〝美しい〟〝画期的〟隈研吾氏が連発 三菱地所「CLT晴海プロジェクト」
真庭市へ移築後のイメージパース
三菱地所は2月14日、岡山県真庭市と隈研吾建築都市設計事務所と共同で、木質系の建築資材「CLT」を活用した「CLT晴海プロジェクト」に取り組むと発表した。
同社が事業主となり、同社所有の東京都中央区晴海の土地に、隈研吾建築都市設計事務所がデザイン監修した岡山県真庭市産のCLT材を使用した施設を建築。施設は2019年秋から2020年秋までの1年間、CLTの魅力を伝えるとともに文化・情報の発信拠点として運用し、その後、部材をリユースし、岡山県真庭市の国立公園蒜山(ひるぜん)に移築する。移築後は、観光及び芸術・文化発信拠点として利用される計画。
事業推進に当たり地方創生推進交付金制度や企業版ふるさと納税制度などの活用検討も進めている。
プロジェクト発表会に臨んだ三菱地所・吉田淳一社長は、「わが国の国土の約7割を占める森林だが、国産材の利活用は進んでおらず2割くらいしかない。日本を盛り上げるために三菱地所グループでどんな形で行動を起こせるかを考えた結果の一つ。CLT活用は若手社員の提案もあり、今後の当社グループのみならずこれからの日本を担っていく若い人の気持ちがCLTに向かっているということで非常に心強く思っており、会社としてもバックアップする。プロジェクトは、我々グループが掲げている街づくりを通じて真に価値ある社会の実現に貢献する基本使命の一つとして実現した。日本の社会課題解決、地域活性化、地方創生につなげたい」などと挨拶した。
太田昇・真庭市長は、「真庭市の面積は岡山県最大。製材業もさかんで、バイオマス発電やCLTょ活用したホテル、マンションなどの事例もたくさんある。施設は千載一遇のチャンスと捉え、地域の活性化、人口増につなげ、都市と地方を結ぶモデルにしたい」と抱負を語った。
隈研吾氏は、「今回のプロジェクトは、世界一の技術と美しさを持っている日本の伝統建築から進化し続ける木組構造の延長線にあることを内外にアピールするものとなる。画期的なCLT利用の実例になる。
木は木造住宅だけというイメージだったが、CLTは木を都心の中層建築にも使えるようになる。大きく都市を変え、CLTをたくさん使うということは空気中のCO2を固定することになるので、地球温暖化防止策にもなる。晴海の地に建て、さらにそれが真庭に行くというストーリーが完結する。地方活性化のレガシーともなる。
これまでのCLTは壁材、構造壁としての利用イメージが強いがが、今回は構造梁として利用できることを見せ、しかも、その美しい素材を魅せる外装にしているので、木肌の美しさを堪能できるデザインにした。
また、解体して運びやすいCLTのメリットを生かしたジョイントシステムも開発した。CLTは都市と地方を結ぶプロジェクトには最適な材料だ。パビリオンの中は、木洩れ日が入ってくるような日本らしいさわやかで清々しい、ヒノキ材に囲まれたオーガニックな空間とした。建設地は、近くにオリンピック選手村と公園がある絶好の敷地。世界の人たちが見て〝日本のCLTはすごい〟と言っていただけるものにした。
それが、地方創生のリーダーといえる真庭市の国立公園のサイクリングロードの要になる場所に移設される。施設はアートギャラリー、カフェ、特産品販売などの多様な利用が考えられている。パビリオンは都市の中でもシンボリックなものだが、蒜山・大山の美しい山を背景にした自然ともよく調和したものとなる」と説明した。
発表会には、来賓として「CLTで地方創生を実現する議員連盟の中谷元氏、あきもと司氏、石井正弘氏と、飛び入りで逢沢一郎氏も出席した。
左から吉田氏、太田氏、隈氏
晴海の建設地は、都営大江戸線勝どき駅から徒歩数分の敷地面積約6,529㎡の同社所有地。建物は1階建てパビリオン棟と2階建て屋内展示棟の延べ床面積約1,500㎡。構造は木(CLT)造・鉄骨造の混構造。2019年5月に着工、9月竣工予定。設計・監理は三菱地所設計。デザイン監修は隈研吾建築都市設計事務所(協力江尻建築構造設計事務所)。施工は三菱地所ホーム。
CLT(Cross Laminated Timber)は、1995年頃からオーストリアを中心として発展してきた新しい構造材で、板の層を各層で互いに直交するように積層接着した大判パネル。CLTを利用するためのわが国の取り組みは2010年ごろから本格的にスタート。2016年4月、建築基準法関連告示の施行により、通常の構造計算により設計できるようになった。森林・林業の再生、国産材利活用の観点からも普及が期待されている。
三菱地所は、仙台市でわが国初のCLT床材を利用した高層賃貸マンションを建設中で、沖縄県・下地島空港の旅客ターミナル施設でも構造材にCLT材を採用する。
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演出効果を狙ってか、イメージ図や模型は隈氏が話をするまで伏せられていた。それを見た記者は〝すごい〟のため息を漏らした。
隈氏は約10分間のスピーチで「美しい」「素晴らしい」「画期的」などと10回は発言した。「美」は建築家にとっても究極のテーマなのだろう。高さが約17.5mもあるパビリオン空間にどのような木漏れ日が差し込むのか。隈氏自身が語ったのだから「画期的」な「美しい」施設になるのだろう。「美」とは何かについては、機会があったら書いてみたい。
記者は都市のど真ん中でどうして「現わし」の建築物が建つのか不思議に思ったので隈氏に質問した。隈氏は「仮設建築なので防火の要求はない。真庭市の公園も(都市計画は)無指定なのでその要件を満たさなくてもいい」と話した。
もう一つ、隈氏などは「CLTは軽くて強い」などと語った。記者は逆にCLTはかさ張るので重くて運びづらく、土地が広い大規模建築には適しているが、一般住宅への普及は難しいと思っているので、この点についても聞いた。隈氏は「強度をうまく利用すればかさばらない。輸送費もリーズナブルなものに抑えられている」と話した。
隈氏はまたジョイントにもたくさんチャレンジしていると強調した。
左から太田市長、吉田社長、隈氏(大手町パークビル1階の実物を背景に)
夜間イメージ図
パビリオン棟内イメージ図
実物大パーツ(高さは約3.5m、重さは全体で約800キロ、パネルは約300キロ。五層積み上げる)
施工を担当する三菱所ホームソリューション事業本部ソリューション第一事業部長・鈴木正人氏(昨夜、パネルの荷下ろしからビル内までの運搬を8人がかりで行ったとか。自分も作業に加わったのかは話さなかった。RBA野球最弱チームの元エース・主砲・監督)
パビリオン模型(天井はガラス、構造はCLTと鉄骨との混構造)
移築予定地の真庭市の「国立公園蒜山」イメージ
三井不 京都・二条城に近接 三井家ゆかりの地にホテル 内外の建築家・デザイナー起用
エントランス
三井不動産は2月7日、京都・二条城の東側に隣接する250年以上にわたり三井総領家(北家)の居宅があり、三井グループゆかりの地で、フラッグシップとなるホテル「「(仮称)京都二条ホテルプロジェクト」の概要を発表した。
計画地は、地下鉄東西線二条城前駅から徒歩3分、京都市中京区油小路通二条下る二条油小路町に位置する敷地面積約7,451㎡。施設は地下1階、地上4階建て延床面積約18,987㎡。客室数161室。開業予定は2020 年夏。設計・施工は清水建設。
現地は、二条城の東側・堀川通りに面し、17世紀末頃より昭和中頃まで三井総領家(北家)の居宅があったところ。2015年に同社が取得し、2018年3月に工事着手した。
開発に当たっては、三井総領家時代に存在した回遊式庭園のコンセプトを踏襲し、現在のデザインと技術を用いて庭園と水盤からなる約1,300㎡超の空間を新たに設ける。
建築・デザインには、マスターデザインアドバイザーに栗生総合計画事務所・栗生明氏を、ランドスケープデザインにプレイスメディア・宮城俊作氏、客室・ロビーのインテリアデザイ ンにAFSO のアンドレ・フー氏、SPA・レストランのインテリアデザインにSTRICKLAND・赤尾洋平氏をそれぞれ起用。国内外のトッププレーヤーが共演する。
客室は平均50㎡超で、約210㎡のプレジデンシャル・スイートルームも設置する。
ホテルの運営は三井不動産リゾートマネジメントが行い、総支配人にはザ・リッツ・カールトン東京営業部長、フォーシーズンズホテル東京 丸の内 セールス&マーケティング部長、マンダリンオリエンタル東京副総支配人を歴任した楠井学氏が就任する。
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ニュース・リリースを読んで驚いた。そんな計画があることなど全然知らなかった。起用する建築家やデザイナーの経歴からして、最高峰のホテルにするのだろう。気迫が伝わってきた。
同社はこれまで、「マンダリンオリエ ンタル東京」、「ザ・リッツ・カールトン東京」を誘致し、三重県志摩市の「NEMU RESORT」に「AMANEMU(アマネム)」を開業。今後も「ハレクラニ沖縄」「フォーシーズンズ・ホテルズ・アンド・リゾーツ」、「ブルガリ ホテルズ&リゾーツ」を開業する。
庭園と水盤
〝生きた実験場〟〝やるしかない〟 多摩NT再生 第6回シンポ 藤村氏もエール
「多摩ニュータウン再生プロジェクト第6回シンポジウム」(パルテノン多摩で)
多摩市は2月4日、多摩ニュータウン再生の取り組みについて情報共有、意見交換する「多摩ニュータウン再生プロジェクト第6回シンポジウム」を開催した。定員250名の会場はほぼ満席となった。
今回は、東京藝術大学准教授で、鳩山ニュータウンなど県内の団地再生に取り組んでいる建築家・藤村龍至氏(42)の基調講演が〝目玉〟で、「多摩市ニュータウン再生推進会議」の学識委員、市民委員、多摩市長による活発な座談会が行われた。
西浦氏(左)と楊氏
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シンポジウムは三部構成。第一部は、多摩市ニュータウン再生推進会議職務代理者の西浦定継氏(明星大学理工学部総合理工学科教授)から「多摩市ニュータウン再生推進会議からの報告」があり、同市民委員・楊光耀氏が「永山駅周辺再構築ビジョンについて」と題する基調報告を行った。
第二部では、藤村氏が「市民目線での魅力づくり・ブランディングについて」基調講演を行った。
埼玉県出身の藤村氏は、埼玉県の鳩山、椿峰、白岡各ニュータウンなどでの具体的な団地再生の取り組みについて紹介し、公的補助がなくてもマルシェなどの活動を通じて地域や行政を巻き込むことは可能と語った。
藤村氏
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藤村氏が鳩山ニュータウンの再生に取り組んでいることは承知していた。しかし、あの鳩山を再生することなどは絶望的だと思っていた。学者先生の道楽、趣味の域を出ないと高をくくっていた。
ところが、まったく逆だった。自らが先頭に立って青息吐息の「鳩山」や「椿峰」に若者を呼び込み、2,000人、3,000人規模のマルシェを開き、自治体を動かす活動を実践しているではないか。推進会議委員長・上野淳氏(首都大学東京学長)は「極めて刺激的」「動く建築家」と絶賛した。
記者も感動で胸が震えた。なぜそうなったか、別掲の記事(鳩山ニュータウンに吹いた風に想う)を読んでいただければわかっていただけるはずだ。西武ライオンズファンの記者は「椿峰」も度々取材しており、戸建て購入を真剣に考えたほど素晴らしい団地だった。何と藤村氏が「椿峰」出身と聞いて、なんだか他人には思えなくなってきた。バブルで消えた日本新都市開発は「中堅所得層に良質な住宅を」という哲学があった。
徒手空拳でそこまで入れ込まなくてもいいのに、本業が疎かになっていないのかと心配もしたので、ご本人に聞いた。「大丈夫です」とのことだったし、推進会議委員の松本真澄氏(首都大学東京助教)が「本業のほうが有名なんです」と付け加えてくれたので安堵したのだが…。
「鳩山」には、一低層の壁をぶち壊し念願の飲食店もオープンしたという。必ず取材に行く。桜の春まで待つか、それとも今が旬か。
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第三部では、コーディネーターを務めた上野氏の呼びかけに応じで、パネリストがそれぞれ多摩ニュータウンの魅力などについて次のように語った。以下、発言順。
小野澤裕子氏(推進会議市民委員) 落合で育ち、地元で建築事務所を設けている。多摩は環境もいいし空気がきれい。子育てもしやすい。坂が多いが、足腰が鍛えられる。コミュニティ形成ができる街づくりに期待する。〝駅近〟マンションもいいが、遠くても住みやすく買いやすい住宅にカスタマイズすることは可能
加藤岳洋氏(推進会議市民委員) 永山で活動している。10年前に引っ越してきた。ニュータウンは今の時代に合わなくなった部分もあるが、開発当初は英知を結集したはず。ポジティブな発想に転換し、多摩の魅力を次世代につなげていきたい。情報発信力が弱いのは課題
楊光耀氏(東大で建築を研究中) 多摩には大学が多い。若者も多い。これは大きな魅力。企業誘致の拠点をつくれば若者が集まってくる。尾根街道はイノヴェイティブな街づくりの可能性を秘めている
阿部市長 多摩には元気な年寄りが多い。ニュータウンは歩車分離なので安全な街でもある。乗降客は3駅で18万人にのぼり、府中、調布に引けを取らない。昼間人口も多い。京王も小田急もアクセスがぐんとよくなった。街のポテンシャルを挙げる取り組みを強化していく
松本真澄氏 街づくりの骨格がしっかりしているのが何よりの魅力。時代にあわなくなってきたもの、例えば住宅転用などを容易にするアイデアが欠け、融通が利かないハードルが課題。高齢者の居場所は大事だが、さらにその上の85、90歳のお年寄りをどうするか、うまく起動する仕組み必要。しかし、とにかくやるしかない。市民が動きやすい行政の支援に期待
藤村龍至氏 ニュータウンは戦後の街づくりの生きた教科書。もっと情報を発信すべき。ニュータウンを見学して、個人的には落合・鶴巻が好きだ。プラスワン住宅など当時の実験住宅は今の時代にむしろあっている。民間を行政がサポートするという発想の転換も必要
これらについて、上野氏は緑のネットワークの価値を強調し、尾根街道の開発の可能性や留学生向けのシェアハウス、企業誘致などに期待したいと話した。
左から小野澤氏、加藤氏、松本氏
上野氏
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パネリストの方々が異口同音に話した「情報発信力が弱い」ことについて。
これはその通りだと思う。不動産メディアの端くれであり、多摩市民でもある記者は忸怩たるものがある。マスメディアもそうだろう。
少しだけ言い訳をさせていただく。小生は〝オールドタウン〟などと一度も書いたことがない。むしろ逆に多摩市や多摩ニュータウンの魅力をことあるごとに伝えてきた。この40年の記者生活の中で〝頑張れ〟という叱咤激励の意味も込めて数十回は書いてきたはずだ。このシンポジウムも所用で参加できなかった1度を除き取材し、記事にもしてきた。
では、どうすればいいか。阿部市長は市が運営するweb「丘のまち」を紹介したが、これは形式張っていて、最高の中身のものもあるが、一般の方が気軽にアクセス・投稿できるようにはなっていない。
このシンポだって、開催の告知はしているが、肝心のシンポで誰が何を話したかを市はまったく発信していない(どこかにあるのか)。これは完全にアウトだ。情報を共有しようという姿勢が決定的に欠けている。
こうなったらついでだ。阿部市長、「健幸都市」も結構だが、伊崎流山市長の「母になるなら流山」「父になるなら流山」には歯が立たない。それを真似た「住めば、北区」「住むなら埼玉!」もたいしたことないが、そこそこ効果があるようだ。
どうせやるなら「死ぬまで多摩市」はどうか、「美しい人は多摩市」もいいかも。
市内にある6つの大学についても。エリアに4つある足立区・北千住駅近くのマンションは坪300万円台の後半だ。6つもある市内は駅から10分ちょっとの坪200万円が四苦八苦している。大学ももう少しはエリアのポテンシャルを上げるために汗をかいてほしい。
桜美林大学については苦言を呈せざるを得ない。旧「ウェルサンピア多摩」跡地の多摩アカデミーヒルズは、市民もよく利用していた宿泊、浴場、プールを閉鎖した。あろうことか、プール跡地と旧落合中学校のグラウンドと図書館の〝不等価交換〟を計画していた。市民などの反対で計画は立ち消えになったが、建学の精神はどこへ行ったのか。
恵泉女学園は立派。多摩センター駅前の美しい景観形成に多大な貢献をされている。キャンパスも学生も教員も美しい。松村先生(女ではない)頑張れ!
この記事は、クレジットさえつけてくれればいかように利用されても結構です。むしろどんどん攪乱じゃなくて拡散していただきたい。
あの熱気どこに 多摩市 第5回 多摩NT再生プロジェクトシンポ(2018/2/5)
人・街・未来を語り合う 多摩市 第2回「多摩NT再生シンポジウム」(2016/2/5)
多摩ニュータウンの課題を解決し、魅力をどう発信するか(2014/2/13)
「多摩NTにおける人的不良在庫」 吉川徹・首都大教授が軽妙発言(2016/6/6)
コスモスイニシア 不動産小口化商品「セレサージュ表参道」入居決定 販売開始
「セレサージュ表参道」
コスモスイニシアの共同出資型の投資用不動産「セレサージュ表参道」が1月末に竣工し、販売を開始した。2017年に販売した「セレサージュ代官山」に次ぐ第2弾で、店舗6区画は全て入居契約・申し込み済み。3月から契約を開始する。
物件は、東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線表参道駅から徒歩6分、渋谷区神宮前三丁目に位置する地下1階地上4階建て、延床面積約995.33㎡。全6区画。建物は1月に竣工済み。
募集総額は26.5億円、募集口数は530口、申込単位は1口500万円、最低申込金額は二口1,000万円。予定利回りは4.29%、運用期間は15年間。
現地は、都営青山北町アパートの建て替えとともに、民間活力を生かしながら青山通り沿道との街づくりを段階的に行い、賑わい・文化・緑をつなぐ最先端の文化・両行の発信拠点を目指す約4ヘクタールの「北青山三丁目地区まちづくりプロジェクト」に近接。
契約・入居が決まっているのは複数の美容室・美容院のほかゴルフクリニックなど。
G.G.佐藤さんの実父 トラバース社長・佐藤克彦氏がポラス分譲地で絵画展
「鯛」
2008年の北京オリンピック野球日本代表に選ばれながら、星野仙一監督から一度も経験がない左翼を守らされたことによって準決勝戦と3位決定戦で3失策を犯し、その後の野球人生を狂わされた元西武ライオンズの主砲・G.G.佐藤さん(本名:佐藤隆彦氏)のお父さんで、地盤改良会社トラバースの社長・佐藤克彦氏(74)が、玄人はだしの絵画展をポラスグループ中央住宅の分譲地「ザ・マインドスクェア葛西」のモデルハウスで行っている。
「ザ・マインドスクェア葛西」は、東西線葛西駅から徒歩14分の全5戸。土地面積は100.50~103.13㎡、建物面積は91.23~101.93㎡、価格(4戸)は6,490万~7,690万円。
絵画展の企画を行った中央住宅東京事業所長・南部好克氏は、「事業所を開設して10余年が経過し、1,000戸を超える実績を残して来れた。わたしの父が不動産業だった縁で、佐藤さんは小さい頃から存じあげている。佐藤さんの会社の近くの喫茶店で話し合っていたとき、佐藤さんが描かれた絵がたくさんあったので、それから企画が始まった。この種のイベントはこれまでやったことがないが、少しでも地域に貢献できたらうれしい」と経緯を語った。
佐藤氏に話を聞いた。( )内は記者。
佐藤氏(左から2人目)と同社関係者
「あさやけ」
遭難時の「危機一髪」
◇ ◆ ◇
(絵を描くきっかけは)「平成に入ってから。危機一髪の物語があるんだよ。友人に誘われて東京湾へ好きな釣りに行ったんだよ(夜釣りですか? )いや、昼間(意味が通じなかったよう)。マリンスタジアムの沖だった。海がひどく荒れていてね、小さな和船だったもんだからね、2度ほど大波に襲われて、もう死ぬかと思った。その体験・光景を残そうと絵に描いた。NHKがその絵があることを保安庁から聞き出し、取材に来て、テレビにも放映された。まあ、きっかけはこんなもんだ」
(G.G.佐藤さんはまだ西武に入っていなかった? )「そう、まだ入団前の法政大の学生。あのとき父が死んでいたら野球の選手にならなかったかも」(G.G.佐藤)
「当時は釣りばっかりやっていたが、本業では住宅づくりを始めたんだ。船橋のだれも手掛けない、土地が安い傾斜地ばかりを仕入れてね。東大の先生が驚くほどの軸組パネル工法をあみだし、特許も取得して売り出した。20棟くらい建てたか。あまりにも素晴らしいもんだから、周りの建売業者はみんな貧相な自分たちの住宅をシートで覆ったほどだった。取引先だった旭化成ホームズの部長さんも視察に来てね。『斜面地はうちはやらないから、バッティングはしないからいいか』と不問にしてくれた。ただ、あれは時代を先取りしすぎちゃった」
(しかし、いまは凄い売上ですね)「180億円くらいか。目標は200億円」
(話は絵に戻りますが、これまでどれくらい描かれているんですか、売らないのですか)「年間3作品くらいか。トータルで50~60作品。この前、会社を辞めたかわいい子にプレゼントしたこともあるが、売らないね。金がないわけじゃないからね。展覧会? 応募なんかしない」(記者も絵を描くからこの気持ちはよくわかる。魂を込める自分の分身を金で売りたくはないのだろう)
ここで、南部氏が「絵画展は1月26日に始めたばっかりですが、先日の土日には18組くらいお客さんがいらっしゃるほどの盛況でした。購入されたインド人のお金持ちを含めて2人の方が『絵を譲ってほしい』と希望されていますが…」と話した。「お金に困っているわけじゃないからね…」(社長、社長の絵にG.G.佐藤さんのサインを入れたらとんでもない値が付きますが)「……」
(いったい、いつ絵を描かれるんですか)「朝8時から1時間くらい。9時から17時まで仕事。それからまた1時間くらい描いて。夜の社員との会議に出かける」(飲み会? )「それもあるが、日替わりで社員と歓談するんだよ。税務署にも経費として落とせるよう認めさせた。飲むとね(どれくらい飲まれるんですか)ビールをジョッキで3杯、焼酎割を2~3杯。酒を飲むとね、頭が回るんだよ」(社長、頭が回るというのはちょっと税務署に具合が悪い。だだの飲み会じゃないですか)「そうそう。酒を飲むとね、血の巡りがよくなっていいアイデアも浮かぶんだよ。そして終わるのが9時半ころ。土曜、日曜はかみさんと一緒」
(それにしても、ずいぶんお元気そうですね)「入れ歯は一本もないよ。メガネ? これはガラス。視力は1.0だからね。糖尿? 全然ない」
(G.G.佐藤さん、お父さんのように絵を描かれたら? )「目覚めたら…」
同社広報マンの「一番のお気に入りの作品は? 」との問いに「(熱海の40号くらいの絵について)ほら、空に全くムラがないだろ。小さな建物もきちんと描かれているだろ。これはね、独学で会得した技術があるんだ。しかし、人物、とくにこの人(自分のこと)が描けないんだよね…」
佐藤父子
◇ ◆ ◇
佐藤氏は1944年、愛知県生まれ。法政大学卒。1976年、東京西神田に測量会社を起業。1989年、トラバースに社名変更。趣味は絵画のほか囲碁(3段)、将棋(2段)、海釣り、ウクレレ演奏。
絵を鑑賞される来場者(左上の「あさやけ」が最高に素晴らしい)
うまく撮れていないがこれも素晴らしい
「ザ・マインドスクェア葛西」
全て疑い、見よ 明海大不動産学部「不動産の不思議 学生たちの視点と発見」を読む
毎週火曜・水曜日はモデルルームが休みなので暇に飽かせて「住宅新報」の連載「明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見」を読んだ。率直な感想を思いのままに書き連ねる。きつい表現もあるかもしれないが、いつも通りわが業界紙に頑張ってほしいからで、他意はまったくない。
この連載は、2013年9月24日発行号から始まったもので、1月22日付最新号で第267回だ。5年以上もよく継続していると感心するのだが、記者はこれまでほとんど読んだことがない。読者である不動産のプロもやや物足りないと感じるのではないか。なぜか。一言で言えば、それは虚心坦懐にものを見る姿勢、〝なぜ〟という問いかけにやや欠けるからではないか。世間の常識を疑ってかかるのが学問の初歩だと思うがいかがか。
◇ ◆ ◇
最初に俎上に載せるのが最新号の4年生・Tくんの「邸宅の門」だ。
Tくんは、「街を歩いていると、広い敷地に立つ(文のまま)格式のある建築物が目についた。もっとも、建築物はくたびれ、門は空き家のように疲弊しているが、人が住んでいる。豊かさを物語る格式の高さと、手入れが行き届かない現状のアンバランスが、ひときわ目を引く」と書き出している。
その門とは「薬医門」のことで、以下、14行にわたって延々と門の説明が続き、さらに伝統的な建築物がなくなってきたことから始まり、技術革新と低コストを背景に最近の敷地の狭い住宅が主流になり、職人の減少などにより伝統的家屋の修復が難しくなってきたことまで綴り、その保全に取り組む必要があると説く。
このTくんの主張に対し、教員は、「持ち家の価値保全が重要課題の今、住宅への追加投資が『割に合わない』社会を改める必要がある」と締めくくる。
ごもっともだ。しかし、へそ曲がりで馬鹿を自任する記者はこのような羽織袴と白無垢の欺瞞に満ちた結婚式のような正論はちっとも面白くない。
もっと具体的に書くべきだ。「くたびれた」は、例えば「老醜をさらしながらそれでも美しい花を咲かす樹齢数百年の石割桜」か、あるいは(書けば単位を貰えないかもしれないが)「着たきりスズメの我が教官」くらいまで踏み込んで、読者をひきつけるべきだ。
「疲弊」も「くたびれている」のとほぼ同義語。これも「わが両親の夫婦関係と懐具合と同じくらい疲弊している」と書けば誰も文句はつけない。
「空き家のようだが、人が住む」と書くのは住人に対して失礼。そのような状態になった理由も千差万別のはずだ。きちんと住人に理由を聞くべきだ。その答えにヒントがある。予想するに「先立つものがない」からだろうが、その問題を解決するためにはどうすればいいか、そこでTくんの主張が生きてくる。そんな広い敷地なら売り払ったほうが高値で売れるとか、歴史的建造物に指定すべきだとか、公的資金を投入して保全すべきだ…などと。
ついでに言えば、人も建築物も年月を経れば「くたびれる」し「疲弊」もする。その老いを覆い隠すサイディングやケミカル建材が当たり前のように使われるほうがおかしいのではないか。経済効率を最優先するいまの価値観を疑ってみてはどうか。
◇ ◆ ◇
第254回では、恵比寿ガーデンプレイスのマンションの外観が美しいと2年生Kくんが書いていた。記者もそう思う。あのカルロス・ゴーンさんが住んでいたマンションとは対照的だ。
しかし、このマンションは住戸内に柱や梁型が結構出ているのが難点だ。外観だけでは善し悪しが測れないということだ。人と同じだ。よく観察する以外に本質・本性を見抜く手だてはない。
◇ ◆ ◇
最高に面白いのもある。第237回の3年生・Sくんの「閉ざされた公園」だ。「小さい頃、『子供は外で遊べ』とよく言われた…公園の広場は子供が元気に走り回り、鬼ごっこやサッカーをする楽園のはずだったが、そこは閉鎖されていた」と書き出し、「閉ざされた広場は、私権を強く主張する住民や真の公共の福祉を考えない行政ほかが招いた結果だと思う」と言い切る。
記者も10年前くらいだったか、ある主婦から「子どもを外で遊ばせるようなことを最近のお母さんはしない。危険だから」と聞いて絶句したことがある。
どこの公園もそうだ。大書きされた入り口の看板の禁止事項には、キャッチボール、サッカー、ゲートボール、ゴルフ、大声、ごみ捨て、花火、犬の散歩などのほかに、喫煙は許されているのに酒気(飲むなとは書いていない)がダメというものもある。いったい酒気を帯びているかどうかを誰が確認するのか。利用時間は平日の9時から午後4時まで、土・日曜日は閉園するものまである。
Sくんが指摘するように、檻のようにフェンスで囲まれているものも少なくない。主客が転倒している。大事なのは公園か人間か。獣害に悩む農村と同じ光景だ。檻の中に閉じ込められているのは人間のように思えてくる。
Sくんは都市公園法を読んだことはあるだろうが、禁止事項には「何人も、みだりに…」(第11条)とある。みだりは「妄り」「濫り」(「淫ら」は記者、「みだら英泉」は皆川博子さんの小説)とも書くが、嫌な言葉ではないか。一種の法律用語だ。お上は「公園」すらわれわれを支配する道具にしようと考えていることが分かる。管理責任というものだ。
しかし、Sくん、東京都は公園の中にマンションを建てさせ、その代わりに公園の維持管理をマンション管理組合に負担させるという画期的な〝民設民営〟制度を活用したことがある。残念ながら1件で終わってしまったが、わが多摩市は中央公園に図書館を建設することを決めた。保育園などの設置例も出て来た。公園の用途も時代とともに変わっていい。
もう子どもが公園で遊べないのなら飲食、遊戯、宿泊などが行えるようにしたほうがいいというのは言い過ぎか。
◇ ◆ ◇
もう一つ、公園ついでだ。これは不動産の不思議とは関係ないし、小生が言うのでもない。あのロダンが「講演」を頼まれて言った言葉だ。
「それをお約束する事は出来ません…『教授』というものはもう意味のない言葉です。値打ちのない言葉です。何にも知らない人たち、自分の道を持っていない人たちがみな教授にかつぎ上げられたがるのです。それに、私(ロダン)に出来る最上の講義はそこにあります。私の製作を見ればいいのです!
聡明な若い人たちはそれを見て何かの助けになるだけのものを得るでしょう。見る事です!そして仕事することです!」(岩波文庫「ロダンの言葉抄」高村光太郎訳)
冒頭にも書いた。とにかく全てを疑い、たくさん見ることを皆さんに勧めたい。
市場できちんと評価される制度に 国土交通省 長期優良住宅制度 検討会
国土交通省は1月29日、第3回「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会」を開催。マンション計画修繕施工協会と住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会がプレゼンを行った。
検討会は、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が平成21年6月に施行されてから今年6月で10年が経過することから、制度に対する評価や課題を整理し、制度の更なる普及促進に向けた取り組みや方向性を検討するもの。
同制度が施行されてから平成29年度末の認定累計実績は915,194戸(一戸建て894,943戸、共同住宅等20,251戸)で、平成29年度で見ると、住宅着工に占める割合は一戸建てが24.6%、共同住宅が0.3%となっている。
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検討会を傍聴するのは今回が初めてだ。マンション計画修繕施工協会と住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会がプレゼンをしっかり聞いた。
申し訳ないが、記者はこの2団体を全く知らなかった。検討会の松村秀一座長(東大大学院教授)も「ずいぶん長い」と仰ったように、後者は16文字だ。全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)の14文字より多い。何とかならないか。国土交通省の「土地・建設産業局」もそうだが、「・(なかぐろ)」が付いているのはどうか。最近は文字を詰めるのが流行りのようで「ワーママ」もあるようだから「住活協議会」はどうか。「土地・建設産業局」もみんな「土建局」と呼んでいる(記者は失礼だから絶対そのようには呼ばない)。
馬鹿なことを書いたが、両団体のプレゼンを聞いて残念だったのは、同制度の認知度が低く、住宅の品質が高いにもかかわらず(中古)市場で適正に評価されていないことが報告されたことだ。
松村座長も「法律の目的の本丸はストックだったはずだ」と述べたように、この問題は解消されなければならないと思う。
現場はどうなっているか、レインズ情報を調べた。レインズ情報は不動産会社が独占的に利用できるもので、一般の人はもちろんメディアもどのような情報が盛り込まれているかを知ることはほとんど不可だ(頼めば見せてくれるかもしれない)。
分かったことは、まず「長期優良住宅マンション」で検索しても物件はヒットしないであろうということだ。長期優良の認定を受けた物件名で検索すれば売買履歴情報を取り出せるが、そんなデータを不動産流通会社は公表していないはずだ。
戸建ては大手ハウスメーカーで構成されている優良ストック推進協議会が独自の査定方法を用いた「スムストック認定」を行っており、中古市場でも高い評価を得ているデータを公開している。しかし、これも「スムストック」=長期優良というわけではない。
問題はこのほかにもたくさんある。第一は、適正に評価されていないこととも密接に関係するのだが、消費者に分かりづらいという点だ。かつて記事にもしたが、長期優良住宅認定を受けたマンションなのに環境性能評価の「CASBEE」で〝並〟の評価しかされない事例があった。特上の料理を食べたはずなのに、別の店では並だったというのでは消費者はたまらない。モノサシが異なると片づけていい問題か。
同制度では、「良好な居住水準を確保するために必要な規模」として、一戸建ては75㎡以上(一人居住は55㎡)、共同住宅は55㎡以上(同40㎡)の面積要件を定めているが、「良好な居住水準」=「居住面積」と決めつけているところに問題がある。どんな法律にもあるように「その他優れていると思われるもの」などと逃げ道を作っておくべきだった。
しかし、この面積要件を変更するのは難しいのではないか。これに手を加えれば他の法律や税制全てを変えなければならない。撤廃が一番いい。そもそも国が優良であるとか不良であるとか(そう言っていないが)を定めるべきでないというのが記者の持論だ。大きなお世話だ。
記者は面積よりも天井高のほうが気になる。「長期優良」と謳うのであれば最低でも居室面積は2500ミリ以上にし、高さ規制、容積規制を緩和したらどうか。
もうこれ以上書かないが、検討会委員の方も話したように〝見える化〟を進め、何よりも消費者に分かりやすい制度に改めてほしい。
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どうでもいいことだが、何十年振りで同省の地下1階にある食堂を利用した。よく知られた牛丼屋もあったが、いろいろトッピングできるうどん屋でかき揚げを付けて「なんでも合う」というわかめうどんの小を頼んだら450円だった(伊勢うどんより安い)。昔タバコが吸えた隣の喫茶店は禁煙になっていたので利用しなかった。
それにしても、国のシンクタンクであるはずの国交省職員はこれではあまりにもかわいそうだ。もっとましな環境を整えられないか。全館禁煙も検討されているとか。喫煙は人権だ。
小田急電鉄・小田急不 小田急多摩線栗平と黒川駅前にコミュニティ拠点
「CAFÉ&SPACE L.D.K.」完成予想図
小田急電鉄と小田急不動産は1月25日、小田急多摩線栗平と黒川駅前にそれぞれ新しいライフスタイルを提案する拠点をオープンすると発表した。
栗平駅前の「CAFÉ&SPACE L.D.K.」は、幅広い世代が集まり、笑顔で団欒する地域のLDK(リビング・ダイニング・キッチン)のように、地域住民同士、地域住民と小田急グループが繋がる場所になって欲しいという想いを込めた。コミュニティカフェ、キッチン付きを含む3部屋からなるレンタルスペース、仕事や趣味などに集中して取り組めるワークスペースなどからなる。開業は3月中旬。
黒川駅前の「ネスティングパーク黒川」は、「巣(Nest)」と「Nesting(つどい)」を合わせ、産まれ、巣ごもり、巣立っていく「Nesting Park」と名付けた。小田急グループの神奈川県内で初めての取り組みとして、シェアオフィス「キャビン」を核とした複合施設を新設する。施設の企画・設計監理はリノベーション賃貸住宅「ホシノタニ団地」などで実績があるブルースタジオが担当する。開業は5月。
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結構なことだ。ライバルの京王電鉄は昨年10月、駅前の京王プラザホテル多摩内にサテライトオフィス「KEIO BIZ PLAZA」をオープンした。会員制でICカードを使って入退室でき、月単位や時間単位で利用できるようになっている。東京都の「サテライトオフィス設置等補助事業」の第1回採択事業でもある。同社は駅前の保育所開設も積極化している。
双方が競い合いこの種の施設をどんどん設置して、地域のポテンシャルを引き上げてくれることに期待したい。マンションの分譲単坪単価は、足立区の北千住で300万円台の後半に迫り、埼玉県の所沢、神奈川県の大船は350万円だ。本厚木だって260万円で人気を呼んでいる。
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記者は小田急線に乗って通勤したことは一度もないが、いつの間にか速くなっている。ネットで調べたら小田急多摩センター-新宿は最速33分で370円。一方の京王線は京王多摩センター-新宿は39分で319円。本数は京王線のほうが多いから、小田急に追いつかれることはないと思うが…。
「ネスティングパーク黒川」完成予想図
「Gywood®(ギュット)」詰まった中身 すてきナイス 恒例の新春講演会に1,500名
平成31年 新春経済講演会(グランドプリンスホテル新高輪で)
すてきナイスグループは1月25日、恒例の平成31年 新春経済講演会を行った。三部構成で、第一部の日本総合研究所会長・寺島実郎氏による講演から第二部の同社会長兼CEO・平田恒一郎氏、同社副社長・日暮清氏、同社社長・木暮博雄氏、ナイス社長・杉田理之氏によるグループの近況・方針発表、第三部の日刊木材新聞社社長・岡田直次氏をモデレーターとする業界8社社長によるパネルディスカッションまで、イベントは約4時間に及んだ。
「Gywood®(ギュット)」詰まった中身に約1,500名の参加者は、寺島氏が話した日本の〝針路〟を見失ったかのように船を漕く人も一部見られたが、最後は新春賀詞交歓会に酔いしれた。
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他の取材もあり、駆け付けたときは平田会長が「今年のキーワードは『素敵ワクワク』。新しい時代をワクワクして迎え、全社一丸となって全力で邁進する」と挨拶し終えたときだった。
続いて登壇した日暮氏はグループの事業はSDGsの目指す方向と一致すると強調、さらに木暮氏はそれを補強するかのように最近の具体的事例を紹介、最後は杉田氏が同社も開発に関わった「Gywood®(ギュット)」で締めくくった。
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第二部あたりからコクリコクリとする人も散見されたが、第三部のパネルディスカッションは中身がぎゅっと詰まった素晴らしい内容だった。
詳細は同社が会報紙誌などで掲載するはずだからそちらを読んでいただきたい。ここでは中身をぎゅっと絞ったエッセンスだけを紹介する。
パネリスト8氏は「平成30年」を次のように色紙1枚にまとめ振り返った。(発言順)
「謝」 大建工業社長・億田正則氏 昨年はシステム障害などを起こし皆様にご迷惑をおかけした。まず陳「謝」します。この30年間は選択と集中を進め、撤退したものもあるが、素材事業は平成の初めは11%だったのを35%まで伸ばした。輸出も大幅に増やした。新陳代謝の「謝」でした。事業伸長はお客さまや皆さんのお陰、感「謝」申し上げる。
「後塵」 パナソニックエコソリューションズ社長・北村亮氏 先進国であったわが国は発展国に追い上げられ追い越された30年。平成元年のとき、世界トプ企業50社のうちわが国企業は32社だったが、今は18位のトヨタのみ。後塵を拝した。当社もデジタルまではついていけたが、ネットに後れを取った。反省を込めて新しい時代を迎えないといけない。
「再生」 セイホク社長・井上篤博氏 平成元年からの3年間は、米ソの冷戦終結、天安門事件、東西ドイツの統一、湾岸戦争があり歴史の大きな転換期だった。それは元に戻らないという意味の創造的破壊でもあった。わが国は阪神淡路や新潟、東日本大震災により素地や故郷が破壊された。「再生」はコピーではなく新しいものを生み出さないといけない。
「復興」 SMB建材社長・角柄明彦氏 わが国の国土は地球の0.28%しかないのに巨大地震の2割を占める地震国。数々の大地震が強く記憶に残っている。その都度、建基法改正、耐震化、耐震リフォームなど防災の取り組みも力強く行われた。今後は都市の分散が論議されるだろうし、再生可能エネルギーの活用など防災に強い都市計画を強力に推し進める必要がある。
「次世代への布石」 吉野石膏社長・須藤永作氏 平成は昭和から引き継いだ課題全部を整えた時代ではなかったか。国も企業も家庭もどう行動するか、その布石を敷いたのが平成ではなかったか。大きな地震や台風などの被害を受けた。その経験を将来にどう生かすか。石こうボードもその布石を生かし、水に強い、音に強い商品開発を行わなければならない。
「エクセラード」 ニチハ社長・山中龍夫氏 「エクセラード」は平成2年に発売した商品だが、現在では売り上げの6割を占めるほど貢献している。木造の外壁は平成の当初はモルタルが47.5%だった。今は逆転し、モルタルは7%に減少し、当時32%だったサイディングは78%に増加している。時代の変化をチャンスと捉えたい。
「変革」 TOTO社長・喜田村円氏 ウインドウズが発売されたのは1985年。いけいけどんどんの昭和はバブルで崩壊し、それからアイフォンが普及し、働き方や家族、コミュニティのあり方も変わった。平成は給与が下がったという論議もあるが、観光産業が伸びている。日本は安全でおもてなしの国であることを示した。「変革」には平成は平和だったという意味も込めた。
「加速」 LIXIL Water Technology Japan CEO・大西博之氏 入社して社会人になった人生そのものの30年間だった。グローバル化、イノベーションが進み、当社の売上げの半分が海外事業となった。とくにスピードが速くなった。トレンドに乗り「加速」することが大事だが、その基となる力がないと流れに乗れない。その力をどうするかだ。
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パネルディスカッションはその後、予定されている消費増税の影響、対応などに話が及んだ。企業トップとしては当然だろうが、駆け込みに期待し反動減におびえるような声はほとんど全くと言っていいほど聞かれなかった。発言順に各氏の声を紹介する。
LIXIL・大西氏 崖下に落ちないようジャンプしたい。国策をジャンプ台にして中長期的な視点でリフォーム事業を仕込んでいく
TOTO・喜田村氏 心配していない。もっと豊かな生活をしたい願いは不変。それをどう後押しするか。ホテルの改装・改修が伸びるのではないか
ニチハ・山中氏 アメリカも中国も金融引き締めに動きそうだし、イギリスのEU離脱も深刻な影響を与える。日本国内より海外からの直撃に注視する
吉野石膏・須藤氏 リーマンの影響を受けたが、考えてもしょうがない…というわけではないが、足元をしっかり見つめ、己の信念を貫く
SMB建材・角柄氏 アメリカも中国も〝自分ファースト〟だが、〝柔よく剛を制す〟だ。50年前と(経済の)力が違う。オリンピック後も景気は持続する
セイホク・井上氏 消費増税やその他で約8兆円の可処分所得が吸い上げられる不安はあるが、いい国づくりに寄与する素材メーカーとして需要を取り込む
パナソニックエコ・北村氏 住宅市場が縮小していくのは自明。しかし、オリパラ、非住宅、万博、スポット地方も開発が進む。明るい材料を取り込む
大建工業・億田氏 むしろ増税後が楽しみ。私は昭和25年生まれだが、これからは若年層と高齢者の人口構成が逆になる。働き甲斐のある社会にしたい
室温変化が健康に与える影響で新たな知見 日本サステナブル建築協会が報告会 2/1
国土交通省は1月24日、住宅内の室温変化が健康に与える影響について調査した結果をまとめ中間報告(第3回)として発表した。
調査は、日本サステナブル建築協会のスマートウェルネス住宅等推進調査委員会(幹事:伊香賀俊治慶大教授)が平成26~30年度の間に実施したもので、断熱改修を予定する住宅に居住する人4,131人(2,307軒)と、断熱改修を実施した人1,194人(679軒)についてそれぞれ改修前と改修後の健康診断結果をまとめたもの。
調査の結果、①室温が年間を通じて安定している住宅では、居住者の血圧の季節差が顕著に小さい②居住者の血圧は部屋間の温度差が大きく、床近傍の室温が低い住宅で有意に高い③断熱改修後に居住者の起床時の最高血圧が有意に低下④室温が低い家ではコレステロール値が基準範囲を超える人、心電図の異常所見がある人が有意に多い⑤就寝前の室温が低い住宅ほど過活動膀胱症状を有する人が有意に多い⑥床近傍の室温が低い住宅では、様々な疾病・症状を有する人が有意に多い-などの新たな知見が得られたとしている。
日本サステナブル建築協会は2月1日(金)13:30~17:00、第3回中間報告会をホテルグランドアーク半蔵門(東京都千代田区隼町1-1)で行う。定員は300名で参加費は無料(登録制)。詳しくは同協会HP(http://www.jsbc.or.jp/)へ。