当たっていれば、「都心生活者」のキーワードの謎が解ける。今後、来街者の争奪戦はますます激化する。負ければ商業施設だけにとどまらず、オフィス空室率の悪化を招く。いかに来街者を増やし、滞在時間を延ばすかが大きなテーマになってくるのではないか。
藤井氏(左)と牛河氏
「東京ミッドタウン八重洲」
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オフィスロビーと24階の会員向け施設は整備途中だったが、それぞれ2層吹抜けで床材・壁材には天然石や天然目の突板が多用されている。24階はカーペット敷きだった。(通常階のオフィスフロア天井高は2800ミリとか)
顔認証による「完全タッチレスオフィス」や「デリバリーロボット」の導入は驚きはしなかったが、小生のようにタバコを吸うためにしょっちゅう席を外す人は全部カウントされ、配達料は取らないというが、ロボットに趣向まで知られるのは気持ちのいいものではない。そのうち〝カロリーの取りすぎですよ〟〝もっとましなものを食べなさい〟などと注文をつけるロボットが出現するのではないか。
今年3月に行われた施設見学会でも確認しているのだが、今回の内覧会でもセントラルタワーの外観はゆるやかなカーブを描いたシンメトリー形状であることを再確認した。この前見学した三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス グラン三番町26」もそうだった。
顔認証完全タッチレス(認証されない人はたちまち赤い警報が出る)
デリバリ―ロボット